USデスコア、CARNIFEXのニュー・アルバム『Necromanteum』10月発売決定

カリフォルニア州サンディエゴ在住のデスコア・バンド、Carnifexが9枚目のスタジオ・アルバム『Necromanteum』を10月6日にNuclear Blast Recordsからリリースすることを発表しました。このアルバムは以下のトラックで構成されていることも同時に発表となった。また、タイトルトラックのミュージックビデオが公開されている。

01. “Torn in Two”
02. “Death’s Forgotten Children”
03. “Necromanteum”
04. “Crowned in Everblack”
05. “The Pathless Forest”
06. “How the Knife Gets Twisted”
07. “Architect of Misanthropy”
08. “Infinite Night Terror”
09. “Bleed More”
10. “Heaven and Hell All at Once”

 

VISIT THE BAND
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NOISEMAKER、新作EP『GOLD IMPRINTS』9月リリース決定

NOISEMAKERが、新作EP『GOLD IMPRINTS』を2023年9月20日にリリースすることを発表しました。5月17日にデジタルリリースされた「LAST FOREVER」を含む全5曲入りとなるこのEPは、8月4日から開催される「ROAD TO 20th ANNIVERSARY ZEPP TOUR」の全会場でCDのみ会場先行販売が行われる。

 

NOISEMAKER『GOLD IMPRINTS』
CD/Digital

2023年9月20日(水)

 

1. LAST FOREVER
2. MAE
3. Pushing My Back
4. STARS
5. NO WONDER

 

NOISEMAKER「ROAD TO 20th ANNIVERSARY ZEPP TOUR」

チケット一般発売中
チケットぴあ : https://w.pia.jp/t/noisemaker/
ローソンチケット : https://l-tike.com/noisemaker/
イープラス : https://eplus.jp/noisemaker/

メタルコア 2023年上半期の名盤TOP10

2023年の上半期にリリースされたメタルコアのアルバム、EPの中から優れた作品をピックアップし、アルバムレビューしました。年々、こうしてメタルコア全体の雰囲気も変わり、トータルで見てもプログレッシヴだったり、ニューメタルだったり、そうした影響を上手く捉えて表現した作品を入れ込まないと納得できない状況になってきていると思います。決してクラシックなメタルコアが廃れてきている、という訳ではなく、幅広い可能性を持っていたバンド、サブジャンルが花開いているという良い状況だと思います。プログレッシヴ・メタルコアやニューメタルコアとしてアルバムレビューすべき作品もありますが、全体の状況も把握できるように入れ込んでみました。ぜひ新しいお気に入りを見つけてください。

 

 

 

10位 : Currents 『The Death We Seek』

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コネチカット州フェアフィールドを拠点に2011年から活動するメタルコア・バンド、Currents (カレンツ)。『The Death We Seek』は、2020年のアルバム『The Way It Ends』に続く作品で、プロデューサーRyan LeitruとギタリストであるChris Wisemanによる共同プロデュースで制作され、Wage WarやIce Nine Kills、Make Them Sufferなどを手掛けてきたJeff Dunneがミックスを担当している。

本作で最も注意深く感じてもらいたいのは、彼らの表現の幅が大きく広がったことだ。「メタルコア・バンドのCurrents」として聴くのは前作まで。このアルバムから彼らのサウンドは深みを増すと共に、サウンド面においても挑戦的なフレーズやアイデアが散見されるようになった。

特にChrisのギター、そしてそれを際立たせるようなベースラインやアトモスフィア。現代メタルコアにおいては珍しいものではなくなった、このようなプロダクションにおける創意工夫がCurrentsの思想を、そしてスタイルの規模を何倍にも拡大させている。前作から大きく進化を遂げた『The Death We Seek』、聴けば聴くほど味が出てくるだろう。「Remember Me」は本当に言葉にならない感情が込み上げてくる。楽曲に込めたバンドからのコメントはこちらから。

 

 

9位 : Soulkeeper 『Holy Design』

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ミネソタ州ミネアポリスを拠点に活動するニュー・メタルコア・バンド、Soulkeeperのデビュー・アルバム。新型コロナウイルスが本格的に全世界で流行し始めた2020年4月にシングル「Heavy Glow」をリリース、そのミュージックビデオを観て、かなり衝撃を受けたのを覚えている。しかし3年もの間、彼らから何か作品がリリースされるというような情報もなく、ニューメタルコアの盛り上がりに取り残されてしまったかと思っていたが、遂にアルバムを発表。そしてこれが非常に素晴らしかった。

同じタイプのGraphic Nature同様、ニューメタルとメタルコアのブレンド具合が優れており、エクスペリメンタルな要素は残しつつも、切れ味鋭くエディットされたリフが織りなすイーヴィルなバウンスは一級品。ミュージックビデオになっているタイトル曲「Holy Design」で言えば、タイトなサウンドのバックになっているエレクトロニックなアレンジが素晴らしく、ワーミーだけが炸裂し続けるB級ニューメタルコアとは比べ物にならないほど、NUな世界観を作り出す才能を感じる。

まだまだ地味な存在ではあるものの、Mathcore Indexでのスタジオ・セッションで見せた演奏技術の高さからライブ・シーンでの活躍へ期待も高まる。決して無視できない存在へと成長するのも時間の問題だろう。

 

 

8位 : C-GATE 『NO FUTURE』

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東京を拠点に活動するハードコア/メタルコア・バンド、C-GATE の通算3枚目フルレングス。2019年に新ボーカリストとしてNaShunを迎えてから初のアルバムであり、この数年大きく成長を遂げたC-GATEの持てるポテンシャルを余すことなく詰め込んだ全13曲入りの大作だ。

ミュージックビデオとしても公開されている「Hypocrisy」は、USアンダーグラウンド・モッシュコアと比較しても大差ないダウンチューン・リフをキャッチーに刻みながら、変幻自在にアクセルとブレーキを踏みかえる展開の妙が実に素晴らしい。こうしたアイデアは現代ハードコアのトレンドをキャッチし、日夜日本全国のライブハウスで体現し続けてきた実力があって正しく作られるものであり、メタルコア、ハードコア、いずれのリスナーも勝手に頭に血が上るような高揚感が味わえるはずだ。

メロディック・ハードコアの美的感覚を取り入れた「THE WAY I AM」は頭の中でリフレインする「Carry on, nobody can change the way I am」というリリックが印象的な楽曲でアルバムをバラエティ豊かなものへとアップデートしてくれる。花冷え。、CrowsAlive、Good Grief、Matt Fourman、UNMASK aLIVEといった盟友らとのフィーチャーも彼らにしか出来ない人選であり、それぞれの旨みを正確に表現している。

ライブでカオスな盛り上がりを作り出す「NO FUTURE」、「KILL YOU」といったバンガーチューンは国内だけでなく、グローバルなメタルコア、ハードコア、そしてデスコア・シーンでも容易く受け入れられるクオリティ。彼らが主戦場を日本だけでなく、世界へ変えていくのも時間の問題だ。

 

 

7位 : For I Am King 『Crown』

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オランダのメロディック・メタルコア・バンド、For I Am King の5年振りとなるサード・アルバムは、Prime Collectiveからのリリース。このPrime Colleciveはデンマークを拠点に置くレーベルで、SiameseのMirzaらが運営するレーベルだ。ここ数年、デンマークからは多くのバンドがグローバルな人気を獲得し、世界への門戸を遂に開けた解放感から動きが活発だ。For I Am KingはRNR TOURSで来日ツアーも手掛けたバンドで、レーベル、バンドからのプッシュもあり、2023年上半期によく聴いていた作品だ。

昨年ミュージックビデオとして公開された先行シングル「Liars」はメロディック・メタルコアという音楽の魅力を余すことなく詰め込んだ快作で、4万回しか再生されていないというのが信じられない。これは他のどんなメタルコアよりもメタルコアであり、個人的にはAugust Burns Redよりも聴いたしハマった曲だ。ボーカリストAlmaのメロディック・シャウトはイーヴィルな魅力もあり、来日時よりも格段に進化している。同じくリードシングルになっている「Trojans」もシンフォニックなエレメンツを取り入れ、スケールアップしたFor I Am Kingの世界観に聴くもの全てを引き込んでいく。

このレベルのバンドが埋もれるヨーロッパのメタルコア・シーンも凄いのだが、ワールドワイド、特に日本での人気はもっと高まってもいいと思う。ぜひ彼らのSNSなどに応援コメントを書き込むなどしてもらいたい。

 

 

6位 : Graphic Nature 『A Mind Waiting to Die』

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イングランドを拠点に活動するニューメタルコア・バンド、Graphic Natureのデビュー・アルバム『A Mind Waiting to Die』。メタルコア・リスナーにはあまり馴染みのないRude Recordsというところからリリースされたこのアルバム、RIFF CULTでも頻繁に彼らのことは取り上げ続けてきたが、毎日のように変化し成長続けるニュー・メタルコアというジャンルにおいて、Graphic Natureが”基本のスタイル”をこのアルバムで確立したことはシーンにとって大きいだろう。

刺激を求め続けるのであれば、未だ交わったことのないジャンルからのエレメンツを組み込んだり、ヘヴィを極めたり、誰もやったことのない何かを探し昇華する必要がある。ただ、一瞬のBUZZを狙ったものであるなら、それは消費されて終わってしまう。デスコアがダウンテンポと結びつきトレンドになった時、ダウンテンポ・デスコアへとスタイルチェンジして注目を集められず死んでいったバンドがどれだけいたか。その時から生き残っているバンドに共通しているのは、デスコアとしての本来の魅力を残したまま微細なアップデートを繰り返しているバンドばかりだ。

ニューメタルコアはEmmureによって世界のメタルコア・シーンに浸透し、Alpha Wolfらによって形作られ、昨今のメタルコアのトレンドとも言える存在になった。飽和し始めている2023年に、純粋にニューメタルとメタルコアのクロスオーバーでピュアなバンガーを探し求めた時、Graphic Natureがやっている事が理想のスタイルだと思う。

Slipknotを思わせるスクラッチやスネア、複雑すぎない程度のキャッチーなバウンス、フックとして絶妙な役割を担うワーミーのブレンド感覚。ミュージックビデオになっている「Killing Floor」や「Into The Dark (+Bad Blood)」は気付けばスピンしているし、耳に残るフレーズがたっぷり詰め込まれている。このバランス感覚のまま、イングランドを代表する存在へと成長して行って欲しい。

 

 

5位 : Crown The Empire 『DOGMA』

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2010年テキサス州ダラスを拠点に結成されたCrown The Empireの4年振り通算5枚目のフルアルバム。10年間ドラマーを務めたBrent Taddieが脱退、新たに加入したJeeves Avalosと共に、Fever 333やPoorstacy、Nova Twinsらを手がけたZach JonesとJosh Strockがプロデュースを務めた本作は、長きに辺り彼らをサポートし続けるRise Recordsからのリリースとなった。

彼らがスタートした2010年ごろのメタルコアの主要レーベルと言えば、Rise Recordsだった。現代メタルコアに繋がる盛り上がりの最も最初の段階からRise Recordsはカリスマ・レーベルで、発掘するアーティストが皆ヒットしていた。Rise Recordsも時の流れと共に所属アーティストのテイストが変容して行ったが、現在もblessthefallやThe Acasia Strain、Dance Gavin Dance、Kublai Khan TX、Memphis May Fire、Polyphia、Spite、Spiritbox、Herperが籍を置き、メタルコアの主要レーベルであり続けている。

彼らは結成からメタルコアとポストハードコアの間を行くスタイルでトップを走り続けてきたバンドで、新体制となってもそのスタイルは変わらない。SpiritboxのCourtney LaPlanteをフィーチャーした「In Another Life」は彼らのクラシック・アルバム『The Fallout』にも通ずる懐かしさがあると感じるのは私だけだろうか。

タイトルトラック「DOGMA」は呪術的なミュージックビデオのディレクションとも相まって、神経を侵略するようなエレクトロニックなビートがヘヴィなブレイクダウンへと向かっていく様が異様な不気味さを放っている。Beartoothを彷彿とさせるヘヴィなメタルコア・ブレイクダウンは非常にヘヴィで驚く。気づけば彼らのキャリアも13年。大きなスタイルチェンジもなく、正統派であり続けるストイックさに感服。

 

 

4位 : Veil of Maya 『[m]other』

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2004年からイリノイ州シカゴを拠点に活動するプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Veil of Maya の通算7枚目フルレングス。前作『False Idol』のリリースが2017年、およそ6年振りのニュー・アルバムは長年のパートナーであるSumerian Recordsからリリースされた。

2019年にTaylor Larsonとスタジオ入りし、新作の制作をスタートさせたことをSNSで発表していたものの、それらの多くを破棄した事が6年というブランクが開いてしまった理由だ。2014年にボーカルLukas Magyarが加入し、2枚のアルバムをコンスタントにリリースしてきた彼らにとって、こういった経験は初めてだろうし、元々ブルータル・デスコアからスタートし、次第にプログレッシヴ・メタルコアへと移行してきた彼らがファンの期待に応えられるような作品を生み出すには、完全に納得できるものでないと発表しないというスタンスを取ったことは納得が出来る。かつてSuicide Silenceが大きくニューメタルへと舵を切った時、ファンの失望は凄まじいものがあった。あれからしばらく経ち、2枚の素晴らしいOGデスコアのアルバムを発表しても尚、引きずり続けているのを見ると、本当にシングル一曲でもファンを失望させるようなスタイルチェンジは許されない状況である。諦めて別のバンドを聴くことなんて、本当に簡単だからだ。

ミュージックビデオにもなっている「Red Fur」はメタルコアの伝統に沿ったクリーン・パートとエレクトロニックなアレンジを施したリード・トラックで、2015年のVeil of Mayaをほんの少しアップデートしたような楽曲だ。同じく先行シングルとしてミュージックビデオになっている「Synthwave Vegan」はプログレッシヴな彼らの魅力を引き出しながら、ニューメタルコアの影響も感じられるヘヴィなキーリングに溢れた一曲で、決してファンを失望させることはない。

「Disco Kill Party」は一聴するとVeil of Mayaには聴こえないような楽曲だが、アルバムにおいて強烈な個性を放ち、他と違ったバンガー・チューンとして再生回数も高い。「Mother Pt.4」でも大胆なエレクトロニックなイントロからしっとりと幕開けていき、ヘヴィなパートとのコントラストを描いていくさまなどを聴いていると、もしかしたらこうしたスタイリッシュなプログレッシヴ/Djentに舵を切ろうとしていたのかもしれない。ただこの『[m]other』は紛れもないVeil of Mayaのアルバムで傑作だ。最終的にどういったサウンドへ辿り着くのか興味深いが、まだまだ続く彼らの長旅の中で様々な挑戦を聴かせて欲しいと願う。

 

 

第3位 : Invent Animate 『Heavener』

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テキサス州ポート・ネチズを拠点に活動するプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Invent Animate が、Tragic Hero Recordsを離れUNFDと契約してから初となるアルバム『Heavener』をリリース。元AvianaのMarcus Vikは加入してから2作目ということもあり、Invent Animate仕様に鍛え上げられたボーカルでアルバムにおいてキーとなる存在のひとつにまで成長している。ドラマーのTrey CelayaはFit For A Kingとの仕事により、Invent Animateのライブ活動には参加していないが、このアルバムにおいてはセッション・ドラマーとしてその実力を発揮している。Landon Tewersによるプロデュースは彼らのメロディが持つ悲哀を多角的に研ぎ澄まし、時に水面を漂うように、時に刺々しく突き刺さるようにエディットしている。

彼らがこのアルバムで鳴らす音楽性は、決してメタルコアのトレンドであるとは言えないが、Crystal Lakeからの直接的な影響を感じさせる先行シングル「Shade Astray」やHolding Absenceを筆頭に主にユーロ・ポストハードコアでひとつシーンとして確立されているオルタナティヴなメロディワークを驚きのクリーン・ボイスで表現した「Without A Whisper」などプログレッシヴ・メタルコア・バンドとしては挑戦的な楽曲がキーリングになっている。最も彼ららしい音楽的表現と言えば、”静と動”のコントラストだ。「Void Surfacing」は特にカオティックにメロディとリズムがグルーヴを生み出しつつ、それらを継ぎ接ぎしたような構成で電子音楽的な要素を見せる。後半に導入される彼らの伝統的なブレイクダウンの美しさはこうしたカオスなエナジーがピタッとシャットダウンされるようなブレイクダウンにある。そこはこれまでと全く変わっていない。

コアなメタルコア・リスナーと話をすれば、彼らの名前が頻出するほど、かなり現代メタルコアにおいて影響力が強いバンドだ。大きな変化はなくともこれだけ挑戦的と思わせる孤高の存在感はカリスマ的と言っていいだろう。

 

 

第2位 : fromjoy 『fromjoy』

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テキサス州ヒューストンを拠点に活動するメタルコア・バンド fromjoy の2021年作『It Lingers』に次ぐセカンド・アルバム。地元のレーベルdontstress//flowerpressからのリリースということもあり、まだまだ知名度としては低いバンドであるが、革新的なサウンド・プロダクションや青色で統一されたスタイリッシュなヴィジュアルからミュージシャンらの評価が高い。

以前彼らを紹介したとき、ニューメタルコアならぬニューハードコアなどと紹介したが、その時点で彼らのサウンドがどこへ向かっているのか分からなかった。昨今、バンドがどこを拠点としているのか、メンバー構成はどうなのかなどをあえて公開しない、ミステリアスな雰囲気を出しているバンドが多いが、彼らもそんなバンドの一つだった。結局、このアルバムだけでは彼らが目指すサウンドが何なのかを掴むことが出来なかった。繰り返し聴いても、計り知れない魅力が放射状に放たれ続けるアルバムを聴き終えるころには、メタルコアが何なのかさえ分からなくなってしまう。

基本は現代メタルコアの中でも盛り上がりを見せるニューメタルコアに分類されるようなスタイルがベースになっているが、Loatheの元ギタリストConnorが「morbidly perfect」でフィーチャーされているように、オルタナティヴな方面への挑戦も多く見受けられる。「morbidly perfect」のサビへの導入部分はまさにLoatheの影響が感じられるし、「of the shapes of hearts and humans」もシューゲイズっぽい。

ミュージックビデオになっているバンド名を冠した「fromjoy」が彼らが目指すサウンドであるとしたら、2024年、とてつもなく巨大なバンドに成長している姿しか想像出来ない。波打つリフがビートダウンしながらもロックなフックを差し込んだり、印象的なシンセのメロディと女性ボーカルのクリーン。後半はただのビートダウン・デスコア。「docility」でPeeling Fleshがゲスト参加しているのは、彼らがヘヴィ方面への挑戦を忘れていないことをリスナーに訴えているように感じる。

最後に、このアルバムで最も衝撃だった楽曲「Icarus」について話したい。アルバムのエンディングを飾るこの曲が、fromjoyの未来の鍵を握っている。Loatheらオルタナティヴ/シューゲイズ・メタルコアからの影響、メロディック・ハードコア的なシリアスなメロディの感覚、バランス感覚の優れたブレイクダウン。驚くべきことに、それらに加えてアウトロにヴェイパーウェーヴが組み込まれている。思い返せば、彼らの活動の至る所にヴェイパーウェーヴ的なヴィジュアルがあった。青で統一された世界観も、もしかしたらそうした影響なのだろうか。本当にこの楽曲でアルバムを聴き終えた時の感覚が、難解な長編映画の結末を完璧に理解できないまま噛み締めているかのような、混乱にも近いものがあった。

彼らのポテンシャルは計り知れない。これまで使ってきた「計り知れない」という言葉の中で最も計り知れない…。

 

 

1位 : August Burns Red 「Death Below」

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USメタルコア・レジェンド、August Burns Redの通算10枚目となるフル・アルバム『Death Below』。 Fearless Recordsを離れ、自身の周年を祝った企画盤を経て、SharpTone Recordsとの契約を果たしている。Carson SlovakとGrant McFarlandによってプロデュースされた本作には、Killswitch EngageのボーカリストJesse Leachをはじめ、All That RemainsのJason RichardsonやErraのJ.T. Cavey、UnderoathのSpencer Chamberlainがゲストとしてそれぞれ楽曲に参加している。

2003年の結成から20年。そして記念すべき10枚目のアルバムということもあり、これまでAugust Burns Redが一切ブレることなく貫いてきたメロディック・メタルコアのプライドが感じられる仕上がりとなっていて、ゲストが参加した楽曲やアルバム全体の中でブレイクと言える部分に多少の変化があれど、後続のメタルコア・バンドたちに与えてきた影響がどんなものであるかが浮き彫りとなった、「August Burns Redの真の魅力」がたっぷりと詰め込まれている。

Killswitch EngageのJesseをフィーチャーした「Ancestry」はミュージックビデオとしてアルバムの先行シングルにもなっているキートラックで、火花を散らしながら駆け抜けていくメロディックなフレーズ。ABRブレイクダウンと形容したくなる、トレードマークのグルーヴ、Jesseというトップ・メタルコア・バンドのフロントマンの個性さえも凌駕するAugust Burns Redサウンドのオリジナリティの偉大さを感じることが出来る楽曲として、2023年メタルコア・トップトラックのひとつと言えるだろう。

「Dark Divide」やJason Richardsonをフィーチャーした「Tightrope」など他にもアルバムのキーリングと言える楽曲がトラックリストの中にひしめき合っているが、ErraのJT Caveyが参加した「The Abyss」は若干Erra寄りでありながら紛れもないAugust Burns Redなのが興味深い。彼らをAugust Burns Redたらしめている要素はもちろん、全てのパートであるが、ドラムの凄まじさは改めて評価したい。

彼らの地元を拠点とするレーベルで、Texas in Julyなどを手がけたCI Recordsのオーナーが、RNR TOURSでCarousel Kingsが来日する度に帯同してくれてAugust Burns Redの話を聞かせてくれるのですが、そのミュージシャンとしての繋がり以上に友人同士であることのつながりの強さが長年続けられる秘訣なのかもしれない、と語ってくれた。ちょうど、RNR TOURSが3年振りに海外アーティストの招聘活動を再開して、オーストラリアからNo Quarterというバンドのツアーを終えたところだが、彼らも2003年結成、今年20周年を迎えたバンドだった。バンドの大きさに差はあれど、20年バンドを続けるということの凄み、そして続けられてこれた理由をツアーを通じて感じることが出来た。互いへのリスペクトはもちろん、メンバーそれぞれ、5人の大人の集合体であるバランス感覚など、本当に長くバンドを続けるということは奇跡であると思う。

August Burns Redのようにトップ・シーンで戦い続ける重圧が加われば更に困難なことであるだろう。キャリア通算10枚目の本作から感じられることは、単にメロディック・メタルコアの素晴らしさだけではない。

Galundo Tenvulance、デビュー・アルバムから先行シングル「Lifeshaker」のリリックビデオを公開

シンフォニック/メロディック・デスメタル・バンド、Galundo Tenvulance (ガランド・テンビュランス) が国内メタルレーベル Spiritual Beast から8月23日にリリース予定のファースト・アルバム『LUNAR ECLIPTURE』から先行シングルとして「Lifeshaker」のリリックビデオを公開しました。この楽曲は各種音楽サブスクリプション・サービスにて視聴することが出来る。

配信URL : https://linktr.ee/galundotenv

アートワークにはImperial Circus Dead Decadenceで知られるリブユウキ氏、Mix/Masteringにはアメリカにて第一線で活躍するエンジニアZack Ohren氏を起用。ファストなギターリフを主体にシンフォニック要素を取り入れた、独自のメロデススタイルを確立した一曲となっている。

 

SLANT、9月に緊急来日決定

韓国・ソウルを拠点に活動するハードコア・バンド、SLANT が9月に来日することが急遽決定した。パンク・レーベル BLACK HOLE によると、9月1日からの3日間、東京、大阪で合計3公演を開催するとのこと。日程と会場が決定しており、チケット、そのほかのインフォメーションは随時発表となるだろう。

 

<SLANT Japan Tour 2023>

9/1 金 小岩BUSHBASH
9/2 土 難波BEARS
9/3 日 下北沢 SPREAD

 

 

 

Wormrot、「Burning Desire Asia Tour 2023」で9月来日決定

シンガポールを拠点に活動するグラインドコア・バンド、WORMROT が「Burning Desire Asia Tour 2023」と題したアジアツアーを開催することを発表しました。このツアーには日本公演も含まれています。バンドは、ドイツのグラインドコア/ブラッケンド・デスメタル・バンド、Implore のボーカリストである Gabriel Dubko をボーカルに迎えツアーを行う。

9月19日 西横浜 El Puente
Open : 19:30
Ticket adv 3000 / door 3500 + drink charge

WORMROT
KANDARIVAS

http://obliteration.shop-pro.jp/?pid=176295769

 

9月20日 浅草 Gold Sounds
Ticket adv 3500 / door 4000 + drink charge
Open : 19:30

WORMROT
NECROPHILE
MORTIFY

http://obliteration.shop-pro.jp/?pid=176297556

 

9月21日 新宿 Wild Side
Ticket adv 4500 / door 5000 + drink charge
Open : 18:30

WORMROT
SMALLPOX AROMA (Thailand)
COFFINS
BUTCHER ABC

http://obliteration.shop-pro.jp/?pid=176299094

 

 

グラインドコア 2023年上半期の名盤TOP10

 

https://twitter.com/harumagedon/status/1676172323869822978

 

グラインドコア 2023年上半期の名盤TOP10

2000年代中頃から終わりにかけて、メタルコア/デスコアを巻き込んで盛り上がったマスコア (カオティック・ハードコア)。その頃夢中になっていた See You Next Tuesday が復活したと聞いて、グラインドコアの現状を把握しようとディグっていたのが今年の頭。昔はレーベルやディストロの商品レビューを片っぱしから読んでは気になるバンドをメモして横の繋がりを把握しつつ、グラインドコア・シーンの状況を把握しようとしていたが、今ではグラインドコアに特化したYouTubeチャンネルもあり、世界に点在するDIYグラインドコア・バンドたちの拠点としてかつてのレーベルのような役割を果たしてくれているので、どんなバンドがアクティヴで、どのくらいの規模で活動しているのが直感的に把握しやすくて助かる。

グラインドコアはSpotifyなどのプラットフォームにない作品も多く、シーンの追いかけ方を工夫しないと、思わぬ名作を聴き逃してしまう可能性の高い。Spotifyで好きなバンドをフォローするだけでなく、YouTubeチャンネルやBandcamp、そして世界中のあらゆるディストロをチェックするのがいいだろう。グラインドコアと一言に言っても、デスメタルと結びつきが強かったり、ノイズ・シーンで活躍するバンドもいたり様々。自分のお気に入りのタイプは何なのかを知ってディグると面白いと思います。

アルバムのチョイスに偏りがあるかも知れませんが、グラインドコアだけでなく、あらゆるジャンルを聴いている方でも引き込まれる要素を持ち合わせた作品を何個も混ぜ込んでいますので、ぜひ全部チェックしてみてください。このリストにない素晴らしい作品についてはぜひコメントで教えてください!

 

Birdflesh 『Sickness in the North』

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スウェーデンのグラインドコア・カルト、Birdflesh の通算9枚目のフル・アルバムは、2019年の『Extreme Graveyard Tornado』以来およそ4年振りにリリースされた。Birdlfeshは、結成から30年が経過しても、大きくペースを落とすことなくライブ活動、制作活動を続けている真のベテラン。彼らを知っているグラインダーなら、彼らがファニー・グラインドをプレイし、Obscene Extreme Festivalのステージで狂喜乱舞を繰り広げる様を想像出来るだろう。このアルバムも御多分に洩れず、毒舌のユーモアをたっぷりと詰め込んだ作品になっており、純粋なグラインドコアを基調としながらもスラッシュメタル、ゴアグラインド、ハードコアパンクとごちゃ混ぜで面白い。

このアルバムを日本語のメタル・サイトであるRIFF CULTが紹介する大きな理由は、アルバム・リリースに先駆けて発表された先行シングル「Hammer Smashed Japanese Face」にある。とにかくこのくだらないミュージックビデオを見て、そして歌詞を眺めてみてもらいたい。聴き終わった時、私はこの曲をRIFF CULTで紹介しないといけないという謎の使命感に駆られてしまった。

「Tokyo, I want to go, Yokohama, hammer hammer」、「Osaka, Nakatomi Hakodated and mutilated」、「Nunchaku attack Nintendo-san Ramen rama ding dong Hammer hammer smashed」といった小学生でも思いつかないようなチープなフレーズがカミソリのようにソリッドなグラインド・リフの上で吠えている様はなんとも可笑しい。特にYokohama Hammer Hammerというアホくさいフレーズは神がかっている。こういうくだらないアイデアに何時間も費やして、しかもそれを30年続けているというだけで、グラインドコア・ファンは彼らを好きになる必要がある。いや、嫌いになんてなれないだろう。

そのほか収録曲「Chainsaw Frenzy」にはMatt Harvey (Exhumed, Gruesome)がフィーチャーされており、ゴアメタル・ファンはもちろん、Macabre, Municipal Waste, Ghoul, Immortalといったバンドのファンにもおすすめ出来る本格派キラーチューンだし、エンディングの「Alive To Lose」はジャパコアにも似たサウンドスケープで驚く。日本のグラインダーなら2023年上半期はBirdfleshを聴くべきだ。

 

Rotten Sound 『Apocalypse』

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スウェーデンのお隣 フィンランド を拠点に、Birdfleshと同じく90年代初頭から活動を続けているのが、Rotten Soundだ。前作『Abuse To Suffer』からおよそ7年振りとなる本作は、通算8枚目のアルバムで、Season of Mistから発売された。

このアルバムは20分とグラインドコア・アルバムの中でも比較的短い収録時間であるが、18曲が収録されており、一度もブレイクすることなく、暴力的ともいうべきグラインドの塊が鼓膜に襲いかかってくる。オリジナル・メンバーであるボーカリスト Keijo Niinimaa と ギタリスト Mika Aalto のプレイに注目してアルバムを何度も聴き込むと、30年という時間をかけて培ったグラインドコアの美学というものが感じられる。Keijoのスクリームはデスメタルにあるようなローの効いたものでなく、高速で叩き込まれるビートの上を煙るように、喉を振り絞るようにして咆哮される (「Digital Bliss」のアウトロのスクリームは一級品)。

「Denialist」から「Fight Back」あたり、アルバムの中間に位置するこれらの楽曲は、アルバムの中で最も「グラインドコア・バンド Rotten Sound」としての輝きを放っている。ドゥーミーなリフから急速にアクセルを踏み込みつつ、巨大なフックを生み出すストップ&ゴーを絶妙なバランスで組み込んでいく。彼らの人気作品である『Exit (Willowtip Records』や『Cycles (Spinefarm Records)」と比べると、さらに装飾を削ぎ落としたサウンドが印象的。いくつか公開されたミュージックビデオは若干チープで何度も見るものではないが、このアルバムは何度も何度も聴いて、体の内側から熱くなれる傑作だと思う。

 

See You Next Tuesday 『Distractions』

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2008年に傑作『Intervals』を発表し散り去ったミシガンのエクスペリメンタル・グラインドコア/マスコア・カルト、See You Next Tuesday がシーンにカムバック。およそ15年振りとなるアルバム『Distractions』をGood Fightからリリースしたことは、個人的に2023年グラインドコア・ニュースの中で最も印象的であったし、かなり興奮した。

というのも、メタルコアやスクリーモが爆発的な人気を誇っていた2000年代後半のメタル・シーンにおいて、カオティック・ハードコア/マスコア・シーンやブルータル・デスメタル・シーンとの境界線をシカトして猛烈な人気を誇っていたのがSee You Next Tuesdayであったからだ。Rotten Sound、その他Napalm Deathなどどいったグラインドコア・バンドとは明らかに違う異質さは、恐ろしく長い楽曲名、カラフルでグロテスクな当時のエモファッションにも近いアパレルを身にまとったヴィジュアルからも漂っていた。iwrestledabearonceなどと同列に並べられがちであるが、そのサウンドはノイズに接近するほどラウドで難解であった。

復活後もそのスタイルを崩さず、わずか34秒の「Glad to Be Unhappy」では電気ショックのようなギターのフィードバックが恐ろしいほどの存在感を放ち、ミュージックビデオにもなっている「Day in the Life of a Fool」では、まるでEvery Time I DieやThe ChariotがLSDを喰らいながらブルータル・デスメタルを5倍速でプレイしたかのような混沌を表現している。これだけ奇天烈なことをやっておいて、テクニックは素晴らしいし、しっかりグラインドしている。ややデスコアやマスコアに理解がないと興味が湧きにくいバンドかも知れないが、グラインドコアの裾をさらに拡大するべく、彼らが再びシーンに戻ってきてくれたことを歓迎したい。

 

The HIRS Collective 『We’re Still Here』

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この記事に挙げられている他のグラインドコア・バンドと比べると、The HIRS Collectiveの存在は異端と言えるだろう。LGBTQIA+コミュニティから発生したフィラデルフィアを拠点に活動するThe HIRS Collectiveは、弱者の立場にある人たちのために戦い続けている。グラインドコアと呼ばれるカテゴリーでのみ活躍するようなバンドではなく (それはサウンドにおいても同様)、その幅広い交友関係は、このアルバムに参加しているゲスト・ミュージシャンのリストを見れば明らかだろう。

1. We’re Still Here (feat. Shirley Manson & AC Sapphire)
2. Sweet Like Candy (feat. Nø Man, Thou, & Jessica Joy Mills)
3. Burn Your House Down (feat. Jessica G.Z., and Gouge Away)
4. N.O. S.I.R. (feat. Justin Pearson & Nevada Nieves)
5. Waste Not Want Not (feat. Soul Glo & Escuela Grind)
6. Public Service Announcement (feat. Dan Yemin & Dark Thoughts)
7. Judgement Night (feat. Ghösh & Jessica Joy Mills)
8. Trust The Process (feat. Frank Iero & Rosie Richeson)
9. XOXOXOXOXOX (feat. Melt-Banana)
10. You Are Not Alone (feat. Lora Mathis & The Body)
11. Apoptosis and Proliferation (feat. Nate Newton & Full Of Hell)
12. So, Anyway… (feat. Geoff Rickly & Kayla Phillips)
13. A Different Kind of Bed Death (feat. Anthony Green & Pain Chain)
14. Neila Forever (feat. Jeremy Bolm & Jordan Dreyeri)
15. Last Kind Meets Last Preist (feat. Chris #2 & Derek Zanetti)
16. Unicorn Tapestry Woven in Fire (feat. Marissa Paternoster, Damian Abraham, & Pinkwash)
17. Bringing Light and Replenishments (feat. The Punk Cellist & Sunrot)

アルバムのタイトルトラック「We’re Still Here」は、オルタナティブロック・バンド Garbage のリードシンガーであるShirley Mansonをフィーチャーした印象的な一曲。歌詞はどれも意外とシンプルというか、伝えたいことをストレートにスクリームしている感じ。My Chemical RomanceのFrank Ieroが参加している「Trust The Process」もThe HIRS Collectiveらしさ溢れるカオティックなグラインディング・チューンで飾り気なしの清々しさに溢れている。参加するどのミュージシャンも本業のバンドでは見せない怒りやメッセージをここで発散しているように感じるというか、The HIRS Collectiveとのコラボなんだから叫んでもいいでしょというような雰囲気がある。シンプルに怒りや日頃の鬱憤を発散する音楽が私たちには必要で、グラインドコアはまさにうってつけの音楽であり、現代的な社会問題をテーマにしている彼らが特別な魅力を放つのは当然だ。

 

Smallpox Aroma 『Festering Embryos of Logical Corruption』

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2006年にタイ・バンコクで結成されたSmallpox Aromaのファースト・アルバム。活動がストップする2009年まではコンスタントにスプリット作品をリリースし続けていたが、メンバーそれぞれに本業バンドがあり、そちらを優先していたようだ。ドラマーのPolwach Beokhaimookは、タイを代表するブルータル・デスメタルのドラマーで、RIFF CULTでも彼が在籍しているEcchymosisの来日公演を手掛けたことがある。

グラインドコアというにはヘヴィなデスメタル・ブレイクダウンがあったりとピュアなスタイルではないが、彼らが在籍するブルータル・デスメタルでは出来ないことをやっているし (「Quest for the Missing Head」はブルータルなハードコアパンクみたいな曲)、アクセスとブレーキーの踏み分けのそれがグラインドコアと同じだ。2023年9月にははるまげ堂の招聘によって再来日が決まっている。彼らの良さはライブだと思う、見逃さないようにしておこう。

 

Sick Sinus Syndrome 『Swarming of Sickness』

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チェコ・オストラバを拠点に2020年に結成されたSick Sinus Syndromeの2年振りセカンド・アルバム。「Rot Ridden Pathological Grindcore」を自称する彼らの才たる魅力はCarcassやGeneral Surgeryを彷彿とさせる溺死ボーカルと血管がブチ切れるほどの熱量だ。

メンバーそれぞれにこの手のシーンの名手であり、ギター/ボーカルのBilosはMalignant Tumour、ベーシストのHaryはPathologist、ドラマーのJurgenは元Ahumado Granujo。2000年代のグラインドコア/ゴアグラインドの血生臭さ溢れるSick Sinus Syndromeのサウンドには懐かしさがたっぷりと詰まっている。「Psycho Pathology Mania」のミュージックビデオは必見。

 

Warfuck 『Diptyque』

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フランス・リヨンを拠点に2011年から活動するグラインドコア・デュオ、Warfuckの5年振り通算4枚目。YouTubeにアップされている「Obscene Extreme 2013」での彼らのステージを映像で見たことがある人も多いだろう。ユニット体制でありながら、他のバンドとなんら遜色のないグラインドコアのライブステージからは、2人のグラインドコアに対する才能を感じることが出来るはずだ。

アルバムからはユニット体制であることの魅力を感じることは出来ない (メンバーがベースなどをレコーディングしている) が、Napalm Deathの王道スタイルでダイナマイトを爆発させながら突進していく。グラインドコアのピュアさが清々しいとさえ感じる作品。

 

CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP 『We Live as Ghosts』

コネチカットを拠点に活動するワンマン・ノイズグラインド・プロジェクト、CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP。このイカれたプロジェクト名を本人も「CHOP 7times」と省略して使っているのですが、検索しにくすぎて不便では……。しかしバンド名を何気なく発見し、気になって再生ボタンを押してしまったので、それが彼の策略であったならば私はまんまとその策略にはまってしまっている。そして気になったのがCHOP7timesのアーティスト写真。これは彼のBandcampをぜひ見てほしい。ノイズ・ファンなら興味をそそられるはずだ。

このアルバム、全て打ち込みで作られており、リアルの楽器を一切使用していないんだとか。こうした怒れるエナジーを楽器を使って肉体的に表現してこそグラインドコアの魅力が輝きを放つのではないかと疑問に思うが、これはこれで素晴らしく、非人力だからこそのエクストリームな感情表現を完成させているようにも感じる。人間だと叩けないスピードのブラストビートであったり、不気味な転調にハーシュノイズの雑なカットアップ。こういうのが好きな人は結構いるし、自分もその一人。非常に引き込まれるアルバム。

 

2023年の上半期も素晴らしいグラインドコア・アルバムに出会うことが出来ました。皆さんのお気に入りは何でしたか?また、このリストにない素晴らしい作品を知っていたら、ぜひコメントで教えてください!

デスコア 2023年上半期の名盤TOP10

毎日のように世界各国から素晴らしいデスコア・バンドがシングル、EP、アルバムをリリースし、絶えずコンテンツが供給過多状態にあるデスコア・シーン。この記事では、RIFF CULTが2023年1月から6月までにリリースされたデスコアのアルバム/EPの中から素晴らしい作品をピックアップし、順位付けしてアルバムレビューしました。

毎週リリースされる作品を網羅できるRIFF CULTのSpotifyプレイリスト「All New Deathcore 2023」では、ここには載っていないアーティストの楽曲を視聴することが出來、毎週20曲から30曲近いデスコアの楽曲を追加しています。ぜひフォローして下さい。

 

「All New Deathcore 2023」Spotifyプレイリスト

 

第10位 : DeadVectors 『The Gray』

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ニュージャージーのデスコア・ユニット、DeadVectors の4枚目フルレングス。2021年から活動を開始し、3枚のアルバムと7枚のEPをリリースしてきた多作なプロジェクトで、毎週のようにSpotifyのアップデートでシングルをリリースし存在感を見せつけてきた。

DeadVectors はボーカルでリリックを手掛ける Kenny Stroh 、作曲からレコーディング、ミックスからマスタリングをこなす Aaron Chaparian からなる。特にAaronはこの2年で凄まじい努力でDeadVectorsの評価を上げ、プログレッシヴ・デスコアからビートダウンに接近するスタイルまでを巧みにこなしてきた。特に「BITE (The Golden Blade)」のブレイクダウンは浮遊感たっぷりで、Djentな刻みもクオリティが高い。Born of OsirisからThe Voynich Codeなどを彷彿とさせるオリエンタルなエレメンツとディープなブレイクダウンが印象的な「Isolate // Escape」やBobbi VanetとAlex Goldをフィーチャーした「Voyage」、サックスなども盛り込みながらドラマ性たっぷりにアルバムを展開させる。

遂にオンライン・ベースのプロジェクトのレベルがここまで来たのかと感動すると共に、「打ち込みらしさ」のマニアックな面白さがなくなっていってしまうのには若干の悲しさを覚えるが、そうしたコアなリスナーは少ないのでDead Vectorsには歴史を更新して行って欲しい。

 

DeadVectors 公式ホームページ+SNS : https://linktr.ee/DeadVectors

 

 

第9位 : Left to Suffer 『Feral』

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ジョージア州アトランタのデスコア5人組、Left to Suffer のセカンド・アルバム。2020年の『A Year of Suffering』から3年。ここまでの成長を誰が想像出来たでしょうか。本作は Matt Thomas がプロデュース/ミックスを手がけ、 Joel Wanasek がマスタリングを担当。ニュー・メタルコアとデスコアを高次元で融合させ、本作でも印象的なニュー・メタルコア的アレンジが随所に組み込まれており、ミュージックビデオになっている「Artificial Anatomy」では新鋭トラップ・アーティスト Kim Dracula がフィーチャーするなど人選も完璧だ。

Left to Sufferの最も素晴らしい持ち味はドライブンなフレーズだ。「Disappoint Me」はヘッドバンギング不可避のドライブ感が楽曲を通じて貫かれており、ボーカル、リフ、個性的なドラムのフィルインなどの細やかな工夫もそのドライブ感を加速させていく。ニューメタルの香りをほのかに香らせながら、Lorna Shore、Signs of the Swarm、Archspireといったバンドらのボーカルにあるような、ショットガン・ガテラルも巧みにブレンドしているから凄い。

Fit For An AutopsyのJoe Badをフィーチャーした「Primitive Urge」はアルバムの中でもスタンダードなデスコアに近いスタイルでありながら、不気味に燻らせるノイズ、シンフォニックなアレンジが旨みを引き立たせる。じっくりと聴き込めば聴き込むほどにLeft to Sufferというバンドの持つ驚異的なポテンシャルを感じることが出来るだろう。

 

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第8位 : Distant 『Heritage』

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2010年代中期から活躍するオランダ出身のデスコア・バンド、Distant のサード・アルバム。「ブラッケンド・デスコア」の新鋭として Unique Leader Records から2枚のアルバムをリリース、その後 Century Media Records への電撃移籍を発表して、本作を完成させた。

今年1月に公開され大きな話題となった楽曲「Argent Justice」には、フィーチャリング・ゲストとしてSuicide Silence, Emmure, Abbie Falls, Acranius, AngelMaker, Bodysnatcher, Cabal, Carcosa, Crown Magnetar, Paleface, ten56., Worm Shepherdの名前が挙げられている。これだけのアーティストがこの1曲に参加していることでSpotifyでは100万回再生を記録するなどDistantの名を高域のメタル・シーンへ広めるきっかけとなった。彼らの代名詞とも言えるダークなスケールを広大に広げながら疾走するブラッケンド・デスコアに個性的なボーカルが次々とフィーチャーされていく様は、参加したミュージシャンのファンであれば引き込まれ、楽しめるはずだ。

この楽曲はアルバムのキーであることは間違いないが、Lorna ShoreのWill Ramosをフィーチャーしたタイトル・トラック「Heritage」も「Argent Justice」と双璧を成すキラーチューンだ。この曲はWill Ramosのパートはもちろん素晴らしいが、Thy Art is MurderやCabalなどを彷彿とさせるブレイクダウンのヘヴィネスが素晴らしい。この曲のブレイクダウン、そしてブラッケンドなファスト・パートの接続などは後続にも影響を与えるはずだ。間違いなくアルバムのハイライト。

Distant周辺は高いクオリティを持つバンドが多く、頭一つ抜きん出た存在へと成長するには更に何かが必要になってくる。その何かが何であるか、まだ誰も知らないがおそらくDistantが見つけるはずだ。今後に期待。

 

Distant 公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/distantofficial

 

 

第7位 : Sail’s End 『Live And Die』

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テキサスとニューヨークを拠点に活動するヘヴィ・メタルコア/デスコア・バンド、Sail’s End が2023年2月にリリースしたこのEPは、あまりにも衝撃的だった。ブレイクダウンYouTuber Ohrion Reacts でも取り上げられ、相当唸らせていたし、ローカルのリアクションYouTuberも彼らのビデオを取り上げていた。

Before I TurnやGlass Crown、Brand of SacrificeにInvent Animate、さらにはWage Warといったソリッド・メタルコア〜ヘヴィ・デスコアから多大なインスパイアを受けたそのサウンドは、とにかく地鳴りのように強烈なブレイクダウンを炸裂させる為に、数多くのエレメンツを散りばめられている。この作品を聴いている時には思い浮かばなかったが、のちに発表されたいくつかのシングルも合わせて見れば、Prompts に非常に近いヴァイブスを感じる。モッシュに特化したフレーズに絡みつくニューメタルコアのエレメンツ、Oceans Ate Alaskaを彷彿とさせるドラムパターンはまさに、という感じだ。

セルフ・プロモーションであること、加えてメンバーのヴィジュアルからかなりナードな気質が漂いまくっているところに親近感を覚えるリスナーも多いだろうが、もしかしたら2023年後半、さっぱり垢抜けたトレンド・バンドに成長している可能性もなくはない。

 

Sail’s End 公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/SailsEnd

 

 

第6位 : Defamed 『Blackblood』

Bandcampで購入する / Spotify / Apple Music

イタリア・ミラノのブラッケンド・デスコア・バンド、Defamed の6曲入りEP。2022年4月に公開された先行シングル「Crystal Prison」の衝撃は凄まじく、悪魔が乗り移ったかのようなデモニックなサウンドスケープが他のブラッケンド・デスコア勢を圧倒、激しく繰り返されるブレイクダウンとブラストビートの転調は、まさに静寂と躍動感の連続。この頃、Lorna Shore の「To The Hellfire」の衝撃を受け、世界各地でブラッケンド勢が軒並み刺激的なトラックの制作を追求していたこともあり、Defamedの存在はやや霞んでいたように思う。

このEP、6曲入りであるが「The Serpent」、「Divinities」、「The Dancer」とそれぞれミュージックビデオになっており、いささかリードシングル集と言った趣がある。作品としてのコンセプチュアルなまとまりというより、個々の楽曲で物語が完結しているような仕上がりなので、とっつきやすい作品であると思う。ブラッケンド・デスコアの現在地として最先端の作品である「Blackblood」、ブラッケンド・デスコア・シーンに次の変化が訪れる前にチェックしておくべし。

 

Defamed公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/wearedefamed

 

 

第5位 : Brand of Sacrifice 『Between Death and Dreams』

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カナダ/アメリカを拠点に活動するヘヴィ・デスコア・バンド、Brand of Sacrifice の先行シングルとして公開されていた「Exodus」、「Dynasty」を含む4曲入りの作品。収録曲全ての楽曲のミュージックビデオが公開されている。

この作品の中で最も印象的な楽曲は「Dynasty」だろう。冒頭、痺れるようなエレクトロニックな音色の中に「〜があっても、生き残るために戦います」という日本語の女性の声が組み込まれている。このフレーズはイントロだけでなく、楽曲の転調にも差し込まれ、この女性の声は随所でシンフォニックでオリエンタルなBrand of Sacrificeのスタイルを表現する為に出現する。

「Dynasty」について、フロントマンのカイルは、「今年の僕にとっての大きな挑戦は、絶望や怒りだけでなく、感情のスペクトルの異なる要素を音楽と歌詞に取り入れることだったんだ。この曲を通して、個人的なストーリーを表現したかった。恐怖を直視しながら個人的な障害を克服することに挑戦し、BRAND OF SACRIFICE全体と同じように、絶対に止められない力になることを歌っている」とコメントしている。また、ファンの反応はBorn of Osirisを想起させるスタイルだというものが多く、バンドが「テクニカルでヘヴィなデスコア」だけでなく、歌詞やサウンド面において非常に多くの挑戦をしていることが伺える。決してデスコア・シーンだけで評価されるようなバンドではなく、例えばこの作品のタイトル・トラックではThe Word AliveやWe Came As Romansにも接近するようなクリーンパートがキーリングになっている。

この先、Brand of Sacrificeは更に深化し、「ヘヴィなデスコア」から脱却していくかもしれないが、彼らの核となるもの、この先も変わらないものがこの4曲で浮き彫りとなっているように感じる。

 

Brand of Sacrifice公式ホームページ : https://brandofsacrifice.com/

 

 

第4位 : The Acacia Strain『Failure Will Follow』/ 『Step Into The Light』

『Failure Will Follow』

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『Step Into The Light』

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マサチューセッツ州を拠点に活動するデスコア/ハードコア・バンド、The Acacia Strainが異なる2枚のアルバム『Failure Will Follow』と『Step Into The Light』をそれぞれRise Recordsからリリース。この2枚はダブル・アルバムではなく、全く異なるコンセプト、そしてソングライティングのプロセスを経て製作されたものである。

本人たちは「デスコア」というレッテルを貼られることを嫌がっているようだが、図らずも彼らはデスコアのレジェンドだ。ハードコアとメタルをクロスオーバーさせる中で、ソリッドでバウンシーなモッシュ・リフを追求し続け、日夜ツアーに明け暮れ、その切れ味を磨き続けてきた。多くのThe Acacia Strainのファンが期待する作風に仕上がっているのが、『Step Into The Light』で、殺気立ったアトモスフィアが立ち込める中、黙々とギロチンのようなリフで切り刻んでいく。決して譜面に起こすことの出来ない、モッシュ・スピリットには感服させられる。

『Failure Will Follow』は、バイオレントなモッシュコアで培った至高のヘヴィネスを違った形で表現することにフォーカス。全3曲入り、どれも10分越えの大曲で「bog walker」に至っては17分という長尺曲。このくらいのボリュームだと、なんとなく楽曲の雰囲気はドゥーミーなものであると想像出来るが、しっかりThe Acacia Strainとわかるトレードマークも豊富に組み込まれており、無理矢理ジャンルとして形容するならば「ドゥーミー・モッシュコア」とか「ブルータル・ドゥーム・メタル」といったところだろうか。このアルバムでツアーしても間違いなくフロアは殺戮現場と化すに違いない。それも精神的に狂気をまとった、そんな危なさがある。

しばしばThe Acacia Strainのカタログを見渡すと、ドゥーミーなアプローチを見せることもあった。ただ今回のようにアルバムとしてとなると、キャリア初だ。結成から20年を超えても、まだまだヘヴィを追求し続けるThe Acacia Strainに脱帽。

 

The Acacia Strain 公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/theacaciastrain

 

 

第3位 : DEVILOOF 『DAMNED』

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ヴィジュアル系メタル・バンド、DEVILOOFのメジャーデビュー作。国内メタルコア・シーンをウォッチしていれば、ヴィジュアル系を通過していなくてもDEVILOOFの名前を耳にしたことがあるだろう。ライブを体感したことがあるのであれば、彼らのデスコア・バンドとしての高いポテンシャルに衝撃を受けたに違いない。

『DAMNED』はストレートなデスコア・アルバムとは訳が違う。もちろんベースにあるのはデスコアであることは間違いないが、細部に施されたアレンジや楽曲構成に驚くべきクリエイティヴィティが隠されている。「Damn」は、デスコアにニューメタルコアのエレメンツをクロスオーバーさせながら、展開の妙を持ってして楽曲を展開させていく。予想不可能な展開に引き込まれた先には、メジャーシーンとは縁遠いスラミング・ブルータルデスメタル/スラミング・ビートダウンの地獄のブレイクダウン/ビートダウンが待ち構えているのだから驚きだ。リフの鋭さでいったらExtermination Dismembermentに匹敵するレベルにあると思う。

ソングライティングにおける実験精神の高さに驚愕する楽曲がその後も続き、エンディングの「False Self」は「Damned」以上に独創的な楽曲で、ミュージックビデオも必見。DEVILOOFのミュージシャンとしての実直さを感じると共に、メタル、特にデスコアの奥深さを感じることの出来る作品だ。

 

DEVILOOF Twitter : https://twitter.com/_Deviloof_

DEVILOOF Instagram : https://www.instagram.com/official_deviloof/

 

 

第2位 : Chelsea Grin 『Suffer in Heaven』

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USデスコア・バンド、Chelsea Grin がニュー・アルバム『Suffer in Heaven』をリリースしました。2022年にリリースされた『Suffer in Hell』に次ぐダブル・アルバムの第2弾である。

Chelsea Grinは、2010年にアルバム『Desolation of Eden』でシーンに登場すると、それまでのデスコアをさらにヘヴィなものへとアップデート。2010年代中期にかけて盛り上がったダウンテンポ・スタイルのデスコアの礎として現代でもその存在は特別なものだ。

そんなChelsea Grinにとって2022年の『Suffer in Hell』、2023年の『Suffer in Heaven』のダブル・アルバムは、キーだったメンバーが抜け、新たな布陣で制作されている。2010年代のデスコア・シーンのキーとして活躍したバンドのフロントマンであった Alex Koehler が、2018年にアルコール依存症を含むメンタルヘルスの問題によってバンドを脱退、Alexと同様、ドラム/ボーカルとしてバンドの中心メンバーとして存在感を見せつけていた Pablo Viveros が一時的にバンドを離脱している。Chelsea Grinサウンドの2つの重要な個性を失ったものの、この『Suffer in Hell』、『Suffer in Heaven』は様々なメディアで高い評価を受けている。

高い評価を受けている理由のひとつに新たに加入したTom Barberが現代メタル、特にデスコア、メタルコア・シーンにおいて高いカリスマ性を持っていることが挙げられる。TomはChelsea Grinの他にニューメタルコア・プロジェクトDarko US のメンバーであり、過去には Lorna Shore にも在籍していたシンガー。Alexとはそのキャラクターは異なるが、Tom参加後初のアルバム『Eternal Nightmare』でChelsea Grinサウンドとの親和性の高さを見せつけた。特にブラストビート・パートなどを取り入れ、ブラッケンド・デスコアにも近いサウンドにおけるTomのボーカルのフィット感は素晴らしい。Pablo Viverosの穴を埋めるセッション・ドラマーには、Glass HandsのNathan Pearsonが参加しており、こちらも文句なしと言えるだろう。

『Suffer in Heaven』は『Suffer in Hell』よりも、これまでのChelsea Grinが鳴らし続けてきた独自性を随所に散りばめつつ、Tomを新しいChelsea Grinのフロントマンとして迎え、新時代のChelsea Grinを作っていくという気概を感じさせてくれる。ミュージックビデオにもなっている「Fathomless Maw」はどこか「Playing with Fire」を彷彿とさせるキャッチーさを持ちながら、Tomのスクリームを生かしたファストなフレーズをエンディングに差し込んでいる。「Yhorm The Giant」から「Sing To The Grave」の流れは、『Suffer in Hell』から『Suffer in Heaven』の流れの中で最もエキサイティングな高揚感に溢れている。

2023年のChelsea Grinに溢れている空気感が明るくて良い。Tom Barberのカリスマ性がこのバンドとして発揮されるのはとても楽しみだし、Darko USとの棲み分けをどうしていくかをファンに注視させることは、デスコアとニューメタルコアの未来にとっても明るい。

 

Facebook: https://www.facebook.com/ChelseaGrinMetal

Instagram: https://www.instagram.com/chelseagrinofficial/

 

 

第1位 : Suicide Silence 『Remember… You Must Die』

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『Remember… You Must Die』は、USデスコア・ベテラン、Suicide Silence が通算7枚目のスタジオ・アルバムで、Century Media Recordsからのリリース。

近年のSuicide Silenceと言えば、OGスタイルへとじわじわ回帰してきたにも関わらず、黄金期のカリスマMitch亡き後は正当に評価されてこなかった。Mitchの死後、Eddieへとボーカルが代わりリリースされた『You Can’t Stop Me』はファンがMitchの幻影を追いかけ、Suicide Silenceの新たなスタートを祝福する余裕がなかったし、その後リリースされたセルフ・タイトル『Suicide Silence』はデスコアから脱却しニューメタルへと舵をきったことで批判を食らった。もう6年も前のことなんだけど、やっぱりSuicide Silence、特にMitchのファンは失望してしまい以降のリリースをちゃんと聴いてないというリスナーも多いはず。これは海外のレビューをみてても感じたことだ。

Eddieが加入して、今年で10年になる。Suicide Silenceが始まってMitchがなくなるまで10年なので、在籍年数が並んだ。それでもまだ、EddieがSuicide Silenceのフロントにいることに違和感を感じてしまう人も多いかもしれない。前作『Become the Hunter』からSuicide SilenceはOGスタイルのデスコアへと戻り始め、本作『Remember… You Must Die』では完全に『No Time to Bleed』期のスタイルへと回帰した。「Mitchの幻影ばかり追いかけていないで、現在進行形のSuicide Silenceを追いかけろ」と、心から言えなかったのは今日まで。これからは今のSuicide Silenceを心から応援したいと思うし、好きだと言いたい。言うべきだ。

アルバム・タイトルからして、本作はオープニングから異常な殺気が漂う。2022年9月に先行シングルとしてアルバムのタイトル・トラック「You Must Die」はこれぞSuicide Silenceと言うべき完璧な楽曲で、墓場で演奏するメンバーが「You Must Die」、「Fuck Your Life」と叫びながら老化して最後に全員死ぬというディレクションがシンプルで良い。アメリカ人っぽいし、こういう無茶苦茶な思想とか投げやりなところがデスコアのコアなエナジーだと思う。

もし誰かがSuicide Silenceはもう過去のバンドだと言っていたら、このアルバムを聴いていないと言えるだろう、話を聞かなくていい。このミュージックビデオのコメントに書き込まれている「Mitchがこれを聴いたら喜ぶだろう」と言うのが、このアルバムの全てだ。

Year Of The Knifeが重大な事故に巻き込まれ一部メンバーが危篤状態に (7/7更新)

ハードコア・バンド、Year Of The Knifeが、6月27日 (火曜日)にアメリカ・ユタ州でのツアー中に大事故に巻き込まれた。バンドが乗車したバンはトレーラートラックの荷台と衝突する交通事故を起こし、ギタリストのAndyとドラマーのAaronの兄弟は、この事故で両足を骨折するなどの怪我を負い、ギタリスト兼ベーシストのBrandonは脳震盪を起こしたが、最も重傷を負ったのはボーカリストのMadiだった。

事故の写真

バンドは事故の後、Brandonによってメンバーの状況を投稿してきた。Madiは頭部と脊椎にかなりの外傷を負い、いくつかの骨折もしているという。7月2日、Brandonの父親でMadiの義父が、Madiの容態について最新情報を伝えた。その中で、マディは今後数週間のうちに何度も手術を受けることになり、昨日の時点では医学的に昏睡状態にあることが明らかにされた。

Madi

「7月2日(日)。この日はBrandonとともにユタに来た最初の日だった。涙を流しました。私たちはここにいることにとても安堵していますが、Madisonのことがとても心配です。皆さんの愛と祈り、そしてBrandonとMadiへの寄付に感謝します。皆さんの愛と寛大さに圧倒されました。Madiは回復していますが、深刻な重体です。

彼女はこれから何度も手術を受けることになり、とても長い道のりを歩むことになります。彼女の治癒への旅が1000マイルかかるとしたら……現在はまだ5マイルしか進んでいません。医学的に誘導された昏睡状態にありながら、明るい兆しを見せている。Madiがいるユタ大学外傷センターは素晴らしいです。私たちはMadiを安心して任せられます。そしてMadiとBrandonには、地球上で最も素晴らしい友人と家族がいることも知っています!私たちはみんなをとても愛しています。

 

この事故に関する最新のアップデート (7月4日) では、Madiの容態が危篤から安定期に入ったことが明らかになった。しかし、残念ながら彼女の回復にはまだ長い道のりが待っている。この事故でバンを大破させられたことは言うまでもないが、これから長い回復過程が待ち受けているので、彼らはクラウドファンディングを行なっている。世界中から多くの寄付が集められており、一度は目標金額を達成するが、標額は20万ドルに引き上げ、寄付を継続しています。

 

Year Of The Knifeへ寄付が出来るGo Fund Meのページはこちら

 

 

*7月7日のアップデート

Madiの怪我は頭部と脊椎への外傷で、現在は安定した状態にあるが、現在も医学的な昏睡状態にあり、今後手術が予定行われるとのこと。

マディの夫であるベーシスト/ギタリストのBrandonは、バンが収容されたレッカー置き場を訪れ、完全に破壊されたAndyのキック・ドラムを除くバンドの機材のほとんどを取り戻すことに成功したことをソーシャルメディアで報告した。

 

 

メンバーの怪我については、ドラムのAndyは足首を2カ所骨折したが、その後退院し、母親のサポートのもとデラウェア州に帰郷した。ギタリストでAndyの双子の弟であるAaronは、大腿骨の骨折を修復する手術を受けた。さらに、シートベルトの衝撃で右頸動脈を裂傷しておりまだ入院中。ギタリスト兼ベーシストのBrandonは脳震盪を起こし、複数の打撲傷を負ったものの数日前に退院した。

 

 

最も重篤な状態にあるMadiは多くの手術に直面しており、予後は不明。Madiはソルトレイクシティに長期滞在する予定で、友人たちの協力で病院の近くに家具付きの家を用意したという。メンバー全員の回復への道のりは長く、収入減、医療費、バンの修理費、ユタでの宿泊費などが経済的負担となっている。この困難な時期にYear Of The Knifeを支援するため、上記のGo Fund Meページで寄付が募られている。

Dream On, Dreamer、『Loveless』リリース10周年を記念し「Hear Me Out II」をリリース

2009 年に結成されたオーストラリア・メルボルン出身のメタルコア・バンド、Dream On, Dreamer が 2013年にリリースした代表的なアルバム『Loveless』から「Hear Me Out」の続編と言える「Hear Me Out II」のリリックビデオを公開しました。

バンドは2022年に解散を発表、今回のリリースは『Loveless』のリリース10周年を記念して行われるツアー「10 Year Loveless Anniversary Tour」に際して発表された。

 

配信URL : https://dreamer.lnk.to/HearMeOutII

 

 

裸のラリーズ『Les Rallizes Dénudés / CITTA’’93』RELEASE記念番組、Dommuneで放送決定

ライブアルバム『CITTA”93』が発売となったばかり (アナログ盤は7/26発売) の裸のラリーズ (Les Rallizes Denudes)。そのリリースを記念して、歴代の裸のラリーズメンバーや、ラリーズ有識者を招き、改めて裸のラリーズの”今世紀的伝説”を紐解く番組”裸のラリーズ『Les Rallizes Dénudés / CITTA’’93』RELEASE記念番組
Les Rallizes Dénudés 「夜、水谷孝の夜」第二夜” が2023年7月5日 20時からDommuneにて放送されることが発表された。

当日のタイムテーブルや出演陣が公開されており、ファンは必見の内容となること間違いなした。

https://www.youtube.com/watch?v=HBafIuWH76A

<TIME TABLE>
■20:00-21:15 第4章「裸のラリーズ秘伝開帳〜CITTA’’93編」2(Secret History of Les Rallizes Dénudés)
●出演:湯浅学、久保田麻琴(ex.裸のラリーズ)、石井勝彦(ex.裸のラリーズ)、守屋 正 (Hayabusa Landings Inc.)、高澤 良(SOUND RAJER)、石井康則(Flying Publishers)
■21:15-22:30 第5章「裸のラリーズ解体新書」2(Naked History of Les Rallizes Dénudés)
●出演:湯浅学、中藤毅彦、ミーシャ前田、宇川直宏(DOMMUNE)、北沢洋祐(Temporal Drift|*ZOOM出演|from US)
■22:30-24:00 第6章「DJ Plays in and around the Les Rallizes Dénudés Only」
●DJ:湯浅学、ミーシャ前田|DJ Plays 裸のラリーズとその周辺ONLY!!!|BROADJ#3201

 

●出演:湯浅学、久保田麻琴(ex.裸のラリーズ)、石井勝彦(ex.裸のラリーズ)、守屋 正 (Hayabusa Landings Inc.)、高澤 良(SOUND RAJER)、石井康則(Flying Publishers)中藤毅彦、ミーシャ前田、宇川直宏(DOMMUNE)、北沢洋祐(Temporal Drift|*ZOOM出演|from US)
■DJ Plays in and around the Les Rallizes Dénudés Only
●DJ:湯浅学、ミーシャ前田|DJ Plays 裸のラリーズとその周辺ONLY!!!| BROADJ#3201

 

Anal Cunt、初期作品をまとめた6枚組LPボックス・セット『Early shit 1988-1991』発売決定

ショートカット・ノイズグラインド伝説 Anal Cunt と亡くなったボーカルSeth Putnam の知的財産を管理する団体が、Anal Cuntの初期作品の大部分を集めた6xLPボックス・セット『Early Shit 1988-1991』をリリースすることを発表しました。このリリースは、1988年から1991年までをカバーする、25を超えるリリースをまとめたもので、F.O.A.D.から7月にリリースされる予定だ。3万円ごえ、本物のAnal Cuntファンのみどうぞ

【内容の詳細】
1stデモ
47曲のデモ
1988年のリハーサル(「A head-shot for your thoughts」pt.1
1989年2月の非常にレアなリハーサル
88曲入りEP
7MONとのスプリット7″
Stuff for Axctionコンピレーション
5634曲入りEP
5634曲入りEPアウトテイク
Master of noiseコンピレーション
Another EP
Meat Shitsとのスプリット7″
Psychoとのスプリット7″
1991年未発表セッション
アンプラグドEP
Live EPのサイド1(ヒューストン、ライブEPのサイド1(1991年7月6日、テキサス)
ライブEPのサイド2(1991年7月13日、フロリダ州イボシティ)
不明なギグ1988(”A head-shot for your thoughts” pt.2 1988年8月26日
インディアナでのライヴ(1989年2月20日)
デュッセルドルフでのライヴ(1990年4月15日)
エンスヘデでのライヴ(1990年4月16日)
シュヴァビッシュ・ホールでのライヴ(1990年4月3日)
ベルリンでのライヴ(1990年4月20日)
ベティグハイムでのライヴ(1991年4月4日)

 

購入はこちら : http://www.recordshopbase.com/coming5775.html