2000年に母体となるBloodwreathを結成してから24年。今では世界中にファンを持つ、ニュージーランドで最も有名なメタル・バンドとしても知られる存在へと成長したUlcerateの前作『Stare into Death and Be Still』から4年振りとなる通算7枚目のスタジオ・アルバム。本作はバンドのオリジナルメンバーでありドラマーのJamie Saint Meratがアートワーク、そしてレコーディング、ミックスを担当し、マスタリングはMagnus Lindbergが手掛けた。
観る人によっては非常に耐えがたい、幻覚のようなミュージックビデオとして先に発表されたアルバムのオープニングトラック「To Flow Through Ashen Hearts」は、柔らかく儚げなメロディと共にゆっくりとスタートし、激化していくというUlcerateとその周辺の類似スタイルを持つバンドの典型的なスタイルであるが、こうした楽曲の多くの空白には、聴こえないかのような音の連なり、破壊音などが詰め込まれている。UlcerateのブレインでもあるドラマーJamieの豊かなドラミングはプロダクションとしても素晴らしいが、そうでなかったとしても、やはりこの記事でレビューしている他のテクニカル・デスメタル・バンドには感じられない、技術以上の鳴りがある。
同じくミュージックビデオになっている「The Dawn is Hollow」も楽曲の仕組み自体は同じであり、貫かれてきたスタイルへの自信を感じる。私は今年、持病で大きな手術をしたのだが、医療麻薬の幻覚作用は本当に強烈で、そのタイミングでしか味わえない心地を、最初の手術からそれまでずっと引きずってきた、というかその時を楽しみにしていたのだが、Ulcerateのミュージックビデオに近い、物体が溶けて結合していく感覚が麻薬にはあって、このミュージックビデオらを観るたびに、あの感覚に近づく気がして妙に没入していってしまう。
スペイン・マドリードを拠点に活動するテクニカル・ブルータル・デスメタル・バンドWormedの前作『Krighsu』からおよそ8年振りとなる4枚目スタジオ・アルバム。2018年にスラッシュメタル・バンドCancerに在籍するドラマーGabriel Valcázar、2021年にギタリストDaniel Valcázarが加入。5人体制となったWormedは、プロデューサーにスラッシュメタルを得意とするEkaitz Garmendiaを起用、ミックス/マスタリングはColin Marstonが担当した。また、これまでのWormed、そして本作のコンセプトの大きな源となっているアートワークは、1998年からベーシストGuillermo Garciaと共にWormedのオリジナル・メンバーとして舵を取るJose Luis Rey Sanchezによってデザインされている。これは、これまでと同じでありアートワークはWormedの音楽と同様に重要な要素である。
これまでのWormedはプログレッシヴなスタイルを大きく打ち出してきたバンドで、ブルータル・デスメタルとしても、テクニカル・デスメタルとしても評価されてきた。本作においては、Sci-Fiというキーワード、他にもCosmic Death Metalなどと形容されるスタイルへと系統した雰囲気がある。類似バンドで言えば、Blood IncantationやVektorといったところから、近しいところで言えば、Rings of Saturn、Coexistenceなども名前があがってくるだろう。これはミックス/マスタリングを担当しているColin Marstonが得意としているスタイルであり、彼はGorgutsのメンバーであり、多くのアヴァンギャルド・デスメタルでプレイするマルチ・インストゥルメンタリストでもあり、Wormedのやりたいこと、作り上げたいものに対する大きな理解があったではと考えられる。
マサチューセッツ州ボストンを拠点に活動するテクニカル・デスメタル中堅、Replacireの前作『Do Not Deviate』から7年振りとなるサード・アルバム。Replacireはファースト、セカンドとBrendon Flynnという素晴らしい画家がアートワークを手掛けてきたが、本作はAndrew TremblayというImperial TriumphantやPestilent Empireなどとの仕事で知られる別の画家にシフト。Andrewはもちろん素晴らしいが、Replacireの持つ世界観のうち、アートワークが占めていた要素はかなり大きいし、今回の変更は残念。
前作からの変更点としてはボーカリストがBlack Crown InitiateやThe Facelessで知られるJames Dortonに変わったことも大きい。彼の加入は、Replacireのサウンドをダンサブルにし、トリッキーなプログレッシヴ・フレーズが増加したことにも影響しているだろう。肌感覚で近いのが、2010年代にマスコア・バンドとしてブレイクし、The Facelessとも交流があっただろうArsonists Get All The Girls。彼らのような、いうなら「変態」も言うようなフレーズの組み合わせに、元来の神秘性を持たせた、一見地味にも聴こえるが実はとても新しいと言えるスタイルのサウンドで全体感が構成されている。この組み合わせのバランスは、Black Crown Initiate的であるとも言えるし、それこそOpethのようなバンドのスタイリッシュな雰囲気にも似ている。Opethも新譜を出したし、その流れでReplacireまだチェックしていない人は聴いてみると面白いだろう。本当にしつこいが、アートワーカーはBrendonが良かった……。
2006年フロリダ州タンパで結成され、後にシカゴへと拠点を移したアヴァンギャルド/プログレッシヴ・テクニカル・デスメタル・バンド、Giganの前作『Undulating Waves of Rainbiotic Iridescence』から7年振りとなる通算5枚目となるスタジオ・アルバム。バンド名は1972年公開の日本映画「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」から名付けられた。これだけ聞くとやはり、ぜひ日本でフランスのGojiraと日本で一緒にツアーしてもらいたいと思ってしまう。
さて、本作だが前作『Undulating Waves of Rainbiotic Iridescence』と同じラインナップで制作されており、アートワークもほとんど同じコンセプト。サウンドもほとんどぶれていない。初期のGiganに比べると、この2作でGiganは完璧にGigan固有のスタイルを完成させ、それを強烈に表現していると言えるだろう。アヴァンギャルドさは単に忙しなく、トリッキーであるだけでは成立しないし、エクスペリメンタルな不協和音も、あちこちに散りばめるだけではまとまりのない、退屈なアルバムになってしまう。Giganはテクニカル・デスメタルであり、プログレッシヴでアヴァンギャルドなスタイルを、どのようにして組み込むかと言うところへの情熱を加速させ、構造的に分かりやすい不協和音の導入、ドラミングの強度の揺さぶり、全体的なバランス感覚と芸術的な感性を磨き続けているように感じる。中でもオープニングを飾る8分越えの楽曲「Trans-Dimensional Crossing of the Alta-Tenuis」で感じられるGiganの魅力は全編に貫かれている。『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』では彼らについては触れなかったが、彼らのプログレッシヴでアヴァンギャルドなスタイルにおける光り輝く才能はまた別の形で書きたいと思う。
▶︎Vale Of Pnath 『Between The Worlds Of Life And Death』
これまでUnique Leader Records に所属していたニュージャージー出身のCognitiveが名門Metal Blade Recordsと契約を発表してから初めてリリースするアルバムは、前作『Malevolent Thoughts of a Hastened Extinction』から3年振りとなる通算5枚目フルレングス。Cognitiveの評価がこれほど高まってきているとは驚きで、Unique Leader Records からMetal Blade Recordsへと移籍するルートはこれまでもあったと思うが、大出世と言えるだろう。前作からメンバーチェンジもなく、レコーディング/ミックスはドラマーのAJ Vianaが手掛け、マスタリングはBart Williamsが担当した。
『Malevolent Thoughts of a Hastened Extinction』のツアー中にはすでに本作の制作をスタートさせ、前作とは違うリフをとにかく書き続けたと言う。AJはドラマーとしての他に、レコーディングエンジニアとしての顔も持っており、HathなどMetal Blade Recordsと共に仕事をする機会もあったそうで、今回のMetal Blade Recordsとの契約は、そうしたAJのエンジニアとしての経験も大いに役立っただろう。
アルバムの中でも最も印象的だった楽曲は「Matter Of A Darker Nature」。楽曲構成、中途に差し込まれるクリーントーンのフレーズやベースラインの働きによって魅力を何倍にも放つメロディが心地良い。思わずデスメタルを聴いていることを忘れるような、不思議な感覚がある。Carnophageはこれまで大きなスタイルチェンジを続けてきたバンドではないし、今後もそのような変化には挑戦しないだろうが、そういうバンドの良さと言うのは、こういう形であっても伝えていきたいと思う。
Italian Symphonic Death Metal giants Fleshgod Apocalypse have unleashed their highly anticipated new album, Opera, available now via Nuclear Blast Records.
The band’s sixth studio effort is deeply inspired by frontman Francesco Paoli’s near-fatal mountain climbing accident in 2021. Today the band releases an official video for “Morphine Waltz”.
Paoli shared the following:
‘Morphine Waltz’, THE visionary song par excellence, has a much deeper meaning, which goes beyond its lysergic atmosphere. It’s actually a true anthem to science, which once again has proved itself to be the only reality that counts.
But this track is also a perfect demonstration that our new line-up is on a whole new level, showcasing Veronica’s amazing versatility besides Eugene’s and Fabio’s insane technical skills.
After a few cinematic music videos, we wanted to pay tribute to another essential, if not the most important, dimension for the band: the stage. Delivering intense and truly theatrical live performances allows us to create a direct, unbreakable bond with our fans. And our upcoming North American tour will be our most theatrical ever.
Folks, today is the day! Let’s not waste any more time with words and let the music speak for itself.
テクニカル・デスメタル・バンド、Nile (ナイル)が10枚目のアルバム『The Underworld Awaits Us All』を、2024年8月23日にNapalm Recordsからリリースする。 リリースに先駆けて、彼らはアルバムからの3枚目のシングル「Under the Curse of the One God」を公開した。フロントマンのKarl Sandersは次のように語っている:
「ファンの皆さんにようやく”Under the Curse of the One God”を聴いていただける機会を得て、本当に嬉しく思っています。 この曲は凶暴で残忍なNileのトラックであり、古代の呪いに彩られている。Ingo Sporには、彼のユニークで創造的な映像芸術を駆使して、我々の音楽に冒涜的な生命を吹き込んでくれたことに感謝します」。
コロラド州デンバーを拠点に活動するテクニカル・デスメタル・バンド、Vale of Pnathは、来たるアルバム『Between The Worlds of Life and Death』からの3枚目のシングル「Silent Prayers」のミュージックビデオを公開しました。ニュー・アルバムは、2024年5月24日にWillowtip RecordsよりCD、レコード、デジタルフォーマットでリリースされることが決定している。
バンドは今回の新曲についてこのようにコメントしている :
「前作『Accursed』から5年。このEPはバンドにとって新たな道であり、スタイル的にはよりブラックなアプローチに傾いたんだ。このEPは、テクデスのバックグラウンドを持つ僕らのファンを次の時代へと導くためのものだと言える。『Between The Worlds of Life and Death』は、『Accursed』で始めたことの延長線上にあるアルバムだ。バンドのコア・サウンドを捉えつつ、このメタル・ブランドに、より新しく大胆なテイクをもたらした。メタル・ファンにとって最も親しみやすいアルバムにしたい。このアルバムを聴いて、すぐにその魅力に引き込まれ、さらに何度もリピートしてもらいたいと思っているよ」。
日本を拠点に活動するテクニカル・デスメタル・バンド、Impending Annihilation が、新曲「Rapidly Destructive Coxarthropathy」をGore House Productionsから配信リリースしました。この楽曲は「Idiopathic Osteonecrosis of the Femoral Head 」の収録曲で、Bandcampにてデジタル・アルバムのPre-Orderがスタートしている。
「”Flayed The Swine “は今まで書いたCryptopsyの曲の中で最もキャッチーな曲のひとつだよ。ブルータルであり、重厚なグルーヴ・セクションに満ちている。リリックは、精神的な崩壊、コントロールの完全な喪失に集中している。私たちは皆、暗い意図を持っているが、それを行動に移すことはほとんどないよね。この曲が終わるころには、主人公はそうしなければよかったと思っていることだろう」。
今回もメロディックであるものの、テクニカル/プログレッシヴ・デスメタルを基調としつつ、ブラックメタルのアトモスフィアを取り入れながら、シャープで切れ味鋭いリフをキーとしており、比較的長年のCattle Decapitationリスナーには聴きやすいと思う。ただ、彼らにクリーンパートを求めていないとするなら、「Terrasitic Adaptation」といったアルバムのリードトラックは微妙かもしれない。ただ、「The Insignificants」や「…And the World Will Go on Without You」といったアルバム中盤の楽曲はクラシックなCattle Decapitationの魅力が詰まった楽曲で、頭の楽曲だけで判断せず聴いてみて欲しい。特に「…And the World Will Go on Without You」、「We Eat Our Young」はグラインドな展開の妙にニヤリとしてしまう。
どれだけメンタルヘルスに気を使ったとしても、地獄のような生活をしていたらそれは変わらない。環境保護と経済的な成長を両立させることはこの地球の長年のテーマであるが、Cattle Decapitationは愚かな人間の自己中心的な考えを否定し続け、警鐘を鳴らし続けている。「We Eat Our Young」の歌詞で印象的なフレーズである「Own world we obliterate (=自分たちの世界は自分たちで消し去る)」は、このアルバムを端的に表していて、それはアートワークからもふんわりと感じられるはずだ。この人間中心の地球の行く末、最悪の結末に向かって何も変わらない社会へのヘイトは相当のものであり、それは単なる怒りをぶちまけたものでなく、歌詞としての世界観の芸術性も高く、非常に素晴らしいと思う。ヴィーガン・デスメタルは真っ赤な怒りで塗り固められたものだけでない。その怒りを表現する手段として、彼らはテクニカル・デスメタルを武器にしている。
2009年スイス・ローザンヌで結成。本作までに2枚のフル・アルバムを発表、本作は女性ギター/ボーカルLisa Voisard、ギタリストManu Le Bé、ベーシストJulien Waroux、ドラマーFlorent Duployerの4人体制でレコーディングを行った。いわゆる「Dissonant Death Metal」に分類される彼らは、ドゥーミーに展開される楽曲に不気味なメロディの霧をしっとりと燻らせながらAnachronismのテクニカル・デスメタルへ聴くものを誘っていく。静かにうねりをあげるドラミングにも注目だ。
2022年からノルウェーを拠点に活動を開始した超若手。本作は同郷のデスメタル中堅Blood Red ThroneのドラマーKristofferとベーシストStian、FilthdiggerのボーカルEirik、ゲスト・ギタリストとしてWormholeやEquipoiseで活躍するSanjay Kumarが参加しレコーディングしたデビュー作だ。きめ細やかなドラミングと次第に存在感を増すベースライン、バランス良く配置されたスラム・パートが上質な作りの良さを浮き彫りにする。「Moon Dweller」で顔を覗かせるスラッシュ・メタルからの影響も見逃せない彼らの魅力だろう。
2019年ベルギー・ブリュッセルで結成。女性ボーカリストLoreba Moraes、ボーカルも兼任するギタリストのLou-IndigoとLucas、ベーシストLéo、ドラマーLorenzoの4人で制作された本作は、彼/彼女らのデビュー作。終始ミドルテンポで押し続けるスタイルでありながら、奇想天外なリフとドラムパターンが蠢き続けるのがTriagone流。共にリードボーカルを取るLorebaとLou-Indigoの掛け合いも独特。収録曲「Ad Mortem Sem Papyrvs」はMVになっており彼らの特性を視覚的に感じられる。
2011年スウェーデン・エーレブルーで結成。ボーカルJonatan Karasiak、ギタリストのMarcus Jokela NyströmとRickard Persson、ベーシストMarcus Strindlund、ドラマーJacob Hednerで、デビュー作『Dogma of the Deceased』から3年を経て本作を完成させた。メロディックなリフを追随するかのようなガテラルは時に人間離れしたデモニックなシャウトも交え存在感抜群。初期はデスラッシュをやっていたことも感じられる、最新型Carnosusの名刺代わりとも言える快作。
フランスのHenkerに在籍していたギター/ボーカルStef、Human VivisectionのベーシストSonny、ドラマーDriesによるトリオのデビュー作 (バンド自体はベルギーを拠点としているそうだ)。デスコアの影響を感じさせるダンサブルな2ステップ・パートやブレイクダウンを交えながら、超絶技巧のタッピング・フレーズやプログレッシヴなアトモスフィアなども組み込んだハイブリッドなスタイルだが、すっきりとしたサウンドプロダクションでアルバムとしての完成度は高い。Deeds of FleshからArshspireまで飲み込み昇華した新世代テクデスのダークホース的存在と言えるだろう。