2000年代半ば、MySpaceを中心に爆発的に広がったシーンカルチャー。
タイトなジーンズ、派手な髪型、メタルとハードコア、ポップカルチャーが奇妙な形で混ざり合い、Bring Me The Horizon、Suicide Silenceをはじめとする新世代のバンドがインターネットから急速に人気を獲得していった。
現在では世界最大級のロック/メタル・バンドとなったBring Me The Horizonだが、Oli SykesはNick Nocturnalとのインタビューで「MySpaceとあの文化がなければ、Bring Me The Horizonはここまで来られなかった」と振り返っている。
彼らは業界から選ばれて成功したバンドではなかった。
むしろ最初は嫌われ、ファンの力によって音楽メディア側が無視できなくなったバンドだったという。
最初から「デスコアを作ろう」としたわけではなかった
Oliによれば、初期Bring Me The Horizonは「デスコア・バンドになろう」と考えて結成されたわけではない。
そもそも当時はデスコアという名称自体が現在ほど定着しておらず、むしろその呼び方を嫌うミュージシャンも多かったという。ギタリストのLee MaliaとCurtis WardはMetallica、Pantera、At The Gatesなどを好むメタル寄りのリスナーだった。
一方、OliとMatt NichollsはNorma Jean、Poison The Well、The Dillinger Escape Planなど、アメリカのハードコア/ポストハードコアから強い影響を受けていた。
その二つの音楽的背景が同じバンドへ入ったことで、Bring Me The Horizon初期のサウンドが自然に形成されていった。
Oli自身、Leeから初めてAt The Gatesを聴かされ、そのリフに強烈な衝撃を受けたことを覚えているという。
自宅のバスルームでボーカルを録音していた
初期の彼らにはレコーディングに関する知識もほとんどなかった。
最初期の音源制作ではOliの自宅を使い、「バスルームならリバーブがあって声が良く聞こえるだろう」という理由でボーカルを録音したという。
吸音するという発想ではなく、シャワーで歌うと気持ちよく響くのだから、その反響をそのまま録音すれば良いと考えていた。
完成した音源を聴いたメンバーは、あまりの出来に「これは売れない」と判断した。すでに約500枚分のCDケースまで用意していたにもかかわらず、販売することをためらうほどだった。そこで、ちょうど広がり始めていたMySpaceへ「とりあえず置いてみよう」と公開する。
その音源が予想外の反応を生み出した。
「自分たちにもできそう」だったことが人気につながった
Oliは初期Bring Me The Horizonが若者から支持された理由について、「手が届きそうだったからではないか」と分析している。
現在の完成されたスターとは違い、当時の彼らは友人同士でガレージに集まり、好きな音楽をそのまま鳴らしているようなバンドだった。若いファンから見れば、「自分も友達とバンドを組んだら、こんな音楽を作るかもしれない」と思える。高額なスタジオも、巨大なレコード会社も必要ない。
自分にもできるかもしれないという距離感が重要だったのではないかという。
Oliは、現在のYouTuberやハイパーポップなどにも似た魅力があるのではないかと考えている。完成度だけではなく「自分でもこの世界へ入れる」と感じられることが、若い世代を引きつける。
音楽以上に巨大だった「シーンカルチャー」
Oliが2000年代を振り返るとき、実際のアルバム制作以上に強く記憶へ残っているのは、その周囲に存在した文化だという。
Warped Tour、特徴的な髪型、極端に細いパンツ、鮮やかなTシャツ、メタルとヒップホップ的なファッションが混ざったスタイル。現在見ると「ひどい格好だった」と笑いながらも、そこには強烈な自由があったと振り返る。
重要なのは、それが過去のカルチャーを単純に再利用したものではなく、当時の若者から自然に生まれた新しい世界だったという点だ。その後シーン的なファッションや音楽は一時的にメインストリームにまで浸透した。
Oliにとって、あれほど急速に独自の文化が生まれ、世界規模まで広がった時代は非常に特別だった。
MySpaceは「音楽を選ぶ権利」をリスナーへ渡した
その革命の中心にあったのがMySpaceだった。
それ以前、新しい音楽を知るにはKerrang!やMetal Hammerなどの雑誌や既存メディアの影響力が大きかった。しかしMySpaceでは、リスナー自身が好きなバンドを見つけ、その場で音源を聴き、直接応援できた。
Oliは自身のアパレル活動についても同じ感覚があったと話している。大手ショップの商品を買うのではなく、自室でTシャツを作っている若者から直接購入する。
音楽でも同じように、「メディアから推薦されたものを聴く」のではなく、「自分で発見したバンドを支持する」ことが可能になった。この変化によって、既存メディアが評価していなかったバンドにも道が開かれた。
「ファンが雑誌にBring Me The Horizonを書かせた」
Bring Me The Horizonは活動初期、音楽業界や一部メディアから歓迎されていたわけではなかった。
むしろOliは「自分たちはすごく嫌われていた」と振り返る。
それでも若いファンからの人気が急拡大し、最終的には雑誌側が無視できなくなった。メディアがBring Me The Horizonを人気バンドにしたというより、ファンが支持を拡大し、メディアに「このバンドを掲載しなければならない」と思わせたという認識だ。
だからこそOliは、「MySpaceがなければBring Me The Horizonは存在しなかった」とまで話している。20年以上が経った現在、彼らが『Count Your Blessings』へ戻ることは単なるアルバムの周年企画ではない。
Bring Me The Horizonというバンドそのものを生み出した、MySpace、scene、DIYインターネット文化へ戻ることでもある。
シーンは再び戻ってくるのか
現在はニューメタルが若い世代から再評価され、Linkin Park、Limp Bizkit、Slipknotなどが再び巨大な影響力を持っている。同じように2000年代メタルコアやデスコアへのノスタルジーも強くなっている。
インタビューでは、シーンも20年周期で再び大きな注目を浴びる可能性があるという話になる。しかしOliがより興味を持っているのは、単純なリバイバルではない。
「あれほど完全に新しい文化が、もう一度生まれることはあるのか」という問いだ。
過去を再現するのではなく、それ以前に存在しなかった何かを若者たちが自分たちだけで作る。Oliにとって2000年代sceneの本当の魅力は、髪型や音楽ジャンルそのものではなく、その自由さと発見の感覚にあったようだ。
参照元動画
「OLI SYKES on Count Your Blessings Repented, Sempiternal & Deathcore Era」
