『デスメタルチャイナ』を読んでみた。

いつもお世話になっている出版社パブリブのハマザキさんから最新書籍『デスメタルチャイナ』を献本して頂きました。マニアックな内容にも関わらず多くのメタラー、そして中国カルチャー好きを筆頭に告知段階から猛烈な注目を集めていたこの本は、田辺寛さん (@nihaorocks – https://twitter.com/nihaorocks) が執筆しています。正直、圧倒的な情報量に目がくらみましたが、未知の中国メタルは想像以上にハイクオリティで、音源をチェックしながら読み進めると、たくさんの発見がありました。

 

私が執筆した『ブルータルデスメタルガイドブック』や『デスコアガイドブック』を持っている方にもこの本は十分オススメできる内容になっています。ジャンルレスに様々なタイプのメタルバンドの情報、主にディスクレビューを中心に執筆されているので、お気に入りのジャンルから食いつまんで読む事も可能。中国の地理に疎くても、ひとつひとつ丁寧に解説しながら説明してくれるので、地理の勉強にもなりますね。

 

 

メタル書籍を執筆していた時、中国のメタル情報というのはFacebookやTwitterからは手に入れづらかった覚えがあります。これほどまでの情報を手に入れるには中国独自のソーシャルネットワークに登録する必要がありますし、上記のように現地のCDショップなどに足を運ぶなどする事が必要みたいですね。田辺さんの旅行日記的な記事は読みやすく、中国に親しみを持ちながら楽しく読む事が出来ました。中国のSNS解説ページなんかもあり、そこから音源の聴き方も知る事が出来ますよ!

 

 

個人的にブルデス、メタルコア、デスコア、テクデスに注目しながら読み進めていくと、一度は目にしたことのあるベテランから、まったく知らなかったバンドまで様々取り上げられており、Suffocatedに関する濃密な記事は新鮮な驚きを感じながら、食い入るように読みました。デスメタル以外でも古典楽器を用いたメタルの情報も興味深く、特にDream Spiritは新しいお気に入りになりました。

 

 

私が執筆した『デスコアガイドブック』にも掲載しているFour FiveやHour of Pestilenceについてもしっかりと書かれていて、細かい情報を手に入れる事が出来ます。アメリカ/ヨーロッパ中心であることが当たり前なメタルというジャンルも、歴史を重ねるにつれて今では世界中様々なところで盛り上がっています。特に独自の発展を遂げている中国が今積み重ねている、どこにもない唯一無二の歴史がこれからどのように発展し、国際的に支持を得ていくかとても気になります。これはまだメタルが始まっていない国にも言える事だと思いますし、いちメタルファンとして未知のメタルを聴く事はいつだってワクワクしますよね。『デスメタルチャイナ』を読んで、まったく新しいメタルの歴史を堪能しましょう! 学生は朝読書にも最適!

 

2020年上半期のスラミング・ブルータル・デスメタル 名盤アルバム TOP5

 

 

Visions of Disfigurement – Aeons of Misery

 

2013年イギリス/マンチェスター出身の4人組。4年振りのリリースとなる本作はRealityfade Recordsからのリリースとなった。デスコアリスナーにも受けるだろう切れ味鋭いソリッドリフ満載のキャッチースラム。AnalepsyやKraaniumは好きなら是非チェックしてほしい大推薦盤。

 

https://www.facebook.com/visionsofdisfigurement/

 

 

Indricothere – Tedium Torpor Stasis

 

Behold the ArctopusやGorgutsを始め、数多くのプロジェクトでメタルシーンを牽引してきたColin Marstonによるソロプロジェクト。近年ではブルータルデスメタルのプロジェクトにも数多く参加しており、サウジアラビアのグラインドコアバンド、Creative Wasteのメンバーらと行っているSijjeelではハイクオリティなグラインディングブルータルデスで話題となった。Indricothereでは、Funeral DoomとSlamを組み合わせたFuneral Slamとも形容できる新しいサウンドを追求。そのサウンドは実験的ではあるものの、作品を聴けばこのジャンルのクロスオーバーに大きな可能性を感じるはずだ。

 

https://www.metal-archives.com/bands/Indricothere/109135

 

 

Esophagus – Defeated By Their Inferiority

 

チリを拠点に2008年から活動する彼らのデビューアルバム。これまではEP、デモ、スプリット作品のみのリリースで影の薄い存在だったが、本作ではハイクオリティなスラムサウンドを聴かせてくれる。Visions of Disfigurementらが所属するRealityfade Records所属らしさはありながらも南米らしい血生臭さもスラムリフをさらにブルータルなものにしてくれる。

 

https://www.facebook.com/esophagusslam/

 

 

Antipathic – Covered With Rust

 

昨年フルアルバム『Humanimals』をリリース。この作品はスラムシーンで大きな話題となったのは記憶に新しいだろう。本作はEPでありながら、ハイクオリティなスラムをプレイ。ベース/ボーカルTatoのラッピンガテラルは巧みにテンポチェンジするスラムサウンドの上をグルーヴィーに転がりまわり、ドラマティックな楽曲構成が終盤のスラムパートの破壊力を何倍にもパワーアップさせる。

 

https://www.facebook.com/antipathicband/

 

 

Bleeding Spawn – Pariah Attestant

 

南アフリカを拠点とするスラミングブルータルデス。2016年にリリースしたデビューアルバム『Pathogenic Mechanized Abomination』以来4年振りの本作はEPでありながらも聴きごたえ十分であるし、セカンドアルバムへの期待が高まる。土地柄、どんなバンドに影響を受けているのかなどわかりにくい部分も多いが、そんなミステリアスさが、まだ聴いたことのないスラムを聴かせてくれるのではないかという期待が膨らませてくれる。

 

https://www.facebook.com/bleedingspawnmp/