
Bring Me The Horizonの原点となったデスコア・アルバム『Count Your Blessings』。長年、初期ファンから強烈な支持を受け続けてきた一方、Oli Sykes本人にとっては複雑な感情を持つ作品でもあった。
Nick NocturnalとのインタビューでOliは、『Count Your Blessings Repented』として作品を新たに作り直した理由、オリジナル版の制作環境、約20年前の歌詞を現在の自分がどう受け止めたのか、そして現代的なメタル作品へ変えてしまわないために行った細かな調整について語っている。
重要なのは、今回の制作が単純なリマスターではないことだ。
当時のマルチトラック素材が残っていないため、実質的には作品全体を一から再構築する「完全なリメイク」だった。
「嫌いだった」のではなく、音に満足していなかった
Bring Me The Horizonが長年『Count Your Blessings』の楽曲をあまり演奏しなかったことから、バンド自身が作品を嫌っている、あるいは恥ずかしがっていると思っていたファンもいた。
しかしOliによれば、本当の理由は作品の内容ではなく「音」だった。
当時のBring Me The Horizonは小さなバンドで、制作予算も少なかった。メンバー自身もクリックトラックやギターのパンニングなど、基本的なレコーディングの知識すらほとんどなかったという。メンバーがそれぞれ自分のパートを録音し、他のメンバーの演奏について確認し合うような制作体制でもなかった。
Oli自身も途中で体調を崩し、さらにバンドは頻繁に酒を飲んでいた。
完成したCDを車で初めてまともに聴いた際、All Shall Perishなどを聴いていた自分のオーディオ環境で『Count Your Blessings』を再生し、「これは音が良くない」と強く感じたという。その後、長年ほとんどアルバムを聴き返さなかったほどだったそうだ。
約20年前の歌詞を「今の自分」がもう一度歌う
再録するうえでもう一つ大きな問題になったのが歌詞だった。
Oliは16歳頃に書いた歌詞を読み返し、一部については現在の視点から見れば女性蔑視的だと解釈される可能性があると認めている。
当時はGlassjawをはじめ、自分たちが聴いていた音楽から表現を吸収し、「格好いい」と思ったものを深く考えず使用していた部分もあった。
そこで最初は歌詞を変更したり、一部を自主規制したりすることも考えたという。
しかし、アルバムにはさらに過激なテーマの楽曲が数多く存在する。人間そのものを消滅させるような内容もあり、一部分だけ変更し始めれば「どこまで直せばいいのか」という問題になる。
結果的に作品全体の性質を別のものへ変えてしまう可能性があった。
「良くする」のではなく「記憶の中の音」を守る
再録当初、Oliは現在の自分の方がスクリーム技術も高く、演奏もより正確にできるのだから、当然オリジナルより良いものにできると考えていた。しかし実際に録り始めると、わずかに違うだけでも強烈な違和感が生まれた。
Oli自身、昔から好きなバンドがEPの曲をアルバム用に再録した際、スネアの位置や小さなバックグラウンド・ボーカルが変わっただけで嫌だった経験があるという。
そこで、ファンが20年間聴いてきた『Count Your Blessings』も同じなのだと気付いた。
音程が半音違う、スクリームの形が少し変わる、タイミングが変わる。その程度でも、長年作品を愛してきた人には重要な違いになる。
Repented (=悔い改めた) 盤では、明らかに修正した方が良い部分を除いて、可能な限りオリジナルを再現する方針が取られた。
Buster Odeholmにも「2026年のメタルにしないでほしい」と依頼
新しい音作りを担当したのは、現代のヘヴィ・ミュージックを代表するプロデューサーの一人であるBuster Odeholm (*Buster Odeholmは、スウェーデン出身のミュージシャン、プロデューサー、オーディオエンジニアで、Humanity’s Last BreathとVildhjartaのメンバーとしても知られる)。
しかしBring Me The Horizonが求めたのは、現代的な超低音チューニングや巨大なキック、極端に洗練されたプロダクションへ作り替えることではなかった。
最初に提示されたミックスは現代的で非常に良い音だったものの、バンド側は「これは今のバンドの音になりすぎている」と感じたという。
目標は、2026年のメタルへアップデートすることではなく、「2006年にこの作品を最高の環境で作れていたら、こう鳴っていた」というサウンドだった。
キックには当時らしいクリック感が必要で、スネアにもあの時代特有の硬い響きが必要になる。そして何より『Count Your Blessings』はリフそのものが中心となる作品であるため、ギターが明確に聞こえなければ意味がない。
現代の音圧を使いながら、2006年の美学を維持する。そのバランスがRepented制作の重要な課題だった。
メンバーは世界各地からリモートで再制作
興味深いのは、約20年前のアルバムを再現する作業が、当時とはまったく異なる環境で行われていることだ。
制作時、Oliはブラジルにおり、Matt NichollsとLeeらはイングランドのシェフィールド、Matthew Keanはロサンゼルスにいた。それぞれが個別に作業し、Matt Nichollsはドラム、Leeはギター、Oliはボーカルを担当した。
Oliは育児の合間、朝の数時間を利用して歌入れを進めていたという。
さらに当時の自分がどのような発声をしていたのか分からない部分もあり、ファンがオンライン上にアップロードしていたボーカル抽出音源を利用。それをLogicへ読み込み、10~15分単位で細かくループしながら、昔の自分の発音や声の形を再現していった。
本人ですら「自分は何と言っているんだ」「どうやってこの声を出しているんだ」と感じるほど、初期の発声は現在とは異なっていた。
当初は「小さな20周年企画」のつもりだった
バンド側は当初、今回の企画をキャリアの中の小さな記念企画程度に考えていたという。
新しいアルバム制作も予定しており、『Count Your Blessings』20周年は一年の中の小さな出来事になると思っていた。しかし発表すると、予想を大きく超える反応が起きた。
長年「Pray for Plaguesをやってほしい」と言い続けていたファンだけでなく、オリジナル発売当時には知らなかった世代まで作品に強い思い入れを持っていることをOliは改めて知ることになる。
本人は以前、「昔の曲を要求する若いファンは、古参のように見せたいだけなのではないか」と考えていた部分もあったという。しかし今回の反応を見て、それが本当の愛情だったのだと実感した。
「今なら自分でもこのアルバムを聴ける」
Repented完成後、Oli自身の『Count Your Blessings』に対する感情も変化した。
以前は完成版をほとんど聴き返したことがなかったが、新バージョンについては何度も再生し、「これは良い」と感じられるようになったという。
完璧なアルバムではない。インタールードが少し多い、もっと曲数があっても良かったなど、現在から見れば改善したかった部分もある。
それでも16歳頃から書き始め、何も分からない状態で作った作品として振り返ると、今では自分たちを誇らしく感じるようになった。
そしてRepentedは新しいファンのためだけの作品でもない。
最大の目的は、2000年代からBring Me The Horizonを支えてきた人たちへ、「自分たちはこの作品と、自分たちが生まれた場所を誇りに思っている」と伝えることだという。
参照元動画
「OLI SYKES on Count Your Blessings Repented, Sempiternal & Deathcore Era」