For Todayはなぜ特別だったのか? MySpace時代からメインストリームへ駆け上がったクリスチャン・メタルコアの軌跡

2000年代後半から2010年代前半にかけて、メタルコアが急速に拡大していった時代。その中でもFor Todayは、極めて明確な個性を持ったバンドだった。激しいブレイクダウン、メロディックなギター、感情的なパート、強烈なボーカル。そして何より、彼らは自らのキリスト教信仰を隠すことなく、音楽とライブの中心に据えていた。

YouTubeに公開された「How FOR TODAY changed metalcore forever (Myspace to Mainstream)」では、For TodayがどのようにMySpace時代から人気を拡大し、メタルコア・シーンを代表する存在の一つへ成長していったのか、その歴史を振り返っている。

キリスト教を前面に掲げたメタルバンドという存在に抵抗を感じるリスナーも少なくなかった。しかし、動画ではFor Todayについて、メッセージへの賛否を超えて「音楽そのものが素晴らしかった」ことこそが成功を支えた大きな理由だったと捉えている。

 

2005年に始まったFor Todayと転機となったMattie Montgomery加入

Mattie Montgomery

For Todayの始まりは2005年まで遡る。後に広く知られることになる姿とはまだ異なっていたものの、初期EP『Your Moment, Your Life, Your Time』を発表し、この作品をきっかけにFacedown Recordsとの契約へとつながった。当時のクリスチャン・メタルコアで広がっていたパニックコード、メロディックなリフ、荒々しいプロダクションなどを備えた作品であり、動画では当時のシーンを象徴するようなサウンドだったと振り返っている。

その後、バンドにとって大きな転機となったのがMattie Montgomeryの加入だった。以前Besiegedで活動していたMontgomeryは、強烈なボーカルとステージ上での存在感を持ち、For Todayの方向性を決定付ける重要人物となる。

For Todayにとってキリスト教は、当時人気を集めていた「クリスチャン・メタル」という流れに便乗するためのイメージではなかった。少なくとも動画では、メンバーたちは本心から信仰を持っており、それを音楽を通じて伝えようとしていたバンドだったと説明されている。

ライブで信仰について長く語るスタイルは、すべての観客に歓迎されたわけではない。しかし一方で、クリスチャンのメタルファンにとって、激しいライブやモッシュと、自分たちの信仰についてのメッセージが同じ場所に存在することは特別な体験でもあった。そして、その強いメッセージを成立させていたのが音楽そのものの説得力だった。

 

『Ekklesia』から『Portraits』へ、MySpace時代に爆発した人気

For Todayの初期を象徴する作品の一つとして動画で取り上げられるのが『Ekklesia』だ。強烈なブレイクダウン、メロディックなリフ、ブルータルなボーカル、そして感情的なパートを組み合わせたサウンドは、当時のメタルコアの空気と強く結び付いていた。動画では、彼らのブレイクダウンだけを集めたコンピレーション動画がYouTube上で作られるほど、その強烈さがファンに支持されていたことにも触れている。

しかし、For Todayがさらに大きな存在となったのは、その後の『Portraits』だった。動画によれば、この頃にはMySpace上で人気が大きく広がり、バンドの知名度は急上昇していた。『Portraits』はチャートでも結果を残し、Top Heatseekersで14位、Top Independent Albumsで40位を記録したと紹介されている。

興味深いのは、信仰が常に歌詞やライブの中心にありながら、For Todayがクリスチャンだけに支持されるバンドにはならなかったことだ。非クリスチャンのバンドとも数多く共演しており、宗教的なメッセージがこれほど強ければ、より広いメタルコア・シーンから拒絶される可能性もあった。

それでも支持された理由について、動画では独特なメロディ、楽曲に込められた感情、演奏のテクニカルさ、ボーカル、そしてブレイクダウンを挙げている。メッセージへの賛否とは別に、それを伝える音楽の強度が十分に高かったということだ。

For Todayは、信仰を穏やかに語るのではなく、メタルコアの攻撃性そのものを使って表現した。その結果、キリスト教的なテーマとヘヴィな音楽が対立するのではなく、「信仰のために戦う」というバンド独自のイメージとして結び付いていった。

 

Will Putneyと作り上げた『Breaker』、より重く攻撃的なサウンドへ

3枚目のスタジオアルバム『Breaker』では、For Todayのサウンドにさらなる変化が起きる。制作にWill Putneyが加わったことで、動画ではバンドが以前よりもさらにヘヴィで攻撃的なサウンドへ進化したと評価している。

重要なのは、単純に音圧が増しただけではなかったことだ。従来のFor Todayが持っていたメロディ、ブレイクダウン、力強いボーカルといった特徴を残しながら、それらをより強力なプロダクションで表現することに成功した。ギャング・チャントもサウンドに加わり、ライブで観客と一体になるFor Todayのスタイルとも強く結び付いていった。この頃には、バンド自身も「For Todayとは何なのか」を明確に理解していたと動画では分析している。彼らの目的は、単にクリスチャン・バンドとして活動することではなく、自らの信仰を積極的に伝えることだった。

ライブでMattie Montgomeryが語る言葉もその姿勢を象徴していた。パンク、ハードコア、ゴスなど、それまで伝統的な宗教から距離を感じていたような若者たちに対しても、自分たちの信仰を誇り、恐れずに生きることを訴えていた。

音楽とメッセージが完全に一体化したことが、For Todayを他のメタルコア・バンドとは異なる存在にしていった。

 

『Immortal』でキャリア最大級の成功へ

For Todayのキャリアにおいて大きな成功を収めた作品として、動画で重要視されているのが『Immortal』だ。

同作はBillboard 200で15位を記録し、初週で約15,000枚を売り上げ、Hard Rock AlbumsとTop Christian Albumsでは1位を記録したと紹介されている。動画では、これまでのFor Todayが築いてきた音楽性に、より現代的で聴きやすいアプローチを加えたことが成功につながったと分析している。

ヘヴィさを失わず、よりキャッチーで記憶に残る楽曲へ進化しながらも、バンドのメッセージ自体は変わらなかった。むしろ、より大きな聴衆へ届くようになったことで、そのメッセージの影響力も強くなっていった。

動画の制作者であるYan自身、初期作品への強い思い入れを語りながらも、『Immortal』の時期こそFor Todayがバンドとして最も完成された状態だった可能性があると評価している。一方、成功の裏側では大きな問題も発生した。

 

ギタリストの発言をめぐる批判とバンドの対応

『Immortal』期には、ギタリストMike ReynoldsによるTwitter上での同性愛者に関する発言が大きな批判を呼んだ。動画では、彼の発言が多くの人を傷つけ、オンライン上で大きな問題へ発展した経緯についても触れている (https://loudwire.com/for-today-guitarist-mike-reynolds-leaves-band-firestorm-anti-gay-comments/)。

この部分について動画の制作者Yanは、宗教的な立場そのものを論じることよりも、自分の信念を理由に他人の存在そのものを傷つけるようになれば、反発が起きるのは当然ではないかという見方を示している。

同時に、問題発生後にFor Today側が取った対応についても紹介している。バンドはオンライン上で謝罪し、ファンに対してその人自身を愛しているというメッセージを発信した。Mattie Montgomeryも当時この問題について動画を公開し、話をしたい人のために自身の電話番号まで公開したという。

その後、Reynoldsはバンドを離れ、新たなメンバーが加入。Sam PennerとDavid Puckettを迎えた新体制へ移行し、レーベルもRazor & Tie Recordsへと移った。2013年には新曲や「Fearless」のアコースティック版などを収めたEP『Prevailer』を発表し、大きな騒動を経験しながらもバンドは活動の勢いを維持していった。

 

「Break the Cycle」と『Fight the Silence』で再び頂点へ

その後のFor Todayを代表する楽曲となったのが「Break the Cycle」だった。動画では現在まで続く彼ら最大級の楽曲として取り上げられ、印象的なビデオ、コールアウト、ブレイクダウン、ゲストボーカルなど、For Todayの魅力が凝縮された曲として評価されている。

同曲を収録した『Fight the Silence』も、バンドのソングライティングがさらに進化した作品として紹介されている。チャートやセールスでも結果を残し、レビューでも高い評価を受けたと動画では振り返る。Yan自身が2014年にFor Todayのライブを観た経験も語っており、当時は「世界の頂点にいるように感じた」と表現するほど、バンドに大きな勢いがあったという。

初期のMySpace世代からスタートしたFor Todayは、この時点で一部のクリスチャン・メタルコア・ファンだけが知る存在ではなく、2010年代のメタルコアを代表するバンドの一つへと成長していた。しかし、大きな成功を手にしたバンドほど、その勢いを維持することは難しい。

 

『Wake』と突然発表された解散

『Fight the Silence』に続いて発表された『Wake』について、Yanは決して悪いアルバムではないと評価している。一方で、『Immortal』や『Fight the Silence』ほど強いインパクトを持った作品ではなく、多くのファンも以前と同じようには反応しなかったと振り返っている。動画では、過去2作で確立されたサウンドと比べると少し抑えられた印象があり、「For Todayが『Immortal』や『Fight the Silence』の音楽性を見つける前に作っていそうなアルバム」という個人的な感想も語られている。

それでもバンドはライブ活動を続けており、すぐに終わりが訪れるようには見えなかった。しかし2016年、For Todayは突然解散を発表する。動画によれば、バンドはメンバー間のトラブルによる解散ではないと説明しており、それぞれが人生の次の段階へ進み、家族や別のプロジェクトへ集中するための決断だった。

For Todayがいなくなったことについて、Yanは今でも「ほろ苦い」と表現している。それほどまでに当時のメタルコア・シーンで強烈な存在感を持ったバンドだったということだ。

 

For Todayはなぜ特別だったのか

For Todayの歴史を振り返ると、その成功を単純に「クリスチャン・メタルコアが人気だった時代のバンド」と説明することは難しい。むしろ動画で繰り返し語られているのは、流行だけで人気になったバンドではなかったという点だ。

ブレイクダウン、独特なメロディ、ブルータルなボーカル、感情的なパート、ギャング・チャント、そして時代とともに進化したプロダクション。それらを高いレベルで組み合わせた音楽があり、その上に一貫した信仰のメッセージが存在した。

そのメッセージは時に強烈で、ライブでの説教を嫌う人もいた。バンドを取り巻く発言が大きな批判を生んだこともあった。それでも、宗教的な部分に共感しないリスナーまで彼らの音楽を聴いていたという事実は、For Todayの楽曲そのものが持っていた力を示している。

MySpaceを中心にバンドが発見されていた時代から、Billboard 200上位へ作品を送り込むところまで成長したFor Today。その軌跡は、2000年代後半から2010年代にかけてメタルコアそのものが急速に大きくなっていった時代とも重なっている。

そして解散から年月が経った現在でも彼らについて振り返る動画が作られ、当時を知るファンが思い出を語り続けていること自体が、For Todayがあの時代のメタルコアに残した存在感の大きさを表しているのかもしれない。

 

参照元動画

「How FOR TODAY changed metalcore forever (Myspace to Mainstream)」
https://www.youtube.com/watch?v=8cZtQ3jJVh4

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