アメリカのデスコアバンド “The Last Ten Seconds Of Life” が、新曲「Make It To Heaven」のミュージックビデオを公開した。楽曲はバンドの次作アルバム『The Dead Ones』に収録される予定の楽曲として発表されている。「Make It To Heaven」にはデスコアバンド “Signs Of The Swarm” のメンバーがゲストボーカルとして参加している。ミュージックビデオは楽曲の公開にあわせてリリースされ、アルバムに先駆けて発表されたシングルとなっている。
2022年にセルフタイトル・アルバムをリリースした後、ギタリストのWyatt McLaughlin以外のメンバーが脱退してしまったものの、元々メンバーの入れ替わりが激しいバンドであったし、すぐに新体制となって動き出したのには驚いた。ボーカリストにはPromise BreakerのTyler Beam、ベーシストAndrew Petway、ドラマーDylan Pottsの4人体制となり、ペースを落とすことなく、10曲入りのフルアルバムをUnique Leader Records からリリースした。
DisgorgeやSuffocationでの活躍で知られるRicky Myersをフィーチャーした「Letania Ingernalis」やSanguisugaboggのDevin Swankが参加したアルバムタイトル曲「No Name Graves」など、The Last Ten Seconds Of Lifeのダウンテンポ・スタイルが復活したストレートな作風が心地良い。2015年に脱退したStorm Strope以降の作品は、ニューメタルをやってみたりとやや迷走気味であったが、ここへ来てこのスタイルに戻ってきたのは嬉しいことだ。本作は彼らの通算7枚目のフルアルバムだが、ここからリリースペースも上がってきそうな雰囲気もある。まだまだThe Last Ten Seconds Of LIfeはこれからだ。再びダークで不気味なダウンテンポ・デスコアがリバイバルしたら、面白いことになりそう。
Extortionist 『Devoid of Love & Light』
アイダホ州カー・ダレーンを拠点に活動するデスコア・バンド、Extortionistのサード・アルバム。2019年にリリースした『Sever the Cord』から5年も経過していたとは……。それまでにEPやシングルリリースはあったものの、ここ数年はあまり名前を聞かないと思っていた。コロナ禍でメンバーラインナップに大きな変化があり、オリジナルメンバーであるBen Hoaglandがボーカルを務め、2022年にギタリストClayton Blue、2024年にドラマーVince Alvarezが加入している。
ダークで不気味な不協和音を静かに漂わせながら、オルタナティヴ/ニューメタルに通ずるクリーンパートを導入してExtortionistらしい世界観を見事に作り出している。本作のタイトルトラック「Devoid Of Love & Light」は間違いなく2024年上半期のデスコアの中でも印象に残った楽曲だ。
TraitorsやThe Last Ten Seconds Of LIfeといった2010年代初頭にデスコアを過激化した重鎮達が2024年も元気なことは素晴らしい。血が沸くような危険な香りが漂うデスコアがExtortionistのように独自性を持ちつつ現れ続けてくれたらデスコアは面白いものであり続けると思う。
Filth 『Southern Hostility』
ノース・カロライナ州シェルビーを拠点に活動する4人組、Filthのサード・アルバム。前作『The Ignorance』から3年、Gutter Music RecordsからCrowdKill Recordsへと移籍した彼らは、初期のダウンテンポ・デスコアスタイルを保ちながらもヒップホップのエレメンツを盛り込んだり、ニューメタルコアにヒントを得たり、実験的な要素も随所に組み込んだ。しかし、持ち前の狂気的なモッシュの熱狂を生むバウンシーなパートは健在で、フロントマンDustin Mitchellの存在感も抜群だ。
ジョージア州アトランタを拠点に活動するNuclear Blast Records所属のAlluvialのファーストEP。これまでに2枚のアルバムをリリースしており、初期はプログレッシヴ・デスメタルであったが、現在までにプログレッシヴ・デスコアへとそのスタイルを変化させてきた。バンドの中心人物であるギタリストのWes Hauchは、元The Facelessのメンバーであり、過去にはBlack Crown InitiateやThy Art Is Murderのライブ・ギタリストとして活躍し、現在はAlluvialの他に、Glass Casketにも在籍している。ベーシストのTim Walkerは元Entheosのライブメンバーで、ボーカルのKevin Mullerはブルータル・デスメタル・シーン出身で元Pyrexia、Suffocationのライブでサポートを務めた経歴も持つ。2022年にドラマーZach Deanが新加入し、現在のようなスタイルを確立した。
Alluvial自体はプログレッシヴ・デスメタルとしてスタートしたが、Wesの経歴と続々と新加入するタレント・ミュージシャンの経歴から考えて、現在のスタイルは彼らにぴったりなものであると言えるだろう。「Bog Dweller」のような現代デスコアのスタンダードとも言えるものから、EPのタイトル曲「Death Is But A Door」のようにプログレッシヴ・デスメタルの名残とも言える楽曲もあり、その魅力は多彩だ (“Death Is But A DoorのMVは必見です) 。Nuclear Blast Records所属ということを考えれば、このままヘヴィなデスコアへと変貌していく姿は想像しにくいが、ピュアなプログレッシヴ・メタルをそのままデスコアに注入したようなサウンドは貴重なので、Alluvialがその先頭に立ってシーンを切り開いていってほしい。
And Hell Followed With 『Untoward Perpetuity』 EP
2022年に12年振りとなるセカンド・アルバム『Quietus』をリリースし、長いブランクから復活を遂げたミシガン州デトロイトのAnd Hell Followed With、本作は4曲入りであるが、ブラッケンド・デスコアの影響を受けつつもクラシックなデスコアの構築美を持つ作品に仕上がっており、全てがリード曲といっていいほどの完成度を誇る。
最も印象的なのは3曲目の「Kaleidoscope of Tenebrosity」だ。ブラッケンド・デスコアへとやや接近しつつも予測不可能な展開を繰り広げていきつつも、雷のようなブレイクダウンを打ち付けていくという、玄人向けの楽曲。ただ、テクニカルなベース、ブラストビート、ヒロイックなギターソロはテクニカル・デスメタル/メロディック・デスメタル・リスナーも楽しめると思う。地味な存在であることは変わりないが、アメリカのアンダーグランド・デスコア・シーンでは誰よりも長いキャリアを持ち、ブランクを感じさせない完成度を誇る本作、チェックしておくべき1枚だ。
Bonecarver 『Unholy Dissolution』 EP
スペイン出身のBonecarverのEPが凄いことになっていた。彼らがUnique Leader Records と契約した時には気づかなかったが、彼らはかなりテクニカルなことをやっている。そして、Brand of Sacrificeのようなブルータル・デスコアに影響を受けつつも、ブラッケンド/メロディックなアプローチにも磨きをかけ、「テクニカル・ブラッケンド/メロディック・デスコア」とも形容したくなる、容赦ないEPを作り上げた。トータルは15分であるが、内容の濃さは1時間のアルバムと変わらないくらいではないだろうか。
収録されている5曲全てにゲストが参加しており、The Last Ten Seconds Of LifeのTyler、VulvodyniaのKris、DistantのAlan、AngelmakerのMike、Signs Of The SwarmのDavidといったデスコア・トップシーンの人気者達がBonecarverサウンドをさらにユニークなものに仕立ててくれる。特にDistantのAlanが参加している「Purgatory’s Embrace」はシンプルな作りながらデスコアの旨みだたっぷりと詰まった楽曲で、ブルータル・デスメタル、テクニカル・デスメタルも好きならたまらない楽曲だろう。さまざまな装飾によってダイナミズムを増すバンドが多いが、Bonecarverのようにシンプルに楽曲の良さで勝負してくるバンドは好感が持てる。ソングライティングも良ければ尚更だ。かなり聴き込む価値のあるEPであると言えるだろう。
Drown in Sulphur 『Dark Secrets Of The Soul』
イタリア・ロンバルディア州を拠点に活動するデスコア・バンド、Drown in Sulphurの2021年にリリースしたデビュー・アルバム『Sulphur Cvlt』以来3年振りのセカンド・アルバム。かなりの頻度でシングル・リリースを続けてきたこともあり、3年という時間が空いたようには感じられないほど、彼らの名前はデスコア・リスナーの間では身近なものではないだろうか。
本作は、彼らはデスコアから脱却を図っているかのようなサウンドで話題になった。もちろん、切れ味鋭いブレイクダウン、ダウンテンポ・デスコアに接近するかのような強烈なブレイクはあるものの、最も注目したいのが、シンフォニック・ブラックなオーケストレーションだ。それは全編に渡って重厚で、『Dark Secrets Of The Soul』のムードを担う重要な要素と言える。Anorexia NervosaやDimmu Borgirのようなブラックメタルからの影響が顕著であることは、デスコアという小さなジャンルだけでなく、さらに多くのファンベースへアプローチ出来る可能性を秘めているということである。アートワーク、タイトル、ヴィジュアル、Drown in Sulphurがデスコア・バンドとしてではなく、シンフォニック・ブラックメタル・バンドとして広く認知される日も近いかもしれない。イタリア出身というのも、今後のブレイクやバンドの方向性の鍵となってくるだろう。
「Lotus」といった6分越えのバラード調の楽曲から、デビュー当時のデスコア・スタイルと今のスタイルを上手くクロスオーバーさせた「Eclipse of the Sun of Eden」など、アルバム通してDwon in Sulphurの過去と未来が感じられる作品に仕上がっていると言えるだろう。ぜひ一度じっくりと聴き込んでみて欲しい作品だ。Lorna ShoreファンからDimmu Borgirファンまで、受け入れられる作品。
Nights Of Malice 『Unholy Genesis』 EP
2009年にニュージャージー州で結成されたNights of MaliceのセカンドEP。2019年にセカンド・アルバム『Sonnets of Ruin』をリリースしてからはグッとブラッケンド・スタイルへと移行し、メンバーラインナップもボーカリストBrendan McGrath、ギタリストXavier Quiles、ベーシストRick Smith、ドラマーJoe Capassoの4人組へとチェンジ。結成から15年、『Sonnets of Ruin』以降はメンバーは全員黒いマントをまとい、雰囲気たっぷりのミュージックビデオでファンを魅了してきた。
『Unholy Genesis』はメロディックデスメタルとしても優れており、ミュージックビデオになっている「Hell Stirs For Me Below」ではツインリードをエンディングに据え、ドラマ性の高い楽曲に仕上げている。先行シングルとして発表された「Hubris and Retribution」もセンチメンタルなメロディを爪弾くアルペジオから幕を開け、荘厳さを纏いながらダイナミックなデスコアをプレイしている。メロディック/ブラッケンド・デスコアでありながら、メロディック・デスメタルでもあり、ブラックメタルでもあるNights of Maliceは、その多様性からか大ブレイクとまでいかない存在であるが、彼らのソングライティングの良さは本物だ。
USダウンテンポ・デスコア・バンド、The Last Ten Seconds of Life が新曲「Annihilation Phenomena」のミュージックビデオを公開しました。
今年、ニューアルバム『The Last Ten Seconds of Life』をUnique Leader Records からリリースしましたが、直後にギタリストWyatt McLaughlin以外のメンバーが脱退。今後の活動に暗雲が立ち込めていましたが、強力なメンバーが加入し再び動き出しました。
アルバムを除けば、2022年上半期のデスコア・シーンは、Lorna Shoreの話題で持ちきりだった。リアクション・ビデオとして恰好の楽曲となった「To The Hellfire」(*2021年リリース)、「Sun//Eater」はデスコア・リスナーだけでなく、オーバーグラウンドのメタル・シーンにも衝撃を与えた。そこからデスコア、ブラッケンド・デスコア・シーンへどのくらい新しいリスナーが流入したかは分かりかねるが、アンダーグラウンド・デスコア・シーンは次のLorna Shoreになるべくブラッケンドなスタイルが本格的にトレンド化していった。半数くらいは正直ブラッケンド・デスコアを上手く表現しきれていないが、デスコアの中のマイクロ・ジャンルとして成立するくらいにはブラッケンド・デスコアを自称するバンドが増えてきたように思う。
このアルバムをオープニングからエンディングまで聴いた時、メンバーが現代メタルコアやデスコア、その他周辺ジャンルのトレンドをしっかりとキャッチしていることがよく分かる。NorthlaneやErraといったプログレッシヴ・メタルコアのリフ・ワーク、Lorna ShoreやShadow of Intentに代表されるシンフォニック/ブラッケンド・デスコアのオーケストレーション、加えて、日本のラウド・シーンで育まれてきたメインストリーム・ラウドの様式美、ニューメタルコアの尖ったサウンド・プロダクション。細部に至るまでこだわりを貫いたアレンジが組み込まれており、何度聴くたびに発見があり、時代の感覚をしっかりとキャッチしていることが感じられる。
シンフォニック・デスコアと言えばShadow of Intentという人も多いだろう。結成以来レーベルに所属せず、D.I.Yのスタイルを取るバンドとして他のデスコア・バンドへ与えた影響は大きい。そんな彼らの鳴らすサウンドにデスコアのトレンドが追いつき始めた2022年、この『Elegy』がもたらした衝撃は凄まじいものがあった。デスコアにシンフォニックなエレメンツを加えたというよりは、シンフォニック・メタルとデスコアのクロスオーバーと表現するのが言い得て妙だろう。そのバランス感覚は頭ひとつ抜きん出た才能によって作られるものであり、決して簡単にフォロワーを生み出せるようなスタイルではない。アルバム収録曲で先行シングル/ミュージックビデオとして発表された「Intensified Genocide」に彼らの魅力がたっぷりと詰まっている。
アメリカン・アンダーグラウンド・デスコアの王者とでも言うべきBodysnatcher。ダウンテンポ・デスコアのポテンシャルを最大限に発揮したタフなサウンドは、これまでに幾多のフロアで殺人級のモッシュを巻き起こし、その殺傷能力に磨きをかけてきた。Lorna Shoreを筆頭に、シンフォニック/ブラッケンド・デスコア・ムーヴメントが巻き起こる今、全くメタルの影響を受けず、ハードコア・ルーツのモッシュパートを武器とするサウンド・デザインに振り切っているのが清々しい。「Absolved of the Strings and Stone」や「Flatline」といった楽曲はそんな彼らの持ち味が発揮されたキラーチューン。
数々のデスコア歴史的名盤を手掛けてきたWill Putney率いるFit For An Autopsy。オーバーグラウンドのメタルシーンのメタル勢に引けを取らないサウンド・プロダクションで他のデスコア勢を圧倒する本作は、ミドルテンポ主体かつオルタナティヴ・メタルのエッセンスを取り入れた挑戦的な仕上がりとなっている。先行シングル/ミュージックビデオとして公開された「Far From Heaven」では、雄大なコーラスワークを携えたクリーンパートとミドルテンポからでしか作り出せないダイナミックなブレイクダウン/ビートダウン・パートが印象的。
Bodysnatcher同様、長きにわたりアメリカン・アンダーグラウンド・デスコアの番長的存在感を見せてきたThe Last Ten Seconds of Life。アルバムリリース後にWyatt McLaughlin以外のメンバーが脱退するという事件が起きてしまったものの、バンドの歴史を振り返った時、この作品は歴代トップに匹敵する作品だと感じる。
The Last Ten Seconds of Life : ペンシルバニア州マンスフィールドのデスコアバンド、The Last Ten Seconds of Lifeがニューアルバム『The Last Ten Seconds of Life』をUnique Leader Recordsからリリースしました。
いくつもピックアップしたいタイトルはありますが、「Glory be 2 Misery」は、The Last Ten Seconds of Lifeにしか作れないアメリカン・アンダーグラウンド・メタルコア/デスコアのプライド溢れる仕上がり。非常に面白いですし、普通にメタルとして新しい面白さがあります。いくつもピースをランダムに組み合わせながら一曲になっているというか、とにかく新鮮。
「Zapffe Isn’t Invited to the Party」はシンプルにダウンテンポな切れ味鋭い一曲、チューニングもボーカルもローすぎてアガります。