Breakdowns At Tiffany’s 『Eternal Lords』 (2020年 – Independent)

 

Breakdowns At Tiffany’s – Eternal Lords

 

前作『Gravity』から3年振りのリリースとなる3枚目フルレングス。メタルの土壌がしっかりとしたドイツの地で、レーベルに所属せずに活動を続ける彼ら。世界中にはそうした選択を取りながらもメジャーフィールドに負けない人気を持つバンドもたくさんいて、彼らも世界中に強力なファンベースを持つバンドのひとつと言えるだろう。

 

 

サウンドプロダクションに関しては、D.I.Y.メタルコアのスタンダードとも言えるレベルであるが、やはりソングライティングにおいて抜群のセンスを持っているように感じる。イントロ開けのオープニングトラック「Collapse」は、2010年代中期を思わせるメランコリックなメロディとの相性が良い激情系メタルコア・グルーヴがたまらない1曲で、続く「Animals」も同じく素晴らしい。2000年代後半からポストハードコア〜メタルコアまで追いかけているリスナーにはBreakdowns At Tiffany’sは2020年においてとても貴重な存在なのかもしれない。お世辞抜きで今年かなり聴いたし、需要があれば来日に向けて動きたいなと思う。

 

 

Thrones
Collapse
Animals
Tremors
Cold Sweat
Two Thousand Fears
Messenger
Into The Abyss
Eternal Lords
8643
Domestic Horrors
A Serpent’s Tongue
Unraveled

 

 

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Alpha Wolf 『A Quiet Place to Die』 (2020年 – SharpTone Records)

 

Alpha Wolf – A Quiet Place to Die

 

前作『Mono』から3年振りのリリースとなるセカンドアルバム。SharpTone Recordsとの契約後 (オーストラリアではGreyscale Recordsに所属のまま)、EP『Fault』を発表し、華々しくワールドワイド・デビューを飾った彼ら。RNR TOURSでの来日公演も大成功に収め、今メタルコア、特にニューメタルとクロスオーバーするニューメタルコアと呼ばれるサウンドの中ではトップをひた走る存在であると言えるでしょう。

 

 

ローの効いたリフを鋭く刻みながら、ニューメタル譲りのエレクトロニックなアレンジでシリアスな雰囲気を醸し出すのが彼らの持ち味。本作も冒頭「A Quiet Place to Die」もAlpha Wolfらしさに溢れており、続く「Creep」やミュージックビデオにもなっているリードトラック「Akudama」もこれまでAlpha Wolfが追い求めてきたスタイルの最高傑作であるように感じる。

 

 

後半に向かうにつれ、EP『Fault」にはなかったAlpha Wolfの叙情性を押し出した楽曲が増えて行く。先行シングル「bleed 4 u」を始め、「Restricted (+18)」、そしてエンディングトラック「don’t ask…」は、ArchitectsやCrystal Lake、The Ghost Insideを彷彿とさせるフレージングも多く、新しいAlpha Wolfの魅力が垣間見る事が出来るだろう。これまでの集大成であり、これからのAlpha Wolfの方向性を予感させるような作品になっており、ファンにはたまらない仕上がりと言えるだろう。

 

 

01. A Quiet Place to Die
02. Creep
03. Golden Fate; Isolate
04. Akudama
05. Acid Romance
06. Rot in Pieces
07. Bleed 4 You
08. Ultra-Violet Violence
09. The Mind Bends to a Will of Its Own
10. Restricted (R18+)
11. Don’t Ask…

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August Burns Red 『Guardians』 (2020年 – Fearless Records)

 

August Burns Red – Guardians

 

前作『Phantom Anthem』から3年振りのリリースとなった9枚目フルレングス。同じくFearless Recordsからのリリースで、プロデューサーにもCarson SlovakとGrant McFarlandを起用している。

 

 

毎日のように世界中から新しいバンドが登場し、まるで戦場のように新しいサウンドが誕生していながら、August Burns Redは長年安定したメンバーラインナップで、コンスタントにアルバムを作り続けている。それは2020年世界を襲ったパンデミックでも変わらなかった。変わり続けていく中で、ジャンルでは形容できないサウンドを作り上げていくことは、例えばBring Me The Horizonが顕著であると思うが、シーンのトップを行くバンドの典例だ。しかしAugust Burns Redはメタルコアというサウンドのスタンダードを鳴らし続け、大きくスタイルチェンジする事もなく、今もファンベースを拡大し続けている。長年のファンや彼らに憧れるミュージシャンの多くがAugust Burns Redの変わらない魅力に魅了されている事は間違いない。

 

サウンドに大きな変化はない、と前述したが数曲からはAugust Burns Redにしては新鮮なアプローチを感じた楽曲があった。ミュージックビデオにもなっている「Bones」は、クリスピーなカッティング・グルーヴをさらりと隠し味のように組み込んでいる。迫力のあるミッドテンポなメタルコア・バラード「Lighthouse」はクリーン・ボーカルが楽曲の軸となるナンバー。

 

 

もちろん、長年彼らのファンであれば、先行公開されたミュージックビデオ「Defender」にやられたであろう。ベテランにしか鳴らせない至極のメタルコア・ナンバーが詰め込まれた素晴らしい作品。

 

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Trivium 『What The Dead Men Say』(2020年 – Roadrunner Records)

 

Trivium – What The Dead Men Say

 

前作『The Sin and the Sentence』から3年振りのリリースとなったTriviumの9枚目フルレングスは、これまでと同じRoadrunner Recordsから発売された。1999年のデビュー以来、オーバーグラウンド・メタルシーンを牽引し続けてきた彼ら。個人的にはやはりリアルタイムで衝撃を受けたアルバム『将軍 (Shogun)』のイメージのままであったが、以降もリリースがあればチェックしてきた。

 

 

前作から加入したドラマーAlex Bentはテクニカルデスメタル・シーン出身という事もあり、Triviumサウンドが大きく変化したのは言うまでもない。ArkaikやBrain Drillといったテクニカルデスメタルの中でもより高度なテクニックを必要とするバンドに在籍したのだから、その腕は間違いないと言える。

 

 

ほとんどの楽曲がミュージックビデオになっているが、特に良いのがアルバムタイトルトラック「What The Dead Men Say」。数万人規模のスタジアムで鳴らされるようなメタルでありながらも、しっかり聴くとデスメタリックであり、オールドスクールなメタルコアだ。As I Lay Dyingを彷彿とさせる「The Defiant」など、幅広いメタルリスナーが楽しめるアルバムであり、コアなメタルリスナーも満足感が得られる1枚であると思う。

 

 

1. IX
2. What the Dead Men Say
3. Catastrophist
4. Amongst the Shadows and the Stones
5. Bleed into Me
6. The Defiant
7. Sickness unto You
8. Scattering the Ashes
9. Bending the Arc to Fear
10. The Ones We Left Behind

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Currents 『The Way It Ends』(2020年 – SharpTone Records)

 

Currents – The Way It Ends

 

2017年にリリースしたアルバム『The Place I Feel Safest』から3年振りのリリースとなったセカンドアルバム。ギタリストにRyan Castaldiが加入、5人体制となってから初の作品となる。

 

 

Currentsのイメージといえば、やはりメロディックハードコア譲りの切ないメロディーワークだろう。個人的には今もメロディックハードコアバンドとしての印象があるが、SharpTone Recordsと契約後の彼らからフォローしているリスナーからすれば、新時代のメロディック・メタルコア、みたいな印象をもっているかもしれない。

 

 

本作のリードトラック「A Flag To Wave」は現在のCurrentsのポテンシャルを100%発揮した楽曲で、ブラストビートを交えながらタイトに叩き込むJeffのドラミング、プログレッシヴなエレメンツも飲み込みながらもセンチメンタルなフレージングを多用するギターサウンド、そして何と言ってもメロディック・シャウトからクリーンまでこなすBrianのボーカルが素晴らしい。

 

 

驚いたのはデスコアにも匹敵するようなヘヴィネスとメロディが共存する「Poverty of Self」だ。重厚なヘヴィネスもメロディックハードコアの叙情性も、すべてメタルコアのフィルターを通して表現できているところにセンスを感じる。Crystal Lakeが好きなら間違い無くハマると思う。

 

1 Never There
2 A Flag To Wave
3 Poverty Of Self
4 Monsters
5 Kill The Ache
6 Let Me Leave
7 Origin
8 Split
9 Second Skin
10 How I Fall Apart

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Kingdom of Giants 『Passenger』(2020年 – SharpTone Records)

 

Kingdom of Giants – Passenger

 

今年結成10年目を迎えたカリフォルニア出身Kingdom of Giantsの、2017年にリリースしたアルバム『All The Hell You’ve Got To Spare』から3年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。2014年から在籍したInVogue Recordsを離れ、新たにSharpTone Recordsと契約している。

 

 

過去にもキーボーディストが在籍していた記憶があるが、本作から6人体制となり、新たにJulian Perezが加入している (その他にもメンバーチェンジあったと思います)。その影響はしっかりサウンドにも表れており、ミュージックビデオにもなっている「Night Shift」は現在のKingdom of Giantsを象徴するような楽曲と言える。Architectsを彷彿とさせるメタルコアをベースに、鋭くヘヴィなリフワークとJohnnyとDanaのクリーン/シャウトのコントラスト、そしてビデオのヴィジュアルイメージを上手く表現したかのようなネオンライトとの親和性ばっちりなシンセフレーズもハイセンス。続く「Sync」や「Wayfinder」も新しいKingdom of Giantsの魅力が感じられる良曲だ。語弊を恐れずに言えば、ゴリゴリなBring Me The Horizon。文句なしでKingdom of Giants史上最高傑作!

 

 

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テクニカル・デスメタル 2020年の名盤 10選

2020年にリリースされたテクニカル・デスメタルの様々な作品の中から、RIFF CULTがチョイスしたアルバムをレビューしました。気になった作品が見つけて下さい!

 

 

Deeds of Flesh – Nucleus

およそ7年振りのリリースとなった9枚目フルレングス。2018年、バンドのファウンダーであり、ブルータル・デスメタルシーンの一時代を築いてきたErik Lindmarkが死去。制作途中であった本作は、Erikと共にDeeds of Flesh黄金期に在籍したJacoby Kingston、Mike Hamiltonが復帰、リリックやボーカルのアレンジなど制作面を中心にレコーディングに携わり、現メンバーであるドラマーDarren Cesca、ギタリストCraig Peters、ベーシストIvan Munguiaの5人でErikが構想した本作を形にしていった。豪華なゲスト陣に加え、ミックス/マスタリングにZack Ohren、アートワークはRaymond Swanlandを起用し、2020年遂にリリースされた。「Odyssey」、「Alyen Scourge」そして「Onward」を除くすべての楽曲に生前Erikと親交のあったミュージシャン達がフィーチャーしている。

 

1. Odyssey
2. Alyen Scourge
3. Ascension Vortex
Feat:
Bill Robinson (Decrepit Birth)
Obie Flett (Inherit Disease, Iniquitous Deeds, Pathology)
Anthony Trapani (Odious Mortem, Severed Savior, Carnivorous)

4. Catacombs of the Monolith
Feat:
Luc Lemay (Gorguts)

5. Ethereal Ancestors
Feat:
George “Corpsegrinder” Fisher (Cannibal Corpse)

6. Nucleus
Feat:
John Gallagher (Dying Fetus)
Matt Sotelo (Decrepit Birth)

7. Races Conjoined
Feat:
Matti Way (Disgorge, Abominable Putridity, Pathology)
Frank Mullen (Suffocation)
Jon Zig (初期Deeds of Fleshのアートワーカー)

8. Terror
Feat:
Dusty Boisjolie (Severed Savior)
Robbe Kok (Arsebreed, Disavowed)

9. Onward

 

トラックリストを見るだけでも凄いが、これだけ個性的なミュージシャンが参加しているにも関わらず、すべての楽曲が間違い無くDeeds of Fleshの楽曲なのも凄い。前作『Portals to Canaan』の延長線上にあるサウンドをベースにしながら、『Path of the Weaking』、『Mark of the Legion』をリリースした90年代後期のDeeds of Fleshを彷彿とさせるクラシカルな良さもある。2000年代後半からのDeeds of Fleshサウンドの要になってきたCraigのプログレッシヴなギターフレーズはやや控えめであるが、彼らしいプレイも散見される。特に「Ethereal Ancestors」後半のギターソロはテクニカルデスメタル史上最も美しいギターソロだと思う。全曲味わい深く、間違い無く2020年を代表するテクニカルデスメタルの傑作。これからDeeds of Fleshがどのように活動していくのか、もしくはこれが事実上最後の作品なのかは分からないが、Deeds of Fleshの歴史において今後永遠に語り継がれていく作品になることは間違いない。この作品を完成させたDeeds of Fleshに関わる全てのミュージシャン、クリエイター達に感謝。

 

 

 

Beneath the Massacre – Fearmonger

前作『Incongruous』からおよそ8年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。しばらく沈黙が続いており、復活作として大きな話題になった。Prosthetic Recordsからの移籍という事で、テクニカルデスメタル/デスコアシーンからさらに広いメタルシーンへアプローチする作風になるかと思いきや、振り切ったスピードで突進し続けるアグレッシヴなスタイルをさらに加速してきたので驚いた。

2017年に加入したドラマーAnthony BaroneはThe FacelessやWhitechapelのライブドラマーとして活躍し、近年ではAegaeonやShadow of Intentといったテクニカルデスコアシーンで活躍してきた人物。高いレベルが要求されるBeneath the Massacreのサウンドを牽引するようにしてハイスピードなブラストビートを繰り広げ続けていく。それに食らいつく、というと語弊はあるが切れ味鋭いカミソリリフと攻撃的なギターソロをプレイするChrisも凄まじい技術を持っている。

ミュージックビデオになっているリードトラック「Treacherous」はメタルコアを40倍速再生させたようなスピード感とメロディ感を兼ね備えた楽曲で、2020年2月に公開から16万回再生されている。他にも開いた口がふさがらないような超絶技巧まみれのキラートラックが多数収録されており、アルバムを聴きおえたあとの満足感は強烈。デスコアリスナーもブルデスリスナーも是非チェックしてほしい1枚。

For Fans of : Despised Icon、Thy Art is Murder、Infant Annihilator

 

 

 

Imperial Triumphant – Alphaville

前作『Vile Luxury』からおよそ2年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。Gilead MediaからCentury Media Recordsへ移籍、いわばメタル・オーバーグラウンドでのデビュー作とも言える本作は、テクニカルともアヴァンギャルドともブラックとも言えないImperial Triumphantの世界観を確立した作品だ。そして何よりこれほど難解な作品はCentury Media Recordsからリリースされ、2020年のトップ・メタルアルバムのリストに選出されまくっているのだから凄い。

この作品のプロデューサーにはMr.BungleのTrey Spruanceが器用されており、エンジニアリング/マスタリングは同郷のColin Marstonが担当している。ゲストミュージシャンも面白く、MeshuggahのドラマーTomas Haakeが太鼓で参加、また日本人ボーカリストYoshiko OharaやWormedのボーカルPhlegetonもコーラスとして参加している。

彼らのアルバム制作風景がYouTubeで公開されているが、セッションを通じながらピアノやキーボードを導入、実験的なオーケストレーションも閃きを大事に組み込んでいる。非常に芸術的な楽曲構成であるし、そうしたアイデアも彼らが親しんできたクラシックな音楽からの影響が強いのかもしれない。

ノイズを散りばめながら不気味な緊張感を漂わせるリードトラック「Atomic Age」やどこかオリエンタルな香りが漂う「Rotted Futures」など、ひとつひとつの楽曲が独立して映画のようなスケールを持ち、『Alphaville』が構成されている。何度も聴きながら各ミュージシャンの多彩なアイデアを楽しむ事が出来る作品。強烈なヴィジュアルも高ポイントだ。

 

For Fans of : Gorguts, Ulcerate

 

 

 

Unmerciful – Wrath Encompassed

前作『Ravenous Impulse』から4年振りのリリースとなった3枚目フルレングス。Originで活躍したギタリストClint Appelhanzが中心となり、同じく元メンバーでCannibal Corpseのライブサポートも務めた経歴を持つベーシストJeremy TurnerとJustin Payne、そして本作から加入したドラマーTrynt KellyとボーカルJoshua Rileyの5人体制で制作された本作は、Originの名作アルバム『Antithesis』を彷彿とさせるOriginメンバーによるOriginクローン・サウンドだ。

ミュージックビデオにもなっているアルバムのタイトルトラック「Wrath Encompassed」はノンストップで疾走するブラストビートに絡み合うチェンソーリフと無慈悲なギターソロがボルテージを加速させていく。アルバム全体を通してダレる事なく、ひたすらに漆黒のテクニカルデスメタルの闇を切り裂きながら疾走するピュア・テクニカルデスメタルアルバム。

For Fans of : Origin

 

 

 

Behold the Arctopus – Hapeleptic Overtrove

前作『Skullgrid』から13年振りとなるセカンドアルバム。『Skullgrid』はBlack Market Activitiesからリリースされた事もあり、当時のデスコアやカオティックカードコア/グラインドコアシーンからも高く評価され、特にColin Marstonが奏でる12弦ギターのアヴァンギャルドなタッピングフレーズが話題になった。

本作からドラマーにPsyopusのJason Bauers、ギタリストにnader SadekのライブメンバーだったMike Lernerを加えたトリオ体制で制作されている。従来のテクニカルデスメタルや、Colinが得意としてきたエクスペリメンタル/アヴァンギャルドなスタイルは常軌を逸し、このアルバムはここ数年リリースされたテクニカルデスメタル作品の中でも異端なものだ。Jasonのドラミングは通常のドラムセットとは違い、ドラムパーカッションが主体。そしてColinもリフは刻まず、ひたすらにタッピングでグルーヴを生み出していく。そのサウンドはアルバムから先行公開されたシングル「Blessing In Disgust」へのファンのコメント”Tom and Jerry Metal”と形容されていたが、まさにその通り。非常に挑戦的な作品であるが、テクニカルデスメタルが日々、そのテクニックを持ってして発展していく中でも、後続を圧倒する個性を見せつけた迷作、いや名作。

For Fans of : トムとジェリー、スポンジボブ

 

 

 

Ulcerate – Stare into Death and Be Still

前作『Shrines of Paralysis』から4年振りのリリースとなる6枚目フルレングス。これまでアルバムリリースを手掛けてきたRelapse Recordsを離れ、フランスのブラックメタルレーベルから発表された本作は、ヘヴィな轟音が鳴り響くミッドテンポなブラッケンド・デスメタルであるが、それを鳴らすメンバー達の超絶技巧こそこのアルバムの一番の聴きどころだ。このアルバムをテクニカルデスメタルとして聴くとき、やはりドラマーJamieのプレイが印象的だ。彼はソングライティングからレコーディング時のエンジニアリング、ミックス/マスタリングまでを務めるスタジオミュージシャンでもあり、幻惑的なUlcerateのヴィジュアルイメージを担ってきたアートワークも手掛けている多彩な人物だ。ミッドテンポであることは、この手のドラマーにとってはいかに音数を詰め込むかというところがそのドラマーのテクニックを知るひとつになると思うが、Jamieはストップ&ゴー、というか緩急のあるテクニカル・スタイルがハイセンスだ。プログレッシヴなギタープレイと高貴にすら聴こえるベースラインすべてが折り重なり表現されるUlcerateの世界観は唯一無二だ。

 

For Fans of : Portal、Imperial Triumphant、Gigan

 

 

 

Defeated Sanity – The Sanguinary Impetus

前作『Disposal of the Dead // Dharmata』から4年振りのリリースとなった6枚目フルレングス。現在のDefeated Sanityはトリオ体制で、ObscuraのライブメンバーでもあったベーシストJacob、2016年に加入したJash、そして唯一のオリジナルメンバーでありドラムとギターを兼任するLilleの3人。アルバムリリース後のインタビューで、Lillieは94年の結成時、当時12歳だった自身が想像したテクニカルデスメタル/ブルータルデスメタルとジャズ/フュージョングルーヴの融合が本作で実現する事が出来たと話していて、これまでにリリースしたDefeated Sanityの作品の中でも一番気に入っているという。

このインタビューを聞いてから、改めてLillieのドラミングに着目して作品を聴いてみると、結成から20年以上のキャリアから繰り広げられる老練のドラミングに凄まじさを改めて感じる事が出来た。Jacobのベースラインと絶妙に絡み合いながら、グルーヴの拍を切り刻むように叩き込まれるシンバルワークは他ではあまり聴いた事がない。ジャズっぽさやフュージョンっぽさというのはあくまでグルーヴの根幹にあり、そのサウンドはアグレッシヴなテクニカルデスメタル/ブルータルデスメタルそのものだ。ぜひ彼らの超絶技巧をまたステージで味わいたい。

 

For Fans of : 初期Cryptopsy、7 H. Target、Deeds of Flesh

 

 

 

Xenobiotic – Mordrake

2018年にリリースしたデビューアルバム『Prometheus』から約2年振りに発表したセカンドアルバム。前作はUnique Leader Recordsから再発された事もあり、テクニカルデスメタル/ブルータルデスメタル・リスナーにもその名を広めたが、デスコアシーンでの人気が高い印象がある。

本作からI Shall DevourのベーシストDavid Finlay、ドラマーMikey Godwinが加入。大迫力のドラミングによってドラマ性に磨きがかかり、ブレイクダウンの破壊力は倍増。アトモスフェリックなアレンジはプログレッシヴ・メタルやブラックメタルリスナーにもリーチできるXenobioticの魅力のひとつと言えるだろう。やはりテクニカルデスメタルとして聴くと若干の物足りなさはあるものの、ブラッケンド・デスコアとテクニカルデスメタルの架け橋としての存在感という意味では重要なポジションを担うバンドになるだろうと思う。

 

For Fans of : Fallujah、Fit For An Autopsy、Lorna Shore

 

 

 

 

Edenic Past – Red Amarcord

Behold The ArctopusやGorgutsでの活動で知られるColin Marstonがギターを務めるトリオ。ベース/ドラム・プログラミングはAstomatousのNicholas McMaster、ボーカルはColin、Nicholasそれぞれをサイドプロジェクトを持つPaulo Henri Paguntalanだ。

今年、Colinの多作っぷりは凄かった。Behold The Arctopusもそうだし、Encenathrakh、Indricothereも新作を出していて、ノイズ系のプロジェクトも合わせれば、優に10枚以上はアルバムを出している。

このプロジェクトは今年Colinが携わった中でも最もピュアなテクニカルデスメタル作品で、打ち込みとはいえ、変拍子グルーヴがしっかりしていて、アヴァンギャルドな転調パートも個性的。デプレッシヴなメロディもガテラルと親和性が高く、Edenic Pastとしてのオリジナリティも確か。

 

For Fans of : Defeated Sanity, Encenathrakh

 

 

 

 

Fawn Limbs – Sleeper Vessels

Geometric Noise / Mathematical Chaosを自称するトリオ、Fawn Limbsのセカンドアルバム。ボーカル/ギターを担当するEeli Helinにはノイズもクレジットされているのがポイント。Fawn LimbsのサウンドはCar BombやFrontiererを彷彿とさせる爆速爆テク系マスコアですが、そこにThe Dillinger Escape Plan的な狂気やMeshuggah的Djentグルーヴもある。かなりヘヴィでアルバム再生してすぐに開いた口がふさがらない状態になってしまうレベル。Car Bombほどやりすぎ感もなく、しっかりとグルーヴもあり聴きやすい。テクニカルデスメタルというとしっくりこないかもしれないが、普段マスコアを聴かないリスナーもハマってしまう要素がある。

 

For Fans of : Car Bomb、Frontierer、Meshuggah