【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : Hiroki (Sailing Before The Wind)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするメタルコア・イベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎HIROKI : BEST ALBUMS OF 2023

August Burns Red 『Death Below』
Veil of maya 『[m]other』
Beartooth 『The Surface』
Currents 『The Death We Seek』
Gideon 『MORE POWER. MORE PAIN.』

▶︎August Burns Red 『Death Below』


 
Stream & Download : https://found.ee/DeathBelow
Official Site : https://augustburnsred.com/
 
August Burns Redの『Death Below』はRyoichiさんもピックアップしていました。August Burns Redと言えば、ドラマーMatt Greinerはメタル・ドラミングに対するストイックな姿勢が有名で、それはそのサウンドが証明しています。ドラマーとしてAugust Burns Redのドラム・サウンドはどのように感じますか?また、おすすめの楽曲などあれば教えて下さい。
 
自分はドラムを始めた当初からMatt Greinerのドラムはチェックしていて、プレイスタイルは自身とは全く違うんですけど、彼の正確なドラミングやアクセントの置き方、シンバルワークなど少なからず影響を受け自身のドラムに消化していった部分はあります。
 
彼の叩くドラムには一音一音叩くフレーズの拘りをとても感じます。特にフレーズ内でのシンバルワークがかなり特徴的かなとは思います。自分が高校生の時にドラムのフレーズが面白いなと感じた曲は『Massengers』の「Up Against the Ropes」です。

 

▶︎Veil of maya 『[m]other』


 
Stream & Download : https://sumerian.lnk.to/Mother
Official Site : https://www.instagram.com/veilofmayaofficial
 
Veil of Mayaの『[m]other』はKosukeさんもピックアップしており、複雑なギターリフの支える地を這うようなドラミングも印象的な作品だと感じます。Hirokiさんのドラムセット、特にシンバルは非常にシンプルなセッティングですが、彼らは非常に複雑なシンバルワークを得意としています (最近はそこまで目立ちませんが)。今後、Sailing Before The Windのサウンドをクリエイトしていくにあたり、この作品にあるような複雑なシンバルワークを取り入れたいいうような考えはありますか?また、ドラマー目線でこのアルバムの優れた点があれば教えて下さい。
 
SBTWでも必要に応じてシンバルは増やしていきたい考えはあります。多種多様なシンバルワークは曲の彩りを作って行くのに重要なピースだと考えてます。このアルバムにもドラマーだからこそ気づく緻密なシンバルワークやフィルなどのフレーズセンスが随所に感じられる作品だと思います。

 

▶︎Beartooth 『The Surface』


 
Stream & Download : https://beartooth.ffm.to/surface
Official Site : http://beartoothband.com
 
Beartoothの『The Surface』はメタルコアという出発点からメインストリームへとステージを変えていくBeartoothにとって非常に分岐点にリリースされたアルバムで、非常にダイナミックでフックの効いた作品に仕上がっています。ドラムに関して言えば、スピードやテクニックというところから距離を置いてシンプルなものになっていると思いますが、シンプルなドラミングだからこそ強調できるメタルコアの魅力は何だと思いますか?
 
自分も近年のBeartoothの作品はよりメインストリームでのライブを想定した曲作りになっているなと感じてます。
 
複雑なドラム(特にメタルコア)は作品をよりテクニカルで聞き応えがあるものに変える反面、複雑すぎると大きい会場などではそのフレーズを100%伝える事は難しいと思います。Beartoothの『The Surface』はシンプルなドラムですが、一音一音のドラムパワー感や強調したいパートをシンプルにする事によってより曲のアクセントが強調されるように作られていて、メタルコアの音楽でもかなり聴きやすく規模の大きい会場でも自身たちの曲を100%伝える事が出来る作品と考えてます。

 

▶︎Currents 『The Death We Seek』


 
Stream & Download : https://bfan.link/remember-me-2
Official Site : https://currentsofficial.com/
 
Currentsの『The Death We Seek』はSailing Before The Wind、Sable Hillsのメンバーの多くがピックアップしています。そしてそれは世界中のメタルコア・シーンにおいても同じで、多くのメタル・メディアがこのアルバムについて様々な意見をポストしています。ドラミングやサウンド・プロダクションといった細かいところももちろんお聞きしたいですが、単純にこのアルバムの凄さって何だと思いますか?
 
2023年リリースされたアルバムの中でもかなり完成度の高いメタルコアをしている印象です。トレンドもしっかり抑えつつCurrentsの”らしさ”も感じられる作品だと感じます。ドラミングもGtやVoの邪魔をしない且つここぞという時のドラムもも最も合うドラムフレーズが採用されていてドラムにもこの作品の完成度を上げる要素が随所に散りばめられてると思います。

 

▶︎Gideon 『MORE POWER. MORE PAIN.』


 
Stream & Download : https://gideon.lnk.to/MOREPOWERMOREPAIN
Official Site : https://gideonal.com/
 
Gideonの『MORE POWER. MORE PAIN.』はSable HillsのドラマーKeitaさんもピックアップしていました。ハードコア/メタルコア、加えてタイトルトラックに関してはハードロック的なシンプルなビートも面白いところなのですが、ドラマーを惹きつける魅力はどんなところにあると思いますか?
 
Gideonのドラムの1番の魅力はシンプルなビートでも感じられる圧倒的なグルーヴ感です。タイトルトラックに関してもハードロック調のドラミングですがGideonが待ってるグルーヴィさを全面に引き出せている曲だと思います。
 

▶︎HIROKI : BEST SONGS OF 2023

▶︎Darko US 「Rampage」

 

▶︎The Ghost Inside 「Death Grip」

 

▶︎Malevolence 「Left Outside Alone」

 

▶︎After The Burial 「Death Keeps Us From Living」

 

▶︎BABY METAL 「Mirror Mirror」

想像していた以上にヘヴィなリストで驚いたと共に、BABY METALの「Mirror Mirror」はグローバル・スタンダードなプログレッシヴ・デスメタル/メタルコアとの親和性があり、大きな話題となりました。このリストについて全体の雑感について語って下さい。
 
自身がドラムのフレーズに惹かれた曲を選出しました。
 
Darko USは好きなドラマーの1人である現EMMUREのJosh Millerが参加していることもあり今回の作品も彼の持っているグルーヴィでテクニカルなフレージングがかなりフィットしているのを感じます。またBABY METALもアイドルという肩書きながら他に追随しない独自のメタルのスタンダードを貫いていて、『Mirror Mirror』もバックミュージックのメタルコアに日本らしさのあるメロディラインが乗せられていてこれこそBABY METALと言う音楽性に惹かれ今回選出しました。
 

▶︎HIROKI : Social

https://twitter.com/hiroki_dr_
https://www.instagram.com/cgatehiroki/
 

PROMPTS、ニュー・シングル「Sun Eater」2月リリース決定! 東名阪リリースツアー「RITE OF PASSAGE TOUR 2024」の開催も


 
東京を拠点に活動するメタルコア・バンド、PROMPTS が、ニュー・シングル「Sun Eater」を2月9日に配信リリースすることを発表しました。バンドはオーストラリアのレーベル Greyscale RecordsとPaledusk、Annalynnに次いでアジアでは3組目となるグローバル契約を発表したばかりで、最新シングル「Sun Eater」はPolaris、Thornhill、Alpha Wolfといったオーストラリアを拠点に世界のトップ・シーンで活躍するバンドを手掛けてきたLance Prencがミックス/マスタリングを担当。PROMPTSにとって、Greyscale Recordsと契約してから初のシングルとなっている。
 
また、「Sun Eater」のリリースを記念し、3月18日から20日にかけて東名阪リリースツアー「RITE OF PASSAGE TOUR 2024」を開催することを併せて発表した。このツアーにはKNOSISをはじめ、Greyscale Recordsのレーベル・メイトでありcoldrain主催のフェス「BLARE FEST 2020」に出演した経歴を持つタイ出身のANNALYNNや、東京公演のみタイのメタルコア・バンドDEFYING DECAYが出演する。チケットはe+にて1/20 10:00から発売開始。
 
▶︎ニュー・シングル「Sun Eater」
2024.02.09 Release
PRE-SAVE LINK : https://orcd.co/prompts-suneater
 
▶︎PROMPTS pre. 「RITE OF PASSAGE TOUR 2024」
 
3/18(月) 大阪CLAPPER
3/19(火) 名古屋R.A.D
3/20(水祝) 東京CLUB ASIA
 
act:
ANNALYNN
KNOSIS
DEFYING DECAY (Only Tokyo)
 
チケットインフォメーション
https://eplus.jp/sf/word/0000122098

VICTIMOFDECEPTION、ファースト・アルバム『MIGHTY RULERS』リリースツアー 1月27日からスタート!

デスコア・バンド、VICTIMOFDECEPTION が、ファースト・アルバム『MIGHTY RULERS』のリリースを記念したツアー「1st album “MIGHTY RULERS” release tour」の東京、名古屋、大阪公演の出演アーティストを発表しました。このツアーにはDIVINITIST、そしてFalling Asleepが全公演に帯同する事が決まっており、各地熱いメンツが決定している。チケットは早めにGETしておこう。

Instagram : https://www.instagram.com/victimofdeception_official/
X : https://twitter.com/vodjpn

 

▶︎VICTIMOFDECEPTION「1st album “MIGHTY RULERS” release tour」

2024.1.27 仙台SPACE ZERO
2024.1.28 新潟CLUB RIVERST
2024.2.10 大阪DROP
2024.2.11 名古屋3STAR
2024.2.24 東京ReNY alpha

 

2024年1月27日 (土曜日) : SPACE ZERO

▶︎出演
VICTIMOFDECEPTION
FALLING ASLEEP
DIVINITIST
DECEMBER EVERYDAY
提婆達多
INVERT HOURGLASS
OPTIMIST

チケット : https://t.livepocket.jp/e/vod-sendai

 

2024年1月28日 (日曜日) : CLUB RIVERST

▶︎出演
VICTIMOFDECEPTION
FALLING ASLEEP
DIVINITIST
INVERT HOURGLASS
DOOMS OF GHETTO
NORTHLANDPUREHATE
OPTIMIST

チケット : https://t.livepocket.jp/e/vod-niigata

 

 2024年2月10日 (土曜日) : DROP OSAKA

▶︎出演
VICTIMOFDECEPTION
FALLING ASLEEP
DIVINITIST
LAST DAY DREAM
TEMPLE
and more…

チケット : https://t.livepocket.jp/e/vod-osaka

 

2024年2月11日 (日曜日) : 3STAR IMAIKE

▶︎出演
VICTIMOFDECEPTION
FALLING ASLEEP
DIVINITIST
HOSTILE EYES
RUNS IN BONE MARROW
and more…

チケット : https://t.livepocket.jp/e/vod-nagoya

 

2024年2月24日 (土曜日) 赤羽ReNY Alpha 

▶︎出演
VICTIMOFDECEPTION
FALLING ASLEEP
DIVINITIST
PROMPTS
KRUELTY
and more…

チケット : https://t.livepocket.jp/e/vod-tokyo

 

Sable Hills、ニュー・シングル「Odyssey」リリース!

昨年末、ドイツの名門レーベル「Arising Empire」との契約を発表し、2024年4月にサード・アルバム『Odyssey』のリリースが控えているメタルコア・バンド、Sable Hillsがアルバムからの第一弾先行シングルである「Odyssey」をリリース、併せて、Arising EmpireのYoutubeチャンネルにてVISUALIZERを公開しました。

 

▶︎SABLE HILLS『Odyssey』2024年1月12(金)配信
https://lnk.to/SH_Odyssey

アルバムへの期待が高まる、新生SABLE HILLSを象徴する一曲。本日より、恵比寿LIQUIDROOMでのPre-Debut Showのチケット二次先行もスタートしているので、チケット確保もお忘れなく。

▶︎SABLE HILLS Odyssey Pre-Debut Show
2024年3月16(土)東京 恵比寿 LIQUIDROOM
OPEN 17:00 / START 18:00
前売券:4,500円 (ドリンク代別途)
VIP前売券:7,000円 (ドリンク代別途)
【VIP内容】メンバーサイン入りA2ポスター付 / MEET & GREET / 優先入場
【TICKET NOW ON SALE】https://eplus.jp/sablehills
2次先行:1/12(金)00:00~1/21(日)23:59
一般発売:1/27(土)正午12:00~

■SABLE HILLS LIVE SCHEDULE■
1/28(日)渋谷 club asia
ONE BULLET LEFT supported by RIFF CULT
https://eplus.jp/onebulletleft

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : Keita (Sable Hills)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするイベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎KEITA : BEST ALBUMS OF 2023

・Chamber 『A Love To Kill For』
・Gideon 『MORE POWER. MORE PAIN.』
・Dying Wish 『Symptoms of Survival』
・Silent Planet 『SUPERBLOOM』
・Mouth for War 『Bleed Yourself』
 
▶︎Chamber 『A Love To Kill For』

Stream & Download : https://lnk.to/ChamberTN
Official Site : https://chamber615.com/
 
他のSable Hillsのメンバーとは一味違ったアルバムをピックアップしていただけたことは興味深いことです。特にChamberはカオティック〜マスコアを通過したメタルコアでありながらオールドスクールな側面も持ち合わせたアルバムでサウンド・プロダクションも興味深いです。ドラマーとして、このアルバムの良さ、味わい深さはどんなところにあると思いますか?
 
本作もサウンド・プロダクションを手掛けたのが Randy Leboeuf ということもあり、ドライでヘヴィ、そしてモッシーな作品になっていると感じました。元々Chamberの作り出すサウンドが好きなのですが、本作はカオティックな側面とオールドスクールな側面の整合性が更に取れていて、そのバランスが素晴らしいと思いました。ブレイクダウン中のうねるような連続的なテンポチェンジは特筆すべきアプローチだと思います。

 

▶︎Dying Wish 『Symptoms of Survival』

Stream & Download : https://bfan.link/symptoms-of-survival
Official Site : https://dyingwishhc.com/
 
現在の国内メタルコア・シーンでも言えますが、Dying Wishのようなメロディック・スタイルは世界のメタルコア/ハードコアのトレンドになりつつあると感じています。Dying Withは現在の日本のメタルコア・シーンに与えている影響は非常に強いと感じていますので、KeitaさんなりにこのDying Wishの魅力は何か書いてみて欲しいです。
 
Dying Withは、90’s原点回帰の波が世界的に高まるきっかけを作った一つのバンドだと思っています。『Symptoms of Survival』に関して言うと、透き通るようなクリーンパートから血生臭いモッシュパートへの振り幅が大きくそこがとても好きなポイントです。ニュースクール・ハードコア好きであれば唸らないはずはないリフしかない点も素晴らしいと思います。

 

▶︎Gideon 『MORE POWER. MORE PAIN.』

Stream & Download : https://gideon.lnk.to/MOREPOWERMOREPAIN
Official Site : https://gideonal.com/
 
ドラマーとしてGideonのようなタフでヘヴィなグルーヴを持ち味とするサウンドを持つバンドが刺激的なのはとても良く理解出来ます。Sable HillsでのKeitaさんのプレイ・スタイルも確かな技術によって生み出される「グルーヴ」がキーだと思いますが、Gideonの『MORE POWER. MORE PAIN.』におけるグルーヴの心地良さがドラムにあるとして、どんなテクニックやフレーズにしびれましたか?
 
GideonのJakeは自分が最もリスペクトするドラマーの中の1人です。彼の持ち味として特徴的なポイントは、ビートの中に3連符と6連符をアクセントとして入れた上でゴーストノートを多用することで、シンプルなビートでも抑揚を最大限に生み出していくところにあると思っています。そこがGideonのグルーヴの根源になっていると感じますね。特に「Too Much is Never Enough」の0:19~のTrap-Hihat的アプローチは痺れました。

 

▶︎Silent Planet 『SUPERBLOOM』

Stream & Download : https://silentplanet.ffm.to/superbloom
Official Site : https://www.solidstaterecords.com/silent-planet
 
Silent Planetをピックアップされたことは、クラシカルなメタルをルーツに持つSable Hillsにとってあまり繋がりを感じませんが、どうしてこのアルバムをピックアップしたのでしょうか?彼らのほかにプログレッシヴ・メタルコア系のアーティスト聞きますか?加えて、ドラマー目線でこのアルバムを聴いた時、どんな魅力を感じますか?
 
確かにSABLE HILLSはエレクトロ的なアプローチをあまりしませんが、根幹にあるヘヴィネスに対しては親和性があると思っています。ドラマー的観点ですと、音の配置や音色のセンスがとにかく綺麗だと思いますね。音を入れすぎない抜きの美学を感じます。

Silent Planetを筆頭にメタルコアというカテゴリーから超越していく個性派が「エレクトロニック」をキーワードに発展しています。『SUPERBLOOM』も彼らの独自性のキーとも言えるアトモスフィアを、本作でエレクトロニックなものに大胆に置き換えていて、それはリズム、グルーヴにおいても顕著です。ほかにも多くのエレクトロニックなメタルコアを聴かれていると思いますが、Silent Planetの新作の中で衝撃を受けた楽曲などを挙げつつ、エレクトロニックなビートの中で「ドラム」はどんなアプローチが魅力であると思いますか?
 
「Antimatter」に一番衝撃を受けました。まず、バンドの曲なのにバンドのビートから始まらないんだってなりました。エレクトロでよくあるリフレイン的な曲展開の仕方をSilent Planet流に昇華しているのも印象的でしたね。エレクトロニックなビートの中でのドラムの立ち位置は他の音をどれだけ目立たせられるかにあると思っています。あえて叩かないのがイイってことですね。

 

▶︎Mouth for War 『Bleed Yourself』


 
Stream & Download : https://mouthforwarco.bandcamp.com/album/bleed-yourself-2
Official Site : https://www.instagram.com/mouthforwarco/
 
RictさんもMouth for Warの新作をピックアップしていました。バンド内で好きな音楽や最近聴いている音楽を共有したりしていますか?Mouth for Warの魅力と共に、普段のソングライティングでこうした他のバンドからの影響を参考にしていくとき、Sable Hillsらしさとどのようにしてクロスオーバーさせることを心がけていますか?
 
Mouth for Warの魅力はあくまでもメタルコア/ハードコアの枠から外れずともその暴力性がとても高いところにあると思います。ドラムアレンジメントをしていく際にアプローチ方法として参考にすることはありますが、自分がモッシュコア / ハードコアから受けている影響の方が大きいので、その曲に対して自分なりにアレンジしていった結果気づいたらクロスオーバーしているケースの方が多いかもしれません。


 

▶︎KEITA : BEST SONGS OF 2023

 
▶︎Boundaries 「Armageddon」


 
▶︎Dying Wish 「Torn From Your Silhouette」


 
▶︎Foreign Hands 「Conditioned for a Head-On Collision」


 
▶︎Mouth for War 「Saturate Me」


 
▶︎The Ghost Inside 「Death Grip」


 
Foreign HandsやMouth for WarなどのフレッシュなバンドからThe Ghost Insideまで幅広くタフなグルーヴを持つ楽曲がリストインしました。この中でドラマーとして最も驚くべきテクニックを持っていると感じた楽曲はありますか?
 
他パートとのユニゾンなどがあるので前提としてメタルコアやハードコアはドラムのフレージング的にある程度の型があるものなのですが、上記のドラマーは+α自分の色を出しているというか、何か新しいアプローチを試みてるのが感じられるのが素晴らしいと思いました。自分もその1人なので。
 

▶︎Keita : Social

https://x.com/KeitaSableHills
https://www.instagram.com/keita_sablehills/
 

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : Liku (Sailing Before The Wind)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするメタルコア・イベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎LIKU : BEST ALBUMS OF 2023

Invent Animate 『Heavener』
nothing,nowhere. 『VOID ETERNAL』
Void Of Vision 『CHRONICLES』
Hopes Die Last 『Once and for all』
Silent Planet 『SUPERBLOOM』
 
▶︎Invent Animate 『Heavener』


 
Stream & Download : https://inventanimate.komi.io
Official Site : https://www.instagram.com/invent_animate/
 
Invent Animateは現代メタルコア・シーンの中でも特にコアなリスナーを常に驚かせてくれる存在として地位を確立しています。そして『Heavener』はこれまでInvent Animateが追求してきたものをダイナミックに表現することに成功した、名作だと思います。Likuさんはこのアルバムの中で好きな曲はありますか?また、Invent Animateの魅力についてSailing Before The Windのファンの皆さんに教えていただけると嬉しいです。
 
特に好きな曲は”Shade Astray”です、あのブレイクダウンを初めて聴いた時は喰らいすぎましたね。メロもキャッチーですし、正にこのアルバムを象徴する曲だと思います。Invent Animateの魅力は聴いていると宇宙空間にいるかと錯覚してしまうような浮遊感と壮大感。それとギターフレーズの完成度の高さだと思います、本当に全曲の全セクションギターがかっこいい。

 

▶︎nothing,nowhere. 『VOID ETERNAL』


 
Stream & Download : https://nothingnowhere.lnk.to/VOIDETERNAL
Official Site : https://www.instagram.com/nothingnowhere/
 
nothing,nowhere.がリストインしているのは驚きでした。エモラップを出発し、エモ・リヴァイバルの先頭に立つnothing,nowhere.ですが、このアルバムを選んだ理由があれば教えて下さい。また多くのコラボレーターとの共作が収録されていますが、お気に入りの楽曲はありますか?
 
このアルバムを選んだ理由は楽曲のバリエーションの多さです。正直30分越えのアルバムを聴いていると途中で飽きてスキップしながら聞いたり、6曲目ぐらいで辞めてあとの曲は次の日に聴いたりするんですけど…このアルバムは通しでノンストップで聴きましたね。飽きずに聴ける事ってアルバムという作品においてとても大事だと思っています。
 
“TRAG3DY(feat. WILL RAMOS)”がお気に入りです、フィーチャリングパートがきた途端に厳つすぎて最高です。

 

▶︎Void Of Vision 『CHRONICLES』


 
Stream & Download : https://www.angelofdarkness.co/
Official Site : https://www.instagram.com/voidofvision/
 
Void Of Visionは既にメタルコアという言葉では表現することのできない領域へと足を踏み入れ、誰にも真似できないスタイルを『CHRONICLES』で完全に確立しました。ミュージシャンとして、このアルバムの全体的な魅力について教えていただきたいのと、ギタリストとしてこのアプローチの仕方には驚いたなどというフレーズがありましたら、教えて下さい。
 
メタルコア× エレクトロニックというクロスオーバーの一つの完成形がこのアルバムにあたると思っています。ギターに関しては静と動のバランスが絶妙で、所謂メタルコア的なセクションではしっかりとリフで押し出して、それ以外のセクションではバックで土台を支える事に徹してる。これって意外に難しい部分なんですよね。

 

▶︎Hopes Die Last 『Once and for all』
 

 
Stream & Download : https://spoti.fi/41Sjt9O
Official Site : https://www.instagram.com/hopesdielastofficial
 
Hopes Die Lastは日本でも多くのファンを持つベテラン・メタルコア/ポスト・ハードコア・バンドです。彼らの復活は世界中で話題になりましたし、ソーシャル・メディアでは来日を望む声も多く聞こえてきました。そのスタイルは決して最先端のものではないですが、非常に完成度の高いアルバムだと思います。Likuさんはいつ頃からメタルコアを聴いていましたか?Hopes Die Lastを聴き始めた頃の思い出や、今回のバンド復活について何か思うことがあれば教えて下さい。
 
メタルコアを聴き始めたのは17歳の時です。高校の軽音部でバンドをやっていてその時の顧問にDream TheaterやEPICAを聞かされて、そこからヘヴィミュージックを色々ディグってメタルコアに辿り着きました。最初は日本のメタルコアバンドを聴いていて徐々に海外のバンドを聴くようになってましたね、Hopes Die Lastを知った時もその頃でした。
 
一度活動が止まったバンドがまた息を吹き返すのって本当に奇跡的な事だと思うので(しかも最高の新譜を引っ提げて)ただひたすらに嬉しかったですね。

 

▶︎Silent Planet 『SUPERBLOOM』


 
Official Site, Stream & Download : https://silentplanet.ffm.to/superbloom
 
Silent PlanetはInvent Animateなどと共に、メタルコアが持つ可能性を拡大しているクリエイティヴなバンドとしてミュージシャンからの評価が非常に高いバンドだと思います。本作のサウンド・プロダクションもメタルコアという言葉だけでは表現できない多様性に富んでいますが、このアルバムの良さについて思うことがあれば教えて下さい。
 
Silent Planet節を爆発させつつもしっかりと新しい要素を入れた、正しく正統進化なアルバムになっていると思います。最後の2曲のドラマチックな展開も聴きどころです。
 

▶︎LIKU : BEST SONGS OF 2023

▶︎The Plot In You「Left Behind」

▶︎Hollow Front「Letting Go」

▶︎Soulkeeper「Holy Design」

▶︎Miss Fortune「Black Pixie(On The Edge)」

▶︎Falling In Reverse「Watch The World Burn」

SoulkeeperやHollow FrontといったバンドがThe Plot In Youと共にリストインしているのは非常に納得がいくというか、Likuさんのメタルコア趣味が感じられる選出であると感じました。Miss FortuneやFalling In Reverseといった一見、Sailing Before The Windとはまた違ったスタイルのバンドもリストに入っていますが、これらの楽曲を選んだ理由についてそれぞれの楽曲の良さ、ポイントについて触れながら感想を教えてください。
The Plot In Youの”Left Behind”は確実に2023年の名作でした、本当に一度聴いただけで次に聴くときには思わず口ずさんでしまう。かなり叙情的で内省的な歌なので歌詞にも注目するとより楽しめると思います。アルバムの期待感MAX。
Hollow Frontの”Letting Go”は2022年に”Comatose”がリリースされた時以来の衝撃でした。前作からかなり色々な出来事があったバンドですが、これからも素晴らしいものを生み出していって欲しいと思っています。
Soulkeeperの”Holy Design”を初めて聴いた時は「えぇ…」って普通に引きましたね笑、「こんな曲作り出す人間いるのか」ってなったのを覚えています。でもちゃんとかっこいいんですよね、ボーカルも曲に負けてないですし。
Miss Fortuneは今まで曲を聴いたことがなかったんですがこの曲で完全にファンになりましたね、やっぱりハイトーンボーカルは大好きです。あとギターリフが物凄くシンプルでしっかり耳に残るけどまったくくどくないのも最高ですね。
Falling In Reverseはもう確実に彼等にしかできない音楽性にたどり着きつつあると思います。YouTubeにこの曲のライブ映像があるので是非そちらもチェックしてみて下さい、ライブアレンジが最高すぎるので。

 

▶︎Liku : Social

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : UEDA (Sable Hills)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするイベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎UEDA : BEST ALBUMS OF 2023

The Word Alive 『Hard Reset』
Crown The Empire 『DOGMA』
Bury Tomorrow 『The Seventh Sun』
Of Mice & Men 『Tether』
Void Of Vision 『CHRONICLES』
 
▶︎The Word Alive 『Hard Reset』
 

 
Stream & Download : https://orcd.co/hardreset
Official Site : https://www.wearethewordalive.com/
 
The Word Aliveは長年のキャリアを通じて一貫した魅力を持った実力派ですね。これまでリリースされてきたThe Word Aliveのアルバムに比べてこの『Hard Reset』にはどんな特筆すべき魅力があると思いますか?
 
『Hard Reset』は、The Word Alive is Dead…」から始まるとてもメッセージが強い作品ですよね。古くからのファンはもちろん、新しい世代のメタルコアファンにも確実に刺さる一枚になっていると思います。個人的にはアルバムラストを締めくくる「War With You (feat. From First To Last)」にかなり胸を打たれました。

 
▶︎Crown The Empire 『DOGMA』
 

 
Stream & Download : https://riserecords.lnk.to/DOGMA
Official Site : https://www.crowntheempire.net/
 
『DOGMA』はCrown The Empireの歴史において、またメタルコアの歴史においても非常に刺激的でチャレンジングなサウンド・プロダクションが注目され、ヒットしましたね。このアルバムの魅力は何だと思いますか?またお気に入りの楽曲などはありますか?

どの曲もかなりパンチが効いているのですが、アルバムを通して聴いても最後まで飽きずに聴けちゃうところですかね。胃もたれしそうだけどしない感じというか。Crown The Empireというバンドの良いところをより凝縮した一枚かと思います。中でも「Someone Else」が特にお気に入りです。他の楽曲と比べてシンプルかつ軽快なリズムワークが際立ってフックになり印象に残っています。

 
▶︎Bury Tomorrow 『The Seventh Sun』
 

 
Stream & Download : https://BuryTomorrow.lnk.to/p2FxDc8M
Official Site : https://www.bury-tomorrow.com/
 
Wataruさんがピックアップされていたのと同様、Bury Tomorrowは世界中のメタルコア・ミュージシャンにとって多くのヒントを与えてくれるようなクリエイティヴなダイナミズムに溢れた快作です。ベーシストとして、特に衝撃的だったフレーズや楽曲は何かありますか?
 
メタルコア・バンドにおいてベーシストの立ち位置に関して、実は難しいものじゃないかと考えています。というのも、ベースを弾く事以外に求められるものって実は多いのかなと。自分の場合はそれがシャウトでのコーラスだったりパフォーマンスだったりするのかな。Davydのベースプレイはとてもダイナミクスがはっきりしていて休符と音を伸ばすところの使い分けが上手いなと。特に今回のアルバムの中だと「The Carcass King (feat. Cody Frost)」ではそのメリハリがあるベースプレイが楽しめると思います。ライブでのパフォーマンスもカッコよくて目がいってしまいますね。

 

▶︎Of Mice & Men 『Tether』
 

 
Stream & Download : https://ofmicemen.bfan.link/tether-1
Official Site : https://www.ofmiceandmenofficial.com/
 
Of Mice & MenはUEDAさんがSable Hillsに加入する前 (Ocean From The Dead Screamメイン時代) の2000年代後期からトップシーンで活躍し、スタイルチェンジを遂げてきたベテランですよね。このバンドはUedaさんにとっても思い入れのあるバンドであると思いますが、他の作品と比べて『Tether』で聴くことが出来る特筆すべきポイントなどはありますか?
 
もともとその時代のトレンドを取り入れるのが得意なバンドだと思っています。ボーカルがAaronに代わり、しばらくの間ベース/ボーカルだったのも印象に残っています。全体を通してモダンに仕上がった作品ではあり、Of Mice & Menというバンドの良さを詰め込んだ一枚だと思います。ボーカルワークは特に侘び寂びを感じます。

 
▶︎Void Of Vision 『CHRONICLES』
 

Stream & Download : https://vov.lnk.to/angelofdarkness
Official Site : https://unfdcentral.com/artists/void-of-vision/
 
Void Of Visionは言うならば、メタルコア・シーンの革命児とも言うべきフレッシュでクリエイティヴな存在でこの『CHRONICLES』シリーズもジャンルの枠にとらわれない作品でした。ミュージシャンとして、確立してきたスタイルを変化させる怖さや葛藤は常に抱えていると思います。そうした背景も考えつつ、Sable Hillsで挑戦してみたいスタイルや参考にしたいバンドはいますか?
 
SABLE HILLSの印象って、ギターリフが主体のメタルバンドという印象を持たれることがかなり多いと思います。例えば、その中でアルバムをリリースした際に、『CHRONICLES』の楽曲のような電子音やローチューニングのヘヴィなリフやブレイクダウンを中心に進行して楽曲があっても面白いのかなと。『INTO THE DARK』のようなメロディーもありつつしっかりヘヴィに落とし込むような楽曲があっても面白いのかなって。ライブ映えもしそうですしね。

 

▶︎UEDA : BEST SONGS OF 2023

▶︎Attila 「Handshakes with Snakes」

 

▶︎If I Were You 「Downfall」

 

▶︎The Devil Wears Prada 「Salt」

 

▶︎Annisokay 「Human」

 

▶︎thrown. 「Guilt」

Attilaがリストインしたことは、Ocean From The Dead ScreamからのUEDAさんのファンとして、とても嬉しいことです! ほかにもthrownといったニュー・メタルコアと呼ばれる新鋭バンドなども入っていますが、これらの楽曲について、またはバンドについて教えて下さい。
 
Attilaは特に生き様が強く感じられるバンドかなと。今回挙げさせてもらった「Handshakes with Snakes」はインロトのヘヴィなリフに対してガッツリラップを載せていくFronzのボーカルスタイルが炸裂している作品ですよね。歌詞なんかも多分リアルなんだろうなと。笑
 
If I Were You、The Devil Wears Prada、Annisokayに関しては割と初期の頃からよく聴いていました。どのバンドも一貫して表現方法は変われど、自分たちのスタイルを貫いているバンドだなと印象を受けます。原点を大切にしているというか、初期衝動というか。そういったものを強く感じさせられました。
 
thrown関してはちょっと特殊で、自分がタトゥーが好きで、それをディグっている時にVoのMarcusのアカウントを見つけて、そこから彼の前バンドGrievedを聴き始めるって流れでした。ちょうどその時ピンボーカルでのライブがあったりでスタイルを参考にさせてもらったりとか。しばらくしてthrown.を知った時に「あれ、こののボーカルって…」って思ったくらい印象に残ってました。thrown.でも力強い声を聴けて嬉しく思います。
 
どんなバンドでもその人のライフスタイルだったり、初期衝動が強く滲み出るようなバンドやプレイヤーってすごくかっこいいなと思って、特にライブを見る時はその人がどういうものを持って演奏に望んでいるんだろうかというのは気にしています。特に印象に残るプレイヤーってどんな形であれ自分のスタイルや信念を持っている人が多いと思っていて、そういう人って年齢や性別、国籍問わずかっこいいんですよね。とにかく何かが滲み出てるプレイヤーは無意識にチェックしてしまいます。僕自身もそれを感じさせるプレイヤーになりたいなと思います。
 

▶︎UEDA : Social

https://twitter.com/ueda__sh
https://www.instagram.com/ueda_sh/

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : Kosuke (Sailing Before The Wind)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするメタルコア・イベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎KOSUKE : BEST ALBUMS OF 2023

Veil Of Maya 『[m]other』
Bleed From Within 『Shrine』
Auraborn 『Incandescent』
Cliffside 『Deeper Water』
Rise to Fall 『The Fifth Dimension』
 
▶︎Veil Of Maya 『[m]other』
 

 
Stream & Download : https://sumerian.lnk.to/Mother
Official Site : https://www.instagram.com/veilofmayaofficial
 
Veil Of Mayaの『[m]other』がリストインしているのは非常にKosukeさんらしいと感じました。Sailing Before The Windだけでなく、Kosukeさんの音楽活動の中でもVeil Of Mavaの影響を感じる瞬間が多いと感じます。ギタリストとしてこのアルバムの素晴らしさについて教えて下さい。また、この曲のこのフレーズに衝撃を受けたなどあれば教えて下さい。
 
このアルバムは、ここまでVeil of Mayaが試行錯誤してきたものを咀嚼して作り上げた総集編的な内容にも感じます。ギター弾きの目線では一聴してMarc Okuboだと分かるフレーズの音遣いに強い説得力を感じていて、今作でも独特なメロディラインのフレーズに効果音的なフレーズまで必殺技のオンパレード。Tr.3 2:19~、Tr.7、0:57~、Tr10 2:48~に代表されるような、弦を一本チョーキングアップ/ダウンして鳴らすのをリフに混ぜる、というシンプルな方法ですら「Veil of Mayaらしさ」にしてしまうあたりにヒーローたる所以を感じます。

衝撃感で一つ挙げるとTr.6 「Disco Kill Party」の2:22~のセクション、比較的ポップな曲にこういうギミックが入っていると上がりますね。前作のTr.2 「Fracture」でも思いましたけどライブで弾くときどうしているのだろうと思ってしまうメリハリ具合に打ちのめされます。

 

 

▶︎Bleed From Within 『Shrine』
 

 
Stream & Download : https://bleedfromwithin.bfan.link/shrine-deluxe.yde
Official Site : https://www.bleedfromwithin.com/
 
Bleed From Withinは2023年にLOUD PARK で来日も果たし、『Shrine』の素晴らしさをライブでも体感し衝撃を受けた日本のメタル・ファンも多いはずです。彼らはメタルコアを出発して、今ではその枠に留まることのない存在へと成長していますが、長年彼らを見つめてきて、このアルバムはBleedFromWithinにとって、どのようなアルバムであると感じましたか?
 
メタルコアバンドがルーツである広いメタルのシーンで評価されることは文脈的には自然に聞こえる反面、得体の知れないハードルの高さを感じることがあります。そんな中で”Shrine”はBFWが「メタルにルーツのあるメタルバンド」であるということをより明確に訴求するものになったのかなと。でも決してこれまでやってきたことをかなぐり捨ててやっているわけではなくて、1stアルバムのHumanityから陸続きの音楽でそれを成し遂げているように感じられることにファンとして嬉しさも感じます。ほかのメタルコアバンドがあまり持ってない独特なダークさが魅力で、そこがメタル/メタルコアファン双方に一層刺さったように思います。

 

▶︎Auraborn 『Incandescent』
 

 
Stream & Download : https://linktr.ee/auraborn
Official Site : https://www.facebook.com/aurabornUS/
 
読者の中にはAuraborn というアーティスト、そして『Incandescent」という作品をKosukeさんのリストをきっかけに聴かれる方がほとんどだと思います。プログレッシヴ・メタルコア、いわゆるDjent的なバンドですが、このバンド、そしてアルバムの魅力を教えて下さい。
 
ベースはDjentなメタルコアサウンドですが、要所で2000年代近辺にいたプログレメタルっぽさを感じる瞬間があり、そのバランス感覚にグッときました。Regrowthの中盤のボコーダー風アレンジとかが非常に分かりやすいですけど、それ以外に単音系のギターフレーズも時折プログレメタル由来に感じるものが含まれているのを聞くたび発見していて、引き続きチェックしていきたいですね。

 

▶︎Cliffside 『Deeper Water』
 

 
Stream & Download : https://td.cliffsideofficial.com/DW
Official Site : https://www.instagram.com/cliffsideofficial
 
Cliffside の「Deeper Water』は、古典的なメタルコアが下地にありながらも、非常に挑戦的なギターのフレーズ、サウンド・プロダクションが印象的なバンドです。彼らの個々の技術の素晴らしさはもちろん、一聴することで感じられると思いますが、ミュージシャン目線でこのアルバムの素晴らしさ、Cliffsideの素晴らしさについて教えてください。
 
メタルコア好きな方なら「あの時期」のERRA的なバイブスを強く堪能できると思います。それでいて単なる模倣にならず12曲のアルバム尺に纏める探求力が半端ないと感じました。ギターソロの雰囲気とかツボを完全に抑えていて思わずニヤけるレベル。技量にも富んでいますし、今後何を作るのか期待感が高まります。

 

 

▶︎Rise to Fall 『The Fifth Dimension』
 

 
Official Site, Stream & Download : https://risetofall.bandcamp.com/album/the-fifth-dimension
 
Rise to Fallの『The Fifth Dimension』がリストインしたのには”らしさ”を感じましたし、Sailing Before The Windにも通ずるメロディック・デスメタル〜メタルコアのブレンド感が素晴らしい作品だと思います。多くの素晴らしい楽曲が収録されていますが、特に好きな楽曲はありますか?またその理由があれば教えて下さい。
 
一層ギターのメロディで訴えるスタイルの楽曲が映えているのを感じています。その中でもTr.2HierophantやTr.3 Intruderのような曲が好みで、アルバムの顔として機能しているのかなと。ブレイクダウンを入れるところがないぐらいメロディとリフに重きを置いた「Theメタル」然とした作風で、ギターソロもバチっと決める姿勢に原初のメタルコアを感じてただリスペクトです。
アルバム通してSABLE HILLSのメタル性にもリンクする瞬間が多いように思うので、このインタビューを読んでいる方にはストライクなアルバムじゃないかと思います。

 

▶︎KOSUKE : BEST SONGS OF 2023

想像していたリストとは違い、それぞれが革新的な魅力を追求しているクリエイティヴな多くリストインしています。普段、どのように新しい音楽を見つけていますか?また、これらの楽曲についてそれぞれ良かったポイントやこんなバンドが好きな人におすすめなバンドなど、教えてもらえたら嬉しいです。
 
Spotifyなどストリーミングサイト+インターネット検索の2本柱です。
ストリーミングサイトの発達で特に意識しなくても新たなリリースを簡単にチェックできるようになったのは大きく、反面浮いた時間をRedditなり流れの海外サイト徘徊に割り当てています。検索は海外のGoogleから例えばラフに”Metalcore New release”程度のワードで探し始めることが多くて。特にサイトを決めず探すことも多く正直効率は良くはないですけど、ジャケ買い的なイレギュラー感を楽しむ感じがいいのかなと。頻度も月~回~時間なりに時間を絞って、惰性で探さずメリハリをつけます。
 
▶︎Monuments 「Nafarious」

近年徐々に作風を聞きやすい方向性にシフトしてきたMonumentsでしたが、その流れの一つの到着点のように感じました。Aメロ~サビまで最小構成の展開が終始キャッチーで非常に驚きつつも、Monumentsらしいバウンシーなギターワークは初期から不変。今のバンドの強みが何で、そのうえで何を変えて何を保持するかの棲み分けがとても明確になされているのかなと。その観点で行くとfeatボーカル常連となったAndy Cizekの貢献が著しいように思います。近年ではMick Gordonが制作に関わったり、衣装の雰囲気を揃えたりと新しい要素も取り入れているあたりに勝負に来ているような感じを受けていて、今後が一層楽しみです。
 
▶︎Texas In July 「Put To Die」

Bloodworks以来の冒頭オクターブフレーズに復活を強く意識させます。近年増えてきた復活バンドの中には曲調をダーク路線に寄せるなど方向変換する一方、そのままパワーアップして復活してくれたことがファンとして何より嬉しいですね。EP全編通してリフで攻めるメタルコアとして最高ですが、ヘヴィ過ぎるブレイクダウン一発で有無を言わさない説得力に食らったためこの曲を加えました。
 
▶︎Decolorize 「Moths」

アリゾナ発プログレッシブメタルコアなんですが、妙に日本人の琴線に響きそうなピアノワークがツボに刺さり聞いていました。SpotifyのバイオによるとJ-Rockやゲームに影響を受けているらしいので納得。成立するかギリギリラインのメロディを積むプログレッシブな展開で流れを変えて、初期Invent Animate的な情緒のあるラストで締める展開も心地よいです。実はIAフォロワー的なバンドの候補をいくつか用意していたのですけれど、曲の中で必要性があってそこに帰着しているのはDecolorizeだけに感じたので選びました。
 
▶︎SEEING THINGS 「Soulkiller feat. Grapefruit Astronauts」

同郷チェコ同士でタッグを組んでの1曲。以前からどちらも好きで聴いていたのですが音楽性が違うので予想外なfeatでした。SEEING THINGSのヘヴィグルーブ+キャッチーさにfeatのリードプレイが抜け目なく絡み合っていて攻守最強な仕上がり。1:43~のクリーンギターアレンジも普段のSEEING THINGSにはなさそうな手法ですね。自分のようなニューメタルコア系に若干の苦手意識を感じる人にこそ薦めたいですし、Grapefruit Astronautsの同年リリース”RAMEN62”もAALライクなインスト曲がお好みであれば要チェックです。
 
▶︎SAVE US 「Drift」

DreamboundのYouTubeチャンネルでたまたま見たのがきっかけです。曲のド頭でボーカルからシーケンスまで持っている全要素を出し切って引き込んで、世界観で最後まで聞かせるスタイルに面白さを感じました。ストリーミング対策的な側面もあってそういう構成なのかもしれないです。ちなみに不思議なのが曲を出すたびに過去リリース曲と合わせてEPの形式でリリースしていて。何かしら戦略的なものを感じていて意図が気になります。
 

▶︎KOSUKE : Social

https://solo.to/kosuke3002

USメタルコア・バンド”Across The White Water Tower”、2024年1月来日決定!

2016年アメリカ・ニューヨークで結成されたメタルコア・ポストハードコア・バンド、Across The White Water Tower (通称 : ウォーター・タワー) が、Sable HillsとSailing Before The Windがキュレーションするイベント「ONE BULLET LEFT」で来日することが決定し、合わせてエクストラ・ショウとして2公演が開催される。これまでにAlesama、Famous Fast Words、Attack Attack!といったメタルコア/ポスト・ハードコア・クラシックと呼ばれる大物バンドらのツアーに参加し、耳に残るメロディとどこか懐かしいサウンド・スケープが魅力で、「これぞアメリカン・アンダーグラウンド・メタルコア/ポスト・ハードコア」と言えるサウンド、ヴィジュアルに注目が集まっている。

▶︎Across The White Water Tower : https://linktr.ee/atwwt

 

https://www.youtube.com/watch?v=saJt1M28Uyk

 


 

1月26日 (金曜日) : 名古屋・鶴舞DAYTRIP

OPEN/START : 18:30/19:00
TICKET : 3,200yen (+1D) 当日券 : 3,700yen (+1D)

▶︎ACT
Across The White Water Tower (USA)
SCYLA
Sign From Above
Pray for my Past

チケット予約はこちら : https://tiget.net/events/291565

 

1月27日 (土曜日) : 神奈川・横浜STUDIO OLIVE

OPEN/START : 17:30/18:00
TICKET : 2,800yen (+1D) 当日券 : 3,200yen (+1D)

▶︎ACT
Across The White Water Tower (USA)
Sailing Before The Wind
Faith of Destruction (水戸)

チケット予約はこちら : https://tiget.net/events/292851

 

1月28日 (日曜日) : 東京・渋谷 club asia 「Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”」

OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)

チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001

 

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : RICT (Sable Hills)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするイベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎RICT : BEST ALBUMS OF 2023

Fallen Joy 『The Reborn』
Svalbard 『The Weight of The Mask』
Currents 『The Death We Seek』
Orbit Culture 『Descent』
Mouth For War 『Bleed Yourself』
 
▶︎Fallen Joy 『The Reborn』


Stream & Download : https://fallenjoy.bandcamp.com/album/the-reborn-lp
Official Site : https://fallenjoy.com/en/
 
リストのトップに挙げられているのは、フランスのメロディック・デスメタル・バンド、Fallen Joyでした。2008年に結成された、比較的新しいバンドですね。正統派メロデスとも言うべきツインリードの壮大さが際立ったアルバムですが、このバンドはどのように発見したのでしょうか?またギタリストとしてこのアルバムの聴きどころなどがあれば教えてください。
 
ちょっと前にSpotifyでマイナーメロデスをやたらディグってる時に見つけたバンドで、その時にはもう活動していなかったんですが、今年復活作としてアルバムをリリースしていて、その出来が信じられないくらい良かったので選びました。聴きどころとしては、痛快なまでのリフとメロディのオンパレード。フランス出身だからか、いわゆるスウェーデン、フィンランドなどの北欧出身のメロデスよりも雰囲気がだいぶ明るいことも特徴です。このアルバムを聴いていると、自分はこのままメタルギターを聴き続けて生涯を終えるのだとワカラされます。令和に出るはずのなかった時代錯誤の大名盤だと思います。

▶︎Svalbard 『The Weight of The Mask』


Stream & Download : https://svalbard.bandcamp.com/album/the-weight-of-the-mask
Official Site : https://linktr.ee/Svalbardhc
 
Svalbardの新作は幅広いメタル・シーンでとても高い評価を得たアルバムとして、様々な2023年の年間ベスト・アルバムでもピックアップされているのを見かけます。シューゲイズやクラスト/ハードコアの影響もあるバンドですが、メタルコア意外にもこのようなバンドをチェックしているのですか?また、Svalbardを知らないSable Hillsリスナーに入門曲としておすすめしたい楽曲があれば教えてください。
 
正直その手のジャンルはあまり聴いてこなかったんですが、このアルバムに関してはその枠だけに収まらず広くメタルとして見ても素晴らしいもので、自分にはとても刺さりました。哀愁の中に、時折疾走する箇所やヘヴィな箇所があり、Convergeっぽさを感じつつも、オリジナリティに溢れた楽曲ばかりで最高です。まずは先行シングルで出ていた「Eternal Spirits」、「Faking It」が聴きやすいと思います。

▶︎Currents 『The Death We Seek』

Stream & Download : https://bfan.link/remember-me-2
Official Site : https://currentsofficial.com/
 
Currentsが現代メタルコアにおいて非常に重要な立ち位置にあるバンドであり、『The Death We Seek』はこれまでのCurrentsが培ってきたスタイルに加え、多くのクリエイティヴな挑戦、変化の見える革新的なアルバムです。ギタリストとして驚くべきフレーズやリフなどはありましたか?そのほかに特別な思いがあればお聞かせ下さい。
 
ギタリストであるChris Wisemanの作るフレーズにはいつも驚かされてばかりです。初期からずっと聴いているバンドですが、スタイルを崩さずにプログレッシブ・メタルコアを貫き通して、でもその中に新しさを見出そうとしている姿が素晴らしいと思います。歴が長くなるにつれて尖りがなくなっていくバンドが多い中で、彼らはずっとテクニカルなリフを弾き続けています。トゥルー。

▶︎Orbit Culture 『Descent』
 Stream & Download : https://orbitculture.bandcamp.com/album/descent
Official Site : https://www.orbitculture.com/
 
Orbit CultureはおそらくSable Hillsのメンバーの誰か必ずピックアップしてくれると想像していました。非常に古典的なメロディやスケールを持ったサウンドが印象的ですが、Sable Hillsと重なるところが多いと思います。世代的には同世代だと思いますが、Orbit Cultureの魅力的なところはなんだと思いますか?
 
彼らの魅力はオーセンティックなメタルなのに新鮮な雰囲気を持っているところだと思います。クリーンボーカルのメロディはもはやMetallicaを感じる箇所もあったり、楽曲からはメロデスやヴァイキングメタルなどの影響も伺えます。色んなメタルのエッセンスを全て混ぜ合わせて、新しいスタイルを確立していると感じます。メタルコアではなく、メタルで新しい風を感じたのがグッと来ました。

▶︎Mouth For War 『Bleed Yourself』


Stream & Download : https://mouthforwarco.bandcamp.com/album/bleed-yourself-2
Official Site : https://www.instagram.com/mouthforwarco/
 
Mouth For Warの『Bleed Yourself』がリストインしてくるとは驚きでした。普段はどのように新しいバンドをチェックしたり、次のお気に入りを探していますか?彼らのようなタフなスタイルを今後Sable Hillsにも取り入れる可能性はあったりするのでしょうか?
 
最近は基本Spotifyでしか新しいバンドを探していないですね。気に入ったバンドの関連アーティストやプレイリストをサーフィンしています。近年は彼らのようなタフなハードコア・メタルコアが非常に増えてきて、個人的にもはや流行りと言っても良いのかなと思っています。ただ飽和しつつある中でも、彼らのリフからはメタルからのバイブスを感じられて少し特徴的です。バンド名がPantera由来なことからもそれが伺えます。自分はメタルのハートを持って別のジャンルをやっているバンドがアティテュード的にすごく好きです。一周回ったメタラーが1番かっこいいんですよね。Sable Hillsがここまでタフなスタイルに移行することはないですが、スポットでリフやブレイクダウンにそのエッセンスを感じることは今後あるかも知れません。

 

▶︎RICT : BEST SONGS OF 2023

▶︎Texas In July 「Put To Death」

 

▶︎Boundaries 「Bedlum」

 

▶︎Any Given Day 「Get That Done」

 

▶︎Dead Icarus 「Sellout」

 

▶︎Downswing 「Bound To Misery」

バラエティに富んだ選曲でありながらも一貫性が感じられるリストだと感じます。そしてどれもギタリスト目線から聴くと、一味違った聴こえ方が出来るような楽曲であるように思います。楽曲単体についてでも、またはバンドについてでも構いませんので、それぞれの楽曲について教えて下さい。
 
Texas In Julyは、自分の人生において非常に重要なバンドで、解散してからもずっと聴き続けていたので、思い出補正も兼ねて復活作から1番お気に入りの曲を選びました。
 
Boundariesは先ほど言及したタフなハードコア・メタルコアの筆頭だと思いますが、この曲はその中でも秀でて良かったなと思いました。
 
Any Given Dayはオーセンティックなメタルコアをそのままやっていて目新しさはあまりないんですが、Killswitch EngageのHoward Jonesを彷彿とさせるクリーンボーカルが本当に良いです。みんなAny Given Day舐めすぎです。
 
Dead Icarusはex-Atreyu のAlexが今年始めたバンドですが、デビューシングルの曲名がSelloutで、曲もトゥルーなメタルコアで、現在のAtreyuへのアンチテーゼになっているのが痛快で良かったです。楽曲そのものの良さというより舐達磨のビーフ曲的な良さですね。
 
Downswingは誰が聴いてもブチ上がれるIQを必要としない感じが良くて選びました。前作のEPはもっとメタルコアしてて個人的にはそっちの方がより好みでしたが、今作も今作で良いです。FeaturingがAVOIDなのもニューエイジ感あって良いですね。
 
アルバムの方であまりメタルコア挙げなかったのでこっちは意図的に増やしています。またリストを送った後に思い出しましたが、Sentinelsの新EPから最初に出してたGlitchという曲は今年一レベルで良かったです。

▶︎RICT : Social

https://x.com/metalwarmachine
https://www.instagram.com/metalwarmachine/

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : RYOICHI (Sailing Before The Wind)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするメタルコア・イベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎RYOICHI : BEST ALBUMS OF 2023

August Burns Red 『Death Below』
A Mourning Star 『A Reminder of the Wound Unhealed』
Dying Wish 『Symptoms of Survival』
Currents 『The Death We Seek』
Graphic Nature 『A Mind Waiting to Die』

▶︎August Burns Red 『Death Below』


 
Stream & Download : https://found.ee/DeathBelow
Official Site : https://augustburnsred.com/
 
August Burns Redの『Death Below』は、多くのメタル・メディアでも絶賛されています。長年に渡り世界のメタルコアを牽引する存在として、大きくスタイルを変えることなく活動を続けているところは、Sailing Before The Windの活動スタイルにも重なる部分があります。このアルバムで特に「August Burns Redらしい」と感じた楽曲、またはフレーズはありましたか?
 
文句無しの傑作だと感じました。楽曲というよりアルバム全体を通して彼らの矜持を感じます。August Burns Redはメロディックメタルコア+αでいう「+α」の塩梅を楽しむのがミソだと思うんですが(そこもうちのスタイルと重なりますし)、今回はその塩梅がアルバム全体で聞くとバランスがいい感じになってるのが面白いです。
 
序盤からプログレばりの長さの曲があったり、曲単位で存在する”ABRらしさ”は変わってないのに、もちろんクリーンボーカルの導入も大きいとは思いますが、どこかスルスル聞けてしまうキャッチーさも兼ね備えてるというか。結果August Burns Redらしさを損なう事なく、ちゃんと進歩進化してる感触があるのが単純に凄い。

 

▶︎A Mourning Star 『A Reminder of the Wound Unhealed』


 
Stream & Download : https://dazestyle.bandcamp.com/album/a-reminder-of-the-wound-unhealed
Official Site : https://www.instagram.com/amourningstar.vhs/
 
A Mourning Starの『A Reminder of the Wound Unhealed』からはSailing Before The Windが活動をスタートさせた2010年代初頭のころによく聴いた、懐かしいスタイルのメタルコアです。ボーカルのスタイルはRyoichiさんのスタイルにも重なるところがあるように感じます。ボーカリストとして、A Mourning Starの特筆すべきポイントなどはありますか?また、おすすめの楽曲などあれば併せて教えてください。
 
単細胞メタル小僧だった10代の時期に、地元・沖縄の諸先輩方に00年代初頭のニュースクール/メタルコアや90年代ミリタント系の音源を「メタラーならきっと気に入るよ」と沢山ピックアップしてもらって、そこでメタルとハードコアの補助線が引けて本格的に音楽を聞くのが楽しくなったので、今でもピンポイントで好物ですし、国内含めて昨今のリバイバルの雰囲気も嬉しいです。
 
ボーカルスタイルは特に意識した事はなかったんですが、言われてみたら自分の中のアングラ的原点なので、無意識の中で出てるのかもしれないですね。今作は前作のEPより更にメタルコア感と叙情派ニュースクール味が増してて、まさに”ジャンルのマップ作り途中”みたいな人にうってつけのアルバムだと思いました。と、それっぽく御託を並べましたが正直ほんとにただ好きなだけですね。トラック2の「Corruption」がお気に入りです。

 

▶︎Dying Wish 『Symptoms of Survival』


 
Stream & Download : https://bfan.link/symptoms-of-survival
Official Site : https://www.instagram.com/dyingwishhc/
 
Dying Wishの『Symptoms of Survival』はここ日本でも大きな話題となり、メロディック・メタルコア/ハードコアのムーヴメントのキーとも言える作品であると思います。実際に日本のメタルコアの中心で活動を続けている中で、Dying Wishの影響を感じる日本のバンドがいたりしますか?また、特に好きな曲などあれば教えてください。
 
いい意味でいいとこ取りのようなバンドで、ヘヴィーパートオンリーの曲、メロデスライク、もしくはフューリーエッジスタイルの単音リフで攻め攻め系の曲もあれば、不協和音リフワークにキャッチー過ぎないクリーンボーカルで初期Solid State Records系の雰囲気も醸したり、と思ったらブレイクダウンがモダンでソリッドになったりと、ごった煮系ってともすればダサかったり、あざとくなりやすいと思うんですけど、奇跡的にかっこよくまとまってるなと感じました。
 
こっからいい意味でも悪い意味でも垢抜けていくバンド多いと思うんですけど、このまま突き抜けて昇華してほしい感じです。見当違いだったら申し訳ないんですが、Graupelとか曲によっては近い事してる時たまにありませんでしたかね?もっとファストでメロディックだし、時期的に影響とかではないとは思いますが。モダンな部分と往年のスタイルをセンスよく行き来するバンドが日本でも更に増えてくれたら楽しいですね。「Watch My Promise Die」が特に好きな曲です。

 

▶︎Currents 『The Death We Seek』


 
Stream & Download : https://bfan.link/remember-me-2
Official Site : https://www.instagram.com/currents/
 
Currentsの『The Death We Seek』はSable Hillsのメンバー達もフェイヴァリットに挙げており、このアルバムは世界のメタルコア・リスナーを虜にしました。一概に「メタルコア」という言葉では形容できないほど、多様なアレンジや工夫が感じられる作品ですが、ミュージシャンとして彼らのサウンド・プロダクションなどで驚いたこと、学びがあったと思うところはありますか?
 
こういうヘヴィーシットメリハリ系モダンメタルコアは珍しくはなくなりましたけど、おっしゃるとおりその他大勢のワナビーバンドから頭抜けた感じがありまね。全体に薄っすらと鳴り続けてるエレクトロ、シンセエフェクトも何だか独特で、個人的にはむしろメリハリを希釈する方向に持っていってるように感じました。
 
この手のバンド特有のブルータリティーと綺麗なクリーンボーカルの極端さをあまり強調しないというか、そのお陰で独自の荘厳感も出ててかっこいいですね。ボーカルのスクリームも非常に乾いたテイストで好みです。流行ってて沢山似たタイプのバンドがいるのもあって飽きるのも早いバンドが多かったですが、このアルバムは長く聞けそうです。

 

▶︎Graphic Nature 『A Mind Waiting to Die』

Official Site, Stream & Download : https://music.ruderecords.com/amindwaitingtodie
 
Graphic Natureは発展し続けるニュー・メタルコア・シーンの中でも、正統派として高く評価されています。Ryoichiさんはヒップホップなどもお好きだと思いますが、メタルコアにないグルーヴを取り入れているバンドも近年は多く、Graphic Natureの『A Mind Waiting to Die』にもそういったパートが組み込まれています。この作品に惹かれた理由は何かありますか?
 
ニューメタルコアって超絶ざっくりLinkin Park系かSlipknot系に分けられると思うんですけど、彼らはもちろんSlipknot系で”初期Slipknotのブチギレ感をそのままに、UKっ子らしくインダストリアルデジタルバイブス濃いめにしてモダンメタルコアで割りました!”みたいな完全に開き直ったスタイルがとても好ましくて好きですね。申し訳程度に入ってるワーミーリフとかDJスクラッチ、ドラムンベースも素直というか、衝動とやってみたい事がまんま音に出てるので、小賢しいことは抜き!熱けりゃオッケー!という気持ちに。
 
もしかしたらこの中で1番自然と手が伸びる回数が多かったアルバムかもしれないです。とりあえず聞きながら家を出る、みたいな。

 

▶︎RYOICHI : BEST SONGS OF 2023

▶︎Texas In July 「False Divinity」

 

▶︎Balmora 「Under the Weight of a Blackened Sky」

 

▶︎Beartooth 「Riptide」

 

▶︎Morning Again 「Resignation」

 

▶︎Unearth 「The Wretched;The Ruinous」

Texas In July、UnearthといったSailing Before The Windにも通ずるメロディアスなメタルコアからBalmora、Morning Againといったクラシックなスタイルを鳴らすバンドの中にBeartoothといったバンドの楽曲がリストインしているのは非常に面白いと思いました。これらの楽曲について (またはリスト全体について) 、それぞれ感想を教えてください。
 
Texas In Julyはもはや聞く前から良かったですね。良かったというか嬉しかったというか。新曲出たのがとにかく嬉しいです。
 
Balmoraは前述のA Mourning Starがニュースクールリバイバルの優等生系なら、こっちはいい意味でドタドタしてて特にこの曲はリフがかなり臭メロデスで好きです。
 
ご指摘の通り毛色の違う選出ですが、Beartoothはずっと好きなバンドなので入れました。
ハードロックのバイブスを醸すポストハードコアバンドにAsking Alexandriaがいますけど、こっちはよりアメリカンなテイストで、チューニングは低いのに陽性味の強いスケールワークでテキサスいノリ
(テキサス出身じゃないしこんな言葉存在しないですが)思い切りのいいシンプルなブレイクダウンはそのままに、キャッチーでフックのある歌メロが更に進化しててやばいです。
 
Morning Againは復活して以降割とヘヴィーハードコアに傾倒してる感じある中、この曲が特別フューリー感強めで即やられました。ニヤニヤ系です。
 
Unearthに関して僕が今更何か言う事なんてホントはないんですが、デスラッシュ成分とメタルコア成分の塩梅がアルバムによって変わるのはAILDと似てますけど、彼らは一貫してハードコア成分強めの展開で必ず割り算してくるので毎度安心して聞けます。
 

▶︎RYOICHI : Social

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メタルコア 2023年下半期の名盤TOP10

2023年上半期のメタルコア名盤TOP10を読む

2023年の下半期にリリースされたメタルコアのアルバム、EPの中から優れた作品をピックアップし、アルバムレビューしました。下半期は、2024年以降のメタルコアがどのように進化していくかを少し読み取れるような作品がたくさんリリースされましたので、それを意識しながら有名無名問わず印象に残った作品が中心になっています。

上半期はAugust Burns RedやFor I Am Kingといったメロディック・メタルコアに加え、その流れにありながらもハードコア/デスコアともリンクしてくるCurrentsやC-GATE、そしてGraphic NatureやSoul Keeper、from joyといったモダン・メタルの可能性を拡大してくれるクリエイティヴなバンドをリストアップしました。下半期も基本的にはそういった全体のバランスを見つつ、「エレクトロニック」をキーワードに重要な作品を意識的にリストに組み込みました。順位はそこまで重要ではないですので、第1位から第10位まで (余裕があれば、文末の次点の10枚まで) チェックしてみてください。

 


▶︎第10位 : Dying Wish 『Symptoms of Survival』

Stream & Download : https://bfan.link/symptoms-of-survival
Official Site : https://dyingwishhc.com/

アメリカ・オレゴンの女性ボーカル・メタリック・ハードコア・バンド、Dying Wish (ダイイング・ウィッシュ)。2021年にSharpTone Recordsと契約し『Fragments of a Bitter Memory』をリリースしてから、本作までに彼/彼女らの状況は劇的に変化した。グローバルな人気を獲得、ライブは毎度カオスな盛り上がりを見せ、急激な人気の高まりを遠く離れた日本からも見てとれた。

あえてDying Wishに関してはメタルコアではなく、メタリック・ハードコアと言いたい。ハードコア成分が非常に高く、Knocked Looseといった2020年代最高峰のフックを効かせたキーリング・スタイルを取り込んでいるのも面白いし、ScowlやGelといった女性フロントマン擁するハードコアの系譜として見ても、最近のミュージックビデオに見られる、ファッショナブルなフロントマンをメインに据えたヴィジュアルに通ずるものを感じる。メタルコアから見れば、こうしたバンドはハードコアのモッシュやマイクジャック、ステージダイブといった盛り上がりをライブで見られることから、”急激にブレイク中”であるというイメージをシーンに植え付けることが出来ている。

彼/彼女らがハードコア成分について前作以上に精密な構築を施していることからもその狙いは明らかだ。もちろん、これは悪いことではなく、SharpTone Recordsという現代メタルコア中心の所属アーティスト・ラインナップの中で目立ち、自分たちに目を向けさせる為に最大の努力している証拠であり、現代をサバイヴするアーティストとして間違っていない。Knockled Looseも、そのサウンドはもちろん、日々アップされるカオスなライブ・パフォーマンスビデオの影響で、とんでもないところまで行ってしまったのだから、フロアの熱気、活気というのも実力以上に大事というのが2023年だったと思う。この手のサウンドを復興させ、日本でもView from the Soyuzに見られるライブの盛り上がりを見れば、このスタイルのバンドが今、どこでどう勝負すべきかは自ずと導かれていくだろう。ミュージックビデオにもなっている「Watch My Promise Die」は新しいDying Wishが2024年以降に作っていく道筋を感じられる1曲に仕上がっていると言えるだろう。

 

▶︎第9位 : Avalanche Effect 『Of Wired Hearts And Artificial Prophecies』

Stream & Download : https://open.spotify.com/intl-ja/artist/1lhzMZn54qAGcj8hdoMCCb
Official Site : https://www.instagram.com/avalancheeffect

ドイツ・ミュンスターの7人組プログレッシヴ・メタルコア・バンド、待望のEPは、2023年上半期の個人的大ヒット・メタルコア曲「Manipulating Sky」で幕を開ける。メンバーに不幸があったものの、新体制として動き出した彼らのAvalanche Effectというバンドにかける強い覚悟は随所に伝わってくる。シーンにおけるバンドのポジションはまだまだこれからという具合であるが、じわりと盛り上がってきたエレクトロニック・メタルコアのカテゴリーに分類出来るようなアレンジも随所にある。ただ、このバンドの最も優れたところはツイン・ボーカルの巧みな掛け合いによって楽曲を通して貫かれる光と影のコントラスト、それを美しく色彩豊かに表現するプログレッシヴなクリーントーンのメロディだ。プログレッシヴ・メタルコアとしては、特筆して個性的なところはないものの、この個性を伸ばしていけるような楽曲構成を固め、ドラマ性を高め続けていけば、間違いなくその名はドイツだけでなく、グローバルなものへと成長していくに違いない。そして意外とヘヴィなのも良い。大半の楽曲の後半にはデスコアにも接近していくようなヘヴィ・パートがあり、クリーン・パートの力強さを浮き彫りにしてくれる。2024年、更なる活躍を期待したい、隠れた逸材と言えるだろう。今からチェックしておいてほしい。

 

▶︎第8位 : Resolve 『Human』

Stream & Download : https://arisingempire.com/humanalbum

Official Site : https://resolveofficial.co

フランス・リヨン出身のメタルコア・バンド、Resolveのセカンド・アルバム。世界がパンデミックに見舞われた2020年は、Resolveにとって勝負の年になるはずであった。しかし彼らはあえて派手な動きはせず、静かに『Human』に繋がる世界観をイメージし、デビュー・アルバム、そして本作を完成させるまでストイックに創造を続けてきた。そのメンタリティは非常に評価出来るし、コロナ禍で立ち止まったまま動けなくなった多くのメタルコア・バンドがいたからこそ、Resolveの劇的な進化には驚き感激した。

「New Colors」はシンプルにResolveとして打ち出し続けてきたスタイルの結晶であり、アルバムの中でもキーと言える楽曲だ。そして印象的な収録曲「Older Days」には、同郷のten56.からAaron Matts、そしてPaleface SwissのZelliがゲスト・ボーカリストとして参加しており、ユーロ・メタルコア/ポスト・ハードコア全体が育んできたドラマ性の高いメロディとスタイリッシュなメタルコア、そしてヒップホップのエレメンツも交え、また少し違ったResolveの魅力が垣間見えるもの面白い。この曲はミュージックビデオのディレクションも素晴らしく、モダンでミニマルなヴィジュアルが非常にスタイリッシュだ。これはアメリカのバンドには無い。Holding Absence、LANDMVRKSに次いでグローバル・ブレイクするのは、Resolveだろう。

 

▶︎第7位 : Beartooth 『The Surface』

Stream & Download : https://beartooth.ffm.to/surface
Official Site : http://beartoothband.com

Beartoothも気付けば結成から10年を超え、ベテランの域に差し掛かってきました。メタルコア・バンドには珍しくRed Bull Recordsからアルバムをリリースし続け、本作が通算5枚目のフル・アルバム。Caleb Shomoのカリスマ性をサウンド面、そしてヴィジュアル面でもこれでもかと味わえる作品に仕上がっており、プロデュースもCalebが担当しています。

Calebの雰囲気がだいぶ変わってきたというか、明らかにキャラクターが変わってきている。鍛え抜かれた肉体美を誇示するかのようなパフォーマンスはライブでもミュージックビデオでも貫かれていて、ソーシャル・メディアの投稿もCaleb単体のライブ・フォト、セッション・フォトが散見されます。フロントマンの強烈な個性はバンドにとって非常に重要で、特にBeartoothのようなCalebのカリスマ性を際立たせることにフォーカスしたバンドは、これくらいド派手にやってしっくりくるなと思います。

もちろんOshie BicharやConnor Denisというバッキング・ボーカルを務める存在が随所に輝きを放っており、HARDYをフィーチャーした「The Better Me」や「Sunshine!」といった楽曲はBeartoothというバンドの良さが全て詰め込まれた新しいライブ・アンセムになっています。Issuesがバンドとして終わりを迎え、Woe, is Meが復活したものの全盛期のような輝きまでは届かず、無論Attack Attack!はトップ・シーンにいない今、Beartoothは2010年代、メタルコアがヘヴィにそしてダークに変わりつつあったトレンドを個性として残しながら、ここまでキャッチーなスタイルへと成長。この『The Surface』の構想から完成まで、本当に多くの苦労、挑戦があっただろうし、Calebも今が一番ノリにノってるぞと言わんばかりのエネルギーを発奮しているのを見るともう一つ上のステージへと階段を登るきっかけになる作品ではないかと思う。これから続くBeartoothの歴史においても、この作品は一つ分岐点になるものとして印象に残り続けるに違いない。

 

▶︎第6位 : Artemis Rising 『Vibe Sampler』

Stream & Download : http://fanlink.to/VIBE-SAMPLER-EP
Official Site : http://artemisrising.de/

元Death of an EraのDanielがフロントマンを務めている事で話題となったArtemis Risingですが、革新的なエレクトロニック・メタルコアは時代の先を行き過ぎていたのが、デビュー・シングルで大きなブレイクとまでは行きませんでした。しかし2022年代から次第に増え始めた”エレクトロニック・メタルコア”は、例えばAttack Attack!やElectric Callboy、とは違い、本格的なクロスオーバーを始めています。これは、Attack Attack!の登場以降、メタルコア+キーボディストというバンド編成によってシーンに植え付けられたエレクトロニック・メタルコアとは根底が違い、マシーン・ドラム/エレクトロニック・ビートとドラマーの鳴らすビートが交互に展開されたり、時に交わっていくなど、メロディだけでないことが印象的だと思います。

例えば、本作収録の「Scales of Justice」では、ハードコア・テクノ、ガバといったタイプのエレクトロニック・ビートが楽曲の大黒柱となり、プログレッシヴなギターのリフやタイトなドラミングというものが交わるように展開されていくというスタイルへエレクトロニック・メタルコアを進化させています。この作品のヴィジュアライザーがマーブル模様の色彩と電子基盤のレイヤーで構成されているのも、視覚的にArtemis Risingを表現するのに重要な役割を担っていると言えるでしょう。2020年代以降のエレクトロニック・メタルコアについては、独立した音楽ジャンルとして意識しておくと、ダンス・ミュージック・シーンとの関わりなどへもその魅力を波及させられるきっかけに繋がるかもしれません。Sullivan Kingのようなアーティストがとんでもないブレイクを果たして、Artemis Risingなどといったバンドをビッグ・ステージへ引っ張り出して欲しいですね。

 

▶︎第5位 : Spiritbox 『The Fear of Fear』

Stream & Download : https://spiritbox.lnk.to/TFOF
Official Site : https://spiritbox.com/

カナダの女性ボーカル・メタルコア・バンド、SpiritboxのEP『The Fear of Fear』は、昨年のEP『Rotoscope』でエレクトロニックなビートを踏んだんに盛り込みつつ、革新的なデビュー・アルバム『Perfect Blue』を見事にアップデート。現代メタルコアのキーパーソンと言えるプロデューサーDaniel BraunsteinとSpiritboxの世界観を司るコンポーザーであるMike Stringerによる共同プロデュースとなった本作は、『Perfect Blue』と『Rotoscope』の間に位置する。

特筆すべき楽曲は「Angel Eyes」であろう。デスコアへも接近しようかというヘヴィネスへの探究心、Courtney LaPlanteのカリスマ性溢れるボーカル、そして不気味に漂う『Rotoscope』で見せた深いエレクトロニック・ダーク・アンビエントのアトモスフィア。次曲「The Void」のメロディアスさも相まって、EP中盤に絶頂を迎える『The Fear of Fear』の作品としての驚くべきコンパクトなクリエイティヴィティには感心させられる。この二つのEPを経てドロップされるセカンド・アルバムでどのようなチャレンジを見せてくれるのか、高く期待している。

 

▶︎第4位 : Silent Planet 『SUPERBLOOM』

Stream & Download : https://silentplanet.ffm.to/superbloom
Official Site : https://www.solidstaterecords.com/silent-planet

カリフォルニアを拠点に活動するプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Silent Planetの通算5枚目となるフル・アルバム。プロデューサーには前作に引き続きSpiritboxやDayseeker、Invent Animateといったアーティストを手がけるDaniel Braunsteinを起用し、ミックス/マスタリングはBuster Odeholmが担当している。アルバム・タイトルの『SUPERBLOOM』は、アメリカの乾燥地帯で野草がいっせいに開花する伝説的な現象のことを指し、その言葉の持つ神秘性は、Silent Planetがこれまで、そして本作で打ち出すサウンド、そしてアートワークからも感じ取ることが出来るだろう。

アルバムの中でキーとなっている楽曲は「Anunnaki」と「Antimatter」だろうか。「Anunnaki (アヌンナキ)」という不思議なタイトル、これは古代シュメール神話の中に登場するパンテオン (ある人々によって信じられている神々をひとまとめにして呼ぶための言葉) の中で最も強力な神々の名前で、人間の運命を司ったとされる。この古代シュメール神話の物語をコンセプトとしたリリック、そしてミュージックビデオのヴィジュアル・イメージは、『SUPERBLOOM』におけるSilent Planetの最もヘヴィで、抑えることのできない狂気性を見事に現している。カリスマ・ボーカリストGarrett Russellが上裸で赤く燃える森の中を歩くミュージックビデオのワンシーンはいささか映画のようである。何度も注意深くこの楽曲を聴きながらふと頭をよぎったのは、先日Grayscale Recordsとのグローバル契約を発表した日本のメタルコア・バンド、Promptsの存在だ。彼らの楽曲のうねりにはどこかプログレッシヴという言葉だけでは形容の出来ないものがあるが、「Anunnaki」におけるSilent Planetのヘヴィネスもこれと似たものが渦巻いているように感じる。

そして「Antimatter」では、今年多くのバンドが挑戦したエレクトロニックなビートに乗せて幕を開けていく。こうしたスタイルはヨーロッパ、個人的にはデンマークのSiameseが先駆者であると思うが、楽曲がエンディングに向かうにつれ、彼ららしく昇華していく。一聴しただけではこのアルバムの全体像は掴めないかもしれない。上記に挙げたキー曲の前後にも、神秘性の高い雰囲気が漂い続けている。掴もうとすればそれは霞となって消えていく。Silent Planetの元来大切にしてきた魅力は、音楽的な野心に消し去られることなく、現在も漂い続けリスナーを虜にしていく。

 

▶︎第3位 : Ice Sealed Eyes 『Vol.2: Fragments』

Stream & Download : https://open.spotify.com/intl-ja/artist/0eVDo1w1SoyNP0xswwFYi7?si=gasq05qAQ7u5vMGFH2kNWQ
Official Site : https://www.instagram.com/icesealedeyes/

2023年上半期に書いた「超個性派! メタルコア 2023年上半期のベスト・シングル」という記事の中でも彼らをピックアップしていますが、EPという形で新しい作品が出ました。LoatheやThornhillが起こしたオルタナティヴ・メタルコアという概念を捉えアップデートさせるベルギー出身の彼らは、本作でシューゲイズやオルタナ、アンビエントのアトモスフィアをまとったオルタナティヴ・メタルコアの奥深い世界観をまた一つ先に進めたと言えるでしょう。

5曲入りの作品ですが、作品のおける間奏として挿入される「Forlorn」ではサッド・ラップ/サッド・ローファイとも捉えられるIce Sealed Eyesの新たな一面を垣間見ることが出来ます。この楽曲を分岐点とし、後半の冒頭を飾る「Deadweight」では、Humanity’s Last Breathを彷彿とさせるThallなリフが限りなくノイズに近い形状へと変形しビートダウンを続けていきます。打ちつけるリフ、キックの波動が波打ちながら、霧のようなシンセと溶け合っていくこのスタイルは、Invent Animate、Silent Planetといったこの手のサウンドの先駆者よりも刺激的なダイナミズムに溢れています。Deftones影響下のメタルコアが好きなら彼らはフォローしておくべきでしょう。

 

▶︎第2位 : Hollow Front 『The Fear Of Letting Go』

Stream & Download : https://hollowfront.lnk.to/TFOLG
Official Site : https://unfdcentral.com/artists/hollow-front/

アメリカ・ミシガンのメタルコア・バンド、Hollow Frontのサード・アルバム。2021年にUNFDと契約後、毎年アルバムをリリースするという多作っぷりでありながら、作品毎に確実にレベルアップし、アメリカを中心にグローバルな人気を誇る彼ら。RIFF CULTで行った国内メタルコア・バンドらへの年間ベスト・インタビューにも『The Fear Of Letting Go』は数多くリストインされていたのが印象的だった。

彼らと比較されるバンドといえば、ErraやPolaris、Northlaneといったところであろうが、Hollow Frontが本作で打ち出した”Hollow Frontらしさ”は、ミュージックビデオにもなっておりアルバムのキー曲である「Over The Cradle」にある。リリックやビデオのコンセプトになっているのは、Hollow Frontのソングライター自身が経験したネグレクトであり、育児放棄、感情の混乱を鮮明に表現している。この歌は、母親への赦し (*ゆるし)の歌であるが、現在も続く痛みが入り混じった言葉がリリックの中で巨大なインパクトを放っている。母親は自分たちに命を与えてくれたが、生き方を教えることができなかった……。母親を許したとはいえ、過去の経験の傷跡がまだ残っていることを表現している。自身が経験した辛い思い出を非常に分かりやすく、そしてメタルコアという音楽の怒りの塊のようなエネルギーを巧みにストーリーに落とし込んだ本楽曲は、Hollow Frontの知的な芸術性が爆発したキラーチューンと言えるだろう。細かなパートについても、エレクトロニックなビートをさらりと組み込んだり、ブレイクダウン・パートの切れ味と歌詞の鋭さがリンクしながら展開していくところも、意図的に作られているのであれば、これはもう、非常に優れた高等芸術であり、メタルコア文化遺産にしたいくらいだ。

優れているのは先行シングルとして発表されたものだけでなく、「Stay With Me」というバラードもHollow Frontの魅力を解き放つ印象的な楽曲だ。メロディック・ハードコアをルーツに感じさせながらも、彼らの直接的な影響源であるだろうErraやNorthlaneといったバンドの楽曲構築の典例を参考に、力強いスクリームと張り裂けるようなクリーン・ボーカルを交互に展開させていく。実はこの曲がアルバムの中で一番凄いかもしれない。確実にトップ・シーンへと躍り出たHollow Front。このアルバムをライブ・パフォーマンスでどこまで繊細にドラマティックに表現できるかが2024年代ブレイクの鍵になってくるだろう。持ってるセンスは一級品。

 

▶︎第1位 : Polaris 『Fatalism』

Stream & Download : https://bfan.link/fatalism
Official Site : https://www.polarisaus.com/

2023年はPolarisにとって、激動の年となった。すでに『Fatalism』を完成させ、キャリア最大のヘッドライン・ツアーとリリースを控えていた彼らであったが、バンド創設期から中心メンバーの一人であったギタリストのRyan Siewが26歳と若さでこの世を去った。この訃報は世界のメタルコア・シーンを深い悲しみに包み、奇しくもアルバムの全体的なコンセプトとしてテーマになっている数年間に世界を巻き込んだ絶望とディストピアの感覚、そしてそれに付随する圧倒的な「自分たちは道を変えることができない」という感覚が、このアルバムのメッセージをより現実的なものにしている。

いくつもアルバムを象徴する楽曲はあるが、”In loving memory of Ryan Siew”という追悼の意を込め、生前のRyanも撮影に参加している楽曲「Overflow」は、ドラマーDanielによって書かれたものだ。Danielはこの楽曲の歌詞について、自身のパニック発作と闘うことの葛藤と、その葛藤が他人に与えることの影響について歌っていると説明している。悲しみと絶望に満ちた歌詞、「The earth is spinning much too fast for me」という詩的なフレーズのインパクトが強烈であったし、その中からもわずかながら、希望の光を感じさせてくれるところも、世界に多くのファンを持つ彼らの優しさであり、トップ・シーンを走るバンドが歌うことの責任であると感じる。

とても暗いアルバムだと思う。サウンドだけで言えば、オーストラリアン・メタルコアらしさもしっかりと根底にありつつ、Jamie HailsとJake Steinhauserのシャウト、クリーンのコンビネーションの織りなすドラマ性豊かでプロダクションも一級品。加えて、やはり、詩的な魅力というのも、しっかりと捉えていく必要がありそうだ。歌詞の一つ一つ、言葉の選び方も壮絶な時代を生きる若者の代弁者として優れた才能を見せてくれている。

 

上半期&下半期それぞれのTOP 10には入れなかったものの、本当に毎年メタルコアの素晴らしい作品がリリースされている。もし下記のリストに聴いていない作品があれば、ぜひチェックしてみてください。

Atreyu – The Beautiful Dark of Life
Texas In July – Without Reason
Prospective – Reasons to Leave
Of Virtue – Omen
The Callous Daoboys – God Smiles Upon The Callous Daoboys
Of Mice & Men – Tether
Wolves At The Gate – Lost In Translation
Heart Of A Coward – This place only brings death
Johnny Booth – Moments Elsewhere
Soul Despair – Crimson

ゴアグラインド (Goregrind) 2023年の年間ベスト・アルバム

2023年のゴアグラインドの最も大きなハイライトは、やはり『ゴアグラインド・ガイドブック: 究極のエロ・グロ・おバカ音楽』という書籍が出版されたことでしょう。メタルの中の最もアンダーグラウンドな音楽であり、これをカラーで出版したパブリブは凄い……。あんな死体やこんな死体が大型書店に並んでるなんて本当に異常事態! こんな風に書籍にまとめられるほど、充実した歴史があるのは間違いない事実ですし、日々新しいゴアグラインドの音楽が生まれています。私はデイリーワークとしてBandcampのGoregrindタグを追いかけており、2023年に気になった作品をお気に入りに登録して、気が向いたら聴いてるみたいな感じでリリース作品をチェックしてました。その中でもその楽曲、そしてアートワーク、バンド名にピンときたものを中心にレビュー、と言うか感想文を書いてみました。本当に何もすることがない人はぜひ読んでみてください!

 

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▶︎First Days Of Humanity 『The Analysis of Burnt Human Remains』

アリゾナ州フェニックスを拠点に活動するLast Days of Humanityフォロワーの中で最も力のあるFirst Days of Humanity。今年は単独作4枚にOphthalmomyiasisとのスプリット1枚をリリースを相変わらずアクティヴな一年でした。これまでバンド名に由来した人類の起源をテーマにしたものが多かったが、次第にゴアっぽくなってきて (完全にネタ切れだと思います) 、本作は思いっきり死体ジャケ。タイトルも「焼死した人間の分析」でかっ飛ばしてます。ゴアグラインド・クラシックな長ったらしいイントロを含む楽曲を挟みながらも基本的にはハイピッチ・ブラストビートで全力疾走、ノイズまみれのリフ (?) に溺死ボーカルが炸裂。「Found Decomposing with Fresh Discoloration」とか「Mutilating Lesions Differentiated from Leprosy」なんかは構成も凝ってて面白い。結構聴いてたアルバム。最高!

First Day of Humanity、過去の作品Bandcampから若干消えたりしてるので、ダウンロードしておきたい人は早めにしといたほうがいいかも。

 

▶︎Before Days of Humanity 『Molten Lava Corpse』

コロラド州デンバーから新たな「〜Days of Humaniry」系プロジェクト、その名もBefore Days of Humanityが登場! 爆速系ハイピッチ・ブラスト&溺死ボーカル・スタイルの新たな形容詞になりつつあったんですが、グラインドコア/ハードコア・パンクなスタイルでグルーヴィに展開する正統派。この作品は3曲入りのEPで、リリースのほとんどがスプリットとかコンピレーション。ハイペースなリリースが続いていて、2024年1月には読み方の分からないエクスペリメンタル・ゴアノイズ「վադրիպլեգիա!」とのスプリットも出るそう。このվադրիպլեգիա!はめちゃくちゃなんだけど、結構良いかも。精神分裂系。

 

▶︎Reptile 『う​~​ん​。​。​人​間』

基本的にBandcampのゴアグラインド・タグをデイリーチェックするというのが私のゴアグラインドのディグり方なんですが、このアルバム・タイトル見て名作を確信してしまった。日本人なのかなと思ったら、アメリカ・オハイオを拠点にしているとのことで、この作品以外なんの情報もないので気になりすぎてます……。曲は結構聴きやすい正統派。粘っこいリフにライオンみたいなグロウルでちょこっと展開して最後ブラストビートみたいな、お手本みたいなアルバム。全然ポンコツ感なく聴けた一枚。もっとポンコツ期待してたけど…

 

▶︎Gruesome Bodyparts Autopsy 『Autopsia Horrible con un Desastre Anat​​​ó​mico』

チリのスラミング・ゴアグラインド・プロジェクト、Gruesome Bodyparts Autopsyの8曲入りEP。かなり凄くて、一斗缶スネアにしてるんですか?って聴きたくなるくらい痛烈なハイピッチ・スネアがスラミング/ブルータル・デスメタルばりに丁寧に打ち込みされてて、リフも凝ってます。溺死系ボーカルをもっと炸裂させたらとは思うけど、全編通して暗黒感貫いてて、久々にファニー要素皆無で勝負してるソロ・プロジェクトでグッと来ました。そしてジャケ、2010年代インターネット・ゴアグラインド勃興期を彷彿とさせてくれてそれも良い。「Queso De Cabeza Humano 」って曲だけでもぜひ聴いてもらいたい。

 

▶︎Putricine 『Putricine』

アメリカ・メリーランドの4人組スラミング・ゴアグラインド・バンド、Putricineのセルフ・タイトル・アルバム。今時アメリカからバンド形態でゴアグラインドって相当気合い入ってないと存在しないからかなりレアな存在。Sanguisugaboggの成功例もあるし、オールドスクール・デスメタル+スラミング/ビートダウンの形式がもっと出てくればとは思ってたんですが、彼らはその流れ感じますね。ただメジャーなメタル・レーベルが飛びつくかといったら、そこまで可能性は感じないかも。もう少しそのタイプが出てきて小さいながらもシーンが出来れば変わっていくのかな。

 

▶︎Organic Brain Disorder 『Gruesome Acts Of A Deranged Mind』

イギリスを拠点とし、Syphilitic Abortion、Dead Fetus Collection、Flax!!!のメンバーによって結成されたOrganic Brain Disorder。チェコの名門Bizarre Leprousからのリリースということで、アートワークも気合い入ってます。連続殺人犯の実話にインスパイアされた楽曲は、打ち込みのドラミングが絶妙にチープなのが最高で、高校生のころにタイムスリップしちゃう。2000年代後半、インターネット・ゴアグラインドはこんなのばっかだったよ。

 

▶︎Painful Artistic Sexy Torturing Angel 『Evil Pyon Pyon Dead』

『デプレッシヴ・スイサイダル・ブラックメタル・ガイドブック』を執筆した長谷部氏が在籍しているというゴアグラインド・ユニット。2023年は『Painful Artistic Sexy Torturing Angel』という作品もリリースしているが、ジャケ的にこっちの方に食いついてしまった。アニメゴアというわけではないみたいで、そういうイントロもなく、しかもゴアグラインドにしてはリフはデス・ブラックな感じで面白い。bandcampにも「なんてこった!ゴアをやろうとしたら、デスメタルみたくなっちゃった!!」って書いてあるし本人たちもそう思ってたみたいだ笑 ガンガンかましてほしい!

 

▶︎Bowel Leakage 『Deathning Grind』

ベラルーシのワンマン・ゴアグラインド・プロジェクト。久々に名前を聴いたなーと思って過去の作品チェックしてたら、単独作は2014年の『Harvest Of Nauseating Remnants』以来。よく名前覚えてたなっていう自分の記憶力にびっくりした。かなり作り込まれたリフの展開が今のハードコアっぽい感じもする。曲によっては完全にゴアではないものもあり。Dead Infectionの「Gory Inspiration」のピュアすぎるカバーはかなり熱い。

 

▶︎Mutated Sex Organ 『Abyss of Flesh』

NUNSLAUGHTER、BLOODTUSK、FROM THE HELLMOUTHに在籍するNoahとTO DUST、GRAVE PLAGUEのJoeからなるアメリカ・クリーヴランドのゴアグラインダー、Mutated Sex Organのフル・アルバム。ユニットらしく息の合ったグルーヴはゴアグラインドにしてはややプログレッシヴだが、特段ききずらさとかは感じない、むしろフックになってて面白い。やっぱちゃんとドラマーいると迫力が全然違う!チープな打ち込みゴアばかり聴いててはダメだな。

 

▶︎Morgue Tar 『Morgue Tar』

アメリカ・テキサスのゴアグラインド・ユニット、Morgue Tar。2022年にリリースしたアルバムは2022年ゴアグラインドの名盤としてレビューしたのは記憶に新しい。本作は12分にも及ぶオープニング・トラック「Blight of Denigrative Evocation 」で幕を開ける。物々しいイントロから始まるスラッジ・ドゥームの影響を受けたゴア・サウンドは、ヴォミット・ノイズ的アプローチと腐臭漂うダウナーなリフ、シンプルな打ち込みドラムをじわりじわりと展開していく。意外とスローなアプローチに挑戦するゴアグラインド・バンドはいなかったし、彼らが非常にクリエイティヴな存在であることが感じられる。そのほかの楽曲も5分、6分とイントロのストーリーありきのゴア。これはこれで新しいし面白いコンセプチュアル・ゴアグラインド。Surrogate Recordsから盤が出るそうだ。

このアーティスト写真。怖過ぎる。

 

▶︎Cobblestoning 『Hyperbobilious Explication of Amaranthine Pestilential Astronomicolon』

イングランド・リーズのゴアグラインド・ユニット、Cobblestoningのデビュー・アルバム。この長過ぎるアルバム・タイトルを直訳してみると「アマランサス疫病アストロノミコロンのハイパーボビリウス解説」。なんのことだか全くわからない……。ただメンバークレジットらしき表記には「Crohn’s Disease and inflamed gastrointestinal tract (クローン病と消化器官炎症)とあり、内臓の炎症とか狭窄がテーマなのかな?アートワークからが人間のどの部分の炎症なのかはちょっと分かりかねるが。私自身クローン病なので、日常で目にする自身の内視鏡画像や病名が楽曲名にあると親近感あります。内容はかなり正統派で短いSEから細かくテンポチェンジしながら予測不能なゴアを展開。

このバンド・ロゴのバックの画像はおそらく内臓で内視鏡の画像だと思う。メンバーがクローン病で自分の内視鏡画像を使ってるんだったらめちゃくちゃ評価したい。

 

▶︎Murder Rape Amputate 『The Ramifications Of Doubled Abominations』

ゴアグラインドの聖地、チェコ・オストラヴァを拠点に活動する4人組Murder Rape Amputate (殺人・レイプ・切断) という最低最悪なバンド名を持つ彼らのセカンド・アルバム。レザーマスクを被った悪趣味殺人鬼4人組というコンセプトでアーティスト写真も凝っている。それなのにMidjourneyで適当に作ったジャケが本当に勿体無いですね……。もっとめちゃくちゃな死体ジャケじゃないと!Midjourneyで作られたようなアートワークって2022年くらいからちょこちょこ見かけるけど、個人的に好きではないです。曲は今時珍しいフル・バンドのゴアグラインドということもあり迫力十分、凝ったSEから時折スラムの影響も感じさせつつ、終始生臭い。

衝撃的なアーティスト写真!!!

 

▶︎Rancid Stench 『Human Decay』

イングランドのD-BEAT GOREを自称するRancid Stenchのデビュー作。ゴアグラインダーの中でもアートワークからサウンドがパッと分かってしまう人はどのくらいいるだろうか。『Human Decay』というタイトルや腐敗してボロボロになった白骨、両橋に並べられた埃を被った頭蓋骨……。ここからギターのディストーションはカラカラに乾いたノイジー・リフとオールドスクール・デスメタル、つまりは初期Carcassの腐乱臭漂うスタイルであるということが分かる。実際聴いてみたら全くその通りで、本当に無駄な能力が年々身についてしまっていることを実感。「Meat Grinder」という曲のストレートさはゴアノイズばっかり聴いてると欲してきますし、このへなちょこ感が好きな方は必ずいるはず。

 

▶︎Lipoma 『Odes to Suffering』

今年、ナンバーワン・ゴアグラインドにこの『Ode to Suffering』をピックアップしている世界のゴアグラインダーは結構多いと見ている。Lipomaはその名前とうんこみたいなロゴが印象的でここ数年、よく見かけるし精力的に活動しているプロジェクトの一つ。そしてLipomaはゴアグラインドにブラックメタルのメロディを持ち込んで相当革新的なことをやっているのが評価されているのだろう。かなり作り込まれたメロディック/ブラックなリフにゲボゲボゴアボーカルが意外とマッチしている。これはジャケがイボイボ病人じゃなければ、もっと聴いて欲しいなと言いやすいけど、ジャケがイボイボ病人すぎてオススメしにくいですね、、、。ちなみにこのイボイボ病人は有名で、Slund / Maggot Bathのスプリットにも使われてて見覚えありました。見覚えあるって言う自分に嫌気がさすね。「この死体、どっかでみたことある!」。

Lipomaがインスタで『ゴアグラインド・ガイドブック』に自分が掲載されていることにかなり感動してました。

 

▶︎MRSA 『Perioperative Death: Its Implications and Management』

テネシー州ノックスビルのワンマン・パソロジカル・ゴアグラインダーMRSAのセカンド・アルバム。ちなみにデビュー・アルバムが2023年11月、同月に出てますね。内容はそこまで変わらないですが、やっぱり病院ジャケは最高です。Dead Infectionの『SURGICAL DISEMBOWELMENT』を超える病院内ジャケは30年経っても出てこないですが、これはそれに匹敵するインパクトがありますね。ここにあっただろうベッドはどこへいってしまったのか、血痕や投げ捨てられたビニールの手袋や散乱している医療器具……。いったいこの写真はどこで撮影されたものなのか……。この不気味なシチュエーションを表すかのようなダークで地味なゴアグラインドがまるで廃病院の死体安置所から響き渡ってくるかのようなエコーをまとって炸裂してます。打ち込みドラムのチープさもこれくらいがちょうどいいですね。打ち込みって分かるし、明らかに人力でない無機質さが良い。結構印象に残った作品だし、度々聴きたくなる。

 

▶︎Anime Aliens 『Never Had a Problem Waiting on a Good Thing』

カリフォルニア・サクラメントの馬鹿三人集、Anime Aliensのどうしようもないアルバム。アメリカにいったことある人とか暮らしたことがある人なら分かると思いますが、本当に筋金入りの馬鹿って存在してて、面白くもない冗談とか仲間内にしかわからないミームで笑い続けてる人が一定数いるんですけど、アメリカはそういう人がどうしてかゴアグラインドやるんですよ。昔、50 Ways To Kill Meっていうワンマン・ゴアというかメロディとかも打ち込みのMidi-Grindみたいなのをやってたプロジェクトがあったんですが、そいつのホームページが自分のちんこの画像を100枚くらいいろんな角度から撮影したのをアップしてたり、街のあちこちでお尻出して、とにかく酒とドラッグをかましまくってる狂人がいて、本当にやばいと慄いた覚えがあります。ちなみにそのホームページが残念ながら消えてしまったようなんですが、50 Ways To Kill Me気になった人いたら、下の動画チェックしてみてください。

さてAnime Aliensですが、まずこのジャケですね。レントゲン写真と見たことのないファミコンのキャラクター、金の腕時計。どういう思考回路でこの3つを同じアートワークに、そしてこのように配置しようと考えたんでしょうか。さっぱり理解できない。楽曲もAnal Cunt的なショートカット・ゴアグラインド、それをもっと乱雑にしたようなものに最後にヒップホップのイントロを毎回組み込んでくるっていう意味不明なこだわりを見せています。ここで紹介しなければ、誰も聴かないかも。でも、僕はこういう音楽が好きなんだよな……。

 

▶︎Gastroesophageoneurocardiolaryngopulmonogastrohepatoneurodermatotracheobronchocolitis & Atherosclerosis 『Split』

インドネシアのヴォミット・ノイズ、Gastroesophageoneurocardiolaryngopulmonogastrohepatoneurodermatotracheobronchocolitisと、正体不明のAtherosclerosisによるスプリット作。このアートワークは一見するとなんなのかよく分からないんですが、これはあり得ないくらいに肥大し腐敗した目玉ですね。だとしてもこんなふうに引っこ抜こうとしなくてもいいのでは……まあ本人は死んでるのかな。でも目玉ってこんなふうになるのかな?Gastroesophageoneurocardiolaryngopulmonogastrohepatoneurodermatotracheobronchocolitisは割とダイナミックなヴォミット・ノイズでそれなりに聴いてて面白さありますが、Atherosclerosisは不思議なミニマル感が妙に心地良い。打ち込みのブラストビートにヴォミット・ノイズだけってのがシンプル。これはこれで独立して面白い音楽だと思うなあ。環境音楽のゴア・バージョンとして有りな気がする。

 

▶︎Fecal Decay & Luigi Destroyer 『Split』

ジャケが最高!絶対アメリカ人だろと思ったら、案の定アメリカ・ジョージアのワンマン・ゴアグラインドだった。うんこの津波が押し寄せた部屋のど真ん中にこっちを見つめる死体。せめて二つのバンドのロゴのサイズ感とかカラーとか統一しようとは思わなかったのだろうか。常人を寄せ付けないこのスプリット・アルバムなんですが、実は内容がかなり良くて、スラミング・グルーヴを通過した打ち込みゴアグラインドで、グルーヴィーグラインドとかって言うタグで広まってる音楽のどちらの旨みもしっかり凝縮したスタイルでかなり最高。スラミング・ビートダウンとか聴いてる人でうんこと死体好きだよって方はぜひ聴いてみてほしい。Fecal Decayのスプリット相手であるLuigi Destroyerはマジでしょーもないうんこのカスみたいな曲でそれも最高!

 

▶︎Chlamydia Trachomatis Milked From A Severely Enlarged Pustulated Scrotal Edema, Liquified Mess Of Corpse Fluids Dripping From A Grocery Store Dumpster, Renal Hydronephrosis​ & Intestinal Suppuration 『4 Ways Of Sickening Surgical Perversion』

アメリカ・オハイオのパソロジカル・ヴォミット・ノイズ・プロジェクト、Chlamydia Trachomatis Milked From A Severely Enlarged Pustulated Scrotal Edemaの呼びかけによって集まった3組との4 Wayスプリット。Liquified Mess Of Corpse Fluids Dripping From A Grocery Store Dumpsterは3487曲を1トラックにまとめた楽曲を提供 (2:33秒しかないが)、Renal Hydronephrosisもヴォミット・ノイズ、Intestinal Suppurationはこの中で一番まともで、トラック毎にタイトルも付いてます。ベースレス、ハイピッチ・スネアの打ち込みが気持ちいいですね。これでもマトモに聴こえる不思議。

 

▶︎Onee-san The Exterminator And The Lustful Yandere With Big Oppai 『My Waifu Is A serial Cunt​-​Killer』

インドネシア・パランカラヤを拠点に活動するワンマン・ゴアノイズ・プロジェクト、Onee-san The Exterminator And The Lustful Yandere With Big Oppaiのデビュー・アルバム。「お姉さん」、「ビッグおっぱい」という強烈な言葉がバンド名になったアニメ・ゴアノイズ。ゴアノイズはバンド名やロゴ勝負的なところがありますが、Onee-san The Exterminator And The Lustful Yandere With Big Oppaiは完全にバンド名だけでこのリストに掲載されています笑 2019年に制作に取り掛かり、なんとこのアルバムを作るのに4年もかかったというのだから逆の意味で驚き! それだけ強い制作意欲があったのでしょう。全編打ち込み、リフの輪郭がぼやけまくって何をやっているのかはさっぱり分からない! ただそれがゴアノイズ。このバンド名だけで年間ベスト入りは確実でした。

 

Onee-san The Exterminator And The Lustful Yandere With Big Oppaiのロゴ。

 

 

デスコア 2023年下半期の名盤TOP10

2023年上半期のデスコア・ベストアルバムはこちら

この記事では、RIFF CULTが2023年7月から12月までにリリースされたデスコアのアルバム/EPの中から素晴らしい作品をピックアップし、順位付けしてアルバムレビューしています。上半期と下半期に分けてアルバムレビューを行なっていますので、また上半期のリストをチェックしていない場合は、上記のリンクから読んでみて下さい。

2023年下半期は、順位をつけるのが非常に悩ましいほど、たくさんの素晴らしい作品がリリースされました。そして、それらはデスコアを出発点に個性的な発展を遂げた個性が光っていました。それぞれにデスコアではありますが、「ブラッケンド」や「テクニカル」、「ブルータル」といったデスコアから発展したサブ・ジャンルとして成立しており、同列にデスコアとして考えるには難しいほど、シーン全体に様々なスタイルを持つバンドがいます。結果的に有名無名問わず、強く印象に残り、繰り返し聴いた作品を参考に順位付けに取り組んでみました。皆さんはどう思いますか?それではアルバム・レビューを読んでみてください!

 


 

▶︎第10位 : Crown Magnetar 『Everything Bleeds』

Stream & Download : https://orcd.co/everythingbleeds
Social : https://linktr.ee/Crownmagnetar

コロラド州コロラドスプリングスのデスコア・バンド、Crown MagnetarによるUnique Leader Records からのデビュー・アルバム。2021年に発表した『The Codex Of Flesh』は壮絶なテクニカル・デスメタル/デスコアを鳴らしシーンに大きな衝撃を与えた。今でもあの衝撃を覚えているくらいだ。そんな彼らが2023年、ブラッケンド/ブルータル・デスコアの登竜門レーベルになってきているUnique Leader Records と契約。彼らをこのレーベルが放っておくわけがない。

前作はかなりテクニカルな印象があったので、最新アルバムを通して聴いてみると、意外とスラミング・パートが豊富にあったり、アンダーグラウンドなスラミング・ブルータル・デスメタル/デスコアも追い求めている感じがひしひしと伝わってきて痺れた。確固たるテクニックがあるからこそ出せるブラストビートのスピードがあるからこそ、そこから急ブレーキをかけた時のブレイクダウンの威力というものは凄まじいものがある。「The Level Beneath」は刺激が欲しいメタル・リスナー全員聴くべき名曲。

SLAM WORLDWIDEという異次元のワンマン・プロモーティング・マシーン・チャンネルが育んできたブルータル・デスメタルとデスコアのクロスオーバー・メディアという、誰もやったことがなかったふたつの異なるリスナーが集まる場所として機能して、Crown Magnetarのような化け物が正しく評価される地場を作った。この功績の偉大さまでも感じさせてくれる彼らのニュー・アルバム、未聴の方は食らって欲しい。

 

▶︎第9位 : Orphan 『Manifesto 1.0: Stages of Grief』

Stream & Download : https://tr.ee/fs6zGIJOT_
Social : https://linktr.ee/Orphanband

STRANGLEDという狂気に満ちたスラミング・デスコア・バンドが出てきたときは彼らが天下を取るのではと思ったが、残念ながら解散してしまった。理由については色々言われているが、STRANGLEDが分裂して、Orphanを結成した兄弟が、ストリームやマーチの分配金を正当に分け与えなかったことが理由だとかなんとか……。それで結果OrphanとPeelingFleshという、二つの異なるヘヴィ・バンドが誕生した。もしこれが真実なのであれば、このリストにOrphanを掲載することはなかったが、流石に、この完成度の高さだと評価せざるを得ない。

STRANGLEDでもあの狂ったツイン・ボーカルが完全にバンドを支配し、ライブ中に殴り合い怒りをぶちまけ合うリアルな様には慄いたが、Orphanのフランティックなエナジーのリアルさはしっかり楽曲に内包されていて、聞き続けていると精神的にくるものがある。リアルにやばい人間の音楽なのか、芸術性と理性を持って、作品としてこれをやってるか、そのギリギリにあるという意味では、上記の噂が真実なのかはっきりする前に一度聴いておいて損はないだろう。

 

▶︎第8位 : Within Destruction 『Rebirth』

Stream & Download : https://fanlink.to/wdrebirth
Social : https://sadboikroo.com/

そろそろ年間ベストをまとめないとといけないと下半期にリリースを振り返っていたところにサプライズ・リリースされた、スロベニアのデスコア・バンド、Within Destructionのミニ・アルバム『Rebirth』は、オープンワールドのアクションRPG「ELDEN RING (エルデンリング) 」の世界観に魅了されたメンバーが、歌詞、ヴィジュアルにそれを落とし込んで制作した作品に仕上がっている。

わずか6曲のEPであるが、内容は非常に濃い。彼らは自身のデスコアを「Nu Deathcore」を表現したり、ニュー・メタルコアとの繋がりを意識しながら、クリエイティヴに新しいデスコアを追い求めている。スラミング・ブルータル・デスメタルのエレメンツも彼らのサウンドの暴虐性、ブレイクダウンの強度をグッと上げているのも個人的には熱いポイントだし、ピッグ・スクイールしまくりながらビートダウンするのには思わず笑ってしまった。ただ、いわゆるNo Face No Caseのようなスラミング・ビートダウンとは言い切れない、デスコア的構築美がある。Signs of the SwarmやDistantのメンバーがゲスト参加しており、それぞれのファンであれば明確なWithin Destructionのサウンドの特徴も感じられるはずだ。結構作り込まれてて驚いた作品。

 

▶︎第7位 : Thy Art Is Murder 『Godlike』

Stream & Download : https://TAIM.lnk.to/GodlikeYT
Social : https://www.thyartismurder.net

4年振りとなった通算6枚目のアルバムは、2023年ナンバーワン・デスコア・アルバムになるべき作品であった。Nuclear Blast を離れ、Human Warfareからのリリースとなった本作でバンドを象徴するフロントマンだったCJ McMahonは歌っていない。彼はアルバム・リリースの直前にトランスジェンダー嫌悪の投稿を発端にバンドを解雇させられており、アルバムには後任ボーカリストとしてAversions CrownのTyler Millerが急遽ボーカル・パートを録り直し配信された (フィジカルはCJがボーカルを務めたものが収録されているそうだ)。

バンドの声明には今回の件だけが解雇の原因でないこと、彼の抱える様々な問題とバンドとの方向性の違いについて様々述べられていた (現在オフィシャルからは削除されている)。その怖いくらいの冷静な声明文からはバンドがカリスマと呼ばれ、神格化されたThy Art is Murderのフロントマンを抱えて活動してきたあらゆる苦悩から解放された清々しさすら感じた。単なるCJのバックバンドでないことを証明しなければいけないプレッシャー、それは残酷だが新曲のミュージックビデオに書き込まれるリスナーからのコメントを見れば相当なものである。

Tylerは素晴らしいボーカリストであり、Thy Art is Murderにフィットする最良の後任ボーカルであることは間違いないし、バンドの決断は間違っていないと思う。アルバム・リリース前のミュージックビデオに関してはCJをフロントに据えたディレクションが施されているが、「Destroyer Of Dreams」には登場せず、音源も差し替えたもので作り直されている。キーとなるブレイクダウンもThy Art is Murderらしいダイナミズムがあり、ヒロイックなギターワークは一時期のWhitechapelを彷彿とさせるようでもある。Thy Art is Murderのこれからに期待したいと思う。『Godlike』はいいアルバムだが、彼らはすぐに次作に取り掛かる必要があるかも知れない。

 

▶︎第6位 : The Voynich Code 『Insomnia』

Stream & Download : http://orcd.co/tvcinsomnia
Social : https://bit.ly/m/thevoynichcode

2023年11月に再来日を果たしたポルトガルのシンフォニック/ブラッケンド・デスコア・バンド、The Voynich CodeのUnique Leader Records契約後のグローバル・デビュー作。ツアーの準備中、それは確かリリースの1年以上前であったが、契約が決まったと連絡があった。そこで色々とUnique Leader Records 周辺のデスコア・シーンの状況やつながりについて詳細な話を聞けたのは非常に興味深かった (ここでは書けないが…) 。ポルトガルという、メタル・バンドにとってはまだまだ未知の国ではあるが、彼らはヨーロッパを中心にツアーを行い、実績十分だ。このアルバムでは、彼らはアルバムのソングライティングを行なっている際にメンバー全員でハマっていたというHumanity’s Last Breathの影響も感じることが出来る。本作のミックス/マスタリングを手掛けたのはChristian Donaldsonなので、クオリティはお墨付きだ。こぼれ話だが、RIFF CULTのチームが運営するRNR TOURSで今年6月に来日したメロディックパンク・バンド、MUTEのギタリストがツアー中使っていたのはChristianから直接購入したギターだった。不思議なつながりを感じた瞬間であった。

さて内容であるが、彼らのライブ・パフォーマンスを観た人なら分かるだろうが、現代デスコアのトレンドとも言える、Lorna Shoreを彷彿とさせるブラッケンド・スタイルを、これまでThe Voynich Codeが育んできたBorn of Osirisからヒントを得たオリエンタルな音色を”染み込ませた”サウンドへとアップデートしている。新加入のドラマーDaniel Torgal (彼もRNR TOURSで過去に来日を手がけたAnalepsyの元メンバーである!) によるマシンガン・ブラストビートを下地に敷いたメロディアスなデスコアは、一見そのプログレッシヴさにとっつきにくい印象を受けるかもしれないが、フックの効いたテクニカル・リフの波がベストなタイミングで展開してくるのでご安心を。「The Art of War」で魅せるThe Voynich Codeの新スタイルは、デスコア・リスナーはもちろん、プログ/Djent、そしてThallといったニッチなジャンルのリスナーまでを虜にする要素がたっぷりと詰まっている。聴き込みが重要な作品。

 

▶︎第5位 : Carnifex 『Necromanteum』

Stream & Download : https://carnifex.bfan.link/necromanteum.yde
Social : http://www.carnifexmetal.com

トレンドの移り変わりが激しいデスコアという音楽シーンにおいて、長年大きくスタイル・チェンジをしていないのがCharnifexだ。Jason Suecofがプロデュースというのも、良いチョイスだと思う。サウンド・プロダクションが”デスメタル”であることが、彼らの良さを引き出している。

アルバムを9枚作ってきて、さほど大胆なスタイルチェンジやチャレンジングなパートを導入したりしないということは、彼らがブラッケンド・デスコアの元祖として自身のソングライティングにかなりの自信を持っている証拠だと思うし、実際に、細部にまで血が通った人力のグルーヴとホラー映画さながらのシンフォニックなオーケストレーションが彼らのサタニックな魅力を不気味に引き出しており、完全に格が違うということが数曲聴いただけでも確信出来る。

中でもやはり、タイトル曲「Necromanteum」のオーケストレーションは神がかっている。ここまでオーケストレーションをキーにした楽曲は、思い返してみたら無かったかも知れない。長年ライブのエンディングを飾る「Hell Chose Me」が「Necromanteum」に置き換わったら、だいぶ印象も変わりそうだ。

 

▶︎第4位 : Impending Doom 『LAST DAYS』

Stream & Download : https://linktr.ee/impendingdoom
Social : https://www.instagram.com/impendingdoom/

2000年代初頭から活動を続けるベテラン・デスコア・バンド、Impending Doomが、10年以上所属していたeOneを離れ、18年振りにインディペンデントに戻り本作をリリース。いやはや驚きました。ロゴも一新、ここからまたImpending Doomの伝説が続いていくのかと思い、リリース時はかなり精神を集中させてEPを聴きました。

デスコアのアルバム・コンセプトや歌詞は近年メンタルヘルスが中心で、人間としてのダークサイドや怒り、悲しみというものが多く、リアルに追求すること自体に危険性をはらんでいる音楽であることは間違いなく、人を壊してしまう危険性を常にはらんでいる。ツアーともなればそれを毎日演奏するミュージシャンが被る精神的な影響は計り知れないものがあるだろうと感じますね。

Impending Doomは、クリスチャンであり、クリスチャンであることを通じて生ずる社会的な怒りや批判をテーマに取り上げることがこれまでも多くありました。芸術的に、そして詩的にそれらを表現し、大炎上するような偏った思想でなく、共感を呼ぶものにするというのは教養なしには出来ないでしょうし、実際の感情に基づいているからこそ数10年に渡り歌い続けられているのかもしれません。長く歌い続ける楽曲の歌詞が一瞬の怒りや悲しみを切り取ったものであった場合、通常のメンタルとは異なる負の感情、怒りの感情を歌い続けることにはかなり重たい精神的負荷がかかってくるでしょうし、大型ツアーともなれば、それをほぼ毎日1ヶ月続けるので普通はおかしくなってしまうでしょう。これはデスコアという音楽がこれまでに何度も直面してきた問題で、デスコアという音楽が長く続いていく上でも、その時の精神状態などを大きく反映させた歌詞などを歌うこと、絶望感、希死観念をテーマにし続けることには、やや注意が必要かもしれません。Impending Doomが精神的な混乱、狂気や怒りのような音の塊をサウンド・パレットの上に落とし込んでいるのは紛れもない事実だが、それが精神的な崩壊からくるものでないことは明らかで、フレーズの所々に見られるクリスチャン・メタルらしい言葉のチョイスはダークであるが、デプレッシヴでないと感じます。クリスチャンであることの一貫性は、現代の困難な社会を歩む上で重要なことなのかも知れない。

サウンドもFacedown Recordsのクラシック・デスコアを見事に現代的なサウンド・プロダクションにアップデートしているのが節々で感じられる。ミュージックビデオにもなっている「ETERNAL」のエンディングでモッシュしないデスコア・リスナーはいないだろう。

 

▶︎第3位 : Face Yourself 『Tales of Death』

Stream & Download : https://linktr.ee/faceyourself
Social : https://fyourselfband.com/

オレゴン出身女性ボーカル・デスコア・バンド、Face Yourselfの5曲入りEPが登場。本作前にシングルとしてリリースされた「Death Reflection」では、「女性版Will Ramos」と言われるほど、人間離れしたガテラルを炸裂させ、一気に人気急上昇バンドとなりました。高まる期待とは裏腹に、本作のアートワークはギロチン落下寸前のおどろおどろしいブルータルなものでB級感をぷんぷん漂わせているのには驚きました。個人的には、ブルータル路線を追求していくことの強い表れのように感じ、簡単にメジャー・レーベルには引っこ抜かれないぞというアンダーグラウンド・デスコア・スピリットを勝手に感じました。

EPの先行シングルとしてミュージックビデオとしても公開された「Guillotine」はこの作品のキラーチューンで、女性ボーカリストJasmineのガテラルが圧倒的な存在感を放っています。ファストなブラストビートの上で炸裂するシュレッダーなテクニカル・リフ、ソロも導入されていて、全体的なバランス感覚もヘヴィに偏るでもなく、メロディックに傾倒するでもなくドラマティックで全く飽きません。そして、Lorna Shore直系のエンディング・パートは本家を超えてしまっているとのコメントもMVに書き込まれるほど。それ以上に素晴らしいのはChelsea Grinの初代ボーカリストAlex Koehlerに影響を受けたようなスタイルでスクリームする中盤のボーカル・パートかも。いや本当に聴くたびに衝撃を受けます。

 

第2位 : Signs of the Swarm 『Amongst The Low & Empty』

Stream & Download : https://signsoftheswarm.com/ATLAE-preorders
Social : https://signsoftheswarm.com/bio

Signs of the Swarmが名門Century Media Recordsへと移籍して発表した通算5枚目のフル・アルバム。Lorna Shoreの成功によって、メタルのメインストリームに向かって更にデスコア・シーンを拡大するための門戸が開かれたと言えるだろう。Lorna Shoreの衝撃についてSigns of the Swarmというチョイスは完全に間違っていない。そしてバンドもその期待を超えるものを『Amongst The Low & Empty』で作り上げている。その自信は、アルバムのオープニングを飾るタイトル・トラックでミュージックビデオにもなっている「Amongst the Low & Empty」に現れている。この楽曲は前半こそ、これまでSigns of the Swarmが築き上げてきたブルータル・デスコアに微細なプログレッシヴ/マス・エレメンツを散りばめ、ブレイクダウン・パートへ向かってその熱を加熱させていく。驚くべきは更に底から、2段、3段、4段とビートダウンしていくパートであり、正直言葉を失ってしまうほど、驚いた。もうこの曲の衝撃が凄すぎて、他の曲の感想はありません。

と、言いたいところだがすごい曲が多すぎる。「Tower of Torsos」はニューメタルコアのワーミー、Djentな細かいリフの刻み、エレクトロニックなノイズを見事に散りばめた。無論、この楽曲もエンディングのビートダウンは言葉にならないほどヘヴィだ。次いで「Dreamkiller」はSigns of the Swarmが更に上のステージへと階段を上がっていくために作られたような曲で、これまでキーになることはなかったプログレッシヴなスタイルを全面に押し出し、クリーンパートも少しだか組み込まれた興味深い仕上がりとなっている。この曲が彼らを、これまでリーチ出来なかったところへ導いてくれるものになるかどうか、それはやはりCentury Media Recordsが仕事をするはずだ。これだけ高いポテンシャルを兼ね備え、それを見事に、ブルータル・デスコアとして最高の形に仕上げた彼らの更なる成長が楽しみである。

 

▶︎第1位 : Humanity’s Last Breath 『Ashen』

Stream & Download : https://ffm.to/hlbashen
Social : https://humanitys-last-breath.com

2009年、Vildhjartaのメンバーによる新バンドという触れ込みでスウェーデンから世界へ向けて衝撃的なデビューを果たしたHumanity’s Last Breathも気付けば本作が4枚目のフル・アルバムだ。このアルバムについてバンドは、このようなコメントを発表している。

「10年以上にわたり、Humanity’s Last Breathは、迫り来る黙示録を警告するかのような不吉なメッセージを音楽で伝えてきた。表現を必要とする場所から音楽を作りたいという果てしない衝動で、常にモダン・メタルの可能性の限界を押し広げてきた。4枚目のアルバム「Ashen」のリリースとともに、このサウンドを体験してほしい。世界は絶望の中で歌おう」

直訳なので絶妙なニュアンスはやや異なるかもしれないが、気になるのはHumanity’s Last Breathがモダン・メタルを自称しその可能性の限界を追求していることをバンド活動の大きなテーマとしているところである。実際にバンドの主要メンバーであるBuster Odeholmはプレイヤーとしてだけでなく、多くのデスコア・バンドのプロデュース、ミックス、マスタリングなどを手がけており、シーンきってのプロデューサーとしての側面も持ち合わせている。彼が自身がヘッドを務めるバンドにおいてどのようなスタイルを作り上げるのか、それはこれまでプロデュースしてきたバンドへ「自分とはなんたるか」を提示することにもなり、『Ashens』で想像も出来ないほどの創意工夫と挑戦、限界の追求を果たしている。そしてそれは、プログレッシヴ、Djent、Thallという概念すらも自ら打ち壊してしまうような、衝撃的なものになっている。

オリエンタルな女性コーラスが永遠とバックトラックとして流れる「Instill」のDual Guitar Playthroughのビデオがアップされているので観てみよう。ギタリストにとって、これほど参考にならないプレイスルー・ビデオはあるだろうか! Busterはレフティであるが、弦は逆張りしていて、「E B E A Ab A」という奇妙なチューニングを施しプレイしている。このプレイスタイルについては自著『Djentガイドブック』で直接Busterについてインタビューをしているので是非手に取って読んでみてほしい。この楽曲からも分かるように (インスト・バージョンであるが)、聴くものを飲み込んでいくようなリフの恐るべきパワーに圧倒されるし、ヘヴィ、以上に”ダークネス”という部分の追求をしているようなところもあり、闇より深い黒を探し続けているような、常人では考えもつかないアイデアでHumanity’s Last Breathをアップデートしてくれている。

また、メンバーにはラインナップされていないが1曲を除き、本作はBusterとVildhjartaのCalle Thomérがソングライティングを手掛けている。元々彼は参加しないつもりであったし、メンバーでもないが、BusterがColleの才能を認めていて、いくつかのHumanity’s Last Breathの楽曲アイデアを彼に送り、アレンジしてもらったと言う。このコラボレーションはHumanity’s Last Breathというバンドにとってこのアルバムで未知のサウンドを生み出すのに大きな力になっているようにも感じる。また、このアルバムで初めて(!) プログラミングしたドラムではなく、ドラマーが実際に録音している。このドラム録音はリハーサル・スペースで録音してツアー中にラップトップで編集したとのこと……。さらにボーカルはAudiomoversというソフトを使い、ボーカルのFilip Danielssonが自宅スタジオで録音、それがBusterのDawにそのまま録音されるようにセットアップして時間の節約をしたそうだ。クリエイターの環境も日々アップデートしているが、さすがBusterといった具合だ。

アルバムからの先行シングル「Labyrinthian」は非常に高い評価を得た。先ほども彼らのサウンドを説明するとき、「闇よりも黒い黒」といったが、この楽曲でそれを完全に表現している。もちろん、中盤にはモッシュでも起こそうかというようなキャッチーなフレーズもあるが、そこからまたずるずると、リスナーを闇深くへ引き摺り込んでいく。バンドはこんな完成度の高いアルバムを作って、次一体、何を作ってしまうのだろうか。Lorna Shoreが「To The Hellfire」を出したとき、もうデスコアがこれ以上ヘヴィになることはないかもしれないと思ったが、彼らはまだ、さらにヘヴィになっていくだろう。

 

次点TOP 10

Osiah – Kairos
As Beings – Slave to the Sickness
VØID – Everything is Nothing
Nylist – The Room
Lonewolf – The Rhythm of Existence
Teralit – The Trinitarian
Acranius – Amoral
Monasteries – Ominous
Worm Shepherd – The Sleeping Sun
DJINN-GHÜL – Opulence

アヴァンギャルド・プログレッシヴ・ジャズ 2023年の名盤 TOP10

Avant-Prog。このジャンルとの初めての出会いはMABOROSHI NO SEKAIからリリースされていたBAZOOKA JOEのアルバム『PORNO AND CANDY』からだったと記憶している。「アヴァンギャルド」とか「プログレッシヴ」などという音楽ジャンルがあることを知らなかった中学生の私は、ドラムとベースだけのハードコア・デュオで、トリッキーな展開が癖になるなと思っていた。このアルバムにゲスト参加していた高円寺百景の面々をたよりに新しいアーティストを掘り下げていったことが、アヴァン・プログレッシヴへの入り口になった。この記事のイントロでこれ以上話すには長くなりすぎるので、そこからの音楽遍歴はまたの機会に……。2023年聴いていたいくつかの作品をアルバム・レビューしてみたいと思う。プログ・ジャズは全く通ってきていないので、見当違いな感想があればコメントで教えていただきたい。

基本的にBandcampを中心にAvan-Progのタグを頼りに様々な作品を聴いた。ただ、普段追いかけているメタルやパンクとは違い、その歴史や重要人物について、全く分かっていない。完全なる無知だ。しいて言えば、吉田達也さん関連だけは追いかけ続けている、といった具合。ですので、プログ・ジャズ・リスナーの方がこのリストを見たら、どう思うだろう。


▶︎第11位 : Nick Dunston 『Skultura』

どうしても10枚に絞れなかったので、11枚という中途半端な数になってしまった。消そうかと思ったが勿体無いので全て掲載しようと思う。

ニューヨークを拠点に活動するフリー・インプロ/アヴァンギャルド・ジャズ系のベーシスト、Nick Dunstonによる本作『Skultura』は、ドイツ・ベルリンのレーベルFun In The Churchとアメリカのカセットテープ専門レーベルTripticks Tapesからの共同リリースで日本国内でもディスクユニオンなどに入ってきています

Nickが本作に呼び込んだゲスト陣も面白く、ボーカル/エフェクト/エレクトロニックを担当するCansu Tanrıkulu、シンセ奏者のLiz Kosack、アルト・サックスとクラリネット、そしてボーカルとしても参加したEldar Tsalikov、ドラマーMariá Portugal、そしてAKAI MPCを操る共同プロデューサーPetter Eldhという、一見しただけではどんな音楽を奏でる集団なのか全く想像が出来ない陣容でアヴァンギャルドな世界観をサウンド・パレットに描き出していく。冒頭の「Jane」では、Volkswhaleを彷彿とさせるような、Tardcore/Scum Music的な、取り留めのないカオスにも聴こえるが、静かに差し込まれるNickのベースや微細なアヴァンギャルド・ジャズがそれらを上品な芸術作品であることを思い出させてくれる。即興音楽をベースにしながらも、様々なサウンド・マニピュレーション・テクニックを駆使し、直感的なアイデアを丁寧にコラージュして形作られたような音楽は、他に聴いたことのない刺激的なものに仕上がっている。

この秋、オーストリアで開催された「ヴェルス・アンリミテッド・フェスティバル」のフル・ライブパフォーマンス・ビデオが公開されており、本作の直感的な部分が視覚的に楽しめる映像になっているので、気になった方は是非。

 

▶︎第10位 : Lovely Little Girls 『Effusive Supreme』

The Flying Luttenbachersのメンバー擁するシカゴを拠点に活動するプログレッシヴ・ジャズ/アヴァンギャルド・ロック・バンド、Lovely Little GirlsのSKiN GRAFT Recordsからの3枚目フルレングス。

オフィシャル・プレスによれば、MagmaからDead Kennedysに影響を受けているとのことだが、シカゴ・ジャズが根底に流れていながらも、奇形ハードコア・テクノPassenger of Shit的なグロテスクでゴツゴツとしたヴィジュアル・イメージを持ち、その狂気は混沌とは程遠くスタイリッシュであり、確かなグルーヴをベースにジャズ、アヴァン・プログ、ファンクからラテン、さらにはマスロック的感覚までも飲み込んでいく。貪欲さと熱気で終始汗ばんだバンド・アンサンブルにただただ身を預け、不気味な動きで無心に体を動かしたくなる、エキサイティングな作品だ。

 

▶︎第9位 : Ramdam Fatal 『Ramdam Fatal』

フランス・オーヴェルニュを拠点に活動するRamdam Fatalは、エレクトロニック・アヴァンギャルド/プログレッシヴ楽団”Ultra Zook”のメンバーと、クラシックの手法でスポークン・ワードを取り入れ寸劇のようなパフォーマンスを得意とする前衛音楽団体”L’Excentrale”のメンバーによるユニットで、同郷のアヴァンギャルド・レーベル「Dur et Doux」より本作でデビューを飾った。ピカソのキュビズムからの影響を感じさせるアートワークは、サウンドと非常にリンクしており、異国の儀式的なリズムとメロディが散りばめられ、クラシック、ジャズの香りもほのかに燻らせながらアヴァン・グルーヴを展開していく。

見事なのはエレクトロニックな手法がアヴァン・プログに暖かみをもたらし、オーヴェルニュの美しい村々までも想起させる収録曲「Fondamentalement trouble 」から「La diabolique」の流れには思わず没入してしまう。面白いのはこの音楽にはどこか日本のニューウェーヴ、パンク・アヴァンギャルドにも似たものが感じられるところ。フランス語の響きも心地良く、隅々まで磨き抜かれたサウンドに没入していく感覚が聴き進めていくにつれ増していく。

 

▶︎第8位 : Mendoza Hoff Revels 『Echolocation』

アヴァン・プログ・ユニット、Mendoza Hall Revelsのデビュー・アルバム。AUM FIDELITYからのリリースということもありディスクユニオンでも取り扱いがあり手に入れやすい作品。元Unnatural Waysの女性ギタリストAva MendozaとYoko Onoなど様々なアーティストの作品に参加してきたベーシストDevin Hoffを中心に結成されたユニットで、サックス奏者にJames Brandon Lewis、ドラマーChes Smithが参加した4人体制で制作された。

 

 

Ruinsや高円寺百景といったパンクを通過したアヴァン・プログが好きなら、Mendoza Hoff Revelsは要チェックだ。サックス、ギターのフリーキーなジャズの香りととにかく弾きまくるドライヴンなベースとタイトなドラミングは一聴するとアンバランスに聴こえるが、さすがは熟練のミュージシャン、卓越したアンサンブルのセンスを見せてくれる。オープニングの「Dyscalculia」のダークなパンク/ジャズ・グルーヴ、「Diablada」のぶっ飛んだギターとサックスの狂気的なメロディ、聴きごたえ抜群。

 

▶︎第7位 : Tatsuya Yoshida & Risa Takeda 『Jellyfish』

1年は365日あるが、SNSから察するにそれ以上のライブをこなしていると錯覚してしまうほど、今、日本で最もアクティヴな即興ミュージシャンであるTatsuya YoshidaとRisa Takedaの両者によるユニット”Tatsuya Yoshida & Risa Takeda”。今年はこのユニットでのツアーも全国各地で開催され、膨大なアーカイヴ音源がBandcampで販売されてきた。その中でも印象的だった『Jellyfish』は、7月27日に愛知・名古屋の徳三でライブ・レコーディングされた音源をまとめたもの。

 

 

ライブによって違うのはRisa Takedaが使用する楽器で、本公演では3台の鍵盤を使い、クラシカルなピアノの音色を軸に展開していく。あえて今、「女性らしさ」と「男性らしさ」をキーワードにこのユニットの魅力を解体した時、Risa Takedaのしなやかな鍵盤ワークと、繊細でありながら肉体的な力強さによる緩急でプログレするTatsuya Yoshidaのドラミングの見事なクロスオーバーが炸裂したこの作品は、即興音楽の遊び心とそれぞれのミュージシャンの個性、そして「女性らしさ」と「男性らしさ」が垣間見ることの出来る良作だ。

Tatsuya Yoshidaのキャリアを考えれば、老練のドラミングをもってして、アヴァン・プログレなライブ・ステージを牽引していくのが普通なのかもしれないが、このRisa Takedaの「おてんば」とも言うべき音色の躍動が時に二人のサウンド・バランスの中心になっているのは驚きだ。歳も離れたこの二人のミュージシャンのアヴァン・プログな駆け引きはリスナーにとって予測出来ない展開への好奇心を駆り立ててくれる。

『Jellyfish』だけでなく、多くの作品でその「駆け引き」を楽しむことが出来るし、ライブならではのフロアの空気感もそれぞれに違い、時にハプニング的な笑い声もそのまま収録されていて、心地良い緊張感が漂っており変なストレスが一切ない。2024年も日本全国、毎日のようにライブを続けるだろうこの二人が、アヴァン・プログをエンターテイメントでなく、生活の一部のような、文化的なものとして我々を楽しませてくれるだろう。どんなに忙しい人でも、ライブを観られるチャンスがあると思うので、気軽にライブへ足を運んでみてほしい。

 

▶︎第6位 : Behold… the Arctopus 『Interstellar Overtrove』

アヴァン・テクニカル・デスメタル・バンドGorgutsのベーシストとしての活動でも知られるColin Marstonのバンド、Behold… the Arctopus。これまでにMetal Blade Records、Black Market Activities、Willowtip Recordsと大手メタル・レーベルを渡り歩いていたバンドであるが、2020年にWillowtip Recordsからリリースしたアルバム『Hapeleptic Overtrove』からグッとアヴァンギャルド/エクスペリペンタルなスタイルへと舵を切っている。もちろんこの作品はデスメタル・シーンで賛否両論あり、「トムとジェリー」のような激しくコミカルな展開にも似た構成であったことから「トム&ジェリー・メタル」と揶揄されたりもした。

 

 

Colin Mansonの創造性の凄まじさは、彼のYouTubeチャンネルをフォローしてれば分かるだろう。毎月のように変名プロジェクトで奇怪な作品を発表し続け、時にノイズに接近したり、もはやメタルの要素を全く持たない作品も多かった。本作はタイトルから察することが出来るように前作『Hopeleptic Overtrove』に次ぐ作品で、Jason Bauersが電子ドラムとアコースティック・パーカッション、Mike Lernerがギター、Colin MarstonがWarr Guitarsを用いたタッピング・パートとシンセを担当している。

Warr Guitarsを演奏するColin

この作品をテクニカル・デスメタルといったメタル・カテゴリーでなく、今回「アヴァン・プログ」の年間ベストで紹介するのには理由がある。Behold… the Arctopusは既にメタルというカテゴリーからは脱しており、新しいフュージョンをテクニカル・デスメタルを通過したエクストリームな手法で探求している。このアルバムに対するファンの反応も非常にポジティヴで『Hopeleptic Overtrove』とは違う。「アラン・ホールズワース (UKジャズ・フュージョンの著名ギタリスト) の全ディスコグラフィの破損したデータをAIに読み込ませて作られた新種の音楽」というファンのコメントにはLIKEがびっしり付いていた。

もちろん作品を聴き進めていくと、プログレッシヴ・メタルに通ずるスペーシーなギターソロも組み込まれているが、Simons Electric Drumsによる不気味なドラミングと、Warr Guitarsの繊細でミニマルなメロディを基調とし一切のダイナミズムを排除したサウンドには、馴染んでいるようで馴染んでいない。古くからのファンへの配慮かもしれないが、今もBehold… the Arctopusを追いかけているファンはすっかり新しい世界観を楽しんでいるから気にせず独自のクリエイティヴを突き進んでほしいと思う。Colinは素晴らしい音楽家で、刺激を求めるメタル・リスナーに全く違う音楽体験を提供し続けている。彼がアヴァン・プログとテクニカル/プログ・デスの架け橋となって、さらに刺激的な音楽が誕生することを楽しみにしたい。

 

▶︎第5位 : ni 『Fol Na​ï​s』

フランス東部・ブール=カン=ブレスを拠点に活動するniの4年振りとなるフル・アルバム。2018年にDur et Douxのレーベル・メイトであるPoilとのユニット”PinioL”でアルバム『Bran Coucou』を発表、着実にキャリアを積み上げてきた彼らの本作『Fol Na​ï​s』というタイトルの意味は、古典フランス語で歴史上の支配者たちの愚者や道化師につけられた呼び名とのこと。アートワークがそうだろうか。

とにかくこの作品は、アヴァンギャルド、プログレッシヴ、というカテゴリーの中だけで語られるにはもったいないほど、メタル成分がたっぷりと詰まっている。ギタリストであるAnthony BéardとFrançois Mignotのコンビネーションは、現代のメタルコア、デスコア、ニュー・メタルコアからマスコア、テクニカル・デスメタルまで見渡しても、ここまで個性豊かで技術的にも優れているものはないかもしれない。Françoisに至ってはチェンバーロックPresentの新ギタリストとして加入したというから、向かっている方面はメタルとは違うものの、多くのメタル・ヘッズ、例えばMeshuggahやIgorrrなどが好きなら必ずチェックしたほうが良いだろう。ノイズ/エクスペリメンタルなエレメンツはクリエイターにとってフレッシュな創作のヒントになるだろう。間違いなく多くのメタル・ミュージシャン達に刺激を与える一枚。

 

▶︎第4位 : Steve Lehman & Orchestre National de Jazz 『Ex Machina』

アヴァン・プログかどうかは一旦置いておいて、この作品はとても興味深かったので、このランキングに組み込んでみた。『Ex Machina』は、ニューヨークを拠点に活動するサックス奏者/作曲家のSteve Lehmanとグラミー賞にノミネートされたフランス国立ジャズ管弦楽団Orchestre National de Jazzによるコラボレーション・アルバム。

フランス現代音楽の著名作曲家であるGérard Griseyの代表作『Tempus Ex Machina』をルーツに、電子音とジャズ・オーケストラの融合を表すようなアルバム・タイトル『Ex Machina』はその名の通り、フランスの、音響/音楽の探求のための研究所として知られるIRCAMで開発されたライブのインタラムティブ・エレクトロニクスがリアルタイムで補強・変形されていくのに合わせて、Steve、ONJの面々が複雑なポリリズム・グルーヴに合わせてバランスの取れたハーモニーを生み出していくというもの (動画を是非見てほしい)。ミニマルなヴァイブスを基調としながらも、オーガニックでスリリングなジャズのアンサンブルがマシーンに溶け合っていく本作は、現代音楽のテクノロジーの最先端とアヴァン・ジャズの野生的なエネルギーが見事に融合している。「Los Angeles Imaginary」のBrutal Progのようなイントロからアヴァン・ジャズへのナチュラルな展開、「Ode to akLaff」の人間と機械がそれぞれに互いの性質へと転換して構築されたようなエクスペリメンタルな楽曲など、ジャンル問わず野心的な音楽、特にグルーヴの追求をするミュージシャンにとって多くの学びがあるだろう。もちろん、音楽作品として優れているのは言うまでもない。

 

▶︎第3位 : The Filibuster Saloon 『Going Off Topic』

イングランドのトラディショナル・フォークやカントリーに心酔していた今年の秋、アメリカ・ニューヨーク出身のプログレッシヴ・ロック/フォーク・バンド、The Fillbuster Saloonのデビュー・アルバム『Going Off Topic』には心奪われ、病に疲れ果てた心身を取り戻すために取り組んだリハビリ中、何度も何度も聴いた。美しく没入感があり、そこから得られる音楽を楽しむというピュアな多幸感は日々の活力になった。カンタベリー・ロックにアヴァン・プログのエナジーを組み込みながら、フュージョンのアトモスフィアがグルーヴに広がりをもたらしていく。彼らの卓越されたテクニックによって複雑に展開する楽曲への好奇心が陽気に湧き上がり続けていく、そしてそこに言葉はいらない。完璧なインスト・バンドだと思う。

スリリングでパンチの効いたタイトなグルーヴ、実験的、即興的な側面もありつつ、プログレッシヴ・ミュージックの持つ”喜び”を思い出させてくれるような『Going Off Topic』。みなぎる生命力を体感してほしい。推薦曲は「Pinball is for Truckers」。「JFK Jr.」も素晴らしい。外国文学の名著のようなアートワークもグッとくる。

 

▶︎第2位 : Matana Roberts 『Coin Coin Chapter Five : In The Garden』

アメリカ・シカゴ出身の女性サックス奏者、Matana Robertsが全12章で送るアフリカ系アメリカ人の歴史を探究するシリーズ「Coin Coin」の第5章。本作は”違法な中絶の合併症で亡くなった先祖代々の女性達の物語”の語り手となることを試み、アヴァンギャルド・ジャズ、フリー・ジャズをベースにフォークのトラディショナルなメロディ、アブストラクトなシンセサイザー、ノイズから静寂までを文学的才能を感じさせるスポークン・ワードを織り交ぜ展開していく。

 

 

リプロダクティブ・ライツ (自分の身体に関することを自分自身で選択し、決められる権利) について、私たちの記憶の中で最もに新しく印象的なのは、、本作のテーマとなっているアメリカの人工妊娠中絶をめぐる問題だ。1973年から合法に認められてきたアメリカの人工妊娠中絶が再び違法になる可能性を帯びたことに対し、2022年は激しい議論が巻き起こってきた。これは日本のメディアでも取り上げられたので、かすかに記憶に残っている、または強烈に衝撃を受けた人も多いだろう。

パンク・シーンや多くのクィア・ミュージシャン達は中絶を違法とすることに反対する声を挙げた。その背景には非常に複雑な問題があるが、認められてきたリプロダクティヴ・ライツの一つを再び取り上げられてしまうことに反発することが何より女性達の他の権利を守るためにも必要であることから、音楽シーンでも積極的に取り上げられたテーマになったのかも知れない。Black Lives Matter以降のアメリカは間違いなく変わった。それは悲しい歴史を重ねてきた人種、性別的に弱い立場にあった人たちの希望になったと思う。

Matana Robertsは、本作のスポークン・ワードを自身の公式サイトで一部公開している。アルバム全体で一貫性のある、明確なメッセージを持っているわけではないようで、スポークン・ワードの内容もかすれた記憶をたぐい寄せながら、抽象的な言葉を選びコラージュされたようなものとなっている。この構築美はアートワークにも見られ、女性の目を切り貼りしたアートは本作のテーマを象徴している。さまざまな女性達の「視点 / 眼差し」から忘れ去られようとしている歴史を呼び起こし、それらにこびりついた混乱、狂気、悲鳴、絶望、怒りをサウンド・パレットの上に激しく描き出していく。

全てのスポークン・ワードが理解が難しい抽象的なものであるわけではなく、何度も登場する「My name is your name Our name is their name We are named / We remember They forget (私の名前はあなたの名前 私たちの名前は彼らの名前 私たちは名づけられた / 私たちは覚えている 彼らは忘れる)」というフレーズやアルバムのエンディングのタイトル「…ain’t i. …your mystery is our history (あなたの謎は私たちの歴史だ)」など、強く真っ直ぐなメッセージも随所に見受けられる。

Robertsは「この問題について、彼女達が解放感を得られるような形で語りたかった」と説明している。Robertsは、忘れ去られてしまいそうな家族の物語を紐解きながら、アメリカの公文書館で広範なリサーチを行い、時に強いメッセージをリスナーに打ちつけながら、卓越されたサックスの音色でがんじがらめになった女性達の混乱を解きほぐすようにしてサックスを吹き鳴らす。

モーダル・ジャズからミニマルなシンセのループ、アヴァンギャルド・ジャズの嵐が吹き荒ぶエクストリームなパートに散りばめれたフォークのエレメンツ、ノイズから静寂まで、目まぐるしく展開しながらもアヴァン・ジャズとしてスタイリッシュにまとめあげたRobertsの才能と思想は、決してアヴァン・ジャズの領域だけでなく、パンクやロックのフィールドにも届けられるべきだろう。無論、RIFF CULT読者にも届くことを祈っている。

 

▶︎第1位 : John Zorn 『Parrhesiastes』

1990年代にはニューヨークと東京とを行き来し、高円寺にアパートを借りていたこともあったという伝説のサックスフォン奏者、John Zohn (ジョン・ゾーン)。パンクやメタル、ハードコア・リスナーにとっては80年代後期〜90年代初頭のプロジェクト、Naked CityやPainkillerがあまりにも有名だが、現在も自主レーベルTzadikを運営し、70歳を迎えた今年もその創作意欲は衰えることを知らない。

キーボーディストのJohn MedeskiとBrian Marsella、ギタリストMatt Hollenberg、ドラマーKenny GrohowskiからなるChaos Magick Bandを迎え制作され、John Zornがソングライティングを担当したJohn Zorn名義での本作は、近年のJohn Zornの最高傑作の一つとして数えられる。コンテンポラリー・クラシックを軸にファンク、そして強烈なインパクトを放つメタル/ハードコアのギラついた転調のアクセントが非常に面白く、それらが決してダイナミックに、波打つように展開するのではなく、しっかりとアヴァンギャルド・ジャズとして高貴に鳴っているから驚きだ。このMattのリフの数々は、現代メタル、例えばCode Orangeなんかも通過しているように思うし、2020年代に蘇るNaked Cityといっても過言ではない (言い過ぎかもしれないが……)。John Zornが70歳でこれを作っているというのが、本当に信じられない。

 

Sable Hills、独レーベル”Arising Empire”との契約を発表! 2024年1月に先行シングル『Odyssey』、4月にはアルバムも


 
メタルコア・バンド、Sable Hills が、ドイツのレーベル”Arising Empire”との契約を発表しました。バンドは2024年1月12日にシングル「Odyssey」をリリースし、4月には通算3枚目となるニュー・アルバムをリリースする予定とのこと。また、3/16(土)には、主催ライブとしてはバンド史上最大キャパとなる、恵比寿LIQUIDROOMでのリリース記念ライブの開催も発表している。
 
Sable Hillsは、世界最大のメタル・フェス「Wacken Open Air 2022」にて、日本人初となる「METAL BATTLE 2022」グランプリを獲得して以降、BLARE FEST、KNOTFEST JAPAN、MERRY ROCK PARADE、Wacken Open Air 2023といった大型フェスにも次々出演。Bullet for My Valentine、UNEARTH、DARKEST HOURといった海外バンドとも多数共演するなど、今や日本のメタル・シーンを牽引するバンドへと成長してきた。
 
2024年は彼らにとって、更なる飛躍の年になることは間違いない。彼らから目を離さないようにしよう!
 
SABLE HILLS『Odyssey』2024年1月12(金)配信
Pre-add / Pre-saveリンク : https://lnk.to/SH_Odyssey
 

 
▶︎SABLE HILLS “Odyssey Pre-Debut Show”
2024年3月16(土)東京 恵比寿 LIQUIDROOM
OPEN 17:00 / START 18:00
前売券:4,500円 (ドリンク代別途)
VIP前売券:7,000円 (ドリンク代別途)
【VIP内容】メンバーサイン入りA2ポスター付 / MEET & GREET / 優先入場
【TICKET NOW ON SALE】https://eplus.jp/sablehills
1次先行:12/29(金)20:00~1/4(木)23:59
2次先行:1/12(金)20:00~1/21(日)23:59
一般発売:1/27(土)正午12:00~
 
▶︎SABLE HILLS : オフィシャル・ウェブサイト& SNS
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