スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP15 (2022年下半期)

毎年12月はニュースの更新をストップして、その年にリリースされたアルバムをジャンルごとに改めて向き合い、年間ベスト・アルバムとしてピックアップしアルバムレビューをしています。毎年時間オーバーになってしまいレビューの執筆を諦めてしまうアルバムが数枚あったりしたので、デイリーチェックしているジャンルに関しては上半期と下半期に分けて執筆することにしました。

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP5 (2022年上半期)

 

ジャンルに関しては、スラム・リフが主要になっている楽曲構成であれば「スラミング・ブルータル・デスメタル」にカテゴライズしていますが、中にはデスコアであったりスラミング・ビートダウンと呼ばれるビートダウン・ハードコアの一派としてカテゴライズされることが多いジャンルも含めてまとめています。ですので「これはブルデスじゃないだろ!」ってバンドも入ってたりしますがそこはご了承下さい。

 

シングルリリースのみなどで良かったバンドはYouTubeプレイリストにまとめています。下記をチェック!

 

 

 

Agonal Breathing – Bloodthirsty Mutilation

ベネズエラを拠点とし、Interdimensional Hypernovaなどで活動する若きマルチ・ミュージシャンLuis Floresとアメリカ在住でExtended PutrefactionIncestuous Impregnationでボーカルを務めるBrandon Smithによるプロジェクト。二人は別にSchizophrenic Tortureというユニットも行っているがそちらは休止状態。セカンド・アルバムとなる本作は、過剰なダウンチューンを施しノイズの塊となったリフが地底の最深部に響くような金属スネアのエコーと混ざり合う限界スラムに仕上がっている。それでいて、何重にもスラミング・パートを折り重ねていく徹底振り。

 

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Kanine – Karnage

2020年フランス・ストラスブールで結成。ボーカリストJason Gerhard、ギタリストAlecandre Lorentz、ベーシストLucas Eckert、ドラマーGabriel Labeauvieの4人体制で活動をスタート。デスコア・バンドを自称する彼らであるが、そのサウンドは「スラミング・ブルータル・デスコア」と形容するのが正しいだろう。アートワークを彷彿とさせるハイ&ロー、そしてさらにディープなガテラル・ヴォイスがケルベロスのようにして交互に咆哮、その展開はNo Face No Caseにも似たスタイルと言える。

 

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Frog Mallet – Frog Mallet EP

カエルをテーマにしたデスメタルを鳴らすFrog Mallet、昨年リリースしたデビュー作『Dissection by Amphibian』から短いスパンで発表されたセルフタイトルEP。本作からボーカリストCaden Frankovich、ギター/ボーカルSean McCormack、ベーシストAnton Picchioni、ドラマーCody Cahillというラインナップとなっており、それぞれに本業のバンドを持っている。ウシガエルがハンマーを持ったロゴが強烈で、バンド名だけ聴くとチープな打ち込みスラムゴアのように感じるが、そのサウンドはSanguisugaboggにも似たオールドスクール・デスメタルを下地としたもので、殺傷能力の高いリフを無慈悲に刻み込んでいく正統派スタイル。

 

 

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Perversity Denied – The Arrival Of The Majestic End

2007年コロンビアの首都ボゴタで結成。Sistematic CoprophagiaのAlexander Clamotが中心のバンドで、本作はボーカルにCristianとGorepotのLarry Wang、ギタリストのWilsonとJohan、Virus InjectionのベースStevenが参加し国際的なラインナップとなっている。どっしりと血の気の多いリフがスペクタルに炸裂、リードシングル「Scavangers of the Cosmos」はチープさが言いようのない不気味さを醸し出している。

 

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Human Barbecue – Red Sun Rising

2015年ベルギーのリエージュで結成。Putrified JImpure Violationで知られるJason Lambertのソロプロジェクトとして2015年に始動。2018年からFermented MasturbationHuman Vivisectionで知られるRoy Feyenが加入しユニット体制となった。互いにドラムプログラミングやボーカルを担当、Jasonがギター、Royがベースを弾くスタイルで制作された本作は、 非人力のドラミングのかっちりとしたキャッチーなビートに突き刺さる鋭利なスラムリフはビートダウンしながらデスコアをヒントに加速していく。

 

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Parasitic Infestation – Intergalactic Harvest

2018年ニュージーランド・オークランドで結成。ボーカリストLiam Handが在籍している二つのバンドのメンバーがそれぞれ集まり、Silent TortureからギタリストのAidenとGrady、ObsidiousからドラマーBlake、ベーシストJacobが参加。シングル・リリースを経て発表されたデビュー作は、ミディアムテンポを基調とした粘着質なスラムリフが急減速していくビートに粘液を滴らせながら刻み込まれていく。Knocked Loose的なアプローチも交えつつ、無慈悲なParasitic Infestationワールドを展開。

 

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Goat Ripper – Goat Ripper

2018年にアゼルバイジャンの首都バクーで結成。地元のスラッジ/ストーナー・メタル・バンドPyraweedのメンバーであるベーシストZakir GasimovとドラマーでSerumhatredなどに在籍したNijat Hesenzadeが中心となり、ギター/ボーカルのKhagan Mammadovを加えたトリオ編成で本作を完成させた。製鉄工場のエコーのかかった金属音を想起させるスネアがじわじわとグルーヴをうねり出しながら、メロディアスなリフを地獄の淵へと誘っていく。装飾をそぎ落とし、可能な限りトリオ編成の旨味を引き出すことに注力したことが言いようのないGoat Ripperらしさを醸し出している。

 

アゼルバイジャンの位置。首都バクーは城塞都市として有名

 

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Gates To Hell – Gates To Hell

2019年アメリカ・ルイビルで結成。ニューヨークのアンダーグラウンド・ハードコア、そしてデスメタル・シーンで実直なライブ活動をこなしながらEPのリリースを立て続けに行い、Barbaric Brutalityからコンピレーション作『Dismembered On Display』を発表。映像メディアhate5sixによってライブ映像が撮影、公開されたこともありヘヴィなハードコア/デスコア・リスナーを中心に人気を博した。モッシュを誘う暴力的な展開、ミュージックビデオにもなっている「Blood Lust」は隠し味として組み込まれたスラミング・スピリットがフロアを血の海にしてしまう。

 

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Grieve – Pit Of Despair

Biohazardous Human MetamorphosisやPutrified Dab Rig等、新世代インターネット・スラムを現実空間でプレイするJacob Bargasのプロジェクトとして始動。2021年にCondemnedのボーカルで元PathologyのClayton Meadeが加わり、ユニット体制で動き出した。果てのない暗闇に無限に広がっていくかのようなサウンド・デザインで鳴らされるGrieveの音はJon Zigの描いたブルータルなアートワークの非現実感を巧みに表現している。一切のメロディを排除した残忍極まりないスラム快作。

 

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Guttural Engorgement – 33 In The Crawl Space

前作『The Slow Decay of Infested Flesh』は世界中のブルータル・デスメタル・リスナーから高い評価を得たものの、同年活動休止。2度のストップを経て15年振りに動き出した彼らのセカンド・アルバムはBrutal Mindからリリースとなった。オリジナル・メンバーのボーカル/ギターMark Rawlsと、本作から加入したIntracranial PutrefactionのドラマーJosé Osuna、Human DecompositionのDaniel Españaがギターとベースを兼任している。クラシックなスラム・グルーヴがじわりじわりと砂塵を巻き起こすかのように繰り広げられ、2000年代初頭にタイムスリップしたかのよう。そして何と言ってもMarkのエグすぎるガテラルのインパクトは絶大。現代スラムのヘヴィネスとは別に評価すべき作品。

 

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Iniquitous Monolith – Sledgehammered

2015年パースで結成。活動休止中のEntrails Eradicatedのメンバーとして知られるボーカリストTarren Whitfield、ギタリストLynton Cessford、そしてNails of ImpositionのドラマーBrendan Nock、DeathFuckingCuntのベーシストBrad Trevaskisが加わり活動をスタート。自身のサウンドを「Guttural Horror Slam」と自称、ホラー映画のサンプリングをふんだんに盛り込み、各パートの技量の高さが各所に垣間見える。最も威力を発揮するスラミング・リフもソリッドで切れ味抜群。

 

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Invirulant – Indomitable Worldwide Slamdemic

2022年にNecrambulantから改名する形でスタート。EnfuckmentのBrandon ShobeとMark Little、Vile Impregnationに在籍した経歴を持ち、ギタリストのDerek Ryanと共にJotunsblodで活動していたTriston Cheshireの4人体制で本作をレコーディング。ピッキングハーモニクスを有効に組み込みながら流れるようにスラムリフを刻み込んでいく。2020年代の典例とも言うべきヘヴィとフックにフォーカスしたスラミング・サウンドはもはやダンス・ミュージックだ。

 

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