2026年上半期ブルータルデスメタルの名盤13選

2026年の上半期にリリースされたブルータル・デスメタル (中にはテクニカル、プログレッシヴ・デスメタルも含まれます) の中から良かったものをアルバムレビューしました。ぜひ、新しいお気に入りを見つけてください。

RIFF CULTのSpotifyプレイリストでは、毎週新しいデスメタルの新曲、アルバムをピックアップしています。

こちらをフォローして新曲情報をGETしてください : https://lit.link/riffcult-death

 

 

▶︎Ingested 『Denigration』

活動拠点 : Manchester, Greater Manchester, England
結成年 : 2006
レーベル : Metal Blade Records
ジャンル : Slam/Brutal Death Metal/Deathcore
バンドのコンセプト/テーマ : Necrophilia, Gore (early); Murder, Vengeance, Domination (later)

ここ数年のIngestedの作品をレビューするとしたら、デスコアとしてレビューしてきたと記憶している。Metal Blade Recordsと契約してから3枚目のアルバムとなる本作は、近年の『Ashes Lie Still』や『The Tide of Death and Fractured Dreams』で見られたのスケールの大きなアンビエントなスタイルを取り込んだ方向性から離れている。初期、特にUnique Leader Records時代のIngestedが得意としてきた、ブルータル・デスコアへと回帰している。

メタルコア・バンドVarialsのボーカリストであるSkyler Conderをフィーチャーしたオープニングトラック「Dragged Apart」で幕を開けると、心地良く抜けていくスネアのブラストビートが炸裂。シネマティックなアレンジへの挑戦が控えてになったことで、生々しいブルータルでデスメタリックなIngestedの魅力が引き出されている。Varialsもメタルコアの中では非常にヘヴィでダークなスタイルを得意とするバンドであるので、ジャンルの垣根を超えて、共通するスタイルを持つ両者のフィーチャリングは素晴らしいものがある。ヒロイックなギターのソロパートも交えつつ、基本はブルータルだ。

ミュージックビデオになっている「Watch You Fold」はこの作品のスタイルを象徴するものだ。Dying Fetusを彷彿とさせるシンプルなバンガー。デスメタル・ルーツの細工が随所に見られるし、ブルータル・デスコアのノリもたっぷり詰め込まれている。この楽曲だけではないが、Josh Daviesが録音していたヴォーカルをすべて再録して、Sean Hynesと新加入のAndrew Virruetaがヴォーカルを分担したことで、低いガテラルと高音域の攻撃的なヴォーカルを重ねたメリハリのあるハーシュ・ボーカルのレイヤーが展開に迫力を持たせている。これは今後Ingestedの武器になっていくはずだろう。

これを読んでいる方は、どっちのIngestedが好きだろうか。オルタナティヴな感覚を用い、よりモダンでメインストリームへと挑戦するIngestedか、ブルータル・デスコアという言葉が徐々に出てきた頃のブルータルなIngested。どちらも魅力はあるが、ある程度キャリアを築いた彼らがここでブルータルに戻っていくというのが面白いと感じる。

Lineup :

Lyn Jeffs : Drums
*Lyn Jeffsの経歴 : ex-Dark Earth, ex-Nexus Inferis, ex-Vengeance, Mal, ex-Annotations of an Autopsy, ex-Crepitation, ex-Asphyxiated (live), ex-Decapity, ex-Trephined

Sean Hynes : Guitars, Lead Vocals
*Sean Hynesの経歴 : ex-Age of Suffering, ex-Annotations of an Autopsy, ex-Crepitation, ex-Decrepit Womb

Thomas O’Malley : Bass
*Thomas O’Malleyの経歴 : Worm Shepherd, ex-Steel Mage

Andrew Virrueta : Guitars, Lead Vocals
*Andrew Virruetaの経歴 : Interloper, Moon Twin, Pale Torch, Vampire Squid, Entheos (live), The Faceless (live), Brazen Tide, Cries ov Christ, ex-Sea of Skies

Guest / Session :
Skyler Conder : Vocals (track 1)
Damonteal Harris : Vocals (track 2)
John Gallagher : Vocals (track 3)
Kyle Medina : Vocals (track 6)

Other Staff :
Nico Beninato : Producer

Artwork :
Giannis Nakos : Artwork

 

▶︎Stabbing 『Eon of Obscenity』

活動拠点 : Houston, Texas, United States
結成年 : 2020
レーベル : Century Media Records
ジャンル : Brutal Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : Gore, Torture, Murder, Sexual Violence

まさかStabbingがCentury Media Recordsとの契約を勝ち取るとは誰が想像しただろうか。記憶が正しければ、デビューした当時は女性ボーカルが二人いたが、デビュー前にBridget Lynchのみとなっている。

Disgorge/SuffocationのボーカリストRicky Myersがゲストで参加するなど、将来のブルータル・デスメタル・シーンを牽引していく存在としての期待を一身に背負って放たれたこの作品は、現代ブルータル・デスメタルに求められるヘヴィネスと伝統的な美的感覚が見事に融合した作品と言えるだろう。

これまでよりもディープに、そしてヴァラエティ豊かなガテラルを手に入れたLynchのハーシュ・ボーカルの存在感は圧倒的で、うねるリフ、それに絡みついていくベースリフ、そして荒っぽさを残しながらも隙間なく叩き込まれるドラミングのカオスの中であっても、ボーカルでStabbingのサウンドを引っ張っていく力がある。それはSuffocationのファンなら良く分かると思うが、ブルータル・デスメタルでスピードやブレイクダウンに埋没しないボーカルの存在感は非常に重要。

「Ruminations」や「Nauseating Composition」では、Skinlessなどを思わせるニューヨーク・デスメタル的なグルーヴもかなり完成度が高く、アルバムの聞きどころの一つだろう。ライブも意識したモッシャブルなパートも多いのも素晴らしい。前作の可能性を発展させた優れた成長作であり、Stabbingを現代ブルータル・デスメタルの有力バンドとして定着させる作品と評価していいだろう。

Lineup :

Matt Day : Bass
*Matt Dayの経歴 : Architectural Genocide

Aron Hetsko : Drums
*Aron Hetskoの経歴 : The Xebellian Triangle, Aethereus (live), ex-The Crypt Alive, Cuiviénen, Enterprise Earth, ex-Desecation (live), ex-Dessiderium (live), ex-Fallujah (live), ex-Dorzia

Marvin Ruiz : Guitars
*Marvin Ruizの経歴 : Devourment, Myiacyst, Nephilim Grinder, Dysmetria, ex-Nephilim Terror, ex-Desecrate the Faith, ex-Sculpting Atrocity, ex-Venomous Supremacy (live)

Bridget Lynch : Vocals
*Bridget Lynchの経歴 : Pyosisified, Dystopian Reality, ex-Nephilim Grinder, ex-Animals Killing People (live), ex-Suffocation (live)

Guest / Session :
Ricky Myers : Additional Vocals(track 7)

Other Staff :
Ben Gott : Recording
Chris Kritikos : Mixing, Mastering

Artwork :
Rudi Yanto : Artwork

 

▶︎Devourment 『Pious Impiety』 EP


活動拠点 : Dallas, Texas, United States
結成年 : 1995
レーベル : Relapse Records
ジャンル : Slam/Brutal Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : Rape, Misogyny (early); Gore, Torture, Death, Insanity, Society

Devourmentが2019年作『Obscene Majesty』以来となる新作『Pious Impiety』を突如リリース。歓喜したリスナーも多いだろう。この作品の収録曲はわずか3曲だが、その短さを感じさせないほど内容は濃密だ。それを証明するように、Relapse RecordsのYouTubeチャンネルでは、Full EP Performance Videoが公開されており、本作を最初から最後までパフォーマンスするという映像が公開されている。「3曲12分」というサイズ感は、今のDevourmentを感じるのに、非常にピッタリなサイズかもしれない。

低く沈み込むリフ、スネアが転がるようにして叩き込まれるブラストビート、スラムグルーヴ、そしてRuben Rosasによるガテラル・ヴォーカル。彼らの基本的な武器は変わっていない。『Pious Impiety』では、これまでのDevourmentファンが期待する作品であることは間違いなく、現代スラムに向けて「スラミング・ブルータル・デスメタルとはこうである」というものをわかりやすく聴かせてくれる作品として、広く聴かれるべきであると感じる。Relapseからのリリースというのも頷ける。

 

本作で特に重要なのが、ファストなブラストビートと直角にビートダウンして打ち込まれるスラムパートの対比だ。この極端さがデスメタル的な美的感覚で展開される様々なパートと荒っぽさをそのまま残したサウンドプロダクションと相まって、スラミング・ブルータル・デスメタルらしいおどろおどろしさを醸し出している。

「Mortiferous Dependency」は、この特徴が最も分かりやすい楽曲だ。高速パートから粘着質なリフを中心としたミッドテンポへ移行し、さらに速度を落としていく。テンポが遅くなるほど一音ごとの圧力が増し、スラムそのものの破壊力が際立っている。

新たに加わったMarvin Ruizのギターも、本作の重要な要素だ。Stabbingでも活動するRuizは、Devourment本来のスタイルへ自然に溶け込みながら、粘りつくようなチャグと渦巻くチェーンソーリフを巧みにプレイしている。Dave Spencerのベースとの組み合わせも強力で、弦楽器全体が巨大な低音の塊となって楽曲を支えている。また、随所に挿入される鋭いピンチ・ハーモニクスも印象的だ。90年代のブルータル・デスメタルや初期Devourmentとのつながりも感じさせる。

最終曲「Advanced Stage Decomposition」では、スラム、ブラストビート、ハーモニクスを繰り返しながら速度を変化させ、最後まで強度を落とさない。特にスローパートではRosasのヴォーカルと低域のリフが重なり、本作でも屈指の圧迫感を生み出している。

現在のスラム・シーンにはDevourmentから影響を受けたバンドが無数に存在している。それでも『Pious Impiety』を聴けば、Devourmentが単なるパイオニアとして過去を振り返っているわけではないことが分かる。奇抜なギミックに頼らず、アクセルの踏み替え、聴けば分かるロー・ガテラル、ドラムの荒っぽさという、DevourmentがDevourmentたる基本的な要素を突き詰めることで、自分たちのスタイルをさらに深化させている。

Lineup :

Ruben Rosas : Vocals
*Ruben Rosasの経歴 : ex-Detrimental

Marvin Ruiz : Guitars
*Marvin Ruizの経歴 : Nephilim Grinder, Stabbing, ex-Nephilim Terror, ex-Myiacyst, ex-Desecrate the Faith, ex-Dysmetria, ex-Sculpting Atrocity, ex-Venomous Supremacy (live)

Dave Spencer : Bass
*Dave Spencerの経歴 : ex-Meshiha, ex-With Immortality, ex-Antikythera, ex-Her Virgin Womb, ex-Inhumanity, ex-Insatanity, ex-Psychiatric Regurgitation, ex-Rottenness, ex-Knife Cult, ex-Nightfire, ex-Trephination, ex-Protogenoi

Brad Fincher : Drums
*Brad Fincherの経歴 : Murderous, ex-Meshiha, ex-Necrocide

Other Staff :
Daniel Schmuck : Producer, Mixing, Engineering, Mastering

Artwork :
Khaos Diktator : Artwork

 

▶︎Death Vomit 『Thou Shalt Behold』

活動拠点 : Yogyakarta, Indonesia
結成年 : 1995
レーベル : Brutal Mind
ジャンル : Brutal Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : Brutality, Death, Hatred

結成から30年以上が経ち、今ではインドネシアのブルータル・デスメタルの王座に君臨するのがDeath Vomitだ。オリジナルメンバーは¥ドラマーのRoy Agusのみであるが、2003年から20年に渡ってDeath Vomitのソングライティングも手掛けてきたOki Haribowoが2023年からギター/ボーカルへとパートチェンジ。同時に加入した若きベーシストAri Kristionoとのコンビネーションも良く、Death Vomit新章幕開けとなるに相応しいラインナップで制作されている。

Death Vomitは、完全にクラシックなブルータルデスメタルと呼べるほど残虐なわけでもなければ、テクニカル・デスメタルと呼べるほどの技巧派ではないが、そのバランスを上手く取っているのが素晴らしい。派手さはなく、地味と言っていいかもしれないが、そこにはメロディックな面白いリフが隠れていたり、完璧なトーンで表現されていたり、熟練技と言えるグルーヴがある。Roy Agusによるドラムは、ほかの多くのインドネシアのブルータル・デスメタルバンドとは異なり、楽曲全体を支配しすぎることがないのも逆に印象的だ。こういう玄人好みと言える作品に出会い、1曲1曲味わいながら聴くことは、デスメタル・リスナーとして本当に幸せな瞬間だ。このリフが凄いとか、ここのドラミングとガテラルはDeath Vomitしかない、とか。

Lineup :

Oki Haribowo : Guitars, Vocals, Songwriting, Lyrics
*Oki Haribowoの経歴 : ex-Brutal Corpse, ex-Delusive Purity, ex-Venomed, ex-Mortal Scream

Roy Agus : Drums
*Roy Agusの経歴 : Venomed, ex-Devoured, ex-Cranial Incisored

Ari Kristiono : Bass
*Ari Kristionoの経歴 : Delusive Purity, Detritivor

Other Staff :
Devid : Engineering
Indra : Mixing, Mastering
Corna : Photography

Artwork :
Andik : Artwork

 

▶︎Vile Desolation 『Annihilating the Consciousness』

活動拠点 : East Java, Indonesia
結成年 : no data
レーベル : Comatose Music
ジャンル : Brutal Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : no data

デビュー・アルバム。ラインナップを見れば分かるように、それぞれに数多くのプロジェクトを持ち、特にドラマーのRamaはAnthropophagus DepravityやGerogot、Perverationなどでプレイする実力派。先に書いたDeath Vomitのドラミングを彷彿とさせる、派手すぎないがしっかり重くタイトでありつつ、ミニマルなスネアが特徴的だ。

インドネシアン・ブルータル・デスメタルの典例とも言うべきサウンドで、気持ちの良い、転がるようなスネアのブラストビート、メランコリックなメロディをひっそりと組み込みつつ、スラムリフも刻んでいく。

今インドネシアの中で一番良いバンドなのではないだろうか。注目しておきたい。

Lineup :

Hendika Dwi Prasetyo : Bass, Guitars
*Hendika Dwi Prasetyoの経歴 : Death Artery, Devouring Carnage, Disvile, Gorested, Hephaestus, Nematocyst, Putrescent, Reveals, Rhizotomy, Rotten Blood, Spastic, Vertiginous

Rama Maulana : Drums
*Rama Maulanaの経歴 : Abhorrently, Anthropophagus Depravity, Discarnage, Gerogot, Invigorate, Multiwomb, Perveration, Restlessly, Scattered Disease, Vitrectomy, ex-Depraved Murder, ex-Criminal Impact (live)

Yudha Dwi Setyawan : Vocals
*Yudha Dwi Setyawanの経歴 : Gory, Maggoth, Necrotic Catastrophism, Restlessly

Artwork :
Bvllmetalart : Artwork

 

▶︎Ecchymosis 『Thanatocorporeal Sculptures of Cryogenic Excruciation』

活動拠点 : Bangkok, Thailand
結成年 : 2014
レーベル : New Standard Elite
ジャンル : Brutal Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : Gore, Sickness, Pathology

タイ・バンコクを拠点とするEcchymosisによる3作目のフルアルバム。アルバムのコンセプトは、遠隔地の凍てついた荒野で行われる非人道的な凍結拷問。この拷問によって肉体と意識が徐々に崩壊していく過程を通じた絶対的な支配、理性を超えた苦痛への耐久、人間的価値の完全な剥奪を表現している。Guang Yangによるカバー・アートは秀逸だ。

Ecchumosisは最初の来日をRIFF CULTで行ったこともあり、バンドスタートからメンバーの持つ数多くのプロジェクトも含めてずっと追いかけてきた。ブラスティング・スタイルをエクストリームに追求し、スピード超過のあまりもはやハーシュノイズウォールに接近していく様は本当に素晴らしい。メンバーもノイズは好きだったと話していた記憶がある。

全体的に非常に暗く、ほとんどメロディがない。また、スラミング・ブルータル・デスメタルにほとんど接近しない (もちろんスラムに近いリフはあるものの、全体感からは感じられない) 。2026年にそれを意図しないことは難しいだろう。Ecchymosisのプライドが感じられる。

Lineup :

Polwach Beokhaimook : Drums
*Polwach Beokhaimookの経歴 : ๛, A Good Day for Killing, Biomorphic Engulfment, Cadavoracity, Genocidal Sodomy, Sewage, Smallpox Aroma, Urged, Arboreal, Audduekhon Ausswad, Chamber of Tapeworms, Corporal Stains, Cystgurgle, Epiploenterocele Pusliquid Wormchunk, Fermenting Gastroduodenoblennorrhagous Waste, Gonococcus, Polwach Beokhaimook, Red Tiles, Unsignified Death, ex-Theurgy, ex-Fecal Sac, ex-Parasitic Infestation, ex-Shark Pussy Shock, ex-Vomitoma

Twish Kulsu : Guitars
*Twish Kulsuの経歴 : Atheism, Masochist, Pathological Sadism, Savage Deity, Skewer, Torturation, Chainfight, Cystgurgle, Inequality, ST89, ex-Nocturnal Damnation (live), ex-Lack of Insight

Weerasak Kitthammapirak : Vocals
*Weerasak Kitthammapirakの経歴 : Bodysnatch, Skewer, Splattered Orgasm, ex-Masochist, ex-Villainous

Wasumit Wongwai : Bass
*Wasumit Wongwaiの経歴 : Deviated, Intricated, ex-Dismal Dissonancy, ex-Splattered Orgasm

Jeeraset Paemongkol : Guitars
*Jeeraset Paemongkolの経歴 : Intricated, Skewer, Splattered Orgasm, Chainfight, ST89, ex-Shark Pussy Shock, ex-Failure Trace of Human Race (live)

 

▶︎Eximperituserqethhzebibšiptugakkathšulweliarzaxułum 『Meritoriousness of Equanimity』

活動拠点 : Minsk, Belarus
結成年 : 2009
レーベル : Willowtip Records
ジャンル : Brutal/Technical Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : Sumerian/Babylonian mysticism, Occultism, Anti-Cosmic, Annihilation, Death

ベラルーシのバンド、通称Eximperitusの3枚目となるフルアルバム。デビュー当時は長すぎるバンド名だけが注目を集めたが、アルバムを1枚、また1枚と発表し続け、Eximperitusらしさとその挑戦について、リスナーも向き合うことが出来ているように感じる。Willowtip Recordsからのリリースというところからも分かるように、いわゆるブラストビートやチェーンソーリフのスピード・コンペティションではなく、テクニカル/プログレッシヴ・デスメタル寄りの作品である。

前作『Šahrartu』で進めた洗練と実験性はそのままに、中東音楽のようなオリエンタルなメロディさらに芳醇に燻らせている本作は、ダブル・ハーモニック・スケールやアラビア音階的なフレーズが全編に渡って繰り広げられており、古代文明、砂漠、神秘主義を連想させる異世界的な雰囲気を作り出している。これはだんだん明確になってきたEximperitusの魅力で、彼らがベラルーシという国を拠点としていること、Nileに比べ、そのオリエンタルなアトモスフィアは暗く、神秘的で、暗い。

「Golden Chains for the Construction of Individual Greatness」はここでレビューするべき、アルバムの中でもファストでブルータル・デスメタルなリード曲だ。よれながら、なんとか爪弾かれるかのようなエクスペリメンタルなギターのメロディの脆さ、儚さは、砂漠の砂が風に舞い、時折小さな竜巻を起こしながら、消え去っていくかのようである。

Eximperitusにはその名前の特異さによって、すでにリスナーの中では特筆すべき点のない、一発屋バンドのような固定概念を持つ人がたくさんいるはずだが、アルバムの完成度と独自性で言えば、これほど面白いバンドはなかなかいないのではないだろうか。頭から最後までぜひ向き合って聴いてみてほしい。

Lineup :

Sergey Liakh : Guitars, Songwriting
*Sergey Liakhの経歴 : Dispersed, Relics of Humanity, ex-Ominous Scriptures

Paweł Nałęcki : Vocals, Lyrics
*Paweł Nałęckiの経歴 : ex-Ominous Scriptures, ex-Relics of Humanity (live)

Guest / Session :
Davide Billia : Drums

 

▶︎Party Cannon 『Subjected to a Partying』 [EP]


活動拠点 : Dunfermline, Fife, Scotland
結成年 : 2010
レーベル : Unique Leader Records
ジャンル : Slam/Brutal Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : Sociopolitical, Gore, Movies, Humour, Partying

Party Cannonの新作EP『Subjected to a Partying』は、彼らがこれまで築いてきたスラミング・デス/ブルータル・デスメタル/ゴアグラインドのスタイルを軸にしながら、より実験的な方向へ踏み込んだ一作だ。作品は4曲の新曲、3曲のリミックス、2025年にグラスゴーで録音されたライブ音源2曲という、かなり変則的な構成になっている。

まず前半の新曲4曲では、Party Cannonらしいライブの盛り上がりを意識した、ブルータル・デスメタル+ゴアグラインド、そして悪趣味なユーモアがたっぷりと込められている。

本作から加入したDaryl Boyceのヴォーカルは、ローガテラルやグロウルだけでなく、ピッグスクイールや発狂した奇声のようなものまでを次々と使い分け、Party Cannonの面白さの一つとして存在感を示している。Party Cannonの音楽には以前からコミカルな要素が多いが、演奏そのものは決してふざけているわけではない。そのギャップが、このバンド特有の個性につながっていると言えるだろう。

「Thirst Trap」は、さらに混沌とした方向へ進む。スラムを中心としながら、グラインド/デス的な荒々しさも感じられ、ヴォーカルのピッグスクイールも含めて、4曲の中でも特に攻撃性の強い楽曲となっている。

「Improper Use of a Speculum」は、新曲の中では比較的長め。鋭いハーモニクスや一度演奏を止めるような間、そこから再びスラムへ突入する展開など、ライブで観客の反応を引き出すことを意識していて、ライブで見てみたいと思える仕上がりだ。

そして本作最大の面白さが、後半に収録された3曲のリミックスだ。

Kmac2021による「Thirst Trap」のリミックスでは、原曲のブルータル・デスメタル的な姿はほとんど消え、テクノやドラムンベース、エレクトロ・インダストリアルに近いトラックへと変貌している。さらにFrontierによるリミックスではトラップ的なアプローチが取られ、「High Tariff Overture」ではRitualによってオーケストラ/クラシック的な方向へ大胆に再構築されている。Kmac2021もFrontierも、メタル、特にヘヴィでエクスペリメンタルなものが好きなリスナーであれば、一度は耳にしたことがあるミュージシャンだ。Party Cannonが彼らと共に、このようなリミックスを作成していることが重要であって、正直その出来は、今年の1曲というようなものに選ばれるものではないと思う。ただ、Party Cannonがブルータル・デスメタルという、デスメタルの中でも特殊なジャンルの中にいて、これまでどれだけバズってきたか、目立ってきたか、ブルータル・デスメタルというジャンルにおいて、それをメタルシーンのメジャーどころに見せつけてきた力というのは、こういう人選にもある。本当にそこには、この音楽に対する愛があると感じる。

Party Cannonは以前から、音楽だけでなくロゴ、アートワーク、楽曲タイトル、サンプルなどを含めてスラムというジャンルを独自のユーモアで扱ってきた。本作のリミックスも、その姿勢をさらに極端な形で押し進めたものと考えることができる。

最後に収録された「High Tariff Behaviour」と「Human Slime」のライブ音源では、再び本来のParty Cannonへ戻る。

特に「High Tariff Behaviour」はスタジオ音源以上にライブとの相性が良く、スラムに入った瞬間の観客の反応からも、このバンドの音楽がモッシュピットを前提として作られていることが伝わってくる。Daryl Boyceの観客を煽る能力も含め、バンドのライブ・パフォーマンスの強さがよく分かる2曲だ。

Devourment『Molesting the Decapitated』を意識したカバー・アートを含め、スラムというジャンルの歴史への愛情を見せながら、それをそのまま模倣するのではなく、自分たちなりのユーモアと過剰さで作り替えている点もParty Cannonらしい。一つの作品としての構成はめちゃくちゃだけど、Party Cannonだから特におかしいとも思わない。

Lineup :

Chris Ryan : Bass
*Chris Ryanの経歴 : Gastroschisis, Iniquitous Savagery, Laceration, Liquefied Remains, ex-Psychoanalysis, Order of Extinction, Uxoricide, ex-Gendo Ikari, ex-Hard Stare (live), ex-Freedom Fist (live)

Craig Robinson : Guitars (lead)
*Craig Robinsonの経歴 : ex-Disfigure the Insane, ex-Lycanthoropy

Martin Gazur : Drums
*Martin Gazurの経歴 : ex-Stabwound, ex-Burning the Dream, ex-Deminishion

Mike McLaughlin : Guitars (rhythm)
*Mike McLaughlinの経歴 : ex-Agonised Deformity

Daryl Boyce : Vocals
*Daryl Boyceの経歴 : Scordatura, ex-Repulsive Vision, ex-Cancerous Womb (live)

Other Staff :
Kmac2021 : Remix (track 5)

Artwork :
Guzik Art : Artwork

▶︎Gibbeting 『Execution Rampage』

活動拠点 : Argentina / Switzerland / Estonia / Netherlands
結成年 : 2025
レーベル : Pathologically Explicit Recordings
ジャンル : Brutal Death Metal/Goregrind
バンドのコンセプト/テーマ : Medieval torture, Gore, History

アルゼンチン、スイス、エストニア、オランダ在住のメンバーからなる多国籍ブルータル・デスメタル・バンド、Gibbetingの新作は、古代から中世に行われた処刑や拷問を題材したアルバムで、まさしくBrodequinファンにおすすめの作品である。Brodequinをブラスティング・ブルータル・デスメタルとカテゴライズするならば、Gibbetingはブラスティング・スラミング/ゴアグルーヴ・ブルータル・デスメタルとでも言おうか。これまでありそうでなかった、ブラスティングの上でスラムリフ/ゴアグルーヴを走らせるバンドだ。

一斗缶と聴き間違えるほどのハイピッチなピンスネアの強烈なブラストビート (ドラムプログラミングではあるがクオリティは非常に高い) は全編に渡って貫かれているが、そのバックで繰り広げられているブルータル・サウンドは、スラムリフ、ゴアグルーヴと多彩で面白い。ギタリストが曲を書いて、狂ったドラマーがその上で限りなく限界に近いレベルでブラストビートをぶち込んだサウンドは、全14曲、約27分と短いアルバムでありながら、満足感がある。

Lineup :

Aivar Keermann : Bass
*Aivar Keermannの経歴 : Hebephrenia, Hymenotomy, Molecular Fragmentation, Swag Fight, Vomitrocious, ex-Mortophilia, ex-Baalsebub

Livio Wellinger : Drum programming
*Livio Wellingerの経歴 : Bodysnatch, Corpseification, Debilitated, Delirious Compulsion, Deprecatory, Folterknecht, Secret Mutilation, Septizin, Slamentation, Swag Fight, Vomitrocious, ex-Corpus Domini, Mephitic Torso, ex-Awaken the Misogynist

Floor van Kuijk : Guitars
*Floor van Kuijkの経歴 : Acidwound, Carnifloor, Engulfed in Repugnance, Focal Dystonia, FxOxExS, Korpse, Malicious Combat, Scorbutus, Sijjeel, ex-Dark Reign, ex-RÁN, ex-Ungraceful, ex-Fermented Masturbation, ex-Cannibal Camel, ex-Odiado

Aníbal Rodríguez : Vocals
*Aníbal Rodríguezの経歴 : Infectious Algorithm, Into the Ashes, Sentencia de Odio, ex-Municion, ex-Spiritual Kaos

Artwork :
José Antonio Vives : Artwork

 

▶︎Despoilment 『Vindicated Retaliation』

活動拠点 : Tokyo, Japan
結成年 : 2019
レーベル : New Standard Elite
ジャンル : Brutal Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : no data

Hostile Eyes、StrangulationのメンバーらによるDespoilmentのデビュー作。Despoilmentは、2016年、StraingulationのTomonoriと同じ大学に通っていたTomohisaが立ち上げたバンドで、1st Demoののち、Hostile EyesのKonashiが参加し、トリオ体制となった。

ニューヨーク・ブルータル・デスメタルにあるアグレッシヴでバンガーなリフと、マシーンのように正確にそして力強いドラミング、加えて血液が沸騰しているようなガテラルの凄まじいコンビネーションがDespoilmentの聴きどころだ。一目でGuang Yangと分かるアートワークも秀逸だ。

Lineup :
Tomohisa : Vocals

Konashi : Drums
*Konashiの経歴 : Hostile Eyes, ex-Urobilinemia

Tomonori : Guitars, Bass, Vocals
*Tomonoriの経歴 : Deviated, Dismal Dissonancy, Strangulation

Artwork :
Guang Yang : Artwork

 

▶︎Torsofuck 『Erotic Diarrhea Fantasy + As Semen Blends To Rot』

活動拠点 : Harjavalta, Satakunta, Finland(初期); Espoo, Uusimaa, Finland(後期)
結成年 : 1995
レーベル : New Standard Elite
ジャンル : Slam/Brutal Death Metal/Goregrind
バンドのコンセプト/テーマ : Gore, Perversion, Misogyny, Necrophilia, Zoophilia, Sick humour

2009年に活動休止してから2022年に復活したゴアグラインド・マスターTorsofuck。この復活はシーンに大きな衝撃をもたらしたはずだ。強烈なジャケでお馴染みの代表作『Erotic Diarrhea Fantasy』は当時プログラミングドラムで制作されたゴアグラインドの名作のひとつで、「内容は覚えていないがジャケットは忘れることが出来ない」という人は多いかもしれない。本作はその再録で、オリジナルはプログラミングされたドラムであったが、生ドラムで再びレコーディングされている。しかもドラマーとしてラインナップに追加されたのは、このバンドの首謀者であるMikko Fribergの息子であるMiroだ。

中心メンバーであり続けてきたMikko Fribergがギター/ボーカルを担当し、Miroがドラム。そしてMiroとともにいくつかバンドをやっているベーシストTarmo Ahoが加入しトリオ体制で再び動き出している。親子でゴアグラインド/ブルータル・デスメタルとは驚きだ。

昨今のNew Standard Eliteサウンドとも言えるブラスティング・ブルータル・デスメタルとしての迫力があるこの作品は、ゴアグラインド・リスナーはもちろん、ダークでカオスなブルータル・デスメタルが好きならおすすめだ。ここ数年はライブ活動も精力的で、幾つもライブビデオがアップされているのでチェックしてみてほしい。

Lineup :

Mikko Friberg : Vocals, Guitars
*Mikko Fribergの経歴 : Limbless, Torso, ex-Eruption, ex-Putrefaction

Miro Friberg : Drums
*Miro Fribergの経歴 : Limbless

Tarmo Aho : Bass
*Tarmo Ahoの経歴 : Limbless, Vasari

Other Staff :
RD Audio : Mixing, Mastering
Kimmo Tyni : Recording

Artwork :
Jon Zig : Artwork

 

▶︎Mastication of Brutality Uncontrolled 『The Epoch of Anthropogenic Deities』

活動拠点 : Aschaffenburg, Bavaria, Germany
結成年 : 2007
レーベル : Show No Mercy Records
ジャンル : Technical Slam/Brutal Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : Apocalypse, Misanthropy, Science fiction, Humanity, War

下に書いてあるメンバーラインナップを見ると分かるように、メンバーは皆Despondencyに在籍しており、DespondencyではRemo Hoffmanがドラムをやっていて、Mastication Of Brutality UncontrolledではFlorianがドラム/ギターを担当している。Florian以外のメンバーが総入れ替えとなり現体制となっているが、まさか全員Despondencyからとは驚き。

前作『Preemptive Space Warfare』と聴き比べると、Sci-fiコンセプトはそれほど強くないが、テクニカルなフレーズからスラムパートへと直角に転調するスタイルは誇示している。おどろおどろしさや荒っぽさはそのままに、Florianのドラミングも良い意味で譜面通りではない強弱やよれが味わい深い。最も強烈なのは、Kieren Allanのベースで、随所に差し込まれるハーモニクスや弦を千切るほどの不協和音のタッピングなど、とても面白い。これを聴くためだけにアルバムを聴いても良いと思えるほどだ。

前振りなしで突如やってくるスラムパートの嵐は、聴き込むたびに味わい深くなるはず。

Lineup :

Florian Mayer : Drums, Guitars
*Florian Mayerの経歴 : Despondency, Omegavortex, Contra Omnes, Exterminate Mankind, ex-Blood Vengeance, ex-Incesticide, ex-Honey, I Kill You (live), ex-Cervet, ex-Provocation

Kieren Allan : Bass
*Kieren Allanの経歴 : Despondency, Imperial Execration, ex-Amputated, ex-Anoxide, ex-Basement Torture Killings, ex-Bloodshot Dawn, ex-Carnivore Diprosopus, ex-Goreinhaled, ex-Crepitation (live)

Eduardo Camargo : Guitars
*Eduardo Camargoの経歴 : Decarabion, Despondency, Imperial Execration, Molested Divinity, ex-Ataud, ex-Carnivore Diprosopus, ex-Goreinhaled, ex-Relics of Humanity

Konstantin Lühring : Vocals
*Konstantin Lühringの経歴 : Despondency, Resection, ex-Defeated Sanity, ex-Funeral Procession, ex-Gallery of Darkness, ex-Precognitive Holocaust Annotations, ex-Revulsed

Artwork :
Sheila Franco : Cover Art

 

▶︎Delirious Compulsion 『Erratum of Dysphoria』

活動拠点 : United Kingdom / United States / Czechia / Switzerland
結成年 : 2024
レーベル : Pathologically Explicit Recordings
ジャンル : Technical/Brutal Death Metal
バンドのコンセプト/テーマ : no data

ブルータル・デスメタル・プログラミング・ドラマーの中でも多くのプロジェクトを持つLivio Wellingerやチェコ在住の弱冠19歳で数々のブルータル・デスメタル・プロジェクトを立ち上げているFilip Rybaなど、それぞれに本当に多くのプロジェクト、バンドを持っている彼らのデビューアルバム。

世界中どこにいても、年齢、国籍関係なくブルータル・デスメタルはバンドが出来るし、クオリティも年々高まってきている。彼らが音楽で生計を立てているかは分からないが、趣味としてバンドを20個やって、毎年3枚も4枚もアルバムを出しているとなると、かなり充実した音楽人生ではないかと思う。もはや、たくさんバンドに在籍している、してきたことがこのシーンにおいてステータスみたいなものはある。立ち上がっては止まり、数十年後にもう一度集まってアルバムを作る…。これもまた最高のミュージシャン・ライフだと思う。

Livioのプログラミングするドラムは、時々完全にプログラミングの音がするのが良い。硬めな音質もテクニカルなプレイによく合っているし、Dakota Riveraの深いガテラル、グロウルが、作品の残虐性を支える大きな要素となっている。Joe Mortimerのベースもミックスの中で比較的聴き取りやすく、ギターやドラムとは異なるローの効いたもので、奇怪な動きを加えている。最後まで楽しく聴ける一枚。

Lineup :

Joe Mortimer : Bass
*Joe Mortimerの経歴 : Awaken the Misogynist, Bodysnatch, Chronicynic, Corpseification, Crepitation, Deprecatory, Fisted, Gorpulent, Pithy, Septizin, Colpocleisis, Eye-Gouge, ex-Cancerous Womb, ex-Neuroma, ex-Sadistic Undertorture, ex-Ogun, ex-Corrupt Moral Altar (live), ex-Exhumation (live), ex-Impurist (live), ex-Turin (live), ex-Splattered (live), ex-Kastrated (live), ex-Intravenous Contamination (live), ex-The Gribble Report

Livio Wellinger : Drum programming
*Livio Wellingerの経歴 : Deprecatory, Folterknecht, Gibbeting, Mephitic Torso, Secret Mutilation

Filip Ryba : Guitars
*Filip Rybaの経歴 : Arcanat, Blood Nature, Carcass Rapist, Debilitated, Foul Deformation

Dakota Rivera : Vocals
*Dakota Riveraの経歴 : Abducted and Brutalized, Bitchsectomy, Blood Nature, Carcass Rapist, Crypt Ripper, Debilitated, Goremaculate, Hellthorne, Intracranial Bludgeoning, Putrified Degradation, Sadistic Butchering, Suntold, Inherit Obscurity, Spectral Phlegmesis, Torturous, ex-A Scarlet Gospel, ex-Forged in Gore, ex-Inanimate Prognosis, ex-Vomitrocious

Guest / Session :
Corey Athos : Vocals (track 3)
Aníbal Rodríguez : Vocals (track 6)
A.V. : Vocals (track 8)

Other Staff :
Filip Ryba : Mixing, Mastering
Tom Dring : Re-amping

Artwork :
Tony Koehl : Artwork

 

 

▶︎そのほか2026年上半期にリリースされたアルバム/EP

Vomit Forth – In the Name of the Father [EP]
活動拠点 : Pittsfield, Massachusetts, United States
結成年 : 2018
レーベル : Pure Noise Records

 

Bayonet Dismemberment – Skull Crushed by a Tank [EP]
活動拠点 : Vancouver, British Columbia, Canada
結成年 : no data
レーベル : Unsigned/independent

 

Dysmorfectomy – Black Hole of Intertwined Corpses
活動拠点 : Carhaix-Plouguer, Brittany, France
結成年 : 2015
レーベル : Amputated Vein Records

 

Acranius – Whiteout
活動拠点 : Rostock, Mecklenburg-Vorpommern, Germany
結成年 : 2009
レーベル : Rising Nemesis Records

 

Corpse Maggot Crew – Family Neighbourhood [EP]
活動拠点 : Perth, Western Australia, Australia
結成年 : 2021
レーベル : Unsigned/independent

 

Subjugated – Inherent Belligerence
活動拠点 : Bilbao, Basque Country, Spain
結成年 : no data
レーベル : Amputated Vein Records

 

Desecation – Despoiled Ethereal Purity
活動拠点 : San Diego, California, United States
結成年 : 2020
レーベル : New Standard Elite

 

Acid Ingestion – Hallucinatory Homicidal Compulsions
活動拠点 : Rockford, Illinois, United States
結成年 : 2025
レーベル : Unsigned/independent

 

Necrobutcher – Establishment and Inauguration Ceremony
活動拠点 : Kediri, Java, Indonesia
結成年 : 2010
レーベル : Pathologically Explicit Recordings

 

Priapism – Ascending to the Vortex of the Dead
活動拠点 : Lanzarote-Córdoba, Spain
結成年 : 2003
レーベル : Pathologically Explicit Recordings

 

Visceral Explosion – Altar of Asphyxiated Existence [EP]
活動拠点 : South Korea
結成年 : 2020
レーベル : Brutal Mind

 

Purulence – Resurrected in Agony [EP]
活動拠点 : Wigan, Greater Manchester, England
結成年 : 2010
レーベル : Reality Fade Records

 

Open Flesh Wound – Through the Septic Cavity [EP]
活動拠点 : York, Pennsylvania, United States
結成年 : 2022
レーベル : Inherited Suffering Records

 

Fear the Dark – Inherited Suffering [EP]
活動拠点 : Saint Paul, Minnesota, United States
結成年 : 2024
レーベル : Maggot Stomp

 

Gaffed – Thinning the Herd [EP]
活動拠点 : Brick, New Jersey, United States
結成年 : 1994
レーベル : CDN Records

 

Regurgitation Excrement – One Percent Bloody Awareness [EP]
活動拠点 : Ukraine
結成年 : 2023
レーベル : SBDC Records

 

Submerged – Resurfacing Nautical Ruin [EP]
活動拠点 : San Diego, California, United States
結成年 : 2023
レーベル : New Standard Elite

ブルータルデスメタル&テクニカルデスメタル 2025年の名盤

デスメタルの新曲、新譜はぜひRIFF CULTのプレイリスト「New Death Metal 2026」でチェックしてください!毎週大量の新曲を追加、簡単に今のデスメタルを知ることが出来ます。

▶︎Cryptopsy 『An Insatiable Violence』

Release Date: 2025年8月20日
Label: Victor / Season of Mist

Member Line-Up:
Flo Mounier – Drums
Christian Donaldson – Guitars
Matt McGachy – Vocals
Olivier Pinard – Bass

カナダ・モントリオールを拠点に活動するCryptopsyによるフルレングス作品。前作『As Gomorrah Burns』(2023年)からおよそ2年ぶりとなる本作は、Victor(日本盤)およびSeason of Mistからリリースされた。Nuclear Blast Recordsから移籍、わずか2年の間に制作された本作は、ギタリストのChristian Donaldsonがプロデュースからレコーディング、ミックス/マスタリングまでを手掛けている。近年浮き彫りになってきたCryptopsyの魅力は、テクニカルなスピードに埋没しそうでしないグラインディング・グルーヴだ。それらは時にカオスに響くが、本作ではブラックメタルの美的感覚が用いられており、スタイリッシュにまとまっていると感じる。爆発力抜群のブレイクダウン、FloらしいブラストビートなどこれまでのCryptopsyらしさももちろん健在。

 

▶︎Cytotoxin 『Biographyte』


Release Date: 2025年4月11日
Label: Blood Blast Distribution

Member Line-Up:
V. T. – Bass
Fonzo – Guitars
Grimo – Vocals
Jason – Guitars
Maximilian Panzer – Drums

ドイツ・ザクセン州ケムニッツを拠点に活動するCytotoxinによるフルレングス作品。前作『Nuklearth』(2020年)からおよそ5年ぶりとなる本作は、Blood Blast Distributionからリリースされた。結成以来5枚目となるアルバムであるが、一貫して原子力事故をテーマにした作品、そしてステージで独自の存在感を見せつけてきたCytotoxin。テクニカル・デスメタルとして語られることが多い彼らであるが、今年はテクニカル・デスメタル単独のレビューページは設けずに、ブルータル・デスメタルの中でレビューしていこうと思う (Cryptopsyも同様)。ミュージックビデオになっている「Condemnesia」がこの作品全体感を概ね表現しているといっていいだろう。Obsculaを彷彿とさせるプログレッシヴなタッピング、ギターソロを交えつつ、ダイナミックでフックの効いたリフ。どちらともの間をとったサウンドについて味気ないと感じるリスナーも一定数いるとは思うが、コンセプトを持つバンドとしては全体の世界観を意識した作りとして完璧だと思う。

 

▶︎Putridity 『Morbid Ataraxia』

Release Date: 2025年6月27日
Label: Willowtip Records

Member Line-Up:
Putrid Ciccio – Guitars, Vocals (2005–present)
Cédric Malebolgia – Drums (2018–present)
Giancarlo Mendo – Bass (2022–present)
Manuel “Skizo” Lucchini – Guitars (2022–present)
Andrea Piro – Vocals (2022–present)

イタリア・ピエモンテ州イヴレーアを拠点に活動するPutridityによるフルレングス作品。前作『Ignominious Atonement』(2015年)からおよそ10年ぶりとなる本作は、Willowtip Recordsからリリースされた。10年前に在籍していたのはギタリストのPutrid Ciccioのみ。残りのメンバーは本作がPutridityとして初めてのアルバムリリースとなる。個人的にはMolested DivinityのCédric Malebolgiaが加入したことは素晴らしいと思ったし、アルバムを聴いてみて本当にぴったりの人選だと感じた。どれだけのフレーズが一つの楽曲で展開しているのか、数えることも出来ないほど目まぐるしい転調。絶対にアクセルを踏み外さないといった気概すら溢れる楽曲がずらりと並び、最初から最後まで圧倒される。

 

▶︎Anatomize 『Systematic Torture』


Release Date: 2025年5月16日
Label: New Standard Elite

Member Line-Up:
Logan Crum – Bass
Jackson Dekle – Guitars
Jake Roll – Drums
Ian Bagchi – Guitars
Nolan Evans – Vocals

アメリカ・オハイオ州コロンバスを拠点に活動するAnatomizeによるデビューEP。2025年5月16日にNew Standard Eliteからリリースされた。15歳〜17歳のメンバーで構成されるAnatomize、PeelingFleshをはじめでスコアやハードコア、ヒップホップと上手く結びついてきた現代スラムではなく、New Standard Eliteに代表されるようなブラスティング・ブルータル・デスメタルをプレイすること時代が素晴らしい。彼らの存在は間違いなくシーンの強烈なインパクトを与えるし、スラムに特化したシーンでも負けないブレイクダウンの力強さは持っている。タイトル曲ではSanguisugaboggをフィーチャー、バンドはSpecial ThanksにAnhedonia, Tomb Sentinel, Suffering, Dyskinesia, Inveracity, Disconformity, Voracious Contempt, Jimmy H. Doolittle, Suspectum, Shackled By Lust, Emasculatorの名前を挙げている。アメリカはいろんなジャンルが一気にリバイバル気味、ブルデスは彼らが引っ張っていくかもしれない。

 

▶︎ Bludgeoned by Deformity 『Epoch of Immorality』


Release Date: 2025年6月6日
Label: Iron Fortress Records

Member Line-Up:
Devin Swank – Vocals
Bradon Studebaker – Guitars
Andre Pickens – Guitars
Ethan Buttery – Bass
Adam Jarvis – Drums

アメリカ・(コロンバス/ボルチモア/アトランタ)を拠点に活動するBludgeoned by DeformityによるデビューEP。Iron Fortress Recordsからリリースされた。SanguisugaboggのDevin、Devinと一緒にImmortal Tormentで活動するBrandon、ハードコア・バンドJivebombのベースEthan、 Lock Up, Misery Index, Pig Destroyer, Scourのメンバーとして知られるドラマーAdamが在籍しているバンドであればそのサウンドが凄まじいことになっているのは聴かなくても分かる。特に面白いのはJivebombのメンバーがいることで、そのチョイスもSanguisugaboggぽい。ビートダウン・ハードコアであるとも言えるし、デスメタルであるとも言える。その間の感覚というのが非常に面白く、シーンを繋ぐトレンドでもあると言えるだろう。「Intestinal Suspension (Feat. Kat Madeira of Jivebomb)」のパーカッション的な音使いやKatのフィーチャリング・ボーカルも斬新。デビューEPから知れて良かったと思える。

 

▶︎Byonoisegenerator 『Subnormal Dives』

Release Date: 2025年6月13日
Label: Transcending Obscurity Records

Member Line-Up:
NOx – Drums
Tim – Vocals
Sh3la – Saxophone
M1t – Bass
HaL° – Guitars

ロシア・ペルミ地方を拠点に活動するByoNoiseGeneratorによるフルレングス作品。本作は2025年6月13日にTranscending Obscurity Recordsからリリースされた。2018年の前作『Neuromechanica』は今でも衝撃に残っており、ブルータル・デスメタルとジャズを完璧に融合させた作品として、コアなリスナーから評価されてきた。ジャズ側からの視点については不明であるが、ブルータル・デスメタルの激烈な転調、ストップ&ゴーをサックスがスタイリッシュに仕立ててくれる。時にそれはハッキリとデスメタルからジャズへと切り替わる為、いったい何を聴いているのか混乱してしまう瞬間も多い。さらに彼らはゴアグラインドやマスコアといった周辺のマイクロジャンルも巧みに飲み込み吐き出していく。ブルータル・デスメタルからジャズ、さらにはRuins、高円寺百景、BAZOOKA JOEといったプログレッシヴ・ハードコアへも繋がっていく快作。これは、他の誰にも作れない、完全オリジナル・サウンド。

 

▶︎Unmerciful 『Devouring Darkness』

Release Date: 2025年5月23日
Label: Willowtip Records

Member Line-Up:
Clint Appelhanz – Guitars, Bass
Jeremy Turner – Guitars, Bass
Trynt Kelly – Drums
Josh Riley – Vocals

アメリカ・カンザス州トピカを拠点に活動するUnmercifulによるフルレングス作品。前作『Wrath Encompassed』(2020年)からおよそ5年ぶりとなる本作は、Willowtip Recordsからリリースされた。元OriginコンピであるClintとJeremyのバンドであり、そのサウンドはOriginと瓜二つ。さらに本作にはOriginの名曲「Vomit You Out」のカバーがアルバムの中盤に収録されている。この2バンドの関係について何か問題があるのではと思っていたので、このようにカバーが収録されているということは人間関係に何かしがらみがあるというわけではなく、互いにやりたいこと、そしてそのペースが違うということなのかもしれない。Originはこのサウンドでは珍しいほどツアーを行なっているバンドであるし、サウンド以外の面で活動方針が違うのかもしれない (あくまで個人的な推測です) 。本作では2019年に加入したボーカルJosh Rileyにとって初めてのアルバムで、控えめな印象ではあるがローの効いたガテラルでUnmercifulサウンドを下支えしてくれている。Originはドラミング、Unmercifulはリフワークがそれぞれ凝っていて、瓜二つのサウンドでも注意深く聴いてみると全く違って聴こえてくる。「Unnatural Ferocity」のリフは地味に聴こえるが、結構面白いと思う。

 

▶︎Relics Of Humanity 『Absolute Dismal Domain』


Release Date: 2025年4月4日
Label: Willowtip Records

Member Line-Up:
Aliaksei Kurbatov – Vocals
Alexey Kaminsky – Guitars
Jens Johansson – Bass
Bryan Frazier – Drums

ベラルーシ・ミンスクを拠点に活動するRelics Of Humanityによるフルレングス作品。前作『Ominously Reigning upon the Intangible』(2014年)からおよそ11年ぶりとなるフルアルバムは、Willowtip Recordsからリリースされた。2019年にEP『Obscuration』をリリースしたり、シングルリリースもあったりとそこまで久しぶりの作品という気がしないが、アルバムはここまで間が空いていた。アルバムアートワークが非常にシンプルだが、一目でJon Zigとわかる。Relics Of Humanityの魅力はかなり特殊で、簡単に言えばドゥーミーさが他と全く違う。アートワークの暗さ、派手な装飾のないサウンドプロダクション、遅さの中に速さを感じさせる職人芸はロシアやベラルーシのバンドらしいとも感じる。Willowtipの芸術派プログレッシヴ、エクスペリメンタル・サウンドが好きに確実に刺さるサウンドだと思う。

 

▶︎Bloodtruth 『Execration』

Release Date: 2025年11月18日
Label: Selfmadegod Records

Member Line-Up:
Stefano Rossi Ciucci – Guitars
Riccardo Rogari – Bass
Giacomo Torti – Drums
Luis Maggio – Vocals
Francesco Caponera – Guitars

イタリア・ウンブリア州ペルージャを拠点に活動するBloodtruthによるフルレングス作品。前作『Martyrium』(2018年)からおよそ7年ぶりとなる本作は、Selfmadegod Recordsからリリースされた。アルバムのリード曲でありミュージックビデオにもなっている「Retribution And Flames」からも分かるように、ここまで紹介してきたCryptopsyやPutridityといった激しいストップ&ゴー、アクセルの巧みな踏み分けといったスタイルとは違い、統一感のあるスピードの中で、プログレッシヴに、テクニカルに、リフやシンバル、タッピングなどが渦巻いていくというスタイルが特徴的である。ミュージックビデオの中でメンバーがGojiraやNileのシャツを着ているのも納得で、それらのバンドに通ずる「グルーヴ」がBloodtruth最大の魅力であり、ブルータル・デスメタルにおいては希少価値の高いサウンドであると思う。私自身、イタリアのバンドとはたくさんツアーしてきたのだが、メタルに限らずイタリア人の血には芸術的であることから逃れられない何かがあると感じる。それはメタルやパンクといった音楽ジャンルの違いだけでなく、あらゆる芸術における部分、さらには生活における部分においても。イタリアについて触れたことがある人なら言葉にならないそれに頷いてくれるはずだ。

 

▶︎Dissonant Seepage 『Dystopian Putrescence』


Release Date: 2025年6月6日
Label: Comatose Music

アメリカ・ニューヨーク州ロチェスターを拠点に活動するDissonant Seepageによるフルレングス作品。前作『The Darkness Will Swallow You Whole』(2023年)からおよそ2年ぶりとなる本作は、Comatose Musicからリリースされた。全体的にミドルテンポ主体で、要所にベースドロップを差し込んだり、ブラストビートの嵐に溶け込んでいくかのようなガテラルのドゥーみーな広がりが地味だが面白い。テクニカルな要素が少なく、人によっては物足りなさを感じるかもしれないが、現代スラムの強烈さとは違うピュアなスラムリフのオーガニックな良さが感じられる作品だと思う。モッシュをしないスラミング・リフ。それもいい。「 Immortal Until Decay」後半のブレイクダウンはかなりハマりました。

▶︎Cordyceps 『Hell Inside』

Release Date: 2025年7月25日
Label: Unique Leader Records

Member Line-Up:
Rafael Gonzalez – Vocals
DeLorean Nero – Guitars
Michael Nolan – Drums
Chris Rosset – Bass

アメリカ・コロラド州デンバーを拠点に活動するCordycepsによるフルレングス作品。前作『Betrayal』(2020年)からおよそ5年ぶりとなる本作は、Unique Leader Recordsからリリースされた。Cordycepsの鳴らすCondemnedやDisentombに近いUnique Leader Recordsのブルータル・デスメタル・サウンドはすっかり少なくなってしまった。レーベルも近年はブラッケンド・デスコアのリリースを数多く手掛けているため、この手のサウンドを持つ新しいバンドが出てきていない現状だ。不規則に連なるチェーンソーリフ、まるで仕事のように淡々と叩き込まれるドラミングの機械のような冷たさが心地良い。

 

▶︎Torsofuck 『Feasting on Carved Remains』


Release Date: 2025年4月3日
Label: New Standard Elite

Member Line-Up:
Mikko Friberg – Vocals, Guitars, Bass
Miro Friberg – Drums

フィンランド・エスポーを拠点に活動するTorsofuckによるEP。前作『Postpartum Exstasy』(2023年)からおよそ2年ぶりとなる本作は、New Standard Eliteからリリースされた。本作はデュオ編成で制作されているのが、新しくドラムを担当しているのはMikkoの息子で16歳のMiro。ブルータル・デスメタル、ゴアグラインドの中でもヴィジュアルの過激さでいったらトップレベルのTorsofuck。まさか親子編成になるとは誰も想像していなかっただろう… 。息子のMiroも別でLimblessというバンドをやっており (*父親も参加) 、こちらは2020年結成ということなので、結成時は11歳…。ゴアグラインド/ブルータル・デスメタルの英才教育。さて作品であるが、ざらざらとした質感はそのまま、ややスラムに傾倒したフレーズもあるが、ほとんどゴア譲りだろう。Miroのドラムもユニーク。2025年にTorsofuckで興奮するとは思っていなかった。

 

▶︎Fleshmangled 『Morphing Into Despised Victimology』

Release Date: 2025年4月3日
Label: New Standard Elite

Member Line-Up:

Julian Gonzalez  – Guitars, Vocals
Kian Abulhosn  – Drums, Vocals (backing)
Dom Reed  – Bass
Nando Gomez  – Guitars

アメリカ・カリフォルニア州ウェストコヴィナを拠点に活動するFleshmangledによるデビューアルバム。EP『Agonizing Paranoia』(2023年)からおよそ2年ぶりとなる本作は、New Standard Eliteからリリースされた。Jon Zigによるアートワークだけでも名盤確定であるが、ブルータル・デスメタル・リスナーがNew Standard Eliteに期待するサウンドとして100点満点のサウンドだと言える。オーガニックなサウンドプロダクション、そしてなんといってもJulianの個性的なガテラルは一聴の価値あり。オープニングを飾る「Severance of a Virile Idolatry」の後半部分だけでも聴いてみてほしい。

 

▶︎Putrescent 『Butchery of Disembowelment』


Release Date: 2025年2月7日
Label: Trading the Cadavers

インドネシアを拠点に活動するPutrescentによるデビューアルバムで、、Trading the Cadaversからリリースされた。2022年に活動を開始した新しいバンドで、Death Artery, Devouring Carnage, Disvile, Gorested, Hephaestus, Nematocyst, Reveals, Rhizotomy, Rotten Blood, Spastic, Vertiginous, Vile Desolationといったバンドに在籍するギタリストHendika Dwi Prasetyoがキーパーソンだ。アルバムではVulvectomyのDiego Fanelliをフィーチャーした「Abominable Incision Carvings」がリードトラック。ここまでくると、アンビエント的に流しておきたいとも思えるインドネシアン・ブルータル・デスメタル。もちろんじっくり聴きても面白いし、とにかくギターのトーンが心地良い。

 

▶︎Omnicidal Instinct 『Catharsis in Blight』


Release Date: 2025年2月7日
Label: P2

Member Line-Up:
Florent Duployer – Drums
Erinç Yılmaz – Guitars, Bass
Paulo Henri Paguntalan – Vocals

ドイツ・ハンブルクを拠点に活動するOmnicidal InstinctによるデビューEP。ドラムのFlorentはトルコのCenotaphのメンバーで、Erinç Yılmazと共にドイツ在住。ボーカルのPauloはアメリカ・ニューヨーク拠点でEdenic PastやEncenathrakhなど玄人好みのブルータル・デスメタルに在籍している。レーベルは彼らのサウンド、そして全体的なテーマ込みで「Misanthropic Brutal Death Metal (人間嫌いのブルータルデスメタル) 」と評し、『トム・ソーヤーの冒険』で知られる著者マーク・トウェインの言葉を多数引用している。ブルータル・デスメタルのテーマに哲学的な考えがどんどん持ち込まれて欲しいと思うし、Cattle Decapitationのようにサウンド的なところ以外から支持されるバンドがもっと増えていいと思う。

 

▶︎Dysmorphic Demiurge 『Of Chaos and Eternal Night』


Release Date: 2025年1月30日
Label: Vomit Your Shirt

Member Line-Up:
Randy Brown – Guitars, Bass, Drum programming
Jason Monroe – Guitars, Bass, Drum programming
Cade Brown – Vocals, Bass

アメリカ・テネシー州ノックスヴィルを拠点に活動するDysmorphic Demiurgeによるフルレングス作品。前作『The Great and Terrible War』(2022年)からおよそ3年ぶりとなる本作は、Vomit Your Shirtからリリースされた。RandyとJasonは1995年から1998年にかけて「Labyrinth」と呼ばれるバンドで活動していたそうだが、その後20年以上の時を経て再びバンドを立ち上げた。ミドルテンポ主体のブルータル・デスメタルで、スラミングパートも多く組み込まれているが、全体的にはプログレッシヴさも重要視した作品作りがなされていて、「The Prophecy of Chaos」などで感じられる効果的なSE (あるいはエフェクト) も個性的で面白い。フィーチャリングゲストも豪華なのでクレジットを確認してみてほしい。

【2024年下半期】スラミング・ブルータル・デスメタルの名盤 6選 アルバムレビュー

2024年の6月から12月にかけて発表されたスラミング・ブルータル・デスメタル (スラミング・ビートダウン、スラミング・デスコアを含む) の中から、RIFF CULT的に高く評価した6枚の作品をアルバムレビューしました。今年は上半期に10枚のアルバムをすでにレビュー、記事として公開していますので、そちらも合わせて読んでみてください。新しいお気に入りのアーティスト、そして作品が見つかりますように。

📍【2024年上半期】スラミング・ブルータル・デスメタルの名盤10選 アルバムレビュー

 

▶︎Peeling Flesh 『The G Code』

Country : United States
Label : Unique Leader Records
Streaming : https://uniqueleaderrecords.bandcamp.com/album/the-g-code

オクラホマ出身のバンド、Peeling Fleshのデビュー・アルバム。「スラミング」の可能性を大きく拡大していく存在として、デスメタル、デスコア、ハードコア・シーンから絶大な人気を誇る彼ら、メンバーはSnuffed on Sightのライブサポートも務めたりビートダウン・ハードコアとの繋がりもありながら、ドラマーJoe Pelleterは元Strangledであり、Vile Impregnationにも在籍中というハードコアとデスコアを行き来する人気ドラマー。どちらのシーンにも密接な彼らだからこそ作り出されるスクラッチをフィーチャーしたスラムパートやピンスネアに合わせて挿入されるラップパートなど、斬新なパートでフロアを熱気を高めていく。

アルバムのタイトルトラック「The G Code」にはブルータル・デスメタル/デスコア、そしてハードコア・バンドの元祖とも言えるDespised IconからAlex Erian と Steve Marois をフィーチャーしているところからも、Peeling Fleshが2024年のブルータル・デスメタルとハードコアを未来的にクロスオーバーさせていることを象徴しているように感じる。これはこの楽曲のミュージックビデオのイントロでも視覚的に捉えられていて、ギターのヘッドアンプのローのつまみをMAXに振り切るところ、スケート、マリファナ、OGヒップホップ・デザインのヴィンテージTシャツ、スピーカーアンプに施されたスラミング・スタイルのPeelingFleshロゴとオンライン・スラムまたはゴアノイズ的とも呼べる別のロゴ (ゴールドで色調されているのも重要)、Ping Snareをさらに高く調整するドラマー……。ここに彼らのスタイルの全てが凝縮されていると言ってもいいかも知れない。

世界中のハードコア・モッシャーがフォローしているだろう197 MediaのYouTubeチャンネルで頻繁にフルセット映像が公開されているのもポイントだ。具体的にスラムとビートダウン、どちらの要素もこれほどまでに多様であり、クロスオーバーから生まれる可能性が無限であることを誇示するこの作品、間違いなく2024年以前以後で「スラミング・ビートダウン」の持つ意味まで変えてしまうかのような重要な一枚であると言えるだろう。

 

▶︎Extermination Dismemberment 『Butcher Basement (Revamp)』

Country : Belarus
Label : Unique Leader Records
Streaming : https://uniqueleaderrecords.bandcamp.com/album/butcher-basement-revamp

ベラルーシ・ミンスクを拠点に活動するスラミング・ブルータル・デスメタル・バンド、Extermination Dismembermentが、2010年にリリースしたデビュー・アルバム『Butcher Basement』を再構築したRevamp盤をUnique Leader Records からリリース。Revampは元々の楽曲を元に新たに改良するという意味があり、この作品は2017年にMorbid Generation Recordsからリイシューされていたが、アートワークも新たにUS TOUR前に発売となった。

元々アルバムをコンスタントにリリースするバンドではなかったし、2023年に10年振りとなるアルバム『Dehumanization Protocol』をUnique Leader Records からリリースしたばかりであったが、ここ数年の活発さを見ると、何か動きを見せたかったのかも知れない。Extermination Dismembermentはスラミング・ブルータル・デスメタルというマイクロジャンルありながら、(あくまでメタルにおける) メインストリームを意識したPRや映画のようなミュージックビデオ制作という取り組みにもここ数年熱心だったし、一気にキャリアアップを目指している可能性が高いし、過去作の再構築ではあるものの、ほとんど新譜と言っていい仕上がりとなっている。スラミング・スタイルの持つ魅力を彼らなりに追求していく中で、ブレイクダウンの導入に挿入されるベースドロップを他のパートの楽曲をかき消すようにして炸裂させるソニックブームは間違いなく武器と言える。そしてこのRevamp盤でも通常ではあり得ないベースドロップを組み込んでいる。

オリジナル・バージョンと聴き比べてみれば一聴瞭然、スラムパートの破壊力が増し、メロディックなフレーズもダイナミズムを増し、スラミング・ブルータル・デスメタルというジャンルでは収まりきらない魅力を放っている。そして7分にもなる「SLAUGHTERER CHAINSAW」は、スプラッター映画ファンも唸らせる仕上がりで、こちらも必見。国外ツアーをこなし、メキメキ成長していく彼らの未来は明るい。そしてこれからどんな景色を見せてくれるのか、ワクワクさせてくれる。

 

▶︎Visions Of Disfigurement 『Vile Mutation』

Country : United Kingdom
Label : Reality Fade Records
Streaming : https://realityfade.bandcamp.com/album/vile-mutation-2

2013年にマンチェスターで結成された4人組、Visions of Disfigurementの前作『Aeons of Misery』から4年振りとなるサード・アルバム。デスコア・バンドHymn for the Fallenの解散と共に活動を本格化したドラマーBenとベーシストAdam、Begging for IncestやChainsaw Castrationでライブ・ボーカルを務めたDan Bramleyに、DanとThe Mythic Dawnというバンドで共に活動していたギタリストTom Cahillが2019年に加入している。

磐石の体制で制作された本作、オープニングの「Absence of Remorse」から現代スラム最高峰とも言える切れ味鋭いヘヴィネスを見せてくれる。それだけでも満足なのだが、多彩なシンバルワークとスラムのパンチ力を増幅させる小技も満載で、ドラミングだけ見るとその影響はNileなどといったテクニカル・ブルータル・デスメタルからKnocked LooseやSnuffed on Sightといったハードコア/ビートダウンからの影響も感じる。Danのガテラルもピッグスクイールから、先ほども名前を挙げたKnocked Looseにあるような”Arf Arf”といったフレーズを巧みに繰り出しながら、サウンドの中心の座を他に譲らない。全体的には同じような楽曲で構成されているが、OrganectomyのAlex Paulが参加した「Secreted and Eated」やEmbrace Your PunishmentのVivien Rueが参加した「Epitaph of the Seraphim」などゲストによって彩りが添えられた楽曲も間に組み込まれている。

 

▶︎Grotesque Desecration 『Dawn Of Abomination』

Country : Russia
Label : Inherited Suffering Records
Streaming : https://inheritedsufferingrecords.bandcamp.com/album/grotesque-desecration-dawn-of-abomination

2022年、人口112万人を超えるロシアでも有数の大都市であるウファで結成されたトリオのデビュー・アルバム。ギター、ベース、そしてドラムを担当するVsevolod “Slaughterborn”、ギタリストのDanil Ilishkin、ボーカリストErick Valiyakhmetovという編成で、ミックス/マスタリングなども全て自分たちで行なっている。メンバー写真なども公開されておらず、メンバーそれぞれに掛け持ちしているバンドもないようで、ミステリアスな雰囲気も漂っている。

Grotesque Desecrationのサウンドは、Extermination Dismembermentを彷彿とさせるスタイルで、ソニックブームと呼ばれる巨大なベースドロップをこれでもかと炸裂させてくる。東欧のスラムはやはりExtermination Dismembermentの影響がかなり大きく、彼らに続いて世界へと進出を狙うルーキーたちがひしめき合っている。プログラミングされたドラムの独特の無機質さはソリッドなリフワークを得意とするGrotesque Desecrationのサウンドにうまくマッチしていて、シンバルワークも人力では不可能な程に細かく施されている。ベースドロップの上にうっすらとフィードバックノイズを被せているのも面白い試みだ。Cranial Bifurcation、Insect Inside、Surgical Abnormalization、Cephareaとゲストも豪華で、最後まで眩暈がするほどのヘヴィリフをカマし続けてくれる強烈な一枚。

 

▶︎Manifesting Obscenity 『Attempts To Death』

Country : Russia
Label : Independent
Streaming : https://manifestingobscenity.bandcamp.com/album/attempts-to-death-reimagined

2014年にSpice Mutated Corpseという名前でスタートし、2017年にManifesting Obscenityへと改名したユニットの、前身名義でリリースしたアルバム『Attempts To Death』のReimagined盤。先のExtermination Dismembermentの”Revamp”との違いは、楽曲はそのままで、それを再録した形になる。イントロとWalking The Cadaverのカバーを除く8曲が収録され、アートワークも新たにボーカルのGrigoryが描き下ろした。

全ての楽曲を手掛けるArtem Shirmanは、CovidectomyやDeprecationというプロジェクトでも同じように全ての楽曲を務めている。そのキラー・スラム・メーカーとしての才能をフルで発揮しているManifesting Obscenityでは、強度の高いドラミングとソリッドなリフによって生み出される現代東欧スラムのスタンダードとも言えるサウンドを披露。ブレイクダウンの導入部分はやはり爆発音やベースドロップが多様されている。関係があるとは思えないが、戦争の影響もあるのか。爆発音のようなベースドロップを多様するバンドが今年は多かった印象だ。

 

▶︎Rendered Helpless 『From Nothing Comes All』

Country : New Zealand
Label : Lacerated Enemy Records
Streaming : https://renderedhelpless.bandcamp.com/album/from-nothing-comes-all

Organectomyのメンバーとしても知られるマルチ・インストゥルメンタリストAlexander Paulによるワンマン・プロジェクトRendered Helplessの5年振り4枚目フルレングス。ミックス/マスタリング以外の録音作業は全てAlexanderひとりで行なっており、湧き上がる創作意欲のままに、バンド形式の作品では聴くことの出来ない、そしてフロアをモッシュで埋め尽くすためでないスラムを追求している。

冒頭のスネアのロールから、ただものならぬ雰囲気が感じられるだろう。人力ではおそらく再現不可能なドラミング、そしてテクニカル・デスメタルにも接近していくリフやベースライン。スラムパートはほとんどの場合、端的に言えばダンス・ミュージックに近いテイストがあると思うが、Rendered Helplessはドゥーミーな世界観を持ち、Djentで言うThallにも似た音像で、聴くものを引き込んでいく。もちろんモッシャブルであるには違いないが、簡単にそれでモッシュ出来ないような複雑性がある。こうした音楽がスラミング・ブルータルデスメタルにも出来ると言うのをリスナーに見せつけるような、深みのある作品と言えるだろう。

【2024年下半期】ブルータル・デスメタルの名盤 10選 アルバムレビュー

下半期にまとめてアルバムレビューする時間を少しでも削減するべく、今年は上半期に11枚のレビューを投稿しましたが、まさかの「ブルデス当たり年」で、多くの優れたアルバムが登場しましたので、10枚をピックアップし、アルバムレビューしました。これまで書いてきたブルータル・デスメタルのレビューや、プレイリストも合わせてフォローお願い致します。

▶︎過去の年間ベスト一覧

・2020年の名盤
・2021年の名盤
・2022年上半期の名盤
・2022年下半期の名盤 (前編)
・2022年下半期の名盤 (後編)
・2024年上半期の名盤

▶︎Spotifyプレイリスト

▶︎Nile 『The Underworld Awaits Us All』

Country : United States
Label : Napalm Records / Chaos Reigns
Streaming : https://lnk.to/NILE-TUAUA

前作『Vile Nilotic Rites』から5年振り、通算10枚目となるスタジオ・アルバム。本作から新たにMorbid AngelのDan Vadim Vonがベース/ボーカル、Lecherous NocturneのZach Jeterがギター/ボーカルとして加入し、トリプルギターの5人体制となっている。ミックス/マスタリングはMark Lewisが担当し、アートワークはポーランド出身の画家Michał “Xaay” Lorancが務めた。

Karl Sandersが手掛けた楽曲が大半を占めるが、KarlとGeorge Kolliasによって共作されたオープニング・トラック「Stelae of Vultures」や2017年に加入したギタリストBrian Kingslandが3曲を作曲、うち2曲の作詞も手掛けるなど、これまでNileの中心人物であるKarl以外のメンバーが楽曲制作を手掛けることはあったものの、Karl以外で作詞を行なったのはBrianが初だと思われる。とは言え、劇的にNileサウンドから逸脱したスタイルかと言えばそうでもなく、Brianが手掛ける楽曲もNileの伝統に沿ったダイナミックなデスメタルであり、ややグルーヴメタル気味な雰囲気のある「True Gods of the Desert」、エンディングにふさわしい、じわじわと盛り立てる「Lament for the Destruction of Time」はギタリストらしいソロパートの映えるフレーズが多めだ。

Nile (2024)

一貫した世界観は変わらぬNileの魅力だが、いつにも増してローの効いたブルータル・パートが多く、よってプログレッシヴなギターフレーズの数々が立ち上がってくる。リリックビデオにもなっている先行シングル「Under the Curse of the One God」はこのアルバムの中でもブルータル・デスメタルなNileが好きな方にオススメの楽曲で、George Kolliasのテクニカルなドラミングにダークなリフが絡み付いていく (途中のオペラ調のコーラスも素晴らしい!)。結成から30年を超え、さらにヘヴィになっていくNileに感動。

 

▶︎Despondency 『Matriphagy』

Country : Germany
Label : New Standard Elite
Streaming : https://newstandardelite.bandcamp.com/album/despondency-matriphagy

2010年の活動休止以来、15年振りとなる通算3枚目のスタジオ・アルバム。結成は1999年と古いものの、リリースペースが遅く、故に神格化されてきたバンドでもある。2015年に活動を再開してからもリリースはなかったが、Deeds of Fleshのブレインであり、Unique Leader Records の創始者でもある故Erik Lindmarkの追悼の意を込めたEP『Excruciating Metamorphosis』を2019年にリリース。2022年にギタリストEduardo Camargo、2024年にはベーシストKieren Allanが加入 (*本作ではベースはEduardoが兼任している) し、再びラインナップを固めた。新しく加入した2人は、2024年に活動を再開したMastication of Brutality Uncontrolledでも一緒で、そこにはDespondencyの創設メンバーであるKonstantin Lühringも在籍している。

本作『Matriphagy』は長いブランクを感じさせないDespondencyサウンドそのままで、前作『Revelation IV』と本質的な違いはないが、新しいDespondencyはKonstantinのガテラルがローに振り切って、終始地を這うようなブルータルなものになった。ド派手なスラムパートはないが、Defeated Sanityを彷彿とさせるようなドラミングの小技やベースのスラップを巧みに組み合わせながら、楽曲にドラマ性をもたらしていくスタイルはベテランならでは。「Inherited Animosity」はこのアルバムのキートラックとも言えるだろう。

 

▶︎Sanguinary Consummation 『Hymns Of Dismal Agony』

Country : United States / Sweden
Label : Vile Tapes Records
Streaming : https://sanguinaryconsummation.bandcamp.com/album/hymns-of-dismal-agony

2023年アメリカ・ミズーリ在住のメンバーとスウェーデン在住のメンバーによって結成されたSanguinary Consummation。本作は、2024年にデモ音源の後に発表されたデビュー・アルバムとなる。Sanguinary Consummationのサウンドの特徴はなんと言ってもスネア。発売元であるVile Tapes Recordsはこのスネア・サウンドを「Ping Snare」と形容しているが、その名の通り”短く高音の音を出す”スネアで、ハイピッチとか言っていたものだ。

Sanguinary Consummationのロゴ

すっかり元来のブルータル・デスメタルと呼ばれていたジャンルは、スラミング・スタイルに主流を取って変わってしまった為、「ブラスティング」と名乗るようになったが、それ以降、この手のスタイルがスラミング・ブルータル・デスメタルとは別軸で激化しているように思う。リフやガテラルの凄味を消し去ってしまうほど、巨大なインパクトを放つ独特なスネアを思う存分味わえる。

 

▶︎Vomit The Soul 『Massive Incineration』

Country : Italy
Label : Unique Leader Records
Streaming : https://orcd.co/VTSMASSIVEINCINERATION

2021年にリリースしたアルバム『Cold』からおよそ3年振りのリリースとなった通算4枚目のスタジオ・アルバム。新たにドラマーとして元PutridityでAntropofagusやBeheadedにも在籍するDavide Billia、ベーシストにPosthuman AbominationのAndrea Pillituが加入。前作から参加しているBloodtruthのStefano Rossi Ciucciは本作からギタリストへのパートチェンジし、バンドのファウンダーMax Santarelliとのコンビネーションが強化された。

2024年のVomit The Soul

イタリアのミュージシャンは独特の美的感覚を持っている。それはブルータル・デスメタルだけでなく、パンクやメタルコアにも言えることで、ふわりとした芸術性を香らせる。それはメロディにもそうだし、デスメタルの場合、Putridityもそうだが、楽曲展開に感じることが多い。Vomit The Soulは前作でも見られたスラミング・スタイルが本作では大幅に増加しているが、元来のVomit The Soulらしいブラスティング・スタイルと、まるで溶接したかのような、いびつな連なりを見せている。

ミュージックビデオになっている「Bloodtime」や「Endless Dark Solstice」のような楽曲は、Vomit The Soulがこれから得意にしていくスタイルだと思う。ドラマーDavideのプレイが注目されがちだが、楽曲展開に隠された芸術性に着目して聴いてみると、さらに面白いと思う。

 

▶︎Theurgy 『Emanations Of Unconscious Luminescence』


Country : Italy / Thailand / United States / Canada
Label : New Standard Elite
Streaming : https://newstandardelite.bandcamp.com/album/theurgy-emanations-of-unconscious-luminescence

タイ出身で来日経験もあるEcchymosisのドラマーであり多くのバンドを兼任するPolwach Beokhaimookがボーカルを務め、イタリア出身でDeprecatoryのメンバーであるMarco Fincoとカナダ出身でThe Ritual Auraに在籍するBrandon Iacovella (日本語も話せるらしい) がギター、アメリカ出身でソロプロジェクトAnal Stabwoundで知られるNikhil Talwalkarがベース/ドラム/ボーカルを担当する4人組多国籍バンド、Theurgyのデビュー・アルバム。

Theurgyのロゴ

このバンドは、まるで大腸のレントゲン写真のような奇怪なバンドロゴで一部のマニアの間でデビュー前から話題となっていたが、2021年のデモ音源で、ロゴ以上にそのサウンドでも多くのブルータル・デスメタル・ファンを釘付けにした。2023年に加入したBrandonの影響もあり、New Standard Eliteらしいブラスティング・ブルータル・デスメタルとプログレッシヴなギタープレイのクロスオーバーという新たなスタイルを創出。ドラマ性のある展開が感じられ、言うなれば「プログレッシヴ・ブラスティング・ブルータル・デスメタル」という超マイクロ・ジャンルを完成させた。「Miracles of Absolute Hedonism」はアルバムの中でもTheurgyがチャレンジしていることを理解しやすい楽曲なので、まずはこれを聴いてみて欲しい。

 

▶︎Pathology 『Unholy Descent』

Country : United States
Label : Agonia Records
Streaming : https://bit.ly/subs-agonia-yt

カリフォルニア・サンディエゴのベテラン・ブルータル・デスメタル・バンド、Pathologyの3年振り通算12枚目(!!) のスタジオ・アルバム。彼らの沸き続ける創作意欲には、アルバムがドロップされる度に驚かされる。アルバムが12枚あるということは、このような複雑なスタイルの楽曲を100曲以上は作り続けているということ……。それもNuclear Blast といったメタル名門をはじめ、Comatose Music、Severed Records、Victory Recordsとあらゆるエクストリーム・メタルの人気レーベルを渡り歩く形で。今回はブラック/デスメタル・レーベルでポーランドを拠点とするAgonia Recordsからということでこちらも素晴らしいレーベルだ。もしかしたら、「一度でいいからPathologyのアルバムをうちからもリリースしてみたい」という、ある種メタルレーベルのステータス見たいなものになっているのかも知れない。

さて本作は、ここ最近メンバーラインナップが固定されてきたが、2019年から参加していたDan Richardsonの脱退前ラスト作となっている。これは、『Awaken to the Suffering』や『The Time of Great Purification』といったPathologyの人気作品でギターを担当したKevin Schwartzの復帰に伴うものなのかも知れない。

Kevin Schwartz

2018年に復帰したボーカリストObie Flettと共にOG Pathologyなラインナップとなり、アルバムツアーに出る模様。このアルバムはミックスをZack Ohren、マスタリングをAlan Douches、そしてアートワークはPär Olofssonが手掛けた、エクストリーム・メタルの凄腕エンジニア達と共に完成させられた1枚で、ピュアなブルータル・グルーヴが聴きどころだ。ミュージックビデオにもなっており、イントロ明けのオープニングトラックである「Cult of the Black Triangle」は、難しい小技をなるべく削ぎ落として、メインリフがあり、核となるパートでブラストビートが威力を発揮するような展開が組まれていて、ベテランらしい楽曲の良さを感じる。それがほとんど全ての楽曲に貫かれていることで、コアなリスナーを寄せ付けないところはあるものの、オーガニックなデスメタルの良さがあり、何度も聴きたくなる作品に仕上がっている。

 

▶︎Extrathesia 『Animism』


Country : United States
Label : Independent
Streaming : https://extrathesia.bandcamp.com/album/animism

Divinite HiveのCourtland Griffinによるソロ・プロジェクトで、これがデビュー作。Extrathesiaもソロ・プロジェクトであるが、これら2つのプロジェクトの棲み分けとしては、Extrathesiaの方がブラスティング・スタイルにフォーカスしている (感じがする)。Divinite Hive名義でも今年フルアルバム『Stellar Fusion Genesis』をリリースしているので気になる方は聴き比べてみても面白いと思う。

Extrathesiaのロゴ

Extrathesiaは、リフの細やかな刻み、スラミング・パートも交えながら忙しなくテンポを上げ下げする展開の複雑さが聴きどころ。全6曲収録、トータル・タイム12:48と短い作品ながら、非常に作り込まれた作品です。ソロ・プロジェクトらしいスタイルの楽曲は、デトロイトのSyphilicを彷彿とさせてくれる。

 

▶︎Emasculator 『The Disfigured And The Divine』


Country : Prague, Czechia / United States
Label : New Standard Elite
Streaming : https://emasculatorbdm.bandcamp.com/album/the-disfigured-and-the-divine

AbnormallityのMallika Sundaramurthyがボーカルを務める全員女性メンバーによるブルータル・デスメタル・バンドEmasculatorのデビューEP。CartilageのギタリストTeresa Wallace、PoonTicklerのギタリストMorgan Elle (ベースも兼任)、フォークメタル・バンドOak, Ash & Thornに在籍するドラマーCierra Whiteによる4ピース。

オリエンタルなイントロで始まるリードトラック「Eradication of the Asuras」はミュージックビデオにもなっており、ドライでガリガリとしたリフワークに、オールドスクールなデスメタル・ドラミング、そしてMallikaのガテラルが渦巻のように展開していく。わずかに導入されるブレイクもセンス有。

 

▶︎Indecent Excision 『Into The Absurd』

Country : Italy
Label : New Standard Elite
Streaming : https://indecentexcision.bandcamp.com/album/into-the-absurd

2006年にイタリアで結成されたIndecent Excisionは、2011年に『Deification of the Grotesque』、2015年に『Aberration』と2枚のアルバムをリリースしており、本作が9年振りのサード・アルバムとなる。オリジナル・メンバーは不在だが、2008年から在籍するNeurogenicのMatteo Bazzanellaがボーカルを務め、Shockwave ExtinctionのHannes Gamperがギター、PutridityのGiancarlo Mendoがベース、UnkreatedのDavide Farabegoliがドラムというのが現在のラインナップ。

Indecent Excisionの良いところは、アヴァンギャルドでプログレッシヴなGiancarloのベースプレイを軸としながら、ストップ&ゴーを駆使したアクセルとブレーキの踏み分けが鮮やかな楽曲の構築美にある。それらはマスコアにも通ずる雰囲気があるが、MatteoのロングブレスのガテラルとDavideのドラミングが見せる疾走感によって、ブルータル・デスメタルとして結実している。Indecent Excisionを聴いていると、強烈な山道をとてつもないスピードで疾走するレーシングカーを思い起こさせる。「アクセルとブレーキ」をキーワードにアルバムを聴いてみると、驚くほど面白く感じるはずだ。

 

▶︎Lumpur 『Aku Dan Tuhanku』


Country : Indonesia
Label : Brutal Mind
Streaming : https://brutalmind.bandcamp.com/album/aku-dan-tuhanku

1994年に結成され、2024年に30周年を迎えたインドネシアン・デスメタルの重鎮、Lumpurのセカンド・アルバム。アルバムタイトルは「Me and my God」を意味する。2度の活動休止を挟んでおり、ファースト・アルバムも2003年の『Escape Your Punishment』でカセットテープフォーマットであった為、インドネシア以外に知る人は少ないかも知れない。

アルバムの最初から最後まで、ほとんど踏み込まれ続けるツインペダルは、本当に煙が立ち上がるほど、Lumpurサウンドの根底をずっしりと支えている。その上を細やかなリフワークで蠢くようにして鳴り続けるリフも凄まじく、これもインドネシアらしいスタイルだと言える。時折差し込まれるブレイクも程良く、基本はブラスティングというのも清くカッコいい。彼らの新作が聴けることにありがたみを感じる。次は2040年までにはアルバムが出る計算だが、それまでずっとインドネシアでブルータルデスメタルのシーンが盛り上がり続けていたらと願う。

【2024年上半期】スラミング・ブルータル・デスメタルの名盤10選 アルバムレビュー

ブルータル・デスメタルとスラミング・ブルータル・デスメタルを意識的に分けて聴くようにしている。それは、ブルータル・デスメタルというジャンルが元来の魅力として持っているスピード、重さ、それらを掛け合わせて放たれるブルータルさを忘れないようにしたいという思いからだ。Internal BleedingやDevourment、Kraaniumといったバンドはこれらの間にあるようなバンドであるが、よりビートダウン・ハードコアやデスコアというものとの結びつきが強かったり、スラムパートに特化したソングライティングにフォーカスしているバンドをスラミング・ブルータル・デスメタルとして聴いている。そうするとやはりビートダウンの破壊力であったり、速くなくても重さであったりというところで、良さがくっきりと立ち上がって聴こえてくる。どちらも好きな音楽であり、同じジャンルの音楽であるが、その微妙な違いを意識しながら聴くことで、このジャンルがこれからどのようにして進化していくのか、どのようなバンドやそのバンドの作品、楽曲、ミュージックビデオがこれらのジャンルに影響をもたらすかがより微細に感じられると信じている。下記にアルバムレビューした作品は、どれもブルータル・デスメタルであり、中にはビートダウン・ハードコア、またはスラミング・デスコアというさらに細かくタグ付けできるものもあるが、ここではスラミング・ブルータル・デスメタルとしてまとめていく。スラミングという言葉が、ブルータル・デスメタルやデスコア、ビートダウン・ハードコアに与えている影響を感じながら、さらにはブルータル・デスメタルとの違いを感じながら、レビューを元にいろんな音楽を聴いてみて欲しい。

 


 

Ingested 『The Tide Of Death And Fractured Dreams』

イングランド・マンチェスター出身の結成18年目”Ingested”。Metal Blade Recordsと契約してリリースされた2022年のアルバムから2年振りとなる通算7枚目フルレングス。Unique Leader Records と契約したのも衝撃的だった記憶はまだ新しいが、彼らはさらに上を目指し、精力的なツアー活動、スラミング・ブルータル・デスメタルでありながらマイクロ・ジャンルを超え、メインストリームでも通用するダイナミックなサウンドを完成させ、着実にファンベースを拡大してきた。デスコア・シーンでも彼らの名は広く浸透していて、デスメタル・リスナーだけがファンベースの核を担っていないのも強みの一つなのだろう。

本作はパンデミック期からIngestedのプロデュースを担当しているNico Beninatoが再びレコーディングに参加し、エンジニアリングまでを担当。ゲスト参加しているミュージシャンも豪華で、「Expect to Fail」にはSylosisのJosh Middleton、「In Nothingness」にはChimairaのMark Hunterがフィーチャーされている。スラミング畑とはほとんど無縁な彼らを選んだのも、今のIngested人気無くしては実現しなかった興味深い選択なのでは無いだろうか。正直、彼らのポテンシャルを考えれば、「スラミング・ブルータル・デスメタル」などといったマイクロ・ジャンルで括ること自体、あまり歓迎されないことかもしれないが、このスタイルがメインストリームでも受け入れられる可能性があることを体現していること、複雑なフックは無いにしても、純度の高いスラミング・スタイルが根っこにある上で完成させられているアルバムであることはイメージしながら聴くべき作品であるだろう。シュルレアリズム画家David Seidmanの手がけたアートワークも印象的。

 

Enemy 906 『Through The Hell』

「西部の真珠」と呼ばれるメキシコ第二の都市グアダラハラ出身のEnemy 906によるデビュー・アルバム (Vile Tapes Recordsからのリリース)。2020年からボーカリストRodrigo Martinez、ギタリストのDaniel FreyとEdgar Gomez、ドラマーGerardo Lopez、ベーシストSalvador Coronaの5人で活動しており、アーティスト写真を見るに”いかにもメキシコ”というような危険な香りが漂っており、それはサウンドからも放たれている。暴力的なサンプリングから急激にビートダウンする「Deathwish」や、ダウンテンポ・デスコア最高峰Bodysnatcherをフィーチャーした「Agony」、Kraaniumが参加している「Finish You」まで血みどろのモッシュピットを展開するスラミング・ビートダウンが炸裂。危なげなストリートで撮影されたアルバムのリードトラック「Mercilessly」のミュージックビデオは必見。リアルなギャングなしでここまで危ない雰囲気なのは、さすがメキシコ。

 

Axiomatic Dematerialization 『Absolute Elimination Of Existence』

ロシア・モスクワにて2020年に結成されたトリオ”Axiomatic Dematerialization”待望のデビュー・アルバム。彼らのシングルはずっとチェックしていて、明らかに他のスラミング・バンドを圧倒するエネルギーに圧倒されてきた。そのエネルギーの源と言えるドラムを担うのは、 Humaniacに在籍し、これまでAbnormityやEnemy Crucifixionで叩いてきたKirill Chumachek。ボーカルはSergey Kulikov、ギタリストはRoman Yakushevとこれまでにキャリアのないフレッシュなメンバーであるが、彼らのテクニックはかなり高い。Romanは時折ニューメタルコアにあるようなワーミーも効かせたプレイで、卓越されたスラムリフを切り刻んでいく。それを盛り立てるようなボーカルとドラミングはパワフルで、我々がスラミング・ブルータル・デスメタルに求めるものを形にしてくれる。スタジオ・ミュージシャンが彼らの他に3人おり、音源の破壊力という意味ではしっかり作り込まれているが、ライブはどうだろうか。ライブ動画はなさそうなので、今は音源制作メインなのだろう。ぜひフォローしておきたい現代スラム注目のバンドの一つ。

 

Atoll 『Inhuman Implants』

アリゾナ州フェニックスのデスメタル・バンド、AtollがUnique Leader Records からリリースした通算5枚目のフルアルバム。Avarice、Eyes of Perdition、Grofbólに在籍するボーカリストWade Taylor、元IconocaustのMatt MarkleとSpencer Fergusonがギター、ベースはCameron Broomfieldで、Rising Pain、Searching for Reasonにも在籍するAndy Luffeyがドラマー、という一見そこまで有名とは思えない経歴からなるバンドであるが、何故かUnique Leader Records と前作から引き続き契約してアルバムをリリースしている。

一聴しても、Atollのサウンドのどこにデスメタル・リスナーを惹き続ける魅力があるのか分かりにくい。スラミング/ブルータル・デスメタルというにはやや中途半端であるし、ストレートなデスメタルとも言えない。彼らのソーシャルメディアを見てみると、かなりのライブをこなし、いくつか聞き覚えのあるフェスにもラインナップされていることから、この手のジャンルでは決して多くない貴重なライブバンドであるということが分かる。全員長髪で大きな髭を蓄え、熊のようにデカいという全体のビジュアルもインパクトがあり、ライブ映像をみるとかなりスラムリフでモッシュを煽りまくっているので、ライブに定評があるのだと思う。

それを意識して聴くとやはり、ステージ向けのスラムリフが目立つ。エクスペリメンタルな小技も随所にあり、フィンガーピッキングのベースラインも時折テクニカルに唸る。スラム主体でありながら、各パートが奇妙なことをやっている、そういうポリフォニーがAtollの魅力なのかもしれない。決して目立つ存在ではないが、”アメリカのデスメタルでライブバンド”って感じは最近のバンドには珍しいところなのかもしれない。

 

Cranial Bifurcation 『Junkie Of Necrosadism』

ロシアとウクライナに在住するデスメタル・ミュージシャンによるユニット、Cranial Bifurcation。2024年にそんなユニットは、他のジャンルには無いと思う。ギター、ベース、そしてドラム・プログラミングを担当するウクライナ出身のNazar Pashkevichは、最近Regurgitation Excrementというユニットも立ち上げて、東欧アンダーグラウンドデスメタルを盛り上げている。ロシア在住のArtem Nefedovはこの他に何かバンドをやっているわけでは無いようだ。一聴するとそこまで優れたスラミング・ブルータル・デスメタルでは無いように感じるが、ライブなんかで聴くとモッシュが起こりそうなシンプルなスラムリフがかなり強烈だ。戦争状態にある国のミュージシャンが「Limb Removal」といった楽曲をプレイしていることにデスメタル・リスナーとしては不思議な感動がある。感動というか違和感というか。アートワークもよくみると、ウクライナの国旗のカラーリングをモチーフにしているようである。レーベルのBandcampからNYPでダウンロードも可。

 

Embodiment Elimination 『Metamorphosis Incarnate Through Genetic Devastation』

ロシアのブルータル・デスメタル・シーンの実力者達によるサイド・プロジェクト”Embodiment Elimination”のデビュー・アルバムは、同郷の人気レーベルInherited Suffering Recordsからのリリース。

ドラマーのRoman Tyutinは世界最高峰のアヴァンギャルド・ブルータル・デスメタル・バンドByoNoiseGeneratorの中心人物で、ボーカルのArtem ShirmanはCovidectomyやDeprecationといったソロプロジェクトを持ち、Manifesting Obscenityというテクニカル・デスメタル・ユニットではギタリストとしても活躍する実力派。個人的にはByoNoiseGeneratorはデスメタル・シーンの幅広いマイクロ・ジャンルで評価されるべきバンドだと思っていて、このバンドのメンバーのプロジェクトは必ずチェックするようにしている。テクニック、フレーズのアイデアなどにおいて何か必ず印象に残るチャームポイントがあるのだ。

Embodiment EliminationもほとんどRomanのドラミングだけで聴く価値があるが、多くのプロジェクトを掛け持ち、日夜リリースに明け暮れるような創作意欲とテクニックを持ち合わせているArtemのボーカルとしての才能もここでは一つ聴きどころになっている。

 

Mass Killings 『The Coed Murders』

イングランド出身でBlood Rage、Clinician、Flaxといった誰も知らないデスメタル・ユニット (またはFlaxではすべての楽器を担当)で日夜創作に励むTom HughesのプロジェクトとしてスタートしたMass Killings。本作からは新たに相棒としてアメリカ出身で、1Diazidocarbamoyl5Azidotetrazole、Abducted and Brutalized、Beidl、Penectomy、Radiologist、Sodomizing Amputation、Syndactyly、Teratology、Trazodon、Vaultなどなど多数のプロジェクトに参加するLouis Simmerをボーカリストに迎え、ユニット体制で制作されたデビュー・アルバム。

殺人鬼をテーマに実際に起こった事件の写真をコラージュした物々しさ漂う作品で、決して打ち込みプロジェクトとして乱雑にリリースされ忘れ去られていくようなB級感はない。ブルータル・デスメタルといっても良いが、ブラストビートの疾走から華麗にブレイクする様は、スラミングの才能があるように思う。スラミングパート自体は少ないし、楽曲の単調さがあるものの、その中で光るスラムリフの一つ一つが持つ残忍性の高さは素晴らしいと感じる。

 

Repulsive Humanity 『Purge The Grotesque Consequences Of Humanity』

2022年、チリの都市バルパライソを拠点に結成された3人組。ドラマーMiguel Ruiz、
ギターとベースを兼任するErnesto Córdova、ボーカリストNiko SolarからなるRepulsive Humanity、今年2月にちょうどチリから来日したパンクバンドのツアーを少し担当させてもらったのですが、一人がバルパライソ出身だった。「英語はほとんど通じない街だと思うよ」と話していたが、彼らはどうだろうか。

本作でまず目を引くのがFrancisco Fez Leivaというチリ出身のアーティストが担当したアートワークだ。巨大なミキサーに向かって人間が悲鳴をあげながら降り注いでいる様はなんとも残酷な描写だ。これはYouTubeにアップされているヴィジュアライザーでも多くのブルータル・デスメタル・リスナーを惹きつける。

さて彼らのサウンドであるが、ベースドロップを随所に施し、生臭い血液のミストの中で重々しいリフを刻み込んでいくというクラシックなスラミング・ブルータル・デスメタル・スタイル。時にメンバー全員でのコーラスパートもあったり、どこかビートダウン・ハードコア的な要素も感じられる。EPというすっきりとしたサイズも聴きやすく、作品として楽しみやすいと思う。

 

Maimed 『Propagate Onslaught』

Between the Killings、Necessary Death、Severed Headshopといったバンドで一緒に活動するベーシストのIan DygulskiとドラマーJustin Wallisch、Apophatic、Solar Flare & the Sperm Whales of Passionなど、幾つものアンダーグラウンド・バンドを兼任する、同じくアメリカ出身のボーカリストKyle Messick、そして前述のMass Killingsにも在籍するイギリス出身のTom Hughesがギタリストを務めるウェブベースの4人組”Maimed”によるデビュー・アルバム。コロナ禍でこうしたプロジェクトは一気に増えて、10を超えるバンドを兼任するような、創作意欲溢れるデスメタル・ミュージシャン達が一気に増えたように感じる。彼らに関連するバンドをいくつもリリースしているレーベルSewer Rot Recordsからリリースされた本作は、紫と青を基調としたけばけばしいアートワークが目を引く。こうしたアートワークはオールドスクールなデスメタル・バンドの近作に多く見られる。彼らもそうしたオールドスクールな流れの中にあるように感じるフレーズが随所に感じられる。

例えばKyleのボーカルの湿っぽさはドロドロしたデスメタルのそれだし、乾いたスネア、ゴツゴツとしたサウンドプロダクションも決して現代的なスラミングぽさではない。ただ、そうしたプロダクションから放たれる強烈なブレイクがMaimedの場合、非常に心地良く鳴らされている。また、ほとんどの楽曲でさまざまなギタリストがフィーチャリング・ゲストとしてギターソロを提供しているのも面白い。Tomが在籍していたCrypt Rotが好きなら、Maimedもチェックしておいた方が良さそうだ。

 

Osteonecrosis 『Necrotizing Marrows Vol. I』

フィンランド出身の男女ユニット、Osteonecrosisによるデビュー・アルバム。ボーカリストのJennikaはBashedやUnearthly Ritesにも在籍していて、それらのバンドではベースを担当しているので、ボーカルとしての才能を発揮しているのはこのOsteonecrosisだけだ。ギタリストのEerikがおそらく他の楽器をすべて担当しているものと思われる。イントロからも感じられるように、Hennikaが在籍しているデスメタル、グラインドコア・バンドにはない、ギャングスタ・スラムの雰囲気が全編に渡って漂っており、ヘヴィなスラムリフが刻み込まれ続ける本作をグッと危険なスタイルにしている。その要素はアートワークからも感じられるはずだ。基本的にテンポの遅いスラミング・スタイルなのだが、それでも曲の後半部分ではさらに深部へと落とし込む強烈なパートが待ち構えている。ボーカルのスタイルもLorna ShoreのWill Ramosを彷彿とさせるものや、Knockled Looseのようなバンドにも近いものが節々にある。ハードコア・リスナーも必聴の作品と言えるだろう。

【2024年上半期】ブルータル・デスメタルの名盤 11選 アルバムレビュー

スラミング・ブルータル・デスメタルやテクニカル・デスメタル、さらにはゴアグラインドやゴアノイズ、さらに言えばメタルコアやハードコアにまで言えることだが、どのジャンルもミュージシャンの演奏技術がここ数年でとんでもなく進化している。みんな本当に演奏が上手い。もちろん、レコーディング技術の進化も音源の完成度の平均的な高さを上昇させた要因ではあるが、ブラストビートを取り入れるハードコアやデスコア・バンドも普通にいて、この手の技術がブルータル・デスメタルだけに限られたものではなくなってしまった。

隣接するテクニカル・デスメタルは例外として、やはりブルータル・デスメタルはどのジャンルよりも速く、そして重い音楽であってほしい。そうした音楽を作り出すためには高い演奏技術がいる。2024年にブルータル・デスメタルに求めることは、他のジャンルとクロスオーバーすることでも、ブレイクダウンを導入することでもなく、元来の魅力に立ち返り、簡単には理解出来ないエクストリームなデスメタルを演奏してほしいということだ。今回はそんなことを意識しながらアルバムレビューする作品を選んでみた。簡単には理解されないぞ! と言うような、確固たる信念が感じられるものを中心に選んでいるので、毎年やっているブルータル・デスメタルのレビューとは少し違ったテイストの作品も含まれているかもしれないが、上記をふまえて聴いてみて欲しい。素晴らしい作品がたくさんリリースされて、楽しい半年でした!

 


 

▶︎Brodequin 『Harbinger Of Woe』

1998年結成、テネシーのブルータル・デスメタル・レジェンドであるBrodequinの20年振りとなるニュー・アルバムはSeason of Mistからのリリースとなった。ドラマーJon Engmanが健康問題からドラムを長時間叩くことが出来なくなってしまい、一時期サンプラーを使用しそれをハンドドラムでプレイするというライブ・パフォーマンスをしていたが、残念ながらJonは2016年に脱退してしまった。

2020年にバンドとほぼ同い年、弱冠27歳のドラマーBrennan Shacklfordが加入。彼はLiturgyやNacazculにも在籍し、元Cesspool of Corruptionのメンバーでもあり、Brodequinのブラスティング・スタイルを引き継ぐにはぴったりの技巧派だ。Brodequinの伝統的スタイルはほとんど変わっていないものの、メロディック・ブラックメタルの影響を感じさせる「Of Pillars and Trees」やオペラ調のサンプリングを施した「Theresiana」など新しい試みも感じられる。古代の拷問、というバンドの長年のコンセプトはそのまま。

 

▶︎Brutalism 『Solace In Absurdity』

2020年アイダホ州ボイシーにて結成。Brutalismは、ボーカリストCameron Bass、ギタリストLondon HowellとJason Taylor、ベーシストIan Dodd、ドラマーDante Haasというラインナップの若手5人組だ。メンバーはBrutalismの他にもBarn、Texas Ketamine、Bombedといったプロジェクトもやっていて、ローカルのデスメタル仲間のような雰囲気がある。デビュー・アルバムとなる本作はとにかく2024年にリリースされたとは思えないサウンド・プロダクションで、2000年代初頭のリアルなUSブルータル・デスメタルの混沌さに溢れている。これにはかなり痺れた。楽曲展開はPutridityなどを彷彿とさせる複雑で展開の予想が全くつかないブラストとリフの交錯が続き、スラップなどを取り入れながら存在感たっぷりに弾きまくるベースラインもユニークだ。アヴァンギャルドなエレメンツなども交え、決して飽きることなく最後まで楽しめる一枚。

 

▶︎Hypergammaglobulinemia 『狂』

京都出身のスラミング・ブルータル・デスメタル・トリオ、HypergammaglobulinemiaのデビューEP。異次元のピッグスクイールの使い手であるボーカリストMizuki “GoreCry” Watanabe、ギターとベースを兼任するRiku “Frenzy” Watanabe、ドラマーKaito “Strangle” Itoという編成 (人間ではないかもしれない) で、とにかくMizukiのピッグスクイールが凄まじい。加工されているとはいえ、人間の声帯から出される音が基になっているとは信じられない。あらゆるデスメタル、ゴアグラインド、ブルータル・デスメタルの歴史の中でもここまで個性的なピッグスクイールが炸裂するのは聴いたことがない。強烈なアートワーク、そしてアーティスト写真、彼らが日本国内だけでなく、世界で評価されるのは時間の問題だろう (日本人じゃないかもしれない!!!) 。もちろんサウンドも非常にレベルの高いスラミング・ブルータル・デスメタルで、サンプリングを随所に盛り込み雰囲気たっぷりだ。

 

▶︎Effluence 『Necrobiology』

アメリカ・カリフォルニア在住のソロ・プロジェクト。ほとんど詳細が不明で、BandcampによればMatt Stephensという人物が全ての楽器とボーカルを担当していて、この他にスケバンという謎のフリーインプロ・プロジェクトであったり、Tantric Bile、Neural Indentなど様々創作活動を行っているようだ。そしてそれらのほとんどが、ハーシュノイズ、ゴアノイズといったどちらかというとテクニカル・スタイルとは真逆のものばかりであるが、Effluenceではそれなりの演奏技術があることを証明している。そして何よりインプロ、エクスペリメンタル、フリージャズ/アヴァンギャルド・ジャズ、ハーシュノイズからゴアノイズまでを通過した異様な臭気がEddluence全体を包み込んでいる。これをブルータル・デスメタルとして聴くか、はたまたただのノイズグラインドやゴアノイズとして聴くかは人それぞれであるが、個人的にはNew Standard Elite系、ブラスティング・ブルータル・デスメタルが地底深くでエクストリームを極めていった結果誕生したようなサウンドであると評価したい。

 

▶︎猿轡 『曼陀羅』

東京を拠点に活動するブルータル・デスメタル・バンド、猿轡のセカンド・アルバム。「愚者共の 開かんとするは 地獄之門 大日本残虐絵巻 第二章」というキャッチの通り、全曲日本語タイトルでアートワーク、トラックリストとインパクトは絶大。このあたりのコンセプトは決してデスメタル・ファンだけでなく、アンダーグラウンドな日本語ハードコア、殺害塩化ビニールやもっと80年代ハードコアの雰囲気が好きなら興味をそそるはずだ。オープニングを飾るタイトルトラック「曼​陀​羅」は、ガテラル念仏からドゥーミーなブルータル・サウンドで恐怖感をじわりじわりと煽り、急激にアクセルを踏み込むようなブラストビートで聴くものを地獄之門へと引き込んでいく。明らかに日本国外のブルータル・デスメタルには出せない独特のジャパニーズ・ホラーテイストが随所に感じられる好盤。

 

▶︎Post Mortal Possession 『The Dead Space Between The Stars』

2023年ペンシルベニア州ピッツバーグで結成。本作は3年振りとなる4枚目フルレングスで、ベーシストにShattered SoulやVictims of Contagionで知られるBob Geisler、ドラマーにErgodicやNokturnelで活躍するMatt Francisが新加入。ボーカルのJake MunsonとギタリストのJake McMullenはスラミング・ブルータル・デスメタル・バンドRepulsive Creationでも活動しており、グループのリーダーであるギタリストBrian Cremeensを除くメンバーはそれぞれに多くのデスメタル・バンドで並行して活動しているが、その中でもPost Mortal Possessionは近年めきめきと知名度を上げており、彼らが在籍するバンドの中で最もアクティヴであると言っていいだろう。

アルバムタイトルやイントロ「2053」からも感じられるように、絶望的に向かい破滅していく世界をテーマに描いたSF風味の作品となっており、映画「Blade Runner 2049」からのサウンドクリップが挿入されていたりして面白い。決して派手さはないものの、楽曲にドラマ性を与えるような微細なテンポチェンジやDecrepit Birthを彷彿とさせるメロディアスなギターソロ、ピッグスクイールやハイとローを巧みにスウィッチするガテラルもアグレッシヴ。

 

▶︎Vertiginous 『Reek Of Putrefaction Of The Excruciating Lust』

インドネシア・東ジャワ州出身。結成年月日は不明だが、Devouring CarnageやHephaestusほか10以上のバンドを掛け持ちするギタリストHendika Dwi Prasetyoと、同じくPerverationやInnocent Decomposureといった様々なバンドで活躍するボーカリストJossi Bimaによるユニットで、これがデビュー・アルバム。

数年前までは聴いた瞬間インドネシアと分かる何かがあったが、ここ数年は本当に分からない。めちゃくちゃ良くて調べたらインドネシアであることが多い。プログラミングではあるが、変幻自在に転調、拍の調子にも細かく変化を加えながら疾走するブラストビートを軸に、ノイジーなチェーンソーリフをゴリゴリと刻み続けていく。ただひたすらにそれを繰り返し続ける残忍さがもしかしたら今のインドネシアン・ブルータル・デスメタルなのかもしれない。

 

▶︎Masticated Whores 『Meat Hook Hookers』

アーカンソーから登場したニュー・バンド。ギタリストBrandon Holderly、ベーシストZac Dunn、担当パートは不明だがDallas Howellが在籍しているトリオ編成と取っている。Masticated Whoresの基礎にあるのは打ち込みのスプラッター・テーマのブルータル・デスメタルで、一聴するとどこにでもあるようなタイプのバンドなのだが、ところどころ挿入される奇天烈なサンプリング、たとえば宇宙人の拳銃から放たれるビームのような音、執拗なホラー映画からの引用を楽曲間に挟みまくるなど、かなり変わった作りの楽曲が次々と押し寄せてくる。作り込みが足りたい部分もあるが、それでも楽しく聴くことが出来る作品だ。ラストの「WOMB TOMB」にはリック・アストリーが1秒登場するので耳を凝らして聴いてみてほしい。

 

▶︎Desecation 『Left To The Trogs』

2020年にカリフォルニア・サンディエゴでスタート。Putrid Tombを脱退したギタリストMarc NovoaとボーカリストAlex Siskoを中心に、ギタリストからドラマーへとパートチェンジしたTodd Novoaのトリオ体制をとっており、彼らはDecorticateというバンドでも一緒だったメンバーだ (*Putrid Tombはボーカル/ドラマーKian Abullhosn以外のメンバーが脱退しており、2022年に解散を発表している)。映画「トマホーク ガンマンvs食人族」のサンプリングで幕開け。雪崩のようにBPMを操り、粘着質なリフが腐った体液のとろみをあちこち飛び散らせながらスラムリフを切り刻んでいく様はまさにブルータル。スラミングとも言えるが、ブラスティングパートが軸になっているように聴こえる。

 

▶︎Genophobic Perversion 『Amassed Putrefied Remains』

マサチューセッツ州ボストン在住のColin J. Buchananによるソロ・プロジェクトで、2020年に活動を開始してわずか4年足らずで32枚もアルバムをリリースしている狂人。これに加えておかしな量のEPやシングルも発表している。ブルータル・デスメタルというジャンルは10年単位でアルバムをリリースするバンドもごろごろいる中、彼の創作意欲には驚くばかりだ。

内容はカチカチのブルータル・デスメタルというより、ブラスティング・ブルータル・デスメタルをさらにスピードアップさせ、ゴアノイズ的ハーシュノイズウォールのレイヤーを重ねまくったもので、「これはブルータルデスメタルではないだろう」というリスナーも多いかもしれない。確かにこれはゴアグラインドでもあるし、ゴアノイズでもあるかもしれないが、プログラミングドラム、輪郭のボヤけたノイジーなリフであろうと、Genophobic Perversionのサウンドの根底にはブルータル・デスメタルの血が流れているように感じる。こういう作品が広く一般的に (とはいえエクストリームメタル・シーンの中で) 楽しめるようになると、さらにブルータル・デスメタルは面白いものになっていくだろうし、他ジャンルからの影響をどんどん取り入れてクリエイティヴに拡張していってほしい。そんなことをGenophobic Perversionを聴いて思った。

 

▶︎Restlessly 『Unforeseen Consequences』

インドネシア・ジョグジャカルタのトリオ、Restlesslyのデビュー・アルバム。Anthropophagus Depravity、Gerogotといったブルータル・デスメタルの人気バンドに在籍するRama Maulanaがドラマーを務め、同じくAnthropophagus DepravityのギタリストであるEko Aryo Widodo、Gory、Maggoth、Necrotic Catastrophism、Vile DesolationのボーカリストYudhaによって制作されている。ここ数年、特に2024年上半期のブルータル・デスメタルを追いかけていて感じたことは、ブルータル・デスメタルにも多様性のあるスタイルを持つバンドが増え、従来のブルータル・デスメタルというジャンルの持つ固定概念をぶち壊すような作品が多くリリースされていることだ。

このリストにもあるHypergammaglobulinemia、Effluence、Masticated Whoresもそうだし、アヴァンギャルド/エクスペリメント方面では Gorgutsのベーシストとして知られ、Behold the ArctopusのブレインであるColin Marstonの存在もブルータル・デスメタルをさらにエクストリームに推し進める可能性をシーンに示し衝撃を与えてくれているように思う。とはいえ、やはりストレートなブルータル・デスメタル、つまりはブラスティング・ブルータル・デスメタルを鳴らすバンドがいないことには、彼らの存在価値はそこまで重要視されなくなってしまう。そこでRestlesslyのようなバンドは貴重であると言える。規則性のないブラストビートはそこまで大きな転調を持たず、ひたすらに、ひたすらに叩き込む。そして多少のブラッケンドなメロディは盛り込みつつも、じっくりじっくりブルータルなリフを刻む。ハイピッチなシャウトやピッグスクイールもなく、ローガテラルを吹き込んでいく。ただそれだけのサウンドがどれだけブルータルなのか、再確認させてくれた作品。

ブルータル・デスメタル 2022年の名盤 (後編)

2022年にリリースされたブルータル・デスメタルの作品の中から素晴らしかったアルバムを年間ベスト・アルバムとしてピックアップしディスクレビューしました。前編も合わせて読んでみて下さい。

 

2022年にリリースされたブルータル・デスメタルの良曲をまとめたYouTubeプレイリスト

 

RIFF CULTのSpotifyプレイリスト「All New Brutal & Tech Death Metal」をぜひフォローして下さい。

 

ブルータル・デスメタル 2022年の名盤 (前編)

 

Syphilic – …And Justice For None

デトロイト在住のBrian Forgueによる孤高のワンマン・ブルータル・デスメタル・プロジェクト、Syphilic の通算9枚目・フルアルバム。長きに渡りSyphilicのおどろおどろしいサウンドをアートワークに落とし込むTony Cosgrove のえぐいアートは本作も素晴らしいですね。

 

Syphilic がFacebookに投稿しているレコーディングの様子がヤバいです

 

一聴すると打ち込みドラムが乱雑に、そして単調に叩き込まれる2010年代前後のワンマン・ブルータル・デスメタルに聴こえるかもしれませんが、その単調さが生み出す不気味さや無機質さがSyphilicの良さで、打ち込みのつぎはぎっぽさは、うねり続けるリフが上手くグルーヴに昇華しています。それを面白いと思えたら、Syphilic ハマると思います。この感じはバンドには出せない。

 

 

Organectomy – Nail Below Nail

ニュージーランド出身の5人組、Organectomy の通算3枚目・フルアルバムは前作に続きUnique Leader Records からのリリース。スラミング・スタイルのバンドですが、そこまで大胆にスラムに特化しているわけではなかったので、スラミング・ブルータル・デスメタルの年間ベスト・アルバムではなく、ブルータル・デスメタルの年間ベストとして、こちらにレビュー書きたいと思います。

 

ボーカルのTylerのソロプロジェクトとして始動

 

Secularityというテクニカル系バンドにも在籍するギタリスト Matthew Bolch と Sam McRobert のコンビが良く、単なるスラム・バンドでないセンスの良さからUnique Leader Records も食い付いたんではないかと思います。重量感のあるスラム・リフの隙間に差し込まれるメロディックなエレメンツはデスコアっぽさもあり、特に「Breeding Chaos」はDespised Iconを彷彿とさせるリフが面白いです。2010年代前後、The FacelessやDespised Icon辺りハマってた人、Organectomy オススメです。

 

 

Anal Stabwound – Reality Drips Into The Mouth Of Indifference

アメリカ・コネチカット在住のミュージシャン Nikhil Talwalkar によるワンマン・プロジェクト Anal Stabwound のセカンド・アルバム。Nikhil はなんと2005年生まれ、弱冠17歳の若きブルータル・デスメタラーで、2018年にこのプロジェクトを始動させたそう。となると13歳で始めたということですね。凄すぎる…

 

Nikhil Talwalkar

 

自身のYouTubeチャンネルでDefeated Sanity の完璧なドラム・カバーをアップしていることからも分かるように、Anal Stabwound のサウンドもDefeated Sanity を彷彿とさせるプログレッシヴなビートがカオスに渦巻くブルータル・デスメタル。全ての楽器を自身でこなし、複雑怪奇な楽曲を鮮やかにプレイ。様々なプロジェクトにフィーチャリング・ゲストとしても参加しており、今後シーンのキーマンになりそうな人物。

 

 

Phalloplasty – 27 Club

 

ラスベガス在住の Zack “Plasty” Shaw によるワンマン・プロジェクト、Phalloplasty の5年振り4枚目となるフル・アルバムはCDN Recordsがリリースを手がけた。最近、ブルータル・デスメタルって、ソロ・プロジェクト向きな音楽なのかなと思ったりしてます。前述のSyphilic やAnal Stabwound も楽曲構成から「一人で作ってるからこそ作り上げられるサウンド」であるというのが伝わってくる。

 

Zackは打ち込みバックにライブも一人で行う

 

Phalloplasty は人力では不可能なウルトラ・マシーン・ドラムの音速ブラストビートを中心に、非常にグルーヴィなリフを織り交ぜていく。ところどころ適当なのが味になっているのも10年以上、毎年のようにリリースを続けてきたからだろう。

 

 

 

Inhuman Depravity – The Experimendead

 

トルコ・イスタンブールの女性ボーカル・ブルータル・デスメタル・バンド、Inhuman Depravity のセカンド・アルバム。毎週まとめてチェックすることを日課にしているSlam WorldwideのYouTubeチャンネルで見つけてからこのアルバムの存在を知りましたが、かなり良くて結構リピートしてました。

 

ボーカルのLucy Ferra、美しい

 

特に良さを感じたのはドラム。ファストな楽曲が多い中で細部に至るまでセンス良く小技を差し込みます。ミュージックビデオにもなっているアルバムのタイトル・トラック「Obsessed with the Mummified」はInhuman Depravityの魅力が炸裂してます。ドラムについでベースもテクニカルで、ギターのリフのグルーヴィ。ボーカル Lucy Ferra も華があってフロントマンにぴったり。Abnormality が解散し、女性ボーカル・ブルデスはStabbingとInhuman Depravityが頭角を表してきた感じですかね。他にも良さげなバンドあれば紹介したいです。

 

 

Impure Violation – Knee Deep In The Dead

オーストラリア出身、Ungodly Ruins Productionsから7年振りとなるセカンド・アルバム。OmnioidのボーカルEwza Lambertがギター/ボーカルを兼任し、Egregious、Impulsive GluttonyのAlexey Mamontovがドラムを務めるユニット。

アートワークからも分かるように、マシンガンをぶっ放すかのようなブラストビート (そして実際に炸裂する銃撃音)の野蛮さ、それを凌駕するかのようにダイナミックなリフとガテラルがグルーヴィに刻み込まれていく。まとまりもありつつ、カオティックな雪崩展開もあり聴きごたえ十分。

 

 

 

Psychophagia – Arousal Euphoric Debauchery

 

Apoptosis GutrectomyのDeni、Julianusからなるブルータル・デスメタル・ユニット。元々はトリオ編成でアメリカ在住のメンバーがいたようだが、Deniが全てのパートを担当しJulianusがボーカルを担うといったスタイルへと落ち着いた。本作はEPであるが、充実した内容で聴きごたえたっぷり。いわゆる「インドネシアン・ブルータル・デスメタル」の直球を鳴らすバンドで、突進し続けるブラストビートが微細に揺れつつ、ゴリゴリとかきむしるようなリフが蠢く。重さではなくスピードを楽しむブルータル・デスメタルの好盤と言えるだろう。

 

 

 

Deformatory – Harbinger

 

カナダ・オンタリオ出身の中堅、Deformatoryが昨年リリースしたアルバム『Inversion of the Unseen Horizon』から間髪入れずにリリースしたEP。Metal Archivesではテクニカル・デスメタルとジャンル分けされているが、じっくりと聴き込んでみると彼らのサウンドは「テクニカル・ブルータル・デスメタル」とした方がしっくりくる。

 

テクニカル・デスメタルの名産地カナダらしいドラミングは驚異的なスピードで叩き込まれ、時に光をも追い越すようにしてペダルが踏み込まれていく。個性的なリフはメロディックであるが、超高速なチェーンソーリフにも聴こえてくる。コンパクトなサイズながら詰め込まれた音の数はダブル・アルバムくらいかるかもしれない。ドラマ性を排除しつつもメロディアスな面白い一枚。

 

 

Desecrate The Faith – III

 

テキサス出身の5ピース Desecrate The Faith の通算3枚目フル・アルバム。アルバムタイトルはシンプルに「Ⅲ」なのはちょっと簡素すぎかなとは思うが不気味なアートワークから漂う名作の香りに釣られ腰を据えて聴きたくなる。まず把握しておきたいのが豪華なメンバーラインナップ。ボーカルはGorgasmのJohn Hull、Brand of SacrificeやEnterprise Earthといったデスコアの第一線で活躍するバンドで活躍し、過去にはRings of SaturnやInternal Bleedingでそのブルータル魂を炸裂させてきたドラマーMike Caputoが中心となっている。

 

 

純粋にデスメタルをブルータルにプレイしたキャッチーなサウンドは、Johnのディープなガテラルが圧倒的な存在感を放ち、じっとりとグルーヴを巻き上げていく。デスメタリックなギターソロも流石の一言。

 

 

Vaginal Addiction – Indulging In Barbarism

カナダ・ケベックのアンダーグラウンド・ブルータルデスメタル、Vaginal Addictionのセカンド・アルバム。バンド名、アートワークから漂う血生臭い下劣さが好きなのであれば、サウンドも間違いなく気にいるだろう。派手なスピード感、ヘヴィさはないものの、腐臭漂うガテラルとスプラッター/ポルノビデオのサンプリングを雑多に盛り込み、ドロドロしたリフをキャッチーに展開させていく。その展開の要となる転調で差し込まれるリフやドラミングに才能を感じる。何度も聴いているうちに癖になる、玄人向けの作品。

 

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP15 (2022年下半期)

毎年12月はニュースの更新をストップして、その年にリリースされたアルバムをジャンルごとに改めて向き合い、年間ベスト・アルバムとしてピックアップしアルバムレビューをしています。毎年時間オーバーになってしまいレビューの執筆を諦めてしまうアルバムが数枚あったりしたので、デイリーチェックしているジャンルに関しては上半期と下半期に分けて執筆することにしました。

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP5 (2022年上半期)

 

ジャンルに関しては、スラム・リフが主要になっている楽曲構成であれば「スラミング・ブルータル・デスメタル」にカテゴライズしていますが、中にはデスコアであったりスラミング・ビートダウンと呼ばれるビートダウン・ハードコアの一派としてカテゴライズされることが多いジャンルも含めてまとめています。ですので「これはブルデスじゃないだろ!」ってバンドも入ってたりしますがそこはご了承下さい。

 

シングルリリースのみなどで良かったバンドはYouTubeプレイリストにまとめています。下記をチェック!

 

 

 

Agonal Breathing – Bloodthirsty Mutilation

ベネズエラを拠点とし、Interdimensional Hypernovaなどで活動する若きマルチ・ミュージシャンLuis Floresとアメリカ在住でExtended PutrefactionやIncestuous Impregnationでボーカルを務めるBrandon Smithによるプロジェクト。二人は別にSchizophrenic Tortureというユニットも行っているがそちらは休止状態。セカンド・アルバムとなる本作は、過剰なダウンチューンを施しノイズの塊となったリフが地底の最深部に響くような金属スネアのエコーと混ざり合う限界スラムに仕上がっている。それでいて、何重にもスラミング・パートを折り重ねていく徹底振り。

 

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Kanine – Karnage

2020年フランス・ストラスブールで結成。ボーカリストJason Gerhard、ギタリストAlecandre Lorentz、ベーシストLucas Eckert、ドラマーGabriel Labeauvieの4人体制で活動をスタート。デスコア・バンドを自称する彼らであるが、そのサウンドは「スラミング・ブルータル・デスコア」と形容するのが正しいだろう。アートワークを彷彿とさせるハイ&ロー、そしてさらにディープなガテラル・ヴォイスがケルベロスのようにして交互に咆哮、その展開はNo Face No Caseにも似たスタイルと言える。

 

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Frog Mallet – Frog Mallet EP

カエルをテーマにしたデスメタルを鳴らすFrog Mallet、昨年リリースしたデビュー作『Dissection by Amphibian』から短いスパンで発表されたセルフタイトルEP。本作からボーカリストCaden Frankovich、ギター/ボーカルSean McCormack、ベーシストAnton Picchioni、ドラマーCody Cahillというラインナップとなっており、それぞれに本業のバンドを持っている。ウシガエルがハンマーを持ったロゴが強烈で、バンド名だけ聴くとチープな打ち込みスラムゴアのように感じるが、そのサウンドはSanguisugaboggにも似たオールドスクール・デスメタルを下地としたもので、殺傷能力の高いリフを無慈悲に刻み込んでいく正統派スタイル。

 

 

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Perversity Denied – The Arrival Of The Majestic End

2007年コロンビアの首都ボゴタで結成。Sistematic CoprophagiaのAlexander Clamotが中心のバンドで、本作はボーカルにCristianとGorepotのLarry Wang、ギタリストのWilsonとJohan、Virus InjectionのベースStevenが参加し国際的なラインナップとなっている。どっしりと血の気の多いリフがスペクタルに炸裂、リードシングル「Scavangers of the Cosmos」はチープさが言いようのない不気味さを醸し出している。

 

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Human Barbecue – Red Sun Rising

2015年ベルギーのリエージュで結成。Putrified JやImpure Violationで知られるJason Lambertのソロプロジェクトとして2015年に始動。2018年からFermented MasturbationやHuman Vivisectionで知られるRoy Feyenが加入しユニット体制となった。互いにドラムプログラミングやボーカルを担当、Jasonがギター、Royがベースを弾くスタイルで制作された本作は、 非人力のドラミングのかっちりとしたキャッチーなビートに突き刺さる鋭利なスラムリフはビートダウンしながらデスコアをヒントに加速していく。

 

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Parasitic Infestation – Intergalactic Harvest

2018年ニュージーランド・オークランドで結成。ボーカリストLiam Handが在籍している二つのバンドのメンバーがそれぞれ集まり、Silent TortureからギタリストのAidenとGrady、ObsidiousからドラマーBlake、ベーシストJacobが参加。シングル・リリースを経て発表されたデビュー作は、ミディアムテンポを基調とした粘着質なスラムリフが急減速していくビートに粘液を滴らせながら刻み込まれていく。Knocked Loose的なアプローチも交えつつ、無慈悲なParasitic Infestationワールドを展開。

 

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Goat Ripper – Goat Ripper

2018年にアゼルバイジャンの首都バクーで結成。地元のスラッジ/ストーナー・メタル・バンドPyraweedのメンバーであるベーシストZakir GasimovとドラマーでSerumhatredなどに在籍したNijat Hesenzadeが中心となり、ギター/ボーカルのKhagan Mammadovを加えたトリオ編成で本作を完成させた。製鉄工場のエコーのかかった金属音を想起させるスネアがじわじわとグルーヴをうねり出しながら、メロディアスなリフを地獄の淵へと誘っていく。装飾をそぎ落とし、可能な限りトリオ編成の旨味を引き出すことに注力したことが言いようのないGoat Ripperらしさを醸し出している。

 

アゼルバイジャンの位置。首都バクーは城塞都市として有名

 

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Gates To Hell – Gates To Hell

2019年アメリカ・ルイビルで結成。ニューヨークのアンダーグラウンド・ハードコア、そしてデスメタル・シーンで実直なライブ活動をこなしながらEPのリリースを立て続けに行い、Barbaric Brutalityからコンピレーション作『Dismembered On Display』を発表。映像メディアhate5sixによってライブ映像が撮影、公開されたこともありヘヴィなハードコア/デスコア・リスナーを中心に人気を博した。モッシュを誘う暴力的な展開、ミュージックビデオにもなっている「Blood Lust」は隠し味として組み込まれたスラミング・スピリットがフロアを血の海にしてしまう。

 

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Grieve – Pit Of Despair

Biohazardous Human MetamorphosisやPutrified Dab Rig等、新世代インターネット・スラムを現実空間でプレイするJacob Bargasのプロジェクトとして始動。2021年にCondemnedのボーカルで元PathologyのClayton Meadeが加わり、ユニット体制で動き出した。果てのない暗闇に無限に広がっていくかのようなサウンド・デザインで鳴らされるGrieveの音はJon Zigの描いたブルータルなアートワークの非現実感を巧みに表現している。一切のメロディを排除した残忍極まりないスラム快作。

 

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Guttural Engorgement – 33 In The Crawl Space

前作『The Slow Decay of Infested Flesh』は世界中のブルータル・デスメタル・リスナーから高い評価を得たものの、同年活動休止。2度のストップを経て15年振りに動き出した彼らのセカンド・アルバムはBrutal Mindからリリースとなった。オリジナル・メンバーのボーカル/ギターMark Rawlsと、本作から加入したIntracranial PutrefactionのドラマーJosé Osuna、Human DecompositionのDaniel Españaがギターとベースを兼任している。クラシックなスラム・グルーヴがじわりじわりと砂塵を巻き起こすかのように繰り広げられ、2000年代初頭にタイムスリップしたかのよう。そして何と言ってもMarkのエグすぎるガテラルのインパクトは絶大。現代スラムのヘヴィネスとは別に評価すべき作品。

 

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Iniquitous Monolith – Sledgehammered

2015年パースで結成。活動休止中のEntrails Eradicatedのメンバーとして知られるボーカリストTarren Whitfield、ギタリストLynton Cessford、そしてNails of ImpositionのドラマーBrendan Nock、DeathFuckingCuntのベーシストBrad Trevaskisが加わり活動をスタート。自身のサウンドを「Guttural Horror Slam」と自称、ホラー映画のサンプリングをふんだんに盛り込み、各パートの技量の高さが各所に垣間見える。最も威力を発揮するスラミング・リフもソリッドで切れ味抜群。

 

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Invirulant – Indomitable Worldwide Slamdemic

2022年にNecrambulantから改名する形でスタート。EnfuckmentのBrandon ShobeとMark Little、Vile Impregnationに在籍した経歴を持ち、ギタリストのDerek Ryanと共にJotunsblodで活動していたTriston Cheshireの4人体制で本作をレコーディング。ピッキングハーモニクスを有効に組み込みながら流れるようにスラムリフを刻み込んでいく。2020年代の典例とも言うべきヘヴィとフックにフォーカスしたスラミング・サウンドはもはやダンス・ミュージックだ。

 

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RIFF CULTのSpotifyにて「All New Brutal & Tech Death Metal」のプレイリストを公開中。ぜひお気に入りに追加して下さい。

 

 

Crypt Rot – An Ancient Summoning

イングランド・ウェールズを拠点に活動するCrypt Rotのデビュー・アルバム。同郷のDry Cough Recordsからリリースされ、フィジカルはBrutal Mindから発表されている。ここ数年でメキメキと実力を付けてきたドラマーJustin Wallischは、Between the KillingsやMaimed、Necessary Death、Severed Headshopなどを兼任しておりUKブルータル・シーンで今後キーマンになりそうな人物。ギターとベースを兼任するTom HughesはMaimedでもJustinとタッグを組んでいる。

 

ロゴが良い

 

ボーカルKyleを加えたトリオ編成で制作された本作は、キャッチーなスラムリフが豊かなグルーヴを生み出し、タイトなドラミングがドライヴする。これだけ聞くとスラミングなのかと思うだろうが、楽曲群はどれもピュアなブルータル・デスメタルに近い美的感覚を持ってして仕上がっていると言えるだろう。「UKのPathology」とでも言うべき純なブルデスの魅力が感じられる。タイトルトラック「An Ancient Summoning」はガテラル唱法において優秀な楽曲でもある。

 

 

Guttural Disease – The Foreseen Deadline

インドネシア・西ジャワ州の州都バンドンを拠点に活動するGuttural Diseaseのファースト・アルバム。結成は2011年と中堅の域にあるバンドであるが、2020年にギタリスト、ベーシストが加わり5人体制となったことで活動が本格化。Brutal Mindの猛プッシュもあり、リリース前から何かとよくその名を目にしてきた。

 

Guttural Disease

 

ドラムのサウンド・プロダクションから察するに、Disgorgeの影響が強くドライなスネアのいぶし銀の響きがなんとも心地良い。オールドスクールなリフも時折スラムしつつ、初期Deeds of Flesh的なギターワークもあり面白い。クラシックなブルデスを現代に鳴らす貴重な存在。

 

 

Sermon of Mockery – Crippler Crossface Murder Suicide

 

Mortal Decayのボーカリスト John Paoline とウクライナ在住のミュージシャンらからなるニュー・バンド、Sermon Of MockeryのデビューEP。2022年はウクライナにとって非常に辛い年であったが、意外にもジャンル問わずメタル・シーンが完全にストップしてしまうことはなかった (作品自体は戦争が始まる前に作られていたのかも)。

 

ロゴが素晴らしい

 

キーウ在住のドラマー Lev Kurgansky はPosthumous Blasphemer、Disarticulating Extinguishment、Ezophagothomia、Fleshgoreなどにも在籍した経歴があり、その腕はお墨付き。意外にもJohnはMortal Decay一筋だったこともあり、テイストの違うサウンド上でのガテラルは新鮮。リミッターの外れたドラミングは素晴らしく、このドラムが聴きたくて何度も聴いた一枚。アートワークは最高のJohn Zig。

 

 

Gargling – Depraved Ingestion Of Cranial Discharge

とにかくこの強烈なアートワークに衝撃を受けた。ここまでエネルギッシュな嘔吐にフォーカスした作品は見たことがない。このジャケだけで今年のベスト・アルバムは間違いないと確信したが、内容も素晴らしかった。2019年にCarbonized InnocentsやCryptophthalmosなどに在籍するMax RiveraとBrutal Scat、Fetid Bowel Infestation、NecrogasmのHarry Morganによって立ち上げられ、Maxは全ての楽器をこなし、Harryがボーカルを務めている。タイのEccymosisをはじめ、New Standard Elite直系とも言える雪崩系のドラミングが時折スラムパートを交えながら突進、猛獣のようなガテラルが何重にも重なっていく爽快感がたまらない。

 

 

Congenital Anomalies – Systematic Violence

チェコ・プラハを拠点に活動するCongenital Anomaliesの通算3枚目・フルアルバム。Lord of the Sick Recordingsのリリースでスラミング・ブルータル・デスメタル・バンドとして知られるが、どちらかと言うとDying Fetus直系のグルーヴィー・ブルータル・デスメタルと言ったスタイル。突出した個性はないものの、単純明快な楽曲構成、ブラスト一辺倒ではなくしっかりとグルーヴ重視のリフとドラミングが良い塩梅で組み込まれている。もちろんスラムパートもガッツリあるが、Congenital Anomaliesの魅力はどちらかと言うとスラムへ接続するまでの展開にあるように聴こえる。

 

 

Antropofagus – Origin

イタリア・ジェノヴァの重鎮、Antropofagus の5年振り通算4枚目のフル・アルバム。”Meatgrinder”を名乗るギタリストFrancesco Montesanti以外にオリジナル・メンバーはおらず、皆それぞれにいくつものバンドを掛け持ちしており、実質Meatgrinderのバンドと言えるだろう。本作からボーカリストにDevangelicの Paolo Chiti が加入。ブルータル・デスメタル・シーンを代表するドラマー Brutal Dave のマシーンのように正確なドラミングの上でしっかりとデスメタリックなボーカルが際立っている。繊細なメロディの輝きを微細に捉えながらも力強いリフで牽引していくMeatgrinderの確かな技術に圧倒される。グルーヴや転調など、そういったことが一旦置いておいて、芸術作品としてじっくりと聴き込むべき一枚。

 

 

Insect Inside – Into Impending Apotheosis

ロシアン・ブルータル・デスメタルの有名人達によって2017年に結成されたInsect Inside。昨年、デビュー・アルバム『The First Shining of New Genus』をリリースしているので、名前を聴いたことがあるというブルータル・デスメタル・リスナーは多いかもしれない。

 

Disfigurement of Flesh、Morphogenetic Malformation、Traumatomyと錚々たるバンドでドラムを務めるDaniil Sementsovの叩き出す個性的なグルーヴは輪郭をどんどんぼかしながら時にテクニカルに疾走。もう一つ彼らの特筆すべき点はEmbodiment Elimination、Equivokeなどに在籍するギタリストMikhail Lukoyanovのギターワーク。微細にエディットしたことで生まれるグルーヴを爆発させながらInsect Insideの世界観を演出する。アートワークもDisgorgeの『Parallels of Infinite Torture』を彷彿とさせる色味、構図で狙いが感じられる。

 

 

Vomit Forth – Seething Malevolence

アメリカ・コネチカットの新鋭、Vomit Forthのデビュー・アルバムはCentury Media Recordsからと言うことで、ブルータル・デスメタルというより、さらに広域のデスメタル・シーンに向けてアプローチされている。2018年結成、メンバーそれぞれに輝かしいキャリアがあるわけでなく、このタイプのバンドがCentury Media Recordsからデビューというのだから、やはりどこか引っ掛かる個性がある。

Sanguisugaboggのようなオールドスクール・デスメタルとスラミング・ブルータル・デスメタルがクロスオーバーして発生したデスメタル・ヘッズの為のビートダウン・メタルを鳴らし、その魅力はライブ映像のフロアの盛り上がり方を見るとよく分かる。Internal Bleedingのスラム成分が現代版にアップデートされたかのようなサウンドは希少価値が高い。

 

 

Excrescence – Inescapable Anatomical Deterioration

2020年にワシントン州タコマで結成されたニュー・バンド。New Standard Elite からのリリースということで、そのサウンドはなんとなく想像することが出来るだろう。もはやグルーヴを成さない強烈なブラストビートが音速で駆け抜けていき、ノイズの壁となって押し寄せてくるリフも完全にリミッターが振り切れてしまっている。彼らが面白いのは、他のNew Standard Eliteのバンドがノンストップで駆け抜けていくのに対し、しっかりとブレイクダウンやスラムパートを挿入しているところだ。ここまでやっていいのかと他を圧倒する、エクストリームな一枚。

 

 

Between The Killings – Reflection Of Murder

ベテラン揃いの新鋭バンド、Between The Killings のデビュー・アルバムはComatose Musicから。LividityやDeadenで活躍したギタリストVon Young を筆頭に、Necessary DeathやMaimedのベースIanとドラムJustinのコンビらが安定感のあるブルータル・ビートを生み出していく。スラムベースでありつつも幾度も急加速し、砂塵の如くグルーヴを巻き上げていく。不気味なメロディからは血が滴り落ちるかのような殺気が立っており、Between The Killingsサウンドを不気味に仕立てる。現代スラムはちょっとコッテリ過ぎる、というブルータル・デスメタル・リスナーには耳馴染みの良い一枚だろう。

 

 

 

ブルータル・デスメタル 2022年の名盤 (後編)

2022年上半期ブルータル・デスメタル 名盤TOP5

 

2022年上半期にリリースされたブルータル・デスメタルの名盤を5枚ピックアップしレビューしました。ビッグ・リリースはなかったし、スラミング・ブルータル・デスメタルが主流になった今、直球ブラスティング・スタイルを鳴らすバンドは天然記念物並みに希少価値が高くなってしまった。今年に入ってブラスティング・スタイルのトップレーベルだったNew Standard Eliteが動かなくなってしまい、それらのバンドがゴアグラインド/ゴアノイズ系へ流れていってしまったように思う。ゴアノイズは音楽的な面白みはないけどブルータル・デスメタル・カルチャー的なジョークとして追いかけてて面白いものの、ブルータル・デスメタルはそのサウンドで喰らいたいものだ。今回ピックアップした5枚は順不同だが、ナンバーワンはSijjeel。シングルのみリリースしたバンドについては別の機会に振り返っていきたい。

 

 

Sijjeel 『Salvation Within Insanity』

出身地 : サウジアラビア
▶︎https://comatosemusic.bandcamp.com/album/salvation-within-insanity

 

グラインドコア・バンド、Creative Waste のギタリストとして知られるHussain Akbarを中心に始まったこのプロジェクトは、2020年にKorpseなどでの活躍で知られるボーカリストFloor van Kuijk、Stillbirth、Placenta PowerfistのベーシストLukas Kaminskiが加入したことで本格的に動き始めた。EP『Cyclopean Megaliths』を経てComatose Musicと契約しデビュー・アルバムとしてリリースされた本作は、暴虐性を全面に出しつつも、しっかりとデスメタルの美学を貫いた作品で、ブルータルなリフとメロディアスなベースラインが竜巻のようにして展開し続けていく。Defeated Sanityを彷彿とさせるそのサウンドはより深い漆黒の闇の中を駆け巡っていくかのようだ。

 

 

Scrumptious Putrescence 『CanniBaalistic Offerings』

出身地 : スペイン
▶︎https://amputatedveinrecords.bandcamp.com/album/cannibaalistic-offerings

 

2018年結成、Scrumptious Putrescenceのデビュー・アルバム。現代ブルータル・デスメタルの中でもマニアックな人気の高いCarnivorous VoracityのボーカリストSeyerotをはじめ、Arthropodal HumanicideのLörd NebirøsとOskar Noctambulantが参加している。サウンド・プロダクションはチープでお世辞にも良いとは言えないが、ブルータル・デスメタルにそれは重要ではない。本作は異なるフレーズを切り貼りして繋ぎ合わせたり、反復させたりしながら最終的にドラマティックにまとまっていくという、不思議な作品。ところどころで楽曲のキーとなってくるメロディックなエレメンツはThe FacelessやRings of Saturnといったプログレッシヴさがある。一見なんの変哲のないアルバムだが、実は細かい面白さがあったりする。

 

 

Filthed 『Loathsome』

出身地 : ロシア
▶︎https://lordofthesickrecordings.bandcamp.com/album/loathsome

 

2017年からロシア・モスクワで活動する2ピース・ブルータル・デスメタル・バンド、Filthed。
Lord of the Sick Recordingsと契約してリリースされたデビュー・アルバムは、古き良きアメリカン・ブルータル・デスメタルを独自に混ぜ合わせたかのような作品でなかなか聴きごたえがある。Internal Bleedingすぎるスラム・パート、さらにハードコアに寄ったモッシュ・パートで血管を膨張させながらも、ピュアすぎるブラストビートで疾走したりする。一周回ってこのくらい純度の高いブルータル・デスメタルが心地良く感じる。

 

 

Horde Casket 『Plague Supremacy』

出身地 : アメリカ・オクラホマ州
▶︎https://hordecasket.bandcamp.com/

 

2006年から活動を続けるブルータル・デスメタル・中堅、Horde Casketのキャリア初のEPは、中心人物Steve Giddensを軸に、ドラマーにBrain DrillやSleep Terror、Six Feet UnderからThe Facelessなどに在籍してきた凄腕Marco Pitruzzella、Formaldehydeで20年以上活動してきたボーカルGreg Dukeが加わりトリオ編成で制作された。これまで5枚のアルバムをリリースしてきたHorde Casket。その存在感は決してブルータル・デスメタル・シーンにおいても突出したものはないが、個人的には、ハズレのない安定感のあるバンドで好きなバンドの一つ。EPというコンパクトな仕上がりだが、Marcoのドラミング、そしてSteveのクラシックなリフワークに脱帽。Severed Recordsらしい粘着質なグルーヴもあり流石だ。

 

 

Embryonic Devourment – Heresy Of The Highest Order

出身地 : アメリカ・カリフォルニア州
▶︎https://uniqueleaderrecords.bandcamp.com/album/heresy-of-the-highest-order

 

2003年から活動するベテラン・ブルータル・デスメタル・バンド、Embryonic Devourmentが、
Deepsend RecordsからUnique Leader Recordsへと移籍してリリースした通算4枚目のフルアルバム。新たにギタリストDonnie SmallとBen Harrisが加入し、若返りを果たした彼らのサウンドは、ミニマルな質感とプログレッシヴな小技が効いた渋い仕上がり。近年スラミング・スタイルのバンドをはじめ、デスコア方面のアーティストと契約を続けてきたUnique Leader Recordsが伝統的なブルータル・デスメタル、その中でも派手さのないマニアックなスタイルを持つEmbyonic Devourmentと契約したことが何より嬉しい。スピード、というよりはデスメタルのえぐみに真面目に向き合った一枚で好感が持てる。ただアートワークが下品すぎるのがマイナス…。

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP5 (2022年上半期)

 

すっかりブルータル・デスメタルの主流スタイルとなったスラミング・ブルータル・デスメタル。もはやブラストビートで突進し続けテクニカルなリフを詰め込んだサウンドは希少種となっている。ただ、スラミング・スタイルが主流となったことで、デスコアやビートダウン・ハードコアとの結びつきが深まったことは、ブルータル・デスメタル全体の活性化にとって良いことだと思う。クラシックなブルータル・デスメタルが好きな方には少し寂しい状況かと思うが、この流れに乗って世界各地でブルータルなサウンドが盛り上がるのが一番大切だ。

 

自著『ブルータルデスメタルガイドブック』の中でスラミングとはどのようなものなのかについて書いているが、ありがたいことになかなか手に入りづらい状況で購入できない方も多いと聞く。またの機会にスラミングについて解説するが、今回紹介する5枚を聴けば、自ずとそれがなんなのか、そしてその魅力や特徴はなんなのかが掴めるはずだ。

 

そして、このサイトの読者の皆さんで「こんなのも良かったよ」というオススメがあれば、ぜひコメントで紹介してみて下さい。

 

 

Gutrectomy 『Manifestation Of Human Suffering』

出身地 : ドイツ
▶︎https://gutrectomy.bandcamp.com/album/manifestation-of-human-suffering

衝撃的だったデビュー・アルバム『Slampocalypse』から5年。その間、EP『Slaughter the Innocent』のリリースや、SLAM WORLDWIDEを通じシングルを発表し続けており、シーンにおいての存在感はずっとあった。新たにベーシストLouis Weber、ドラマーSimon Wernertが加入してからのGutrectomyは、Simonの高いドラミング・スキルによってスラムパートへの導入部分のリズム・パターンがバラエティ豊かになったように感じる。ビートダウンしてからも重量感のあるリフの上を転がるようにハイピッチ・スネアを差し込んだり、アクセントとなるシンバルワークによって、各楽曲に新たな個性を与えてくれる。天性のリフ・センスでモッシーに展開し続ける本作、一押しは「Scorched Earth (ft. Dustin Mitchell of Filth)」、「Cranial Excavation」、「Apocalyptic Squirt Tsunami」の3曲。

 

 

Analepsy 『Quiescence』

出身地 : ポルトガル
▶︎https://analepsy.bandcamp.com/album/quiescence

Gutrectomyと並んで、ワールドワイドな人気を誇るAnalepsyのセカンド・アルバム。前作『Atrocities from Beyond』発表後、私が運営するRNR TOURSで来日ツアーも果たし、数少ない現代スラム・リスナーが各地公演に訪れていたのは嬉しかった。当時のメンバー全員がナイスガイで、ツアーも素晴らしい思い出になっている。残念ながらAnalepsyのリーダーでありMiasma RecordsのオーナーMarco Martins以外のメンバーが本作前に脱退。新体制で制作された本作は、デスメタリックな魅力を改めて追求し、自身が鳴らしてきたスラミング・ブルータル・デスメタルに注入したような仕上がりで、個人的にはAnalepsy史上最高傑作。引き締まったサウンド・プロダクションによって殺傷能力を増したスラムリフは、しっかりデスメタリック。ビートダウン・ハードコア・リスナーには受けないかもしれないが、メタル・リスナーのスラム入門アルバムとして今後その重要度が高まってくる可能性がある。

 

 

 

Kraanium & Existential Dissipation – Polymorphic Chamber of Human Consumption

出身地 : ノルウェー/カナダ
▶︎https://www.youtube.com/watch?v=iL_k6V5Vndc

北欧スラム・キング Kraaniumとカナディアン・スラム・カルト、Existential Dissipationのスプリットは、Existential DissipationのボーカルだったBob Shawの遺作。BobはCuffなどマニアックなスラムバンドで活躍し、シーンの人気者だった。両者共に血生臭いブルータル・デスメタルをベースにダイナミックなスラムリフを刻み続けていくスタイルで、現代スラムの礎とも言えるクラシック感がある。GutrectomyやAnalepsyといった正統派とは違うデスメタルの荒々しさを味わうには最適な作品と言えるだろう。それにしてもこの作品で聴けるBobのボーカル、すでに人間味がなく良い意味で不気味だ。

 

 

 

Peeling Flesh 『Human Pudding』

出身地 : アメリカ・オクラホマ州
▶︎https://viletapesrecords.bandcamp.com/album/human-pudding

2021年結成、スラム・シーンの超新星Peeling Fleshのデビュー・アルバム。昨年発表したEP『Slamaholics Mixtape』でシーンの話題をかっさらった彼ら、ドラマーはVile Impregnationでも活躍する23歳のJoe Pelleter、そしてAberrant Constructのメンバーもいるというから聴く前からどんなに凶悪なスラムか想像出来る。ヴィジュアルを見る限り、ノリはビートダウン・ハードコアやデスコアっぽく、ボーカルのDamonteal Harrisに関してはヒップホップ的なヴァイブスもある。しかしアートワークやリフから滲み出てくる強烈なブルータルさは本物で、かなりディープなブルータルデスメタルの世界観を理解していないと表現できないツボを押さえている。RIFF CULT的には上半期スラムはPeeling Fleshがダントツでナンバーワン。

 

 

Vile Impregnation 『SLAVE』

出身地 : アメリカ・テキサス州/オクラホマ州/アリゾナ州
▶︎https://realityfade.bandcamp.com/album/slave

2009年からスタートしたVile Impregnationであるが、すでにオリジナルメンバーは脱退済み。現体制で動き出したのは2016年ごろからになる。それぞれにいくつものサイドプロジェクトを持つ若きミュージシャンらが集結、Devour the Unbornなどで知られるJosh、InfantectomyのTriston、そしてPeeling FleshをはじめStranguledにも在籍したJosephのトリオ体制で、かなりマニアックなことをやっている。いわゆる溺死系と言われるガテラルで、ゴアグラインド/ゴアノイズ的な面白さもありつつ、基本はスラムリフを刻み続けていく無慈悲なスタイル。個人的なツボとしてライブメインでなく、音源制作に重きを置いたバンドが好きで、このバンドはロゴから楽曲スタイルからツボにハマる要素がたっぷり。若干のシンフォニックなアレンジも全然良くないが良い。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?すでに聴いたものもあったと思いますが、最後の2枚はまだチェックしていないという人もいるかと思います。マニアックなバンドをたくさん知っているとか、いち早く新譜をチェックしていることは関係なく、自分のお気に入りのスラミング・スタイルのバンドがどんな影響があるのか、どんなシーンに属しているのか、どんなメンバーがいるのか、そういうところをもっと知っていくことを極めていけば、さらにディグが楽しくなると思います。この記事はコメントが出来るので、みなさんのおすすめがあればぜひ書き込んでみてください。

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP15 (2022年下半期)

ブルータル・デスメタル 2021年の名盤 9選

 

今年もこの時期がやってきました。RIFF CULTで1年間紹介してきたブルータルデスメタルのニュースを改めて自分で読み直し、良かった作品を聴き直し、ピックアップしてみました。

 

ジャンルの特性というか、ブルータルデスメタルを通過して誕生した様々なサブジャンルはあれど、基本的に大きな進化や変化のあるジャンルではないので、かなり個人的な好みが強いリストに毎年なってしまいます。なるべく客観的に2021年のブルータルデスメタルとして素晴らしいと感じたものを選んでいます。アルバムに絞らず、作品としてピックアップしているのでEPやライブアルバムも混じっていますがコンピレーションやボックスセットなどは省いています。知らない作品があれば、ぜひチェックしてみてください。冒頭には普段、ディグのメモとして活用しているYouTubeプレイリストも貼り付けて置くので、聴きながらリストを見ると面白いと思います。今年も素晴らしいブルータルデスメタルの作品にたくさん出会えて良かったです!

 

上記のYouTubeプレイリストで 2021年のブルータル・デスメタルをまとめてチェック。

 

 

第9位 : Perverted Dexterity 『Alacrity for Contemptuous Dissonance』

 

レーベル : Brutal Mind
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Perverted_Dexterity/3540346286

 

一言コメント : 「一人でもここまで作れるんだ」ということを世界に知らしめた一枚

 

インドネシアのワンマン・ブルデス、Perverted Dexterityの最新作。アルバムとしては2017年の『Spiritual Awakening』以来4年振り。これまでボーカル、ギター、ベース、ドラム・プログラミングと全てをJanuaryoひとりでやってきたが、本作はゲストにGorguts、Behold The ArctopusのギタリストColin Marston、ByoNoiseGeneratorのドラマーRoman Tyutinがゲスト参加している。

前作に比べダイナミズムを増したサウンド・プロダクションによって引き締まった印象を持つが、ハイスピードな前作にあった”インドネシア感”はやや薄れたように感じる。それでも垢抜けたといえるし、ワンランクレベルアップしたサウンドへと進化したと考えられる。先行シングルとしてリリースされた「The Arcane Profanity」は、バンド・アンサンブルの妙をワンマンながら上手く表現しているし、ワンマンでありながら、ここまでの作品を作ることが出来るということを世界に知らしめた意味で重要な作品だ。

 

 

第8位 : Omnioid – Regurgitated Inexistential Pestilence

レーベル : Amputed Vein Records
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Omnioid/3540376519

 

一言コメント : 轟音の中でキラリと光るクリエイティヴなフレーズ

 

西オーストラリアのマンジュラを拠点とするブルータルデスメタル・ユニット、Omnioidの4年振り3枚目フルレングス。前作『Hex Dimensional Paralysis』からチェックしていますが非常にポテンシャルの高いユニットで、Amputed Vein Recordsと契約したのも頷ける。

ギター、ベース、そしてドラム・プログラミングを兼任するSamboは、ボーカルのEwzaと共にCorpsefleshのメンバーとして活躍し、Anthropos VirosisというユニットからOmnioidへと転身。ユニットだからこその自由な作風がOmnioidらしさとして形になっている。クラシックなスタイルでありながら、現代的な感覚で鮮やかに転調しながら加速、時折みせるヘヴィなスラムリフも豪快かつ残忍でまさにブルータルなデスメタル。

 

 

第7位 : Cenotaph – Precognition to Eradicate

レーベル : Tentacles Industries / Coyote Records
info : https://www.metal-archives.com/bands/Cenotaph/1255

 

一言コメント : 程良いプログレッシヴ・フレーバー、ベテランの貫禄

 

1993年からトルコ/アンカラを拠点に活動するブルータルデスメタル・ベテラン、Cenotaphの4年振り7枚目のスタジオ・アルバムは、Tentacles Industries / Coyote Recordsからの共同リリース。もっと老舗と契約してるのかと思いきや、アングラ中のアングラ・レーベルから。やはりスラムが台頭して、クラシックなブルータルデスメタルの人気はやや落ちてきてるのかもしれません……。

 

だとしても、それでスタイルを変えるということは結成20年超えの大ベテランの選択肢にはないでしょう。オリジナルメンバーでありボーカルのBatu以外は2019年に加入していて、弱冠21歳のベーシストErenに、スイス出身のドラマーFlorent、フランス出身のMattisというラインナップ。程良いプログレッシヴ・フレーバーを交えながら基本疾走、適度に速度チェンジしながら暗黒のブルデス・サウンドを淡々とプレイ。ドラムのもたつき具合も味があるというか、おどろおどろしくさせている要因になっているかもしれません。Batuのボーカルも素晴らしい。

 

余談ですが、Metal ArchivesでCenotaphというバンドは14組登録されてました。なんか、また時間あるときにまとめて紹介しても面白そう。

 

 

第6位 : Post Mortal Possession – Valley of the Starving

レーベル : Lord of Sick Recordings
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Post_Mortal_Possession/3540388505

 

一言コメント : 確かなテクニックと表現力 一皮向けた出世作

 

ピッツバーグを拠点に活動するブルータルデスメタルバンド、Post Mortal Possessionの1年振り3枚目フルレングス。コンスタントにリリースを重ね、近年ブルータルデスメタルシーンにおける存在感を増している彼ら。ピュアなブラストビート一直線ではなく、Deeds of FleshやSevered Saviorあたりを彷彿とさせるテクニカルさと知的さ、現行スラム勢に劣らぬヘヴィネスを兼ね備え、ドラマティックな展開美をみせてくれる。

 

特に評価すべきはギターソロ。Post Mortal Possessionらしさとして一番輝きを放っているように感じる。ところどころかなりディープなアンダーグラウンドのエッセンスが散りばめられているのもポイントだ。これまで「あと少し」と感じていたB級感から脱却し、重鎮デスメタル勢のツアーサポートなども出来そうなポテンシャルをみせてくれた一枚。

 

 

 

第5位 : Vomit The Soul – Cold

レーベル : Unique Leader Records
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Vomit_the_Soul/13688

 

一言コメント : 見事なカムバック! Dying Fetusインスパイアの痺れるヘヴィネス

 

イタリアが誇るブルータルデスメタル・レジェンド、Vomit The Soulによる12年振りのニューアルバム。オリジナルメンバーであるドラマーYcio、ギター/ボーカルMaxが再び手を組み、同郷のレーベルメイトであるBloodtruthのギタリストがベーシストとして加入し、トリオ編成で本作をレコーディング。

アルバム収録曲「The Lost Aurea」のミュージックビデオを観ればより感じられると思うが、Dying Fetusへのリスペクトは強いものがあり、演奏スタイルも影響を受けているように感じる。といってもハードコアやスラッシュメタル的なノリは皆無だが、かなりヴィンテージスタイルのスラム・ヴァイブスに溢れている。彼らのカムバックに痺れたリスナーも多いだろう。文句なしの良盤!

 

 

 

第4位 : Pyrexia – Gravitas Maximus

レーベル : Unique Leader Records
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Pyrexia/363

 

一言コメント : ニューヨーク・デスメタル・プライドが感じられる一枚

 

ニューヨークを拠点に1990年から活動する老舗ブルータルデスメタルバンド、Pyrexiaの通算6枚目フルレングス。近年はコンスタントにリリースを続けていて、直近のリリースも2018年の『Unholy Requiem』と記憶に深く残る作品を発表している。現在進行形バンドとして、過去のレガシーを考えないにしても、この作品が現代に与える影響は割と強いかもしれない。

 

再生ボタンを押した瞬間に彼らがニューヨーク出身であることが分かるほどで、『Sermon of Mockery』からバンドサウンドの根底にあるスラム要素が現代的にアップデートされていて心地良さがある。Internal Bleedingと共にクラシック・スラムの代表的バンドとしてPyrexiaを捉えているリスナーも今は多いと思うし、そんな彼らが派手な装飾抜きにこうした作品を作ったことは高評価されるべきだ。

 

 

第3位 : Stabbing – Ravenous Psychotic Onslaught

レーベル : Comatose Music
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Stabbing/3540490072

 

一言コメント : 衝撃のニューカマー、テキサスから登場!

 

今年結成されたばかりのニューカマーで、Scattered RemainsのベーシストMerylとドラマーRene (二人は夫婦)が中心となり、女性ボーカリストBridget、ギタリストMarvinの4人体制で動き出している。本作は4曲入りのEPでコンパクトな内容ではあるが、ブルータルデスメタルとして完璧な仕上がりといえる。粒の細かいシンバルワークに抜けの良いスネアが疾走、粘着質なヘヴィリフ、獰猛なガテラル、サウンド・プロダクションは100点満点。Jon Zig先生のアートワークもStabbingサウンドを上手く表現しています。これは聴き逃していたら今すぐチェックして欲しい。

 

 

第2位 : Twitch of the Death Nerve – Beset By False Prophets

レーベル : Comatose Music
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Twitch_of_the_Death_Nerve/46813

 

一言コメント : これがブルータルデスメタルの完成形

 

イングランド/ロンドンを拠点に2004年から活動するブルータルデスメタルバンド。「そんなにベテランだったのか」と驚く人も多いと思うが、ちゃんと動き出したのは2014年ごろ。昨年にはセカンドアルバム『A Resting Place for the Wrathful』をリリースしていて、本作は新曲4曲とライブ音源が収録されたEPとして発表されている。この4曲が本当に素晴らしくて、あまりこういう形態の作品をベストリストには入れないんですが、必聴ということでランクイン。

スピード重視というわけでなく、緩急のあるグルーヴィなスタイルは持ち味で、その転調具合が絶妙。そしてそれを可能にするアイデア、テクニック、どれにおいても素晴らしくのめり込んで聴き入ってしまう。正直言って近年の中ではトップ3レベルでハマった作品。これまであまりチェックしてこなかったバンドだけに驚きも加味してこの順位に。ライブ音源も良い。

 

 

第1位 : Brodequin – Perpetuation of Suffering

レーベル : Unmatched Brutality Records
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Brodequin/241

 

一言コメント : 復活の狼煙、伝説のBrodequin17年振りの新曲!

 

1998年に結成されたテネシー州ノックスビルを拠点とするブルータルデスメタル・ベテラン、Brodequinの久々の新作。2曲入り、デジタルリリースではあるものの、今年はやっぱりBrodequinの新曲を聴けた事だけで2021年はブルータルデスメタルにとって良い年だったと言い切れる。彼らの旧譜については自著『ブルータルデスメタルガイドブック』を参照していただくとして、簡単に最近のBrodequinを振り返りつつ、この作品の良さを書いてみたいと思う。

 

2004年にUnmatched Brutality Recordsからリリースしたアルバム『Methods of Execution』以降アルバムリリースはなく、2008年に活動休止。2015年に復活したものの、オリジナルメンバーであるギタリストのMikeが正式に復帰したのは最近になってのことだ。2020年にはCesspool of CorruptionやMortifying Deformityに在籍する若干24歳のドラマーBrennanが加入し、制作活動が動き出す。レーベルの公式YouTubeチャンネルには「VII Nails」のスタジオ・レコーディング・セッションがアップされていて、動くBrodequinに結構感動した。ギブソンのレスポールでブルデスやってるのは見たことないけど、意外とクラシックなスピード重視のブルデスには合うかもしれないと思ったり。奇跡の2曲だけでも聴けて幸せだが、来年2022年には何かアルバムが出たりしないのかなと気になっています。

Aborted、ニューアルバム『ManiaCult』をリリース!

 

ベルギーを拠点に活動するデスメタルバンド、Abortedが通算11枚目のスタジオ・アルバム『ManiaCult』をCentury Media Recordsからリリースしました。前作『Terrorvision』からおよそ3年振りとなる新作は、プロデューサーにKristian “Kohle” Kohlmannslehnerを起用。Kohleとは2016年からAbortedの作品を共に制作している5人目のメンバーとも言える人物だ。

 

 

トラックリストを見てみると、デスコア/メタルコアシーンで活躍する世界中のボーカリスト達がアルバムのリードトラックとも言える楽曲に参加している。先行公開されていなかった楽曲「Ceremonial Ineptitude」には日本からCrystal LakeのRyoが参加。また、デスコアのトップシーンで活躍するFit For An AutopsyのJoe、Shadow of IntentのBenの名前も。彼ら参加曲もAbortedらしいブルータルデスメタルをベースにシンフォニック、デスコア、メタルコア、ハードコア、デスメタルの影響を色濃く感じさせる楽曲で素晴らしい。

 

1. Verderf
2. ManiaCult (feat Joe Bad from Fit For An Autopsy)
3. Impetus Odi
4. Portal to Vacuity
5. Dementophobia
6. A Vulgar Quagmire
7. Verbolgen
8. Ceremonial Ineptitude (feat. Ryo Kinoshita from Crystal Lake)
9. Drag Me to Hell (feat Filip Danielsson from In Reverence)
10. Grotesque
11. I Prediletti: The Folly of the Gods (feat. Ben Duerr from Shadow of Intent)

 

 

個人的にはAbortedの中でもキャッチーなグルーヴに振り切った快作でかなり上位に食い込むレベルで好きな作品。ゲスト参加のボーカリスト達の”ブルータリティ”も聴けるし、何よりブルデスシーンを代表するアートワーカーPär Olofssonがジャケットを手掛けているのだから、Abortedが何を作りたかったのかを強く感じる。

 

デスコアシーンでブルータルなスタイルを見せるバンドはSigns of the Swarmなど名前を挙げればいくつか思い浮かぶが、ブルータルデスメタル/デスメタルシーンのベテランがデスコアの魅力を引き出している、しかも通算11枚目のアルバムで、というのは珍しいし、パッションを感じます。Abortedとか知らない若いデスメタルリスナーにこそ聴いてほしい名作!

 

 

Sven de Caluwé Vocals (1995-present)
See also: Bent Sea, ex-Anal Torture, ex-Oracles, ex-They:Swarm, Coffin Feeder, ex-Leng Tch’e, ex-System Divide, ex-In-Quest

Ken Bedene Drums (2010-present)
See also: Aerith, Fallon, ex-Blood of Cain, ex-Oracles, ex-Abigail Williams, ex-System Divide, ex-Abysmal Dawn (live), ex-Decapitated (live)

Ian Jekelis Guitars (2015-present)
See also: Metal Against Coronavirus, ex-Abigail Williams, ex-Abysmal Dawn, ex-God Dethroned (live), ex-Artisan

Stefano Franceschini Bass (2016-present)
See also: Hammer of Dawn, Hideous Divinity, Ghouls

ブルータル・デスメタル 2020年の名盤 10選

 

『ブルータルデスメタルガイドブック』を出版したのが2016年の10月だっただろうか、そこからも日課としてブルータルデスメタルを追いかけ続けてなんと4年が経過した。RIFF CULTを立ち上げたのも本を出版したのがキッカケだったし、今もこうして発信を続けられているのは嬉しい。

 

一時期はほぼRIFF CULTを動かしてなかった (RNR TOURSでのツアー活動に忙殺されていた)時期もあったが、コロナウイルスでツアーがストップしたことをキッカケにもう一度本腰を入れて動かしてみることにした。やっぱり新しい音楽を聴くのは面白いし、RNR TOURSが再開出来た時にもRIFF CULTを動かし続けられるように自分の中でしっかりルーティーンを作らなければいけないね。

 

さて、前置きが長くなったが、今年も世界中からブルータルデスメタル・アルバムがリリースされ、新しいバンドも入れば意外な復活もありで面白かった。良い意味でも悪い意味でもスラム系がぐっと盛り上がりをみせ、デスコアやメタルコアにまで影響を与え始めているのは面白いなと思う。それに対して昔ながらもハイスピード・ブラスト系は地味な存在になったが、もともとブルデスってそういうのが面白いし好きだったから特に気持ち的に変わらずいろんなものを聴いた。

 

ある程度新しいバンドもベテランもチェックしたつもりだが、もしかしたらチェックしきれてないものもあったかもしれない。EPも多く、リストに入れようとおもったがアルバムに絞ってランク付けしてみた。(Drippedとか入れたかったなあ) まだ聴いてない作品などあれば、ストリーミングでチェックしてみて欲しい。それでは、ランキングをご覧ください! (第10位〜第1位まで)

 

 

第10位 : Putrid Pile – Revel In Lunacy

アメリカ/ウィスコンシン州を拠点に活動するワンマン・ブルータルデスメタルプロジェクトPutrid Pileの新作は、前作『Paraphiliac Perversions』から4年振りとなった6枚目フルレングスで、Sevared Recordsからのリリース。

 

Sevared Recordsも数量限定リリースが増え、他のブルータルデスメタル・レーベルに比べ勢力は落ちてきたもののまだまだ元気。Putrid PileはSevared Recordsからリリースを続けている数少ないアーティストで、地味に2020年がプロジェクトスタートから20周年であった。前作から大きくスタイルチェンジする事もなく、淡々と自身のブルータリティを表現し続けている点だけでも評価に値するし、オープニングトラックの「Death Waits for No One」では、唐突なテンポチェンジを繰り返しながらもバウンシーなグルーヴはキープ、リフワークもメロディアスで面白いしガテラルもハイセンス。「Bonedigger」みたいな打ち込み感丸出しのB級さも個人的には好きだったりする。

 

 

 

 

第9位 : Goratory – Sour Grapes

2009年に活動休止、2016年に復帰したマサチューセッツ/ボストンのブルデス・レジェンドGoratoryの新作は、前作『Rice on Suede』からなんと16年振りとなる4枚目フルレングスで、リリースはイタリアのEverlasting Spew Recordsから発売された。

 

有名ミュージシャンのテクニカルすぎるアイデアのはけ口みたいなバンドで、Job For a CowboyやDespised Iconで活躍するギタリストAlanやDeeds of Flesh、Pillory、Cytolysisなどで大忙しのドラマーDarrenが在籍している。彼ら以外の2人はSexcrementというバンドのメンバーで腕前はもちろん凄まじい。特徴的なのは強烈なスラップベースで、テクニカルなブルータルフレーズに絡み付いていく。ヴィジュアルイメージからは想像もつかないテクニックがたまらない1枚。

 

 

 

第8位 : Post Mortal Possession – Catacombs Of Bedlam

ペンシルバニア州ピッツバーグを拠点に活動する5人組Post Mortal Possessionのセカンドアルバムは、Lord of the Sick Recordingsからのリリース。

 

2018年リリースの前作『Perpetual Descent』から大きな路線変更はないが、ぐっとサウンドプロダクションが向上し、楽曲もソリッドな仕上がりになっている。全体的にもっさりとしたスラムっぽい雰囲気ではあるが、Jakeのボーカルワークが強烈でディープなガテラルでサウンドを血生臭いものにしてくれている。Jakeのボーカルに加え、Nickのドラムもよく、デスメタリック。地味な存在だが、若くしてこの手のサウンドをプレイ出来るのは凄い。

 

 

 

第7位 : Disavowed – Revocation Of The Fallen

オランダ/アムステルダムを拠点に、前身バンドNocturnal Silenceから数えて26年のキャリアを誇る大ベテランDisavowedの13年振りとなる3枚目フルレングス。

 

オリジナルメンバーである元ドラマーRobbert (Pyaemia、Nocturnal Silenceでプレイ)の怪我を理由に2005年に脱退。以降はサポートメンバーを入れながらも活動は継続していたが、アルバム制作には至らなかった。長年のブランクを感じさせないパワフルなブルータリティは、アグレッシヴに転調しながらも粘着質なグルーヴィ・リフを携えて疾走し続ける。

 

 

 

第6位 : Afterbirth – Four Dimensional Flesh

1993年ニューヨークで結成されたブルータルデスメタルバンドAfterbirthのセカンドフルアルバムは、Unique Leader Recordsから前作『The Time Traveler’s Dilemma』から3年振りのリリース。

 

95年の休止後、2016年にボーカリストWill Smithが加入するまで20年以上のブランクというのはなかなか珍しい。架空の古代文明をテーマにソングライティングを行うようになってからはアイデアが湧き上がってくるのか、セカンドアルバムも3年という短い期間で完成させており、そのサウンドもアンシエントなメロディワークをメイン・エレメンツに独自の世界観を生み出すことに成功している。アートワークも含め、Afterbirthらしさを持っているし、今後も継続的に制作活動を続けて欲しい。

 

 

 

第5位 : Vituperate – Dies Mali

ノースキャロライナ州ヴァージニアを拠点に活動するハイスピード・ブルータルデスメタルバンドVituperateのデビューアルバム。

 

もともとデモ音源がアンダーグラウンドシーンで話題となり、New Standard Eliteと契約している。メンバーはそれぞれにプロジェクトを抱えており、Scatology Secretionなど今年アルバムを出したプロジェクトもある。メンバーらが抱えるプロジェクトの中でもVituperateは特にスピード感重視で、まさに工事現場のような轟音が鳴り響き、リフの輪郭も曖昧。いわばハーシュノイズのようなエナジーに溢れる1枚。

 

 

 

第4位 : Incinerate – Sacrilegivm

アメリカ/ミネソタを拠点に結成され、現在はアメリカ/カナダのメンバーが在籍するベテランIncinerateの新作は、前作『Eradicating Terrestrial Species』から5年振りとなる4枚目フルレングス。

 

リリースは前作同様Comatose Musicが手掛けている。2018年にDeeds of FleshやSevered Saviorで活躍したギタリストJared Deaverが加入。JaredとTedのツインギター体制になってからは初の作品で、2020年12月現在では脱退しているがDisfiguring the GoddessやMalevolent Creation、Insidious Decrepancyでドラムを担当したPhil Cancillaが本作でその腕前を披露している。スラムとまではいかないが、ピュアなリフグルーヴを要に非常にシンプルでノリやすいブルータルデスメタルをプレイ。Internal Bleedingファンは気に入るとおもいます。

 

 

 

 

第3位 : Devangelic – Ersetu

イタリアを拠点に活動するブルータルデスメタルバンドDevangelicの新作は、前作『Phlegethon』から3年振りのリリースとなる3枚目フルレングス。

 

Comatose MusicからWillowtip Recordsへと移籍してリリースされ、プロデューサーにはDecrepit BirthやFleshgod Apocalypseを手掛けたStefano Morabitoを起用。サウンドプロダクションもソリッドかつダイナミックな仕上がりとなっている。同郷のSeptycal Gorgeを彷彿とさせるダークなテクニカルフレーズも多く、誤解を恐れずに言えばDisgorge的な雰囲気があるようにも感じる。ここ数年、Devangelicは大/中規模フェスティバルへの出演やツアーなど、ヨーロッパを中心にファンベースを拡大しており、ブルータルデスメタルシーンにおける重要度は高くなっている。

 

 

 

第2位 : Arsebreed – Butoh

前作『Munching the Rotten』から15年振りとなるArsebreedの新作は、Brutal Mindからのリリース。

 

ツイン・ボーカル体制を取り、2人共Disavowedのメンバーだ (RobbeとJoel)。この2人のボーカルワークはハイピッチ/ローピッチを使い分けるような従来のツイン・ボーカルスタイルではなく、共にローをベースとしたボーカルスタイルなのが面白い。緊張感のあるオールドスクールなブルータルデスメタルは、ウジムシのようにうねるチェーンソーリフとソリッドなベースライン、そしてデスメタリックなギターソロが残忍なグルーヴを生み出している。Disavowedと一緒で、特に何か目新しいことをしているわけではないが、クラシックなブルータルデスメタルとして素晴らしい作品。

 

 

 

第1位 : Molested Divinity – Unearthing The Void

トルコを拠点とするブルータルデスメタルバンドMolested Divinityのセカンドアルバム。

 

前作『Desolated Realms Through Iniquity』から2年振りのリリースとなる本作は、アンダーグラウンド・ブルータルデスメタルの巣窟New Standard Eliteが発売元。レコーディングエンジニアリンク/マスタリングは同郷のOzan Yildirimが担当。彼はDrain of ImpurityやMolested Divinityのメンバーが在籍するRaven Woodsも手掛けており、バンドとも親交の厚い人物。前作とジャケットが酷似していて、最初再発かと思ったが、しっかり新作でした。New Standard Eliteらしさといえばそのスピードでしょうか。

 

ブレイクダウン皆無のノンストップ・ブラストビートを叩き込むドラマーBerkの腕前は確か。特にスネアの鳴り、随所で拍をずらしながらブラスティング・グルーヴをうねり出す感じとかは、かなりマニアックなブルータル・ドラミングの手法。Emreのギターワークも残忍としか言いようもない無慈悲さに溢れていてたまらない。昨今はスラム勢の勢い、そして人気が凄まじくこうしたブラスティング・ブルータルデスメタルはすっかり地味な存在になってしまったが、彼らをはじめ、同郷のCenotaph辺りは変わらずスピード重視で安心。堂々の2020年ブルータルデスメタル・ナンバーワンアルバム。

 

2020年上半期のスラミング・ブルータル・デスメタル 名盤アルバム TOP5

 

 

Visions of Disfigurement – Aeons of Misery

 

2013年イギリス/マンチェスター出身の4人組。4年振りのリリースとなる本作はRealityfade Recordsからのリリースとなった。デスコアリスナーにも受けるだろう切れ味鋭いソリッドリフ満載のキャッチースラム。AnalepsyやKraaniumは好きなら是非チェックしてほしい大推薦盤。

 

https://www.facebook.com/visionsofdisfigurement/

 

 

Indricothere – Tedium Torpor Stasis

 

Behold the ArctopusやGorgutsを始め、数多くのプロジェクトでメタルシーンを牽引してきたColin Marstonによるソロプロジェクト。近年ではブルータルデスメタルのプロジェクトにも数多く参加しており、サウジアラビアのグラインドコアバンド、Creative Wasteのメンバーらと行っているSijjeelではハイクオリティなグラインディングブルータルデスで話題となった。Indricothereでは、Funeral DoomとSlamを組み合わせたFuneral Slamとも形容できる新しいサウンドを追求。そのサウンドは実験的ではあるものの、作品を聴けばこのジャンルのクロスオーバーに大きな可能性を感じるはずだ。

 

https://www.metal-archives.com/bands/Indricothere/109135

 

 

Esophagus – Defeated By Their Inferiority

 

チリを拠点に2008年から活動する彼らのデビューアルバム。これまではEP、デモ、スプリット作品のみのリリースで影の薄い存在だったが、本作ではハイクオリティなスラムサウンドを聴かせてくれる。Visions of Disfigurementらが所属するRealityfade Records所属らしさはありながらも南米らしい血生臭さもスラムリフをさらにブルータルなものにしてくれる。

 

https://www.facebook.com/esophagusslam/

 

 

Antipathic – Covered With Rust

 

昨年フルアルバム『Humanimals』をリリース。この作品はスラムシーンで大きな話題となったのは記憶に新しいだろう。本作はEPでありながら、ハイクオリティなスラムをプレイ。ベース/ボーカルTatoのラッピンガテラルは巧みにテンポチェンジするスラムサウンドの上をグルーヴィーに転がりまわり、ドラマティックな楽曲構成が終盤のスラムパートの破壊力を何倍にもパワーアップさせる。

 

https://www.facebook.com/antipathicband/

 

 

Bleeding Spawn – Pariah Attestant

 

南アフリカを拠点とするスラミングブルータルデス。2016年にリリースしたデビューアルバム『Pathogenic Mechanized Abomination』以来4年振りの本作はEPでありながらも聴きごたえ十分であるし、セカンドアルバムへの期待が高まる。土地柄、どんなバンドに影響を受けているのかなどわかりにくい部分も多いが、そんなミステリアスさが、まだ聴いたことのないスラムを聴かせてくれるのではないかという期待が膨らませてくれる。

 

https://www.facebook.com/bleedingspawnmp/