ジョージア州アトランタのデスコア5人組、Left to Suffer のセカンド・アルバム。2020年の『A Year of Suffering』から3年。ここまでの成長を誰が想像出来たでしょうか。本作は Matt Thomas がプロデュース/ミックスを手がけ、 Joel Wanasek がマスタリングを担当。ニュー・メタルコアとデスコアを高次元で融合させ、本作でも印象的なニュー・メタルコア的アレンジが随所に組み込まれており、ミュージックビデオになっている「Artificial Anatomy」では新鋭トラップ・アーティスト Kim Dracula がフィーチャーするなど人選も完璧だ。
Left to Sufferの最も素晴らしい持ち味はドライブンなフレーズだ。「Disappoint Me」はヘッドバンギング不可避のドライブ感が楽曲を通じて貫かれており、ボーカル、リフ、個性的なドラムのフィルインなどの細やかな工夫もそのドライブ感を加速させていく。ニューメタルの香りをほのかに香らせながら、Lorna Shore、Signs of the Swarm、Archspireといったバンドらのボーカルにあるような、ショットガン・ガテラルも巧みにブレンドしているから凄い。
Fit For An AutopsyのJoe Badをフィーチャーした「Primitive Urge」はアルバムの中でもスタンダードなデスコアに近いスタイルでありながら、不気味に燻らせるノイズ、シンフォニックなアレンジが旨みを引き立たせる。じっくりと聴き込めば聴き込むほどにLeft to Sufferというバンドの持つ驚異的なポテンシャルを感じることが出来るだろう。
2010年代中期から活躍するオランダ出身のデスコア・バンド、Distant のサード・アルバム。「ブラッケンド・デスコア」の新鋭として Unique Leader Records から2枚のアルバムをリリース、その後 Century Media Records への電撃移籍を発表して、本作を完成させた。
この楽曲はアルバムのキーであることは間違いないが、Lorna ShoreのWill Ramosをフィーチャーしたタイトル・トラック「Heritage」も「Argent Justice」と双璧を成すキラーチューンだ。この曲はWill Ramosのパートはもちろん素晴らしいが、Thy Art is MurderやCabalなどを彷彿とさせるブレイクダウンのヘヴィネスが素晴らしい。この曲のブレイクダウン、そしてブラッケンドなファスト・パートの接続などは後続にも影響を与えるはずだ。間違いなくアルバムのハイライト。
テキサスとニューヨークを拠点に活動するヘヴィ・メタルコア/デスコア・バンド、Sail’s End が2023年2月にリリースしたこのEPは、あまりにも衝撃的だった。ブレイクダウンYouTuber Ohrion Reacts でも取り上げられ、相当唸らせていたし、ローカルのリアクションYouTuberも彼らのビデオを取り上げていた。
Before I TurnやGlass Crown、Brand of SacrificeにInvent Animate、さらにはWage Warといったソリッド・メタルコア〜ヘヴィ・デスコアから多大なインスパイアを受けたそのサウンドは、とにかく地鳴りのように強烈なブレイクダウンを炸裂させる為に、数多くのエレメンツを散りばめられている。この作品を聴いている時には思い浮かばなかったが、のちに発表されたいくつかのシングルも合わせて見れば、Prompts に非常に近いヴァイブスを感じる。モッシュに特化したフレーズに絡みつくニューメタルコアのエレメンツ、Oceans Ate Alaskaを彷彿とさせるドラムパターンはまさに、という感じだ。
カナダ/アメリカを拠点に活動するヘヴィ・デスコア・バンド、Brand of Sacrifice の先行シングルとして公開されていた「Exodus」、「Dynasty」を含む4曲入りの作品。収録曲全ての楽曲のミュージックビデオが公開されている。
この作品の中で最も印象的な楽曲は「Dynasty」だろう。冒頭、痺れるようなエレクトロニックな音色の中に「〜があっても、生き残るために戦います」という日本語の女性の声が組み込まれている。このフレーズはイントロだけでなく、楽曲の転調にも差し込まれ、この女性の声は随所でシンフォニックでオリエンタルなBrand of Sacrificeのスタイルを表現する為に出現する。
「Dynasty」について、フロントマンのカイルは、「今年の僕にとっての大きな挑戦は、絶望や怒りだけでなく、感情のスペクトルの異なる要素を音楽と歌詞に取り入れることだったんだ。この曲を通して、個人的なストーリーを表現したかった。恐怖を直視しながら個人的な障害を克服することに挑戦し、BRAND OF SACRIFICE全体と同じように、絶対に止められない力になることを歌っている」とコメントしている。また、ファンの反応はBorn of Osirisを想起させるスタイルだというものが多く、バンドが「テクニカルでヘヴィなデスコア」だけでなく、歌詞やサウンド面において非常に多くの挑戦をしていることが伺える。決してデスコア・シーンだけで評価されるようなバンドではなく、例えばこの作品のタイトル・トラックではThe Word AliveやWe Came As Romansにも接近するようなクリーンパートがキーリングになっている。
この先、Brand of Sacrificeは更に深化し、「ヘヴィなデスコア」から脱却していくかもしれないが、彼らの核となるもの、この先も変わらないものがこの4曲で浮き彫りとなっているように感じる。
マサチューセッツ州を拠点に活動するデスコア/ハードコア・バンド、The Acacia Strainが異なる2枚のアルバム『Failure Will Follow』と『Step Into The Light』をそれぞれRise Recordsからリリース。この2枚はダブル・アルバムではなく、全く異なるコンセプト、そしてソングライティングのプロセスを経て製作されたものである。
本人たちは「デスコア」というレッテルを貼られることを嫌がっているようだが、図らずも彼らはデスコアのレジェンドだ。ハードコアとメタルをクロスオーバーさせる中で、ソリッドでバウンシーなモッシュ・リフを追求し続け、日夜ツアーに明け暮れ、その切れ味を磨き続けてきた。多くのThe Acacia Strainのファンが期待する作風に仕上がっているのが、『Step Into The Light』で、殺気立ったアトモスフィアが立ち込める中、黙々とギロチンのようなリフで切り刻んでいく。決して譜面に起こすことの出来ない、モッシュ・スピリットには感服させられる。
『Failure Will Follow』は、バイオレントなモッシュコアで培った至高のヘヴィネスを違った形で表現することにフォーカス。全3曲入り、どれも10分越えの大曲で「bog walker」に至っては17分という長尺曲。このくらいのボリュームだと、なんとなく楽曲の雰囲気はドゥーミーなものであると想像出来るが、しっかりThe Acacia Strainとわかるトレードマークも豊富に組み込まれており、無理矢理ジャンルとして形容するならば「ドゥーミー・モッシュコア」とか「ブルータル・ドゥーム・メタル」といったところだろうか。このアルバムでツアーしても間違いなくフロアは殺戮現場と化すに違いない。それも精神的に狂気をまとった、そんな危なさがある。
USデスコア・バンド、Chelsea Grin がニュー・アルバム『Suffer in Heaven』をリリースしました。2022年にリリースされた『Suffer in Hell』に次ぐダブル・アルバムの第2弾である。
Chelsea Grinは、2010年にアルバム『Desolation of Eden』でシーンに登場すると、それまでのデスコアをさらにヘヴィなものへとアップデート。2010年代中期にかけて盛り上がったダウンテンポ・スタイルのデスコアの礎として現代でもその存在は特別なものだ。
そんなChelsea Grinにとって2022年の『Suffer in Hell』、2023年の『Suffer in Heaven』のダブル・アルバムは、キーだったメンバーが抜け、新たな布陣で制作されている。2010年代のデスコア・シーンのキーとして活躍したバンドのフロントマンであった Alex Koehler が、2018年にアルコール依存症を含むメンタルヘルスの問題によってバンドを脱退、Alexと同様、ドラム/ボーカルとしてバンドの中心メンバーとして存在感を見せつけていた Pablo Viveros が一時的にバンドを離脱している。Chelsea Grinサウンドの2つの重要な個性を失ったものの、この『Suffer in Hell』、『Suffer in Heaven』は様々なメディアで高い評価を受けている。
『Suffer in Heaven』は『Suffer in Hell』よりも、これまでのChelsea Grinが鳴らし続けてきた独自性を随所に散りばめつつ、Tomを新しいChelsea Grinのフロントマンとして迎え、新時代のChelsea Grinを作っていくという気概を感じさせてくれる。ミュージックビデオにもなっている「Fathomless Maw」はどこか「Playing with Fire」を彷彿とさせるキャッチーさを持ちながら、Tomのスクリームを生かしたファストなフレーズをエンディングに差し込んでいる。「Yhorm The Giant」から「Sing To The Grave」の流れは、『Suffer in Hell』から『Suffer in Heaven』の流れの中で最もエキサイティングな高揚感に溢れている。
Eddieが加入して、今年で10年になる。Suicide Silenceが始まってMitchがなくなるまで10年なので、在籍年数が並んだ。それでもまだ、EddieがSuicide Silenceのフロントにいることに違和感を感じてしまう人も多いかもしれない。前作『Become the Hunter』からSuicide SilenceはOGスタイルのデスコアへと戻り始め、本作『Remember… You Must Die』では完全に『No Time to Bleed』期のスタイルへと回帰した。「Mitchの幻影ばかり追いかけていないで、現在進行形のSuicide Silenceを追いかけろ」と、心から言えなかったのは今日まで。これからは今のSuicide Silenceを心から応援したいと思うし、好きだと言いたい。言うべきだ。
アルバム・タイトルからして、本作はオープニングから異常な殺気が漂う。2022年9月に先行シングルとしてアルバムのタイトル・トラック「You Must Die」はこれぞSuicide Silenceと言うべき完璧な楽曲で、墓場で演奏するメンバーが「You Must Die」、「Fuck Your Life」と叫びながら老化して最後に全員死ぬというディレクションがシンプルで良い。アメリカ人っぽいし、こういう無茶苦茶な思想とか投げやりなところがデスコアのコアなエナジーだと思う。