ミニマルなスタイルで話題のテクニカル・デスメタル・バンド”The Zenith Passage”、新ドラマーを迎えて新曲 “Fleshbound Reliquary” &ミュージックビデオ公開

Metal Blade Recordsに所属するプログレッシブ・デス/テックデスバンド The Zenith Passage が、新曲 “Fleshbound Reliquary” をリリースし、あわせてミュージックビデオを公開した。これは、2023年のアルバム『Datalysium』以来となる新音源であり、新ドラマー Maximillian Sepulveda を迎えての初レコーディング作品である。

本作は、プロデューサー/ミキサーに Dave Otero を迎え、バンドのサウンドに磨きをかけた仕上がりとなっている。

ボーカル Derek Rydquist によれば、“Fleshbound Reliquary” は「資源が枯渇しつくした世界で、人間が自身を次代の“生産手段”として見なさざるを得ない存在と化す──そんな世界と存在」を描いた楽曲である。
ギター Justin McKinney は、楽曲について「緻密に繋ぎ合わされたリズム・モチーフがレーザー精度で展開され、伝統的な曲構造の中に収められている」と説明。その構造は主に3拍子で進行し、クライマックスに向けて4拍子への転換を伴うドラマティックな展開となるという。

現在、バンドはサポート帯同中の北米ツアーを間もなく終えようとしており、この新曲のライブ披露も行われている。

THE ZENITH PASSAGE:
Justin McKinney – guitars
Chistopher Beattie – guitars
Brandon Giffin – bass
Derek Rydquist – vocals
Maximillian Sepulveda – drums

“Fleshbound Reliquary” credits:
Music – Justin McKinney
Lyrics – Derek Rydquist
Recording & Production – Justin McKinney
Additional Recording – Max Sepulveda
Mixing & Mastering – Dave Otero at Flatline Studios
Artwork – Shindy Reehal

https://www.metalblade.com/thezenithpassage/

【2024年】テクニカル・デスメタルの名盤 10選 アルバムレビュー

 

▶︎Intro

今年は『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』を出版することが出来ました。『ブルータルデスメタルガイドブック』の出版後、いつかテクニカル・デスメタルの本を出版するときの為に執筆を保留していた作品を改めて聴き直し、ブルータル・デスメタルをはじめとする近接ジャンルとの線引きの為にそれらの歴史も今一度おさらいしたりしながら、余裕を持って作業を進めていましたが、10年以上前から患っている難病の影響もあり、結局ギリギリでの入稿に。なんとか手術の前に全ての作業を終えましたが、詰めの作業のほとんどは入院中の病室で行い、寝静まった病棟の面会室を特別に開けてもらい、身体中に管をぶら下げながら毎晩深夜まで作業。苦しくなったら鎮痛剤を入れてもらえるし、急な発作も対応してもらえる安心感があったからか、普段よりも集中力を高めて作業が出来たので、結果的に良かったのかも、と今では思います。

『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』はその後、無事に出版され、日本全国 (海外にも) 届けられ、大きなミスもなく、売り行きも良いようで、一安心。しばらくはデスメタルを聴く気にはならなかったですが、やはり新譜だけは追いかけたいという気持ちがあり、毎年書いている年間ベスト記事でしっかりチェック。よそに書く原稿ではないし、文字制限もない。本当にそういう感覚でのびのびと今年の下半期にかけて様々アルバムをチェックしましたが……今年はテクデス当たり年でしたね。名作ばかりで最高でした。

色々と、執筆当時の思い出が湧き上がってきてしまうので、このくらいにして、2024年のベスト・テクニカル・デスメタル・アルバムのレビューをまとめていきます。中にはプログレッシヴやアヴァンギャルドに分類されるものもありますが、それらもひっくるめています。

 

▶︎Fleshgod Apocalypse 『Opera』

Country : Italy
Label : Nuclear Blast
Streaming : https://fga.bfan.link/opera

2007年イタリアで結成されたシンフォニック・テクニカル・デスメタル・バンド、Fleshgod Apocalypseの前作『Veleno』以来、約5年振りとなる通算6枚目のスタジオ・アルバム。本作はボーカリストであり、ギター、ベースも兼任するバンドのブレインFrancesco Paoliが、2021年8月に登山中の滑落事故で生死の境を彷徨ったことにインスパイアされて制作されたという。

まず初めに、前作から異なるメンバーラインナップをおさらいしておこう。2010年からピアノ/オーケストレーションを担当するFrancesco Ferriniに加え、2020年からドラマーとしてPosthumous BlasphemerやBelphegor、Decapitated、Vital Remainsのライブドラマーを務めてきたEugene Ryabchenko、Hideous DivinityやDeceptionistに在籍してきた経歴を持つギタリストFabio Bartoletti、そして女性ボーカリストでソプラノ/クリーンを担当するVeronica Bordacchiniが加わり5人体制となっている。アルバムのプロデュースはPaoriとFerriniが担当し、ミックス/マスタリングはJacob Hansenが手掛けた。

ほとんど、多くのリスナーが持っているFleshgod Apocalypleのイメージからかけ離れることのない、シンフォニックなテクニカル・デスメタル・サウンドであるが、音楽的なスケールは他を圧倒する綿密さとダイナミズムを持っており、テクニカル・デスメタルという音楽が持つ魅力の一つである「忙しなさ」という部分がイタリアン・オペラの展開美というところと上手くマッチしており、その融合具合の革新性もシンフォニックを取り入れる広域のメタル・バンドの中でも突出して優れている。例を挙げてみると、「Pendulum」はメロディック・デスメタルにも近しいシンプルなサウンドで幕を開けると、テクニカルなフレーズを飾り付けていくようにして、持ち味を発揮していく。細かなリフを追いかけるピアノの旋律、呼吸する音を差し込み緊張感を高めていくアイデア、本格的なオペラのシンフォニックなメロディ、PaoliとVeronicaのシャウト、クリーン (ソプラノ) の掛け合いによって、まずで演劇のような没入感を生み出していく。特にピアノの使われ方は新鮮で、未来のシンフォニック・スタイルのメタル・シーンに多くのヒントを与えるだろう。

先行シングルとして公開されている「Morphine Waltz」もアルバムの中でキーとなる楽曲と言えるだろう。テクニカル・デスメタルのスピードの中で、幾つものクラシカルな管楽器、弦楽器が生き物のようにして存在感を示し、ドラマ性 (または演劇性) を加速させていく。いわゆる歌物とも言えるようなVeronicaのクリーン・ボーカルのインパクト、キャッチーさも素晴らしく、決してテクニックの博覧会のようなもので終わっていないことを誇示しているかのようである。

オープニングからエンディングまで一つの連なりを感じるかといえば、一つ一つの楽曲に物語があり、その詰め合わせのような作品に仕上がっていると言えるだろう。アルバムタイトルの『Opera』はややシンプルすぎるように感じるが、端的に彼らの現在地がどれほど素晴らしいかとシーンに届けるには、このほかに付けようのないタイトルなのかもしれない。

 

▶︎Ulcerate 『Cutting The Throat Of God』

Country : New Zealand
Label : Debemur Morti Productions
Streaming : https://ulcerate.bandcamp.com/album/cutting-the-throat-of-god

2000年に母体となるBloodwreathを結成してから24年。今では世界中にファンを持つ、ニュージーランドで最も有名なメタル・バンドとしても知られる存在へと成長したUlcerateの前作『Stare into Death and Be Still』から4年振りとなる通算7枚目のスタジオ・アルバム。本作はバンドのオリジナルメンバーでありドラマーのJamie Saint Meratがアートワーク、そしてレコーディング、ミックスを担当し、マスタリングはMagnus Lindbergが手掛けた。

彼らをテクニカル・デスメタルとすることに、ずっと抵抗があったし、『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』にも彼らのレビューは掲載されていない。彼らはプログレッシヴやアヴァンギャルドの文脈で評価されるべき芸術性を持つバンドであり、本作も徹底的にダークで、漆黒よりも黒い世界観を聴覚的に、そしてミュージックビデオという形で視覚的にも表現し、とにかく多くの多様なメタル・リスナーから高く評価されている作品である。そんな作品をテクニカル・デスメタルの眼差しから捉えると言うことは、不可能、ナンセンスであるように感じるが、やはりそう言う視点で聴いてみると、キャリア20年を超えるベテランである彼らのテクニックには驚かされるし、その視点で聴くことも間違っていないと感じさせられる。

観る人によっては非常に耐えがたい、幻覚のようなミュージックビデオとして先に発表されたアルバムのオープニングトラック「To Flow Through Ashen Hearts」は、柔らかく儚げなメロディと共にゆっくりとスタートし、激化していくというUlcerateとその周辺の類似スタイルを持つバンドの典型的なスタイルであるが、こうした楽曲の多くの空白には、聴こえないかのような音の連なり、破壊音などが詰め込まれている。UlcerateのブレインでもあるドラマーJamieの豊かなドラミングはプロダクションとしても素晴らしいが、そうでなかったとしても、やはりこの記事でレビューしている他のテクニカル・デスメタル・バンドには感じられない、技術以上の鳴りがある。

同じくミュージックビデオになっている「The Dawn is Hollow」も楽曲の仕組み自体は同じであり、貫かれてきたスタイルへの自信を感じる。私は今年、持病で大きな手術をしたのだが、医療麻薬の幻覚作用は本当に強烈で、そのタイミングでしか味わえない心地を、最初の手術からそれまでずっと引きずってきた、というかその時を楽しみにしていたのだが、Ulcerateのミュージックビデオに近い、物体が溶けて結合していく感覚が麻薬にはあって、このミュージックビデオらを観るたびに、あの感覚に近づく気がして妙に没入していってしまう。

これほど深く、暗い、テクニカル・デスメタルのアルバムは他にはないだろう。このジャンルで捉えるだけで収まらないポテンシャルを持つバンドであり、それは承知の上であるが、やはり今年聴いた中で、最も素晴らしいと感じた作品の一つ。

 

▶︎Wormed 『Omegon』

Country : Spain
Label : Season of Mist
Streaming : https://wormed.bandcamp.com/album/omegon

スペイン・マドリードを拠点に活動するテクニカル・ブルータル・デスメタル・バンドWormedの前作『Krighsu』からおよそ8年振りとなる4枚目スタジオ・アルバム。2018年にスラッシュメタル・バンドCancerに在籍するドラマーGabriel Valcázar、2021年にギタリストDaniel Valcázarが加入。5人体制となったWormedは、プロデューサーにスラッシュメタルを得意とするEkaitz Garmendiaを起用、ミックス/マスタリングはColin Marstonが担当した。また、これまでのWormed、そして本作のコンセプトの大きな源となっているアートワークは、1998年からベーシストGuillermo Garciaと共にWormedのオリジナル・メンバーとして舵を取るJose Luis Rey Sanchezによってデザインされている。これは、これまでと同じでありアートワークはWormedの音楽と同様に重要な要素である。

これまでのWormedはプログレッシヴなスタイルを大きく打ち出してきたバンドで、ブルータル・デスメタルとしても、テクニカル・デスメタルとしても評価されてきた。本作においては、Sci-Fiというキーワード、他にもCosmic Death Metalなどと形容されるスタイルへと系統した雰囲気がある。類似バンドで言えば、Blood IncantationやVektorといったところから、近しいところで言えば、Rings of Saturn、Coexistenceなども名前があがってくるだろう。これはミックス/マスタリングを担当しているColin Marstonが得意としているスタイルであり、彼はGorgutsのメンバーであり、多くのアヴァンギャルド・デスメタルでプレイするマルチ・インストゥルメンタリストでもあり、Wormedのやりたいこと、作り上げたいものに対する大きな理解があったではと考えられる。

全体的に複雑な構成が貫かれており、楽曲の要と言えるようなキラーフレーズはほとんど存在しない。それはほとんど、このスタイルのバンドに言えることかもしれないが、本作において各パートのテクニック、Sci-Fiなアレンジの新鮮さだけでも聴きごたえはある。ギターリフは、時折スラムやDjentにも接近するほどヘヴィでソリッドなものもあるが、その響き自体はブラックメタル的な感覚がある。不協和音のコードもなく、ピッキング・ハーモニクスといったものも使われていないのは、現代となっては新鮮に聴こえる。最も新しいWormedにおいて素晴らしいのは、ドラマーGabriel Valcázarのジャズに近いプレイスタイルだ。絶妙な揺れ、ノートとズレたシンバルのアクセントは、Wormedサウンドを不気味に、それこそ宇宙的に聴かせる。全体的なまとまりもあり、彼らが作りたいと目指し試行錯誤された展開の痕跡も見られ、聴くたびに面白く、発見がある。

 

▶︎Replacire 『The Center That Cannot Hold』

Country : United States
Label : Season of Mist
Streaming : https://orcd.co/replacirethecenterthatcannotholdpresave

マサチューセッツ州ボストンを拠点に活動するテクニカル・デスメタル中堅、Replacireの前作『Do Not Deviate』から7年振りとなるサード・アルバム。Replacireはファースト、セカンドとBrendon Flynnという素晴らしい画家がアートワークを手掛けてきたが、本作はAndrew TremblayというImperial TriumphantやPestilent Empireなどとの仕事で知られる別の画家にシフト。Andrewはもちろん素晴らしいが、Replacireの持つ世界観のうち、アートワークが占めていた要素はかなり大きいし、今回の変更は残念。

前作からの変更点としてはボーカリストがBlack Crown InitiateやThe Facelessで知られるJames Dortonに変わったことも大きい。彼の加入は、Replacireのサウンドをダンサブルにし、トリッキーなプログレッシヴ・フレーズが増加したことにも影響しているだろう。肌感覚で近いのが、2010年代にマスコア・バンドとしてブレイクし、The Facelessとも交流があっただろうArsonists Get All The Girls。彼らのような、いうなら「変態」も言うようなフレーズの組み合わせに、元来の神秘性を持たせた、一見地味にも聴こえるが実はとても新しいと言えるスタイルのサウンドで全体感が構成されている。この組み合わせのバランスは、Black Crown Initiate的であるとも言えるし、それこそOpethのようなバンドのスタイリッシュな雰囲気にも似ている。Opethも新譜を出したし、その流れでReplacireまだチェックしていない人は聴いてみると面白いだろう。本当にしつこいが、アートワーカーはBrendonが良かった……。

 

▶︎Gigan 『Anomalous Abstractigate Infinitessimus』

Country : United States
Label : Willowtip Records
Streaming : https://gigan.bandcamp.com/album/anomalous-abstractigate-infinitessimus

2006年フロリダ州タンパで結成され、後にシカゴへと拠点を移したアヴァンギャルド/プログレッシヴ・テクニカル・デスメタル・バンド、Giganの前作『Undulating Waves of Rainbiotic Iridescence』から7年振りとなる通算5枚目となるスタジオ・アルバム。バンド名は1972年公開の日本映画「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」から名付けられた。これだけ聞くとやはり、ぜひ日本でフランスのGojiraと日本で一緒にツアーしてもらいたいと思ってしまう。

さて、本作だが前作『Undulating Waves of Rainbiotic Iridescence』と同じラインナップで制作されており、アートワークもほとんど同じコンセプト。サウンドもほとんどぶれていない。初期のGiganに比べると、この2作でGiganは完璧にGigan固有のスタイルを完成させ、それを強烈に表現していると言えるだろう。アヴァンギャルドさは単に忙しなく、トリッキーであるだけでは成立しないし、エクスペリメンタルな不協和音も、あちこちに散りばめるだけではまとまりのない、退屈なアルバムになってしまう。Giganはテクニカル・デスメタルであり、プログレッシヴでアヴァンギャルドなスタイルを、どのようにして組み込むかと言うところへの情熱を加速させ、構造的に分かりやすい不協和音の導入、ドラミングの強度の揺さぶり、全体的なバランス感覚と芸術的な感性を磨き続けているように感じる。中でもオープニングを飾る8分越えの楽曲「Trans-Dimensional Crossing of the Alta-Tenuis」で感じられるGiganの魅力は全編に貫かれている。『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』では彼らについては触れなかったが、彼らのプログレッシヴでアヴァンギャルドなスタイルにおける光り輝く才能はまた別の形で書きたいと思う。

 

▶︎Vale Of Pnath 『Between The Worlds Of Life And Death』

Country : United States
Label : Willowtip Records
Streaming : https://valeofpnath.bandcamp.com/album/between-the-worlds-of-life-and-death

2006年からコロラド州デンバーを拠点に活動するプログレッシヴ/テクニカル・デスメタル・バンドVale Of Pnathの前作『II』以来、8年振りの新作となるサード・アルバム。バンドのブレインであるギタリストVance Valenzuela以外のメンバーが代わり、本作にはVanceと共にAbigail Williamsで活躍したボーカリストKen Sorceron、ドラマーGabe Seeberが加入している。アルバムの制作ラインナップにはクレジットされていないが、ベーシストとしてAnthrocideのAustin Rollaも加入しており4人体制となっている。アルバムではKenがベースを兼任、プロデュースからミックス/マスタリングまでを手掛けている。

重厚なオーケストレーションをまとい、スタイリッシュに引き締まったサウンド・プロダクションは、Willowtip Recordsに相応しい、テクニックとプログレッシヴさが感じられる。ミュージックビデオにもなっており先行シングルとして発表された「Soul Offering」からは、彼らがAbigail Williamsのメンバーであることを思い起こさせるようなシンフォニック/ブラッケンドなオーケストレーションをふんだんにまとい、Lorna ShoreやWorm Shepherdといった現代ブラッケンド・デスコアにも近いブレイクダウンも搭載した、ハイブリッドな楽曲に仕上がっている。しかし、デスコアではなく、メロディック・デスメタルに近い雰囲気がある。これがまた面白い。

アルバム収録の他の楽曲は「Soul Suffering」ほどキャッチーではないにしても、ところどころツボをついてくるフックがたっぷりと組み込まれており、とても聴きやすい。Lorna Shoreなどから更に深いブラッケンド・スタイルのデスメタルに興味を持っている人、またはFleshgod Apocalypseなどからシンフォニック/エピック・メタルといったシーンから、デスメタルに興味を持った人達におすすめしたくなる、中庸的なサウンドが、痒いところに手が届くような、そんなアルバムである。

 

▶︎Deivos 『Apophenia』

Country : Poland
Label : Selfmadegod Records
Streaming : https://deivos.bandcamp.com/album/apophenia

ポーランドのテクニカル・デスメタル重鎮、Deivosの前作『Casus Belli』以来、5年振りとなる通算7枚目のフルアルバム。2024年5月に出版した自著『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』の執筆において、私自身Deivosの魅力に取り憑かれ、すべてのアルバムのレビューを掲載し、インタビューもしたかったがページ数の都合により実現しなかった。

彼らに関しては、ここが他のどのバンドよりも優れている、といったところではなく、やはりテクニカル・デスメタルとしての純粋な輝き、エネルギーがアルバムを通じて溢れているところに好感が持てる。1997年の結成から一度も活動ペースを落とすこともなく、非常に計画的にリリースを続けているし、唯一のオリジナル・メンバーであるTomasz Kołcońも毎回何かアップデートするでなく、トレンドに流されるでもなく、自身のテクニカル・デスメタルを追求し続けている。アルバムごとに明確なコンセプトを打ち出しているわけでなく、淡々と創作し続ける姿勢に魅了されている。アルバムのアートワークが毎回似たようなものが多いのも、逆に良い。

「My Sacrifice」のようにパーカッションを取り入れた (と言っても本当に少し) 実験的なフレーズはあるものの、基本的には全球ストレート、ど真ん中。Morbid Angel的とも言える。中には古臭いと感じるリスナーも多いかもしれないが、これが本当に良質なテクニカル・デスメタルなのだと思ってもらいたい。

 

▶︎Cognitive 『Abhorrence』

Country : United States
Label : Metal Blade Records
Streaming : https://www.metalblade.com/cognitive/

これまでUnique Leader Records に所属していたニュージャージー出身のCognitiveが名門Metal Blade Recordsと契約を発表してから初めてリリースするアルバムは、前作『Malevolent Thoughts of a Hastened Extinction』から3年振りとなる通算5枚目フルレングス。Cognitiveの評価がこれほど高まってきているとは驚きで、Unique Leader Records からMetal Blade Recordsへと移籍するルートはこれまでもあったと思うが、大出世と言えるだろう。前作からメンバーチェンジもなく、レコーディング/ミックスはドラマーのAJ Vianaが手掛け、マスタリングはBart Williamsが担当した。

『Malevolent Thoughts of a Hastened Extinction』のツアー中にはすでに本作の制作をスタートさせ、前作とは違うリフをとにかく書き続けたと言う。AJはドラマーとしての他に、レコーディングエンジニアとしての顔も持っており、HathなどMetal Blade Recordsと共に仕事をする機会もあったそうで、今回のMetal Blade Recordsとの契約は、そうしたAJのエンジニアとしての経験も大いに役立っただろう。

デスメタルのダイナミズムをソリッドに、クリアに打ち出すCognitiveサウンドの要はドラムであり、ギターであり、そしてボーカルでもある。ド派手な転調はないが、じわじわとボルテージを上げながら、火花を上げるようなギターソロを組み込んだサウンドは、やはりアンダーグラウンド・レベルではないと言える。アルバムのタイトルトラックでありミュージックビデオにもなっている「Abhorrence」は非常に優れた楽曲で耳馴染みの良いプロダクションがクセになる。

 

▶︎Carnophage 『Matter Of A Darker Nature』

Country : Turkey
Label : Transcending Obscurity Records
Streaming : https://carnophage.bandcamp.com/album/matter-of-a-darker-nature

2006年からトルコ・アンカラで活動を続けるベテラン、Carnophageの前作『Monument』から8年振りとなるサード・アルバム。この『Monument』がリリースされた2016年に『ブルータルデスメタルガイドブック』を出版したこともあって、あれから8年という時間が経過したことに対する驚きと、彼らが8年と言う間隔でアルバムのリリースを続けていることのシンクロニシティ、共時性に驚きながら、特別な感覚でレビューを書いてみようと思う。

本作のミックス/マスタリングはAlexander Borovykhが担当、彼は近年本当に精力的にブルータル・デスメタル・シーンのあらゆる作品に参加し、デスメタルのオーガニックな重さ、残忍さを大切にした仕事で評価されている。Carnophageのサウンド、特にギターリフのすりつぶされるような音は素晴らしいし、その全体に覆い被さってくるような迫力の中で鮮明にテクニックがわかるドラムのプロダクションも素晴らしい。ダイナミズムを求めるが故に、多くのレイヤーが重ねられる現代の音楽の中で、こういう感覚もまた素晴らしいのだと感じさせてくれる。

アルバムの中でも最も印象的だった楽曲は「Matter Of A Darker Nature」。楽曲構成、中途に差し込まれるクリーントーンのフレーズやベースラインの働きによって魅力を何倍にも放つメロディが心地良い。思わずデスメタルを聴いていることを忘れるような、不思議な感覚がある。Carnophageはこれまで大きなスタイルチェンジを続けてきたバンドではないし、今後もそのような変化には挑戦しないだろうが、そういうバンドの良さと言うのは、こういう形であっても伝えていきたいと思う。

 

▶︎Malignancy 『…Discontinued』

Country : United States
Label : Willowtip Records
Streaming : https://malignancy.bandcamp.com/album/discontinued

1992年ニューヨークで結成されたテクニカル・ブルータル・デスメタルの重鎮、Malignancyの前作『Intrauterine Cannibalism』から5年振りとなる通算5枚目のスタジオ・アルバム。1999年のデビュー・アルバム『Intrauterine Cannibalism』のアートワークに登場した胎内の赤ん坊は、一時期アルバムアートワークから姿を消したが、前作と本作に再び登場している。これをテーマに30年以上楽曲を書き続けることが出来ると言うのが、恐ろしいと思う。そして、これがいくつかのアルバムに渡って貫かれていることに気付いてしまうことにも、なんとも言えない気持ちになる。

本作はオリジナル・メンバーのDanny Nelson、1995年から在籍するギタリストRon Kachnic、2004年から在籍するドラマーMike Hellerの3名と、ゲスト・ベーシストとしてDefeated SanityのJacob Schmidtがレコーディングに参加している。このJacobの参加が本作において非常にポイントで、彼のプレイによってMalignancyが30年以上に渡って鳴らし続けてきたグルーヴに新たな息吹をもたらしている。Mikeのドラミングも細やかなフレーズを随所に差し込み、うねるベースラインと相互に作用しながらMalignancyの世界観を作り出していく。荒っぽいリフと変わらないDannyのガテラルも力強く迫力満点。

Archspire、ドラマーSpencer Prewett 脱退を発表。新たなドラマーをオーディションで募集

カナダ・ブリティッシュコロンビアのテクニカル・デスメタル・バンド、Archspire から、15年間ドラムを務めてきた Spencer Prewett がバンドを離れることが決定し、新しいドラマーを募集し始めた。Archspireは現在、新ドラマーのオーディションビデオを募集している。オーディションに興味のあるドラマーは、ハッシュタグ #archspireaudition をつけてInstagramに動画を投稿して欲しい。 Archspireは今回の件について、以下のようにシェアしている:

「15年以上、素晴らしい活動を共にしたSpencer Prewett が Archspire を脱退することになりました。 何度も世界を旅し、4枚のアルバムをリリースし、それぞれが最大限の情熱と献身で作り上げられたもので、バンドとして成し遂げてきたこと全てを、私たちは大変誇りに思っています。 Spencer Prewett はテクニカル・デスメタルのドラミングの基準を作り上げましたが、それを埋めるのは信じられないほど難しい空白を残すことになりました。

残されたメンバーはバンドの未来に非常に集中しており、Archspireの5枚目のアルバムの制作は継続されます。 現在、新しいドラマーを募集しています。ハッシュタグ#archspireauditionをつけてYouTubeやInstagramにオーディションを投稿してください。 応援ありがとうございます。 Staytech :  Dean, Tobi, Oli, Jared」

シンフォニック・テクデスの重鎮”Fleshgod Apocalypse”、待望のニュー・アルバム『Opera』リリース

イタリアを拠点に活動するシンフォニック/テクニカル・デスメタル・バンド、Fleshgod Apocalypseが待望のニュー・アルバム『Opera』をNuclear Blast Recordsからリリースしました。

SUBSCRIBE to Fleshgod Apocalypse YouTube: https://nblast.de/subs-fa-yt
SUBSCRIBE to Nuclear Blast YouTube: https://nblast.de/subs-nb-yt

バンドにとって6作目となるこのアルバムは、フロントマンのFrancesco Paoliが2021年に登山中に瀕死の重傷を負った事故から深いインスピレーションを得て制作されたという。アルバムのリリースに合わせてバンドは「Morphine Waltz」のオフィシャルビデオを公開。Francesco Paoliは次のようにコメントを発表している :

「”Morphine Waltz”は、幻の曲であり、深い意味を持っている。 この曲は、科学に対する真の賛歌であり、科学こそが重要な唯一の現実であることを改めて証明しているんだ。 しかし、この曲は、我々の新しいラインナップが全く新しいレベルにあることを完璧に示すものでもあり、EugeneとFabioのテクニカル・スキルに加え、Veronicaの驚くべき多才さを示している。 いくつかのシネマティックなミュージックビデオのリリースしてから、我々は、バンドにとって最も重要ではないにしろ、もう一つの本質的な次元であるステージに敬意を表したいと思った。 強烈で本当にシアトリカルなライブ・パフォーマンスを提供することで、私たちはファンと直接、壊れることのない絆を築くことができるんだ。 皆さん、今日がその日だ、 みんな『Opera』へようこそ!」

Italian Symphonic Death Metal giants Fleshgod Apocalypse have unleashed their highly anticipated new album, Opera, available now via Nuclear Blast Records.

The band’s sixth studio effort is deeply inspired by frontman Francesco Paoli’s near-fatal mountain climbing accident in 2021. Today the band releases an official video for “Morphine Waltz”.

Paoli shared the following:

‘Morphine Waltz’, THE visionary song par excellence, has a much deeper meaning, which goes beyond its lysergic atmosphere. It’s actually a true anthem to science, which once again has proved itself to be the only reality that counts.

But this track is also a perfect demonstration that our new line-up is on a whole new level, showcasing Veronica’s amazing versatility besides Eugene’s and Fabio’s insane technical skills.

After a few cinematic music videos, we wanted to pay tribute to another essential, if not the most important, dimension for the band: the stage. Delivering intense and truly theatrical live performances allows us to create a direct, unbreakable bond with our fans. And our upcoming North American tour will be our most theatrical ever.

Folks, today is the day! Let’s not waste any more time with words and let the music speak for itself.

Ladies and gentlemen, welcome to the ‘Opera’!

Nile、ニュー・アルバムから新曲「Under the Curse of the One God」をリリース

テクニカル・デスメタル・バンド、Nile (ナイル)が10枚目のアルバム『The Underworld Awaits Us All』を、2024年8月23日にNapalm Recordsからリリースする。 リリースに先駆けて、彼らはアルバムからの3枚目のシングル「Under the Curse of the One God」を公開した。フロントマンのKarl Sandersは次のように語っている:

「ファンの皆さんにようやく”Under the Curse of the One God”を聴いていただける機会を得て、本当に嬉しく思っています。 この曲は凶暴で残忍なNileのトラックであり、古代の呪いに彩られている。Ingo Sporには、彼のユニークで創造的な映像芸術を駆使して、我々の音楽に冒涜的な生命を吹き込んでくれたことに感謝します」。

『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』購入はこちら

The Underworld Awaits us All, Nile’s new album, drops August 23rd, 2024!
Order your copy here today: https://lnk.to/NILE-TUAUA

Vale of Pnath、まもなくリリースの新作からニュー・シングル「Silent Prayers」リリース

コロラド州デンバーを拠点に活動するテクニカル・デスメタル・バンド、Vale of Pnathは、来たるアルバム『Between The Worlds of Life and Death』からの3枚目のシングル「Silent Prayers」のミュージックビデオを公開しました。ニュー・アルバムは、2024年5月24日にWillowtip RecordsよりCD、レコード、デジタルフォーマットでリリースされることが決定している。

バンドは今回の新曲についてこのようにコメントしている :

「前作『Accursed』から5年。このEPはバンドにとって新たな道であり、スタイル的にはよりブラックなアプローチに傾いたんだ。このEPは、テクデスのバックグラウンドを持つ僕らのファンを次の時代へと導くためのものだと言える。『Between The Worlds of Life and Death』は、『Accursed』で始めたことの延長線上にあるアルバムだ。バンドのコア・サウンドを捉えつつ、このメタル・ブランドに、より新しく大胆なテイクをもたらした。メタル・ファンにとって最も親しみやすいアルバムにしたい。このアルバムを聴いて、すぐにその魅力に引き込まれ、さらに何度もリピートしてもらいたいと思っているよ」。

Impending Annihilation、新曲「Rapidly Destructive Coxarthropathy」配信リリース!

日本を拠点に活動するテクニカル・デスメタル・バンド、Impending Annihilation が、新曲「Rapidly Destructive Coxarthropathy」をGore House Productionsから配信リリースしました。この楽曲は「Idiopathic Osteonecrosis of the Femoral Head 」の収録曲で、Bandcampにてデジタル・アルバムのPre-Orderがスタートしている。

Impending Annihilationが得意とする、いわゆる「ピロデス」は2024年も健在! Origin、Desecravity、Brain Drill、Viraemiaファンは必聴です。

また、彼らの過去作は2024年5月上旬に発売となる『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』にもアルバムレビューが掲載されていますので、併せてチェックしてください!

脇田涼平著『テクニカル・デスメタル・ガイドブック 演奏の肉体的限界に挑む超人達』パブリブより5月発売決定!

世界中の音楽ジャンルをアーカイヴする出版社パブリブのシリーズ「世界過激音楽」の第21弾として、『テクニカル・デスメタル・ガイドブック: 演奏の肉体的限界に挑む超人達』が2024年5月上旬に発売されることが発表された。

306バンド、588作品ものアルバムレビューに加え、ObscuraやDesecravity、PsycropticやGorodといった有名バンドへのインタビュー、さらにテクニカル・デスメタルの概要が一層わかりやすくなる多種多様のコラムが収録されたオールカラー208ページ、充実の内容となっている。もはや「音楽オリンピック」と言っても良いテクニカル・デスメタルの最前線で戦う、ミュージカル・アスリート達の勇姿をご覧下さい。全国の大型書店やネット書店で順次予約がスタート。

予約まとめサイト (Linktree) : https://linktr.ee/riffcultjp

パブリブ公式ホームページ : https://publibjp.com/

Cryptopsy (クリプトプシー)、2023年12月来日決定

カナダのテクニカル・デスメタル・バンド、Cryptopsy (クリプトプシー) が、2023年12月13日 (水曜日) 東京・渋谷STREAM HALL にて来日公演を行うことを発表しました。チケットなどの詳細はこれから発表されるとのこと。さらなる詳細はこちらから発表される。

 

Cryptopsy、11年振りのフル・アルバム『As Gomorrah Burns』9月リリース決定! 先行シングルを公開

驚愕のテクニックが炸裂! Rings of SaturnとBerried Aliveの人気コラボ、続編が公開

テクニカル・デスメタル・バンド、Rings of Saturn (リングス・オブ・サターン)とプログレッシヴ・メタル・プロジェクト、Berried Alive (ベリード・アライブ)が、2018年のコラボレーション「DADS」の続編をついにリリースしました。タイトルは「DADS 2 – BERRYA 51」。この楽曲には、YouTuberであるDjentBeardのソロも収録されている。

 

テクニカル・デスメタルの帝王、Cryptopsyがグルーヴィ&キャッチーな新曲「Flayed The Swine」をリリース

カナダのテクニカル・デスメタル・バンド、Cryptopsy (クリプトプシー)がカムバック・アルバム『As Gomorrah Burns』からのセカンド・シングル「Flayed The Swine」を発表しました。この曲のミュージックビデオが併せて公開されている。ニュー・アルバム『As Gomorrah Burns』は2023年9月8日リリース。

ヴォーカリストのMatt McGachy (マット・マクガシー)は新曲について次のようにコメントしている:

「”Flayed The Swine “は今まで書いたCryptopsyの曲の中で最もキャッチーな曲のひとつだよ。ブルータルであり、重厚なグルーヴ・セクションに満ちている。リリックは、精神的な崩壊、コントロールの完全な喪失に集中している。私たちは皆、暗い意図を持っているが、それを行動に移すことはほとんどないよね。この曲が終わるころには、主人公はそうしなければよかったと思っていることだろう」。

 

 

驚愕のテクニックが炸裂! The Zenith Passageがニュー・アルバム『Datalysium』をリリース

アメリカ・ロサンゼルスを拠点に活動するプログレッシブ・テクニカル・デスメタル・バンド、The Zenith Passage (ザ・ゼニス・パッセージ)が、セカンド・アルバム『Datalysium』をMetal Blade Recordsからリリースしました。このリリースに伴い、「Datalysium」のミュージックビデオが公開されている。

The Zenith Passageはメンバーラインナップを一新。オリジナル・メンバーであるギタリスト/キーボーディスト/バック・ボーカリストのJustin McKinneyに加え、DreamerのギタリストChristopher Beattie、元The FacelessでJohn Frumでも活躍するボーカリストDerek Rydquist、元The FacelessでCynicに在籍するベーシストBrandon Giffinが加入。最初から最後まで容赦ないテクニカル&プログレッシヴなフレーズが炸裂するこのアルバムは、シリアスなアトモスフィア、メロディー、そして移り変わるダイナミクスが完璧な融合されている。オープニングの「The Axiom Of Error」によって華麗に幕を開けると、煽情的で豊かなテクスチャーを持つ「Synaptic Depravation」、ドラマチックで瑞々しく壮大なクロージングを飾る「Datalysium」至るまで、The Zenith Passageはあくなき創造性を発揮し、彼らのサウンドを興味深く、夢中にさせる方向に押し進める。

The Zenith Passage 『Datalysium』

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テクニカル・デスメタル 2023年上半期の名盤 TOP10

テクニカル・デスメタルという音楽ジャンルにとって現代メタル全体の情報量の多さ、そして消費される速さはネックでしかない。圧倒的な演奏技術の高さがあれば必ず評価されるとは限らず、その高いスキルに加え、毎週何百枚とリリースされるメタル・アルバムの中でリスナーやメディアに引っかかるキャッチーさ、ソーシャルメディアでのプロモーション戦略などを兼ね備えていなければ、数ヶ月後には誰も覚えていないし聴かれるチャンスを完全に失うということだってあり得る。

例えばデスコアは、ブレイクダウンのリアクション動画などが数秒でスワイプされていくTikTokなどの縦動画と相性が良く、ジャンルの成熟と現在ソーシャルメディアのトレンドのタイミングがハマって、スタジアム級のステージで演奏するデスコア・バンドが続々登場するほどの盛り上がりを見せている。テクニカル・デスメタルもArchspireのようにソーシャルメディアと相性の良いバンドはジャンルの壁を超えて評価されているが、大体のテクニカル・デスメタルは、数秒の動画では切り抜くことが出来ない魅力を追求していて、アンテナを張っていないと見逃してしまうような情報が多い。テクニカル・デスメタルに特化したソーシャルメディアのインフルエンサーみたいなのがいればいいが、彼らが必要とする情報需要に供給は追いつかないのが現状だろうか。

テクニカル・デスメタルは、次のアルバムまで数十年のブランクが空くなんてザラで、ずっとスタイルを変えず同じことをやり続けているバンドが普通にいる。TikTokもインスタもやってなければ、ミュージックビデオもないなんて珍しいことではない。そういうところをインフルエンサー達はしっかり見ていて、テクニカル・デスメタルの領域に踏み込んでこないのかもしれない (あくまで憶測だが)。

ただ、テクニカル・デスメタルのそういう不器用なところが嫌いじゃないし、別にダサいことじゃない。テクニカル・デスメタルでリッチになりたいと思っているミュージシャンなんてほとんどいないし、毎日違う国で何万人もの前でライブをするためにやってる訳でもない。テクニカル・デスメタルをやってるミュージシャンにとっての最大の目的は「持てる全ての技術を使って、自分たちの作りたい作品を作る」ことだ。テクニカル・デスメタル・リスナーもテクニックの博覧会だけを期待しているだけでなく、歴史の蓄積やメンバーラインナップの変遷なども調べて、とことん作品を味わいたいと思っている。アルバムを何度も何度も聴いて楽しみたいと思っているはずだ。この音楽は決して時代に合わせなくていい音楽だと思う。これだけたくさんのバンドがいるんだから、テクニカル・デスメタルはテクニカル・デスメタルに合わせた時間軸でシーンが動き続けていればいい。

2023年の上半期は、そんなテクニカル・デスメタルをコアに楽しむために聴いておきたい作品がいくつもリリースされたので、紹介していく。Cattle Decapitationはリリースされてすぐに投稿しようと記事を作成していたが、タイミングを逃してしまったので他より異常に長いが、まだ書ききれない魅力があると思っている。

Cattle Decapitation『Terraside』

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カリフォルニア・サンディエゴの巨匠 Cattle Decapitation の、前作『Death Atlas』からおよそ3年振りとなる通算10枚目のフル・アルバム『Terraside』はMetal Blade Recordsからリリースされた。本作のプロデュースは、AllegaeonやArchspire、Cephalic Carnage、The Zenith Passage、Wakeなどを手掛けるDave Oteroで、前作から引き続き共にスタジオワークを行なっている。

アルバム・タイトルの『Terrasite』は“terra-” (ラテン語 = “earth”) + “-sitos” (ギリシャ語= “food”)の造語で、アルバム・カヴァーにも登場する地球を喰らうクリーチャーを意味する。環境への負荷を続けてきた人間が荒廃した世界にこの姿で転生し、いよいよ地球を滅ぼす存在として悪行の限りを尽くす様を表しているそうで、これまでも多くの仕事を共にしたWes Benscoterが担当している。また、上記のCattle Decapitationが長年掲げてきたコンセプトとは別に、2022年4月に急逝した元メンバー Gabe Serbian への追悼の意も込められている。

前作はかなり賛否両論を巻き起こした。テクニカル/プログレッシヴでブルータルなスタイルで反人間中心主義をテーマに環境問題をテーマに取り組んできた彼らが、メロディック・デスメタルへと接近したからである。クリーンパートが導入された楽曲は、シンガーTravis Ryanの新たな魅力の一つと捉えた人もいたが、彼らにそれを期待していないデスメタル・リスナーからはバッシングを喰らっていた。Cattle Decapitationにそれは必要ない、と。

今回もメロディックであるものの、テクニカル/プログレッシヴ・デスメタルを基調としつつ、ブラックメタルのアトモスフィアを取り入れながら、シャープで切れ味鋭いリフをキーとしており、比較的長年のCattle Decapitationリスナーには聴きやすいと思う。ただ、彼らにクリーンパートを求めていないとするなら、「Terrasitic Adaptation」といったアルバムのリードトラックは微妙かもしれない。ただ、「The Insignificants」や「…And the World Will Go on Without You」といったアルバム中盤の楽曲はクラシックなCattle Decapitationの魅力が詰まった楽曲で、頭の楽曲だけで判断せず聴いてみて欲しい。特に「…And the World Will Go on Without You」、「We Eat Our Young」はグラインドな展開の妙にニヤリとしてしまう。

そしてやっぱり歌詞が凄まじい。ここ数年、メンタルヘルスに関する曲ばかりがメタル、特にメタルコア・シーンで増えている。いくつか素晴らしい歌詞があるし、精神疾患が重大な疾患であることは、私も指定難病を持っている身として感じているが、自分たちが生きているこの糞のような社会がどうにかならない限り、人は病み続けていくと思う。

どれだけメンタルヘルスに気を使ったとしても、地獄のような生活をしていたらそれは変わらない。環境保護と経済的な成長を両立させることはこの地球の長年のテーマであるが、Cattle Decapitationは愚かな人間の自己中心的な考えを否定し続け、警鐘を鳴らし続けている。「We Eat Our Young」の歌詞で印象的なフレーズである「Own world we obliterate (=自分たちの世界は自分たちで消し去る)」は、このアルバムを端的に表していて、それはアートワークからもふんわりと感じられるはずだ。この人間中心の地球の行く末、最悪の結末に向かって何も変わらない社会へのヘイトは相当のものであり、それは単なる怒りをぶちまけたものでなく、歌詞としての世界観の芸術性も高く、非常に素晴らしいと思う。ヴィーガン・デスメタルは真っ赤な怒りで塗り固められたものだけでない。その怒りを表現する手段として、彼らはテクニカル・デスメタルを武器にしている。

 

Sleep Terror 『Railroad To Dystopia』

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前作『Above Snakes』から2年という短いスパンでリリースされた本作は、Luke JaegerとMarco Pitruzzellaというタレント性の高いミュージシャンの創造性に限界がないことを証明した、今まで聴いたことのないテクニカル・デスメタルに仕上がっている。カウボーイハットを被った骸骨が印象的なアートワーク、そしてアルバムタイトルからも彼らが目指す路線ははっきりしており、サウンドにもハーモニカ、バンジョー、スチールギターの音色を巧みに絡めながら、これまで誰も作り上げることのできなかったカントリー・ミュージックとテクニカル・デスメタルのクロスオーバーを右とに実現している。

Anachronism 『Meanders』

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2009年スイス・ローザンヌで結成。本作までに2枚のフル・アルバムを発表、本作は女性ギター/ボーカルLisa Voisard、ギタリストManu Le Bé、ベーシストJulien Waroux、ドラマーFlorent Duployerの4人体制でレコーディングを行った。いわゆる「Dissonant Death Metal」に分類される彼らは、ドゥーミーに展開される楽曲に不気味なメロディの霧をしっとりと燻らせながらAnachronismのテクニカル・デスメタルへ聴くものを誘っていく。静かにうねりをあげるドラミングにも注目だ。

 

Metasphæra 『Metasphæra』

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Beyond CreationやEquipoiseでの活躍で知られるベーシストHugo Doyon-Karoutを中心に、ギター/ボーカルTom Heckmann、ギタリストMatthias Wolf、ドラマーJohannes Jochsが集まり始まったMetasphæraのデビュー作。プログレッシヴなリフ映える神秘性の高いメロディック・デスメタルの中で、強烈な煌めきを放つHugoのベースラインが神がかっている。フレッドレス・ベースのクラシカルな響きは、20年代のテクニカル・デスメタルにとって非常にスタンダードなもので、Metasphæraを筆頭に驚くべき才能を持ったニューカマーがこの後も控えていると思うと、テクニカル・デスメタルの未来は明るいなと感じる。

 

Gorod 『The Orb』

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Overpowered Recordsを離れ、自主制作でリリースした7枚目フルレングス。前作『Æthra』で、これまでのスタイルとは違ったジャズ、プログレからの影響を多分に盛り込んだサウンドを作り上げたGorod。更にプログレッシヴの領域へと踏み込み、王道のテクニカル・デスメタルのスタンダードからはかけ離れた境地へと辿り着いた。アルバムのリードトラックでありミュージックビデオにもなっている「The Orb」では、長年のキャリアで培った絶妙なバランス感覚で芸術的なグルーヴを巻き上げていくGorodの現在地を耳から、そして目から感じることが出来るだろう。

 

Hellwitch 『Annihilational Intercention』

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19年振りのアルバムとなった『Omnipotent Convocation』から14年……。本作はPat、J.P.に加え、26歳のドラマーBrian Wilsonを迎えトリオ編成で制作され、地元のプロデューサーJeremy Staskaと共にレコーディングを行なった。デスメタルの進化に抗うかのように、自身のスタイルを全く崩すことなく不気味でクラシックなテクニカル・デスメタルをプレイ。オープニングを飾る「Solipsistic Immortality」から壮絶なテンポチェンジを炸裂させ、誰もがどのようなエンディングを迎えるのか予想不可能なスリルを味わうことが出来る。収録曲「Delegated Disruption」のミュージックビデオが公開されているが、このヴィジュアル、ボーカル、全てが最高としか言いようがない。

Celestial Scourge 『Dimensions Unfurled』

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2022年からノルウェーを拠点に活動を開始した超若手。本作は同郷のデスメタル中堅Blood Red ThroneのドラマーKristofferとベーシストStian、FilthdiggerのボーカルEirik、ゲスト・ギタリストとしてWormholeやEquipoiseで活躍するSanjay Kumarが参加しレコーディングしたデビュー作だ。きめ細やかなドラミングと次第に存在感を増すベースライン、バランス良く配置されたスラム・パートが上質な作りの良さを浮き彫りにする。「Moon Dweller」で顔を覗かせるスラッシュ・メタルからの影響も見逃せない彼らの魅力だろう。

 

Triagone 『Sem Papyrvs』

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2019年ベルギー・ブリュッセルで結成。女性ボーカリストLoreba Moraes、ボーカルも兼任するギタリストのLou-IndigoとLucas、ベーシストLéo、ドラマーLorenzoの4人で制作された本作は、彼/彼女らのデビュー作。終始ミドルテンポで押し続けるスタイルでありながら、奇想天外なリフとドラムパターンが蠢き続けるのがTriagone流。共にリードボーカルを取るLorebaとLou-Indigoの掛け合いも独特。収録曲「Ad Mortem Sem Papyrvs」はMVになっており彼らの特性を視覚的に感じられる。

 

Carnosus 『Visions Of Infinihility』

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2011年スウェーデン・エーレブルーで結成。ボーカルJonatan Karasiak、ギタリストのMarcus Jokela NyströmとRickard Persson、ベーシストMarcus Strindlund、ドラマーJacob Hednerで、デビュー作『Dogma of the Deceased』から3年を経て本作を完成させた。メロディックなリフを追随するかのようなガテラルは時に人間離れしたデモニックなシャウトも交え存在感抜群。初期はデスラッシュをやっていたことも感じられる、最新型Carnosusの名刺代わりとも言える快作。

 

Cause N Effect 『Validation Through Suffering』

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フランスのHenkerに在籍していたギター/ボーカルStef、Human VivisectionのベーシストSonny、ドラマーDriesによるトリオのデビュー作 (バンド自体はベルギーを拠点としているそうだ)。デスコアの影響を感じさせるダンサブルな2ステップ・パートやブレイクダウンを交えながら、超絶技巧のタッピング・フレーズやプログレッシヴなアトモスフィアなども組み込んだハイブリッドなスタイルだが、すっきりとしたサウンドプロダクションでアルバムとしての完成度は高い。Deeds of FleshからArshspireまで飲み込み昇華した新世代テクデスのダークホース的存在と言えるだろう。

 

Moloch 『Upon The Anvil』

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2012年ミネソタ・ホプキンズで結成。ギター/ボーカルのRick Winther、フレッドレスベーシストBen Peterson、ドラマーErik Sullivanのトリオ編成を取り、デビューEP『Cleansed by Fire』から8年の時を経て本作を完成させた。弦楽器陣を置いてけぼりにするように猛進を続けるドラミングの重々しさになんとか食らいつくデスメタリックなリフ、その様相はまるで戦争のように忙しなく、ダークだ。さりげない存在感でネオクラシカルの香りをまとわせるBenのプレイも時に感情剥き出しに暴れ回るので面白い。

 

Cryptopsy、11年振りのフル・アルバム『As Gomorrah Burns』9月リリース決定! 先行シングルを公開

カナダのテクニカル・デス・メタル・バンド、CRYPTOPSYが10年以上ぶりとなるフル・アルバム『As Gomorrah Burns』を9月8日にNuclear Blast Recordsからリリースする。そしてアルバムから待望の先行シングル「In Abeyance」のミュージックビデオが公開された。

ヴォーカルのMattはこのアルバムについてコメントを発表している。

「ついに『As Gomorrah Burns』を発表できることに興奮しているよ。このアルバムは5年間かけて作り上げたものだ。綿密な努力の賜物であり、誇りに思っている。オールドスクールなCRYPTOPSYに現代的なひねりを加えた完璧な仕上がりさ。グルーヴに重点を置き、リフには過去数作のリリースよりも少しだけ新しい息吹を吹き込んだ。CRYPTOPSYの新しい時代にとても興奮しているよ」。

 

pre-order : https://cryptopsy.bfan.link/in-abeyance.yde

 

The Zenith PassageがMetal Blade Recordsと契約! 新曲「Lexicontagion」をリリース

 

カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点に活動するテクニカル・デスメタル・バンド、The Zenith Passageが Metal Blade Recordsとの契約を発表し、7月21日に新しいスタジオ・アルバム『Datalysium』をリリースすることを発表しました。このアルバムから先行シングル「Lexicontagion」のミュージックビデオが公開されています。MeshuggahやCynicがクロスオーバーされたようなサウンドは、ArchspireやThe Facelessのファンなら必聴だろう。

 

 

Pre-Order : https://www.metalblade.com/thezenithpassage/

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CryptopsyがNuclear Blast との契約を発表! ニュー・アルバムを制作していることが明らかに

 

カナダ出身のテクニカル・デスメタル・バンド、Cryptopsyが、Nuclear Blast Recordsとの契約を発表しました。バンドは現在、2012年のセルフタイトルの作品以来となるニュー・アルバムのリリースを準備していると合わせて発表しています。

 

ボーカルのMatt McGachyは、今回の発表についてコメントを発表。

 

「私たちはNuclear Blastと契約したことに本当にワクワクしています。私たちが大好きなバンドの多くと、私たちの友人の多くが、Nuclear Blastからキラーアルバムをリリースしています。2012年に、私たちは所属していたレーベルを離れ、インディーズになりましたが、2023年現在、私たちは最も影響力のあるメタル・レーベルのひとつと手を組むことにしました。我々は世界最高のメタルアクトと一緒に紹介されることを熱望しており、Nuclear BlastのアーティストとしてCryptopsyの次の時代を披露することを待ち遠しく思います」。

 

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