サウンドプロダクションに関しては、D.I.Y.メタルコアのスタンダードとも言えるレベルであるが、やはりソングライティングにおいて抜群のセンスを持っているように感じる。イントロ開けのオープニングトラック「Collapse」は、2010年代中期を思わせるメランコリックなメロディとの相性が良い激情系メタルコア・グルーヴがたまらない1曲で、続く「Animals」も同じく素晴らしい。2000年代後半からポストハードコア〜メタルコアまで追いかけているリスナーにはBreakdowns At Tiffany’sは2020年においてとても貴重な存在なのかもしれない。お世辞抜きで今年かなり聴いたし、需要があれば来日に向けて動きたいなと思う。
Thrones
Collapse
Animals
Tremors
Cold Sweat
Two Thousand Fears
Messenger
Into The Abyss
Eternal Lords
8643
Domestic Horrors
A Serpent’s Tongue
Unraveled
ローの効いたリフを鋭く刻みながら、ニューメタル譲りのエレクトロニックなアレンジでシリアスな雰囲気を醸し出すのが彼らの持ち味。本作も冒頭「A Quiet Place to Die」もAlpha Wolfらしさに溢れており、続く「Creep」やミュージックビデオにもなっているリードトラック「Akudama」もこれまでAlpha Wolfが追い求めてきたスタイルの最高傑作であるように感じる。
01. A Quiet Place to Die
02. Creep
03. Golden Fate; Isolate
04. Akudama
05. Acid Romance
06. Rot in Pieces
07. Bleed 4 You
08. Ultra-Violet Violence
09. The Mind Bends to a Will of Its Own
10. Restricted (R18+)
11. Don’t Ask…
毎日のように世界中から新しいバンドが登場し、まるで戦場のように新しいサウンドが誕生していながら、August Burns Redは長年安定したメンバーラインナップで、コンスタントにアルバムを作り続けている。それは2020年世界を襲ったパンデミックでも変わらなかった。変わり続けていく中で、ジャンルでは形容できないサウンドを作り上げていくことは、例えばBring Me The Horizonが顕著であると思うが、シーンのトップを行くバンドの典例だ。しかしAugust Burns Redはメタルコアというサウンドのスタンダードを鳴らし続け、大きくスタイルチェンジする事もなく、今もファンベースを拡大し続けている。長年のファンや彼らに憧れるミュージシャンの多くがAugust Burns Redの変わらない魅力に魅了されている事は間違いない。
前作『The Sin and the Sentence』から3年振りのリリースとなったTriviumの9枚目フルレングスは、これまでと同じRoadrunner Recordsから発売された。1999年のデビュー以来、オーバーグラウンド・メタルシーンを牽引し続けてきた彼ら。個人的にはやはりリアルタイムで衝撃を受けたアルバム『将軍 (Shogun)』のイメージのままであったが、以降もリリースがあればチェックしてきた。
ほとんどの楽曲がミュージックビデオになっているが、特に良いのがアルバムタイトルトラック「What The Dead Men Say」。数万人規模のスタジアムで鳴らされるようなメタルでありながらも、しっかり聴くとデスメタリックであり、オールドスクールなメタルコアだ。As I Lay Dyingを彷彿とさせる「The Defiant」など、幅広いメタルリスナーが楽しめるアルバムであり、コアなメタルリスナーも満足感が得られる1枚であると思う。
1. IX
2. What the Dead Men Say
3. Catastrophist
4. Amongst the Shadows and the Stones
5. Bleed into Me
6. The Defiant
7. Sickness unto You
8. Scattering the Ashes
9. Bending the Arc to Fear
10. The Ones We Left Behind
本作のリードトラック「A Flag To Wave」は現在のCurrentsのポテンシャルを100%発揮した楽曲で、ブラストビートを交えながらタイトに叩き込むJeffのドラミング、プログレッシヴなエレメンツも飲み込みながらもセンチメンタルなフレージングを多用するギターサウンド、そして何と言ってもメロディック・シャウトからクリーンまでこなすBrianのボーカルが素晴らしい。
驚いたのはデスコアにも匹敵するようなヘヴィネスとメロディが共存する「Poverty of Self」だ。重厚なヘヴィネスもメロディックハードコアの叙情性も、すべてメタルコアのフィルターを通して表現できているところにセンスを感じる。Crystal Lakeが好きなら間違い無くハマると思う。
1 Never There
2 A Flag To Wave
3 Poverty Of Self
4 Monsters
5 Kill The Ache
6 Let Me Leave
7 Origin
8 Split
9 Second Skin
10 How I Fall Apart
今年結成10年目を迎えたカリフォルニア出身Kingdom of Giantsの、2017年にリリースしたアルバム『All The Hell You’ve Got To Spare』から3年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。2014年から在籍したInVogue Recordsを離れ、新たにSharpTone Recordsと契約している。
過去にもキーボーディストが在籍していた記憶があるが、本作から6人体制となり、新たにJulian Perezが加入している (その他にもメンバーチェンジあったと思います)。その影響はしっかりサウンドにも表れており、ミュージックビデオにもなっている「Night Shift」は現在のKingdom of Giantsを象徴するような楽曲と言える。Architectsを彷彿とさせるメタルコアをベースに、鋭くヘヴィなリフワークとJohnnyとDanaのクリーン/シャウトのコントラスト、そしてビデオのヴィジュアルイメージを上手く表現したかのようなネオンライトとの親和性ばっちりなシンセフレーズもハイセンス。続く「Sync」や「Wayfinder」も新しいKingdom of Giantsの魅力が感じられる良曲だ。語弊を恐れずに言えば、ゴリゴリなBring Me The Horizon。文句なしでKingdom of Giants史上最高傑作!
トラックリストを見るだけでも凄いが、これだけ個性的なミュージシャンが参加しているにも関わらず、すべての楽曲が間違い無くDeeds of Fleshの楽曲なのも凄い。前作『Portals to Canaan』の延長線上にあるサウンドをベースにしながら、『Path of the Weaking』、『Mark of the Legion』をリリースした90年代後期のDeeds of Fleshを彷彿とさせるクラシカルな良さもある。2000年代後半からのDeeds of Fleshサウンドの要になってきたCraigのプログレッシヴなギターフレーズはやや控えめであるが、彼らしいプレイも散見される。特に「Ethereal Ancestors」後半のギターソロはテクニカルデスメタル史上最も美しいギターソロだと思う。全曲味わい深く、間違い無く2020年を代表するテクニカルデスメタルの傑作。これからDeeds of Fleshがどのように活動していくのか、もしくはこれが事実上最後の作品なのかは分からないが、Deeds of Fleshの歴史において今後永遠に語り継がれていく作品になることは間違いない。この作品を完成させたDeeds of Fleshに関わる全てのミュージシャン、クリエイター達に感謝。
2017年に加入したドラマーAnthony BaroneはThe FacelessやWhitechapelのライブドラマーとして活躍し、近年ではAegaeonやShadow of Intentといったテクニカルデスコアシーンで活躍してきた人物。高いレベルが要求されるBeneath the Massacreのサウンドを牽引するようにしてハイスピードなブラストビートを繰り広げ続けていく。それに食らいつく、というと語弊はあるが切れ味鋭いカミソリリフと攻撃的なギターソロをプレイするChrisも凄まじい技術を持っている。
For Fans of : Despised Icon、Thy Art is Murder、Infant Annihilator
Imperial Triumphant – Alphaville
前作『Vile Luxury』からおよそ2年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。Gilead MediaからCentury Media Recordsへ移籍、いわばメタル・オーバーグラウンドでのデビュー作とも言える本作は、テクニカルともアヴァンギャルドともブラックとも言えないImperial Triumphantの世界観を確立した作品だ。そして何よりこれほど難解な作品はCentury Media Recordsからリリースされ、2020年のトップ・メタルアルバムのリストに選出されまくっているのだから凄い。
本作からドラマーにPsyopusのJason Bauers、ギタリストにnader SadekのライブメンバーだったMike Lernerを加えたトリオ体制で制作されている。従来のテクニカルデスメタルや、Colinが得意としてきたエクスペリメンタル/アヴァンギャルドなスタイルは常軌を逸し、このアルバムはここ数年リリースされたテクニカルデスメタル作品の中でも異端なものだ。Jasonのドラミングは通常のドラムセットとは違い、ドラムパーカッションが主体。そしてColinもリフは刻まず、ひたすらにタッピングでグルーヴを生み出していく。そのサウンドはアルバムから先行公開されたシングル「Blessing In Disgust」へのファンのコメント”Tom and Jerry Metal”と形容されていたが、まさにその通り。非常に挑戦的な作品であるが、テクニカルデスメタルが日々、そのテクニックを持ってして発展していく中でも、後続を圧倒する個性を見せつけた迷作、いや名作。
For Fans of : トムとジェリー、スポンジボブ
Ulcerate – Stare into Death and Be Still
前作『Shrines of Paralysis』から4年振りのリリースとなる6枚目フルレングス。これまでアルバムリリースを手掛けてきたRelapse Recordsを離れ、フランスのブラックメタルレーベルから発表された本作は、ヘヴィな轟音が鳴り響くミッドテンポなブラッケンド・デスメタルであるが、それを鳴らすメンバー達の超絶技巧こそこのアルバムの一番の聴きどころだ。このアルバムをテクニカルデスメタルとして聴くとき、やはりドラマーJamieのプレイが印象的だ。彼はソングライティングからレコーディング時のエンジニアリング、ミックス/マスタリングまでを務めるスタジオミュージシャンでもあり、幻惑的なUlcerateのヴィジュアルイメージを担ってきたアートワークも手掛けている多彩な人物だ。ミッドテンポであることは、この手のドラマーにとってはいかに音数を詰め込むかというところがそのドラマーのテクニックを知るひとつになると思うが、Jamieはストップ&ゴー、というか緩急のあるテクニカル・スタイルがハイセンスだ。プログレッシヴなギタープレイと高貴にすら聴こえるベースラインすべてが折り重なり表現されるUlcerateの世界観は唯一無二だ。
For Fans of : Portal、Imperial Triumphant、Gigan
Defeated Sanity – The Sanguinary Impetus
前作『Disposal of the Dead // Dharmata』から4年振りのリリースとなった6枚目フルレングス。現在のDefeated Sanityはトリオ体制で、ObscuraのライブメンバーでもあったベーシストJacob、2016年に加入したJash、そして唯一のオリジナルメンバーでありドラムとギターを兼任するLilleの3人。アルバムリリース後のインタビューで、Lillieは94年の結成時、当時12歳だった自身が想像したテクニカルデスメタル/ブルータルデスメタルとジャズ/フュージョングルーヴの融合が本作で実現する事が出来たと話していて、これまでにリリースしたDefeated Sanityの作品の中でも一番気に入っているという。
For Fans of : Fallujah、Fit For An Autopsy、Lorna Shore
Edenic Past – Red Amarcord
Behold The ArctopusやGorgutsでの活動で知られるColin Marstonがギターを務めるトリオ。ベース/ドラム・プログラミングはAstomatousのNicholas McMaster、ボーカルはColin、Nicholasそれぞれをサイドプロジェクトを持つPaulo Henri Paguntalanだ。
今年、Colinの多作っぷりは凄かった。Behold The Arctopusもそうだし、Encenathrakh、Indricothereも新作を出していて、ノイズ系のプロジェクトも合わせれば、優に10枚以上はアルバムを出している。