年始企画 : 10年前の2012年と言えば、メタルコアやポストハードコアが少しずつ洗練され、世界中から個性的でハイ・クオリティなアーティスト達が続々とデビューした年だ。現在のメタルコア・ポストハードコアの基盤とも言えるサウンドを作り上げ、フォロワーを生み出した多くのバンドがRise Recordsに所属しており、今では名作と呼ばれるような作品をリリースしている。10年という月日を感じながら、改めて現在のメタルコア・ポストハードコアがどのように進化してきたのか、また2032年にどんなバンドが誕生しているかを想像しながら、ぜひ振り返ってみてほしい。
Issues – Black Diamonds
Woe, Is Meを脱退したTyler Carter、Michael Bohn、Cory Ferris、Ben Ferrisによって2012年夏に結成され、すぐにRise Recordsと契約。『Black Diamonds』は彼らのデビューEPで、名曲「Love Sex Riot」収録。
The Acacia Strain – Death Is The Only Mortal
ハードコア・シーンとメタルコア・シーンを繋いた存在として、このころすでに神格化されていたThe Acacia Strainの6枚目となるスタジオ・アルバム。長くThe Acacia Strainのコンポーザーとして活躍したDaniel “DL” Laskiewicz在籍時最後の作品。
Memphis May Fire – Challenger
USメタルコア・シーンを牽引する存在となったMemphis May Fireの3枚目スタジオ・アルバム。Billboard 200で16位にランクイン、現在までのバンドキャリアの中でも最も勢いに乗っていた頃の作品と言えるだろう。「Prove Me Right」は名曲中の名曲。
Secrets – The Ascent
2010年に結成、デモ音源を経てRise Recordsと契約したSecretsのデビューアルバム。ボーカリストAaron Melzerは2020年に死去。現在も活動しており、2010年代のレガシーを後世へと受け継いでいる。
Crown the Empire – The Fallout
テキサス州ダラスを拠点に2010年に結成されたメタルコア・バンドのデビュー・アルバム。Joey Sturgisによってプロデュースされた作品で、この作品から現在まで堅実なキャリアを築いている。
My Ticket Home – To Create A Cure
後にオルタナティヴな方向へと進んでいくMy Ticket Homeのデビュー・アルバムは、アグレッシヴなメタルコア・サウンドを鳴らし、Secrets、Crown The Empireと共にこの年のメタルコアを語る上で重要な作品と言える。
Attack Attack! – This Means War
Joey SturgisによってプロデュースされてきたAttack Attack!が、本作はCaleb Shomoのプロデュースでアルバムを制作。通算3枚目となるスタジオ・アルバムは、Billboard 200で初登場11位にランクイン。Memphis May Fireと共にRise Recordsの顔として存在感を見せつけた。
Bleeding Through – The Great Fire
1999年から活動し、Roadrunner Recordsを牽引してきたメロディック・デスメタル/メタルコア、Bleeding ThroughがRise Recordsへと移籍したことは大きなニュースになった。そんな彼らの6枚目となるフルレングスは、彼ららしい火花飛び散るメロディック・メタルコア。
Woe, Is Me – Genesi[s]
リード・ギタリストKevin Hanson以外のメンバーが脱退したWoe, Is Meが残したファイナル・アルバム。タレント揃いのIssuesが鳴らしたR&Bとメタルコアのクロスオーバー・サウンドとは違い、多彩なコラージュを組み込んだヘヴィなメタルコアを鳴らし、大きな話題となった。翌年に発表したEP『American Dream』で解散。一つの時代が生まれ、消えていく間に生まれた名作。
Miss May I – At Heart
Rise Recordsがシーンにおける存在感を強めていく中で、欠かせない存在となっていたMiss May Iの通算3枚目フルレングス。Memphis May FireやAttack Attack!とはまた違い、メロディアスなメタルコアで独自のファンベースを堅持した一枚。
Palisades – I’m Not Dying Today
Marilyn Is Deadから改名し、再出発となった彼らのデビューEP。2013年にデビューアルバム『Outcasts』をリリースするが、この作品の存在感はそれを超えているように思う。エレクトロニックなアレンジと流麗なクリーン・パートに才能を感じた一枚。
Thick As Blood – Living Proof
Attack Attack!やMemphis May Fireという存在がこの頃のRise Recordsを象徴していると言えるが、The Acacia StrainとThick As Bloodがハードコアとメタルコアの文化をミックスさせ、モッシュコアなどを盛り上げた功績は絶対に忘れてはいけないし、しっかり評価すべきだ。この頃来日も果たし、LOYAL TO THE GRAVEとのスプリット作品も発表したThick As Bloodの快作。
Abandon All Ships – Infamous
エレクトロニック・ポストハードコアとして2000年代後半にデビューし、Rise Records黄金期の第2世代としてブレイクしたAbandon All ShipsのRise Records移籍後初となるセカンド・アルバム。Issuesの影に隠れながらも間違いなく2010年代初頭を象徴するバンドである。
In Fear And Faith – In Fear And Faith
2006年に結成し、2000年代後半のスクリーモ・ムーヴメントを盛り上げた存在として知られるIn Fear And Faithの通算3枚目フルレングスであり、ラスト・アルバム。時代がメタルコア・ポストハードコアへと移行していき、彼らの活動が止まったことは一つ象徴的な出来事だった。
Hands Like Houses – Ground Dweller
オーストラリアのバンドとしてRise RecordsからデビューしたHands Like Housesのファースト・アルバム。前述のIn Fear And Faithらが築いたスクリーモ/ポストハードコアの礎が全世界的に飛び火し、新たなシーンを生み出していく予兆がHands Like Housesの登場によって確信に変わったと言っても過言ではない。
American Me – Ⅲ
Thick As Blood、The Acacia Strainの陰に隠れがちではあるが、モッシュコアとしてハードコアとメタルコアを接続する存在として多大な功績をシーンにもたらしたAmerican Meの通算3枚目となるフルレングス。バンドは本作以降リリースなど目立った活動はないものの、近年復活の兆しがある。間違いなく伝説的な存在になっているバンド。