デスコア 2023年下半期の名盤TOP10

2023年上半期のデスコア・ベストアルバムはこちら

この記事では、RIFF CULTが2023年7月から12月までにリリースされたデスコアのアルバム/EPの中から素晴らしい作品をピックアップし、順位付けしてアルバムレビューしています。上半期と下半期に分けてアルバムレビューを行なっていますので、また上半期のリストをチェックしていない場合は、上記のリンクから読んでみて下さい。

2023年下半期は、順位をつけるのが非常に悩ましいほど、たくさんの素晴らしい作品がリリースされました。そして、それらはデスコアを出発点に個性的な発展を遂げた個性が光っていました。それぞれにデスコアではありますが、「ブラッケンド」や「テクニカル」、「ブルータル」といったデスコアから発展したサブ・ジャンルとして成立しており、同列にデスコアとして考えるには難しいほど、シーン全体に様々なスタイルを持つバンドがいます。結果的に有名無名問わず、強く印象に残り、繰り返し聴いた作品を参考に順位付けに取り組んでみました。皆さんはどう思いますか?それではアルバム・レビューを読んでみてください!

 


 

▶︎第10位 : Crown Magnetar 『Everything Bleeds』

Stream & Download : https://orcd.co/everythingbleeds
Social : https://linktr.ee/Crownmagnetar

コロラド州コロラドスプリングスのデスコア・バンド、Crown MagnetarによるUnique Leader Records からのデビュー・アルバム。2021年に発表した『The Codex Of Flesh』は壮絶なテクニカル・デスメタル/デスコアを鳴らしシーンに大きな衝撃を与えた。今でもあの衝撃を覚えているくらいだ。そんな彼らが2023年、ブラッケンド/ブルータル・デスコアの登竜門レーベルになってきているUnique Leader Records と契約。彼らをこのレーベルが放っておくわけがない。

前作はかなりテクニカルな印象があったので、最新アルバムを通して聴いてみると、意外とスラミング・パートが豊富にあったり、アンダーグラウンドなスラミング・ブルータル・デスメタル/デスコアも追い求めている感じがひしひしと伝わってきて痺れた。確固たるテクニックがあるからこそ出せるブラストビートのスピードがあるからこそ、そこから急ブレーキをかけた時のブレイクダウンの威力というものは凄まじいものがある。「The Level Beneath」は刺激が欲しいメタル・リスナー全員聴くべき名曲。

SLAM WORLDWIDEという異次元のワンマン・プロモーティング・マシーン・チャンネルが育んできたブルータル・デスメタルとデスコアのクロスオーバー・メディアという、誰もやったことがなかったふたつの異なるリスナーが集まる場所として機能して、Crown Magnetarのような化け物が正しく評価される地場を作った。この功績の偉大さまでも感じさせてくれる彼らのニュー・アルバム、未聴の方は食らって欲しい。

 

▶︎第9位 : Orphan 『Manifesto 1.0: Stages of Grief』

Stream & Download : https://tr.ee/fs6zGIJOT_
Social : https://linktr.ee/Orphanband

STRANGLEDという狂気に満ちたスラミング・デスコア・バンドが出てきたときは彼らが天下を取るのではと思ったが、残念ながら解散してしまった。理由については色々言われているが、STRANGLEDが分裂して、Orphanを結成した兄弟が、ストリームやマーチの分配金を正当に分け与えなかったことが理由だとかなんとか……。それで結果OrphanとPeelingFleshという、二つの異なるヘヴィ・バンドが誕生した。もしこれが真実なのであれば、このリストにOrphanを掲載することはなかったが、流石に、この完成度の高さだと評価せざるを得ない。

STRANGLEDでもあの狂ったツイン・ボーカルが完全にバンドを支配し、ライブ中に殴り合い怒りをぶちまけ合うリアルな様には慄いたが、Orphanのフランティックなエナジーのリアルさはしっかり楽曲に内包されていて、聞き続けていると精神的にくるものがある。リアルにやばい人間の音楽なのか、芸術性と理性を持って、作品としてこれをやってるか、そのギリギリにあるという意味では、上記の噂が真実なのかはっきりする前に一度聴いておいて損はないだろう。

 

▶︎第8位 : Within Destruction 『Rebirth』

Stream & Download : https://fanlink.to/wdrebirth
Social : https://sadboikroo.com/

そろそろ年間ベストをまとめないとといけないと下半期にリリースを振り返っていたところにサプライズ・リリースされた、スロベニアのデスコア・バンド、Within Destructionのミニ・アルバム『Rebirth』は、オープンワールドのアクションRPG「ELDEN RING (エルデンリング) 」の世界観に魅了されたメンバーが、歌詞、ヴィジュアルにそれを落とし込んで制作した作品に仕上がっている。

わずか6曲のEPであるが、内容は非常に濃い。彼らは自身のデスコアを「Nu Deathcore」を表現したり、ニュー・メタルコアとの繋がりを意識しながら、クリエイティヴに新しいデスコアを追い求めている。スラミング・ブルータル・デスメタルのエレメンツも彼らのサウンドの暴虐性、ブレイクダウンの強度をグッと上げているのも個人的には熱いポイントだし、ピッグ・スクイールしまくりながらビートダウンするのには思わず笑ってしまった。ただ、いわゆるNo Face No Caseのようなスラミング・ビートダウンとは言い切れない、デスコア的構築美がある。Signs of the SwarmやDistantのメンバーがゲスト参加しており、それぞれのファンであれば明確なWithin Destructionのサウンドの特徴も感じられるはずだ。結構作り込まれてて驚いた作品。

 

▶︎第7位 : Thy Art Is Murder 『Godlike』

Stream & Download : https://TAIM.lnk.to/GodlikeYT
Social : https://www.thyartismurder.net

4年振りとなった通算6枚目のアルバムは、2023年ナンバーワン・デスコア・アルバムになるべき作品であった。Nuclear Blast を離れ、Human Warfareからのリリースとなった本作でバンドを象徴するフロントマンだったCJ McMahonは歌っていない。彼はアルバム・リリースの直前にトランスジェンダー嫌悪の投稿を発端にバンドを解雇させられており、アルバムには後任ボーカリストとしてAversions CrownのTyler Millerが急遽ボーカル・パートを録り直し配信された (フィジカルはCJがボーカルを務めたものが収録されているそうだ)。

バンドの声明には今回の件だけが解雇の原因でないこと、彼の抱える様々な問題とバンドとの方向性の違いについて様々述べられていた (現在オフィシャルからは削除されている)。その怖いくらいの冷静な声明文からはバンドがカリスマと呼ばれ、神格化されたThy Art is Murderのフロントマンを抱えて活動してきたあらゆる苦悩から解放された清々しさすら感じた。単なるCJのバックバンドでないことを証明しなければいけないプレッシャー、それは残酷だが新曲のミュージックビデオに書き込まれるリスナーからのコメントを見れば相当なものである。

Tylerは素晴らしいボーカリストであり、Thy Art is Murderにフィットする最良の後任ボーカルであることは間違いないし、バンドの決断は間違っていないと思う。アルバム・リリース前のミュージックビデオに関してはCJをフロントに据えたディレクションが施されているが、「Destroyer Of Dreams」には登場せず、音源も差し替えたもので作り直されている。キーとなるブレイクダウンもThy Art is Murderらしいダイナミズムがあり、ヒロイックなギターワークは一時期のWhitechapelを彷彿とさせるようでもある。Thy Art is Murderのこれからに期待したいと思う。『Godlike』はいいアルバムだが、彼らはすぐに次作に取り掛かる必要があるかも知れない。

 

▶︎第6位 : The Voynich Code 『Insomnia』

Stream & Download : http://orcd.co/tvcinsomnia
Social : https://bit.ly/m/thevoynichcode

2023年11月に再来日を果たしたポルトガルのシンフォニック/ブラッケンド・デスコア・バンド、The Voynich CodeのUnique Leader Records契約後のグローバル・デビュー作。ツアーの準備中、それは確かリリースの1年以上前であったが、契約が決まったと連絡があった。そこで色々とUnique Leader Records 周辺のデスコア・シーンの状況やつながりについて詳細な話を聞けたのは非常に興味深かった (ここでは書けないが…) 。ポルトガルという、メタル・バンドにとってはまだまだ未知の国ではあるが、彼らはヨーロッパを中心にツアーを行い、実績十分だ。このアルバムでは、彼らはアルバムのソングライティングを行なっている際にメンバー全員でハマっていたというHumanity’s Last Breathの影響も感じることが出来る。本作のミックス/マスタリングを手掛けたのはChristian Donaldsonなので、クオリティはお墨付きだ。こぼれ話だが、RIFF CULTのチームが運営するRNR TOURSで今年6月に来日したメロディックパンク・バンド、MUTEのギタリストがツアー中使っていたのはChristianから直接購入したギターだった。不思議なつながりを感じた瞬間であった。

さて内容であるが、彼らのライブ・パフォーマンスを観た人なら分かるだろうが、現代デスコアのトレンドとも言える、Lorna Shoreを彷彿とさせるブラッケンド・スタイルを、これまでThe Voynich Codeが育んできたBorn of Osirisからヒントを得たオリエンタルな音色を”染み込ませた”サウンドへとアップデートしている。新加入のドラマーDaniel Torgal (彼もRNR TOURSで過去に来日を手がけたAnalepsyの元メンバーである!) によるマシンガン・ブラストビートを下地に敷いたメロディアスなデスコアは、一見そのプログレッシヴさにとっつきにくい印象を受けるかもしれないが、フックの効いたテクニカル・リフの波がベストなタイミングで展開してくるのでご安心を。「The Art of War」で魅せるThe Voynich Codeの新スタイルは、デスコア・リスナーはもちろん、プログ/Djent、そしてThallといったニッチなジャンルのリスナーまでを虜にする要素がたっぷりと詰まっている。聴き込みが重要な作品。

 

▶︎第5位 : Carnifex 『Necromanteum』

Stream & Download : https://carnifex.bfan.link/necromanteum.yde
Social : http://www.carnifexmetal.com

トレンドの移り変わりが激しいデスコアという音楽シーンにおいて、長年大きくスタイル・チェンジをしていないのがCharnifexだ。Jason Suecofがプロデュースというのも、良いチョイスだと思う。サウンド・プロダクションが”デスメタル”であることが、彼らの良さを引き出している。

アルバムを9枚作ってきて、さほど大胆なスタイルチェンジやチャレンジングなパートを導入したりしないということは、彼らがブラッケンド・デスコアの元祖として自身のソングライティングにかなりの自信を持っている証拠だと思うし、実際に、細部にまで血が通った人力のグルーヴとホラー映画さながらのシンフォニックなオーケストレーションが彼らのサタニックな魅力を不気味に引き出しており、完全に格が違うということが数曲聴いただけでも確信出来る。

中でもやはり、タイトル曲「Necromanteum」のオーケストレーションは神がかっている。ここまでオーケストレーションをキーにした楽曲は、思い返してみたら無かったかも知れない。長年ライブのエンディングを飾る「Hell Chose Me」が「Necromanteum」に置き換わったら、だいぶ印象も変わりそうだ。

 

▶︎第4位 : Impending Doom 『LAST DAYS』

Stream & Download : https://linktr.ee/impendingdoom
Social : https://www.instagram.com/impendingdoom/

2000年代初頭から活動を続けるベテラン・デスコア・バンド、Impending Doomが、10年以上所属していたeOneを離れ、18年振りにインディペンデントに戻り本作をリリース。いやはや驚きました。ロゴも一新、ここからまたImpending Doomの伝説が続いていくのかと思い、リリース時はかなり精神を集中させてEPを聴きました。

デスコアのアルバム・コンセプトや歌詞は近年メンタルヘルスが中心で、人間としてのダークサイドや怒り、悲しみというものが多く、リアルに追求すること自体に危険性をはらんでいる音楽であることは間違いなく、人を壊してしまう危険性を常にはらんでいる。ツアーともなればそれを毎日演奏するミュージシャンが被る精神的な影響は計り知れないものがあるだろうと感じますね。

Impending Doomは、クリスチャンであり、クリスチャンであることを通じて生ずる社会的な怒りや批判をテーマに取り上げることがこれまでも多くありました。芸術的に、そして詩的にそれらを表現し、大炎上するような偏った思想でなく、共感を呼ぶものにするというのは教養なしには出来ないでしょうし、実際の感情に基づいているからこそ数10年に渡り歌い続けられているのかもしれません。長く歌い続ける楽曲の歌詞が一瞬の怒りや悲しみを切り取ったものであった場合、通常のメンタルとは異なる負の感情、怒りの感情を歌い続けることにはかなり重たい精神的負荷がかかってくるでしょうし、大型ツアーともなれば、それをほぼ毎日1ヶ月続けるので普通はおかしくなってしまうでしょう。これはデスコアという音楽がこれまでに何度も直面してきた問題で、デスコアという音楽が長く続いていく上でも、その時の精神状態などを大きく反映させた歌詞などを歌うこと、絶望感、希死観念をテーマにし続けることには、やや注意が必要かもしれません。Impending Doomが精神的な混乱、狂気や怒りのような音の塊をサウンド・パレットの上に落とし込んでいるのは紛れもない事実だが、それが精神的な崩壊からくるものでないことは明らかで、フレーズの所々に見られるクリスチャン・メタルらしい言葉のチョイスはダークであるが、デプレッシヴでないと感じます。クリスチャンであることの一貫性は、現代の困難な社会を歩む上で重要なことなのかも知れない。

サウンドもFacedown Recordsのクラシック・デスコアを見事に現代的なサウンド・プロダクションにアップデートしているのが節々で感じられる。ミュージックビデオにもなっている「ETERNAL」のエンディングでモッシュしないデスコア・リスナーはいないだろう。

 

▶︎第3位 : Face Yourself 『Tales of Death』

Stream & Download : https://linktr.ee/faceyourself
Social : https://fyourselfband.com/

オレゴン出身女性ボーカル・デスコア・バンド、Face Yourselfの5曲入りEPが登場。本作前にシングルとしてリリースされた「Death Reflection」では、「女性版Will Ramos」と言われるほど、人間離れしたガテラルを炸裂させ、一気に人気急上昇バンドとなりました。高まる期待とは裏腹に、本作のアートワークはギロチン落下寸前のおどろおどろしいブルータルなものでB級感をぷんぷん漂わせているのには驚きました。個人的には、ブルータル路線を追求していくことの強い表れのように感じ、簡単にメジャー・レーベルには引っこ抜かれないぞというアンダーグラウンド・デスコア・スピリットを勝手に感じました。

EPの先行シングルとしてミュージックビデオとしても公開された「Guillotine」はこの作品のキラーチューンで、女性ボーカリストJasmineのガテラルが圧倒的な存在感を放っています。ファストなブラストビートの上で炸裂するシュレッダーなテクニカル・リフ、ソロも導入されていて、全体的なバランス感覚もヘヴィに偏るでもなく、メロディックに傾倒するでもなくドラマティックで全く飽きません。そして、Lorna Shore直系のエンディング・パートは本家を超えてしまっているとのコメントもMVに書き込まれるほど。それ以上に素晴らしいのはChelsea Grinの初代ボーカリストAlex Koehlerに影響を受けたようなスタイルでスクリームする中盤のボーカル・パートかも。いや本当に聴くたびに衝撃を受けます。

 

第2位 : Signs of the Swarm 『Amongst The Low & Empty』

Stream & Download : https://signsoftheswarm.com/ATLAE-preorders
Social : https://signsoftheswarm.com/bio

Signs of the Swarmが名門Century Media Recordsへと移籍して発表した通算5枚目のフル・アルバム。Lorna Shoreの成功によって、メタルのメインストリームに向かって更にデスコア・シーンを拡大するための門戸が開かれたと言えるだろう。Lorna Shoreの衝撃についてSigns of the Swarmというチョイスは完全に間違っていない。そしてバンドもその期待を超えるものを『Amongst The Low & Empty』で作り上げている。その自信は、アルバムのオープニングを飾るタイトル・トラックでミュージックビデオにもなっている「Amongst the Low & Empty」に現れている。この楽曲は前半こそ、これまでSigns of the Swarmが築き上げてきたブルータル・デスコアに微細なプログレッシヴ/マス・エレメンツを散りばめ、ブレイクダウン・パートへ向かってその熱を加熱させていく。驚くべきは更に底から、2段、3段、4段とビートダウンしていくパートであり、正直言葉を失ってしまうほど、驚いた。もうこの曲の衝撃が凄すぎて、他の曲の感想はありません。

と、言いたいところだがすごい曲が多すぎる。「Tower of Torsos」はニューメタルコアのワーミー、Djentな細かいリフの刻み、エレクトロニックなノイズを見事に散りばめた。無論、この楽曲もエンディングのビートダウンは言葉にならないほどヘヴィだ。次いで「Dreamkiller」はSigns of the Swarmが更に上のステージへと階段を上がっていくために作られたような曲で、これまでキーになることはなかったプログレッシヴなスタイルを全面に押し出し、クリーンパートも少しだか組み込まれた興味深い仕上がりとなっている。この曲が彼らを、これまでリーチ出来なかったところへ導いてくれるものになるかどうか、それはやはりCentury Media Recordsが仕事をするはずだ。これだけ高いポテンシャルを兼ね備え、それを見事に、ブルータル・デスコアとして最高の形に仕上げた彼らの更なる成長が楽しみである。

 

▶︎第1位 : Humanity’s Last Breath 『Ashen』

Stream & Download : https://ffm.to/hlbashen
Social : https://humanitys-last-breath.com

2009年、Vildhjartaのメンバーによる新バンドという触れ込みでスウェーデンから世界へ向けて衝撃的なデビューを果たしたHumanity’s Last Breathも気付けば本作が4枚目のフル・アルバムだ。このアルバムについてバンドは、このようなコメントを発表している。

「10年以上にわたり、Humanity’s Last Breathは、迫り来る黙示録を警告するかのような不吉なメッセージを音楽で伝えてきた。表現を必要とする場所から音楽を作りたいという果てしない衝動で、常にモダン・メタルの可能性の限界を押し広げてきた。4枚目のアルバム「Ashen」のリリースとともに、このサウンドを体験してほしい。世界は絶望の中で歌おう」

直訳なので絶妙なニュアンスはやや異なるかもしれないが、気になるのはHumanity’s Last Breathがモダン・メタルを自称しその可能性の限界を追求していることをバンド活動の大きなテーマとしているところである。実際にバンドの主要メンバーであるBuster Odeholmはプレイヤーとしてだけでなく、多くのデスコア・バンドのプロデュース、ミックス、マスタリングなどを手がけており、シーンきってのプロデューサーとしての側面も持ち合わせている。彼が自身がヘッドを務めるバンドにおいてどのようなスタイルを作り上げるのか、それはこれまでプロデュースしてきたバンドへ「自分とはなんたるか」を提示することにもなり、『Ashens』で想像も出来ないほどの創意工夫と挑戦、限界の追求を果たしている。そしてそれは、プログレッシヴ、Djent、Thallという概念すらも自ら打ち壊してしまうような、衝撃的なものになっている。

オリエンタルな女性コーラスが永遠とバックトラックとして流れる「Instill」のDual Guitar Playthroughのビデオがアップされているので観てみよう。ギタリストにとって、これほど参考にならないプレイスルー・ビデオはあるだろうか! Busterはレフティであるが、弦は逆張りしていて、「E B E A Ab A」という奇妙なチューニングを施しプレイしている。このプレイスタイルについては自著『Djentガイドブック』で直接Busterについてインタビューをしているので是非手に取って読んでみてほしい。この楽曲からも分かるように (インスト・バージョンであるが)、聴くものを飲み込んでいくようなリフの恐るべきパワーに圧倒されるし、ヘヴィ、以上に”ダークネス”という部分の追求をしているようなところもあり、闇より深い黒を探し続けているような、常人では考えもつかないアイデアでHumanity’s Last Breathをアップデートしてくれている。

また、メンバーにはラインナップされていないが1曲を除き、本作はBusterとVildhjartaのCalle Thomérがソングライティングを手掛けている。元々彼は参加しないつもりであったし、メンバーでもないが、BusterがColleの才能を認めていて、いくつかのHumanity’s Last Breathの楽曲アイデアを彼に送り、アレンジしてもらったと言う。このコラボレーションはHumanity’s Last Breathというバンドにとってこのアルバムで未知のサウンドを生み出すのに大きな力になっているようにも感じる。また、このアルバムで初めて(!) プログラミングしたドラムではなく、ドラマーが実際に録音している。このドラム録音はリハーサル・スペースで録音してツアー中にラップトップで編集したとのこと……。さらにボーカルはAudiomoversというソフトを使い、ボーカルのFilip Danielssonが自宅スタジオで録音、それがBusterのDawにそのまま録音されるようにセットアップして時間の節約をしたそうだ。クリエイターの環境も日々アップデートしているが、さすがBusterといった具合だ。

アルバムからの先行シングル「Labyrinthian」は非常に高い評価を得た。先ほども彼らのサウンドを説明するとき、「闇よりも黒い黒」といったが、この楽曲でそれを完全に表現している。もちろん、中盤にはモッシュでも起こそうかというようなキャッチーなフレーズもあるが、そこからまたずるずると、リスナーを闇深くへ引き摺り込んでいく。バンドはこんな完成度の高いアルバムを作って、次一体、何を作ってしまうのだろうか。Lorna Shoreが「To The Hellfire」を出したとき、もうデスコアがこれ以上ヘヴィになることはないかもしれないと思ったが、彼らはまだ、さらにヘヴィになっていくだろう。

 

次点TOP 10

Osiah – Kairos
As Beings – Slave to the Sickness
VØID – Everything is Nothing
Nylist – The Room
Lonewolf – The Rhythm of Existence
Teralit – The Trinitarian
Acranius – Amoral
Monasteries – Ominous
Worm Shepherd – The Sleeping Sun
DJINN-GHÜL – Opulence

USデスコア、CARNIFEXのニュー・アルバム『Necromanteum』10月発売決定

カリフォルニア州サンディエゴ在住のデスコア・バンド、Carnifexが9枚目のスタジオ・アルバム『Necromanteum』を10月6日にNuclear Blast Recordsからリリースすることを発表しました。このアルバムは以下のトラックで構成されていることも同時に発表となった。また、タイトルトラックのミュージックビデオが公開されている。

01. “Torn in Two”
02. “Death’s Forgotten Children”
03. “Necromanteum”
04. “Crowned in Everblack”
05. “The Pathless Forest”
06. “How the Knife Gets Twisted”
07. “Architect of Misanthropy”
08. “Infinite Night Terror”
09. “Bleed More”
10. “Heaven and Hell All at Once”

 

VISIT THE BAND
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元祖ブラッケンド・デスコア Carnifex がOceanoのAdamをゲストに迎え再録した「Lie To My Face」リリース!

[arve url=”https://youtu.be/5DvGuYGiTeo” /]

 

ブラッケンド・デスコアの生みの親、Carnifex がOceanoのボーカリストAdam Warrenをゲストに迎え再録した「Lie To My Face」をリリースしました。今年、彼らの名作アルバム『Dead In My Arms』がリリースから15周年を迎え、記念ツアーの開催も決定している。

 

バンドは、「”Dead In My Armsの15周年を記念して、親友であるOceanoのAdam Warrenをフィーチャーした「Lie To My Face」の特別バージョンを公開できるなんて、これ以上ない幸せです。この新しいバージョンは、私たちをずっと生かしてくれた世界最高のファンへの感謝の気持ちを込めたものです。曲を楽しんでください!Dead In My Arms 15周年記念ツアーでお会いしましょう!」とコメントしている。

 

ブラッケンド・デスコア 2021年の名盤5選

 

デスコアのサブジャンルでありながら、近年枝分かれ的に注目されてきた「ブラッケンド・デスコア (Blackend Deathcore)」。今年は特に、来年以降の盛り上がりを確信するような仕上がりの作品が多数リリースされた。筆頭に挙げられるのはやはりLorna Shoreで、「To The Hellfire」のミュージックビデオ公開以降、デスコア以外のメタルリスナーからも支持を集め、Bring Me The Horizon、A Day To Rememberのツアーに帯同することも決まっている。彼らが自身の音楽をブラッケンド・デスコアだと自称しているわけではないが、ヘヴィでバウンシーなデスコアと轟音で疾走するブラッケンド・パートをブレンドしたサウンドでシーンから評価を得たことは、後続のバンドに多大な影響を与えたことだろう。

 

また、長らくブルータルデスメタルの老舗レーベルとしてメタルシーンに認知されていたUnique Leader Recordsも近年はデスコア・バンドとの契約に力を入れており、ブルータル・デスコアの他にブラッケンド系の獲得にも力を入れている。根強いファンベースを持つブラックメタルシーンとメタルコア、オルタナティヴといった若いファンベースから支持を得られれば、ブラッケンド・デスコアの未来は明るいと思う。2022年は間違いなくブラッケンド・デスコアの年になるので、その土台となった今年リリースの注目作を紹介したいと思う。

 

 

第5位 : Ov Sulfur – Oblivion

レーベル : Independent
Facebook : https://www.facebook.com/ovsulfur
Instagram : https://www.instagram.com/ovsulfur
Twitter : https://twitter.com/ovsulfur

 

一言コメント : ex.SuffokateのRicky在籍、タレント揃いのニューカマー

 

 

2021年から本格始動したex.SuffokateのRicky Hoover率いるネバダ州ラスベガス拠点の新星、Ov SulfurのデビューEP。Suffokateも2000年代後半からデスコアを聴いていない人にとっては、特段思い入れもないと思いますが、Mediaskare Recordsから2枚のアルバムをリリースし、Job For A CowboyやVolumesらと共にSuicide Silenceに次ぐデスコアのニューカマーとして人気を博したバンドで、Rickyのカリスマ性はSuffokateの活動が止まった2010年代中頃以降、伝説になっていた。そんな彼が再びバンド活動を再開するとあって、Ov Sulfurは今年、熱心なデスコア・リスナーから熱視線を集めた。中期Whitechapelを彷彿とさせるデスコア・サウンドに、重厚なオーケストレーションをブレンド、Rickyの存在感もさすがだが、クリーンパートも聴きどころの一つ。コテコテのブラッケンド感はないが、ブラッケンド・デスコアの入門作として非常に聴きやすい作品では無いかと思います。来年はフルアルバムを出してくれることを楽しみにしています!

 

 

第4位 : Arbitrator – Forsaken

レーベル : Independent
Link : https://linktr.ee/ArbitratorUS

 

一言コメント : 荘厳なオーケストレーション、エレガントでシンフォニー

 

 

アメリカとオーストラリア、それぞれに在住のボーカリストRyan Dennisとマルチ・ミュージシャンSean Sparacoによるシンフォニック・ブラッケンド・デスコアユニット、ArbitratorのデビューEP。サウンド・プロダクションはまだまだ荒削りな部分も多いが、シンフォニック・ブラッケンド・デスコアというサブ・サブジャンル的な音楽を上手く具現化していて、2021年出会ったアーティストの中でも非常に興味深い存在でした。デスコア要素は30%程度というのも他のブラッケンド・デスコア勢に比べると少なく、どちらかというとシンフォニック/ブラックメタル寄り。とは言え、しっかりとヘヴィなブレイクダウンを搭載しています。プロダクションの向上がブレイクの鍵になると思いますが、本作も十分高く評価出来ます。

 

 

 

第3位 : Mental Cruelty ‎– A Hill To Die Upon

レーベル : Unique Leader Records
Link : https://www.mentalcrueltyofficial.com/

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一言コメント : ブラッケンド・デスコアの完成形

 

 

2015年ドイツ/カールスルーエにて結成されたMental Crueltyの4枚目フルレングス。2019年からUnique Leader Recordsと契約し、本作が同レーベルからの2作目となる。ブラックメタルの雄大さ、壮大さをシンフォニック・メタルの手法を交えながらデスコアに落とし込んだスタイルで他を圧倒するクオリティのブラッケンド・デスコア・サウンドを確立。そのブレンド具合も絶妙で、「ブラッケンド・デスコア」として想像するサウンドの完成形がMental Crueltyと言っていいだろう。ボーカリストLuccaのインパクトは血塗れのビジュアルと合間って強烈。

ポイントとしてはLorna Shore同様、ドラムのサウンド・プロダクション。リフを調和した瞬間の瞬発力が凄まじく、地鳴りのようなブラストビートがたまらないという人が多いと思う。このタイプのヘヴィ感は2022年あちこちで聴かれるようになるだろうし、スラム系にも良い影響を与えるはず。

 

 

 

第2位 : Carnifex – Graveside Confessions

レーベル : Nuclear Blast
Website: http://www.carnifexmetal.com/
Facebook: https://www.facebook.com/CarnifexMetal
Instagram: http://www.instagram.com/carnifex
Twitter: https://www.twitter.com/carnifex
YouTube: http://bit.ly/subs-crnfx-yt

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一言コメント : 元祖ブラッケンド・デスコア、変化しない強さ

 

 

カリフォルニア州サンディエゴを拠点に活動するベテランCarnifexの、通算8枚目となるスタジオ・アルバム『Graveside Confessions』は、前作『World War X』からおよそ2年振り。メンバーチェンジもなく安定期を継続する彼らの新作は、アルバムタイトル・トラックで幕を開ける。自身はブラッケンド・デスコアの元祖である自覚があるかどうかと言われれば、はっきり断定はできないがブラッケンドな疾走感と残忍なリフワークを組み合わせたデスコア・サウンドが後続にもたらした影響は計り知れない。

 

アルバムには初期曲の再録も収録されており、2007年のデビューアルバム『Dead in My Arms』収録曲「Slit Wrist Savior」ほか、「Collaborating Like Killers」など渋い人気曲も現代的にアップデートされていて古くから彼らを追いかけているファンにはたまらないものがあるでしょう。今も昔のほとんどブレることなく、Carnifexサウンドを追求する姿勢は見習うものがあり、ブラッケンド・デスコアのオリジネイターとして心強い。

 

 

第1位 : Lorna Shore ‎– …And I Return To Nothingness

レーベル : Century Media Records

Facebook : https://www.facebook.com/LornaShore/
Instagram : https://www.instagram.com/lornashore
Twitter : https://twitter.com/LornaShore

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一言コメント : メタルの歴史を変えるヘヴィネス

 

やはり今年、ブラッケンド・デスコアを象徴する一枚として挙げたいのが新ボーカリストWill Ramosを迎え再出発となったLorna ShoreのEP『…And I Return To Nothingness』。3曲入り、EPというかシングルというか、とりあえずそんなこと関係なくこの作品が2021年デスコアシーンに与えた衝撃はデカ過ぎた。デスコアだけでなく、メタルコア、幅広いメタル・リスナーが彼らに注目したと思う。これまでの常識を覆す圧倒的なヘヴィネス、流麗なブラッケンド/シンフォニック・パート、テクニカルなドラミングにリフ、そしてなんといっても新たにLorna Shoreの顔となったWill Ramosの非人間的なボーカル・ワーク。どれをとってもネクスト・レベルであり、2022年にブラッケンド・デスコア・ムーヴメントを巻き起こすエネルギーに満ち溢れている。