マサチューセッツ州ブロックトン出身のブラッケンド・デスコア・バンド “Worm Shepherd” は、新作フルアルバム『Dawn Of The Iconoclast』を Unique Leader Records からリリースした。リリースは2026年2月20日付で、2枚組仕様となっている。
『Dawn Of The Iconoclast』は、ヘヴィで複雑な技術性と黒enedなデスコア・サウンドを融合した作品で、冒頭トラックの「The Omen」から抑圧的で重厚な雰囲気を確立する。収録曲には「Soulless Lament」「Feast」「Sanctified Rot」「Whispers Of A Buried Land」などが並び、ディスク2ではすべての楽曲のインストゥルメンタル・バージョンも収められている。このアルバムはバンドの複雑な構成と演奏力を浮き彫りにし、激烈なブレイクダウンとシネマティックな要素が同居する構築になっている。ディスク1の各楽曲は、ダークで没入感のある音響を通じてリスナーを深い世界観へと誘う。
アルバムを除けば、2022年上半期のデスコア・シーンは、Lorna Shoreの話題で持ちきりだった。リアクション・ビデオとして恰好の楽曲となった「To The Hellfire」(*2021年リリース)、「Sun//Eater」はデスコア・リスナーだけでなく、オーバーグラウンドのメタル・シーンにも衝撃を与えた。そこからデスコア、ブラッケンド・デスコア・シーンへどのくらい新しいリスナーが流入したかは分かりかねるが、アンダーグラウンド・デスコア・シーンは次のLorna Shoreになるべくブラッケンドなスタイルが本格的にトレンド化していった。半数くらいは正直ブラッケンド・デスコアを上手く表現しきれていないが、デスコアの中のマイクロ・ジャンルとして成立するくらいにはブラッケンド・デスコアを自称するバンドが増えてきたように思う。
このアルバムをオープニングからエンディングまで聴いた時、メンバーが現代メタルコアやデスコア、その他周辺ジャンルのトレンドをしっかりとキャッチしていることがよく分かる。NorthlaneやErraといったプログレッシヴ・メタルコアのリフ・ワーク、Lorna ShoreやShadow of Intentに代表されるシンフォニック/ブラッケンド・デスコアのオーケストレーション、加えて、日本のラウド・シーンで育まれてきたメインストリーム・ラウドの様式美、ニューメタルコアの尖ったサウンド・プロダクション。細部に至るまでこだわりを貫いたアレンジが組み込まれており、何度聴くたびに発見があり、時代の感覚をしっかりとキャッチしていることが感じられる。
シンフォニック・デスコアと言えばShadow of Intentという人も多いだろう。結成以来レーベルに所属せず、D.I.Yのスタイルを取るバンドとして他のデスコア・バンドへ与えた影響は大きい。そんな彼らの鳴らすサウンドにデスコアのトレンドが追いつき始めた2022年、この『Elegy』がもたらした衝撃は凄まじいものがあった。デスコアにシンフォニックなエレメンツを加えたというよりは、シンフォニック・メタルとデスコアのクロスオーバーと表現するのが言い得て妙だろう。そのバランス感覚は頭ひとつ抜きん出た才能によって作られるものであり、決して簡単にフォロワーを生み出せるようなスタイルではない。アルバム収録曲で先行シングル/ミュージックビデオとして発表された「Intensified Genocide」に彼らの魅力がたっぷりと詰まっている。
アメリカン・アンダーグラウンド・デスコアの王者とでも言うべきBodysnatcher。ダウンテンポ・デスコアのポテンシャルを最大限に発揮したタフなサウンドは、これまでに幾多のフロアで殺人級のモッシュを巻き起こし、その殺傷能力に磨きをかけてきた。Lorna Shoreを筆頭に、シンフォニック/ブラッケンド・デスコア・ムーヴメントが巻き起こる今、全くメタルの影響を受けず、ハードコア・ルーツのモッシュパートを武器とするサウンド・デザインに振り切っているのが清々しい。「Absolved of the Strings and Stone」や「Flatline」といった楽曲はそんな彼らの持ち味が発揮されたキラーチューン。
数々のデスコア歴史的名盤を手掛けてきたWill Putney率いるFit For An Autopsy。オーバーグラウンドのメタルシーンのメタル勢に引けを取らないサウンド・プロダクションで他のデスコア勢を圧倒する本作は、ミドルテンポ主体かつオルタナティヴ・メタルのエッセンスを取り入れた挑戦的な仕上がりとなっている。先行シングル/ミュージックビデオとして公開された「Far From Heaven」では、雄大なコーラスワークを携えたクリーンパートとミドルテンポからでしか作り出せないダイナミックなブレイクダウン/ビートダウン・パートが印象的。
Bodysnatcher同様、長きにわたりアメリカン・アンダーグラウンド・デスコアの番長的存在感を見せてきたThe Last Ten Seconds of Life。アルバムリリース後にWyatt McLaughlin以外のメンバーが脱退するという事件が起きてしまったものの、バンドの歴史を振り返った時、この作品は歴代トップに匹敵する作品だと感じる。
2021年11月16日に公開された「Chalice Ov Rebirth」のリリックビデオからは、彼らがブラックメタルバンドとしても高い魅力を持っていることが感じられるだろう。ちょうど2022年1月14日に同じタイミングでリリースされたShadow of Intent、Enterprise Earth、Fit For An Autopsyと聴き比べてみるとその違いは歴然。ブラッケンド・デスコアもそのクロスオーバーの割合でここまで変化があり、違った可能性を持っているのは面白いことだと思います。
2021年12月24日に公開された「The River Ov Knives」は、最も早いLorna Shoreフォロワー的なサウンドで結構バズるかと思ったのですが、現在までの再生回数は4万回程度。クリスマスイヴの公開というのもあって、他に話題を取られてしまったように感じますが、楽曲の完成度は非常に高く、驚きを感じながら聴くことが出来ると思います。
1. Majin – The Heretic Anthem
2. Worm Shepherd – Eyeless
3. Azazel – Snuff
4. Raze The Altar – Before I Forget
5. The World Without Us – Me Inside > Gently
6. Quazar – Left Behind
7. Switchblade Saturdays – (Sic)
8. Null Existence – Psychosocial
9. Spoiler – Everything Ends
10. Osiah – Liberate
11. Inferious – Three Nil
12. Child of Waste – Welcome
13. Sunken State – Gematria (The Killing Name)
14. Sunfall – No Life
15. Red Helen – Duality
16. Bog Wraith – Surfacing
17. $lave – Vermillion Pt.2 03:40
18. Shiva – The Nameless
19. Etheria – New Abortion
20. Saltwound – The Blister Exists
21. For Fear Itself – Spit It Out
22. Crafting The Conspiracy – Dead Memories
23. Frog Mallet – Prosthetics
24. Casketmaker – Wherein Lies Continue
25. Grimelord – Pulse Of The Maggots
26. Bleeding Spawn – Opium Of The People
27. Nitheful – Get This (Or Die)
28. Befoul – Eeyore
29. After Smoke Clears – Welcome
30. Third World Party – Surfacing
31. Ayden Wilder – Disasterpiece
32. Kio – I Am Hated
33. Patrick Teal – Duality
34. Knot Social – Before I Forget
35. Strangled & VCTMS – Disasterpiece (Bonus)
36. Desolate Blight – People = Shit (Bonus)
37. Bleeding Spawn – Liberate (Bonus)
“ブラッケンド・デスコア”という、デスコアのサブジャンルについては、2017年に執筆した『デスコアガイドブック』の中でも触れていた。有名どころでいえばLorna ShoreやA Night in Texasなどが挙げられると思うが、バンド活動に安定感がなく、ブラッケンド・デスコアというシーンを牽引していける存在として活躍しているかと言えば疑問だ。ただ、彼らの登場に刺激を受け、アンダーグラウンドではブラッケンド・デスコアバンドとして少しずつファンベースを拡大しているバンドもいる。ここでは、2021年にニューアルバムをリリースした、または計画があるバンドを中心に最先端のブラッケンド・デスコアがどうなっているか、彼らはそれぞれにどんな特徴があるのかをチェックしていこうと思う。
Mental Cruelty – A Hill To Die Upon
2014年からドイツの都市、カールスルーエを拠点に活動するブラッケンドデスコア/スラミング・デスコアバンド。2018年にセカンド・アルバム『Purgatorium』をRising Nemesis Recordsからリリースすると、それまでアンダーグラウンドのデスコア・コミュニティ内に留まっていた人気がワールドワイドなものに拡大。2019年からはUnique Leader Recordsと契約を果たし、アルバム『Inferis』を発表。ブルータルデスメタルやデスコアという枠を超え、メインストリームのエクストリーム・メタルシーンにおいてもその名を轟かせた。彼らのブラッケンド成分は、作り込まれたオーケストレーションと、ファストに疾走するブラストパートのコントラストにあるだろう。これらは、彼らが得意とするダウンテンポ・パートの破壊力を倍増させる為にも聴こえるが、それにしてはクオリティが高い。このパートのみで楽曲を作れば、Century Media RecordsやMetal Blade Recordsのブラックメタル勢にも食らいつける実力があるようにも思う。5月にリリースが決まっている新作『A Hill To Die Upon』は、クリーン成分もあり、ステップアップのきっかけになりうる作品になることは間違い無いだろう。
イタリア/ミラノを拠点に2014年から活動するダウンテンポ・デスコア/ブラッケンド・デスコア、Drown In Sulphur (ドローン・イン・サルファー)。もともとはOceans Ate Alaskaがダウンテンポ・デスコアをプレイしたかのようなエクスペリメンタルなスタイルを得意としていたが、2019年にドラマーDomenico Francesco Tamila以外のメンバーが脱退。以降はコープスペイントを施した強烈なヴィジュアルで、ストレートなメロディック・デスコアへと傾倒していく。このメロディック感がDark Funeralなどを彷彿とさせ、彼らをブラッケンドと呼ぶ所以になっている。ところどころニューメタルコアのようなワーミー・フレーズも組み込んでいて、洗練されればなかなか面白いサウンドをプレイするようになるかもしれない。ちなみに2019年に脱退したMattia Maffioli、Max Foti、Simone Verdeは新たにDefamedを結成。こちらもデスコアシーンでは注目を集めるバンドのひとつに成長している。
スウェーデンの都市、カルマルを拠点に活動するブラッケンド・デスコア。2019年から本格始動ということで、まだまだアンダーグラウンドでの人気に留まっているが、彼らも注目しておきたいバンドのひとつだろう。今年2月にリリースされたデビューアルバム『Seize the Obscurity』は、同郷のVildhjartaやHumanity’s Last BreathにあるようなThall成分が豊富で、アトモスフェリックさも個性的。シンプルすぎるバンド名も、得体の知れない邪悪さがあってサウンドとマッチしている。