Turnstileのルーツを作った音楽とは? Thin Lizzy、My Chemical Romance、Frank Ocean、Minor Threatらをメンバーが選び語る

ハードコアを出発点としながら、ロック、オルタナティヴ、ポップ、ソウル、ダンスミュージックなど幅広い要素を取り込み、独自の存在へ成長してきたTurnstile。その音楽的な幅広さがどこから生まれているのかを知るうえで、メンバー自身が愛するレコードを見ていくのは興味深い。

ARTE.tv Cultureの「Turnstile Record Box」では、ベルリンを訪れたTurnstileのメンバーがレコードを選び、それぞれの作品やアーティストにまつわる思い出を語っている。

登場するのはThin Lizzy、My Chemical Romance、Frank Ocean、Minor Threat、Angel Du$t、Blood Orangeなど。ハードコアだけに限定されない選曲からは、現在のTurnstileが非常に多様な音楽の上に成り立っていることが見えてくる。

 

Thin Lizzyへの深い愛情

最初に選ばれたのはThin Lizzyの作品だった。メンバーの一人は「史上最も好きなレコードの一つ」であり、Thin Lizzyの作品の中でも特にお気に入りだと語っている。インタビュー収録の少し前にはTurnstileのツアーがダブリンから始まっており、現地ではPhil Lynottの像も訪れたという。

さらに、以前在籍していたChubby and the GangでもThin Lizzyはメンバー共通のお気に入りだったと振り返る。友人から腕にThin Lizzyをモチーフにした小さなタトゥーを入れてもらったこともあり、単に好きなクラシック・ロック・バンドという以上の思い入れがあるようだ。

選ばれた楽曲は「Waiting for an Alibi」。Turnstileのサウンドとは直接結び付きにくいように見えるThin Lizzyだが、強力なギターメロディとロックバンドとしての存在感は、メンバーにとって重要な音楽的ルーツの一つになっている。

 

My Chemical Romanceを後から理解するようになった

続いて取り上げられたのがMy Chemical Romance。

メンバーの一人は、若い頃には最初からMy Chemical Romanceを好きだったわけではなく、むしろ少し否定的に見ていた時期があったと振り返っている。しかし後になって音楽を理解するようになり、メロディやギターパート、そして「バンドとして鳴っている」感覚に強く惹かれるようになったという。

その音楽には個人的な記憶も結び付いている。

Pizza Hutで働いていた頃、厨房を掃除しながらこの作品を聴いていたことを思い出すと話し、今では非常に大切なレコードとして評価している。映像で選ばれた曲は「Cemetery Drive」。

音楽を聴いた瞬間の評価が、そのまま一生変わらないとは限らない。若い頃には理解できなかった作品が、時間や経験を重ねることで突然重要なものになる。TurnstileのメンバーにとってMy Chemical Romanceは、そのような音楽の一つだったようだ。

 

Frank Ocean『Blonde』は日常生活に溶け込むレコード

Turnstileの幅広い音楽性を象徴する選盤の一つがFrank Oceanの『Blonde』だ。この作品について、メンバーは晴れた日の午後、家事をしながら聴くのが好きだと説明している。

激しいライブやハードコア・シーンとの思い出ではなく、日常生活の中で自然に流れている音楽として選ばれている点も興味深い。

Turnstileはハードコアをバックグラウンドに持ちながら、作品を重ねるにつれてメロディ、空間的なサウンド、ポップ的な感覚などを大きく広げてきた。今回のレコード選びからも、メンバーが日常的に聴いている音楽がハードコアだけに限定されていないことが分かる。

Frank Oceanのようなアーティストも、Turnstileのメンバーにとって特別な音楽の一部として存在している。

 

Minor Threatが教えた「仲間に反抗する」という考え方

Turnstileのルーツを考えるうえで、やはりハードコアは欠かせない。そこで登場するのがMinor Threatだ。

Turnstileはメリーランド/ワシントンD.C.周辺のシーンと強く結び付いており、Minor Threatについてメンバーは当然ながら非常に影響力の大きいバンドだと語っている。しかし、ここで注目されているのは単純な音楽性ではない。

Minor Threatについて最も好きな部分として語られたのが、「社会や権力に反抗するだけではなく、自分の周囲にいる仲間にも逆らう」という考え方だった。

政府や社会制度など巨大な存在に対して反抗的な姿勢を示すことは、パンクでは珍しいことではない。しかし、自分と同じシーンにいる仲間が全員同じ方向へ進んでいるときに、自分だけ違うことをするのははるかに難しい。

周囲に合わせるのではなく、自分が本当にやりたいことを選ぶ。

動画では、それこそがMinor Threatによってハードコアやパンクの精神性に持ち込まれた重要な要素だったのではないかと語られている。この考え方は、Turnstile自身の歩みにも重ねることができる。

ハードコア・バンドだから特定の音を出さなければならないという考えに従うのではなく、自分たちが面白いと思った音楽へ進む。その結果としてTurnstileは従来のハードコアの枠を大きく越えていった。

Minor Threatから受け継いだものは、単なる速いギターやハードコアの形式ではなく、「周囲に合わせない」という精神そのものなのかもしれない。

 

Angel Du$tとJustice Trippから受けた大きな影響

より直接的にTurnstileの歴史とつながっている存在として紹介されるのがAngel Du$tだ。特にJustice Trippについて、メンバーはTurnstileに最も大きな影響を与えた人物の一人ではないかと語っている。

まだ若く、ライブへ通い始めた頃からJusticeは年上の存在として彼らを気に掛け、ライブへ連れていったり、当時組んでいた地元のバンドを応援したりしていたという。

その後、Turnstileの複数のメンバーがAngel Du$tにも参加しており、両バンドの関係は単に同じシーンから生まれたという以上に深い。

Justiceについて、音楽の世界には時折「ユニコーン」のような特別な人物がいると表現し、彼が常に他の人より10歩ほど先を進んでいるように感じるとも語っている。同時に、Baltimoreを代表する存在であり、大切な友人でもある。

今回選ばれたAngel Du$tの作品については、Turnstileのメンバーが参加していない作品であるため、純粋にファンとして外側から楽しめることも嬉しいと話している。選曲は「Space Jam」。何年もさまざまな形で聴き続けている曲であり、本人にとって生命力のようなものになっているという。

Turnstileの歴史を考えるとき、影響は有名な過去のバンドだけから受けるものではない。自分たちと同じ地域にいて、実際にライブへ連れていってくれた人物や、活動を支えてくれた仲間もまた、そのバンドを形成する大きな存在になる。

 

Blood Orangeは「音楽を作る人として深く尊敬している」

最後に強い愛情が語られるのがBlood OrangeのDev Hynesだ。

メンバーは以前からBlood Orangeの音楽を知っていたものの、ある時期から本格的に夢中になったという。現在ではDev Hynesについて「音楽を作る人として最も好きな人物の一人」と表現している。

さらに、単に憧れているアーティストというだけではなく、現在は素晴らしい友人でもあると語っている。

ここでもAngel Du$tのJusticeと同じように、「ユニコーン」という表現が使われている。音楽の進化を追うこと自体が刺激になり、常にその作品へ惹き付けられる特別な人物だという。

動画収録時には新作『Essex Honey』についても触れ、現在最も好きなアルバムだと話している。一方で、その日の気分によってお気に入りの作品が変わること自体も、音楽ファンとして楽しいと語っている。

今回選ばれた曲は「Augustine」だった。

ハードコア、クラシック・ロック、エモ、R&B、オルタナティヴ・ポップなど、まったく異なる場所から生まれた音楽を同じように愛している。その姿勢は、Turnstileが特定ジャンルのルールに閉じ込められない理由とも重なって見える。

 

Turnstileの音楽がジャンルを越えていく理由

今回の「Record Box」で選ばれた音楽を見ると、Turnstileがなぜ現在のようなサウンドになったのか、その一端が見えてくる。

Thin Lizzyから受け取ったロックバンドとしてのメロディや存在感。

My Chemical Romanceの強烈なメロディとギターパート。

Frank Oceanの『Blonde』のように日常へ自然に入り込む音楽。

Minor Threatが示した、社会だけでなく同じ仲間に対しても自分自身の考えを貫くというパンクの精神。

Angel Du$tとJustice Trippを通じて経験したBaltimore周辺のコミュニティ。

そしてBlood Orangeの絶えず変化する音楽への憧れ。

これらは一見するとバラバラだ。

しかしTurnstileの音楽自体もまた、さまざまな要素が一つに結び付いている。

重要なのは、どのジャンルに所属するかではなく、自分たちが強く惹かれる音楽を受け入れることなのだろう。

その意味で特に象徴的なのが、Minor Threatについて語られた「仲間に逆らうことの方が難しい」という考え方だ。

ハードコアの中で育ったからこそ、ハードコアの中で期待される音楽を作り続けるという選択肢もあった。しかしTurnstileは、周囲から何と呼ばれるかより、自分たちが面白いと思うものを音楽へ取り込み続けてきた。

今回選ばれたレコードは、その自由な感覚が突然生まれたものではなく、メンバーが長い時間をかけて聴いてきた多様な音楽や、身近なコミュニティの中から育ってきたことを感じさせる。

Turnstileのサウンドを作っているのは、ハードコアだけではない。

むしろ、ハードコアを中心に置きながら、そこへまったく異なる音楽を自然に受け入れる姿勢そのものが、Turnstileというバンドの大きな特徴なのかもしれない。

参照元動画

ARTE.tv Culture「Turnstile Record Box」

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