日本のメタルコアを象徴するバンド、Sailing Before The WindとSable Hillsが、遂にタッグを組んだ。2024年1月28日、東京・渋谷club asiaにて、この2組がキュレーションするイベント「One Bullet Left」が開催される。国内外から選抜されたアーティスト達によって繰り広げられる熱演を想像するだけでも、このイベントが日本のメタルコア・シーンにとって、重要なものであることが分かるだろう。
多くの国内アーティスト達がメタルコアを通過しながら、日本が産んだ「ラウドロック」というジャンル、あるいはカテゴリーの独自性をヒントに世界のメタル・シーンへと舵を進める中、Sailing Before The WindとSable Hillsは、実直に「メタルコア」という音楽の根底に流れるピュア・ブラッドを見つめ続け、時代の流れやトレンドに惑わされることなく、リフを刻み続け、眩しいほど輝きを放つメロディを磨き続け、生き物のようにうねるグルーヴを追い求め、汗と涙を流してきた。Sailing Before The Windは荒れ狂うインターネットの大海原を巧みに乗りこなし、国内外にファンベースを拡大しながらその名を浸透させ、Sable Hillsは日本を飛び出し、いくつものチャンスを確実に掴み、年齢、人種問わず多くのメタルコア・ファンのハートを撃ち抜いてきた。
その両バンドの”確かな目”によってキュレーションされる「One Bullet Left」には、Nocturnal Bloodlust、Earthists. A Ghost Of Flare、Changeless、そしてアメリカからAcross The White Water Towerが出演する。これらのアーティスト達に宿る”独自性”は、まごう事なきピュア・メタルコア・ブラッドを軸に発展させてきたものだ。このイベントを通して彼らのステージを楽しめば、言葉に出来ないメタルコア・スピリットのアトモスフィアを体感できるはずだ。
RIFF CULTでは、この度始まった「One Bullet Left」の記念すべき第1回目の開催まで、Sailing Before The Wind、Sable Hillsの2組の核心に迫るコンテンツを発信していく。個々の音楽志向やこれまでの活動を振り返りながら、日本のメタルコアを牽引していくパワーの源を解き明かしていく。
【公演概要】
One Bullet Left
開催日:2024年1月28日(日)
会場:東京 渋谷 clubasia / 開場 14:00 開演 14:30
前売券:3,800円 (ドリンク別) / U-20割(20歳以下)前売券:2,000円 (ドリンク別) https://eplus.jp/onebulletleft
【出演】
SABLE HILLS
Sailing Before The Wind
Nocturnal Bloodlust
Earthists.
Across The White Water Tower (USA)
A Ghost Of Flare
Changeless
RIFF CULTでは、Spotifyを利用して最新のメタルコアの楽曲をまとめた「All New Metalcore 2023」というプレイリストを作成し運営しているのですが、2023年の上半期だけで1,000曲以上がリストインしており、デイリーチェックしないと全ての楽曲、ましてやアルバムやEPなどをチェックするというのは難しい。そして、どれだけ優れたテクニックやメロディがあったとしても、聴かれなければ意味がない。聴いてもらうために、そして見つけてもらうためにも現代メタルコアには、唯一無二の個性が必要だ。
藤井風など現行シーン〜シティポップ、アニソンまでを一括りにした「J-POPに取って代わる新しいワード」として「Gacha Pop」というキーワードが誕生したのは記憶に新しい。J-POPというカテゴリーは日本の多様な音楽を一括りにまとめるには窮屈だし、世界のトレンドと別で発展する日本の音楽を表現する言葉として「Gacha Pop」はアリなのかもしれない。ガチャガチャした感じというのは日本のポップスだけに言えることではなく、メタル〜メタルコアにも当てはまるだろう。Fear, and Loathing in Las VegasからBABYMETALまで、多様な音楽の影響を混ぜ合わせる、というか“ガチャガチャと詰め込んだ“ものが刺激的で面白いとメタル・シーンでも評価されてきた。今では世界を飛び回るPaleduskも「Gacha Metal」と言えば腑に落ちる感じがする。
Paledusk 「I’m ready to die for my friends feat. VIGORMAN」
その人気はとどまることを知らず、この夏、海外へと飛び出し大規模フェスで熱狂の渦を巻き起こしているPaledusk。そんなライブ映像を眺めていると、彼らがメタルコア・バンドの枠に収まっていたのが遠い昔のことのように感じる。ギタリストDAIDAIのクリエイティヴィティはBring Me The Horizonをも刺激して、最新曲「AmEN!」の編曲に参加するなど、もうメタル/ヘヴィ・ミュージックのトップ・クリエイターと言っても過言ではない存在へと成長した。
「I’m ready to die for my friends」はアメリカンロック/ポップスの軽快なギターフレーズから雪崩のようにヘヴィリフが炸裂するパートへと突入したかと思えば、VIGORMANをフィーチャーしたキャッチーなラップパートへと接続。最終的にA Day To Rememberばりのヘヴィ・ポップパンク・ブレイクダウンで全てを爆発させてしまう……これを形容する音楽ジャンルなんてない。聴き終えた後は、奇想天外な結末を迎えた映画を見終わった後の、なんとも言えない胸のざわめきというか、「この結末って何なんだろう」と、誰かと話したくなるあの感じがふつふつと湧いてくる。人は皆、なんだか分からないもの、理解出来ないものに興味関心を掻き立てられる。Paleduskの音楽が一体なんなのか、聴き終えた後のこの満足感はなんなのか、これからも誰にも分からない。それがPaleduskが人々を惹きつける大きなエネルギーになっている。これからもみんなを驚かせ続けて欲しい。
民族音楽の音色とPeriphery、Animals As Leadersを通過したプログレッシヴ・メタルコア/Djentのグルーヴを見事に展開させ、特にシャープなリフワークは聴きごたえがあります。アルバム通じてこの作風ではないのですが、日本でも話題沸騰中のBloodywoodやThe HU辺りハマってる方におすすめです。余談ですが、2018年にRNR TOURSでドイツのTensideというバンドのツアーを手がけた時、同時期に彼らもジャパンツアーを行っていて、1公演一緒にやる予定だったんですが、台風で公演中止に……。結局彼らとは合流できずだったので本当に残念でしたね。次来日する時はビッグになってやってきてくれるはず!
Chris Turner – Psycho (ft. Lauren Babic x Mitchell Rogers)
唯一無二のプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Oceans Ate Alaskaの超個性派ドラマーとして知られるChris Turnerのソロ・プロジェクトが活発。ポップ・シンガーAnne Marieの人気曲「Psycho」のカバーをRed Handed Denialの女性シンガーLauren BabicとVarialsのMitchell Rogersと共に制作。Chrisはこのドラム録音でサンプルもトリガーも使ってないらしく、本当にオーガニックなテクニックでここまでやっちゃうのは凄まじいとしか言いようがないですね……。Djentなブラッシング・リフとChris独特のドラミングの組み合わせが織りなすグルーヴがポップな楽曲でも、ここまでタイトにアレンジ出来るのはChris Turnerだけ。Oceans Ate Alaskaだけでなく、彼のクリエイティヴな姿をソロでも楽しめるのは最高です。
Voyager 「Prince Of Fire」
グローバルな人気を持つオーストラリア出身のプログレッシヴ・メタル・バンド、Voyager。99年から活動を続けるベテランで、がっつり”プログレッシヴ・メタルコア”ではないですが、Djentな香りの中に80年代シンセポップを組み合わせたノスタルジックなサウンドで幅広い人気を持っています。今年に入り「Prince of Fire」と「Promise」の2曲のシングルを発表していますが、この「Prince of Fire」ではブレイクダウンもあり、メタルコア・リスナーにもハマる要素あり。ボーカリストDanny Estrinのカリスマ性も高く、実力以上にその雰囲気で圧倒している感じ。クラシックなプログメタルの美的感覚たっぷりでありながら、現代メタルコアに通ずる創造性も兼ね備えたVoyager、次の新曲も楽しみです。
オーストリアの多弦プログレッシヴ・インスト・ユニット、THeir Dogs Were Astronauntsが2023年5月にニュー・アルバム『Momentum』を発表。「Replica」は先行シングルとして発表されたアルバムのキーリングで、ユニットらしくプログレッシヴでエクスペリメンタルな魅力がたっぷりと詰め込まれた1曲に仕上がっている。ベテラン・プログメタル・バンドがPolyphiaをカバーしたような、懐かしさを新しさが同居する謎めいた雰囲気が全編に渡って味わえる。
YUI : 今回はソーシャルディスタンスという環境を利用したVJ投影による演出表現というのが大きなポイントになっています。イベントのタイトル、「PARALLEL WORLD (パラレルワールド)」にも関係してきますが、自分の中での裏テーマがあって、それは普段僕達が行なっているような、ライブハウスで密集してダイブなどを行なっている世界線がTRUEな世界線だとすると、今回のライブは”ウィルスが世界中に蔓延して、誰もが密集した状態で娯楽が全くできなくなってしまった20XX年のライブ会場で、誰にも見つからないように地下施設で、その時の最新の技術を駆使して特殊な演出をしている世界線”というものを表現していて。それはまさにパラレルワールドで、”IFの世界のライブハウス”を表現しました。全席着席にして、VJを使ってわかりやすいデジタルな雰囲気と近未来な演出というのを行ったのもそのコンセプトに基づいています。
今もまだまだだけど、自分達なりに経験値を積んできて、実際にa crowd of rebellionの丸山獏さんや宮田大作さんとお話する機会も増えてきて、Earthists.も5周年を迎えて腰を据えてお願いできる段階に来たと感じて、今回オファーしました。冒頭の話しに戻りますが、THINGS.がこのイベントで映像を担当してくれなかったら企画を行ってないのと同じで、亮輔くんにオファーを断られたら、別の曲を再録しようと思ってました。