「誰でも自分より上手いボーカリストになれる」Will Ramosが語る15年の試行錯誤と若い世代へのメッセージ

Lorna ShoreのWill Ramosは、現在のエクストリーム・メタルを代表するボーカリストの一人だ。

低く巨大なグロウル、鋭いハイ、トンネル・スロートをはじめとする特殊な発声を自在に行き来し、「To The Hellfire」をきっかけにその声は世界中で注目された。しかし本人の話を聞いてみると、その出発点は専門的なボーカル教育でも、デスメタルへの強烈な憧れでもなかった。中学生の頃、同級生が教室でギターを弾いているのを見たこと、友人から渡されたヘヴィ・ミュージックのリストを聴いたこと、そして自宅のシャワーで、好きな曲に合わせて何度も叫んでいたこと。

動画「My Story As Metal Frontman Will Ramos (Lorna Shore)」では、Willがどのようにメタルへ入り、ギターからボーカルへ転向し、長い独学期間を経て現在の発声へ辿り着いたのかを詳しく語っている。

興味深いのは、現在では技術的なボーカリストとして知られるWill自身が、若い頃の学び方を決して理想的だったとは考えていないことだ。むしろ「自分と同じやり方をするな」とまで話している。

 

始まりは「Crazy Train」を弾く同級生

Willがロックへ興味を持ったのは中学生の頃だった。

8年生のクラスに、ギターを持ってきた生徒がいた。その彼がOzzy Osbourneの「Crazy Train」を弾く姿を見て、「人生で見た中で一番格好いい」と衝撃を受けたという。そこからWill自身もギターを始め、クラシック・ロックを中心に音楽を掘り下げるようになった。

本格的にヘヴィ・ミュージックへ入ったのは14歳頃。ギターを通して知り合った友人たちが、Bullet For My Valentine、Lamb of Godなどを演奏していることを知り、それまで聞いたことのなかったバンドをまとめたCDやリストを渡された。

ただし、最初からすぐ好きになったわけではない。

むしろ「重すぎる」と感じ、最初は受け入れられなかったという。

それでも繰り返し聴いているうちに耳が慣れ、次第にその世界から抜け出せなくなった。

現在ではLorna Shoreで極端なデスコアを歌う人物が、「最初はヘヴィすぎて好きではなかった」というのは面白い。

エクストリーム・メタルは、一度聞いただけでは理解できなくても、何度も触れているうちに音の中の構造が見えてくることがある。Will自身も、まさにその過程を通ってきた。

 

ボーカルの始まりは、やはりシャワーだった

Willはギターだけでなく、子供の頃からさまざまな楽器に触れていた。

歌うことも好きだったが、自分では決して上手いと思っていなかったという。

そこからヘヴィ・メタルへ入っていくにつれ、自宅のシャワーで新しく知ったバンドの曲に合わせて歌うようになった。

当時はiPodを大型スピーカーへ差し込み、大音量で音楽を流していた。

普通に歌っていたものが、いつの間にかスクリームへ変わっていった。

本人も「最初に何をやったのかはもう覚えていない」と話すほど自然な流れだったという。

転機になったのは、Willをメタルへ引き込んだ友人が、その声を偶然聞いたことだった。

Willがシャワーから出ると、その友人から「結構いいじゃん。続けた方がいい」と言われた。

それまでギターを中心にしていたWillは、その言葉をきっかけに少しずつギターから離れ、ボーカルへ集中していく。

14歳頃のことだった。

 

Lamb of Godを真似するところから始まった

最初から「Will Ramosの声」が存在したわけではない。

初期に強く真似していたのがLamb of Godだった。

Randy Blytheをはじめ、好きなボーカリストがどのように声を出しているのかをひたすら聴き、同じ音を再現しようとしていた。

誰かが異常な高さのスクリームを出していれば、「人間が出せるなら、自分にも何らかの方法でできるはず」と考える。

そして、できるまで何度も試す。

Willは長い間そうした模倣を続け、そこから徐々に自分の声を作っていったという。

現在のような明確な自身のスタイルを意識するようになったのは、むしろここ数年のことだと話している。

Willにとって模倣は、オリジナリティの反対ではなかった。

他人の技術を理解するための方法だった。

いくつもの発声をコピーしようとした経験が積み重なり、その中から自分が好きな響きを選び取る。

それが現在のWill Ramosの異常なまでに広いボーカル・レンジにつながっている。

 

「誰でもボーカリストになれる」

Willは、極端なスクリームや低音について「特別な人間だけが出せる声」だとは考えていない。

十分に練習すれば、誰にでも可能性があるというのが本人の考えだ。

もちろん一日でできるわけではない。

何時間も試して失敗する。

翌日また試して失敗する。

それを何週間も繰り返す。

その過程で、声のどこをどう動かせば特定の音になるのかを少しずつ理解していく。

そして一つの技術を掴めば、それを基準に次の技術を理解しやすくなる。

Willはボーカルについて、「自分の声にどれだけ慣れることができるか」が重要だと説明している。

例えばInfant Annihilatorで耳にした特殊な発声に挑戦した際には、既にそれまで多くの発声を試していたため、比較的短時間で再現できたという。

単純に才能だけで突然出せたのではなく、以前の失敗や模倣がすべて土台になっていた。

 

ただし「自分と同じ学び方はするな」

一方、Willは独学を美談にはしていない。

若い頃はボーカル・コーチへ行ったこともなく、自分の身体を使ってひたすら試行錯誤していた。

本人はそれを、「隣の部屋へ行くためにドアを使わず、何度も壁へ頭をぶつけ、最後には壁を破壊して進んだ」ようなものだと例えている。

正しい入口を教えてくれる人がいなかったため、痛ければ休み、翌日にまた試す。

それを繰り返して、自分なりの方法を見つけていった。

その結果、現在では身体が「良くない感覚」を覚えている。

喉に痛みを感じる。

必要以上に大きな声で押している。

間違った場所から力を入れている。

そうした感覚が出れば、過去の経験から「これはやめた方がいい」と判断できる。

しかし、そこまで辿り着くために長い時間がかかった。

だからこそ、動画終盤で若いボーカリストへのアドバイスを求められたWillは、最初の一言として「ボーカル・トレーナーを見つけろ」と答えている。

自分が15年かけて覚えたことを、わざわざ同じ遠回りで学ぶ必要はないという。

 

カメラで喉を確認し「間違っていなかった」と安心した

Willは過去に、発声中の喉を内視鏡のようなカメラで観察する企画にも参加している。

その経験によって新しい技術を覚えたわけではなかったが、自分の発声を長年続けても声の状態が良好だと確認できたことは、大きな安心材料になったという。

本人も、それまでは「感覚としては問題ないけれど、本当に身体に問題はないのか」という疑問を持っていた。

実際に観察した側から健康状態に問題がないと言われたことで、自分が積み重ねてきた発声への自信につながった。

ただし、これはWill本人の経験についての話であり、同じ発声を真似すれば誰にとっても安全という意味ではない。

本人自身が後に「最初から指導を受けた方がいい」と話していることも含め、独学で無理に再現するための指南として捉えるべきではないだろう。

 

Lorna Shoreでセットが長くなり、発声そのものを変えた

ローカル・バンド時代と、現在のLorna Shoreではライブの条件がまったく違う。

以前なら短いセットで済んでいたものが、現在ではヘッドライナーとして1時間を超えるライブを行うこともある。

それによってWillは、自分の発声を「少し抑える」必要が出てきたという。

しかしこれは、迫力を落とすという意味ではない。

以前は「この声を出すには、これくらい全身を使わなければならない」と思い込んでいた。

実際には、身体全体を締め付けたり、大きく顔を歪めたりしなくても、同じような音は出せる。

よりリラックスし、身体を消耗させずに同じ声を作る。

ライブが長くなったことで、そこを学ばなければツアーを続けられなくなった。

Willは練習後にも、その日の出来だけで判断しない。

重要なのは翌日だという。

練習中に良い声が出ても、翌日に強い疲労や違和感が残れば、その方法には問題がある可能性がある。

反対に、長時間歌った翌日も状態が良ければ、自分の技術がより効率的になっている証拠になる。

 

25分なら「To The Hellfire」でウォームアップすることも

Willのライブ前ルーティンも、セットの長さによって変わる。

Parkway Driveとのツアーで持ち時間が約25分だったときには、本格的なウォームアップをせず、最初の「To The Hellfire」を歌いながら声を温めることもあったという。

しかし約1時間20分のセットとなれば話は別だ。

その場合は明確なウォームアップ・ルーティンを組み、加湿器、ボーカル用のアイテム、さまざまなお茶などを持ち込む。

長いツアーを最後まで維持するため、ステージ前から声を管理する必要がある。

Lorna Shoreのステージを見ると、Willの発声はほとんど限界まで身体を酷使しているように聞こえる。

しかし現在の本人が目指しているのはむしろ逆で、どれだけ無駄な力を使わずに同じサウンドを再現できるかだ。

 

『Pain Remains』で多彩な声を使えた理由

『Pain Remains』では、低音、高音、トンネル系の発声など、Willのさまざまな声を聞くことができる。

それらをレコーディングする作業は難しかったのか。

Willは「自然に出てくる」と答えている。

すでに多くの発声方法を身につけているため、曲を聞けば「ここではこの声が合う」と直感的に選べる。

バンドから違うものを求められれば、別の声へ切り替える。

本人いわく「ほかにも15種類くらい声がある」ため、その場で別の選択肢を出せるという。

つまりWillのボーカルは、曲を書いたあとに特殊な音を貼り付けているわけではない。

ギタリストが複数の奏法から楽曲に合ったものを選ぶように、自分の声の中に複数の「音色」があり、その場面に合うものを使っている。

長年さまざまなボーカリストを真似し続けてきた経験が、ここで一つの楽器として機能している。

 

「スクリームも結局は歌」

Willは、クリーン・ボーカルを上達させることがスクリームにも良い影響を与えたと話している。

本人の感覚では、歌とスクリームは完全に別のものではない。

身体の同じ領域を使い、そこから一部の使い方を変えることでスクリームになる。

そのため、本人はエクストリーム・ボーカルについて「harsh singing=荒い歌唱」と捉えている。

これは医学的な発声理論を説明しているのではなく、Will自身が長年歌ってきた中で得た感覚だ。

ただ、現在のWillが「奇妙な音を出す技術」としてスクリームを考えているのではなく、歌唱の延長線上にある表現として扱っていることはよく分かる。

 

ツアーでは何を避けるのか

長いツアーを乗り切るため、Willは食事や生活にも一定のルールを設けている。

ライブ前には辛いものを避け、喫煙もしない。

コーヒーやカフェインを含む飲み物も、本番直前には避けるという。

さらに長い連続公演が続く場合には、アルコールも可能な限り控える。

ただし動画中には、カフェイン、喫煙、蜂蜜などが声帯へ与える影響についてWill自身の説明がいくつか含まれている。この部分は医学的助言ではなく、あくまで本人がツアー生活の中で実践している自己管理として捉える必要がある。

興味深いのは、Willがステージ後の行動をかなり重要視している点だ。

ライブで声を使い切ったあと、騒がしいバーへ行き、大声で友人と会話する。

本人によれば、これが翌日の声へ大きく影響することがある。

ライブ自体は問題なく終えていても、その後の会話で無意識に声を張り上げてしまい、結果的に喉を疲労させる。

だから「休む時間になったら、本当に休む」。

派手な発声技術だけではなく、こうした地味な管理もツアーを続けるうえでは欠かせないと考えている。

 

母親は「息子がシャワーで苦しんでいる」と思っていた

Willがシャワーで毎日のようにスクリームを練習していた頃、それを聞いていた母親はまったく違う受け止め方をしていた。

「息子が苦しんでいる」と思っていたという。

しかし毎日同じことが続くため、やがて「どうやら痛がっているのではなく、ヘヴィ・メタルのために叫ぶ練習をしているらしい」と理解した。

プエルトリコ系の家庭で育ったWillの母親はサルサなどを好み、息子がヘヴィ・メタルへ進んでいくことを当初は歓迎していなかったという。

Willは自分自身を笑いながら「Heavy Metal Puerto Rican」と表現している。

シャワーで奇妙な声を出して母親を困惑させていた少年が、やがてその声で世界各地をツアーするようになる。

Willのキャリアを考えると、このエピソードはかなり象徴的だ。

 

Job For A Cowboy、Lamb of God、Killswitch Engage、In Flames

若い頃に好きだったボーカリストやバンドとして、Willはいくつもの名前を挙げている。

Job For A Cowboy。

Lamb of God。

Killswitch Engage。

In Flames。

AFI。

YouTubeで次々と新しいバンドを探し、特定のジャンルだけに絞らず、とにかく大量の音楽を聴いていた。

中でもIn Flamesへの思いは強い。

Anders Fridénについて「最高」と話し、後にはLorna ShoreとしてIn Flamesと共演し、メンバーやその家族とも交流できたことを嬉しそうに振り返っている。

好きだったアーティストと実際に仕事をするようになり、その人物たちが人間としても良い人たちだったことを知れたのは特別な経験だったという。

前回のWill RamosのQ&Aでも、特別なアルバムとしてIn Flames『A Sense of Purpose』を挙げ、共演したい相手としてAnders Fridénの名前を出していた。

In FlamesがWillの音楽的ルーツにとってかなり重要な位置にあることが、今回のインタビューでも改めて分かる。

 

Howard JonesかJesse Leachか

Killswitch Engageについては、Howard JonesとJesse Leachのどちらが好きかという質問も出ている。

Willは簡単には選べないとしながらも、自分がメタルへ入り始めた時期の影響から、聴いた回数ではHoward Jonesの方が多いと話している。

ちょうど「Holy Diver」のカバーが出た時期でもあり、当時の自分に強く刺さっていた。

しかし、それを「Howardの方が優れたボーカリスト」という意味にはしたくないとも説明する。

Will自身、ボーカリスト同士に単純な優劣はないと考えている。

それぞれに固有の声があり、それが重要だという。

他人の声を真似し続けるところからキャリアを始めたWillが、最終的に「それぞれの声そのものに価値がある」と考えるようになったことも興味深い。

 

「最初から先生を見つけろ。そして絶対にやめるな」

インタビューの最後、これからスクリームを始める若いボーカリストへ向けて、Willは二つのことを伝えている。

まず、指導者を見つけること。

自分のように15年かけて痛みと失敗を繰り返しながら覚える必要はない。

最初から適切な方法を教えてくれる人がいるのであれば、その方が圧倒的に効率がいい。

そしてもう一つが、練習をやめないこと。

発声も筋肉の記憶のようなもので、続けることで身体へ馴染んでいく。

Will自身、何度もスクリームへ戻り、練習を続けてきたから現在がある。

そして最後には、自分と同じくらい、あるいは自分よりも優れたボーカリストが今後もっと出てきてほしいと話している。

自分の技術を特別な才能として囲い込むのではない。

誰かが自分を追い越していくことを歓迎している。

それこそがWill Ramosのボーカルに対する考え方なのだろう。

 

15年間の「真似」がWill Ramosの声になった

Will Ramosの声を聞くと、生まれつき普通の人とは違う声帯を持っていたかのように感じることがある。

しかし本人が語るキャリアは、もっと地道だ。

最初はメタルを重すぎると感じていた。

ギターを弾いていた。

シャワーでLamb of Godを真似した。

友人から「悪くない」と言われてボーカルを続けた。

何度も失敗し、声を疲れさせ、別の方法を試した。

好きなボーカリストの声を聞けば、それをどうやって出しているのか考えた。

そして約15年かけて、その大量の模倣と失敗が「Will Ramosの声」になった。

現在はLorna Shoreで1時間を超えるセットを歌うため、むしろ力を抜く方法を学んでいる。

最初は「どれだけ強く出せるか」を探していた人物が、今では「同じ音をどれだけ楽に出せるか」を考えている。

そこには、エクストリーム・ボーカルを単なる奇抜な音ではなく、一つの楽器として理解していく長い過程がある。

だからWillが最後に「誰でも自分より上手くなれる」と話すことにも説得力がある。

彼自身が、自分の声を最初から持っていたわけではないからだ。

聞く。

真似する。

失敗する。

休む。

また試す。

そして続ける。

現在のWill Ramosを作ったのは、その繰り返しだった。

参照元動画

「My Story As Metal Frontman Will Ramos (Lorna Shore)」

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