Crabcoreはなぜ衰退したのか? Attack Attack!から始まったMySpace時代の熱狂、その衰退と現在のリバイバル

2000年代後半のメタルコアを振り返るうえで、Crabcoreほど当時のインターネット・カルチャーと密接に結び付いた言葉は少ないかもしれない。極端に腰を落としてギターを弾くステージアクション、派手なシーンヘア、スキニージーンズ、エレクトロニック・サウンド、オートチューンを多用したクリーンボーカル、そして強烈なブレイクダウン。当初は一部のメタルコア・バンドを馬鹿にするためのジョークとして使われた言葉だったが、やがて一つの時代を象徴する存在になっていった。

YouTubeに公開された「What Killed CRABCORE?」では、Attack Attack!を起点としてCrabcoreが誕生し、MySpaceやYouTubeを通じて急速に拡大した過程、そしてなぜ2010年代半ばまでに勢いを失っていったのかを振り返っている。

動画が描くCrabcoreの歴史は、単純な「流行した音楽が飽きられて消えた」というものではない。シーンそのものの過飽和、ファンの成長、SNSの変化、バンド側がより成熟した音楽を求め始めたこと、そして次の世代のオルタナティヴ・ミュージックが台頭したことなど、複数の変化が同時に起きた結果として、その時代は終わっていった。しかし現在、そのサウンドや美学は再び新しい世代から注目され始めている。

 

Attack Attack!「Stick Stickly」から生まれたCrabcore

動画では、Crabcoreの誕生をAttack Attack!の「Stick Stickly」ミュージックビデオと結び付けている。ギタリストたちが極端に腰を落として演奏する姿が「カニのように見える」と揶揄され、それをきっかけにCrabcoreという呼び名が広がった。

興味深いのは、Attack Attack!自身がその呼び名に抵抗しなかったことだ。動画内で紹介される過去のインタビューでは、誰かがバンドを馬鹿にするためにWikipediaへ書き込んだ言葉だったのではないかと振り返りながら、「面白いからそのまま受け入れた」という姿勢を見せている。後にはCrabcoreを冠したTシャツまで制作しており、自分たちに向けられた嘲笑を逆にバンドのアイデンティティの一部へ変えていった。

しかし、Attack Attack!が物議を醸していたのはステージアクションだけではなかった。アルバム『Someday Came Suddenly』では、ハイトーンのスクリーム、パニックコード、チャグを主体としたブレイクダウンへ、派手なシンセサイザー、エレクトロニック・パート、オートチューンを強く使用したクリーンボーカルを組み合わせた。

当時の伝統的なメタルファンから見れば、あまりにも突飛な組み合わせだった。批評家から冗談のような作品として扱われることもあった一方、この音楽を必要としていたのは必ずしも既存のメタルファンではなかった。

動画では、当時エモやシーン・カルチャーからメタルコアへ足を踏み入れようとしていた新しい世代にとって、Attack Attack!が「入口となるバンド」だったと捉えている。暗くシリアスであることが当然とされていたヘヴィ・ミュージックに、鮮やかな色彩、ポップミュージック、エレクトロニクス、遊び心を持ち込んだことで、それまでのメタルコアとはまったく異なる聴衆を呼び込んだ。

 

MySpaceがCrabcoreを世界規模のムーブメントへ変えた

Crabcoreの拡大を語るうえで欠かせないのがMySpaceとYouTubeだった。

「Stick Stickly」の公式ミュージックビデオは当時としては珍しい規模で拡散し、世界各地のシーンキッズがAttack Attack!を知るきっかけとなった。メタルコミュニティから強烈に嫌われる一方、それと同じくらい熱烈に支持する若いファンも存在していた。

その後、似た感覚を持ったバンドが次々と人気を獲得する。動画ではAsking Alexandria、Confide、Of Mice & Men、I See Stars、A Skylit Driveなどが、この時代を構成した重要なバンドとして取り上げられている。

Asking AlexandriaはAttack Attack!が提示した要素を、より攻撃的で完成された形へ進化させた存在として紹介され、Of Mice & MenではAttack Attack!を離れたAustin Carlileが新たなスターとなった。I See Starsは当時のElectronicoreを語るうえで重要な存在であり、Attack Attack!自身も彼らからの影響について語っていたという。

やがて「Crabcore」は単なるカニのような動きだけを意味するものではなくなっていった。シーンヘア、スキニージーンズ、派手なファッション、エレクトロニクス、メタルコア、独特なステージアクションなどをまとめた一つのカルチャーへと変化していった。動画ではAttack Attack!がその「設計図」のような存在になり、新しく登場するバンドがそのフォーマットを取り入れていったと振り返っている。

その拡大を可能にしたのがMySpaceだった。動画ではMySpaceについて、単なるSNSではなく、巨大企業や既存メディアが握っていた音楽発見の力をリスナーへ開放した存在として捉えている。ユーザーはプロフィールからプロフィールへ移動しながら、新しいバンドを次々と発見することができた。

シーンが急拡大すると、当然レーベルも動き始める。CrabcoreやElectronicoreが人気を集めれば、各社は「次のAttack Attack!」を探すようになる。こうして、もともとはインターネット上のジョークから生まれた言葉が、音楽産業からも無視できないムーブメントへと変わっていった。

 

Asking AlexandriaとOf Mice & Menがもたらした「ロックスター」

Attack Attack!がCrabcoreの設計図を作った一方、動画では彼らのピーク時に一つ欠けていたものがあったとも指摘している。それが、シーン全体を象徴する「ロックスター」の存在だった。

そこで登場したのがAsking AlexandriaのDanny WorsnopとOf Mice & MenのAustin Carlileだった。

@before_beyond From metalcore chaos to soulful solo sounds 🎤 Danny Worsnop’s journey is pure transformation. From Asking Alexandria to his country-blues solo career, he’s proven he can do it all. Which Danny era is YOUR favorite? 👇 Don’t miss this 12-moment evolution! 🔥 👉 Follow for more artist evolutions and epic music journeys! #DannyWorsnop #AskingAlexandria #ShadesOfBlue #MusicEvolution #RockIcon ♬ The Final Episode (Let’s Change Channel) – Asking Alexandria

@before_beyond From stage screams to survival—Austin Carlile’s story of resilience and rebirth in 12 moments. #AustinCarlile #OfMiceAndMen #MetalcoreLegend #MusicEvolution #MetalMusic ♬ Second & Sebring – Of Mice & Men

彼らはルックス、ファッション、ボーカル、カリスマ性、そして強烈なステージパフォーマンスを持っており、単なるバンドのフロントマンを超えて、若いファンが憧れるアイコンになっていった。

こうしたスターの誕生によってCrabcore周辺の音楽はさらに大きな注目を集め、レーベルや企業もその商業的な可能性を認識するようになる。Asking Alexandriaがテレビ番組「Jimmy Kimmel Live!」に出演するなど、かつて一部のインターネット・カルチャーだった音楽がメインストリームへと到達する場面も生まれた。

ジョークとして始まったCrabcoreは、一時期メタルコアの中でも最も目立つスタイルの一つとなった。しかし、急激に拡大したムーブメントには、やがて避けられない問題が起こり始める。

 

なぜCrabcoreは衰退したのか――最大の問題は「過飽和」

動画がCrabcore衰退の大きな理由として挙げているのが、フォーマットの過飽和だった。

人気ジャンルが生まれると、似たバンドが増える。それ自体は珍しいことではない。流行に便乗して利益を得ようとする者もいれば、その音楽に可能性を感じ、自分なりの形へ発展させようとする者もいる。

しかし、チャグを主体としたブレイクダウン、エレクトロニックなシンセサイザー、ハイトーンのクリーンボーカル、大量のオートチューンといった組み合わせが何度も繰り返されるうちに、かつて予測不能に感じられたサウンドが次第に定型化していった。

音楽だけではない。派手なシーンファッションや蛍光色を使用したマーチャンダイズなども大量に登場し、本来は目立つためのデザインだったものが、全員同じ方向へ進んだことで逆に目立たなくなっていった。

最初は「こんな音楽を作っていいのか」と思わせるほど異質だったCrabcoreが、数年後には「またこのサウンドか」と思われるものへ変化してしまったというわけだ。

 

Crabcoreと一緒に、シーンキッズも大人になった

Crabcore側の変化と同時に、聴いていたファン自身も成長していった。

2000年代後半にシーン・カルチャーへ夢中になっていた10代の若者たちは、数年後には学校を卒業し、仕事を始め、自分が何者なのかをシーンの外でも探す年齢になっていた。一部はそのままヘヴィ・ミュージックを聴き続けたが、完全に別の音楽へ移っていった人もいる。

動画では、Crabcoreが単なる音楽ジャンルではなく、特定の世代の「人生の一時期」と強く結び付いていたことを指摘している。だからこそ、その世代が成長すれば、同じ形の音楽を永遠に求め続けるわけではなかった。

さらにインターネット自体も変化した。MySpaceは自分の好きな曲、好きなバンド、友人、写真、派手なグラフィックなどを使い、自分自身のページを自由に作ることのできる場所だった。しかしSNSがFacebookなどへ移行すると、プロフィールは次第に統一され、よりシンプルで使いやすいものになっていった。

動画では、このインターネットの変化とCrabcoreの衰退を重ねている。派手で、騒々しく、過剰で、個性的だったMySpace。そして同じように派手で、騒々しく、過剰だったCrabcore。インターネット全体が整理され、均一化されていくなかで、Crabcoreは人々が過去に置いていこうとしていた時代そのものを象徴するようになっていった。

 

バンド自身も「Crabcoreから卒業」しようとした

Crabcoreを聴いていたファンだけではなく、演奏していたミュージシャン自身も若かった。

成功した当時はリスナーと数歳しか違わないメンバーも珍しくなく、彼らも当然成長していった。そこで生まれたのが、「自分たちは本当にこの音楽を一生作りたいのか」という問題だった。

さらにCrabcore系バンドは長年、一部の批評家やメタルファンから冗談のように扱われてきた。その結果、多くのバンドが「自分たちは本物のミュージシャンだ」と証明したいと考えるようになったのではないか、と動画では分析している。

シンセサイザーを減らす。派手な色をなくす。コミカルな要素を消す。よりシリアスで「成熟した」メタルを目指す。

しかし、その過程で最初に人々を惹きつけていた個性まで失ってしまったバンドもいた。技術的には成熟していても、新鮮さや楽しさがなくなり、結果として無難な音楽になってしまう。

動画では、この時代のメタルコアが「成熟しようとすること」に集中しすぎた結果、かつての魅力だった混沌やキャラクターまで失ってしまったと指摘している。

同時に、Danny WorsnopやAustin Carlileのような強烈な個性を持った人物が象徴していた「ロックスター性」も薄れていった。プロダクションは整い、ミュージシャンはよりプロフェッショナルになった。しかしステージ以外では存在し得ないような強烈な人物像を持つスターが減っていったという見方だ。

 

2010年代半ば、バンドはそれぞれ別の道へ

2010年代半ばになると、Crabcoreの中心にいたバンドやミュージシャンはさまざまな方向へ進んでいく。

Confide、That’s Outrageous!、Close to Homeなど解散するバンドがいる一方、別のプロジェクトで新しい成功を手にした人物もいる。動画ではAttack Attack!周辺から生まれたOf Mice & Men、Bilmuri、Beartoothを、その代表例として挙げている。

また、ニューメタル、オルタナティヴ・メタル、ハードロックなど、より長い商業的実績を持つスタイルへ移行するバンドも増えた。動画では、Crabcoreというフォーマット自体がすでに成長の限界へ到達していたため、さらに大きな成功を目指したバンドがラジオ向けのサウンドへ進んだ可能性にも触れている。

その結果、かつて旧世代のロックとはまったく違う音楽として登場したバンドたちが、徐々に自分たちが置き換えようとしていた従来型のハードロックへ近づいていくという皮肉な状況も生まれた。

その中で、動画が成功例として取り上げているのがCaleb ShomoのBeartoothだ。

BeartoothではAttack Attack!時代のコミカルさや強いエレクトロニクスを減らした一方、ブレイクダウンなど自分自身にとって重要だった要素は残された。さらに生々しいプロダクション、個人的な感情、強いフックを加えることで、単純に過去を否定するのではなく、Attack Attack!で得た経験から必要な部分だけを次の音楽へ持ち込んだ。

動画では、これは流行から抜け出す一つの理想的な方法だったのではないかと評価している。

 

次の世代となったポップパンク・リバイバル

Crabcoreの勢いが落ち始めた頃、Warped Tourでも別の新しい流れが存在感を強めていた。

2013年から2014年頃には、The Story So Far、State Champs、Neck Deepなど、次世代のポップパンク・バンドが若いオルタナティヴ・ミュージック・ファンから大きな支持を集めるようになった。

動画では、Crabcoreがあまりにも過剰な音楽だったからこそ、その次に注目されたポップパンクが対照的だった点を興味深い変化として挙げている。複雑なエレクトロニクスや極端なブレイクダウンを重ねるのではなく、パワーコードとキャッチーなコーラスを中心としたシンプルな音楽が、新しい世代にとって新鮮な存在になった。

つまりCrabcoreには、ある日突然「死んだ瞬間」があったわけではない。

フォーマットが使い尽くされ、ファンが成長し、ミュージシャン自身も別の音楽を求め、新しいシーンが登場した。優れたアーティストは新しい方向へ進み、単純なコピーだったバンドは消えていく。その積み重ねによって、Crabcoreというムーブメントは徐々に姿を消していった。

 

MySpaceへのノスタルジーとCrabcore再評価

しかし、時間が経つと、それまで恥ずかしい過去だと思っていたものが再び魅力的に見えることがある。

現在、MySpace時代の美学そのものが再発見され始めている。ストレートアイロンで作った髪型、スネークバイト・ピアス、ネオンカラーの服、極端な角度から撮影した写真など、2000年代後半のシーン・カルチャーを知らない新しい世代までが、そのスタイルを取り入れている。

音楽でも同様の現象が起きている。特にMySpace Deathcoreではリバイバルの動きが強く、動画ではREV3RENT、Slamwich、Psycho-Frameなど、2007年前後のデスコアを思わせるサウンドを持った新世代のバンドを紹介している。

現代のメタルが高度に洗練され、技術的にも完璧なプロダクションへ向かってきた反動として、荒々しく、不完全で、MySpace時代からそのまま出てきたような音楽が逆に新鮮に響いているという。

Crabcoreでは同規模のリバイバルはまだ少ないものの、動画ではAshes At Lastを一例として紹介している。過去のElectronicore/Crabcore的な要素を再び取り入れる新しいバンドが存在し、実際に支持を伸ばしていることは、このサウンドに再び需要が生まれている証拠ではないかと捉えている。

 

Electric Callboyは「進化したCrabcore」なのか

一方、動画ではCrabcoreそのものが完全に消えたわけではなく、その基本的な発想は現代の音楽へ進化して残っているとも考えている。

その代表として名前が挙げられるのがElectric Callboyだ。

エレクトロニックなプロダクション、巨大なクリーンコーラス、ブレイクダウン、複数ジャンルの衝突、派手な衣装、ユーモア。そして何より「楽しさ」を失っていない。

クラシックなCrabcoreとの大きな違いは、その馬鹿馬鹿しさが完全に意図されたものとしてコントロールされている点だと動画では分析している。

初期Crabcoreでは、さまざまな要素が無秩序に詰め込まれたように感じられる楽曲も多かった。それに対してElectric Callboyは、自分たちがどのようなバンドなのかを理解したうえで、カオスを計算されたエンターテインメントとして成立させている。

動画では、これは「成熟=シリアスで退屈になること」と考えなければ、初期Crabcoreのバンドたちが進むことのできた未来の一つだったのではないかと見ている。

そして興味深いことに、復活したAttack Attack!も似た結論へたどり着いている。

現在の彼らは『Someday Came Suddenly』をそのまま再現するのではなく、現代的なメタルコア、EDM、ポップ、Electric Callboy以降のパーティー・メタル的な要素を取り入れている。同時に、かつては嘲笑の対象だったCrabcoreという言葉から逃げることをやめ、ユーモアやエレクトロニクスを再び自分たちのアイデンティティとして利用するようになった。

Electric Callboyや現在のAttack Attack!はCrabcoreの「進化した形」を提示し、Ashes At Lastのような新しいバンドはオリジナルに近いサウンドそのものの復活を試みている。

 

Crabcoreは「ただの流行」ではなかった

Crabcoreが再び2000年代後半と同じ規模でメタルコアを支配する可能性は高くないのかもしれない。それでも、長い間多くの人が距離を置こうとしていたCrabcoreを、新しい世代が積極的に探し始めているという変化は興味深い。

MySpace Deathcoreのリバイバルは当時のブルータリティを復活させ、ファッションのリバイバルは当時の美学を取り戻した。そしてCrabcoreの再評価は、メタルコアから失われていった「楽しさ」をもう一度取り戻そうとしているのかもしれない。

動画の最後では、若者から生まれた流行には次の若い世代が必要だという考えも語られている。かつてCrabcoreを作ったミュージシャンや聴いていたファンは年齢を重ねた。それ自体は自然なことであり、無理に昔の姿へ戻る必要もない。

重要なのは、次の世代が過去から影響を受けながら、自分たちなりの新しいものを作ることだ。

深く真剣な音楽と、馬鹿馬鹿しいほど楽しい音楽は同時に存在できる。ヘヴィ・ミュージックだからといって、常に自分自身を深刻に見せ続けなければならない理由はない。

もともと一つのジョークから生まれたCrabcore。しかし、それは最終的に世界各地の若者を巻き込み、メタルコアのサウンド、ファッション、ライブパフォーマンス、そしてインターネット上の音楽カルチャーそのものに影響を残した。

単なるギミックでも、一時的な流行だけでもない。

動画が最後に表現しているように、Crabcoreは一つの「時代」だったのだ。

 

参照元動画

「What Killed CRABCORE?」

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