ミシガン州出身のグラインドコアバンド”See You Next Tuesday”が、2007年の楽曲「8 Dead, 9 If You Count the Fetus」を改めて再レコーディングした「8 Dead, 9 If You Count the Fetus (Redux)」の新たなミュージックビデオを公開した。
グラインドコア・シーンにビッグバンが起こる事はそうそうないが、グラインドコアとは別軸でエクストリームを加速させ、スピードを追いかけてきたデスメタルから派生したマイクロ・ジャンルが、グラインドコアの真髄に接近することで、結果的にグラインドコア的なものが誕生することはある。例えば、2010年代にカオティック・ハードコア/マスコアを激化させ、スクリーモやメタルコア、デスコアにまで触手を伸ばしたSee You Next Tuesdayの存在は、グラインドコア・リスナーの間でも名の知れたものであり、彼らをグラインドコアとして自然に耳にしている2020年代の新規リスナーもいるだろう。
2023年に15年振りとなるニュー・アルバム『Distractions』をリリースしたSee You Next Tuesday。この作品を多くのゲストを迎えてエレクトロニックにリミックスしたのが『Relapses』だ。この作品は、1997年にリリースされたFear Factoryのリミックス・アルバム『Remanufacture』に大きなインスピレーションを受け、エクスペリメンタル・グラインドコア/マスコアの中でもエクストリームなスタイルを持つSee You Next Tuesdayの楽曲をインダストリアル、ノイズ、アヴァンギャルド/エクスペリメンタルなエレクトロニックな要素をブレンドさせることによって、さらにエクストリームなクリエイティヴィティを発揮すると言うのがこの作品の趣旨だ。
バンドのブレインでありマルチ・インストゥルメンタリストのDrew Slavikによって指揮が取られ、Thotcrime、ZOMBIESHARK!、John Cxnnor、Black Magnetなど多くのアーティストがリミックスに参加し、『Distractions』の持つポテンシャルをジャンルレスに拡張している。アルバムのエンディングを飾る「The Gold Room」は、Frontiererと共に制作した全く新しい楽曲で、See You Next Tuesday & Frontiererと共作名義になっている。See You Next Tuesdayが人気を集めたのも、グラインドコア・シーンからというよりは、2000年代後期のカオティック・ハードコア・ムーヴメントの中で、エモ、スクリーモが混ざり合う混沌の中から飛び出してきたという印象。今回参加しているアーティストは、それらを聴いて青年期を過ごしただろうし、このようにして新旧のエクストリーム・メタルを追求する異端児たちがSee You Next Tuesdayを通じて、その才能を発揮し世に放つと言うことは非常に有意義なことである。グラインドコアとして聴くには難しい作品であるが、グラインドコアのポテンシャルはこのように拡張される可能性を秘めていることにメタルの底知れなさを感じることが出来るだろう。
『Relapses』と言う、グラインドコア、See You Next Tuesdayの可能性を拡張させるようなリミックス・アルバムを完成させた後も、Drew SlavikはSee You Next Tuesdayとしての創作活動を止めなかった。See You Next Tuesdayの後継者とも言えるmeth.と共に共同で作品を作るというアイデアを思いつき、そしてそのレコーディングをかなり珍しい方法で作り上げた。
See You Next Tuesday
お互いが3曲書いてレコーディングし、ドラム・トラックだけを他のバンドと共有。 それぞれのバンドは、交換したトラックの上に新しい曲と歌詞を書いていく。一方のバンドが、もう一方のバンドに影響を与えないようにするため、すべてが完成するまで、どちらのバンドももう一方のバンドから何も聞くことはせず完成させる。See You Next Tuesdayもmeth.も最終的に完成した作品には驚き、興奮したという。この作品は4つのパートに分かれており、「THE ROAD TO DOOM (feat. Guy Kozowyk of The Red Chord)」と題された3曲のパート、「EUPHORIA」と題されたSee You Next Tuesdayのパート、「SNARE TRAP」と題されたmeth.のパート、そして「PSALMS OF PAIN (feat. Billy Bottom of Nights Like These)」と題されたmeth.のパート、合計12曲が収録されている。
2007年カリフォルニアで結成されたNailsの前作『You Will Never Be One of Us』から8年振りとなる通算4枚目のスタジオ・アルバム。長きに渡りNailsに在籍してきたドラマーTaylor Young、ベーシストのJohn Gianelliが脱退し、ギター/ボーカルのTodd Jones以外のメンバーが総入れ替えとなった。本作はブラック/デスメタル・バンドUltharをはじめ、多くのプロジェクトを持つギタリストShelby Lermo、Despise YouやApparitionに在籍するベーシストAndrew Solis (本職はギターのよう)、Skeletal RemainsやPower Tripのライブドラマーを務めた経歴を持つCarlos Cruzが加入し、4人体制となった。
プロデューサーも前作同様Kurt Ballouが担当しており、Toddがメインボーカルを務めており、ほとんど前作の延長線上にあるが、3人入れ替わるだけでかなり違う。これはNailsでやりたいことが変わったからと言うのもあるかも知れないが、本作のプロダクションはかなり良い。前作のNailsのソングライティングにMotörheadのヴァイブスを注入、一見無理矢理にも感じるが、これがかなり素晴らしい。『UNSILENT DEATH』のようなものを求めるリスナーも楽しめるパワーがあるし、新しいNailsも素晴らしいものになると感じさせてくれる。「Give Me The Painkiller」とかはギターソロで笑っちゃうけど、普通にカッコ良い。
2021年にドイツ・ボーフムで結成された彼らのセカンド・アルバム。2023年にリリースされたデビューEP『Moloch』は、2023年下半期のグラインドコア年間ベスト・アルバムとしてアルバムレビューしており、この作品への期待は特別高かった。ユニークなボーカルワークはメンバー全員がメインを張れる個性が溢れており、忙しない展開に拍車をかけていく。決してグラインドコアからだけの影響でなく、デスコア、マスコア、時にノイズへと接近したり、Dream Theater顔負けのプログレッシヴ/オペラ調のフレーズまでも差し込みながら (それはRuinsや高円寺百景、BAZOOKA JOEにも聴こえるのが最高! “Planet der Affen”を聴いてほしい)、トリッキーなグルーヴでエンディングまで全力疾走。See You Next TuesdayからWormmrotまで、かなりおすすめの一枚。(Ambulante Hirnamputationのイントロもすごい笑)
▶︎Houkago Grind Time 『Koncertos of Kawaiiness: Stealing Jon Chang’s Ideas, A Book by Andrew Lee』
2021年にRelapse Recordsからリリースした『Garden of Burning Apparitions』以来、3年振りとなる通算6枚目となるスタジオ・アルバム。これまでもNailsとのスプリット作品などを手掛けてきたClosed Casket Activitiesへと移籍してリリースされた本作は、聴く人によって抱く感覚がかなり異なる作品ではないだろうか。この作品に漂い続けるアトモスフィアは、いったいどこから来ていて、Full of Hellがどこに向かっているのかを分からなくさせる。そういう何者か分からなさが、彼らの魅力の一つかも知れないし、今年はシーンにこんなトレンドがあって〜とか、来年はこんなバンドがブレイクする!とか、そんな事を全く気にしない姿勢でバンドがキャリアを積み重ねていくことの大切さや魅力が感じられる作品になっていると言えるだろう。
「グラインドコア」と言う言葉だけでは彼らの音楽を捉えることはもちろん出来ない。ステージのど真ん中に巨大なエフェクトボードを置き、奇抜なエレクトロニック・ビートやノイズを構築しながら、ブラストビートの雪崩を起こしていく、私たちが知っているFull of Hellの姿もあれば、古めかしいニューウェーヴのようなビートの上に奇怪なノイズを覆い被せていったり、時にエモ・ヴァイオレンス的な悲哀なメロディを炸裂させたかと思うと、懐かしいマスコア的な楽曲をストレートにぶつけてくる。直球のハードコアパンクをやっているかと思えば、それはU.G. MANを思い起こさせる、どこか絶妙なクセがある。彼らがこのアルバムでやっていることに一つの明確なコンセプトはないだろうし、ファンは形容出来ないFull of Hellのサウンドの芸術性を楽しみにしているはずだ。そう言う好奇心からすれば、このアルバムは最初から最後まで、目が離せない作品に仕上がっていると言えるだろう。
2003年カリフォルニア州ロサンゼルスで結成され、キャリア20年が経過したパワーヴァイオレンス・バンド、ACXDCの前作『Satan Is King』以来、4年振りのサード・アルバム。スプリット作品やEPなどはたくさん出ていて、特にテープ・フォーマットがかなり流通しているイメージがある。グラインドコアというよりはハードコアパンク・シーンでの認知度が高い彼らだが、Prosthetic Recordsと言うメタル中心のリリースを行うレーベルからと言うこともあり、本作はグラインドコア・リスナーの食いつきも良さそうだ。
2019年にギリシャ・アテネで結成された4人組 (レコーディング当初はトリオ編成だった模様)、Vile Speciesの前作『Against the Values of Civilization』以来、2年振りとなるスタジオ・アルバム。アーティスト写真を見る限りかなりベテラン、ライブも精力的に行っているようだ。ところどころデスメタリックなリフの展開やドラミング (ほとんどブラストビートだが) もあり、”Deathgrind”とタグ付けされている作品が好きな人はチェックしてほしい作品だ。荒っぽいプロダクションでも分かる熱気、アートワークを見て、芸術派かなと思ったが、そのサウンドのストレートさとのギャップにやられた。
Graveyard Lurkerによるワンマン・グラインドコア・プロジェクト。2022年にそれまでに制作された楽曲をリマスターしたディスコグラフィー盤『Till Death Do We Start (Complete Discography Remastered)』をリリースしているが、それからは初となるアルバムで、アートワークからも分かるように、HaemorrhageやNecrony、Regurgitateや初期Carcassといったクラシックなゴアグラインド・サウンドに親近感が湧く。完全に腐敗し切ったボーカルが地を這うようにして、ノイズまみれのブラストビートに細菌をなすり付けていく。
2000年代中頃から終わりにかけて、メタルコア/デスコアを巻き込んで盛り上がったマスコア (カオティック・ハードコア)。その頃夢中になっていた See You Next Tuesday が復活したと聞いて、グラインドコアの現状を把握しようとディグっていたのが今年の頭。昔はレーベルやディストロの商品レビューを片っぱしから読んでは気になるバンドをメモして横の繋がりを把握しつつ、グラインドコア・シーンの状況を把握しようとしていたが、今ではグラインドコアに特化したYouTubeチャンネルもあり、世界に点在するDIYグラインドコア・バンドたちの拠点としてかつてのレーベルのような役割を果たしてくれているので、どんなバンドがアクティヴで、どのくらいの規模で活動しているのが直感的に把握しやすくて助かる。
2008年に傑作『Intervals』を発表し散り去ったミシガンのエクスペリメンタル・グラインドコア/マスコア・カルト、See You Next Tuesday がシーンにカムバック。およそ15年振りとなるアルバム『Distractions』をGood Fightからリリースしたことは、個人的に2023年グラインドコア・ニュースの中で最も印象的であったし、かなり興奮した。
というのも、メタルコアやスクリーモが爆発的な人気を誇っていた2000年代後半のメタル・シーンにおいて、カオティック・ハードコア/マスコア・シーンやブルータル・デスメタル・シーンとの境界線をシカトして猛烈な人気を誇っていたのがSee You Next Tuesdayであったからだ。Rotten Sound、その他Napalm Deathなどどいったグラインドコア・バンドとは明らかに違う異質さは、恐ろしく長い楽曲名、カラフルでグロテスクな当時のエモファッションにも近いアパレルを身にまとったヴィジュアルからも漂っていた。iwrestledabearonceなどと同列に並べられがちであるが、そのサウンドはノイズに接近するほどラウドで難解であった。
復活後もそのスタイルを崩さず、わずか34秒の「Glad to Be Unhappy」では電気ショックのようなギターのフィードバックが恐ろしいほどの存在感を放ち、ミュージックビデオにもなっている「Day in the Life of a Fool」では、まるでEvery Time I DieやThe ChariotがLSDを喰らいながらブルータル・デスメタルを5倍速でプレイしたかのような混沌を表現している。これだけ奇天烈なことをやっておいて、テクニックは素晴らしいし、しっかりグラインドしている。ややデスコアやマスコアに理解がないと興味が湧きにくいバンドかも知れないが、グラインドコアの裾をさらに拡大するべく、彼らが再びシーンに戻ってきてくれたことを歓迎したい。
1. We’re Still Here (feat. Shirley Manson & AC Sapphire)
2. Sweet Like Candy (feat. Nø Man, Thou, & Jessica Joy Mills)
3. Burn Your House Down (feat. Jessica G.Z., and Gouge Away)
4. N.O. S.I.R. (feat. Justin Pearson & Nevada Nieves)
5. Waste Not Want Not (feat. Soul Glo & Escuela Grind)
6. Public Service Announcement (feat. Dan Yemin & Dark Thoughts)
7. Judgement Night (feat. Ghösh & Jessica Joy Mills)
8. Trust The Process (feat. Frank Iero & Rosie Richeson)
9. XOXOXOXOXOX (feat. Melt-Banana)
10. You Are Not Alone (feat. Lora Mathis & The Body)
11. Apoptosis and Proliferation (feat. Nate Newton & Full Of Hell)
12. So, Anyway… (feat. Geoff Rickly & Kayla Phillips)
13. A Different Kind of Bed Death (feat. Anthony Green & Pain Chain)
14. Neila Forever (feat. Jeremy Bolm & Jordan Dreyeri)
15. Last Kind Meets Last Preist (feat. Chris #2 & Derek Zanetti)
16. Unicorn Tapestry Woven in Fire (feat. Marissa Paternoster, Damian Abraham, & Pinkwash)
17. Bringing Light and Replenishments (feat. The Punk Cellist & Sunrot)
アルバムのタイトルトラック「We’re Still Here」は、オルタナティブロック・バンド Garbage のリードシンガーであるShirley Mansonをフィーチャーした印象的な一曲。歌詞はどれも意外とシンプルというか、伝えたいことをストレートにスクリームしている感じ。My Chemical RomanceのFrank Ieroが参加している「Trust The Process」もThe HIRS Collectiveらしさ溢れるカオティックなグラインディング・チューンで飾り気なしの清々しさに溢れている。参加するどのミュージシャンも本業のバンドでは見せない怒りやメッセージをここで発散しているように感じるというか、The HIRS Collectiveとのコラボなんだから叫んでもいいでしょというような雰囲気がある。シンプルに怒りや日頃の鬱憤を発散する音楽が私たちには必要で、グラインドコアはまさにうってつけの音楽であり、現代的な社会問題をテーマにしている彼らが特別な魅力を放つのは当然だ。
Smallpox Aroma 『Festering Embryos of Logical Corruption』
グラインドコアというにはヘヴィなデスメタル・ブレイクダウンがあったりとピュアなスタイルではないが、彼らが在籍するブルータル・デスメタルでは出来ないことをやっているし (「Quest for the Missing Head」はブルータルなハードコアパンクみたいな曲)、アクセスとブレーキーの踏み分けのそれがグラインドコアと同じだ。2023年9月にははるまげ堂の招聘によって再来日が決まっている。彼らの良さはライブだと思う、見逃さないようにしておこう。
CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP 『We Live as Ghosts』
コネチカットを拠点に活動するワンマン・ノイズグラインド・プロジェクト、CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP。このイカれたプロジェクト名を本人も「CHOP 7times」と省略して使っているのですが、検索しにくすぎて不便では……。しかしバンド名を何気なく発見し、気になって再生ボタンを押してしまったので、それが彼の策略であったならば私はまんまとその策略にはまってしまっている。そして気になったのがCHOP7timesのアーティスト写真。これは彼のBandcampをぜひ見てほしい。ノイズ・ファンなら興味をそそられるはずだ。
ミシガンのマスグラインド・ベテラン、See You Next Tuesday が復活! Good Fight Musicと契約し、新曲「Hey Look, No Crying」のミュージックビデオを公開しました。2023年2月には15年振りとなるニュー・アルバム『Distractions』をリリースする。時を経て蘇る、強烈なノイズの嵐が脳天に直撃する……。
See You Next Tuesday:
Drew Slavik – Guitar
Chris Fox – Vocals
Rick Woods – Bass
James Watson – Drums