Slaughter To PrevailのAlex Terrible「人々は本当の僕を知らない」― Bloodstockで語った成功、デスコアの進化、そして人生観

現在のエクストリーム・メタルを代表する存在の一つへと成長したSlaughter To Prevail。そのフロントマンAlex Terribleが、イギリスのBloodstock Open Air 2026でBloodstock TVのインタビューに登場し、バンドの急速な成長、現代のデスコア・シーン、自身に対して世間が抱いているイメージ、そして人生そのものについて語った。

Slaughter To Prevailは8月8日、Bloodstock Open Airの25周年を記念する2026年大会でRonnie James Dio Stageのヘッドライナーを担当。Lamb Of God、Judas Priest、Saxonとともに同フェスティバルのヘッドライナーに名を連ねた。

インタビューでは、14歳頃からエクストリーム・ボーカルに取り組み、Oliver Sykes(Bring Me The Horizon)や故Mitch Lucker(Suicide Silence)に憧れていた少年時代から、巨大なフェスティバルのヘッドライナーを務める現在までを振り返る一方、「Demolisher」とLorna Shoreの「To the Hellfire」が現代のヘヴィ・ミュージックに変化をもたらしたという自負も明かしている。そして後半では、Alex Terribleという強烈なパブリックイメージの裏側にある、自身のアイデンティティや死生観についても踏み込んでいる。

 

「ロックスターになる」と信じていた14歳の少年

Bloodstockへの出演は今回が初めてであり、さらにイギリスのフェスティバルでヘッドライナーを務めることについてAlex Terribleは緊張していると話した。Slaughter To Prevailは以前Download Festivalにも出演しており、その際にも大きな観客から激しい反応を受けたが、今回はさらに上の立場でステージへ立つことになる。現在の状況についてAlexは、時折「マトリックスの中に生きているような感覚になる」と語っている。

彼がエクストリーム・ボーカルを始めたのは14歳頃。当時はBring Me The HorizonのOliver SykesやSuicide SilenceのMitch Luckerを見て、彼らのスタイルや生き方そのものに憧れていた。14~15歳頃には手首や指など目立つ場所にもタトゥーを入れ始め、母親から「普通の仕事に就けなくなる」と怒られたという。

しかしAlexは、その時点ですでに「普通の仕事には就かない。ロックスターになりたいし、ロックスターになる」と強く信じていた。

そして現在、かつて憧れていた世界の中心に自分自身が立っている。その現実が本人にとっても信じられないほど大きな変化であることが、インタビューから伝わってくる。

 

「Demolisher」と「To the Hellfire」がゲームを変えた

インタビュアーは、現在のヘヴィ/エクストリーム・ミュージックでは世代交代が進み、新しいバンドがより大きな観客を獲得するようになっていると指摘。その中でもSlaughter To Prevailは、新世代を象徴する重要なバンドの一つではないかと質問している。

これに対するAlexの答えは明確だった。

彼は、Slaughter To Prevailが「Demolisher」を発表し、Lorna Shoreが「To the Hellfire」を発表したことで「ゲームを変えた」と考えている。そして自分自身やLorna ShoreのWill Ramosをはじめ、現在エクストリーム・ボーカルを追求している新世代のボーカリストたちが、ジャンルへ新たなリスナーを呼び込んでいるという。

AlexはSuicide Silence、Whitechapel、Carnifexといった先人への敬意も強調している。自身も彼らを聴いて育った一人であり、伝説的なバンドだと認識している。そのうえで、現在のSlaughter To Prevailが販売できるチケット数や集めている観客の規模を考えれば、新世代がエクストリーム・ミュージックの市場そのものを広げることに貢献していると考えている。

2020年に公開された「Demolisher」は、Slaughter To Prevailの人気を大きく押し上げた重要曲として知られ、その後バンドは世界的な規模へと成長していった。さまざまな雑誌、メディアも2025年のアルバム『Grizzly』発売時、Slaughter To Prevailが100万を大きく超えるSpotify月間リスナーを獲得し、大型会場やフェスティバルで大規模な観客を集める存在になったことを紹介している。

Alexの見方では、ヘヴィ・ミュージックの人気には大きな周期がある。80年代や90年代にはメタルが巨大な存在だった。その後、音楽の中心がヒップホップなどへ移っていった時期を経て、現在は再び新世代のヘヴィ・ミュージックが急速に成長している。

そしてSlaughter To Prevailが目指しているのは、これまでアンダーグラウンドに存在していたエクストリームな音楽を、より大きなオーディエンスへ届けることだという。

 

Slaughter To Prevailは「デスコア」という枠を超え始めているのか

Slaughter To Prevailの人気が拡大するにつれて、「デスコア」というジャンル名だけでは彼らを説明しきれなくなっているのではないか、という質問も投げかけられた。しかしAlex本人は、そもそも自分自身を特定のジャンルに属する人間として考えたことがないという。

デスコア、デスメタル、あるいは別の名前で呼ばれても構わない。重要なのは、自分が好きな音楽を作ることだと話している。必要だと思えばクリーンボーカルを曲へ導入することにも抵抗はなく、ジャンルの境界線によって自分たちの表現を制限するつもりはない。

もちろん、結果的に自分自身がデスコア・カルチャーの一員であることは認めている。しかし「このジャンルだから、こうしなければならない」という発想ではなく、音楽的にやりたいことが変われば、それに合わせてSlaughter To Prevailも変化していく。

実際、最新アルバム『Grizzly』では従来の圧倒的なヘヴィネスを軸としながら、楽曲によって異なるアプローチも取り入れている。多くのメディアは同作について、Slaughter To Prevailが現代のヘヴィ・ミュージックを代表する存在へ成長した作品として紹介している。ジャンルの伝統を引き継ぎながら、その境界線には縛られない。この考え方も、Slaughter To Prevailが従来のデスコアより広いリスナー層へ届き始めている理由の一つなのかもしれない。

 

Alex Terribleという人物を「人々は知らない」

インタビューはここから、バンドではなくAlex Terrible個人へと話題を移していく。

強烈な低音ボーカル、全身のタトゥー、マスク、格闘技、SNSで見せる豪快な姿など、Alex Terribleは現在のメタルシーンでも非常に認知度の高い人物となっている。そのため、多くの人はSNSやステージでの姿を通じて、Alex Terribleという人間をすでに知っているように感じている。

「世間があなたについて最も誤解していることは何か」という質問に対して、Alexは「彼らは僕を知らない。個人的な僕のことを知らない」と答えている。彼自身、Alex Terribleという「キャラクター」を演じている部分があることも認めている。

ただし、それが完全な偽物という意味ではない。Instagramで見せるAlexも自分自身ではあり、そのキャラクターを楽しんでいる。しかし、それを自分という人間のすべてだとは考えていない。そこからAlexは、さらに深いアイデンティティの話へ進んでいく。

自分は夫としての役割を演じ、父親としての役割を演じ、息子としての役割を演じ、ステージではAlexとしての役割を演じている。しかし、それらすべてを取り除いたときに「本当の自分とは誰なのか」については、自分自身でもまだ分からないという。知名度の高いミュージシャンとして作られたイメージと、その人物の内面は必ずしも同じではない。Alex Terribleという強烈なキャラクターの裏で、本人もまた自分自身が何者なのかを探し続けていることが明かされた場面だった。

 

名声も金も音楽も、いつか終わる

Alexが現在重要視しているのは、名声そのものではない。インタビューでは、名声、金、音楽、家族、国、価値観など、人間が人生の中で重要だと思っているものも、最終的には永遠には続かないという自身の考えを語っている。

人間はいずれ死ぬ。その事実を前提として、自分の精神、意志、考え方を鍛え、「自分は何者なのか」「何のために生きているのか」を理解しようとしているという。

この考え方は、Slaughter To Prevailの近年の作品にも通じる部分がある。2026年に公開された「Koschei」のミュージックビデオについてAlexは、肉体が消滅したあとにも残る魂や精神、本質とは何なのかというテーマを説明していた。物質的なものに執着しても、それを死後へ持っていくことはできないという考えも語っている。ステージ上では圧倒的な力を誇示するAlex Terribleだが、今回のインタビューでは、その裏側で死や自己の存在について考え続けている一面が強く表れている。

 

Bloodstockのヘッドラインも「まだ始まりにすぎない」

25周年を迎えたBloodstockでヘッドライナーを務めることは、Slaughter To Prevailにとってキャリア上の大きな到達点である。Bloodstock公式でも、2026年8月8日にSlaughter To PrevailがRonnie James Dio Stageへ出演することが発表され、同年の主要ヘッドライナーの一組として位置付けられている。しかし、この巨大な舞台を「マイルストーンだと感じるか」と聞かれたAlexは、「これはただの始まりだと思っている」と答えた。

彼の人生哲学では、大型フェスティバルで演奏することと、家で汚れた服を洗うことの間に、根本的な違いはないという。ステージに立つときも、家族と過ごすときも、飛行機で偶然隣り合わせた知らない人物と話すときも、「これが人生で最後になるかもしれない」と考えて、その瞬間にできることを最大限にやりたい。いつ死ぬかは分からない。だから、どの瞬間も可能な限り完全な形で生きたい。

インタビュアーが「Carpe Diem(今を生きる)のような考え方か」と尋ねると、Alexは「Exactly」と答えている。14歳の頃に「ロックスターになる」と信じてタトゥーを入れ始めた少年は、やがて世界最大級のエクストリーム・メタル・バンドのフロントマンとなり、イギリスを代表する独立系メタルフェスティバルのヘッドライナーへ辿り着いた。それでも本人にとって、そこはゴールではない。

Slaughter To Prevailが現在のデスコアやエクストリーム・メタルをどこまで大きな場所へ連れていくことができるのか。そして、ジャンルの枠そのものを越えてどこまで成長していくのか。Alex Terribleにとって、現在の成功もまだ「始まり」にすぎないようだ。

参照元

Bloodstock TV「💀 ALEX TERRIBLE GETS REAL “PEOPLE DON’T KNOW ME” | BLOODSTOCK 💀」
https://www.youtube.com/watch?v=Pu7-PIHerzY

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