数十年、ゴアグラインドをウォッチしていますがやはりベテラン勢が元気だ。今年はLast Days of Humanity、Spasm、Gutalax、Intestinal Disgorgeと名の知れたゴアグラインド・バンド達がアルバムをリリースし、個人的にも一時期過去の作品を引っ張り出して聴いたりリバイバルしていました。ゴアノイズ系もGORENOISE SUCKSなどオンライン上に点在するゴアノイズを統括する存在がいたり、YouTubeチャンネルGore Grinderが最新作をピックアップしバンドもシェアするなど一つの拠点になっている。ベテランから新しいプロジェクトまで、サウンドのクオリティとかは無視して”刺激的だったもの”を中心にピックアップしてみました。若干汚い、グロいアートワークもあるので、苦手な方は目を細めて呼んで下さい笑
オハイオ州デイトンを拠点に活動するワンマン・ハイスピードブラスティング・ゴアグラインド・プロジェクト、Purtid Stuの新作。本作はドラマーにタイのブラスティング・ブルータルデスメタルバンドEcchymosisのPolwachが参加している。とにかくスネアのハイピッチ具合が強烈で、スネアじゃなくて空き缶を叩いているのではないか疑惑があります。1曲あたり10秒程度が平均で最後の「Crohn’s Last Breath」のみ1分というショートカット具合も良いですね。アートワークはモザイク入ってますがアルバムを買うと無修正版が見られます。
2019年結成、アリゾナ州フェニックスを拠点に活動するワンマン・ゴアグラインド・プロジェクト、First Days of Humanityの最新作。活動スタートからハイペースでリリースを続けていて、一体これが何作目なのかは本人にしか分からないでしょう……。バンド名はもちろんLast Days of Humanityからきていて、そのサウンドもハイスピード・ブラストに雪崩の如く襲いかかるノイジーなリフ、そして下水道ボーカルが乗ってくる溺死系ゴアグラインド。目新しいことは何一つしていないが、ハイペースなリリース、一貫したアートワーク、Last Days of Humanityへのリスペクト、それらがただただ素晴らしい。来年は何作出るだろうか。
2000年代初頭から活動するチェコのゴアグラインド・トリオの4年振り6枚目のフルアルバム。Gutalaxの先輩にあたる彼ら、アートワークが楽曲にファニーな要素は少なく、どちらかというとSMネタが多いポルノ・ゴアグラインドの系譜にあります。本作も歪んだ性癖をテーマに2分に満たないゴアグラインド曲をノンストップで繰り広げていく。曲名がかなり最悪で、「Masturbation Never Breaks Your Heart」、「Garlic Sperman」、「Harvest of Cocks」、「Pussy is The Most Effective Tool of Love」などなど常人には考えられないタイトルばかり。
1989年から活動するオランダ出身のゴアグラインド・レジェンド、Last Days of Humanityの再結成後初となるフルアルバム。2006年にリリースしたアルバム『Putrefaction In Progress』は、後のゴアグラインド・シーンの典例とも言えるサウンドで大きな影響をもたらしたものの、バンドは解散してしまった。2010年に復帰後はスプリット作品などのリリースをマイペースに続け、なんと本作が15年振りのフルアルバムとなる。もう少し話題になるべきだったが、大々的なプロモーションを全く行わなかったのと、ファンが期待していた生臭いアートワークではなく、インターネットで使い古されたホラー画像のアートワークが不評だったのが原因でアルバムが出たことに気づいていない人も多いかもしれない。これがれっきとしたニューアルバムなのかどうか、そのサウンドだけでは区別がつかないという人が多いのも原因でしょうね…。解散直前のハイピッチ・スネアが音速で駆け抜けていくスタイルではなく、初期のバンド・サウンドへと回帰。『Putrefaction in Progress』のイメージが強すぎて若干の違和感があると思いますが、総じてピュアなオールドスクール・ゴアグラインド。最高のアルバムだと思います。
チェコを代表するゴアグラインドバンド、Gutalaxの6年振りとなるアルバムは、お馴染みのRotten Roll Rexからリリースされた。Obscene Extremeの目玉バンドとして知られる彼ら、コンセプトは結成当時からブレることなく”うんこ”です。10年以上うんこへの情熱を絶やすことなく続け、ミュージックビデオやアートワークに至るまでうんこがべっとり、さらにはステージに簡易トイレまで設置してしまうからその徹底っぷりは凄まじい。彼らはゴアグラインドのファニーな要素の完璧さに加え、曲もかなり良くて、おそらくソングライティングを担当しているメンバーはハードコア/メタルコア/デスコアを通過していると思われます。ソリッドでキャッチーなリフワークにピッグ・スクイールがバウンシーにのせてきます。
プログレッシヴとアヴァンギャルドの中間をいくミドルテンポの楽曲が中心で、ガリガリとリフを刻みつつもメロディアスであるのがCathexisの魅力だ。Willowtip Recordsらしいサウンドであるので、レーベルのフォロワーでまだチェックできていない方がいたら年末に向けて聴き込んでいただきたい。おすすめの曲は「Mortuus in Perpetuum」。
2021年テネシー州ナッシュビルを拠点に結成されたテクニカル/メロディック・デスメタルバンド。While You Were Asleepで活躍するベーシストTommy FireovidとドラマーRikky Hernandez、Kryptik EmbraceのギタリストだったRikk Hernandez、そして伝説のサタニック・デスメタルバンドNunslaughterのギタリストとして2014年から活躍するNoah Nuchananがリード・ボーカルを務める。
リードトラック「The Sun Eaters」はChristianのギターソロが炸裂、Victorのボーカルもインパクトが強く聴きどころと言えるが、やはりHannesのドラミングが最も輝いて聴こえる。このドラミングが他を牽引しながら楽曲が展開しているように感じるのは、ソロの楽曲だという先入観を抜きにしても感じられるはずだ。Hannesの叩きっぷりを感じながらアルバムに酔いしれて欲しい。
Ronnie Björnströmをプロデューサーに迎えた本作は、漆黒のオーケストレーションをまとったデスメタル・サウンドをベースに、プログレッシヴなエレメントを要所要所に散りばめたベテランらしい小技が光る仕上がりになっており、タイトルトラックでありミュージックビデオにもなっている「God Ends Here」では、Behemothなんかにも匹敵する悪魔的な狂気に満ちていて思わず世界観に引き込まれていく。20年以上のキャリアを持つメタル・ミュージシャンらしい引き出しの多さが聴くものを圧倒する堂々の一枚。
本作は、2016年コロラド・スプリングスを拠点に活動をスタートさせたCrown Magnetarのデビュー・アルバム。2018年にEP『The Prophet of Disgust』リリース後、コアなデスコア・リスナーから支持を集め、カルト的な人気を博していた。本作もレーベル未契約で発表されたものの、クオリティは世界トップクラス。
ペンシルバニア州リーディングを拠点に活動するプログレッシヴ/テクニカル・デスメタルバンド、Rivers of Nihilの3年振り通算4枚目となるスタジオ・アルバム。ギタリストであり、オーケストレーションのプログラミングやキーボードを兼任するBrody Uttleyがプロデュースを担当、Galaxtic EmpireのGrantとCarsonがそれをサポートする形で制作が行われた。シーンにおける有名アートワーカーDan Seagraveが描いた幻想的な世界観はプログレッシヴ・デスメタルシーンでも特異な存在感を放つRivers of Nihilにぴったりだ。
本作もBurial In The Skyのサックスフォン奏者Zach Strouseをフィーチャー、アルバム収録曲の半分に彼のサックスが挿入されている。様々サブジャンルが存在するメタルの中でもサックスとの親和性があるのは、プログレッシヴなものが多い。もちろんアヴァンギャルドなシーンではNaked Cityを彷彿とさせるようなエクスペリメンタル・ジャズ、フリージャズ的なサックスは導入されてきた事例があるが、とろけるようなサックスの音色とヘヴィ・ミュージックのブレンドはセンスが必要だ。
General Surgery : スウェーデンを拠点に活動するゴアグラインド・レジェンド、General Surgeryが新作『A Legendary Death』をリリースしました。血みどろのアーティスト写真から一転、マスクをした大人っぽいアーティスト写真にチェンジしていますがそのサウンドは変わらず生臭いゴアグラインド!
デスコアのサブジャンルでありながら、近年枝分かれ的に注目されてきた「ブラッケンド・デスコア (Blackend Deathcore)」。今年は特に、来年以降の盛り上がりを確信するような仕上がりの作品が多数リリースされた。筆頭に挙げられるのはやはりLorna Shoreで、「To The Hellfire」のミュージックビデオ公開以降、デスコア以外のメタルリスナーからも支持を集め、Bring Me The Horizon、A Day To Rememberのツアーに帯同することも決まっている。彼らが自身の音楽をブラッケンド・デスコアだと自称しているわけではないが、ヘヴィでバウンシーなデスコアと轟音で疾走するブラッケンド・パートをブレンドしたサウンドでシーンから評価を得たことは、後続のバンドに多大な影響を与えたことだろう。
2021年から本格始動したex.SuffokateのRicky Hoover率いるネバダ州ラスベガス拠点の新星、Ov SulfurのデビューEP。Suffokateも2000年代後半からデスコアを聴いていない人にとっては、特段思い入れもないと思いますが、Mediaskare Recordsから2枚のアルバムをリリースし、Job For A CowboyやVolumesらと共にSuicide Silenceに次ぐデスコアのニューカマーとして人気を博したバンドで、Rickyのカリスマ性はSuffokateの活動が止まった2010年代中頃以降、伝説になっていた。そんな彼が再びバンド活動を再開するとあって、Ov Sulfurは今年、熱心なデスコア・リスナーから熱視線を集めた。中期Whitechapelを彷彿とさせるデスコア・サウンドに、重厚なオーケストレーションをブレンド、Rickyの存在感もさすがだが、クリーンパートも聴きどころの一つ。コテコテのブラッケンド感はないが、ブラッケンド・デスコアの入門作として非常に聴きやすい作品では無いかと思います。来年はフルアルバムを出してくれることを楽しみにしています!
カリフォルニア州サンディエゴを拠点に活動するベテランCarnifexの、通算8枚目となるスタジオ・アルバム『Graveside Confessions』は、前作『World War X』からおよそ2年振り。メンバーチェンジもなく安定期を継続する彼らの新作は、アルバムタイトル・トラックで幕を開ける。自身はブラッケンド・デスコアの元祖である自覚があるかどうかと言われれば、はっきり断定はできないがブラッケンドな疾走感と残忍なリフワークを組み合わせたデスコア・サウンドが後続にもたらした影響は計り知れない。
アルバムには初期曲の再録も収録されており、2007年のデビューアルバム『Dead in My Arms』収録曲「Slit Wrist Savior」ほか、「Collaborating Like Killers」など渋い人気曲も現代的にアップデートされていて古くから彼らを追いかけているファンにはたまらないものがあるでしょう。今も昔のほとんどブレることなく、Carnifexサウンドを追求する姿勢は見習うものがあり、ブラッケンド・デスコアのオリジネイターとして心強い。
やはり今年、ブラッケンド・デスコアを象徴する一枚として挙げたいのが新ボーカリストWill Ramosを迎え再出発となったLorna ShoreのEP『…And I Return To Nothingness』。3曲入り、EPというかシングルというか、とりあえずそんなこと関係なくこの作品が2021年デスコアシーンに与えた衝撃はデカ過ぎた。デスコアだけでなく、メタルコア、幅広いメタル・リスナーが彼らに注目したと思う。これまでの常識を覆す圧倒的なヘヴィネス、流麗なブラッケンド/シンフォニック・パート、テクニカルなドラミングにリフ、そしてなんといっても新たにLorna Shoreの顔となったWill Ramosの非人間的なボーカル・ワーク。どれをとってもネクスト・レベルであり、2022年にブラッケンド・デスコア・ムーヴメントを巻き起こすエネルギーに満ち溢れている。
イタリアが誇るブルータルデスメタル・レジェンド、Vomit The Soulによる12年振りのニューアルバム。オリジナルメンバーであるドラマーYcio、ギター/ボーカルMaxが再び手を組み、同郷のレーベルメイトであるBloodtruthのギタリストがベーシストとして加入し、トリオ編成で本作をレコーディング。
アルバム収録曲「The Lost Aurea」のミュージックビデオを観ればより感じられると思うが、Dying Fetusへのリスペクトは強いものがあり、演奏スタイルも影響を受けているように感じる。といってもハードコアやスラッシュメタル的なノリは皆無だが、かなりヴィンテージスタイルのスラム・ヴァイブスに溢れている。彼らのカムバックに痺れたリスナーも多いだろう。文句なしの良盤!
再生ボタンを押した瞬間に彼らがニューヨーク出身であることが分かるほどで、『Sermon of Mockery』からバンドサウンドの根底にあるスラム要素が現代的にアップデートされていて心地良さがある。Internal Bleedingと共にクラシック・スラムの代表的バンドとしてPyrexiaを捉えているリスナーも今は多いと思うし、そんな彼らが派手な装飾抜きにこうした作品を作ったことは高評価されるべきだ。
イングランド/ロンドンを拠点に2004年から活動するブルータルデスメタルバンド。「そんなにベテランだったのか」と驚く人も多いと思うが、ちゃんと動き出したのは2014年ごろ。昨年にはセカンドアルバム『A Resting Place for the Wrathful』をリリースしていて、本作は新曲4曲とライブ音源が収録されたEPとして発表されている。この4曲が本当に素晴らしくて、あまりこういう形態の作品をベストリストには入れないんですが、必聴ということでランクイン。
2004年にUnmatched Brutality Recordsからリリースしたアルバム『Methods of Execution』以降アルバムリリースはなく、2008年に活動休止。2015年に復活したものの、オリジナルメンバーであるギタリストのMikeが正式に復帰したのは最近になってのことだ。2020年にはCesspool of CorruptionやMortifying Deformityに在籍する若干24歳のドラマーBrennanが加入し、制作活動が動き出す。レーベルの公式YouTubeチャンネルには「VII Nails」のスタジオ・レコーディング・セッションがアップされていて、動くBrodequinに結構感動した。ギブソンのレスポールでブルデスやってるのは見たことないけど、意外とクラシックなスピード重視のブルデスには合うかもしれないと思ったり。奇跡の2曲だけでも聴けて幸せだが、来年2022年には何かアルバムが出たりしないのかなと気になっています。
Within Destruction : スロベニアを拠点に活動するブルータル・デスコアバンド、Within Destructionが「Self-Hatred」をリミックスした「Self-Hatred 2.0」をリリースしました。ヒップホップなアレンジが施されたことで、彼らの楽曲の根幹にあるのが、ダンス・ミュージックであることが分かりますし、デスコアのダンサブルな部分をこうして別の音楽で表現することで、デスコアの未来はもっと明るいものになると思います。
ヒップホップとの親和性で言えば、現行ニューメタルコア勢が最も上手くクロスオーバーしているように感じます。他にも先日We Came As Romansがラッパーとのコラボ曲をリリースしましたし、UNFD、Century Media Recordsはラッパーと契約したりしてます。こちらから歩み寄ってはいるので、あとはヒップホップ・ラップリスナーが面白いと感じてくれれば、シーンの規模はもっともっと大きくなるでしょう!
1. Majin – The Heretic Anthem
2. Worm Shepherd – Eyeless
3. Azazel – Snuff
4. Raze The Altar – Before I Forget
5. The World Without Us – Me Inside > Gently
6. Quazar – Left Behind
7. Switchblade Saturdays – (Sic)
8. Null Existence – Psychosocial
9. Spoiler – Everything Ends
10. Osiah – Liberate
11. Inferious – Three Nil
12. Child of Waste – Welcome
13. Sunken State – Gematria (The Killing Name)
14. Sunfall – No Life
15. Red Helen – Duality
16. Bog Wraith – Surfacing
17. $lave – Vermillion Pt.2 03:40
18. Shiva – The Nameless
19. Etheria – New Abortion
20. Saltwound – The Blister Exists
21. For Fear Itself – Spit It Out
22. Crafting The Conspiracy – Dead Memories
23. Frog Mallet – Prosthetics
24. Casketmaker – Wherein Lies Continue
25. Grimelord – Pulse Of The Maggots
26. Bleeding Spawn – Opium Of The People
27. Nitheful – Get This (Or Die)
28. Befoul – Eeyore
29. After Smoke Clears – Welcome
30. Third World Party – Surfacing
31. Ayden Wilder – Disasterpiece
32. Kio – I Am Hated
33. Patrick Teal – Duality
34. Knot Social – Before I Forget
35. Strangled & VCTMS – Disasterpiece (Bonus)
36. Desolate Blight – People = Shit (Bonus)
37. Bleeding Spawn – Liberate (Bonus)