デスコア 2023年下半期の名盤TOP10

2023年上半期のデスコア・ベストアルバムはこちら

この記事では、RIFF CULTが2023年7月から12月までにリリースされたデスコアのアルバム/EPの中から素晴らしい作品をピックアップし、順位付けしてアルバムレビューしています。上半期と下半期に分けてアルバムレビューを行なっていますので、また上半期のリストをチェックしていない場合は、上記のリンクから読んでみて下さい。

2023年下半期は、順位をつけるのが非常に悩ましいほど、たくさんの素晴らしい作品がリリースされました。そして、それらはデスコアを出発点に個性的な発展を遂げた個性が光っていました。それぞれにデスコアではありますが、「ブラッケンド」や「テクニカル」、「ブルータル」といったデスコアから発展したサブ・ジャンルとして成立しており、同列にデスコアとして考えるには難しいほど、シーン全体に様々なスタイルを持つバンドがいます。結果的に有名無名問わず、強く印象に残り、繰り返し聴いた作品を参考に順位付けに取り組んでみました。皆さんはどう思いますか?それではアルバム・レビューを読んでみてください!

 


 

▶︎第10位 : Crown Magnetar 『Everything Bleeds』

Stream & Download : https://orcd.co/everythingbleeds
Social : https://linktr.ee/Crownmagnetar

コロラド州コロラドスプリングスのデスコア・バンド、Crown MagnetarによるUnique Leader Records からのデビュー・アルバム。2021年に発表した『The Codex Of Flesh』は壮絶なテクニカル・デスメタル/デスコアを鳴らしシーンに大きな衝撃を与えた。今でもあの衝撃を覚えているくらいだ。そんな彼らが2023年、ブラッケンド/ブルータル・デスコアの登竜門レーベルになってきているUnique Leader Records と契約。彼らをこのレーベルが放っておくわけがない。

前作はかなりテクニカルな印象があったので、最新アルバムを通して聴いてみると、意外とスラミング・パートが豊富にあったり、アンダーグラウンドなスラミング・ブルータル・デスメタル/デスコアも追い求めている感じがひしひしと伝わってきて痺れた。確固たるテクニックがあるからこそ出せるブラストビートのスピードがあるからこそ、そこから急ブレーキをかけた時のブレイクダウンの威力というものは凄まじいものがある。「The Level Beneath」は刺激が欲しいメタル・リスナー全員聴くべき名曲。

SLAM WORLDWIDEという異次元のワンマン・プロモーティング・マシーン・チャンネルが育んできたブルータル・デスメタルとデスコアのクロスオーバー・メディアという、誰もやったことがなかったふたつの異なるリスナーが集まる場所として機能して、Crown Magnetarのような化け物が正しく評価される地場を作った。この功績の偉大さまでも感じさせてくれる彼らのニュー・アルバム、未聴の方は食らって欲しい。

 

▶︎第9位 : Orphan 『Manifesto 1.0: Stages of Grief』

Stream & Download : https://tr.ee/fs6zGIJOT_
Social : https://linktr.ee/Orphanband

STRANGLEDという狂気に満ちたスラミング・デスコア・バンドが出てきたときは彼らが天下を取るのではと思ったが、残念ながら解散してしまった。理由については色々言われているが、STRANGLEDが分裂して、Orphanを結成した兄弟が、ストリームやマーチの分配金を正当に分け与えなかったことが理由だとかなんとか……。それで結果OrphanとPeelingFleshという、二つの異なるヘヴィ・バンドが誕生した。もしこれが真実なのであれば、このリストにOrphanを掲載することはなかったが、流石に、この完成度の高さだと評価せざるを得ない。

STRANGLEDでもあの狂ったツイン・ボーカルが完全にバンドを支配し、ライブ中に殴り合い怒りをぶちまけ合うリアルな様には慄いたが、Orphanのフランティックなエナジーのリアルさはしっかり楽曲に内包されていて、聞き続けていると精神的にくるものがある。リアルにやばい人間の音楽なのか、芸術性と理性を持って、作品としてこれをやってるか、そのギリギリにあるという意味では、上記の噂が真実なのかはっきりする前に一度聴いておいて損はないだろう。

 

▶︎第8位 : Within Destruction 『Rebirth』

Stream & Download : https://fanlink.to/wdrebirth
Social : https://sadboikroo.com/

そろそろ年間ベストをまとめないとといけないと下半期にリリースを振り返っていたところにサプライズ・リリースされた、スロベニアのデスコア・バンド、Within Destructionのミニ・アルバム『Rebirth』は、オープンワールドのアクションRPG「ELDEN RING (エルデンリング) 」の世界観に魅了されたメンバーが、歌詞、ヴィジュアルにそれを落とし込んで制作した作品に仕上がっている。

わずか6曲のEPであるが、内容は非常に濃い。彼らは自身のデスコアを「Nu Deathcore」を表現したり、ニュー・メタルコアとの繋がりを意識しながら、クリエイティヴに新しいデスコアを追い求めている。スラミング・ブルータル・デスメタルのエレメンツも彼らのサウンドの暴虐性、ブレイクダウンの強度をグッと上げているのも個人的には熱いポイントだし、ピッグ・スクイールしまくりながらビートダウンするのには思わず笑ってしまった。ただ、いわゆるNo Face No Caseのようなスラミング・ビートダウンとは言い切れない、デスコア的構築美がある。Signs of the SwarmやDistantのメンバーがゲスト参加しており、それぞれのファンであれば明確なWithin Destructionのサウンドの特徴も感じられるはずだ。結構作り込まれてて驚いた作品。

 

▶︎第7位 : Thy Art Is Murder 『Godlike』

Stream & Download : https://TAIM.lnk.to/GodlikeYT
Social : https://www.thyartismurder.net

4年振りとなった通算6枚目のアルバムは、2023年ナンバーワン・デスコア・アルバムになるべき作品であった。Nuclear Blast を離れ、Human Warfareからのリリースとなった本作でバンドを象徴するフロントマンだったCJ McMahonは歌っていない。彼はアルバム・リリースの直前にトランスジェンダー嫌悪の投稿を発端にバンドを解雇させられており、アルバムには後任ボーカリストとしてAversions CrownのTyler Millerが急遽ボーカル・パートを録り直し配信された (フィジカルはCJがボーカルを務めたものが収録されているそうだ)。

バンドの声明には今回の件だけが解雇の原因でないこと、彼の抱える様々な問題とバンドとの方向性の違いについて様々述べられていた (現在オフィシャルからは削除されている)。その怖いくらいの冷静な声明文からはバンドがカリスマと呼ばれ、神格化されたThy Art is Murderのフロントマンを抱えて活動してきたあらゆる苦悩から解放された清々しさすら感じた。単なるCJのバックバンドでないことを証明しなければいけないプレッシャー、それは残酷だが新曲のミュージックビデオに書き込まれるリスナーからのコメントを見れば相当なものである。

Tylerは素晴らしいボーカリストであり、Thy Art is Murderにフィットする最良の後任ボーカルであることは間違いないし、バンドの決断は間違っていないと思う。アルバム・リリース前のミュージックビデオに関してはCJをフロントに据えたディレクションが施されているが、「Destroyer Of Dreams」には登場せず、音源も差し替えたもので作り直されている。キーとなるブレイクダウンもThy Art is Murderらしいダイナミズムがあり、ヒロイックなギターワークは一時期のWhitechapelを彷彿とさせるようでもある。Thy Art is Murderのこれからに期待したいと思う。『Godlike』はいいアルバムだが、彼らはすぐに次作に取り掛かる必要があるかも知れない。

 

▶︎第6位 : The Voynich Code 『Insomnia』

Stream & Download : http://orcd.co/tvcinsomnia
Social : https://bit.ly/m/thevoynichcode

2023年11月に再来日を果たしたポルトガルのシンフォニック/ブラッケンド・デスコア・バンド、The Voynich CodeのUnique Leader Records契約後のグローバル・デビュー作。ツアーの準備中、それは確かリリースの1年以上前であったが、契約が決まったと連絡があった。そこで色々とUnique Leader Records 周辺のデスコア・シーンの状況やつながりについて詳細な話を聞けたのは非常に興味深かった (ここでは書けないが…) 。ポルトガルという、メタル・バンドにとってはまだまだ未知の国ではあるが、彼らはヨーロッパを中心にツアーを行い、実績十分だ。このアルバムでは、彼らはアルバムのソングライティングを行なっている際にメンバー全員でハマっていたというHumanity’s Last Breathの影響も感じることが出来る。本作のミックス/マスタリングを手掛けたのはChristian Donaldsonなので、クオリティはお墨付きだ。こぼれ話だが、RIFF CULTのチームが運営するRNR TOURSで今年6月に来日したメロディックパンク・バンド、MUTEのギタリストがツアー中使っていたのはChristianから直接購入したギターだった。不思議なつながりを感じた瞬間であった。

さて内容であるが、彼らのライブ・パフォーマンスを観た人なら分かるだろうが、現代デスコアのトレンドとも言える、Lorna Shoreを彷彿とさせるブラッケンド・スタイルを、これまでThe Voynich Codeが育んできたBorn of Osirisからヒントを得たオリエンタルな音色を”染み込ませた”サウンドへとアップデートしている。新加入のドラマーDaniel Torgal (彼もRNR TOURSで過去に来日を手がけたAnalepsyの元メンバーである!) によるマシンガン・ブラストビートを下地に敷いたメロディアスなデスコアは、一見そのプログレッシヴさにとっつきにくい印象を受けるかもしれないが、フックの効いたテクニカル・リフの波がベストなタイミングで展開してくるのでご安心を。「The Art of War」で魅せるThe Voynich Codeの新スタイルは、デスコア・リスナーはもちろん、プログ/Djent、そしてThallといったニッチなジャンルのリスナーまでを虜にする要素がたっぷりと詰まっている。聴き込みが重要な作品。

 

▶︎第5位 : Carnifex 『Necromanteum』

Stream & Download : https://carnifex.bfan.link/necromanteum.yde
Social : http://www.carnifexmetal.com

トレンドの移り変わりが激しいデスコアという音楽シーンにおいて、長年大きくスタイル・チェンジをしていないのがCharnifexだ。Jason Suecofがプロデュースというのも、良いチョイスだと思う。サウンド・プロダクションが”デスメタル”であることが、彼らの良さを引き出している。

アルバムを9枚作ってきて、さほど大胆なスタイルチェンジやチャレンジングなパートを導入したりしないということは、彼らがブラッケンド・デスコアの元祖として自身のソングライティングにかなりの自信を持っている証拠だと思うし、実際に、細部にまで血が通った人力のグルーヴとホラー映画さながらのシンフォニックなオーケストレーションが彼らのサタニックな魅力を不気味に引き出しており、完全に格が違うということが数曲聴いただけでも確信出来る。

中でもやはり、タイトル曲「Necromanteum」のオーケストレーションは神がかっている。ここまでオーケストレーションをキーにした楽曲は、思い返してみたら無かったかも知れない。長年ライブのエンディングを飾る「Hell Chose Me」が「Necromanteum」に置き換わったら、だいぶ印象も変わりそうだ。

 

▶︎第4位 : Impending Doom 『LAST DAYS』

Stream & Download : https://linktr.ee/impendingdoom
Social : https://www.instagram.com/impendingdoom/

2000年代初頭から活動を続けるベテラン・デスコア・バンド、Impending Doomが、10年以上所属していたeOneを離れ、18年振りにインディペンデントに戻り本作をリリース。いやはや驚きました。ロゴも一新、ここからまたImpending Doomの伝説が続いていくのかと思い、リリース時はかなり精神を集中させてEPを聴きました。

デスコアのアルバム・コンセプトや歌詞は近年メンタルヘルスが中心で、人間としてのダークサイドや怒り、悲しみというものが多く、リアルに追求すること自体に危険性をはらんでいる音楽であることは間違いなく、人を壊してしまう危険性を常にはらんでいる。ツアーともなればそれを毎日演奏するミュージシャンが被る精神的な影響は計り知れないものがあるだろうと感じますね。

Impending Doomは、クリスチャンであり、クリスチャンであることを通じて生ずる社会的な怒りや批判をテーマに取り上げることがこれまでも多くありました。芸術的に、そして詩的にそれらを表現し、大炎上するような偏った思想でなく、共感を呼ぶものにするというのは教養なしには出来ないでしょうし、実際の感情に基づいているからこそ数10年に渡り歌い続けられているのかもしれません。長く歌い続ける楽曲の歌詞が一瞬の怒りや悲しみを切り取ったものであった場合、通常のメンタルとは異なる負の感情、怒りの感情を歌い続けることにはかなり重たい精神的負荷がかかってくるでしょうし、大型ツアーともなれば、それをほぼ毎日1ヶ月続けるので普通はおかしくなってしまうでしょう。これはデスコアという音楽がこれまでに何度も直面してきた問題で、デスコアという音楽が長く続いていく上でも、その時の精神状態などを大きく反映させた歌詞などを歌うこと、絶望感、希死観念をテーマにし続けることには、やや注意が必要かもしれません。Impending Doomが精神的な混乱、狂気や怒りのような音の塊をサウンド・パレットの上に落とし込んでいるのは紛れもない事実だが、それが精神的な崩壊からくるものでないことは明らかで、フレーズの所々に見られるクリスチャン・メタルらしい言葉のチョイスはダークであるが、デプレッシヴでないと感じます。クリスチャンであることの一貫性は、現代の困難な社会を歩む上で重要なことなのかも知れない。

サウンドもFacedown Recordsのクラシック・デスコアを見事に現代的なサウンド・プロダクションにアップデートしているのが節々で感じられる。ミュージックビデオにもなっている「ETERNAL」のエンディングでモッシュしないデスコア・リスナーはいないだろう。

 

▶︎第3位 : Face Yourself 『Tales of Death』

Stream & Download : https://linktr.ee/faceyourself
Social : https://fyourselfband.com/

オレゴン出身女性ボーカル・デスコア・バンド、Face Yourselfの5曲入りEPが登場。本作前にシングルとしてリリースされた「Death Reflection」では、「女性版Will Ramos」と言われるほど、人間離れしたガテラルを炸裂させ、一気に人気急上昇バンドとなりました。高まる期待とは裏腹に、本作のアートワークはギロチン落下寸前のおどろおどろしいブルータルなものでB級感をぷんぷん漂わせているのには驚きました。個人的には、ブルータル路線を追求していくことの強い表れのように感じ、簡単にメジャー・レーベルには引っこ抜かれないぞというアンダーグラウンド・デスコア・スピリットを勝手に感じました。

EPの先行シングルとしてミュージックビデオとしても公開された「Guillotine」はこの作品のキラーチューンで、女性ボーカリストJasmineのガテラルが圧倒的な存在感を放っています。ファストなブラストビートの上で炸裂するシュレッダーなテクニカル・リフ、ソロも導入されていて、全体的なバランス感覚もヘヴィに偏るでもなく、メロディックに傾倒するでもなくドラマティックで全く飽きません。そして、Lorna Shore直系のエンディング・パートは本家を超えてしまっているとのコメントもMVに書き込まれるほど。それ以上に素晴らしいのはChelsea Grinの初代ボーカリストAlex Koehlerに影響を受けたようなスタイルでスクリームする中盤のボーカル・パートかも。いや本当に聴くたびに衝撃を受けます。

 

第2位 : Signs of the Swarm 『Amongst The Low & Empty』

Stream & Download : https://signsoftheswarm.com/ATLAE-preorders
Social : https://signsoftheswarm.com/bio

Signs of the Swarmが名門Century Media Recordsへと移籍して発表した通算5枚目のフル・アルバム。Lorna Shoreの成功によって、メタルのメインストリームに向かって更にデスコア・シーンを拡大するための門戸が開かれたと言えるだろう。Lorna Shoreの衝撃についてSigns of the Swarmというチョイスは完全に間違っていない。そしてバンドもその期待を超えるものを『Amongst The Low & Empty』で作り上げている。その自信は、アルバムのオープニングを飾るタイトル・トラックでミュージックビデオにもなっている「Amongst the Low & Empty」に現れている。この楽曲は前半こそ、これまでSigns of the Swarmが築き上げてきたブルータル・デスコアに微細なプログレッシヴ/マス・エレメンツを散りばめ、ブレイクダウン・パートへ向かってその熱を加熱させていく。驚くべきは更に底から、2段、3段、4段とビートダウンしていくパートであり、正直言葉を失ってしまうほど、驚いた。もうこの曲の衝撃が凄すぎて、他の曲の感想はありません。

と、言いたいところだがすごい曲が多すぎる。「Tower of Torsos」はニューメタルコアのワーミー、Djentな細かいリフの刻み、エレクトロニックなノイズを見事に散りばめた。無論、この楽曲もエンディングのビートダウンは言葉にならないほどヘヴィだ。次いで「Dreamkiller」はSigns of the Swarmが更に上のステージへと階段を上がっていくために作られたような曲で、これまでキーになることはなかったプログレッシヴなスタイルを全面に押し出し、クリーンパートも少しだか組み込まれた興味深い仕上がりとなっている。この曲が彼らを、これまでリーチ出来なかったところへ導いてくれるものになるかどうか、それはやはりCentury Media Recordsが仕事をするはずだ。これだけ高いポテンシャルを兼ね備え、それを見事に、ブルータル・デスコアとして最高の形に仕上げた彼らの更なる成長が楽しみである。

 

▶︎第1位 : Humanity’s Last Breath 『Ashen』

Stream & Download : https://ffm.to/hlbashen
Social : https://humanitys-last-breath.com

2009年、Vildhjartaのメンバーによる新バンドという触れ込みでスウェーデンから世界へ向けて衝撃的なデビューを果たしたHumanity’s Last Breathも気付けば本作が4枚目のフル・アルバムだ。このアルバムについてバンドは、このようなコメントを発表している。

「10年以上にわたり、Humanity’s Last Breathは、迫り来る黙示録を警告するかのような不吉なメッセージを音楽で伝えてきた。表現を必要とする場所から音楽を作りたいという果てしない衝動で、常にモダン・メタルの可能性の限界を押し広げてきた。4枚目のアルバム「Ashen」のリリースとともに、このサウンドを体験してほしい。世界は絶望の中で歌おう」

直訳なので絶妙なニュアンスはやや異なるかもしれないが、気になるのはHumanity’s Last Breathがモダン・メタルを自称しその可能性の限界を追求していることをバンド活動の大きなテーマとしているところである。実際にバンドの主要メンバーであるBuster Odeholmはプレイヤーとしてだけでなく、多くのデスコア・バンドのプロデュース、ミックス、マスタリングなどを手がけており、シーンきってのプロデューサーとしての側面も持ち合わせている。彼が自身がヘッドを務めるバンドにおいてどのようなスタイルを作り上げるのか、それはこれまでプロデュースしてきたバンドへ「自分とはなんたるか」を提示することにもなり、『Ashens』で想像も出来ないほどの創意工夫と挑戦、限界の追求を果たしている。そしてそれは、プログレッシヴ、Djent、Thallという概念すらも自ら打ち壊してしまうような、衝撃的なものになっている。

オリエンタルな女性コーラスが永遠とバックトラックとして流れる「Instill」のDual Guitar Playthroughのビデオがアップされているので観てみよう。ギタリストにとって、これほど参考にならないプレイスルー・ビデオはあるだろうか! Busterはレフティであるが、弦は逆張りしていて、「E B E A Ab A」という奇妙なチューニングを施しプレイしている。このプレイスタイルについては自著『Djentガイドブック』で直接Busterについてインタビューをしているので是非手に取って読んでみてほしい。この楽曲からも分かるように (インスト・バージョンであるが)、聴くものを飲み込んでいくようなリフの恐るべきパワーに圧倒されるし、ヘヴィ、以上に”ダークネス”という部分の追求をしているようなところもあり、闇より深い黒を探し続けているような、常人では考えもつかないアイデアでHumanity’s Last Breathをアップデートしてくれている。

また、メンバーにはラインナップされていないが1曲を除き、本作はBusterとVildhjartaのCalle Thomérがソングライティングを手掛けている。元々彼は参加しないつもりであったし、メンバーでもないが、BusterがColleの才能を認めていて、いくつかのHumanity’s Last Breathの楽曲アイデアを彼に送り、アレンジしてもらったと言う。このコラボレーションはHumanity’s Last Breathというバンドにとってこのアルバムで未知のサウンドを生み出すのに大きな力になっているようにも感じる。また、このアルバムで初めて(!) プログラミングしたドラムではなく、ドラマーが実際に録音している。このドラム録音はリハーサル・スペースで録音してツアー中にラップトップで編集したとのこと……。さらにボーカルはAudiomoversというソフトを使い、ボーカルのFilip Danielssonが自宅スタジオで録音、それがBusterのDawにそのまま録音されるようにセットアップして時間の節約をしたそうだ。クリエイターの環境も日々アップデートしているが、さすがBusterといった具合だ。

アルバムからの先行シングル「Labyrinthian」は非常に高い評価を得た。先ほども彼らのサウンドを説明するとき、「闇よりも黒い黒」といったが、この楽曲でそれを完全に表現している。もちろん、中盤にはモッシュでも起こそうかというようなキャッチーなフレーズもあるが、そこからまたずるずると、リスナーを闇深くへ引き摺り込んでいく。バンドはこんな完成度の高いアルバムを作って、次一体、何を作ってしまうのだろうか。Lorna Shoreが「To The Hellfire」を出したとき、もうデスコアがこれ以上ヘヴィになることはないかもしれないと思ったが、彼らはまだ、さらにヘヴィになっていくだろう。

 

次点TOP 10

Osiah – Kairos
As Beings – Slave to the Sickness
VØID – Everything is Nothing
Nylist – The Room
Lonewolf – The Rhythm of Existence
Teralit – The Trinitarian
Acranius – Amoral
Monasteries – Ominous
Worm Shepherd – The Sleeping Sun
DJINN-GHÜL – Opulence

アヴァンギャルド・プログレッシヴ・ジャズ 2023年の名盤 TOP10

Avant-Prog。このジャンルとの初めての出会いはMABOROSHI NO SEKAIからリリースされていたBAZOOKA JOEのアルバム『PORNO AND CANDY』からだったと記憶している。「アヴァンギャルド」とか「プログレッシヴ」などという音楽ジャンルがあることを知らなかった中学生の私は、ドラムとベースだけのハードコア・デュオで、トリッキーな展開が癖になるなと思っていた。このアルバムにゲスト参加していた高円寺百景の面々をたよりに新しいアーティストを掘り下げていったことが、アヴァン・プログレッシヴへの入り口になった。この記事のイントロでこれ以上話すには長くなりすぎるので、そこからの音楽遍歴はまたの機会に……。2023年聴いていたいくつかの作品をアルバム・レビューしてみたいと思う。プログ・ジャズは全く通ってきていないので、見当違いな感想があればコメントで教えていただきたい。

基本的にBandcampを中心にAvan-Progのタグを頼りに様々な作品を聴いた。ただ、普段追いかけているメタルやパンクとは違い、その歴史や重要人物について、全く分かっていない。完全なる無知だ。しいて言えば、吉田達也さん関連だけは追いかけ続けている、といった具合。ですので、プログ・ジャズ・リスナーの方がこのリストを見たら、どう思うだろう。


▶︎第11位 : Nick Dunston 『Skultura』

どうしても10枚に絞れなかったので、11枚という中途半端な数になってしまった。消そうかと思ったが勿体無いので全て掲載しようと思う。

ニューヨークを拠点に活動するフリー・インプロ/アヴァンギャルド・ジャズ系のベーシスト、Nick Dunstonによる本作『Skultura』は、ドイツ・ベルリンのレーベルFun In The Churchとアメリカのカセットテープ専門レーベルTripticks Tapesからの共同リリースで日本国内でもディスクユニオンなどに入ってきています

Nickが本作に呼び込んだゲスト陣も面白く、ボーカル/エフェクト/エレクトロニックを担当するCansu Tanrıkulu、シンセ奏者のLiz Kosack、アルト・サックスとクラリネット、そしてボーカルとしても参加したEldar Tsalikov、ドラマーMariá Portugal、そしてAKAI MPCを操る共同プロデューサーPetter Eldhという、一見しただけではどんな音楽を奏でる集団なのか全く想像が出来ない陣容でアヴァンギャルドな世界観をサウンド・パレットに描き出していく。冒頭の「Jane」では、Volkswhaleを彷彿とさせるような、Tardcore/Scum Music的な、取り留めのないカオスにも聴こえるが、静かに差し込まれるNickのベースや微細なアヴァンギャルド・ジャズがそれらを上品な芸術作品であることを思い出させてくれる。即興音楽をベースにしながらも、様々なサウンド・マニピュレーション・テクニックを駆使し、直感的なアイデアを丁寧にコラージュして形作られたような音楽は、他に聴いたことのない刺激的なものに仕上がっている。

この秋、オーストリアで開催された「ヴェルス・アンリミテッド・フェスティバル」のフル・ライブパフォーマンス・ビデオが公開されており、本作の直感的な部分が視覚的に楽しめる映像になっているので、気になった方は是非。

 

▶︎第10位 : Lovely Little Girls 『Effusive Supreme』

The Flying Luttenbachersのメンバー擁するシカゴを拠点に活動するプログレッシヴ・ジャズ/アヴァンギャルド・ロック・バンド、Lovely Little GirlsのSKiN GRAFT Recordsからの3枚目フルレングス。

オフィシャル・プレスによれば、MagmaからDead Kennedysに影響を受けているとのことだが、シカゴ・ジャズが根底に流れていながらも、奇形ハードコア・テクノPassenger of Shit的なグロテスクでゴツゴツとしたヴィジュアル・イメージを持ち、その狂気は混沌とは程遠くスタイリッシュであり、確かなグルーヴをベースにジャズ、アヴァン・プログ、ファンクからラテン、さらにはマスロック的感覚までも飲み込んでいく。貪欲さと熱気で終始汗ばんだバンド・アンサンブルにただただ身を預け、不気味な動きで無心に体を動かしたくなる、エキサイティングな作品だ。

 

▶︎第9位 : Ramdam Fatal 『Ramdam Fatal』

フランス・オーヴェルニュを拠点に活動するRamdam Fatalは、エレクトロニック・アヴァンギャルド/プログレッシヴ楽団”Ultra Zook”のメンバーと、クラシックの手法でスポークン・ワードを取り入れ寸劇のようなパフォーマンスを得意とする前衛音楽団体”L’Excentrale”のメンバーによるユニットで、同郷のアヴァンギャルド・レーベル「Dur et Doux」より本作でデビューを飾った。ピカソのキュビズムからの影響を感じさせるアートワークは、サウンドと非常にリンクしており、異国の儀式的なリズムとメロディが散りばめられ、クラシック、ジャズの香りもほのかに燻らせながらアヴァン・グルーヴを展開していく。

見事なのはエレクトロニックな手法がアヴァン・プログに暖かみをもたらし、オーヴェルニュの美しい村々までも想起させる収録曲「Fondamentalement trouble 」から「La diabolique」の流れには思わず没入してしまう。面白いのはこの音楽にはどこか日本のニューウェーヴ、パンク・アヴァンギャルドにも似たものが感じられるところ。フランス語の響きも心地良く、隅々まで磨き抜かれたサウンドに没入していく感覚が聴き進めていくにつれ増していく。

 

▶︎第8位 : Mendoza Hoff Revels 『Echolocation』

アヴァン・プログ・ユニット、Mendoza Hall Revelsのデビュー・アルバム。AUM FIDELITYからのリリースということもありディスクユニオンでも取り扱いがあり手に入れやすい作品。元Unnatural Waysの女性ギタリストAva MendozaとYoko Onoなど様々なアーティストの作品に参加してきたベーシストDevin Hoffを中心に結成されたユニットで、サックス奏者にJames Brandon Lewis、ドラマーChes Smithが参加した4人体制で制作された。

 

 

Ruinsや高円寺百景といったパンクを通過したアヴァン・プログが好きなら、Mendoza Hoff Revelsは要チェックだ。サックス、ギターのフリーキーなジャズの香りととにかく弾きまくるドライヴンなベースとタイトなドラミングは一聴するとアンバランスに聴こえるが、さすがは熟練のミュージシャン、卓越したアンサンブルのセンスを見せてくれる。オープニングの「Dyscalculia」のダークなパンク/ジャズ・グルーヴ、「Diablada」のぶっ飛んだギターとサックスの狂気的なメロディ、聴きごたえ抜群。

 

▶︎第7位 : Tatsuya Yoshida & Risa Takeda 『Jellyfish』

1年は365日あるが、SNSから察するにそれ以上のライブをこなしていると錯覚してしまうほど、今、日本で最もアクティヴな即興ミュージシャンであるTatsuya YoshidaとRisa Takedaの両者によるユニット”Tatsuya Yoshida & Risa Takeda”。今年はこのユニットでのツアーも全国各地で開催され、膨大なアーカイヴ音源がBandcampで販売されてきた。その中でも印象的だった『Jellyfish』は、7月27日に愛知・名古屋の徳三でライブ・レコーディングされた音源をまとめたもの。

 

 

ライブによって違うのはRisa Takedaが使用する楽器で、本公演では3台の鍵盤を使い、クラシカルなピアノの音色を軸に展開していく。あえて今、「女性らしさ」と「男性らしさ」をキーワードにこのユニットの魅力を解体した時、Risa Takedaのしなやかな鍵盤ワークと、繊細でありながら肉体的な力強さによる緩急でプログレするTatsuya Yoshidaのドラミングの見事なクロスオーバーが炸裂したこの作品は、即興音楽の遊び心とそれぞれのミュージシャンの個性、そして「女性らしさ」と「男性らしさ」が垣間見ることの出来る良作だ。

Tatsuya Yoshidaのキャリアを考えれば、老練のドラミングをもってして、アヴァン・プログレなライブ・ステージを牽引していくのが普通なのかもしれないが、このRisa Takedaの「おてんば」とも言うべき音色の躍動が時に二人のサウンド・バランスの中心になっているのは驚きだ。歳も離れたこの二人のミュージシャンのアヴァン・プログな駆け引きはリスナーにとって予測出来ない展開への好奇心を駆り立ててくれる。

『Jellyfish』だけでなく、多くの作品でその「駆け引き」を楽しむことが出来るし、ライブならではのフロアの空気感もそれぞれに違い、時にハプニング的な笑い声もそのまま収録されていて、心地良い緊張感が漂っており変なストレスが一切ない。2024年も日本全国、毎日のようにライブを続けるだろうこの二人が、アヴァン・プログをエンターテイメントでなく、生活の一部のような、文化的なものとして我々を楽しませてくれるだろう。どんなに忙しい人でも、ライブを観られるチャンスがあると思うので、気軽にライブへ足を運んでみてほしい。

 

▶︎第6位 : Behold… the Arctopus 『Interstellar Overtrove』

アヴァン・テクニカル・デスメタル・バンドGorgutsのベーシストとしての活動でも知られるColin Marstonのバンド、Behold… the Arctopus。これまでにMetal Blade Records、Black Market Activities、Willowtip Recordsと大手メタル・レーベルを渡り歩いていたバンドであるが、2020年にWillowtip Recordsからリリースしたアルバム『Hapeleptic Overtrove』からグッとアヴァンギャルド/エクスペリペンタルなスタイルへと舵を切っている。もちろんこの作品はデスメタル・シーンで賛否両論あり、「トムとジェリー」のような激しくコミカルな展開にも似た構成であったことから「トム&ジェリー・メタル」と揶揄されたりもした。

 

 

Colin Mansonの創造性の凄まじさは、彼のYouTubeチャンネルをフォローしてれば分かるだろう。毎月のように変名プロジェクトで奇怪な作品を発表し続け、時にノイズに接近したり、もはやメタルの要素を全く持たない作品も多かった。本作はタイトルから察することが出来るように前作『Hopeleptic Overtrove』に次ぐ作品で、Jason Bauersが電子ドラムとアコースティック・パーカッション、Mike Lernerがギター、Colin MarstonがWarr Guitarsを用いたタッピング・パートとシンセを担当している。

Warr Guitarsを演奏するColin

この作品をテクニカル・デスメタルといったメタル・カテゴリーでなく、今回「アヴァン・プログ」の年間ベストで紹介するのには理由がある。Behold… the Arctopusは既にメタルというカテゴリーからは脱しており、新しいフュージョンをテクニカル・デスメタルを通過したエクストリームな手法で探求している。このアルバムに対するファンの反応も非常にポジティヴで『Hopeleptic Overtrove』とは違う。「アラン・ホールズワース (UKジャズ・フュージョンの著名ギタリスト) の全ディスコグラフィの破損したデータをAIに読み込ませて作られた新種の音楽」というファンのコメントにはLIKEがびっしり付いていた。

もちろん作品を聴き進めていくと、プログレッシヴ・メタルに通ずるスペーシーなギターソロも組み込まれているが、Simons Electric Drumsによる不気味なドラミングと、Warr Guitarsの繊細でミニマルなメロディを基調とし一切のダイナミズムを排除したサウンドには、馴染んでいるようで馴染んでいない。古くからのファンへの配慮かもしれないが、今もBehold… the Arctopusを追いかけているファンはすっかり新しい世界観を楽しんでいるから気にせず独自のクリエイティヴを突き進んでほしいと思う。Colinは素晴らしい音楽家で、刺激を求めるメタル・リスナーに全く違う音楽体験を提供し続けている。彼がアヴァン・プログとテクニカル/プログ・デスの架け橋となって、さらに刺激的な音楽が誕生することを楽しみにしたい。

 

▶︎第5位 : ni 『Fol Na​ï​s』

フランス東部・ブール=カン=ブレスを拠点に活動するniの4年振りとなるフル・アルバム。2018年にDur et Douxのレーベル・メイトであるPoilとのユニット”PinioL”でアルバム『Bran Coucou』を発表、着実にキャリアを積み上げてきた彼らの本作『Fol Na​ï​s』というタイトルの意味は、古典フランス語で歴史上の支配者たちの愚者や道化師につけられた呼び名とのこと。アートワークがそうだろうか。

とにかくこの作品は、アヴァンギャルド、プログレッシヴ、というカテゴリーの中だけで語られるにはもったいないほど、メタル成分がたっぷりと詰まっている。ギタリストであるAnthony BéardとFrançois Mignotのコンビネーションは、現代のメタルコア、デスコア、ニュー・メタルコアからマスコア、テクニカル・デスメタルまで見渡しても、ここまで個性豊かで技術的にも優れているものはないかもしれない。Françoisに至ってはチェンバーロックPresentの新ギタリストとして加入したというから、向かっている方面はメタルとは違うものの、多くのメタル・ヘッズ、例えばMeshuggahやIgorrrなどが好きなら必ずチェックしたほうが良いだろう。ノイズ/エクスペリメンタルなエレメンツはクリエイターにとってフレッシュな創作のヒントになるだろう。間違いなく多くのメタル・ミュージシャン達に刺激を与える一枚。

 

▶︎第4位 : Steve Lehman & Orchestre National de Jazz 『Ex Machina』

アヴァン・プログかどうかは一旦置いておいて、この作品はとても興味深かったので、このランキングに組み込んでみた。『Ex Machina』は、ニューヨークを拠点に活動するサックス奏者/作曲家のSteve Lehmanとグラミー賞にノミネートされたフランス国立ジャズ管弦楽団Orchestre National de Jazzによるコラボレーション・アルバム。

フランス現代音楽の著名作曲家であるGérard Griseyの代表作『Tempus Ex Machina』をルーツに、電子音とジャズ・オーケストラの融合を表すようなアルバム・タイトル『Ex Machina』はその名の通り、フランスの、音響/音楽の探求のための研究所として知られるIRCAMで開発されたライブのインタラムティブ・エレクトロニクスがリアルタイムで補強・変形されていくのに合わせて、Steve、ONJの面々が複雑なポリリズム・グルーヴに合わせてバランスの取れたハーモニーを生み出していくというもの (動画を是非見てほしい)。ミニマルなヴァイブスを基調としながらも、オーガニックでスリリングなジャズのアンサンブルがマシーンに溶け合っていく本作は、現代音楽のテクノロジーの最先端とアヴァン・ジャズの野生的なエネルギーが見事に融合している。「Los Angeles Imaginary」のBrutal Progのようなイントロからアヴァン・ジャズへのナチュラルな展開、「Ode to akLaff」の人間と機械がそれぞれに互いの性質へと転換して構築されたようなエクスペリメンタルな楽曲など、ジャンル問わず野心的な音楽、特にグルーヴの追求をするミュージシャンにとって多くの学びがあるだろう。もちろん、音楽作品として優れているのは言うまでもない。

 

▶︎第3位 : The Filibuster Saloon 『Going Off Topic』

イングランドのトラディショナル・フォークやカントリーに心酔していた今年の秋、アメリカ・ニューヨーク出身のプログレッシヴ・ロック/フォーク・バンド、The Fillbuster Saloonのデビュー・アルバム『Going Off Topic』には心奪われ、病に疲れ果てた心身を取り戻すために取り組んだリハビリ中、何度も何度も聴いた。美しく没入感があり、そこから得られる音楽を楽しむというピュアな多幸感は日々の活力になった。カンタベリー・ロックにアヴァン・プログのエナジーを組み込みながら、フュージョンのアトモスフィアがグルーヴに広がりをもたらしていく。彼らの卓越されたテクニックによって複雑に展開する楽曲への好奇心が陽気に湧き上がり続けていく、そしてそこに言葉はいらない。完璧なインスト・バンドだと思う。

スリリングでパンチの効いたタイトなグルーヴ、実験的、即興的な側面もありつつ、プログレッシヴ・ミュージックの持つ”喜び”を思い出させてくれるような『Going Off Topic』。みなぎる生命力を体感してほしい。推薦曲は「Pinball is for Truckers」。「JFK Jr.」も素晴らしい。外国文学の名著のようなアートワークもグッとくる。

 

▶︎第2位 : Matana Roberts 『Coin Coin Chapter Five : In The Garden』

アメリカ・シカゴ出身の女性サックス奏者、Matana Robertsが全12章で送るアフリカ系アメリカ人の歴史を探究するシリーズ「Coin Coin」の第5章。本作は”違法な中絶の合併症で亡くなった先祖代々の女性達の物語”の語り手となることを試み、アヴァンギャルド・ジャズ、フリー・ジャズをベースにフォークのトラディショナルなメロディ、アブストラクトなシンセサイザー、ノイズから静寂までを文学的才能を感じさせるスポークン・ワードを織り交ぜ展開していく。

 

 

リプロダクティブ・ライツ (自分の身体に関することを自分自身で選択し、決められる権利) について、私たちの記憶の中で最もに新しく印象的なのは、、本作のテーマとなっているアメリカの人工妊娠中絶をめぐる問題だ。1973年から合法に認められてきたアメリカの人工妊娠中絶が再び違法になる可能性を帯びたことに対し、2022年は激しい議論が巻き起こってきた。これは日本のメディアでも取り上げられたので、かすかに記憶に残っている、または強烈に衝撃を受けた人も多いだろう。

パンク・シーンや多くのクィア・ミュージシャン達は中絶を違法とすることに反対する声を挙げた。その背景には非常に複雑な問題があるが、認められてきたリプロダクティヴ・ライツの一つを再び取り上げられてしまうことに反発することが何より女性達の他の権利を守るためにも必要であることから、音楽シーンでも積極的に取り上げられたテーマになったのかも知れない。Black Lives Matter以降のアメリカは間違いなく変わった。それは悲しい歴史を重ねてきた人種、性別的に弱い立場にあった人たちの希望になったと思う。

Matana Robertsは、本作のスポークン・ワードを自身の公式サイトで一部公開している。アルバム全体で一貫性のある、明確なメッセージを持っているわけではないようで、スポークン・ワードの内容もかすれた記憶をたぐい寄せながら、抽象的な言葉を選びコラージュされたようなものとなっている。この構築美はアートワークにも見られ、女性の目を切り貼りしたアートは本作のテーマを象徴している。さまざまな女性達の「視点 / 眼差し」から忘れ去られようとしている歴史を呼び起こし、それらにこびりついた混乱、狂気、悲鳴、絶望、怒りをサウンド・パレットの上に激しく描き出していく。

全てのスポークン・ワードが理解が難しい抽象的なものであるわけではなく、何度も登場する「My name is your name Our name is their name We are named / We remember They forget (私の名前はあなたの名前 私たちの名前は彼らの名前 私たちは名づけられた / 私たちは覚えている 彼らは忘れる)」というフレーズやアルバムのエンディングのタイトル「…ain’t i. …your mystery is our history (あなたの謎は私たちの歴史だ)」など、強く真っ直ぐなメッセージも随所に見受けられる。

Robertsは「この問題について、彼女達が解放感を得られるような形で語りたかった」と説明している。Robertsは、忘れ去られてしまいそうな家族の物語を紐解きながら、アメリカの公文書館で広範なリサーチを行い、時に強いメッセージをリスナーに打ちつけながら、卓越されたサックスの音色でがんじがらめになった女性達の混乱を解きほぐすようにしてサックスを吹き鳴らす。

モーダル・ジャズからミニマルなシンセのループ、アヴァンギャルド・ジャズの嵐が吹き荒ぶエクストリームなパートに散りばめれたフォークのエレメンツ、ノイズから静寂まで、目まぐるしく展開しながらもアヴァン・ジャズとしてスタイリッシュにまとめあげたRobertsの才能と思想は、決してアヴァン・ジャズの領域だけでなく、パンクやロックのフィールドにも届けられるべきだろう。無論、RIFF CULT読者にも届くことを祈っている。

 

▶︎第1位 : John Zorn 『Parrhesiastes』

1990年代にはニューヨークと東京とを行き来し、高円寺にアパートを借りていたこともあったという伝説のサックスフォン奏者、John Zohn (ジョン・ゾーン)。パンクやメタル、ハードコア・リスナーにとっては80年代後期〜90年代初頭のプロジェクト、Naked CityやPainkillerがあまりにも有名だが、現在も自主レーベルTzadikを運営し、70歳を迎えた今年もその創作意欲は衰えることを知らない。

キーボーディストのJohn MedeskiとBrian Marsella、ギタリストMatt Hollenberg、ドラマーKenny GrohowskiからなるChaos Magick Bandを迎え制作され、John Zornがソングライティングを担当したJohn Zorn名義での本作は、近年のJohn Zornの最高傑作の一つとして数えられる。コンテンポラリー・クラシックを軸にファンク、そして強烈なインパクトを放つメタル/ハードコアのギラついた転調のアクセントが非常に面白く、それらが決してダイナミックに、波打つように展開するのではなく、しっかりとアヴァンギャルド・ジャズとして高貴に鳴っているから驚きだ。このMattのリフの数々は、現代メタル、例えばCode Orangeなんかも通過しているように思うし、2020年代に蘇るNaked Cityといっても過言ではない (言い過ぎかもしれないが……)。John Zornが70歳でこれを作っているというのが、本当に信じられない。

 

Sable Hills、独レーベル”Arising Empire”との契約を発表! 2024年1月に先行シングル『Odyssey』、4月にはアルバムも


 
メタルコア・バンド、Sable Hills が、ドイツのレーベル”Arising Empire”との契約を発表しました。バンドは2024年1月12日にシングル「Odyssey」をリリースし、4月には通算3枚目となるニュー・アルバムをリリースする予定とのこと。また、3/16(土)には、主催ライブとしてはバンド史上最大キャパとなる、恵比寿LIQUIDROOMでのリリース記念ライブの開催も発表している。
 
Sable Hillsは、世界最大のメタル・フェス「Wacken Open Air 2022」にて、日本人初となる「METAL BATTLE 2022」グランプリを獲得して以降、BLARE FEST、KNOTFEST JAPAN、MERRY ROCK PARADE、Wacken Open Air 2023といった大型フェスにも次々出演。Bullet for My Valentine、UNEARTH、DARKEST HOURといった海外バンドとも多数共演するなど、今や日本のメタル・シーンを牽引するバンドへと成長してきた。
 
2024年は彼らにとって、更なる飛躍の年になることは間違いない。彼らから目を離さないようにしよう!
 
SABLE HILLS『Odyssey』2024年1月12(金)配信
Pre-add / Pre-saveリンク : https://lnk.to/SH_Odyssey
 

 
▶︎SABLE HILLS “Odyssey Pre-Debut Show”
2024年3月16(土)東京 恵比寿 LIQUIDROOM
OPEN 17:00 / START 18:00
前売券:4,500円 (ドリンク代別途)
VIP前売券:7,000円 (ドリンク代別途)
【VIP内容】メンバーサイン入りA2ポスター付 / MEET & GREET / 優先入場
【TICKET NOW ON SALE】https://eplus.jp/sablehills
1次先行:12/29(金)20:00~1/4(木)23:59
2次先行:1/12(金)20:00~1/21(日)23:59
一般発売:1/27(土)正午12:00~
 
▶︎SABLE HILLS : オフィシャル・ウェブサイト& SNS
https://www.sablehills.jp/
https://twitter.com/sablehillsjp/
https://www.instagram.com/sablehillsjp/
https://www.facebook.com/sablehillsweb/
 

グラインドコア 2023年下半期の名盤 TOP10

2023年上半期のベスト・アルバム記事はこちら

2023年の上半期は、The HIRS CollectiveSee You Next Tuesdayなど、一般的なメタルの年間ベストにも入り込めそうな作品がリリースされ、グラインドコアが熱い一年だったように感じる。ただ、そこはやはりアンダーグラウンド。決していきなりバズってメジャーになったりするような音楽ジャンルではありません。ただ、例年よりも活気に満ち溢れていたのは間違いない。

グラインドコア・バンドが楽曲で描く大きなテーマは、政府や社会への怒りというものが多い。2023年、世界がコロナを乗り越えた先に、こんなにも戦争が勃発するとは思わなかったし、連日ソーシャルメディアにアップされる痛ましい写真に胸を痛めていた人も多いだろう。彼らの創作意欲が巨大に怒りに駆り立てられたのも、グラインドコアが熱いと感じた理由かもしれない。そして、しばらくは厳しい社会情勢が続き、彼らのメッセージも熱を帯び、シーン全体の注目度も上がってきそうな気がする。ひどくならないことを祈りつつも、どんな風に社会情勢とリンクしながらグラインドコア・バンドが作品を生み出していくのかは気になるところである。

グラインドコアの規模は他の音楽ジャンルに比べて小さいながらも、世界中から来日バンドが毎月のようにやってきて、日本在住、特に東京近郊にお住まいの方であれば、彼らの熱演を体感出来るチャンスは他の国より格段に多いだろう。このシーンにアンテナを貼り続けているリスナーの数も世界屈指なはず。最近だと、年間ベストには入っていないが、男女混合のグラインドコア・バンド、Escuela GrindNapalm DeathBarney Greenway をフィーチャーした「Meat Magnet」のミュージックビデオを公開してファンの度肝を抜いた。彼/彼女たちは間違いなく、2024年のグラインドコア・シーンのトップをいくバンドであるし、深掘りすれば非常に面白いジャンルだ。下記に書いた年間ベストと一緒にチェックして、2024年のグラインドコアの動向を見逃さないようにしておこう。

 


 

▶︎Gridlink 『Coronet Juniper』

9年間の活動休止を経て、アメリカ・ニュージャージーを拠点とする日米混成グラインドコア・バンド、Gridlink が復活。MortalizedやHayaino Daisuki、Gridlink休止中はFormless Masterなどで活躍した日本人ギタリストTakafumi Matsubara、そして90年代初頭にニュージャージーを拠点にグラインドコア・シーンで大いに活躍したDiscordance AxisのボーカリストJon Chang、そしてex.PhobiaでRotten Soundのライブ・ドラマーという経歴を持つBryan Fajardoを中心とするこのグループは、2022年にベーシストMauro Cordobaを迎え入れ、Willowtip Recordsと契約を果たした。

非常に叙情的でメロディアスなシュレッド・リフが印象的で、それらは悲哀に満ちており、ブラックメタルやシューゲイズの影響すら感じさせる。収録曲「Ocean Vertigo」はグラインドコアの枠を飛び越え、スタジアム級の観衆を飲み込んでいくかのようなドラマ性を持ち合わせている。ハードコアパンクやクラストの影を忍ばせるようなフレーズや、時にブラストビートをも追い越すメロディックなツインリードも、他のグラインドコア・バンドにないGridlinkの個性と言えるだろう。

Jonの咆哮は血を滲ませながら喉をふり絞るようにハイピッチ・シャウトを炸裂させ、グラインド・ボーカリストとしてのカリスマ性で存在感を示す。しなるドラムスティックが目に浮かぶようなドラミングはGridlinkが本作で魅せるドラマ性をスピードを持って表現しているし、不気味なアヴァン・プログ/カオティック/マス・エレメンツを綿密に構築し、予想だにしない急ブレーキ、そして急発進パートを組み込んでいく。見事な復活を遂げた快心の一枚と言えるだろう。

 

▶︎Brujería 『Esto es Brujería』

メキシコのデスメタル/グラインドコア・バンド、Brujeria。「正体不明」を貫くにはそろそろ限界が来てしまった彼ら、ベースはお馴染みNapalm DeathのShane Embury、ギターはThe HauntedWitcheryで活躍するPatrik Jensen、チリ産カルトメタル・バンドPentagramのAnton Reisenegger、、ドラムはDimmu BorgirCradle of Filthと渡り歩いたNicholas Barkerという超豪華ラインナップ (という、噂)。現在は8人組の大所帯 (+ファーストLP『Matando Güeros』のジャケに出てきた生首という8.5人組と言っておこうか)で、そのサウンドは不気味なスペイン語が飛び交うエクスペリメンタル・グラインドコア。『Esto Es Brujeria (これは魔術だ)』というタイトル通り、時折呪術的なサウンプリングや南米未開の地の危険な民族達の打楽器の舞、みたいな曲もあって面白い。

Brujeriaの最新アーティスト写真。インパクト強すぎる。

 

全編スペイン語ながら「コカイン」とか「マリファナ」とか危ないワードだけは聞き取れる。ミュージックビデオになっている「Bruja Encabronada (ムカつく魔女)」は男女ツイン・ボーカルがスクリームする、というかもはや煽り倒しているみたいなボーカルがおどろおどろしい雰囲気を作り出している。この曲は完全にNapalm Deathって感じでShaneが作ったのかな。もう隠す必要あるのかというレベルです笑。未だ人気衰えない、シーンに愛されているのが実感できる一枚だ。

 

▶︎The Arson Project 『God Bless』

スウェーデン・マルメのポリティカル・グラインドコア・バンド、The Aeson Project。2005年頃から活動を開始し、本作がセカンド・アルバムでHere And Now!、Lixiviat Records、De:Nihil Recordsによる共同リリースとなっている。2010年にNoisearとのスプリットがRelapse Recordsから出ていて、そこで名前を知ったという人もいるかもしれない。

2023年、ポリティカルな姿勢で活動する多くのハードコア/パンク・バンドが怒りをぶちまけた作品をリリースしたが、彼らもそんなエナジーをたっぷりと詰め込んだノンストップ・爆裂グラインドコア・アルバムを完成させた。ローが効きすぎてもはやノイズにまで接近したブルータルなベースラインが凄まじく、それに呼応するかのようなドラミング、ギター、ボーカルと、どれも研ぎ澄まされた怒りのエナジーが溢れている。時折D-BEATに接近しつつも基本はNasum、Wormrot、Trap Them、Dead in the Dirt、そしてNailsあたりのグラインドコアの音像を想像してもらえればと。グラインドコア好きなら、絶対チェックした方が良い作品。

 

▶︎Closet Witch 『Chiaroscuro』

10年近いキャリアを持つアメリカ・アイオワの女性ボーカル暗黒グラインドコア・バンド、Closet Witchのセカンド・アルバム。Zegema Beach Records、Moment of Collapse Records、Circus Of The Macabre Recordsからの共同リリース。

ボーカルのMollie Piatetsky。ライブ中に流血しても、お構いなし。

 

Full of HellのDyran Walkerやジャズ・グラインドThe CentralのFrankie Furilloなどがフィーチャリング・ゲストとして参加している楽曲もあり、この手のシーンの人たちからの信頼は厚い。女性ボーカルのグラインドコア、といえばFuck The Factsがパッと思い浮かぶが、彼/彼女らのような知的な雰囲気に加え、パワー・ヴァイオレンス、クラストのカオスや程良い程度のハーシュノイズのアトモスフィアがよりCloset Witchの芸術性を高めてくれる。Discordance AxisやFull of HellといったエクスペリメンタルでノイジーなグラインドコアからInsect Warfare、Phobia、Nasumといった正統派まで、シリアスなタッチのグラインドを好むリスナーにおすすめ。

 

▶︎Blind Equation 『Death Awaits』

イリノイ州シカゴのエモーショナル・サイバーグラインド・バンド、Blind Equationのセカンド・アルバム『Death Awaits』は、Prosthetic Recordsからリリースされたことにまず驚いたが、2023年にこれだけ高い情熱を持ってサイバー・グラインドの可能性を追求し、『Death Awaits』を完成させたことにまず賞賛を贈りたい。このマイクロ・ジャンルは局地的なシーンを持つわけでないが、グラインドコア・シーンの隅で、あるいはゴアグラインド・シーンの隅で、はたまたカオティック/マスコア・シーンの隅っこで、刺激的なエクストリーム・メタルを求めるミュージシャン、そしてリスナーによって定期的に面白いアーティストが出ては消えてきた。思い出せる印象的なサイバー・グラインド、と言えばゴア系のS.M.E.S.やKOTS、そしてLibido Airbag、いわゆるマス・グラインドと言われるようなところだとThe Captain Kirk on LSD Experience、Preschool Tea Party Massacre、Cutting Pink With Knivesとかだろうか。いずれも短命 (または長すぎるブランクが空いたり) 。

Blind Equationは、グラインドコア、アトモスフェリック・ブラックメタル、そして8bitサウンドやユーロ・トランス、さらにはハイパーポップまでも飲み込んだかなり異質なサウンドであるが、それは間違いなく彼らが自称する「エモーショナル・サイバーグラインド」として正確に鳴らされている。HEALTHやAuthor & Punisher、The Callous Daoboysといったバンドらから共演オファーを受けるなど、ライブシーンにおいても従来のサイバー・グラインド・アーティスト達とは全く異なる存在であることが分かる。実際にライブでシンガロングが巻き起こるんだから、何かファンの胸を打つパワーが秘められていることは間違いない。

リード・シングル「never getting better」の脈打つ8ビット・エレクトロニクスとブラストビート、サビではタイトルにちなんだポジティヴなアンセミックへと爆発していく。「you betrayed the ones you love」ではエレクトロニックなストリングスが、”Real Emotional Cybergrind”を自称する彼らの真髄と言える世界観を表現し、先行シングル/ミュージックビデオとして話題となった。彼らと同世代のZOMBIESHARK!も併せてチェックしておけば、2020年代式のサイバーグラインドの最新形を網羅出来る。

 

▶︎Cognizant 『Inexorable Nature of Adversity』

テキサス・ダラスの5人組テクニカル・グラインドコア・バンド、Cognizant。Nerve Altar Records、Selfmadegod Records、Rescued From Life Recordsからの共同リリース。

純粋なグラインドコア・ファンからしたら、ここまでテクニカルで難解なスタイルは邪道なのかもしれない。マス・グラインド、テック・グラインド、デス・グラインド…… グラインドと名の付くマイクロ・ジャンルは多数あるが、どれも非常に曖昧で「これこそマス・グラインド」みたいなものって、ほとんどない。こういうマイクロ・ジャンル内でのクロスオーバーは、モダン・メタルの限界を追求する姿勢によって挑戦的なものが多く、ジャンルとして確立してきたものはあまりないのが現状。Cognizantのようなスタイルのバンドはどのようにして後世に残されていくべきなのだろうか……。

オープニングを飾る「Paralysis」を再生して1秒もしない間にこのアルバムがどのような狂気にはらんだものであるか、耳の肥えたメタル・リスナーなら分かるだろう。いわゆる”Dissonant Death Metal”(不協和音デスメタル)のタッチを得意としながら、ノイズの塊みたいなリフの蠢きが、抜けの良いブラストビートに絡みついていく。本人達はデビュー時、Antigama的なSci-Fiスタイルを目指していたようだが、このアルバムで完全に本家を超えてしまっているように案じる。VOIVODからAntigamaまで、今年で言えばGridlinkなんかと一緒にチェックすべき名作だと思います。

 

▶︎Misanthropic War 『Utter Human Annihilation』

2021年にドイツを拠点に活動を開始した正体不明の暗黒デス・グラインド、Misanthropic Warから衝撃的なアルバムが登場。アートワークのおっかなさ、そのまんまのサウンドでかなり喰らいました。

いわゆるウォーメタルっぽいスタイルではあるが、やってることはフルスロットルで炸裂し続ける猛烈なグラインドコア。徹底的にローなサウンド・プロダクションは殺気に満ちており、戦争が絶えなかった2023年を象徴するような、残酷さとも言える。人間は戦争を避けられないのだろうか。人間という生き物の難しさ、残忍さ、戦争によって生まれる憎しみ、悲しみ、怒りをそのまま表現したこのアルバムに考えさせられるものは多い。BlasphemyからInfernal Curse、Black Witcheryといったバンドにインスパイアされただろうサウンドであり、グラインドコア・ファンだけでなくブラックメタル・ファンもチェックしておくべき作品と言えるだろう。一切メロディがないという点ではブルータル・デスメタル・リスナーもいけるかも。

 

▶︎Feind 『Moloch』

ドイツ・ボーフムで2021年コロナ禍に結成された3ピース・グラインドコア・バンド、FeindのデビューEP。Halenoise Records、Erdkern Recordsから共同リリースとなっている。

全員がボーカルを取る珍しいスタイルを取る彼ら、忙しなく掛け合うボーカルと刃物のように切れ味鋭いシュレッダー・リフがタイトなドラミングとうねりを生み出しながら、予想だに出来ない展開をフルスロットルで続けていく。ストップ&ゴーもかなり組み込まれていて、思わず没頭して聴き入ってしまうくらい、集中力が必要な作品だ。Wormrotファンは必聴でしょう!

 

▶︎Lycanthrophy 『On The Verge Of Apocalypse』

1998年にチェコで結成されたグラインドコア/ファストコア・ベテラン、Lycanthrophy。結成25周年を記念し、まさかのセカンド・アルバムがHorror Pain Gore Death Productionsから登場! ファースト・アルバムの頃は女性ボーカルで、YouTubeにアップされている古いライブ映像では彼女の熱演を見ることが出来ます。残念ながら2019年に脱退、本作ではギター/ボーカル・スタイルの4人編成となっています (ベースには元Malignant Tumour,のOttoが参加してます)。

チェコからしか生まれない、ゴアグラインディングなフックを持ち合わせたグラインド・サウンドが特徴で、時折ファストコア/パワー・ヴァイオレンスなスピードとノイズの竜巻を起こします。「Dependence」は収録曲の中でも最も優れた楽曲で超高速で転調しながらわずか1分間でここまでやるか!と思わず唸ること間違いなし。約16分で18曲。ノンストップで聴き続けたくなる作品だ。また25年後とかにアルバム・リリース! みたいなのは無しにして、コンスタントに活動してほしい!笑

 

▶︎Dripping Decay 『Festering Grotesqueries』

おそらく2023年にリリースされたデスメタル/グラインドコア・アルバムの中で、最も腐敗臭を漂わせていたアートワークでシーンに一撃を喰らわせたアメリカ・オレゴンのDripping Decay、Satanik Royalty Recordsからのデビュー・アルバム。デスメタル年間ベスト・アルバムのリストは作成出来るほど聴き込んだ作品がなく、軽く下調べしたくらいでリストは作りたくなかったのですが、Dripping Decayは意外とグラインディング・フレーズをモリモリに詰め込んだデスメタルだったので、こちらでレビューしたいと思います。

「Abundant Cadaveric Waste」から「Gut Muncher」の流れなんかは、ブラスト寸前の超高速2ビートが雪崩の如く崩壊しながら、ジリジリとノイジーなリフの巻き起こす嵐に飲み込まれていくかのようで最高にエネルギッシュ。老人が落下してから2週間くらいが経過した腐乱臭立ち込める井戸の奥深くから鳴り響いてくるかのような生臭いボーカルが呼吸困難に陥りながらグロウルするのもサウンドにフィットしてます。ライブの絶妙なダサさも愛らしい。

 

今年もグラインドコアを追いかけるのは、とても楽しかった! もしお気に入りのバンドが見つかったら、ソーシャルメディアをフォローしたり、グッズを買ったり、そしてもし日本に来ることがあれば、ライブを観に行って欲しいです。

 

 

 

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : BITOKU (Sailing Before The Wind)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするメタルコア・イベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎BITOKU : BEST ALBUMS OF 2023

From Ashes to New 『Blackout』
Hollow Front 『The Fear of Letting Go』
Revision the Dream 『Transparency』
Arrival Of Autumn 『Kingdom Undone』
Night Rider 『Night Rider』
 
▶︎From Ashes to New 『Blackout』
 

 
Stream & Download : https://fatn.ffm.to/blackoutalbum
Official Site : https://www.fromashestonew.com
 
From Ashes to Newの『Blackout』はそれぞれの楽曲の完成度の高さはさることながら、サウンド・プロダクションが非常に優れていると感じた作品でした。Better Noise Musicからのリリースということで、メタルコアだけでなく、幅広くメタル・リスナーに届けられることがイメージされているのはもちろんですが、彼らのクリエイティヴな魅力について教えて欲しいです。
 
まさにその通りで、ちゃんと「商品」としてパッケージングされた点において、この作品がずば抜けて最高でした。プロデュースは(ABRなどを手掛ける)Grant McFarlandとCarson Slovakのタッグ。彼らがまぶしたメタルコア視点でのアプローチが、自分の耳に刺さったのかなと。ギターリフをハモらせるタイミングとか、細かいエフェクト音とか、ボーカルワーク以外も全てが洗練されていて痺れる名盤。

 
▶︎Hollow Front 『The Fear of Letting Go』
 

 
Stream & Download : https://hollowfront.lnk.to/TFOLG
Official Site : https://unfdcentral.com/artists/hollow-front/
 
Hollow FrontはSailing Before The Windのメンバーだけでなく、「One Bullet Left」でタッグを組むSable Hillsのメンバーらもフェイバリットにピックアップしていました。このアルバムも細部へのこだわり、メタルコア、さらにはデスコアなどにも通ずるようなタフなグルーヴが魅力だと思いますが、彼らのこれまでの歩みを踏まえつつ、このアルバムの良さについて教えて下さい。
 
ツアー中の事故とそれに起因する保険会社とのトラブルで、製作が遅れ、メンバーが脱退し、2人だけになってリリースされた本作。ただ僕は、”ドラマがあったから”この作品を選んだわけではなくて。私的感情を抜きに作品単体で見ても、壮絶な完成度。9曲目の”Good Things Never Last”で聴けるような4つ打ちビートとメタルコアサウンドの融合は、非常に先進的だなと。もちろん方法論としてやっていたバンドは他にもいるでしょうが、パワーバランスがメタルコア優位のままで、こうしたアプローチを融合しているのがスゴいです。曲単位でも作品単位で見ても、音楽的な実験と継承のバランスがとても良いアルバム。
 
今回ベストアルバムで選んだ作品からはベストトラックを挙げないようにしましたが、それを抜きにすれば、間違いなく本作から”Letting Go”は選んでました。トラブルの過程で疲弊し脱退してしまったメンバーに思いを馳せると、涙が出てきます(アナウンス文がとてつもなく悲しい)。

 

 
▶︎Revision the Dream 『Transparency』
 

 
Stream & Download : https://fanlink.to/jiRg
Official Site : https://www.facebook.com/revisionthedream/
 
Revision the Dreamの『Transparency』という作品については、おそらくこのリストをきっかけにこれから聴いてみようという人がほとんどだと思います。「One Bullet Left」で来日するAcross The White Water Towerにも通ずる、2000年代後期以降のメタルコア/ポスト・ハードコアを下地に現代的なアプローチも組み込んだサウンドを鳴らすバンドですが、このバンド、またはアルバムの魅力について教えて下さい。
 
Revision the Dreamはイスラエルのメタルコアバンド。イスラエルと言えばHer Last SightやDream Escapeが有名で、まさにその界隈のバンドですね。Revision the DreamのギターはDream Escapeのギターで、Dream Escapeのもう片方のギターはHer Last Sightのドラマー。推測ですが、Dream Escapeが改名/分裂した(?) ようにも見えます。サウンドの軸は、2010年代初期のプログレッシブメタルコアサウンド。当時ElitistやERRA、Forevermoreにのめり込んだリスナーは完全ノックアウトされるはず。こういう作品は「リバイバル」の一言で片付けられがちではありますが、今作はとにかくクオリティが高いので、さすがにスルーできなかったです。あの頃のメタルコアを発展させたバンドは数あれど、Revison the Dreamみたいに”継承”したバンドは少ないわけで、そこに価値を置いた結果の評価です。

 
▶︎Arrival Of Autumn 『Kingdom Undone』
 

 
Stream & Download : https://bfan.link/AOA-KingdomUndone.ypo
Official Site : https://www.arrivalofautumn.com/
 
Arrival Of Autumnの『Kingdom Undone』は2020年代のメロディック・デスメタルのスタンダードとして次の何年かに渡って影響を及ぼしそうな、そんな可能性とエネルギーに満ちた作品だと思います。もちろんNuclear Blast Recordsからのリリースというのも大きく影響していますが、彼らはどんなバンドで、こんなところが他のバンドにはない魅力だというような楽曲、またはフレーズはありますか?
 
Mark Lewis手掛ける生感あふれるプロダクションも相まって、2000年代のモダンメタル好きにオススメしたい内容。あまり話題になっていないのが残念なくらい、一聴の価値ある作品です。
 
各サブジャンルの良いとこどりをした結果、逆にカテゴライズが難しくなり、プロモーション的には大変だったのかもしれません。Nuclear Blastからのリリースですが、Roadrunner好きに刺さるかなと。ボーカルの声質ゆえか、自分的には”Roadrunner化したMychildren Mybride”的な解釈で、楽しめました。(Arrival Of Autumnにデジタル感はないですが)Mnemicとの共通項があるので、ああいうグルーヴメタルが好きな人もぜひ。まさしく可能性に満ちた1枚。

 
▶︎Night Rider 『Night Rider』
 

 
Official Site, Stream & Download : https://linktr.ee/nightridertheband
 
Night Riderのセルフ・タイトル・デビュー作は、いろんな意味で驚かされました。親しみやすいシンセの音色と現代メタルコアが、ネオンのヴィジュアル・イメージと良くあってますし、もしかしたらメタルよりもハードロックなどを聴いているリスナーにもアプローチできるようなポテンシャルがあるのではと感じるほどです。このアルバムの魅力について教えて下さい。
 
本作で提示されたSynthwave/Retrowave+メタルコアのパターンは、そういえば未開拓ゾーンだったので、「あぁまだそこの陣地取れたか!」という感覚で聴けました。メンバーはex-Affianceなど手練の集合体なので、安定感抜群の仕上がり。メタルコアパートのフレージングはもうちょっとバリエーションがほしかったですが、その分シンセパートにリソースを振り分けた感もありますね。最近のKingdom of Giantsが楽しめる方は結構刺さるはず。

 

▶︎BITOKU : BEST SONGS OF 2023

▶︎Solence 「Rain Down」

 

▶︎All Faces Down 「Done Hiding」

 

▶︎Traveller 「Homesick」

 

▶︎ENOX 「Fallout」

 

▶︎Sail’s End 「The Sound of Silence 3: Three」


 
やはり、長年に渡ってメタルコアを聴き続けているだけあり、ニューカマーの中でも未来派とも言えるバンドのキラーチューンがリストインしています。これらのバンド、または楽曲についてそれぞれ感想を教えて下さい。
 
Solenceは、正直メタルコアではありませんが、フォーマットの共通点はあるので。ヘヴィパートとメロディパートの対比力、シンセトラックの混ぜ具合、全てがハイクオリティ。何よりも、曲が電子音に飲まれてない点を評価しました。サビメロの透明度は今年1番刺さりましたね(※シングルで2022年に出てますが、アルバムとしては2023年作)。
 
All Faces Downはニューアルバムからの選出。まさにAFD節が詰まった独特の清涼感、最高です。もちろん今回のような議題において「新しさ」は大事な尺度です。が、「普遍性のある名曲」もこぼしたくないなと。AFDはちゃんと自分達の音楽的領土を深堀りしている感じがして、好感が持てます。
 
Travellerが今年出したEPはかなり名作で、初期Invent好きはマストチェック。プログメタルコアの美学に沿いつつ、ジャーマン特有の憂いあるメロディがプラスされていてグっときました。
 
ENOXは前作までHAWKのRickyと制作していましたが、今作からセルフプロデュースに。とはいえ、ボーカルワークからはRickyからの影響を感じますね。表現手段としてのワーミーの流通価値が落ち続ける中で、新鮮に聴けた1曲。
 
Sail’s Endは、BERRIED ALIVEを彷彿とさせるロボティックなギターワークが秀逸。Glass CrownのDannyが在籍しており、ブルータルパートの説得力も納得。ローチューニングコア系は終始スローテンポでダレがちなのが懸念点ですが、この曲はテンポの緩急がよく考えられており素晴らしいです。
 

▶︎BITOKU : Social

https://linktr.ee/Bitoku_Bass

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : TAKUYA (Sable Hills)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするメタルコア・イベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎TAKUYA : BEST ALBUMS OF 2023

In Flames 『Foregone』
Spiritbox 『The Fear of Fear』
Hollow Front 『The Fear Of Letting Go』
Sylosis 『A Sign of Things to Come』
Currents 『The Death We Seek』
 
▶︎In Flames 『Foregone』
 

 
Stream & Download : https://inflames.bfan.link/foregone-newalbum.yde
Official Site : https://www.inflames.com/
 
近年のIn Flamesの創作意欲の爆発っぷりには驚かされますし、衰えないシーンのトップ・バンドたちの活動にはSable Hillsも多くの刺激を受けていると思います。In Flamesの過去の作品などの思い出、出会いなどを挟みながら、このアルバムのキラートラックや聴きどころ、個人的なツボなリフなどあれば教えて下さい。
 
初めて聴いた作品は『Colony』(1999)で、当時はメタルコアという言葉も知らない時期だったし、彼らはメロディック・デス・メタルというイメージでした。そこから他のアルバムも掘ったりしていく内に『Reroute To Remain』(2002)と出会い、その概念も覆されました。彼らをジャンル分けするのは不可能だとは思いつつも、この作品が後続のメタルコア・バンドに与えた影響は計り知れないものだし、メロデスをルーツに持ったメタルコア」という一つのスタイルを確立した金字塔となったと言えます。
 
そんな音楽性の定義不可能な彼らが、自身の肉体がそう長くないと知りながらも、紆余曲折の末にリリースした『Foregone』が原点回帰を感じる一枚だったことは、複雑化しすぎたメタルシーンに一石を投じる様な、確かにそこにある漢気に感動させられました。Tr.3 Meet Your MakerやTr.2 State of Slow Decayを聴けば、私の言っている事が理解してもらえると思います。

 

▶︎Spiritbox 『The Fear of Fear』
 

 
Stream & Download : https://spiritbox.lnk.to/TFOF
Official Site : https://spiritbox.com/
 
Spiritboxの存在は、オルタナティヴへと系統していくメタルコア・シーンの象徴のようなもので、世界を舞台に活動するSable Hillsにとっても、彼らの佇まい、存在感といったところからの影響はもちろんあるだろうと感じています。サウンド・プロダクションの素晴らしさはさることながら、やはりボーカリスト、コートニーのフロント・ウーマンとしてのカリスマ性が大きな魅力です。Sable Hillsのフロントマンとしてコートニーの魅力に何か影響を受けたりしていますか?また、この作品はどれもキラーチューンですが、特にお気に入りの楽曲はありますか?
 
メタルコアに限らず、女性ボーカルにはあまり惹かれない傾向があるのですが、Spiritboxは久々に魂が揺さぶられました。
 
コートニーのスクリームは心からカッコいいと感じるし、更に特にクリーンパートの楽曲リリックの繊細な想いが相まって熱い気持ちになれます。また、歌の合いの手で綺麗に入ってくる強烈なギターリフやクリーントーンのエモーショナルさも決め手の大きな要素だと思います。落としパートはただのモッシュパートには留まらないDjentな心地良さも感じられます。Tr.2 JadedとTr.1 Cellar Doorが何だかんだ好きです。

 

▶︎Hollow Front 『The Fear Of Letting Go』
 

 
Stream & Download : https://hollowfront.lnk.to/TFOLG
Official Site : https://unfdcentral.com/artists/hollow-front/
 
Hollow Frontは、例えばConvictionsのようにシャウトからポスト・ハードコアばりのクリーン、そしてメロディック・ハードコアにあるような感傷的なスクリームが大きな魅力であると思います。ボーカリストとして参考になる部分も多いかと思いますが、ボーカリストとしてこの作品の中で特筆すべき楽曲はありますか?また、彼らの魅力や彼らが好きならもっとこんなバンドがオススメだよ、というようなレコメンドがあれば教えて下さい。
 
比較的ヤングなバンドで自分好みのスタイルのメタルコアに久々に出会えて滾りました。ボーカルがスクリームとクリーン両刀使いなのですが、どちらも最高レベルで上手いしめちゃめちゃ歌が前に出てきます。『Will I Run?』のサビはリードギターと相まってエモーショナル極めてるので、メタルコアクリーンパート好きな全人類必聴です。レコメンドはLANDMARKS と Our Hollow, Our Home です。

 

▶︎Sylosis 『A Sign of Things to Come』
 

 
Stream & Download : https://sylosis.bfan.link/a-sign-of-things-to-come.yde
Official Site : http://sylosis-band.com
 
Sylosisにとって、そしてArchitectsにとっても2023年は大きな分岐点であり、特にSylosisはこのアルバムで熱心なメタルコア/メロディック・デスメタル・ファンからの注目を一身に集めました。Sable Hillsにも通ずる部分が多くあるスタイルだと思いますが、Sylosisのサウンドで特に素晴らしいと思うポイントは何だと思いますか?また、このアルバムをどんな時に聴いていましたか?
 
この楽曲をギター弾きながら歌ってるのが一番素晴らしいと思う点です。笑
 
Architectsを脱退してまでメタル貫こうとした漢が作る楽曲なんてもう良いに決まってますから、あとは自分の耳に合うかどうかだと思います。実際耳の肥えた玄人向けの楽曲ではありますので。「Crystal Lake Ankh Japan Winter Tour 2023」に参加していた時に、移動中このアルバムを聴いてましたが、「俺もずっとメタル貫こう」と思わされざるを得ませんでしたね。

 

▶︎Currents 『The Death We Seek』
 

 
Stream & Download : https://bfan.link/the-death-we-seek
Official Site : https://currentsofficial.com/
 
CurrentsはRictさんもピックアップされており、Sable Hillsのソングライティング面においても影響を与えていそうですね。お二人でこのアルバムについて何か話されたりしましたか?また、Currentsの本作の魅力はどのようなものだと思いますか?
 
次世代メタルコアの中でも10倍リスナーの多い「メタル」ワールドに進出している数少ないバンドなので、いつか一緒にやりたいし俺らはやるべきだとずっと話してます。
 
楽曲がちゃんとヘヴィで良いクリーンボーカルも有り、サウンドがクリア且つアートワークもメタル愛感じつつどこかモダンでスタイリッシュと、逆にマイナスな理由が見当たりません。

 

▶︎TAKUYA : BEST SONGS OF 2023

▶︎Make Them Suffer 「Ghost of Me」

 

▶︎Texas In July 「Put To Death」

 

▶︎Bleeding Through 「On Wings of Lead (2023 Re-Recording)」

 

▶︎It Dies Today 「Buried By Black Clouds」

 

▶︎Unearth 「Into The Abyss」

 
熱いメタルコア・スピリットが伝わってくるリストで、非常にTAKUYAさんらしいものだと思います。Bleeding Throughは再録のものをピックアップされていますが、オリジナルと比べてよかったポイントなどはありますか?そのほか、Unearthとは今年日本で公演されましたが、その時の思い出などはありますでしょうか?全体の感想も合わせて教えてください。
 
最近、映画やゲーム業界ではリバイバルの波がきていますが、音楽シーンにも徐々にそれが近付いてると感じていて。その中でもBleeding Throughというバンドが20年経った今この楽曲を再録したという事実だけでご飯何杯でもいけます。音質がめちゃくちゃ聴きやすく、こもった感じが無くなりました。Texas In JulyやIt Dies Todayが復活して新曲をリリースしたりしてるのも、その流れがきてるなと感じざるを得ません。
 
そんな昔のリバイバルが大好きな私ですが、Make Them Sufferの新曲はモダンでもヘッドバンギング不可避でした。ヘヴィすぎます。
 
Unearthは初めて自分達が日本に招聘したバンドで、でも一番記憶に残ってるのは彼らが激ロックを気に入りすぎて三日連続で渋谷のあそこのバーに行ったことですかね。最終日は会場が代官山だったのにも関わらずわざわざ渋谷行きましたから。それと、これがコロナ明けを最も感じた公演だったのも確実です。自分よりも歳上の大人が本気でモッシュしてる光景を数年振りに観れた記念すべきツアーでした。
 
2024年は、ワンバレが日本のメタルコア・リバイバルの幕を切って落としたいと思っています。もう、流れはすぐそこまで来ていますよ。
 

▶︎TAKUYA : Social

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https://www.instagram.com/saunaking_/

USデスメタル創成期の先駆者”SUFFOCATION”、 ニュー・アルバムを従えて5年振りとなる来日公演 2024年4月開催決定!

90年代初頭からデスメタル・シーンの形成に尽力し、現在は同シーンを代表する重鎮として君臨するバンド「SUFFOCATION」。新ボーカリストを迎えて先月リリースされた、9thアルバム『HYMNS FROM THE APOCRYPHA』において、更なる進化を果たした彼らが、実に5年振りに日本の地を踏む。

▶︎Everlasting Fire Presents 「SUFFOCATION – Hymns From The Apocrypha Japan Tour 2024」

2024年4月12日(金)東京 渋谷 club asia
【出演】SUFFOCATION (USA) / Crystal Lake
OPEN 18:00 / START 19:00
前売券:8,000円 / ポスター付前売券:9,500円
ミート&グリート付VIP前売券:13,000円
2日通し前売券:15,000円

 

2024年4月13日(土)東京 渋谷 CYCLONE
【出演】SUFFOCATION (USA) / GO-ZEN / KANDARIVAS / HOSTILE EYES
OPEN 17:00 / START 17:30
前売券:8,000円 / ポスター付前売券:9,500円
ミート&グリート付VIP前売券:13,000円
2日通し前売券:15,000円

 

TICKET NOW ON SALE:e+:https://eplus.jp/suffocation

 


今年9月に11年振りの来日を果たしたDARKEST HOUR、来年3月に来日を果たすFit For An Autopsyに続き、日本を代表するメタルバンド「SABLE HILLS」の三島兄弟(Vocal:Takuya / Gt:Rict)が立ち上げた、海外アーティスト招聘プロダクション「Everlasting Fire」が主催する本ツアー。初日のasia公演はCrystal Lakeとのガチンコ2マン、2日目のCYCLONE公演には、GO-ZEN、KANDARIVAS、HOSTILE EYESと日本のアンダーグランド・シーンを牽引するバンドが集結!今回は2日通し券に加え、両日共に枚数限定のミート&グリート付VIPチケットも用意されている。

▶︎Everlasting Fire
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