Thy Art Is Murderの新ボーカル”Jerry Grimefeld”とは何者なのか? 11歳から始めた音楽活動、ラッパーとしてのキャリア、小さなライブハウスから突然5万人規模のステージへ… これまでの経歴に迫る

2026年、オーストラリアのデスコアを代表するThy Art Is Murderに新たなフロントマンが加わった。名前はJerry Grimefeld。Honest Crooks、Vengeanceでの活動歴を持ち、メタルだけでなくラッパーとしても音楽活動を続けてきた人物だ。

Thy Art Is Murderは7月29日にルーマニアで開催されたRockstadt Extreme FestでGrimefeldを新ボーカリストとしてステージに迎え、その後、本人が正式な新ボーカリストであることも明らかになった。

YouTubeに公開された「Who the F**k Is Jerry Grimefeld!? Interview With the New Thy Art Is Murder Vocalist」では、まだ多くのメタルファンにとって謎の多いGrimefeld本人にインタビュー。11歳頃から始めたスクリーム、Parkway Driveから受けた影響、ラップとの関係、突然数万人規模のステージに立つことになった現在、ボーカルコンディションの管理、そしてThy Art Is Murderのフロントマンとして今後改善していきたい部分について語っている。

 

「Jerry Grimefeldって一体誰なんだ?」

Thy Art Is Murderの新体制がスタートすると、Grimefeldはステージ上で「WHO THE F**K IS JERRY GRIMEFELD?」と書かれたシャツを着用していた。

実際、それは多くのファンが抱いていた疑問でもあった。長年世界的なデスコア・バンドとして活動してきたThy Art Is Murderの新たなフロントマンでありながら、これまで彼の名前を知らなかったリスナーも少なくなかった。

インタビューで「一体何者なのか」と聞かれたGrimefeldは、自分についてオーストラリアのラッパーであり、Grimeをやっていて、同時に「メタル・ボーイ」でもあると説明する。つまり彼の音楽的なバックグラウンドは、デスコアだけではない。

幼い頃からラップとスクリームの両方に取り組んできたというGrimefeldは、自身が育った音楽環境をEminemと映画『The Matrix』のサウンドトラックが混在したようなものだったと振り返っている。ラップを始めた時期とスクリームを始めた時期はほぼ同じで、本格的に声を使い始めたのは11歳頃。15歳になる頃にはすでにバンドで活動していたという。

 

11歳でスクリームを始めたきっかけはParkway Drive

Grimefeldがエクストリーム・ボーカルを始める直接的なきっかけになったのがParkway Driveだった。

友人からParkway Driveを聴かされ、その激しさに衝撃を受けた。当時の彼が音楽について感想を述べると、友人から「何を歌っているのか分かっていないだろう」と言われたという。その一言が、彼を自分自身でスクリームする方向へ向かわせた。

現在29歳と話しているため、インタビュー時点ですでに約18年間エクストリーム・ボーカルに取り組んできたことになる。突然現れた新人ボーカリストのように見える一方、声そのものについては10代になる前から長い時間をかけて試行錯誤してきた人物だ。

自身の発声についてGrimefeldは、専門的な名称を正確に説明できるわけではないとしている。その感覚は胸や喉を完全にリラックスさせた状態から出す「ため息」に近く、それを長年かけて横隔膜のコントロールとともに強力な音へ発展させてきたと説明している。

体系的な理論から発声方法を組み立てたというより、長期間実践を重ねながら自分の身体に合う方法を身につけてきたタイプのボーカリストであることが分かる。

 

2,000人規模から、一気に5万人規模のステージへ

Thy Art Is Murder加入以前、GrimefeldはオーストラリアでHonest CrooksやVengeanceのフロントマンとして活動していた。しかし、Thy Art Is Murderで経験するライブの規模はそれまでとは大きく異なる。本人によれば、それ以前に経験した最大規模のライブは2,000人程度だった。それが今回のヨーロッパ・フェスティバル・ツアーでは、数万人規模の会場へ一気に飛び出すことになった。

インタビューが行われたSummer Breezeでは、フェスティバル全体で4万5,000~5万人規模になるという話を聞き、本人もその差の大きさに驚いている。ただし、大きなステージに萎縮している様子はない。

Grimefeldは広いステージについて「遊び場」のようなものだと表現している。走り回ることが好きで、自分の好きな曲を歌いながら巨大なステージを自由に動けることを楽しんでいるという。実際、現在の彼のステージパフォーマンスでは客席へウォーターガンを撃ったり、長いキャットウォークがあればすぐに走っていったりする姿も見られる。それらは事前に綿密に計算した演出ではないらしい。

インタビューでは、ステージ上で警備員がウォーターガンを持っているのを見つけ、その場で「それをくれ」と頼み、そのまま客席へ水を撃ち始めたというエピソードを紹介。「大きな計画があるわけではなく、ただその場で色々やっている」と話している。

 

自分に怒っている観客も「もっと怒らせればいい」

新ボーカリストの加入となれば、当然すべてのファンがすぐに受け入れるとは限らない。しかしGrimefeldは、そのプレッシャーについてかなり独特な向き合い方をしている。

自分に対して不満を持っている人が客席にいることについて、「そういう人たちなら、もっと怒らせてもいい」と冗談交じりに語り、もしその人の顔にウォーターガンの水が当たれば面白いとも話している。

一方、それ以外の観客については暑い会場で水が必要だったから撃っていたとも説明しており、敵対的な姿勢だけでステージへ立っているわけではない。

Thy Art Is Murderという長い歴史を持つバンドへ途中から加入し、既存ファンの評価を一身に受ける状況でも、必要以上に自分を守ろうとせず、むしろステージそのものを楽しもうとしている。その奔放さは現在のGrimefeldを特徴づける要素の一つになっている。

 

睡眠不足、故障したバス、砂埃――ツアーで直面した過酷な現実

この日のインタビューでは、本来であればGrimefeldが実際にスクリームを披露し、発声について詳しく解説する予定だった。しかし、彼は声を温存する必要があり、実演できない状態だった。その背景には過酷な移動があった。

前日のライブは本人が「人生で一番埃っぽかった」と表現するほど砂埃の激しい環境で、その後14時間ほどバスで移動する予定だった。しかしツアーバスが故障し、さらにエアコンも停止。非常に暑い車内で眠ることができず、インタビュー時点までほとんど睡眠を取れていなかったという。

それでも数時間後にはThy Art Is Murderとして巨大なフェスティバルのステージへ立たなければならない。Grimefeld自身、この日の自分が理想とするパフォーマンスをできる状態ではないことは理解していた。しかし、バスの故障や気温、前日の砂埃は自分ではコントロールできない。「こういうことは起こる。これがツアーだ」と受け止め、与えられた状態の中でステージへ立とうとしている。

巨大なフェスティバルへ出演する華やかな部分とは対照的に、長距離移動、睡眠不足、気候、会場環境などと付き合いながら毎日一定水準のパフォーマンスを求められる、ツアーミュージシャンの厳しい側面も見えてくる。

 

声を守るために「できるだけ話さない」

コンディション管理について、Grimefeldが最も基本的な方法として挙げているのが休息だった。

ライブを控えた日は可能な限り話さず、声を使わないようにする。十分に休み、水分を取り、自分に合った温度の水を使いながら、一日かけて少しずつ本番へ向けた状態へ持っていくという。

ツアー序盤には決められたウォームアップも行っていた。一方、今回のツアーではこれまで経験したことのない長時間のセットを10日間ほど連続で演奏しており、本人は冗談交じりに「もう十分ウォームアップされている」と話している。

インタビューでは、水の中へストローを入れて息を吐き、声帯周辺へ適度なバックプレッシャーを与えるボーカルウォームアップ用の器具についても紹介される。Grimefeld自身はそれまで知らなかったようで、その場で興味を示していた。

こうした会話からも、18年間スクリームを続けてきた人物でありながら、現在も新しい方法を学びながら自分のボーカルを改善していることが分かる。

 

水、蜂蜜、カフェイン――ボーカルケアをめぐるゲーム

動画中盤では、さまざまな飲食物や行動を「声に良いもの」「悪いもの」「ステージでの燃料」に分類するゲームも行われる。Grimefeldは水を非常に重要なものとして扱い、特にこの日のようなコンディションでは積極的に水分を取っている。また蜂蜜についても強く好意的な反応を見せている。

一方、エナジードリンクは避ける方向に分類し、現在のツアーでは基本的にカフェインを控えるようにしていると説明する。コーヒーについても、乳製品など他のものにつながりやすいことを理由に否定的に扱っている。

ただし、このコーナーにはGrimefeld自身のかなり強いジョークも含まれている。

例えば喫煙について「スクリームを始めた頃から吸っている」と話して肯定側へ置いたり、アルコールについても冗談を交えたりしている。本人も最後には「自分はきちんと健康管理しているわけではない」と笑っており、このゲームでの分類を医学的なボーカルケアの推奨として受け取るべきものではない。

むしろ、インタビュー全体を通じて実際に一貫しているのは、休息、水分補給、声を使いすぎないこと、そして本番へ向けて一日を通してコンディションを整えることだった。

 

Thy Art Is Murder加入は「新しい章の始まり」

インタビュー終盤では、Thy Art Is Murderのボーカリストとして現在の自分に満足しているのかと尋ねられる。

Grimefeldの答えは「まだ自分がなりたいところには到達していない」というものだった。

現在はヨーロッパで巨大なフェスティバルへ出演しているものの、アメリカをはじめ、まだ経験していない地域のステージにも立ちたい。さらにライブの回数を重ね、自分自身で把握できていない部分を理解していく必要があると考えている。

今回の活動は、これまで経験したことのない長さのセットを連日演奏し、これまでで最も多くの観客と接し、最も忙しいスケジュールを経験するものでもある。メディアのインタビューについても、これまでほとんど経験がなかったという。

つまりGrimefeldにとって現在は、完成されたボーカリストとしてThy Art Is Murderへ加入したというより、これまで積み重ねてきた18年間の経験を、突然世界規模の環境で試している段階でもある。

 

ハイトーン、ガテラル、そして「走り回りながら歌う」という課題

具体的なボーカル面では、今回のツアーへ向けてハイトーンのスクリームをかなり練習してきたという。

インタビュー当日には新曲を披露する予定もあり、その楽曲ではハイのボーカルを多く使用していることを明かしている。

同時に、自身のガテラルや、より極端な発声についても現在進化させている段階だという。

しかし、彼が現在最も難しいと感じているのは単純な発声技術だけではない。

Thy Art Is Murderの曲には非常に多くの歌詞があり、長時間にわたってボーカルを出し続ける必要がある。その一方でGrimefeld自身は、ステージ上を全力で走り回り、ウォーターガンを持って観客へ突っ込み、思いついたことを次々と実行するタイプのフロントマンだ。

そこで必要になるのが、パフォーマーとして自由に暴れ回ることと、「自分には歌うという仕事がある」ことのバランスだという。

新しい環境で自分らしさを消すのではなく、そのエネルギーを維持したまま、Thy Art Is Murderの要求する高いレベルのボーカルを毎晩安定して届ける。それが現在のGrimefeldにとって大きな課題になっているようだ。

 

Thy Art Is Murderの新時代を担うJerry Grimefeld

Jerry Grimefeldは、突然何万人もの観客の前へ現れた「謎の新ボーカリスト」のように見える。

しかし、その背景をたどれば、11歳頃から約18年間スクリームを続け、15歳からバンド活動を経験し、Honest CrooksやVengeanceでオーストラリアのヘヴィ・ミュージック・シーンを歩いてきた人物だ。同時にラッパーとしてのバックグラウンドを持っていることも、従来のThy Art Is Murderのボーカリストとは異なる要素になる可能性がある。

2026年7月にThy Art Is Murderの新ボーカリストとして姿を現した時点では、その正体すら多くのファンに知られていなかった。しかし8月には、Grimefeldが正式にバンドの新たなフロントマンであることが確認されている。

2,000人規模だった自身のライブ経験から、一気に数万人規模のフェスティバルへ。そこでは過酷なツアー環境に耐えながら、長時間のセットを連日歌い、新しい楽曲にも対応しなければならない。

本人もまだ完成したとは考えていない。

むしろ「世界を一周するくらい走らなければ、自分が行きたい場所には到達しない」という感覚で、これから経験を積もうとしている。

客席へウォーターガンを撃ちながらステージを走り回る自由さと、18年間積み上げてきたエクストリーム・ボーカル。その両方をThy Art Is Murderの新しい音楽へどう結び付けていくのか。

「Jerry Grimefeldって一体誰なんだ?」

現在はまだ、その問いに対する答えそのものを本人が作り始めたばかりなのかもしれない。

参照元動画

「Who the F**k Is Jerry Grimefeld!? Interview With the New Thy Art Is Murder Vocalist」

Turnstileはどのように始まったのか? Brendan Yatesが語る音楽との出会い、家族、Trapped Under Ice、そしてバンドという共同体

世界的な成功を収める現在のTurnstileからは想像しにくいかもしれないが、その始まりには、両親の家の地下室、子供の頃にもらったドラムセット、MySpaceを通じて決まった小さなライブ、そして父親が運転するバンで機材を運んだ日々があった。

TurnstileのBrendan YatesがIdentifiedのインタビューに登場し、自身の家族、幼少期に音楽へ興味を持ったきっかけ、初めて組んだバンド、Trapped Under Iceで経験したツアー、そしてTurnstileの初期について振り返っている。

インタビューの大きなテーマになっているのは「家族」だ。血のつながった家族から受けた影響だけでなく、長い時間をともに過ごすバンドもまた、Brendanにとって家族に近い存在だという。彼はバンドについて「5人で築く親密な関係」のようなものだと表現し、ツアー、成功、失敗、喪失まで共有する特殊な共同体について語っている。

 

音楽に囲まれて育ったBrendan Yates

Brendan Yatesには、姉、兄、妹の3人のきょうだいがいる。その中でも音楽との出会いに大きな影響を与えた人物の一人が姉だった。

Brendanが幼かった1990年代初頭、姉はミックステープを作ってくれたり、ボルチモア周辺のスケーターやバンドで活動する人々とBrendanをつないだりしていた。当時Brendan自身もスケートボードに夢中になっており、姉を通じて音楽と地元のカルチャーへ自然に触れていったという。

両親も家庭で音楽を流していたが、さらに直接的な音楽体験を与えたのが母方の祖父だった。祖父はピアノを弾き、多くのジャズ・レコードを所有していた。幼いBrendanは祖父の家に行くとピアノを叩いて遊びたがり、祖父がきちんと弾き方を見せようとしても、まだ子供だった彼は自由に音を鳴らすことの方に夢中だった。後に祖父のジャズ・レコード・コレクションはBrendanへ譲られている。振り返れば、祖父との時間は彼にとって誰かから音楽を教えてもらった最初期の経験の一つだったという。

ただし、Brendanが最初に本格的に夢中になった楽器はピアノではなくドラムだった。

 

10歳頃にもらったドラムセットがすべての始まりに

8歳か9歳頃にはすでにドラムへの強い興味を持ち、自分のドラムセットを欲しがるようになった。両親は、本当に続けるのかを確認するため、最初から本格的なセットを買い与えることには慎重だったという。その後、父親の親友が楽器店で働いていたこともあり、10歳頃に念願のドラムセットを手に入れる。

Brendanにとって、それは非常に大きな出来事だった。自分だけの楽器を手に入れ、好きなだけ向き合えるようになったからだ。クリスマスにもらったドラムセットを地下室に設置すると、その日の夜から何時間も演奏を続けた。あまりの音量に両親から休むよう言われたときには、世界が終わるような気持ちになったほど夢中だったという。その地下室は、やがてBrendanの音楽人生における重要な場所になっていく。

近所の友人たちとバンドを組むようになると、ギターアンプなどを持ち込み、地下室で練習を繰り返した。両親は大きな音にも耐えながら、友人たちが集まってバンドを練習できる場所を提供し続けた。Brendanは大人になった現在になって、それがどれほど大きな支援だったのかを実感しているという。

 

父親のバンで向かった、小さなライブ

家族のサポートは練習場所だけではなかった。

Brendanが地元でバンド活動を始めると、父親は彼らをライブへ連れていく役割も担った。観客がわずか2人しかいないようなペンシルベニアでの小さな公演にも、父親はバンへドラム、アンプ、その他の機材を積み込み、メンバー全員を乗せて会場まで運転した。

ライブが終われば再び機材を積み、家まで連れて帰る。

当時のBrendanたちには、本格的なツアーの仕組みも、ブッキングについての知識もなかった。MySpaceなどを通じて「このライブに出ないか」と連絡が届けば、それを両親に伝え、父親に会場まで連れていってもらう。そのような形で少しずつライブ活動の範囲を広げていった。

楽器を買い与えるだけでなく、時間を使い、機材を運び、遠くのライブまで送り届ける。Brendanの初期の音楽活動が続いた背景には、家族による非常に大きな支えがあった。

そして、その地下室は後にTurnstileの歴史にも直接つながっていく。

 

Turnstile初期の7インチも両親の地下室で録音

Brendanによれば、Turnstile初期の7インチ作品のいくつかは、彼が子供の頃からドラムを叩いていた両親の家の地下室でレコーディングされた。近所に住んでいた友人が録音方法を覚え、機材を地下室へ持ち込んで、自分たちで試行錯誤しながら作品を作っていったという。

現在のTurnstileは巨大なフェスティバルや会場に出演するバンドとなったが、その音楽の初期段階には、大きなスタジオや充実した制作環境があったわけではない。子供の頃から使っていた地下室に仲間が集まり、手元にある機材を利用して自分たちで録音するところから始まっていた。

Brendanが幼い頃から自由にドラムを演奏できた場所が、そのままTurnstile初期の作品を生み出す場所にもなったことになる。

 

Trapped Under Iceで初めて本格的なツアーを経験

Turnstile以前、BrendanはTrapped Under Iceでドラムを担当していた。

彼にとってTrapped Under Iceは、初めて本格的なツアーを経験したバンドだった。学校を途中で離れ、本格的にバンド活動へ踏み出すことになったのもこの時期だったという。

メンバーは友人であると同時に、Brendanより少し年上で、彼がライブへ通い始めた頃から憧れていた存在でもあった。その仲間たちがBrendanをバンドへ迎え、世界各地のツアーへ連れ出していった。

それまでのBrendanにとって「ツアー」といえば、父親の車で近隣の州へライブをしに行ったり、自分たちが運転免許を取得してから東海岸を移動したりする程度だった。地元ではコミュニティセンターやVFWホールなどでライブを行っていたが、Trapped Under Iceへの加入によって、その世界は一気に広がった。

自分が育った地域の外へ出て、世界各地を巡る。Brendanは、それによって人生そのものに対する見え方が変わったと振り返っている。

その経験を経て、2010年末頃にTurnstileが始動。最初のライブは2011年頃だったとBrendanは語っている。

 

「バンドは5人で築く親密な関係のようなもの」

インタビュー後半では、長期間バンドを続けることそのものについて話が広がっていく。

Brendanは「バンドには家族的な要素があるか」と尋ねられると強く同意し、バンドに所属することを「5人で築くロマンティックで親密な関係のようなもの」と表現している。

一般的な仕事とは違い、バンドメンバーは勤務時間だけ一緒にいるわけではない。ライブが終わっても同じバンへ乗り込み、長距離を移動し、同じ場所で眠り、翌日にはまた同じステージへ向かう。

特に活動初期には経済的な余裕もない。Turnstileがツアーを始めた頃もホテルを取ることはほとんどなく、一晩中運転するか、ライブ関係者や友人の家に泊まり、床で眠るような生活を続けていた。ホテルへ泊まれるようになってからも、一部屋だけを取り、メンバーが怪しまれないよう別々に入室し、全員で眠ることもあったという。

一人になれる時間はほとんどない。Brendanは冗談を交えながら、トイレにいるときですら他のメンバーが歯を磨くために入ってくるような生活だったと話している。

だからこそ、バンドでは自分自身よりも集団全体を優先しなければならない瞬間が生まれる。

 

バンドを続けるためには「犠牲」と「努力」が必要

長時間をともに過ごせば、関係が完璧になるわけではない。

むしろBrendanは、バンドの人間関係は「常に不完全」だと考えている。性格も状況も異なる人間が一つの共同体として活動する以上、関係を維持するためには仕事が必要であり、時には犠牲も必要になる。

必ず誰かが間違える。コミュニケーションがうまくいかないこともある。

重要なのは、問題を完全になくすことではなく、その関係を維持しようとする努力を続けることだという。誰かがコミュニケーションを失敗すること自体は避けられなくても、「理解しようとする努力」そのものを放棄した瞬間に関係は崩れ始める。

その感覚は、Brendanにとって血のつながった家族にも近い。

長期間連絡を取らなかったとしても、家族には簡単には消えないつながりがある。バンドも、長い時間や特殊な経験を共有することで、それに似た結びつきを持つようになると考えている。

 

成功だけでなく、喪失も一緒に経験する

30代になったBrendanは、年齢を重ねるにつれて人生の脆さを実感する場面が増えたという。

友人や家族を失うこと。死だけではなく、人生の変化によって大切だった人物と離れていくこと。それらを一人だけで処理するのは非常に難しい。そこで重要になるのが家族やコミュニティの存在だとBrendanは話す。

長く活動してきたバンドでは、成功やツアーだけを共有するわけではない。それぞれのメンバーが個人的な問題を抱えながら、ときにはバンド全体として問題に直面し、誰かの悲しみや喪失を全員で経験することもある。

メンバーは一つのチームでありながら、それぞれが独立した一人の人間でもある。その複雑な関係を維持するには、やはりコミュニケーションを続ける必要がある。

Brendanは、自分が現在存在している人間関係に感謝していると話す一方で、過去にはうまく機能しない人間関係も多く見てきたという。その経験があるからこそ、家族でもバンドでも友情でも、完璧さではなく「関係を維持しようとする意志」が重要なのだと考えている。

 

Brendan Yatesにとって「家族」とは何か

インタビューの最後に「あなたにとって家族とは何か」と尋ねられたBrendanは、自分を無理に演出する必要のない場所だと答えている。

何も話さず、完全な沈黙の中にいてもいい。誰かに見せるための自分を作らず、そのままの状態で存在できる。そして、それでも歓迎され、理解されていると感じられる場所。

10代の頃、コミュニケーションが難しく、世界の重さを強く感じていた時期でも、家族の集まりへ行けば何も話さずにそこにいることができた。機嫌が悪くても、誰かが大騒ぎするわけではなく、自然に食事が用意され、そこに存在することを許されていた。

Brendanにとって家族とは、そのような安心できる場所であると同時に、一方的に受け入れてもらうだけの関係でもない。自分も相手のためにそこにいる必要があり、時には自分のことを優先せず、難しい状況でも支える必要がある。

そして家族は、必ずしも血縁によって決まるものでもない。

出会ってわずか数日で、生涯続くような強い結びつきを感じる人物もいる。一方、永遠にそばにいると思っていた人物と、人生の流れによって離れていくこともある。

時間の長さだけで親密さが決まるわけではない。

それでも人生の周囲には、自分が安心して戻ることのできる「ホームベース」のような人々が存在する。間違えることを恐れず、自分の気持ちを話すことができ、そのままの自分でいることを許される場所。それがBrendan Yatesにとっての「家族」なのだという。

 

Turnstileの原点にあったもの

このインタビューから見えてくるTurnstileの原点は、一つの劇的な出来事ではない。

姉から渡されたミックステープ。祖父のピアノとジャズ・レコード。10歳頃にもらったドラムセット。友人たちと音を鳴らした地下室。観客がほとんどいないライブにも機材を積んで連れていってくれた父親。MySpaceを通じて届いたライブの誘い。そしてTrapped Under Iceで経験した初めての本格的なツアー。

そうした小さな経験が積み重なった先にTurnstileがある。

特に象徴的なのは、Turnstile初期の作品が、Brendanが子供の頃から音楽を続けてきた両親の家の地下室で録音されていたことだろう。

現在の規模だけを見れば、Turnstileは現代のロック/ハードコアを代表する世界的なバンドの一つとして映る。しかし、その根底にあるのは、仲間と集まり、自分たちで音を出し、自分たちで録音し、ライブのできる場所を探して動き続けたDIYな音楽体験だった。

そしてBrendanが長いバンド生活を経て語る「家族」という考え方も、その原点と無関係ではない。

バンドは完璧な関係ではない。長く続けるためには犠牲も必要であり、誰かが間違え、コミュニケーションが失敗することもある。それでも、互いに関係を維持しようとする。

Turnstileの始まりを振り返るこのインタビューは、バンドがどのように結成されたのかという歴史だけでなく、Brendan Yatesという人物が音楽を続けてきた背景にある家族、コミュニティ、そして人とのつながりまでを映し出している。

 

参照元動画

「Turnstile’s Brendan Yates on the Origins of the Band」

For Todayはなぜ特別だったのか? MySpace時代からメインストリームへ駆け上がったクリスチャン・メタルコアの軌跡

2000年代後半から2010年代前半にかけて、メタルコアが急速に拡大していった時代。その中でもFor Todayは、極めて明確な個性を持ったバンドだった。激しいブレイクダウン、メロディックなギター、感情的なパート、強烈なボーカル。そして何より、彼らは自らのキリスト教信仰を隠すことなく、音楽とライブの中心に据えていた。

YouTubeに公開された「How FOR TODAY changed metalcore forever (Myspace to Mainstream)」では、For TodayがどのようにMySpace時代から人気を拡大し、メタルコア・シーンを代表する存在の一つへ成長していったのか、その歴史を振り返っている。

キリスト教を前面に掲げたメタルバンドという存在に抵抗を感じるリスナーも少なくなかった。しかし、動画ではFor Todayについて、メッセージへの賛否を超えて「音楽そのものが素晴らしかった」ことこそが成功を支えた大きな理由だったと捉えている。

 

2005年に始まったFor Todayと転機となったMattie Montgomery加入

Mattie Montgomery

For Todayの始まりは2005年まで遡る。後に広く知られることになる姿とはまだ異なっていたものの、初期EP『Your Moment, Your Life, Your Time』を発表し、この作品をきっかけにFacedown Recordsとの契約へとつながった。当時のクリスチャン・メタルコアで広がっていたパニックコード、メロディックなリフ、荒々しいプロダクションなどを備えた作品であり、動画では当時のシーンを象徴するようなサウンドだったと振り返っている。

その後、バンドにとって大きな転機となったのがMattie Montgomeryの加入だった。以前Besiegedで活動していたMontgomeryは、強烈なボーカルとステージ上での存在感を持ち、For Todayの方向性を決定付ける重要人物となる。

For Todayにとってキリスト教は、当時人気を集めていた「クリスチャン・メタル」という流れに便乗するためのイメージではなかった。少なくとも動画では、メンバーたちは本心から信仰を持っており、それを音楽を通じて伝えようとしていたバンドだったと説明されている。

ライブで信仰について長く語るスタイルは、すべての観客に歓迎されたわけではない。しかし一方で、クリスチャンのメタルファンにとって、激しいライブやモッシュと、自分たちの信仰についてのメッセージが同じ場所に存在することは特別な体験でもあった。そして、その強いメッセージを成立させていたのが音楽そのものの説得力だった。

 

『Ekklesia』から『Portraits』へ、MySpace時代に爆発した人気

For Todayの初期を象徴する作品の一つとして動画で取り上げられるのが『Ekklesia』だ。強烈なブレイクダウン、メロディックなリフ、ブルータルなボーカル、そして感情的なパートを組み合わせたサウンドは、当時のメタルコアの空気と強く結び付いていた。動画では、彼らのブレイクダウンだけを集めたコンピレーション動画がYouTube上で作られるほど、その強烈さがファンに支持されていたことにも触れている。

しかし、For Todayがさらに大きな存在となったのは、その後の『Portraits』だった。動画によれば、この頃にはMySpace上で人気が大きく広がり、バンドの知名度は急上昇していた。『Portraits』はチャートでも結果を残し、Top Heatseekersで14位、Top Independent Albumsで40位を記録したと紹介されている。

興味深いのは、信仰が常に歌詞やライブの中心にありながら、For Todayがクリスチャンだけに支持されるバンドにはならなかったことだ。非クリスチャンのバンドとも数多く共演しており、宗教的なメッセージがこれほど強ければ、より広いメタルコア・シーンから拒絶される可能性もあった。

それでも支持された理由について、動画では独特なメロディ、楽曲に込められた感情、演奏のテクニカルさ、ボーカル、そしてブレイクダウンを挙げている。メッセージへの賛否とは別に、それを伝える音楽の強度が十分に高かったということだ。

For Todayは、信仰を穏やかに語るのではなく、メタルコアの攻撃性そのものを使って表現した。その結果、キリスト教的なテーマとヘヴィな音楽が対立するのではなく、「信仰のために戦う」というバンド独自のイメージとして結び付いていった。

 

Will Putneyと作り上げた『Breaker』、より重く攻撃的なサウンドへ

3枚目のスタジオアルバム『Breaker』では、For Todayのサウンドにさらなる変化が起きる。制作にWill Putneyが加わったことで、動画ではバンドが以前よりもさらにヘヴィで攻撃的なサウンドへ進化したと評価している。

重要なのは、単純に音圧が増しただけではなかったことだ。従来のFor Todayが持っていたメロディ、ブレイクダウン、力強いボーカルといった特徴を残しながら、それらをより強力なプロダクションで表現することに成功した。ギャング・チャントもサウンドに加わり、ライブで観客と一体になるFor Todayのスタイルとも強く結び付いていった。この頃には、バンド自身も「For Todayとは何なのか」を明確に理解していたと動画では分析している。彼らの目的は、単にクリスチャン・バンドとして活動することではなく、自らの信仰を積極的に伝えることだった。

ライブでMattie Montgomeryが語る言葉もその姿勢を象徴していた。パンク、ハードコア、ゴスなど、それまで伝統的な宗教から距離を感じていたような若者たちに対しても、自分たちの信仰を誇り、恐れずに生きることを訴えていた。

音楽とメッセージが完全に一体化したことが、For Todayを他のメタルコア・バンドとは異なる存在にしていった。

 

『Immortal』でキャリア最大級の成功へ

For Todayのキャリアにおいて大きな成功を収めた作品として、動画で重要視されているのが『Immortal』だ。

同作はBillboard 200で15位を記録し、初週で約15,000枚を売り上げ、Hard Rock AlbumsとTop Christian Albumsでは1位を記録したと紹介されている。動画では、これまでのFor Todayが築いてきた音楽性に、より現代的で聴きやすいアプローチを加えたことが成功につながったと分析している。

ヘヴィさを失わず、よりキャッチーで記憶に残る楽曲へ進化しながらも、バンドのメッセージ自体は変わらなかった。むしろ、より大きな聴衆へ届くようになったことで、そのメッセージの影響力も強くなっていった。

動画の制作者であるYan自身、初期作品への強い思い入れを語りながらも、『Immortal』の時期こそFor Todayがバンドとして最も完成された状態だった可能性があると評価している。一方、成功の裏側では大きな問題も発生した。

 

ギタリストの発言をめぐる批判とバンドの対応

『Immortal』期には、ギタリストMike ReynoldsによるTwitter上での同性愛者に関する発言が大きな批判を呼んだ。動画では、彼の発言が多くの人を傷つけ、オンライン上で大きな問題へ発展した経緯についても触れている (https://loudwire.com/for-today-guitarist-mike-reynolds-leaves-band-firestorm-anti-gay-comments/)。

この部分について動画の制作者Yanは、宗教的な立場そのものを論じることよりも、自分の信念を理由に他人の存在そのものを傷つけるようになれば、反発が起きるのは当然ではないかという見方を示している。

同時に、問題発生後にFor Today側が取った対応についても紹介している。バンドはオンライン上で謝罪し、ファンに対してその人自身を愛しているというメッセージを発信した。Mattie Montgomeryも当時この問題について動画を公開し、話をしたい人のために自身の電話番号まで公開したという。

その後、Reynoldsはバンドを離れ、新たなメンバーが加入。Sam PennerとDavid Puckettを迎えた新体制へ移行し、レーベルもRazor & Tie Recordsへと移った。2013年には新曲や「Fearless」のアコースティック版などを収めたEP『Prevailer』を発表し、大きな騒動を経験しながらもバンドは活動の勢いを維持していった。

 

「Break the Cycle」と『Fight the Silence』で再び頂点へ

その後のFor Todayを代表する楽曲となったのが「Break the Cycle」だった。動画では現在まで続く彼ら最大級の楽曲として取り上げられ、印象的なビデオ、コールアウト、ブレイクダウン、ゲストボーカルなど、For Todayの魅力が凝縮された曲として評価されている。

同曲を収録した『Fight the Silence』も、バンドのソングライティングがさらに進化した作品として紹介されている。チャートやセールスでも結果を残し、レビューでも高い評価を受けたと動画では振り返る。Yan自身が2014年にFor Todayのライブを観た経験も語っており、当時は「世界の頂点にいるように感じた」と表現するほど、バンドに大きな勢いがあったという。

初期のMySpace世代からスタートしたFor Todayは、この時点で一部のクリスチャン・メタルコア・ファンだけが知る存在ではなく、2010年代のメタルコアを代表するバンドの一つへと成長していた。しかし、大きな成功を手にしたバンドほど、その勢いを維持することは難しい。

 

『Wake』と突然発表された解散

『Fight the Silence』に続いて発表された『Wake』について、Yanは決して悪いアルバムではないと評価している。一方で、『Immortal』や『Fight the Silence』ほど強いインパクトを持った作品ではなく、多くのファンも以前と同じようには反応しなかったと振り返っている。動画では、過去2作で確立されたサウンドと比べると少し抑えられた印象があり、「For Todayが『Immortal』や『Fight the Silence』の音楽性を見つける前に作っていそうなアルバム」という個人的な感想も語られている。

それでもバンドはライブ活動を続けており、すぐに終わりが訪れるようには見えなかった。しかし2016年、For Todayは突然解散を発表する。動画によれば、バンドはメンバー間のトラブルによる解散ではないと説明しており、それぞれが人生の次の段階へ進み、家族や別のプロジェクトへ集中するための決断だった。

For Todayがいなくなったことについて、Yanは今でも「ほろ苦い」と表現している。それほどまでに当時のメタルコア・シーンで強烈な存在感を持ったバンドだったということだ。

 

For Todayはなぜ特別だったのか

For Todayの歴史を振り返ると、その成功を単純に「クリスチャン・メタルコアが人気だった時代のバンド」と説明することは難しい。むしろ動画で繰り返し語られているのは、流行だけで人気になったバンドではなかったという点だ。

ブレイクダウン、独特なメロディ、ブルータルなボーカル、感情的なパート、ギャング・チャント、そして時代とともに進化したプロダクション。それらを高いレベルで組み合わせた音楽があり、その上に一貫した信仰のメッセージが存在した。

そのメッセージは時に強烈で、ライブでの説教を嫌う人もいた。バンドを取り巻く発言が大きな批判を生んだこともあった。それでも、宗教的な部分に共感しないリスナーまで彼らの音楽を聴いていたという事実は、For Todayの楽曲そのものが持っていた力を示している。

MySpaceを中心にバンドが発見されていた時代から、Billboard 200上位へ作品を送り込むところまで成長したFor Today。その軌跡は、2000年代後半から2010年代にかけてメタルコアそのものが急速に大きくなっていった時代とも重なっている。

そして解散から年月が経った現在でも彼らについて振り返る動画が作られ、当時を知るファンが思い出を語り続けていること自体が、For Todayがあの時代のメタルコアに残した存在感の大きさを表しているのかもしれない。

 

参照元動画

「How FOR TODAY changed metalcore forever (Myspace to Mainstream)」
https://www.youtube.com/watch?v=8cZtQ3jJVh4

Slaughter To PrevailのAlex Terrible「人々は本当の僕を知らない」― Bloodstockで語った成功、デスコアの進化、そして人生観

現在のエクストリーム・メタルを代表する存在の一つへと成長したSlaughter To Prevail。そのフロントマンAlex Terribleが、イギリスのBloodstock Open Air 2026でBloodstock TVのインタビューに登場し、バンドの急速な成長、現代のデスコア・シーン、自身に対して世間が抱いているイメージ、そして人生そのものについて語った。

Slaughter To Prevailは8月8日、Bloodstock Open Airの25周年を記念する2026年大会でRonnie James Dio Stageのヘッドライナーを担当。Lamb Of God、Judas Priest、Saxonとともに同フェスティバルのヘッドライナーに名を連ねた。

インタビューでは、14歳頃からエクストリーム・ボーカルに取り組み、Oliver Sykes(Bring Me The Horizon)や故Mitch Lucker(Suicide Silence)に憧れていた少年時代から、巨大なフェスティバルのヘッドライナーを務める現在までを振り返る一方、「Demolisher」とLorna Shoreの「To the Hellfire」が現代のヘヴィ・ミュージックに変化をもたらしたという自負も明かしている。そして後半では、Alex Terribleという強烈なパブリックイメージの裏側にある、自身のアイデンティティや死生観についても踏み込んでいる。

 

「ロックスターになる」と信じていた14歳の少年

Bloodstockへの出演は今回が初めてであり、さらにイギリスのフェスティバルでヘッドライナーを務めることについてAlex Terribleは緊張していると話した。Slaughter To Prevailは以前Download Festivalにも出演しており、その際にも大きな観客から激しい反応を受けたが、今回はさらに上の立場でステージへ立つことになる。現在の状況についてAlexは、時折「マトリックスの中に生きているような感覚になる」と語っている。

彼がエクストリーム・ボーカルを始めたのは14歳頃。当時はBring Me The HorizonのOliver SykesやSuicide SilenceのMitch Luckerを見て、彼らのスタイルや生き方そのものに憧れていた。14~15歳頃には手首や指など目立つ場所にもタトゥーを入れ始め、母親から「普通の仕事に就けなくなる」と怒られたという。

しかしAlexは、その時点ですでに「普通の仕事には就かない。ロックスターになりたいし、ロックスターになる」と強く信じていた。

そして現在、かつて憧れていた世界の中心に自分自身が立っている。その現実が本人にとっても信じられないほど大きな変化であることが、インタビューから伝わってくる。

 

「Demolisher」と「To the Hellfire」がゲームを変えた

インタビュアーは、現在のヘヴィ/エクストリーム・ミュージックでは世代交代が進み、新しいバンドがより大きな観客を獲得するようになっていると指摘。その中でもSlaughter To Prevailは、新世代を象徴する重要なバンドの一つではないかと質問している。

これに対するAlexの答えは明確だった。

彼は、Slaughter To Prevailが「Demolisher」を発表し、Lorna Shoreが「To the Hellfire」を発表したことで「ゲームを変えた」と考えている。そして自分自身やLorna ShoreのWill Ramosをはじめ、現在エクストリーム・ボーカルを追求している新世代のボーカリストたちが、ジャンルへ新たなリスナーを呼び込んでいるという。

AlexはSuicide Silence、Whitechapel、Carnifexといった先人への敬意も強調している。自身も彼らを聴いて育った一人であり、伝説的なバンドだと認識している。そのうえで、現在のSlaughter To Prevailが販売できるチケット数や集めている観客の規模を考えれば、新世代がエクストリーム・ミュージックの市場そのものを広げることに貢献していると考えている。

2020年に公開された「Demolisher」は、Slaughter To Prevailの人気を大きく押し上げた重要曲として知られ、その後バンドは世界的な規模へと成長していった。さまざまな雑誌、メディアも2025年のアルバム『Grizzly』発売時、Slaughter To Prevailが100万を大きく超えるSpotify月間リスナーを獲得し、大型会場やフェスティバルで大規模な観客を集める存在になったことを紹介している。

Alexの見方では、ヘヴィ・ミュージックの人気には大きな周期がある。80年代や90年代にはメタルが巨大な存在だった。その後、音楽の中心がヒップホップなどへ移っていった時期を経て、現在は再び新世代のヘヴィ・ミュージックが急速に成長している。

そしてSlaughter To Prevailが目指しているのは、これまでアンダーグラウンドに存在していたエクストリームな音楽を、より大きなオーディエンスへ届けることだという。

 

Slaughter To Prevailは「デスコア」という枠を超え始めているのか

Slaughter To Prevailの人気が拡大するにつれて、「デスコア」というジャンル名だけでは彼らを説明しきれなくなっているのではないか、という質問も投げかけられた。しかしAlex本人は、そもそも自分自身を特定のジャンルに属する人間として考えたことがないという。

デスコア、デスメタル、あるいは別の名前で呼ばれても構わない。重要なのは、自分が好きな音楽を作ることだと話している。必要だと思えばクリーンボーカルを曲へ導入することにも抵抗はなく、ジャンルの境界線によって自分たちの表現を制限するつもりはない。

もちろん、結果的に自分自身がデスコア・カルチャーの一員であることは認めている。しかし「このジャンルだから、こうしなければならない」という発想ではなく、音楽的にやりたいことが変われば、それに合わせてSlaughter To Prevailも変化していく。

実際、最新アルバム『Grizzly』では従来の圧倒的なヘヴィネスを軸としながら、楽曲によって異なるアプローチも取り入れている。多くのメディアは同作について、Slaughter To Prevailが現代のヘヴィ・ミュージックを代表する存在へ成長した作品として紹介している。ジャンルの伝統を引き継ぎながら、その境界線には縛られない。この考え方も、Slaughter To Prevailが従来のデスコアより広いリスナー層へ届き始めている理由の一つなのかもしれない。

 

Alex Terribleという人物を「人々は知らない」

インタビューはここから、バンドではなくAlex Terrible個人へと話題を移していく。

強烈な低音ボーカル、全身のタトゥー、マスク、格闘技、SNSで見せる豪快な姿など、Alex Terribleは現在のメタルシーンでも非常に認知度の高い人物となっている。そのため、多くの人はSNSやステージでの姿を通じて、Alex Terribleという人間をすでに知っているように感じている。

「世間があなたについて最も誤解していることは何か」という質問に対して、Alexは「彼らは僕を知らない。個人的な僕のことを知らない」と答えている。彼自身、Alex Terribleという「キャラクター」を演じている部分があることも認めている。

ただし、それが完全な偽物という意味ではない。Instagramで見せるAlexも自分自身ではあり、そのキャラクターを楽しんでいる。しかし、それを自分という人間のすべてだとは考えていない。そこからAlexは、さらに深いアイデンティティの話へ進んでいく。

自分は夫としての役割を演じ、父親としての役割を演じ、息子としての役割を演じ、ステージではAlexとしての役割を演じている。しかし、それらすべてを取り除いたときに「本当の自分とは誰なのか」については、自分自身でもまだ分からないという。知名度の高いミュージシャンとして作られたイメージと、その人物の内面は必ずしも同じではない。Alex Terribleという強烈なキャラクターの裏で、本人もまた自分自身が何者なのかを探し続けていることが明かされた場面だった。

 

名声も金も音楽も、いつか終わる

Alexが現在重要視しているのは、名声そのものではない。インタビューでは、名声、金、音楽、家族、国、価値観など、人間が人生の中で重要だと思っているものも、最終的には永遠には続かないという自身の考えを語っている。

人間はいずれ死ぬ。その事実を前提として、自分の精神、意志、考え方を鍛え、「自分は何者なのか」「何のために生きているのか」を理解しようとしているという。

この考え方は、Slaughter To Prevailの近年の作品にも通じる部分がある。2026年に公開された「Koschei」のミュージックビデオについてAlexは、肉体が消滅したあとにも残る魂や精神、本質とは何なのかというテーマを説明していた。物質的なものに執着しても、それを死後へ持っていくことはできないという考えも語っている。ステージ上では圧倒的な力を誇示するAlex Terribleだが、今回のインタビューでは、その裏側で死や自己の存在について考え続けている一面が強く表れている。

 

Bloodstockのヘッドラインも「まだ始まりにすぎない」

25周年を迎えたBloodstockでヘッドライナーを務めることは、Slaughter To Prevailにとってキャリア上の大きな到達点である。Bloodstock公式でも、2026年8月8日にSlaughter To PrevailがRonnie James Dio Stageへ出演することが発表され、同年の主要ヘッドライナーの一組として位置付けられている。しかし、この巨大な舞台を「マイルストーンだと感じるか」と聞かれたAlexは、「これはただの始まりだと思っている」と答えた。

彼の人生哲学では、大型フェスティバルで演奏することと、家で汚れた服を洗うことの間に、根本的な違いはないという。ステージに立つときも、家族と過ごすときも、飛行機で偶然隣り合わせた知らない人物と話すときも、「これが人生で最後になるかもしれない」と考えて、その瞬間にできることを最大限にやりたい。いつ死ぬかは分からない。だから、どの瞬間も可能な限り完全な形で生きたい。

インタビュアーが「Carpe Diem(今を生きる)のような考え方か」と尋ねると、Alexは「Exactly」と答えている。14歳の頃に「ロックスターになる」と信じてタトゥーを入れ始めた少年は、やがて世界最大級のエクストリーム・メタル・バンドのフロントマンとなり、イギリスを代表する独立系メタルフェスティバルのヘッドライナーへ辿り着いた。それでも本人にとって、そこはゴールではない。

Slaughter To Prevailが現在のデスコアやエクストリーム・メタルをどこまで大きな場所へ連れていくことができるのか。そして、ジャンルの枠そのものを越えてどこまで成長していくのか。Alex Terribleにとって、現在の成功もまだ「始まり」にすぎないようだ。

参照元

Bloodstock TV「💀 ALEX TERRIBLE GETS REAL “PEOPLE DON’T KNOW ME” | BLOODSTOCK 💀」
https://www.youtube.com/watch?v=Pu7-PIHerzY

AI音楽は本物のバンドからリスナーを奪っている? 現代メタルに広がる「AIアーティスト」の問題

生成AIの普及は、文章や画像だけでなく音楽の世界にも急速に広がっている。AIを利用して楽曲を制作し、Spotifyなどのストリーミングサービスへ作品を公開する「AIアーティスト」も珍しい存在ではなくなった。しかし、その存在が実際のミュージシャンと同じ場所で再生数やリスナーを獲得するようになったことで、新たな問題も生まれている。

YouTubeチャンネルMETALBIRBが公開した「This AI Slop Is RIPPING OFF Real Bands」では、モダンメタル/ロック周辺で人気を集めている複数のAI音楽プロジェクトを実際に聴きながら、その状況について強い批判を展開している。

動画の冒頭では、Holding AbsenceのLucas WoodlandやDayseekerのRory Rodriguezといった実在するアーティストもAI音楽の問題について発言していることが紹介される。特に、Holding Absenceから影響を受けたとみられるAI音楽が、すでにHolding Absence本人たちを上回る規模の月間リスナーを獲得しているという状況が取り上げられている。

 

モダンメタルにも入り込み始めたAIアーティスト

動画では、現在ストリーミングサービス上で一定規模の人気を獲得しているAIプロジェクトを実際に取り上げ、その楽曲を聴いていく。

最初に登場するのがBleeding Verseだ。プロフィールには「心からの歌詞、AI-assisted instrumentation and vocals」と記載されており、AIによって楽器やボーカルを制作していることを明らかにしている。動画収録時点で代表曲「If You Loved Me Then」はSpotifyで310万回以上再生されており、さらに短期間のうちにアルバム、EP、アコースティック版など複数の作品を公開していた。

METALBIRBが特に問題視したのは、単にAIで音楽を作っていることだけではない。YouTube上の楽曲説明欄に「#dayseeker」というハッシュタグが使用されていたことだ。

Dayseekerとは直接関係のないAIプロジェクトが、実在する人気バンドの名前を利用して検索や推薦からリスナーを獲得しているのであれば、それは単なる「影響を受けた音楽」の範囲を超えているのではないか。動画ではこの行為について、Dayseekerを助けているのではなく、その知名度に便乗して再生数を得ようとしていると強く批判している。

 

数百万再生を記録しながら、実体が見えないプロジェクト

動画で続いて紹介されるのがSerinxの「Love Like War」だ。動画収録時点でSpotifyでは150万回以上再生されていたという。

しかし、METALBIRBが確認した範囲では通常のバンドのようなSNSアカウントが見当たらず、YouTubeではコメント欄も閉鎖されていた。音楽自体はエレクトロニックなビートとメタルコア的なコーラス、ギターソロなどを組み合わせた構成になっており、現代的なモダンメタル/メタルコアの特徴を再現しようとしている。

METALBIRBは終始かなり辛辣な表現で楽曲を酷評しているものの、一部のギターソロについては「悪くなかった」と認める場面もある。その一方で、歌詞や曲展開にはAI生成音楽にありがちな不自然さを感じているようだ。

さらにBeyond Disdainの「Everything We Gave」では、Selene Calderという人物をフィーチャリングした作品が紹介される。しかし、その人物について独立したInstagramアカウントなどを確認できず、METALBIRBはアーティストそのものの実在性を疑問視している。

ここで浮かび上がるのは、これまで音楽ファンが当然のように想定してきた「アーティストとは何か」という問題でもある。プロフィール写真があり、アーティスト名があり、楽曲がSpotifyに並んでいれば、多くのリスナーはそこに人間のミュージシャンが存在すると考える。しかし生成AIの登場によって、その前提そのものが成立しなくなりつつある。

 

24万人の月間リスナーを持つ「バンド」

続いて登場するObsidian Swingは、動画収録時点でSpotifyに約24万人の月間リスナーを持っていた。

Spotify上にはバンド写真のような画像も掲載されている一方、METALBIRBが確認した範囲ではInstagramなどの通常のバンド活動を示すSNSが見当たらない。また、複数のアルバムやEPが公開されているものの、それらが短期間に集中してリリースされていたことにも疑問を投げかけている。

楽曲「Every Moment」を聴きながら、AI生成のモダンロック/メタルに共通していると感じる特徴についても触れている。電子的なビートが頻繁に使用され、ボーカルは常に大きく、感情的で、極端なまでに「壮大」な方向へ向かうという。

もちろん、それだけでAIによる楽曲だと判定できるわけではない。しかし現在増えている生成AIによるモダンメタルでは、既存の人気ジャンルで頻繁に使われる要素が強調され、組み合わせられることで、ある種の共通したサウンドが生まれていると動画では捉えている。

 

The Velvet Sundownが象徴するAI音楽の拡大

最後に取り上げられるのがThe Velvet Sundownだ。

The Velvet Sundownについては、AIによって制作された音楽プロジェクトとして広く認識されるようになった一方、動画では当初AIであることを否定していた時期もあったとして紹介される。

METALBIRBは「Dust on the Wind」を実際に再生し、他の作品と同様に非常に厳しい評価を下している。動画全体を通して評価基準そのものが「AIで制作された音楽を支持しない」という立場に立っているため、通常の音楽レビューというより、AIアーティストの急増に対する批判的なリアクション動画として見る方が近い。

動画の最後でも明確に「AIアーティストをサポートしないでほしい」「本物の音楽をサポートしてほしい」と視聴者へ呼びかけている。

 

問題は「AIで音楽を作ること」だけなのか

この動画で特に興味深いのは、単純な「AI音楽は良いか、悪いか」という話だけでは終わらない点だ。

例えばBleeding Verseのようなプロジェクトがプロフィール上でAIを使用していることを明示しているのであれば、少なくともリスナーはそれを理解したうえで聴くことができる。

一方で、通常のバンドと同じようなアーティスト写真やプロフィールを作り、実在する人物のようなフィーチャリング・アーティストを設定し、大量の楽曲を公開するプロジェクトが増えれば、リスナー側から人間のアーティストとAIプロジェクトを見分けることは次第に難しくなる。

さらに大きな問題になり得るのが、実在するバンドの名前を利用したマーケティングだ。

「Dayseeker風」「Holding Absence風」といった音楽をAIで大量に制作するだけでなく、そのバンド名をハッシュタグや検索キーワードとして利用し、本来そのバンドを探していたリスナーをAIプロジェクトへ誘導するのであれば、生成AIの使用そのものとは別の問題が生まれる。

実在するミュージシャンは、メンバーを集め、楽器を練習し、スタジオで楽曲を制作し、ライブを行いながら長い時間をかけてファンを築いてきた。一方、生成AIを利用すれば、そのジャンルの特徴を取り込んだ大量の楽曲を短期間で公開できるようになっている。ストリーミングサービス上では、その両方が同じ一曲として並ぶ。

 

AIは「シーン」そのものを再現できるのか

現在の生成AIが模倣しているのは、単純な音色だけではない。モダンメタルやメタルコアで広く使われてきた楽曲構成、エレクトロニックな要素、壮大なクリーンボーカル、ブレイクダウン、感情的な歌詞といった要素を組み合わせることで、そのジャンルらしい作品を作ることができる。

そして、それを聴く側が「それらしい音楽」を求めているだけであれば、作者が人間なのかAIなのかを気にしないリスナーも出てくるだろう。

実際、動画内ではAIプロジェクトの楽曲に対して「Spotifyで見つけてアルバム全体にハマった」「ライブ映像を見たい」といったコメントをするリスナーも紹介されている。少なくとも一部のユーザーは、それがAIによるプロジェクトだと認識せず、通常のバンドとして受け取っている可能性がある。

ここには、これから音楽ストリーミングが向き合うことになる大きな問題がある。

AI音楽そのものを禁止するのか。

AIを利用した作品には明確な表示を求めるのか。

人間のアーティストと同じ推薦アルゴリズムの中で扱うのか。

そして、既存アーティストのスタイルや名前を利用してリスナーを獲得する行為をどこまで許容するのか。

生成AIによる音楽が一部の実験的な存在ではなく、数百万回のストリーミングを記録する規模になり始めたことで、こうした問題は無視できなくなっている。

 

「本物の音楽をサポートしてほしい」

METALBIRBの結論は非常に明確だ。「AIアーティストを支持せず、人間が作っている音楽をサポートしてほしい」。

動画では終始ジョークや過激な言葉を交えながらAI楽曲を酷評しているため、AI音楽を客観的に比較・検証する内容ではない。最初から生成AIによる音楽に否定的な立場を明示したうえで制作された動画である。しかし、その背景にある問題は現実的だ。

実在するバンドから影響を受けたAI音楽が大量に作られ、その一部が数百万回再生される。そして場合によっては、影響源となった人間のバンドを上回る規模のリスナーを獲得する。音楽ストリーミングでは、人間が何年もかけて作り上げた作品と、生成AIによって短期間で大量制作された作品が、同じ推薦欄、同じプレイリスト、同じ検索結果の中でリスナーの時間を競う可能性がある。

生成AIによって「音楽を作ること」が急速に簡単になっていくなかで、これから問われるのは単にAI音楽のクオリティだけではないのかもしれない。

誰が作った音楽なのかをリスナーが知ることができるのか。そして、人間のアーティストが作り上げてきたシーンや知名度を利用してAIプロジェクトが成長することを、音楽サービスやリスナーはどこまで受け入れるのか。AI音楽がストリーミングサービス上で本格的に数字を持ち始めた現在、その問いはすでに未来の問題ではなくなりつつある。

参照元動画

「This AI Slop Is RIPPING OFF Real Bands」

メタルメディアはもう必要ない? ジャーナリズムが消えた先に待っているもの

メタルのニュースを知るために、今でも音楽メディアを読んでいるだろうか。かつて新しいバンドやアルバムを知るためには、音楽雑誌や専門サイトを読むことが当たり前だった。しかし現在では、SpotifyやYouTube、Instagram、TikTokなどを開けば、アーティスト自身から直接情報が届く。新しいバンドを探したければ、好きなYouTuberやインフルエンサーのおすすめを見ることもできる。

そんな時代に、音楽ジャーナリストはまだ必要なのだろうか。

YouTubeチャンネルHeavy Metal Philosophyが公開した「Do We Still Need Journalists In Metal?」では、近年相次いでいるメタル/ロック系メディアの人員削減を出発点に、音楽ジャーナリズムを取り巻く現在の状況について考察している。動画で語られているのは単なるメタルメディアの衰退ではない。ゲーム、スポーツ、格闘技、政治などを含め、従来型メディアそのものが縮小しているという、より大きな変化だ。

メタルメディアで相次ぐ大量解雇

動画では、BrooklynVegan、Alternative Press、Revolverなど、ロック、メタル、パンクを扱ってきたメディアで大規模な人員削減が起きたことから話が始まる。さらに、それ以前にもMetal Injection、MetalSucks、Blast Beat Networkなどで大量解雇が行われていた。こうした状況からHeavy Metal PhilosophyのJohn Barbisは、今回の出来事を一つの企業の経営判断や一時的な問題ではなく、メディア業界全体で起きている構造的な変化として捉えている。

同じ現象は音楽以外でも起きている。動画ではMMAを例に、かつて格闘技人気が高まった時代には多くの専門メディアがあり、格闘技について書くことで生活するジャーナリストも数多く存在していたが、現在ではその数が大きく減っていると説明する。その理由の一部にはメディア自身による質の低い報道もあるとしながら、それ以上に根本的な問題として「人々が以前ほど記事を読まなくなった」ことを挙げている。

音楽メディアも同じ問題を抱えている。有給のライターを雇い、オフィスやウェブサイトを維持するメディアにとって、記事は一定以上のアクセスを生み出さなければならない。読者が減少すれば、その仕組みそのものを維持することが難しくなる。

 

音楽メディアからインフルエンサーへ

従来型メディアに代わって存在感を強めているのが、YouTube、Podcast、Instagram、TikTokなどを通じて情報を発信する個人だ。

動画では再びMMAが例として挙げられている。現在では多くの格闘家が自分自身のPodcastを持っている。ファンの立場から考えれば、格闘技について知るために記者の記事を読むよりも、実際に戦っている選手本人から試合や業界の裏側について直接話を聞く方が魅力的に感じられるかもしれない。

音楽でも同じことが起きている。新しいアルバムが完成すれば、バンド自身がSNSで発表できる。レコーディングの様子もYouTubeで公開でき、ツアー日程もInstagramからファンへ直接届けられる。新しい音楽を探す場合も、自分と趣味の近いYouTuberやプレイリストキュレーターをフォローすればいい。

ここには「媒体」から「人」への変化もある。YouTubeやPodcastの視聴者は、そのチャンネルそのもの以上に、そこで話している人物を信頼するようになる。「この人がおすすめしているなら聴いてみよう」という関係が生まれる。一方、大手音楽サイトの記事を毎日読んでいたとしても、その記事を書いたライターの名前までは知らないという読者は珍しくない。

こうした個人による発信は、アンダーグラウンドのアーティストを紹介するという点では大きな可能性を持っている。特定のジャンルに詳しい人物が新しい作品を取り上げることで、それまでバンドを知らなかった多数のリスナーへ音楽が届く可能性がある。

 

それでもジャーナリストが必要な理由

では、バンド自身が情報を発信でき、YouTuberやインフルエンサーが新しい音楽を紹介できるのであれば、音楽ジャーナリストは必要なくなるのだろうか。

動画が重要視しているのは、「音楽を紹介すること」と「ジャーナリズム」は同じではないという点だ。インフルエンサーは新しいバンドを紹介したり、アルバムについて意見を述べたり、ニュースを解説したりすることができる。しかし、業界そのものを監視する調査報道は別の仕事になる。

例えば大企業や業界団体に問題があると疑われた場合、本格的な報道を行うためには関係者への取材、企業へのコメント要請、複数の資料や証言の確認、法律や契約の調査、編集者によるチェックなどが必要になる。場合によっては訴訟などの法的リスクも伴う。そのため、従来型の報道機関には記者だけでなく、編集者や法務など、ジャーナリストの仕事を支える組織が存在してきた。

John Barbis自身も、この違いを明確にしている。過去にMetal Digestで働いていた時期には自分をジャーナリストだと考えていたが、現在は「メディアの人間ではあるが、ジャーナリストではない」と位置付けている。現在の活動はニュースについてコメントしたり、PR会社から届いた情報を紹介したりすることが中心であり、本格的な調査報道を行っているわけではないからだ。

もし今回のメディア大量解雇についてジャーナリストとして報道するのであれば、関係するメディアや企業へ直接コメントを求め、複数の情報源からデータを収集し、編集者とともに検証しながら一つの記事へまとめる必要があるという。カメラの前で調べた内容について意見を話すことと、取材と検証を重ねて報道することには大きな違いがある。

 

クリックベイトを生み出したのは誰なのか

クリックベイトとは…インターネット上でユーザーの興味や好奇心を過剰に煽るようなタイトルや画像(サムネイル)を使い、思わずリンクをクリックさせてアクセス数を稼ぐ手法

従来型のメタルメディアにも、多くの批判が向けられてきた。動画ではLoudwireなどが掲載してきた、有名ミュージシャンのちょっとした発言をニュースにした記事が例として挙げられている。

メタルファンからすれば、「有名バンドの細かな発言ばかり記事にするのではなく、もっとアンダーグラウンドのバンドを紹介してほしい」と感じることもあるだろう。しかし動画では、それについて読者自身の行動も考える必要があると指摘している。

メディアで働いているライター自身もメタルファンであり、新しいアンダーグラウンド・バンドについて書きたいと思っている。しかし、そうした記事を書いても読者がクリックしない。一方、有名アーティストについての記事には多くのアクセスが集まる。有給のライターを雇い、メディアという組織を維持するためには収益が必要になる以上、最終的には読まれる記事を増やさざるを得なくなる。

つまり、ファンが嫌っていたクリックベイトはメディアだけが一方的に作り出したものではない。読者が何をクリックしたのかという行動も、その方向性を作る一因になっている。メディアに対して「なぜアンダーグラウンドを取り上げないのか」と批判しても、実際にその記事が読まれなければ、ビジネスとして継続することは難しい。

 

ジャーナリズムの空白を埋めるもの

質の低い記事やクリックベイトに不満を持ってきた人の中には、既存の音楽メディアが衰退することを歓迎する人もいるかもしれない。しかし動画では、その消滅を単純に喜ぶべきではないと主張している。

なぜなら、既存メディアが消えた場所に、より優れたジャーナリストが現れるとは限らないからだ。その空白を埋める存在として考えられるのが、インフルエンサーとAIである。

動画では、人間のライターを大量に解雇したメディアが同じ規模で記事を公開し続ける場合、「では誰が記事を書くのか」という疑問を提示している。その選択肢としてボランティアのライターなども考えられるが、John BarbisはAIによる記事制作が増える可能性についても触れている。

ただし、この部分については注意が必要だ。動画内で彼自身が、特定のメディアの記事がAIによって制作されているという証拠を持っているわけではなく、あくまで自分自身の推測であることを明確にしている。一部の記事タイトルや著者名などを見てAIではないかと疑っているものの、それらが実在するライターによるものではないと断定しているわけではない。

それでも、人件費を削減しながら大量の記事を公開したい企業にとって、AIが魅力的な選択肢になる可能性があるという問題提起は残る。

 

エンゲージメントが情報を変えていく

インフルエンサーにも優れた発信者は存在する。自分で資料を調べ、情報を確認し、可能な限り正確な内容を伝えようとしている人物もいる。しかし、YouTube、Instagram、TikTok、Podcastなどには、従来の報道機関に存在していた編集部のような仕組みが基本的にはない。

さらにSNSの世界では、情報の正確さとは別の数字が重要になる。再生回数、コメント、シェア、フォロワー、そしてスポンサー契約などにつながる「エンゲージメント」だ。

ここから動画では、文化的・政治的な対立を利用したコンテンツの問題へと話が進む。複雑な問題を冷静に説明する記事や動画よりも、「あのバンドは差別的だ」「このバンドはwokeだ」といった極端な主張の方が、多くの反応を集める可能性がある。批判する人も擁護する人もコメントし、シェアするため、結果としてアルゴリズム上では強いコンテンツになる。

そのため、従来型ジャーナリズムが衰退したからといって、情報環境が自動的に改善するわけではない。むしろ正確な報道よりも、怒りや対立を生み出すコンテンツが優先される可能性がある。

 

メディアもインフルエンサーも完全には信用できない

動画後半では、従来型メディアにも別の問題があることが語られる。企業による所有や広告主との関係によって、報道内容に影響が生まれる可能性だ。

John Barbisは自分自身の番組で行ったブランド案件を例として取り上げている。実際に使用して良いと思った商品だけを紹介しているとしても、その企業から金銭的な利益を得ている以上、発信内容に何らかの影響が生まれる可能性は完全には否定できない。規模は異なっても、大手メディアと広告主の関係にも同じ問題が存在するのではないかと問いかけている。

つまり、この動画は「ジャーナリストなら信用できる」「インフルエンサーは信用できない」という単純な二項対立を提示しているわけではない。既存メディアにも問題があり、インフルエンサーにも問題がある。企業メディアも間違えるし、個人の発信者も間違える。

最終的にJohn Barbisが出す答えは、「誰も完全には信用できない」というものだ。彼は自分自身についても、間違える可能性のある一人の人間にすぎないと話している。

だからこそ、一つの情報源だけに依存するのではなく、多くのメディア、多くの記者、多くの個人発信者が存在することが重要になる。それぞれ異なる視点や主張を提示し、複数の情報源を比較しながら事実を確認できる状態が必要なのだ。

 

メタルメディアは本当に必要なくなるのか

おそらく、従来型の音楽メディアが縮小してもメタルという音楽そのものがなくなることはない。バンドは音楽を作り続ける。SpotifyやYouTube、SNSを通じてファンへ直接作品を届けることもできる。新しい音楽を発見するという役割だけを考えれば、YouTuber、Podcast、SNSアカウント、プレイリストなどが従来型メディア以上の力を持つ場面も増えていくだろう。

しかし、「音楽を紹介すること」と「音楽業界について報道すること」は同じではない。

新しいバンドを紹介するだけなら、ジャーナリストである必要はない。しかし、レーベル、プロモーター、ストリーミングサービス、チケット企業、大手興行会社などがどのようなビジネスを行っているのかを調査し、それがアーティストやファンにどのような影響を与えているのかを伝えるためには、別の役割が必要になる。

既存の音楽メディアには多くの問題があった。クリックベイトもあれば、読者を怒らせることを目的としたような記事も存在した。しかし、それらがなくなった場所に必ずより優れたものが現れるとは限らない。そこを埋めるのはAIによって大量生産された記事かもしれないし、エンゲージメントを最大化することを目的としたインフルエンサーかもしれない。あるいは、アーティストや企業自身によるPR情報だけが残る可能性もある。

Heavy Metal Philosophyの「Do We Still Need Journalists In Metal?」が投げかけているのは、単純に「音楽ジャーナリストは必要なのか」という問いだけではない。

これから私たちは、「誰から音楽の情報を受け取るのか。そして、その情報が正しいかどうかを誰が確認するのか」。

メタルメディアで相次ぐ人員削減は、音楽を伝えるメディアの役割そのものが変わり始めていることを示しているのかもしれない。

参照 : https://www.youtube.com/watch?v=0uPJ_7bw-gc (Do We Still Need Journalists In Metal?!)

【2024年上半期】ニューメタルコアの名盤10選 アルバムレビュー

2024年の上半期にリリースされたアルバム (EPを含む) を中心に、素晴らしかった作品を10枚ピックアップし、アルバムレビューしました。「ニューメタルコア」というメタルコアのサブジャンルの中心的存在であるAlpha WolfやDarko US、Diamond ConstructやDefocusといった新たなトップバンド達の待望の新作に加え、デビューしたばかりの新しいバンドのEPなど、良質なリリースが盛りだくさんでした。ぜひ新しいお気に入りを見つけてください。

RIFF CULTでは、ウィークリーで更新しているSpotifyプレイリストで毎週新しい楽曲をまとめたプレイリストを更新しています。この機会にぜひフォローして下さい。このプレイリストをフォローすれば、トレンドが必ず掴めます!

 


▶︎Alpha Wolf 『Half Living Things』

オーストラリア・メルボルンを拠点に活動するニュー・メタルコア・バンド、Alpha Wolfのサード・アルバム。大ブレイクのきっかけとなった前作『A Quiet Place to Die』から4年、「ニューメタルコア」というサブジャンルの草分け的存在としてシーンのトップを走り続けてきた彼らが、どれだけ驚異的なスピードで成長してきたかは日本のメタルコア・ファンが良く知っているのではないだろうか。セカンド・アルバム前、Emmureの『Look at Yourself (2017年)』を発端に本格的にニューメタルとメタルコアのクロスオーバー・ジャンルが立ち上がり、その後リリースされたEP『Fault』でAlpha Wolfはニューメタルコアを確立。リリースを記念したアジアツアーは2019年に行われ、Suggestionsが帯同し、ニューメタルコア・シーンの影響を国内で最も早く取り入れたPROMPTSやPaleduskなどが出演、ヘッドライナーツアーを盛り上げた。200-300キャパで行われたこの日本ツアーから4年が経ち、再来日を果たしたAlpha WolfはPaleduskの「INTO THE PALE HELL TOUR FINAL SERIES」に出演し、SiMやFear, and Loathing in Las Vegas、coldrain、PROMPTSと共演を果たしている。この飛躍的な人気の拡大は決しては日本だけでは起こったものではなく、母国オーストラリアをはじめ、アメリカ、ヨーロッパでも同様に起こった。

本作はニューメタルコアとしてシーンのトップを牽引し、後続に道筋を作り続けてきたAlpha Wolfが、更に独自性を拡大することにチャレンジした作品だと言えるだろう。いくつかの挑戦は、刺激を求めるメタルコア・リスナーにとっては受け入れられないものであったかもしれないが、ニューメタルコアというジャンルの成熟にとっても、Alpha Wolfが次のフェーズに進むためにも必要な挑戦であったと言えるだろう。中でもミュージックビデオになり、ヒップホップ・シーンの重鎮Ice-Tをフィーチャーした「Sucks 2 Suck」は、ニューメタルという音楽の核を見つめ直し、SlipknotやLimp Bizkitといったクラシックなスタイルからの影響をバランスよく配合しつつも革新的なメタルコアを鳴らしている。同じくミュージックビデオにもなっている「Whenever You’re Ready」では、オーストラリアのメタルコア、Northlaneや初期Void of Visionの影響が色濃く反映された楽曲でニューメタルコアとは言えない楽曲にも挑戦している。

「Sub Zero」でAlpha Wolfを知り、ヘヴィでバウンシーなメタルコアを望むリスナーにとってはマイルドすぎる作品かもしれないが、彼らの現在地を考えれば、チューニングの重さとか、いかにワーミーを詰め込むかを追求かと、そういう立場にはない。このアルバムは、バンドにとって次のアルバムまでにこれまで以上の成長を遂げる、簡単に言えばスタジアムや大きなフェスティバルに出演出来る可能性を高めるものであるべきだ。そしてバンドの目的は達成されているように感じる素晴らしいフィードバックを得ているのはソーシャルメディアからも伝わってくる。どこへ辿り着くのか、彼らの初来日を企画させてもらったものとしても興味深いし応援したい。個人的な思いも含めて2024年上半期の印象的な作品。

 

▶︎Diamond Construct 『Angel Killer Zero』

2014年オーストラリア・ニューサウスウェールズ州で結成された4人組。2019年のバンド名を冠したサード・アルバム『Diamond Construct』から5年振りとなる本作は、間違いなく2024年のトップ・ニューメタルコア・アルバムに違いないだろう。2019年、Alpha Wolfが「Sub Zero」でやったこと、Dealerが「Grotesque」でやったことを、2024年にDiamond Constructが『Angel Killer Zero』でやっている。このアルバムの圧倒的な完成度、確立されたコンセプトとヴィジュアルイメージ、そして「これが2024年のニューメタルコア」だと誇示するような存在感は圧倒的だ。

アートワークは日本の漫画のようで、アルバムタイトルのロゴもカタカナでふりがながふってある。ガンダム、AKIRAなどは彼らの楽曲、ヴィジュアルイメージの重要な要素として「Switchblade OST」のミュージックビデオでも確認することが出来る。驚くべきはそれらのインプットをニューメタルコア/デスコアの感覚を非常に上手く融合出来ていることで、多彩な音楽からの影響をDiamond Construstらしく散りばめている。

もっとも優れた楽曲、といってもほとんどの楽曲がリードトラックと言っても過言でないほどのインパクトを放っているが、「I Don’t」はすべてのメタル・リスナーが聴くべき革新的な楽曲だ。エレクトロニックな装飾はもちろん、ほとんどダンス・ミュージックと言えるビートが次々と繰り出されていく。もっとも驚いたのはヘヴィ過ぎて完全にノイズとなったリフだ。Code OrangeやCrystal Lakeの挑戦的なサウンド・プロダクションでさえ、ここまでノイズ化したリフは鳴らしてこなかったと思う。ずっと、メタルにとってノイズが重要になってくると思っていたが、「I Don’t」で証明されたと言っていいかもしれない。本当にこの曲を聴いた時は驚いた。アルバムすべて聴かなくても、この曲だけでもまずは聴いてほしい。そして私と同じように衝撃を受けたのであれば、今のDiamond Constructに夢中になるはずだ。

 

▶︎silverlake murder 『Still Unknown』 EP

スウェーデンの首都ストックホルムを拠点に活動する5人組、silverlake murderのデビュー作。わずか12分という短いトータルタイムの中に5曲のヘヴィなニューメタルコアが詰まっており、silverlake murderの魅力を端的に把握出来る名刺代わりの作品として100点の仕上がりだと思う。良い意味での物足りなさ、余白を感じるEPになっており、こうした作品でデビューするバンドはかなりの確率で優れたレーベルとの契約し、ステップアップしていくように感じている。先のAlpha Wolfがそうであったように。

Emmureを始祖とし、Alpha WolfやDealerをニューメタルコアの第1世代と捉えるのであれば、彼らは第3世代のトップに躍り出るポテンシャルを持ったバンドではないだろうか。Darko USやAlpha Wolf直系とも言えるDiamond Constructなどに比べれば、まだまだデビューしたばかりの新人だが、やってることはそれらのバンドに匹敵する才能溢れたものだと感じる。デスコアにも接近するヘヴィネス&ビートダウン、ほとんどハーシュノイズウォールにも聞こえる歪んだワーミー、Slipknotが下地にあることがほんのりと感じられるフレーズ、HAILROSEを彷彿とさせるハードコアテクノやガバ、ブレイクビーツといったエクストリームなエレクトロ・ミュージックからの影響など、ここ最近のニューメタルコアとタグ付けされるバンドの中では頭一つ抜きん出た才能溢れるアレンジが随所に施されている (やや一辺倒な感じがしなくもないが)。The Hate Projectのサポートとしてライブが決まっているなど、まだまだライブ・シーンにおいては始まったばかり。今後の成長が楽しみなバンドだ。今からチェックすべし。

 

▶︎Darko US 『Starfire』

Chelsea GrinのボーカリストTom BarberとドラマーJosh Millerによるユニット、Darko US。有観客のライブをしない音源制作メインの活動方針をとり、2020年のデビューから毎月のように音源リリースを続けてきた彼らのサード・アルバムとなる本作は、驚異の19曲入り、トータルタイムが71分と濃密過ぎる内容となっている。

Silent PlanetのGarrett Russellをフィーチャーした「Atomic Origin」やNorthlaneのMarcus Bridgeをフィーチャーした「Sora」、VolumesのMichael Barrやトラップメタル・シーンの代表格Scarlxrdなど、ゲストリストだけみてもニューメタルコアを軸に、さらに多くのジャンルからの影響をクロスオーバーさせていくエクスペリメンタルな側面が強いので、アルバムとしてのまとまり、ドラマ性はほとんどない。言い方を変えれば、19曲それぞれに違った魅力があり、ドラマ性がある。Darko USは度々、持ち前のヘヴィネスから完全に離れ、スローなバラードをやったりしてきた経験がある。彼らは自由であり、バンドという共同体では決して作り出せない楽曲をやるために存在している。Chelsea GrinでDarko USのような挑戦、または実験とも言うべき創作は出来ない。本作にも「Cry Baby」などといったアコースティック曲が収録されており、これはこれで素晴らしい。そうしてメタルとバラードを境なしに味わえるリスナーが2024年にはたくさんいる。Darko USが『Starfire』でやっていることが、もっとありふれたものになっていくだろう。

彼らに実験的な面白さを求めているのであれば、「Chrone Moon」をチェックしてみるのがいいだろう。微細にエディットされたチャギングリフとインダストリアルな装飾が生み出す不気味なアトモスフィアは、ミュージシャンには大きなインスピレーションを与えるはずだ。そしてScarlxrdをフィーチャーした「Virtual Function」は、メタルコアとダークなヒップホップの可能性が無限大であることを感じさせる印象的なトラックと言えるだろう。一気に全部聴くのもいいし、2,3曲ずつ聴いても楽しいアルバムだ。

 

▶︎UnityTX 『Playing Favorites』 EP

2014年にテキサス州ダラスで結成され、ボーカリストJay Webster、ギタリストAlberto Vazquez、ベーシストAustin Elliott、ドラマーMiguel Angelという不動のメンバーで活動を続けている。彼らはThe Story So Farなどが在籍するPure Noise Recordsに所属しており、「ニューメタルコア」というよりは「ラップメタル」とか「ラップコア」と呼ばれることが多い。

本作はシングル「Playing Favorites」と他3曲収録のEP (昔はこのくらいのボリュームならシングルだったかもしれない) で、プロデュースはA Day To Rememberの『Homesick』や『Common Courtesy』、そのほかThe Ghost InsideやWage Warを手掛けるAndrew Wadeが担当している。Andrewが手がけたことでも分かるように、ハードコアのパッション溢れるフックが彼らのヒップホップのDNAと化学反応を起こしている。「Playing Favorites」で言えば、ブルータル・デスコア・バンド、PeelingFleshをも彷彿とさせるヘヴィなリフとスクラッチ、クラシックなニューメタル・ワーミーを交えたシンプルでありながらブルータルなトラックの上でJayがラップする、極上のラップメタルに仕上がっている。ニューメタルコア・リスナーも見逃せないUnityTXから、ラップメタルも掘り下げてみると面白いだろう。

 

▶︎cohen_noise 『Some Things Aren’t Forever, But For A Reason: Vol. 1』 EP

アメリカ・ケンタッキー州の4人組、cohen_noise。2022年のデビュー・アルバム『HAPPY.wav』は耳の早いメタルコア・リスナーの間では話題となったが、まだまだアンダーグラウンドな存在と言えるだろう。この作品もさらっとすごいことをやってしまっていること、ソーシャルメディアでの神秘性を大事に”し過ぎている”ことから、ミュージックビデオの再生回数が公開から1ヶ月で1000回にも到達していないのは勿体無い。こうしたバンドはRIFF CULTのような小さなメディアでなく、大手メタルメディアこそ取り上げて評価するなりしなくてはいけない。しかしイメージを大切にし過ぎる昨今のソーシャルメディア戦略ではそこに届くには大金を払うかよっぽど刺激的でないと無理だ。

cohen_noiseはいわゆるニューメタルとメタルコアをクロスオーバーさせたニューメタルコアに加えて、LoatheやIce Sealed Eyesといったオルタナティヴ・メタルコアの影響も感じさせてくれる。彼らのプレイスルー映像を見れば、音からだけでなく、ヴィジュアルや使用機材からもそれが感じられるだろう。「オルタナ」はずっとメタルコア・シーン全体を底上げするのに重要なキーワードであり続けているが、先にも使った神秘性を守り過ぎると、誰にも聴かれないまま終わってしまう。cohen_noiseにはその壁を打ち破れるポテンシャルがあるし、「Fantasy」のような楽曲はRise Records黄金期を感じさせるキャッチなクリーンパートがあり、とっかかりとしてキーと言える楽曲だ。次々登場する新しい、刺激的なバンドの勢いに押しつぶされないよう頑張ってほしい。かなり未来があるバンドだとこの作品で確信した。

 

▶︎Defocus 『there is a place for me on earth』

2019年ドイツ・アーレンを拠点にスタートしたDefocus、2021年の『In the Eye of Death We Are All the Same』以来、3年振りとなるセカンド・アルバム。本作はArising Empireからリリースされ、AvianaやAbbie Fallsといったヨーロッパのヘヴィ・メタルコア・バンドを多数手掛けるVojta Pacesnyによってプロデュースされた。10曲32分とコンパクトな仕上がりながら、その内容は非常に充実しており、想像以上の満足感が得られるはずだ。けばけばしいワーミーやベースドロップを削ぎ落とし、現行ユーロ・メタルコアのヘヴィネスを下地としたサウンドを展開している。だからこそ映えるブレイクビーツやエレクトロニック・パートがDefocusを特別なニューメタルコアたらしめる魅力を放っている。After the BurialやCurrents、そしてPROMPTSといったバンドの系譜にあるようなヘヴィさがあり、多方面のメタルコア・リスナー、さらにはデスコア・リスナーにも引っかかるようなブレイクダウンを搭載した楽曲もいくつか収録されている。中でも「flatlines」のエンディングはブルータルだ。

シンプルでスタイリッシュな彼らのヴィジュアルが映える「crooked mind」は「flatlines」などと併せてDefocusとは一体どんなバンドかを把握するのにピッタリな入門的楽曲に仕上がっている。ドイツらしいメタルコアの伝統も感じさせつつ、何よりも新しさがある。確立したDefocusのスタイルがこれからどのように進化していくのか楽しみである。

 

▶︎SPLEEN 『It Can(‘t) Be Worse』 EP

2023年にデビューしたフランス出身の5人組。およそ1年掛けてじっくりと制作され、途中メンバーチェンジもありながら完成させたデビューEPとなる本作は、ニューメタルコアの中にプログレッシヴ/Djentな香りも忍ばせた、興味深い仕上がりで注目を集めた。

フランスでこの手のサウンドと言うと真っ先に思い浮かぶのはten 56.だろうか。ヨーロッパまで拡大すれば、thrownなどが思い浮かぶが、SPLEENは彼らよりもシンプルに「ニューメタルコア+プログレッシヴ・メタルコア/Djent」と言うクロスオーバー・サウンドを鳴らしている。本作リリース直前に公開された最後の先行シングル「Natra」は、本作の中でもプログレッシヴ感の強い楽曲で、クロスオーバーのバランス感覚も優れている。まだまだSpotifyのフォロワーやミュージックビデオの再生回数は少ないものの、オリジナリティがあるし、毎日のようにリリースされていくメタルコア・シングルの中でも印象に残ってリリースを楽しみにしていたくらい印象に残ったバンドなので、これから更なる進化が期待出来ると思う。

 

▶︎Dealer 『New Order Of Mind』

2018年にオーストラリア・メルボルンで結成され、Alpha Wolfと共にニューメタルコアのトップバンドとして注目を集めたDealerであったが、度重なるメンバーチェンジによって安定しない活動が続いた。彼らの諸問題については度々指摘されてきたものの、2024年にギタリストJack Leggett、ベーシストMatthew Brida、ドラマーBrad Lipsettが加わり遂にデビューアルバムとなる本作を発表した (これまでに11名のメンバーが脱退、再加入を繰り返していた) 。

『New Order Of Mind』は、2019年の『Soul Burn』や翌年の『Saint』 (*いずれもEP) のスタイルとほとんど一緒の楽曲構成、フックで満たされており、大きなサウンドプロダクションの変化などはない。「HYPERREAL DEATH SCENE」「THE HATE YOU TRY TO HIDE」といったリードシングルも2019年〜2020年のDealerからほとんど変わっていない。それだけ先進的なサウンドをコロナ禍前に作り出していたということも凄いが、ほとんど変わっていないにも関わらずやはり細やかなところにDealerのソングライティングの良さが感じられる。「THE HATE YOU TRY TO HIDE」は2分強の短い楽曲であるが、イントロの狂気じみたインダストリアル・サウンドからニューメタルへと自然に繋がっていくところや簡単にビートダウンしない、ひねくれたところは評価出来る。不安的な精神状況を描写するミュージックビデオの数々は見る人を選ぶが、やはり2024年、ニューメタルコア・シーンにとってDealerは無視できないと思う。

 

▶︎Bite Down 『Decolorized』 EP

2019年、スウェーデンのヨンショーピングで結成されたBite DownのサードEP。これまでアルバムリリースはなく、2020年に『Trial // Error』、2022年に『Damage Control』とコンスタントにEP (またはシングル) をリリースし続けている。常にシーンにおいて存在感があり、じわじわとその名を浸透させてきた彼らの最新作は、We Are Triumphantからのリリースされたこともあり、ヨーロッパのみならず、アメリカのアンダーグラウンド・メタルコア・シーンでも注目を集めた。

ミュージックビデオにもなっており、EPのオープニングを飾る「Ynoga」は、ファストで切れ味鋭いチャギングリフをハンマーのように打ち続けていく。そしてほとんどゼロを刻み、転調も全くしないスタイルは、同郷のHumanity’s Last BreathのようなThallっぽさがあるように感じる。「Beautiful Gloom」ではDrop Eのうねるリフに吸い込まれていくような錯覚さえ感じるが、ニューメタルコアとは言い難い、プログレッシヴメタルコアを鳴らしている。良い意味でスウェーデンらしいメタルコアであり、ニューメタルコア・フレーバーを程良くブレンドしているタイプと言えるだろう。

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : Keita (Sable Hills)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするイベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎KEITA : BEST ALBUMS OF 2023

・Chamber 『A Love To Kill For』
・Gideon 『MORE POWER. MORE PAIN.』
・Dying Wish 『Symptoms of Survival』
・Silent Planet 『SUPERBLOOM』
・Mouth for War 『Bleed Yourself』
 
▶︎Chamber 『A Love To Kill For』

Stream & Download : https://lnk.to/ChamberTN
Official Site : https://chamber615.com/
 
他のSable Hillsのメンバーとは一味違ったアルバムをピックアップしていただけたことは興味深いことです。特にChamberはカオティック〜マスコアを通過したメタルコアでありながらオールドスクールな側面も持ち合わせたアルバムでサウンド・プロダクションも興味深いです。ドラマーとして、このアルバムの良さ、味わい深さはどんなところにあると思いますか?
 
本作もサウンド・プロダクションを手掛けたのが Randy Leboeuf ということもあり、ドライでヘヴィ、そしてモッシーな作品になっていると感じました。元々Chamberの作り出すサウンドが好きなのですが、本作はカオティックな側面とオールドスクールな側面の整合性が更に取れていて、そのバランスが素晴らしいと思いました。ブレイクダウン中のうねるような連続的なテンポチェンジは特筆すべきアプローチだと思います。

 

▶︎Dying Wish 『Symptoms of Survival』

Stream & Download : https://bfan.link/symptoms-of-survival
Official Site : https://dyingwishhc.com/
 
現在の国内メタルコア・シーンでも言えますが、Dying Wishのようなメロディック・スタイルは世界のメタルコア/ハードコアのトレンドになりつつあると感じています。Dying Withは現在の日本のメタルコア・シーンに与えている影響は非常に強いと感じていますので、KeitaさんなりにこのDying Wishの魅力は何か書いてみて欲しいです。
 
Dying Withは、90’s原点回帰の波が世界的に高まるきっかけを作った一つのバンドだと思っています。『Symptoms of Survival』に関して言うと、透き通るようなクリーンパートから血生臭いモッシュパートへの振り幅が大きくそこがとても好きなポイントです。ニュースクール・ハードコア好きであれば唸らないはずはないリフしかない点も素晴らしいと思います。

 

▶︎Gideon 『MORE POWER. MORE PAIN.』

Stream & Download : https://gideon.lnk.to/MOREPOWERMOREPAIN
Official Site : https://gideonal.com/
 
ドラマーとしてGideonのようなタフでヘヴィなグルーヴを持ち味とするサウンドを持つバンドが刺激的なのはとても良く理解出来ます。Sable HillsでのKeitaさんのプレイ・スタイルも確かな技術によって生み出される「グルーヴ」がキーだと思いますが、Gideonの『MORE POWER. MORE PAIN.』におけるグルーヴの心地良さがドラムにあるとして、どんなテクニックやフレーズにしびれましたか?
 
GideonのJakeは自分が最もリスペクトするドラマーの中の1人です。彼の持ち味として特徴的なポイントは、ビートの中に3連符と6連符をアクセントとして入れた上でゴーストノートを多用することで、シンプルなビートでも抑揚を最大限に生み出していくところにあると思っています。そこがGideonのグルーヴの根源になっていると感じますね。特に「Too Much is Never Enough」の0:19~のTrap-Hihat的アプローチは痺れました。

 

▶︎Silent Planet 『SUPERBLOOM』

Stream & Download : https://silentplanet.ffm.to/superbloom
Official Site : https://www.solidstaterecords.com/silent-planet
 
Silent Planetをピックアップされたことは、クラシカルなメタルをルーツに持つSable Hillsにとってあまり繋がりを感じませんが、どうしてこのアルバムをピックアップしたのでしょうか?彼らのほかにプログレッシヴ・メタルコア系のアーティスト聞きますか?加えて、ドラマー目線でこのアルバムを聴いた時、どんな魅力を感じますか?
 
確かにSABLE HILLSはエレクトロ的なアプローチをあまりしませんが、根幹にあるヘヴィネスに対しては親和性があると思っています。ドラマー的観点ですと、音の配置や音色のセンスがとにかく綺麗だと思いますね。音を入れすぎない抜きの美学を感じます。

Silent Planetを筆頭にメタルコアというカテゴリーから超越していく個性派が「エレクトロニック」をキーワードに発展しています。『SUPERBLOOM』も彼らの独自性のキーとも言えるアトモスフィアを、本作でエレクトロニックなものに大胆に置き換えていて、それはリズム、グルーヴにおいても顕著です。ほかにも多くのエレクトロニックなメタルコアを聴かれていると思いますが、Silent Planetの新作の中で衝撃を受けた楽曲などを挙げつつ、エレクトロニックなビートの中で「ドラム」はどんなアプローチが魅力であると思いますか?
 
「Antimatter」に一番衝撃を受けました。まず、バンドの曲なのにバンドのビートから始まらないんだってなりました。エレクトロでよくあるリフレイン的な曲展開の仕方をSilent Planet流に昇華しているのも印象的でしたね。エレクトロニックなビートの中でのドラムの立ち位置は他の音をどれだけ目立たせられるかにあると思っています。あえて叩かないのがイイってことですね。

 

▶︎Mouth for War 『Bleed Yourself』


 
Stream & Download : https://mouthforwarco.bandcamp.com/album/bleed-yourself-2
Official Site : https://www.instagram.com/mouthforwarco/
 
RictさんもMouth for Warの新作をピックアップしていました。バンド内で好きな音楽や最近聴いている音楽を共有したりしていますか?Mouth for Warの魅力と共に、普段のソングライティングでこうした他のバンドからの影響を参考にしていくとき、Sable Hillsらしさとどのようにしてクロスオーバーさせることを心がけていますか?
 
Mouth for Warの魅力はあくまでもメタルコア/ハードコアの枠から外れずともその暴力性がとても高いところにあると思います。ドラムアレンジメントをしていく際にアプローチ方法として参考にすることはありますが、自分がモッシュコア / ハードコアから受けている影響の方が大きいので、その曲に対して自分なりにアレンジしていった結果気づいたらクロスオーバーしているケースの方が多いかもしれません。


 

▶︎KEITA : BEST SONGS OF 2023

 
▶︎Boundaries 「Armageddon」


 
▶︎Dying Wish 「Torn From Your Silhouette」


 
▶︎Foreign Hands 「Conditioned for a Head-On Collision」


 
▶︎Mouth for War 「Saturate Me」


 
▶︎The Ghost Inside 「Death Grip」


 
Foreign HandsやMouth for WarなどのフレッシュなバンドからThe Ghost Insideまで幅広くタフなグルーヴを持つ楽曲がリストインしました。この中でドラマーとして最も驚くべきテクニックを持っていると感じた楽曲はありますか?
 
他パートとのユニゾンなどがあるので前提としてメタルコアやハードコアはドラムのフレージング的にある程度の型があるものなのですが、上記のドラマーは+α自分の色を出しているというか、何か新しいアプローチを試みてるのが感じられるのが素晴らしいと思いました。自分もその1人なので。
 

▶︎Keita : Social

https://x.com/KeitaSableHills
https://www.instagram.com/keita_sablehills/
 

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : RYOICHI (Sailing Before The Wind)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするメタルコア・イベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎RYOICHI : BEST ALBUMS OF 2023

August Burns Red 『Death Below』
A Mourning Star 『A Reminder of the Wound Unhealed』
Dying Wish 『Symptoms of Survival』
Currents 『The Death We Seek』
Graphic Nature 『A Mind Waiting to Die』

▶︎August Burns Red 『Death Below』


 
Stream & Download : https://found.ee/DeathBelow
Official Site : https://augustburnsred.com/
 
August Burns Redの『Death Below』は、多くのメタル・メディアでも絶賛されています。長年に渡り世界のメタルコアを牽引する存在として、大きくスタイルを変えることなく活動を続けているところは、Sailing Before The Windの活動スタイルにも重なる部分があります。このアルバムで特に「August Burns Redらしい」と感じた楽曲、またはフレーズはありましたか?
 
文句無しの傑作だと感じました。楽曲というよりアルバム全体を通して彼らの矜持を感じます。August Burns Redはメロディックメタルコア+αでいう「+α」の塩梅を楽しむのがミソだと思うんですが(そこもうちのスタイルと重なりますし)、今回はその塩梅がアルバム全体で聞くとバランスがいい感じになってるのが面白いです。
 
序盤からプログレばりの長さの曲があったり、曲単位で存在する”ABRらしさ”は変わってないのに、もちろんクリーンボーカルの導入も大きいとは思いますが、どこかスルスル聞けてしまうキャッチーさも兼ね備えてるというか。結果August Burns Redらしさを損なう事なく、ちゃんと進歩進化してる感触があるのが単純に凄い。

 

▶︎A Mourning Star 『A Reminder of the Wound Unhealed』


 
Stream & Download : https://dazestyle.bandcamp.com/album/a-reminder-of-the-wound-unhealed
Official Site : https://www.instagram.com/amourningstar.vhs/
 
A Mourning Starの『A Reminder of the Wound Unhealed』からはSailing Before The Windが活動をスタートさせた2010年代初頭のころによく聴いた、懐かしいスタイルのメタルコアです。ボーカルのスタイルはRyoichiさんのスタイルにも重なるところがあるように感じます。ボーカリストとして、A Mourning Starの特筆すべきポイントなどはありますか?また、おすすめの楽曲などあれば併せて教えてください。
 
単細胞メタル小僧だった10代の時期に、地元・沖縄の諸先輩方に00年代初頭のニュースクール/メタルコアや90年代ミリタント系の音源を「メタラーならきっと気に入るよ」と沢山ピックアップしてもらって、そこでメタルとハードコアの補助線が引けて本格的に音楽を聞くのが楽しくなったので、今でもピンポイントで好物ですし、国内含めて昨今のリバイバルの雰囲気も嬉しいです。
 
ボーカルスタイルは特に意識した事はなかったんですが、言われてみたら自分の中のアングラ的原点なので、無意識の中で出てるのかもしれないですね。今作は前作のEPより更にメタルコア感と叙情派ニュースクール味が増してて、まさに”ジャンルのマップ作り途中”みたいな人にうってつけのアルバムだと思いました。と、それっぽく御託を並べましたが正直ほんとにただ好きなだけですね。トラック2の「Corruption」がお気に入りです。

 

▶︎Dying Wish 『Symptoms of Survival』


 
Stream & Download : https://bfan.link/symptoms-of-survival
Official Site : https://www.instagram.com/dyingwishhc/
 
Dying Wishの『Symptoms of Survival』はここ日本でも大きな話題となり、メロディック・メタルコア/ハードコアのムーヴメントのキーとも言える作品であると思います。実際に日本のメタルコアの中心で活動を続けている中で、Dying Wishの影響を感じる日本のバンドがいたりしますか?また、特に好きな曲などあれば教えてください。
 
いい意味でいいとこ取りのようなバンドで、ヘヴィーパートオンリーの曲、メロデスライク、もしくはフューリーエッジスタイルの単音リフで攻め攻め系の曲もあれば、不協和音リフワークにキャッチー過ぎないクリーンボーカルで初期Solid State Records系の雰囲気も醸したり、と思ったらブレイクダウンがモダンでソリッドになったりと、ごった煮系ってともすればダサかったり、あざとくなりやすいと思うんですけど、奇跡的にかっこよくまとまってるなと感じました。
 
こっからいい意味でも悪い意味でも垢抜けていくバンド多いと思うんですけど、このまま突き抜けて昇華してほしい感じです。見当違いだったら申し訳ないんですが、Graupelとか曲によっては近い事してる時たまにありませんでしたかね?もっとファストでメロディックだし、時期的に影響とかではないとは思いますが。モダンな部分と往年のスタイルをセンスよく行き来するバンドが日本でも更に増えてくれたら楽しいですね。「Watch My Promise Die」が特に好きな曲です。

 

▶︎Currents 『The Death We Seek』


 
Stream & Download : https://bfan.link/remember-me-2
Official Site : https://www.instagram.com/currents/
 
Currentsの『The Death We Seek』はSable Hillsのメンバー達もフェイヴァリットに挙げており、このアルバムは世界のメタルコア・リスナーを虜にしました。一概に「メタルコア」という言葉では形容できないほど、多様なアレンジや工夫が感じられる作品ですが、ミュージシャンとして彼らのサウンド・プロダクションなどで驚いたこと、学びがあったと思うところはありますか?
 
こういうヘヴィーシットメリハリ系モダンメタルコアは珍しくはなくなりましたけど、おっしゃるとおりその他大勢のワナビーバンドから頭抜けた感じがありまね。全体に薄っすらと鳴り続けてるエレクトロ、シンセエフェクトも何だか独特で、個人的にはむしろメリハリを希釈する方向に持っていってるように感じました。
 
この手のバンド特有のブルータリティーと綺麗なクリーンボーカルの極端さをあまり強調しないというか、そのお陰で独自の荘厳感も出ててかっこいいですね。ボーカルのスクリームも非常に乾いたテイストで好みです。流行ってて沢山似たタイプのバンドがいるのもあって飽きるのも早いバンドが多かったですが、このアルバムは長く聞けそうです。

 

▶︎Graphic Nature 『A Mind Waiting to Die』

Official Site, Stream & Download : https://music.ruderecords.com/amindwaitingtodie
 
Graphic Natureは発展し続けるニュー・メタルコア・シーンの中でも、正統派として高く評価されています。Ryoichiさんはヒップホップなどもお好きだと思いますが、メタルコアにないグルーヴを取り入れているバンドも近年は多く、Graphic Natureの『A Mind Waiting to Die』にもそういったパートが組み込まれています。この作品に惹かれた理由は何かありますか?
 
ニューメタルコアって超絶ざっくりLinkin Park系かSlipknot系に分けられると思うんですけど、彼らはもちろんSlipknot系で”初期Slipknotのブチギレ感をそのままに、UKっ子らしくインダストリアルデジタルバイブス濃いめにしてモダンメタルコアで割りました!”みたいな完全に開き直ったスタイルがとても好ましくて好きですね。申し訳程度に入ってるワーミーリフとかDJスクラッチ、ドラムンベースも素直というか、衝動とやってみたい事がまんま音に出てるので、小賢しいことは抜き!熱けりゃオッケー!という気持ちに。
 
もしかしたらこの中で1番自然と手が伸びる回数が多かったアルバムかもしれないです。とりあえず聞きながら家を出る、みたいな。

 

▶︎RYOICHI : BEST SONGS OF 2023

▶︎Texas In July 「False Divinity」

 

▶︎Balmora 「Under the Weight of a Blackened Sky」

 

▶︎Beartooth 「Riptide」

 

▶︎Morning Again 「Resignation」

 

▶︎Unearth 「The Wretched;The Ruinous」

Texas In July、UnearthといったSailing Before The Windにも通ずるメロディアスなメタルコアからBalmora、Morning Againといったクラシックなスタイルを鳴らすバンドの中にBeartoothといったバンドの楽曲がリストインしているのは非常に面白いと思いました。これらの楽曲について (またはリスト全体について) 、それぞれ感想を教えてください。
 
Texas In Julyはもはや聞く前から良かったですね。良かったというか嬉しかったというか。新曲出たのがとにかく嬉しいです。
 
Balmoraは前述のA Mourning Starがニュースクールリバイバルの優等生系なら、こっちはいい意味でドタドタしてて特にこの曲はリフがかなり臭メロデスで好きです。
 
ご指摘の通り毛色の違う選出ですが、Beartoothはずっと好きなバンドなので入れました。
ハードロックのバイブスを醸すポストハードコアバンドにAsking Alexandriaがいますけど、こっちはよりアメリカンなテイストで、チューニングは低いのに陽性味の強いスケールワークでテキサスいノリ
(テキサス出身じゃないしこんな言葉存在しないですが)思い切りのいいシンプルなブレイクダウンはそのままに、キャッチーでフックのある歌メロが更に進化しててやばいです。
 
Morning Againは復活して以降割とヘヴィーハードコアに傾倒してる感じある中、この曲が特別フューリー感強めで即やられました。ニヤニヤ系です。
 
Unearthに関して僕が今更何か言う事なんてホントはないんですが、デスラッシュ成分とメタルコア成分の塩梅がアルバムによって変わるのはAILDと似てますけど、彼らは一貫してハードコア成分強めの展開で必ず割り算してくるので毎度安心して聞けます。
 

▶︎RYOICHI : Social

https://linktr.ee/ryoichisuemori

メタルコア 2023年下半期の名盤TOP10

2023年上半期のメタルコア名盤TOP10を読む

2023年の下半期にリリースされたメタルコアのアルバム、EPの中から優れた作品をピックアップし、アルバムレビューしました。下半期は、2024年以降のメタルコアがどのように進化していくかを少し読み取れるような作品がたくさんリリースされましたので、それを意識しながら有名無名問わず印象に残った作品が中心になっています。

上半期はAugust Burns RedやFor I Am Kingといったメロディック・メタルコアに加え、その流れにありながらもハードコア/デスコアともリンクしてくるCurrentsやC-GATE、そしてGraphic NatureやSoul Keeper、from joyといったモダン・メタルの可能性を拡大してくれるクリエイティヴなバンドをリストアップしました。下半期も基本的にはそういった全体のバランスを見つつ、「エレクトロニック」をキーワードに重要な作品を意識的にリストに組み込みました。順位はそこまで重要ではないですので、第1位から第10位まで (余裕があれば、文末の次点の10枚まで) チェックしてみてください。

 


▶︎第10位 : Dying Wish 『Symptoms of Survival』

Stream & Download : https://bfan.link/symptoms-of-survival
Official Site : https://dyingwishhc.com/

アメリカ・オレゴンの女性ボーカル・メタリック・ハードコア・バンド、Dying Wish (ダイイング・ウィッシュ)。2021年にSharpTone Recordsと契約し『Fragments of a Bitter Memory』をリリースしてから、本作までに彼/彼女らの状況は劇的に変化した。グローバルな人気を獲得、ライブは毎度カオスな盛り上がりを見せ、急激な人気の高まりを遠く離れた日本からも見てとれた。

あえてDying Wishに関してはメタルコアではなく、メタリック・ハードコアと言いたい。ハードコア成分が非常に高く、Knocked Looseといった2020年代最高峰のフックを効かせたキーリング・スタイルを取り込んでいるのも面白いし、ScowlやGelといった女性フロントマン擁するハードコアの系譜として見ても、最近のミュージックビデオに見られる、ファッショナブルなフロントマンをメインに据えたヴィジュアルに通ずるものを感じる。メタルコアから見れば、こうしたバンドはハードコアのモッシュやマイクジャック、ステージダイブといった盛り上がりをライブで見られることから、”急激にブレイク中”であるというイメージをシーンに植え付けることが出来ている。

彼/彼女らがハードコア成分について前作以上に精密な構築を施していることからもその狙いは明らかだ。もちろん、これは悪いことではなく、SharpTone Recordsという現代メタルコア中心の所属アーティスト・ラインナップの中で目立ち、自分たちに目を向けさせる為に最大の努力している証拠であり、現代をサバイヴするアーティストとして間違っていない。Knockled Looseも、そのサウンドはもちろん、日々アップされるカオスなライブ・パフォーマンスビデオの影響で、とんでもないところまで行ってしまったのだから、フロアの熱気、活気というのも実力以上に大事というのが2023年だったと思う。この手のサウンドを復興させ、日本でもView from the Soyuzに見られるライブの盛り上がりを見れば、このスタイルのバンドが今、どこでどう勝負すべきかは自ずと導かれていくだろう。ミュージックビデオにもなっている「Watch My Promise Die」は新しいDying Wishが2024年以降に作っていく道筋を感じられる1曲に仕上がっていると言えるだろう。

 

▶︎第9位 : Avalanche Effect 『Of Wired Hearts And Artificial Prophecies』

Stream & Download : https://open.spotify.com/intl-ja/artist/1lhzMZn54qAGcj8hdoMCCb
Official Site : https://www.instagram.com/avalancheeffect

ドイツ・ミュンスターの7人組プログレッシヴ・メタルコア・バンド、待望のEPは、2023年上半期の個人的大ヒット・メタルコア曲「Manipulating Sky」で幕を開ける。メンバーに不幸があったものの、新体制として動き出した彼らのAvalanche Effectというバンドにかける強い覚悟は随所に伝わってくる。シーンにおけるバンドのポジションはまだまだこれからという具合であるが、じわりと盛り上がってきたエレクトロニック・メタルコアのカテゴリーに分類出来るようなアレンジも随所にある。ただ、このバンドの最も優れたところはツイン・ボーカルの巧みな掛け合いによって楽曲を通して貫かれる光と影のコントラスト、それを美しく色彩豊かに表現するプログレッシヴなクリーントーンのメロディだ。プログレッシヴ・メタルコアとしては、特筆して個性的なところはないものの、この個性を伸ばしていけるような楽曲構成を固め、ドラマ性を高め続けていけば、間違いなくその名はドイツだけでなく、グローバルなものへと成長していくに違いない。そして意外とヘヴィなのも良い。大半の楽曲の後半にはデスコアにも接近していくようなヘヴィ・パートがあり、クリーン・パートの力強さを浮き彫りにしてくれる。2024年、更なる活躍を期待したい、隠れた逸材と言えるだろう。今からチェックしておいてほしい。

 

▶︎第8位 : Resolve 『Human』

Stream & Download : https://arisingempire.com/humanalbum

Official Site : https://resolveofficial.co

フランス・リヨン出身のメタルコア・バンド、Resolveのセカンド・アルバム。世界がパンデミックに見舞われた2020年は、Resolveにとって勝負の年になるはずであった。しかし彼らはあえて派手な動きはせず、静かに『Human』に繋がる世界観をイメージし、デビュー・アルバム、そして本作を完成させるまでストイックに創造を続けてきた。そのメンタリティは非常に評価出来るし、コロナ禍で立ち止まったまま動けなくなった多くのメタルコア・バンドがいたからこそ、Resolveの劇的な進化には驚き感激した。

「New Colors」はシンプルにResolveとして打ち出し続けてきたスタイルの結晶であり、アルバムの中でもキーと言える楽曲だ。そして印象的な収録曲「Older Days」には、同郷のten56.からAaron Matts、そしてPaleface SwissのZelliがゲスト・ボーカリストとして参加しており、ユーロ・メタルコア/ポスト・ハードコア全体が育んできたドラマ性の高いメロディとスタイリッシュなメタルコア、そしてヒップホップのエレメンツも交え、また少し違ったResolveの魅力が垣間見えるもの面白い。この曲はミュージックビデオのディレクションも素晴らしく、モダンでミニマルなヴィジュアルが非常にスタイリッシュだ。これはアメリカのバンドには無い。Holding Absence、LANDMVRKSに次いでグローバル・ブレイクするのは、Resolveだろう。

 

▶︎第7位 : Beartooth 『The Surface』

Stream & Download : https://beartooth.ffm.to/surface
Official Site : http://beartoothband.com

Beartoothも気付けば結成から10年を超え、ベテランの域に差し掛かってきました。メタルコア・バンドには珍しくRed Bull Recordsからアルバムをリリースし続け、本作が通算5枚目のフル・アルバム。Caleb Shomoのカリスマ性をサウンド面、そしてヴィジュアル面でもこれでもかと味わえる作品に仕上がっており、プロデュースもCalebが担当しています。

Calebの雰囲気がだいぶ変わってきたというか、明らかにキャラクターが変わってきている。鍛え抜かれた肉体美を誇示するかのようなパフォーマンスはライブでもミュージックビデオでも貫かれていて、ソーシャル・メディアの投稿もCaleb単体のライブ・フォト、セッション・フォトが散見されます。フロントマンの強烈な個性はバンドにとって非常に重要で、特にBeartoothのようなCalebのカリスマ性を際立たせることにフォーカスしたバンドは、これくらいド派手にやってしっくりくるなと思います。

もちろんOshie BicharやConnor Denisというバッキング・ボーカルを務める存在が随所に輝きを放っており、HARDYをフィーチャーした「The Better Me」や「Sunshine!」といった楽曲はBeartoothというバンドの良さが全て詰め込まれた新しいライブ・アンセムになっています。Issuesがバンドとして終わりを迎え、Woe, is Meが復活したものの全盛期のような輝きまでは届かず、無論Attack Attack!はトップ・シーンにいない今、Beartoothは2010年代、メタルコアがヘヴィにそしてダークに変わりつつあったトレンドを個性として残しながら、ここまでキャッチーなスタイルへと成長。この『The Surface』の構想から完成まで、本当に多くの苦労、挑戦があっただろうし、Calebも今が一番ノリにノってるぞと言わんばかりのエネルギーを発奮しているのを見るともう一つ上のステージへと階段を登るきっかけになる作品ではないかと思う。これから続くBeartoothの歴史においても、この作品は一つ分岐点になるものとして印象に残り続けるに違いない。

 

▶︎第6位 : Artemis Rising 『Vibe Sampler』

Stream & Download : http://fanlink.to/VIBE-SAMPLER-EP
Official Site : http://artemisrising.de/

元Death of an EraのDanielがフロントマンを務めている事で話題となったArtemis Risingですが、革新的なエレクトロニック・メタルコアは時代の先を行き過ぎていたのが、デビュー・シングルで大きなブレイクとまでは行きませんでした。しかし2022年代から次第に増え始めた”エレクトロニック・メタルコア”は、例えばAttack Attack!やElectric Callboy、とは違い、本格的なクロスオーバーを始めています。これは、Attack Attack!の登場以降、メタルコア+キーボディストというバンド編成によってシーンに植え付けられたエレクトロニック・メタルコアとは根底が違い、マシーン・ドラム/エレクトロニック・ビートとドラマーの鳴らすビートが交互に展開されたり、時に交わっていくなど、メロディだけでないことが印象的だと思います。

例えば、本作収録の「Scales of Justice」では、ハードコア・テクノ、ガバといったタイプのエレクトロニック・ビートが楽曲の大黒柱となり、プログレッシヴなギターのリフやタイトなドラミングというものが交わるように展開されていくというスタイルへエレクトロニック・メタルコアを進化させています。この作品のヴィジュアライザーがマーブル模様の色彩と電子基盤のレイヤーで構成されているのも、視覚的にArtemis Risingを表現するのに重要な役割を担っていると言えるでしょう。2020年代以降のエレクトロニック・メタルコアについては、独立した音楽ジャンルとして意識しておくと、ダンス・ミュージック・シーンとの関わりなどへもその魅力を波及させられるきっかけに繋がるかもしれません。Sullivan Kingのようなアーティストがとんでもないブレイクを果たして、Artemis Risingなどといったバンドをビッグ・ステージへ引っ張り出して欲しいですね。

 

▶︎第5位 : Spiritbox 『The Fear of Fear』

Stream & Download : https://spiritbox.lnk.to/TFOF
Official Site : https://spiritbox.com/

カナダの女性ボーカル・メタルコア・バンド、SpiritboxのEP『The Fear of Fear』は、昨年のEP『Rotoscope』でエレクトロニックなビートを踏んだんに盛り込みつつ、革新的なデビュー・アルバム『Perfect Blue』を見事にアップデート。現代メタルコアのキーパーソンと言えるプロデューサーDaniel BraunsteinとSpiritboxの世界観を司るコンポーザーであるMike Stringerによる共同プロデュースとなった本作は、『Perfect Blue』と『Rotoscope』の間に位置する。

特筆すべき楽曲は「Angel Eyes」であろう。デスコアへも接近しようかというヘヴィネスへの探究心、Courtney LaPlanteのカリスマ性溢れるボーカル、そして不気味に漂う『Rotoscope』で見せた深いエレクトロニック・ダーク・アンビエントのアトモスフィア。次曲「The Void」のメロディアスさも相まって、EP中盤に絶頂を迎える『The Fear of Fear』の作品としての驚くべきコンパクトなクリエイティヴィティには感心させられる。この二つのEPを経てドロップされるセカンド・アルバムでどのようなチャレンジを見せてくれるのか、高く期待している。

 

▶︎第4位 : Silent Planet 『SUPERBLOOM』

Stream & Download : https://silentplanet.ffm.to/superbloom
Official Site : https://www.solidstaterecords.com/silent-planet

カリフォルニアを拠点に活動するプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Silent Planetの通算5枚目となるフル・アルバム。プロデューサーには前作に引き続きSpiritboxやDayseeker、Invent Animateといったアーティストを手がけるDaniel Braunsteinを起用し、ミックス/マスタリングはBuster Odeholmが担当している。アルバム・タイトルの『SUPERBLOOM』は、アメリカの乾燥地帯で野草がいっせいに開花する伝説的な現象のことを指し、その言葉の持つ神秘性は、Silent Planetがこれまで、そして本作で打ち出すサウンド、そしてアートワークからも感じ取ることが出来るだろう。

アルバムの中でキーとなっている楽曲は「Anunnaki」と「Antimatter」だろうか。「Anunnaki (アヌンナキ)」という不思議なタイトル、これは古代シュメール神話の中に登場するパンテオン (ある人々によって信じられている神々をひとまとめにして呼ぶための言葉) の中で最も強力な神々の名前で、人間の運命を司ったとされる。この古代シュメール神話の物語をコンセプトとしたリリック、そしてミュージックビデオのヴィジュアル・イメージは、『SUPERBLOOM』におけるSilent Planetの最もヘヴィで、抑えることのできない狂気性を見事に現している。カリスマ・ボーカリストGarrett Russellが上裸で赤く燃える森の中を歩くミュージックビデオのワンシーンはいささか映画のようである。何度も注意深くこの楽曲を聴きながらふと頭をよぎったのは、先日Grayscale Recordsとのグローバル契約を発表した日本のメタルコア・バンド、Promptsの存在だ。彼らの楽曲のうねりにはどこかプログレッシヴという言葉だけでは形容の出来ないものがあるが、「Anunnaki」におけるSilent Planetのヘヴィネスもこれと似たものが渦巻いているように感じる。

そして「Antimatter」では、今年多くのバンドが挑戦したエレクトロニックなビートに乗せて幕を開けていく。こうしたスタイルはヨーロッパ、個人的にはデンマークのSiameseが先駆者であると思うが、楽曲がエンディングに向かうにつれ、彼ららしく昇華していく。一聴しただけではこのアルバムの全体像は掴めないかもしれない。上記に挙げたキー曲の前後にも、神秘性の高い雰囲気が漂い続けている。掴もうとすればそれは霞となって消えていく。Silent Planetの元来大切にしてきた魅力は、音楽的な野心に消し去られることなく、現在も漂い続けリスナーを虜にしていく。

 

▶︎第3位 : Ice Sealed Eyes 『Vol.2: Fragments』

Stream & Download : https://open.spotify.com/intl-ja/artist/0eVDo1w1SoyNP0xswwFYi7?si=gasq05qAQ7u5vMGFH2kNWQ
Official Site : https://www.instagram.com/icesealedeyes/

2023年上半期に書いた「超個性派! メタルコア 2023年上半期のベスト・シングル」という記事の中でも彼らをピックアップしていますが、EPという形で新しい作品が出ました。LoatheやThornhillが起こしたオルタナティヴ・メタルコアという概念を捉えアップデートさせるベルギー出身の彼らは、本作でシューゲイズやオルタナ、アンビエントのアトモスフィアをまとったオルタナティヴ・メタルコアの奥深い世界観をまた一つ先に進めたと言えるでしょう。

5曲入りの作品ですが、作品のおける間奏として挿入される「Forlorn」ではサッド・ラップ/サッド・ローファイとも捉えられるIce Sealed Eyesの新たな一面を垣間見ることが出来ます。この楽曲を分岐点とし、後半の冒頭を飾る「Deadweight」では、Humanity’s Last Breathを彷彿とさせるThallなリフが限りなくノイズに近い形状へと変形しビートダウンを続けていきます。打ちつけるリフ、キックの波動が波打ちながら、霧のようなシンセと溶け合っていくこのスタイルは、Invent Animate、Silent Planetといったこの手のサウンドの先駆者よりも刺激的なダイナミズムに溢れています。Deftones影響下のメタルコアが好きなら彼らはフォローしておくべきでしょう。

 

▶︎第2位 : Hollow Front 『The Fear Of Letting Go』

Stream & Download : https://hollowfront.lnk.to/TFOLG
Official Site : https://unfdcentral.com/artists/hollow-front/

アメリカ・ミシガンのメタルコア・バンド、Hollow Frontのサード・アルバム。2021年にUNFDと契約後、毎年アルバムをリリースするという多作っぷりでありながら、作品毎に確実にレベルアップし、アメリカを中心にグローバルな人気を誇る彼ら。RIFF CULTで行った国内メタルコア・バンドらへの年間ベスト・インタビューにも『The Fear Of Letting Go』は数多くリストインされていたのが印象的だった。

彼らと比較されるバンドといえば、ErraやPolaris、Northlaneといったところであろうが、Hollow Frontが本作で打ち出した”Hollow Frontらしさ”は、ミュージックビデオにもなっておりアルバムのキー曲である「Over The Cradle」にある。リリックやビデオのコンセプトになっているのは、Hollow Frontのソングライター自身が経験したネグレクトであり、育児放棄、感情の混乱を鮮明に表現している。この歌は、母親への赦し (*ゆるし)の歌であるが、現在も続く痛みが入り混じった言葉がリリックの中で巨大なインパクトを放っている。母親は自分たちに命を与えてくれたが、生き方を教えることができなかった……。母親を許したとはいえ、過去の経験の傷跡がまだ残っていることを表現している。自身が経験した辛い思い出を非常に分かりやすく、そしてメタルコアという音楽の怒りの塊のようなエネルギーを巧みにストーリーに落とし込んだ本楽曲は、Hollow Frontの知的な芸術性が爆発したキラーチューンと言えるだろう。細かなパートについても、エレクトロニックなビートをさらりと組み込んだり、ブレイクダウン・パートの切れ味と歌詞の鋭さがリンクしながら展開していくところも、意図的に作られているのであれば、これはもう、非常に優れた高等芸術であり、メタルコア文化遺産にしたいくらいだ。

優れているのは先行シングルとして発表されたものだけでなく、「Stay With Me」というバラードもHollow Frontの魅力を解き放つ印象的な楽曲だ。メロディック・ハードコアをルーツに感じさせながらも、彼らの直接的な影響源であるだろうErraやNorthlaneといったバンドの楽曲構築の典例を参考に、力強いスクリームと張り裂けるようなクリーン・ボーカルを交互に展開させていく。実はこの曲がアルバムの中で一番凄いかもしれない。確実にトップ・シーンへと躍り出たHollow Front。このアルバムをライブ・パフォーマンスでどこまで繊細にドラマティックに表現できるかが2024年代ブレイクの鍵になってくるだろう。持ってるセンスは一級品。

 

▶︎第1位 : Polaris 『Fatalism』

Stream & Download : https://bfan.link/fatalism
Official Site : https://www.polarisaus.com/

2023年はPolarisにとって、激動の年となった。すでに『Fatalism』を完成させ、キャリア最大のヘッドライン・ツアーとリリースを控えていた彼らであったが、バンド創設期から中心メンバーの一人であったギタリストのRyan Siewが26歳と若さでこの世を去った。この訃報は世界のメタルコア・シーンを深い悲しみに包み、奇しくもアルバムの全体的なコンセプトとしてテーマになっている数年間に世界を巻き込んだ絶望とディストピアの感覚、そしてそれに付随する圧倒的な「自分たちは道を変えることができない」という感覚が、このアルバムのメッセージをより現実的なものにしている。

いくつもアルバムを象徴する楽曲はあるが、”In loving memory of Ryan Siew”という追悼の意を込め、生前のRyanも撮影に参加している楽曲「Overflow」は、ドラマーDanielによって書かれたものだ。Danielはこの楽曲の歌詞について、自身のパニック発作と闘うことの葛藤と、その葛藤が他人に与えることの影響について歌っていると説明している。悲しみと絶望に満ちた歌詞、「The earth is spinning much too fast for me」という詩的なフレーズのインパクトが強烈であったし、その中からもわずかながら、希望の光を感じさせてくれるところも、世界に多くのファンを持つ彼らの優しさであり、トップ・シーンを走るバンドが歌うことの責任であると感じる。

とても暗いアルバムだと思う。サウンドだけで言えば、オーストラリアン・メタルコアらしさもしっかりと根底にありつつ、Jamie HailsとJake Steinhauserのシャウト、クリーンのコンビネーションの織りなすドラマ性豊かでプロダクションも一級品。加えて、やはり、詩的な魅力というのも、しっかりと捉えていく必要がありそうだ。歌詞の一つ一つ、言葉の選び方も壮絶な時代を生きる若者の代弁者として優れた才能を見せてくれている。

 

上半期&下半期それぞれのTOP 10には入れなかったものの、本当に毎年メタルコアの素晴らしい作品がリリースされている。もし下記のリストに聴いていない作品があれば、ぜひチェックしてみてください。

Atreyu – The Beautiful Dark of Life
Texas In July – Without Reason
Prospective – Reasons to Leave
Of Virtue – Omen
The Callous Daoboys – God Smiles Upon The Callous Daoboys
Of Mice & Men – Tether
Wolves At The Gate – Lost In Translation
Heart Of A Coward – This place only brings death
Johnny Booth – Moments Elsewhere
Soul Despair – Crimson

KNOSISを聴いた海外の人たちのリアクション

Crystal Lakeからの脱退からしばらく経ち、日本のメタルコア・シーンを代表するボーカリストであるRyo Kinoshitaが新たにKnosis (ノーシス) というバンド/プロジェクトで音楽シーンに戻ってきたことは記憶に新しい。Knosisは、RyoとSurvive Said The ProphetのYosh、そしてMade in Me.のDaikiによって構成されており、彼らの音楽プロダクション・チーム The Hideout Studios によるプロジェクトとして活動を開始した。

このRyoの再始動には、日本国内だけでなく、海外も注目した。一体Knosisがどんなサウンドを鳴らすのか、メタルコアなのか、メタルコアじゃないのか…… 。さまざまな憶測が飛び交い、遂にリリースされた楽曲を聴いた海外のファンはどのような反応をしたのでしょうか。YouTubeにたくさんアップされているリアクション動画の中から、いくつか面白かったものをピックアップしてみた。

 

「Ryo Kinoshita (Crystal Lake) is back!! 」というタイトルからも分かるように、Crystal Lakeのファンであった、チャンネル登録者数13万人を誇るリアクションYouTuber 「Ohrion Reacts」は冒頭からテンション高め。この動画では「星砕 [SEISAI]」を聴いており、その独特の楽曲展開に体を揺らしながらも、Ryoのクリエイティヴさに驚きを隠せないようです。最終的には後半に押し寄せる怒涛のボーカルに興奮しつつも、聴き終えたあとはRyoのカムバックに感謝しつつ、Knosisのこれから、挑戦的な姿勢を支持しています。

 

メタルコアYouTuberとして、現在は多くのアーティストとしてコラボしながら未知の領域へと突入しているNik Nocturnal。彼がデイリーで行っているTwitchでの配信をまとめたチャンネル「Nik Nocturnal Twitch Clips」で、Knosisについてリアクション動画をアップしています。彼はRyoのカリスマ性に驚きつつ、この楽曲のプロダクションについても興味を示しています。特にイントロとラップのパートが気に入ったようで、彼のエクスペリメンタル・メタルコアへの冒険を応援しているようですが、言葉を選びつつ、Crystal Lakeから彼が脱退したことを悲しがっているようにも感じますね。ただ、最も重要なことは彼がシーンに返ってきたことだと話しています。

 

チャンネル登録者数7万人、少しずつリアクションYouTuberとして登録者数を増やし続けているMacRyanMacは、メタル専門のリアクションYouTuberではなく、日本のロック、メタル、さらにはK-Popまでをリアクションしている、いわゆるアジア音楽のファン。この動画では冒頭から「すでにKnosisのファンだ」、「彼のボーカルが本当に好きだ」とCrystal Lakeからのファンであることを話しながら、不思議な楽曲展開に驚きながら、最後まで聴き進めていく。そしてこの動画ではEP全曲をチェックし、同様に驚く場面が多い。聴き終えてすぐの段階で「全く頭が整理できていない!」、「一体、これはなんなんだ」とポジティヴな混乱を起こしながらも冷静に「ロゴがカッコ良すぎる」と言い放っているのは面白い。Knosisの更なる新しい音楽を楽しみにしているようであった。

 

チャンネル登録者数6万人、主にTwitchで配信を行っているNewovaは、かなり熱心なメタルコア・ファン。デスコアまでに精通しつつ、時に辛辣なコメントも。今回はKnosisの「Seisai」をスピンし、冷静に楽曲を聴いています。時折、この楽曲の独創性に混乱しながら楽曲を一時停止し、「この曲がどうなっているのか、メタルコアなのかデスコアなのか理解することが出来ないが、嫌いになることが出来ない。どうして自分が好きだと感じるのかわからない!」と頭の中を整理している。最終的にはやはり、Crystal Lakeを彷彿とさせるヘヴィなパートがお気に入りだと話している。

 

彼らの他にも多くのリアクションYouTuber、特にCrystal Lakeを聴いてきたファンたちがKnosisを聴き、時に混乱しつつもRyo Kinoshitaがシーンに戻ってきたことを歓迎している。グローバルなカリスマ性を持ち、Knosisのエクスペリメンタルな挑戦、実験性も受け入れるファンがこれほどまでに多くいることに驚いた。多くのリアクションYouTuberたちは「彼がこれから何をするのか想像がつかない、しかしそれを楽しみにしている」とコメントしていることからも分かるように、Knosisの一挙手一投足に世界中から注目が集まっている。

 

Instagram https://instagram.com/knosisofficial
Twitter https://twitter.com/knosis_official

 

プログレッシヴ・メタルコア最前線 (2023年上半期のベスト・シングルス)

モダン・プログレッシヴ・メタルコア (Modern Progressive Metalcore) は、メタルコアの中でもプログレッシヴ・メタル/ロックの影響を持つアーティストの中で、モダンなスタイルを追求するバンドを指す。メタルコアにおけるプログレッシヴ・スタイルの導入で最も印象的なのは Djent で、Peripheryなどがトップ・バンドとして挙げられる。彼らの登場から10年以上が経ち、プログレッシヴ・メタルコアと呼ばれる音楽も日々進化し、周辺ジャンルと関わり合いながら成長し続けている。私が執筆した『Djentガイドブック』は2020年までのプログレッシヴ・メタルコアの歴史についてまとめたもので、2020年以降のフレッシュなサウンドを鳴らすバンド、または楽曲などについて「モダン・プログレッシヴ・メタルコア」として個人的にタグ付けして出版以降もウォッチし続けてきた。

この記事では、2023年1月から6月までにリリースされた多くのモダン・プログレッシヴ・メタルコアのシングル/アルバムから気になるものをピックアップして紹介する。RIFF CULTのSpotifyアカウントで「Best of Modern Progressive Metalcore 2023」というプレイリストを通じて日々ディグの結果を反映させているのでぜひチェックしてもらいたい。

2023年6月現在、40曲近い楽曲がリストインされているこのプレイリストを元に、紹介しておきたい楽曲を下記にまとめておく。さらに知りたい、聴きたいという方はぜひプレイリストをフォローし聴いていただければと思う。

 

Sailing Before The Wind 「Vanishing Figure (feat. Sean Hester of Life Itself)」

この記事で最初に紹介したいのはやはり日本が誇るプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Sailing Before The WindがLife ItselfのSeanをフィーチャーした楽曲「Vanishing Figure」だ。彼らのトレードマークと言えるメロディック・ハードロック/プログレッシヴ・ロックを通過した流麗なギターのメロディがふんだんに盛り込まれており、近年のSailing Before The Windが新たなキーリングとして楽曲のメインに据えたボーカルのクリーン映えるサビパートも過去最高の輝きを放つ。モダンだと思うのは、メタルコアのクラシカルな魅力溢れるスタイルに挿入されるフックの効いたブレイクダウンだ。Seanがフィーチャリングしているこの強力なパートは、多くのリアクションYouTuberによって切り抜かれ拡散していったことも印象的だった。これに次ぐ楽曲でSailing Before The Windが何をするのか、非常に興味深い。

 

そして、この2023年上半期には「Sailing Before The Wind系」と呼びたくなるモダン・プログレッシヴ・メタルコアな楽曲がいくつもリリースされた。それらはSailing Before The Windから直接的な影響を受けたかどうかは分からないが、もし似ているバンドを探しているという方がいたら、下記のバンドをチェックしてみて欲しい。

最もSBTWに近いスタイルを鳴らしていたのは、カナダ・トロントを拠点に活動するFeyn Entityだ。プロデューサー/コンポーザーとして活動するK.L.によるプロジェクトとしても活動していて、これはFeyn Entity名義でのデビューEP。テーマはデジタル化されたサイバー世界における分断された社会、人間同士の距離感に対し、コロナウイルスによるロックダウン中のバンドメンバーの考えや気持ちを表現したもの。この楽曲はインストであるが、Clintn Watsをフィーチャーした「Dissolve (The Dream Is A Lie)」も素晴らしいのでぜひチェックして欲しい。

Sailing Before The Windの「Futurist」を彷彿とさせるメロディックなスタイルを得意とするアメリカ出身のIn Search of SightのEPも素晴らしく、リードトラックである「Left Behind」は特におすすめ。Spotifyの月間リスナーはまだまだ少ないが、アメリカのローカル・メタルコアの雰囲気たっぷりなので、コア・リスナーはチェックしておいても損はないと思う。

 

 

Avalanche Effect 「Manipulating Sky」

ドイツ出身のAvalanche Effectは大幅なメンバーラインナップの変更を経て、この「Manipulating Sky」を発表している。ドラマーのJannick Pohlmannを亡くし、新メンバーを迎え7人体制として動き出したAvalanche Effectの「Manipulating Sky」は、2023年上半期最も優れたモダン・プログレッシヴ・メタルコアだった。現代デスコアの影響も見え隠れするブレイクダウンはすっきりとプログレッシヴの美的感覚になぞらえて表現し、Invent AnimateやA Scent Like Wolvesを彷彿とさせる浮遊感のあるメロディをふわりと燻らせている。再び動き出した彼らの動向は逐一チェックしていくべきだろう。

 

Traveller 「Homesick」

2017年から活動を続けるドイツのプログレッシヴ・メタルコア Traveller がリリースしたEP『Imprint』はプログレッシヴ・メタルコアの何がシーンで評価されているのかを正しく理解し、自身のスタイルとして昇華することに成功したTravellerの画期的な作品だ。ここに辿り着くまでのTravellerも非常にスタイリッシュで魅力的なバンドであったが、この作品で一気に隠れていた魅力が花開いた。ミュージックビデオにもなっている「Homesick」では、Invent Animateを彷彿とさせる浮遊感溢れるメロディとピアノの音色が醸し出すドラマ性の高さに驚くだろう。エンディングは特に凄まじい。

 

 

Breakdown of Sanity 「Collapse」

 

スイスを拠点に活動しているメタルコア・バンド、Breakdown of Sanityは、ほぼ休止状態でありながら「バンドが恋しい」という理由で2020年から毎年シングルをリリースしている。本格的な復活が切望されるが、2016年のアルバム『Coexistence』以来、本格的な再開には至っていない。ただ、これらのシングルはアルバム1枚に匹敵するほどの濃密さがあり、どれもリスナーに深く印象付けるものとなっている。ずっしりと詰まった至高の刻みは全盛期の輝きのまま、全てのメタル・ヘッズをヘッドバンギングさせるバウンシーな仕上がり。流石の貫禄。

 

Everghost 「Instinct」

デトロイトからとんでもないバンド Everghost が登場。「Instinct」は彼らのデビュー・シングルで、ミュージックビデオがDreamboundから公開されている。全編に渡って流れるアンビエントなアトモスフィアと細部にまで詰め込まれたリフは新人とは思えないクオリティ。特に最後のブレイクダウンは強烈で、Invent Animate〜I Prevail辺り、さらにResolveなどまで感じられる雰囲気があり、最初聴いた時はかなり驚きました。Spotifyの月間リスナーも5000未満とまだまだこれからと言えるEverghost、今からチェックしてください。

 

 

After the Burial 「Nothing Gold」

USプログレッシヴ・メタルコアの代表的な存在であるAfter The Burialが、2019年のアルバム『Evergreen』以来となる新曲「Nothing God」と「Death Keeps Us From Living」の2曲を発表。ちょうどAfter The Burialくらいのレベルにあるメタルコア・バンドにとって、新型コロナウイルスによるパンデミックは経済的な打撃が大きかったに違いない。ライブが出来ない中オンラインで制作を続けたバンドも多いが、それは簡単なことではなかっただろう。今回の新曲についてボーカルのAnthonyは、この2曲がCOVIDのロックダウンの経験から書かれたもので、Anthony自身にとって人生で最も辛い時期に書いたものであるとコメントしている。ルーツに立ち返り、好きなものを作るとして書かれたこの楽曲はまさにAfter The Burialらしさが凝縮されており、2010年代初頭から中期にかけてプログレッシヴ・メタルコアが大きく盛り上がり始めた頃のヴァイブスを感じることが出来る。

 

As Within So Without 「Burn With The Sun」

2016年からニューヨークを拠点に活動する As Within So Without の最新シングル。このシーンを何年も追いかけているリスナーであれば、このバンド名を見ただけでそのサウンドが想像出来るかもしれない。今回公開された「Burn With The Sun」は、彼らの出世作であるアルバム『Salvation』から1年振りのニュー・シングルで、大きな期待を背負って発表された。その期待を大きく超えるこの「Burn With The Sun」は、昔のThe Word Aliveをプログレッシヴに仕立てたような耳馴染みの良いキャッチーさがあり、多くのメタルコア・リスナーが知っておくべきバンドであると思う。このシングルから次のアルバムが間違いなく素晴らしいものになることが分かるだろう。

 

 

Straight Shot Home 「Developer」

近年のメタルコア/デスコアのプロモーションに欠かせないものと言えば「リアクション動画」だ。それで爆発的なヒットになったバンドと言えば、Lorna Shoreが最も記憶に新しいだろう。私もいくつかのリアクションYouTuberをフォローして、主に彼らのショートから優れたブレイクダウンを持つバンドの最新曲に巡りあうことが出来た。個人的に最も気に入っているOhrion Reactsはチャンネル登録者数11万人を誇る、アンダーグラウンド・メタル・シーンの中ではフォロワーの多いYouTuberで彼が紹介するバンドは”当たり”が多い。そんな彼が「Architects と Dayseeker が一緒にバンド組んだらこんなサウンドになるのでは」とキャッチを付けて紹介したバンド Straight Shot Home はこの上半期何度も聴いていたバンドのひとつだ。ポスト・ハードコアのとろけるようなクリーンと相性の良いメロディアスな楽曲は、Erraにも通ずる美しさがある。バンドは自身のサウンドを「80年代のシンセポップとモダン・メタルコアの融合」と形容していて、その表現にピンときたリスナーは迷わず彼らをチェックしてほしい。

 

Soul Despair 「Crimson」

ポルトガルとアメリカを拠点に持つSoul DespairをRIFF CULTでは何度も取り上げてきた。ただ反応はイマイチで、記事へのアクセスは平均以下……。複雑な魅力を持つバンドの魅力を発信するのは非常に難しいが、彼らに関しては今季よくRIFF CULTでも取り上げていきたいと思う。彼らのサウンドにはSentinelsやOceans Ate Alaskaといったマスコアのエレメンツがスパイス程度にふんわりと漂っており、それが魅力的なクセになっている。「Crimson」はクセとなるアクセントは少ないものの、Soul Despairというバンドが目指すサウンドとして完成されており、比較的キャッチーに魅力が伝わる楽曲であると思う。この記事を読み込んでいただけている方なら間違いなくヒットすると思う。

 

 

Polaris 「INHUMANE」

2023年6月19日、PolarisのギタリストであるRyan Siewが急逝したというニュースにメタル・シーンは深い悲しみに暮れた。彼はまだ26歳で、Polarisで過ごした10年もの間、メタルコアのゲームチェンジャーとしてそのアーティスティックな才能を発揮してきた。2023年9月1日にリリースされることが決まっているアルバム『FATALISM』からの先行シングル第1弾として公開された「INHUMANE」のミュージックビデオではRyanの姿もあり、観ていると複雑な感情が込み上げてくる。モダン・メタルコアのトップを走る彼らの現在地が垣間見える「INHUMANE」ではRyanを筆頭に綿密に作り込まれたリフが織り成すグルーヴに圧倒され、その世界観が今後メタルコア・シーンに与える影響を考えると計り知れないものがあるだろう。このアルバムのリリースを待つ気持ちはどのように表現すべきか分からないが、Ryanにとって遺作となってしまった『FATALISM』がモダン・メタルコアの頂点にある作品になっていることが紛れもない事実であることを「INHUMANE」で証明した。

 

The Artificials 「Warrior Of Light」

プログレッシヴ・メタルコア/メタルのディープなディガーであれば、彼/彼女らの魅力は古くから知っているだろう。Tragic Hero Recordsから2017年にリリースしたアルバム『Heart』に収録されていた「Warrior Of Light」のリマスター・バージョンは、上半期良く聴いた楽曲の一つで『Heart』を聴きかえすきっかけにもなった。完全に独立した手法でバンド活動を続ける彼/彼女らの自由な創作にはいつも驚かされる。

 

Vanitas 「Eventum」

The Artificialsと共にチェックしてほしいのが、2022年にイングランドで結成されたばかりの女性ボーカル・プログレッシヴ・メタル/メタルコア・バンド、Vanitasだ。ミュージックビデオとして公開された「Eventum」は、シンフォニック・メタル/プログレッシヴ・メタルをベースにしながら、メタルコアのバウンシーなリフを取り入れ、広範囲のメタル・リスナーへアプローチしたキラーチューンだ。中盤から後半にかけてのドラマティックな展開は魅力的。大手、例えばNapalm Recordsなんかと契約して売り出されたらビッグ・ステージも時間の問題だと感じる。

 

 

最後に

「モダン・プログレッシヴ・メタルコア」というキーワードを持ってシーンを追いかけてみると、いくつもこのキーワードの持つ特徴に気付く。全体的なヴィジュアルイメージの統一性、楽曲タイトルやバンド名に使われる単語……。グローバルに点在する彼らを一つのジャンルやシーンにまとめて考えることは出来ないが、具体的になっていない共通する要素は他のメタルコアやデスコアに比べると分かりやすいものがあると思う。

Spotifyの月間リスナーが1万を超えるアーティストは珍しいが、決してマイナーなカテゴリーではないと思うし、広く親しまれる要素があるので、誰が筆頭になって「プログレッシヴ・メタルコア」を分かりやすく打ち出し牽引していくかが重要だと思う。また、リアクションYouTuberによって注目を集める要素もこのジャンルにはあるので、「プログレッシヴ・メタルコア系リアクションYouTuber」がかつてのレーベルやYouTubeチャンネルのような役割を果たしていくのかなとは思う。そこの力がどのくらいまで巨大なものになっていくのかは想像出来ない。何となしに、シーンとしてのまとまりはないにしても、これらを「モダン・プログレッシヴ・メタルコア」としてまとまった場所で紹介されるべきではあると思う。

今回この記事で紹介したバンドの3倍近い楽曲をRIFF CULTのSpotifyプレイリスト「Best of Modern Progressive Metalcore 2023」では紹介している (他の特集記事で別途紹介したモダン・プログレッシヴ・メタルコアもあります)。 ぜひフォローしてランダム再生したりしながら、新しいお気に入りを見つけたり、プログレッシヴ・メタルコアの現在地を感じてみてください。

 

Architects、「Hellfest 2023」でのフルセット・ライブ映像が公開に

 

UKメタルコア・バンド、Architects が2023年6月15日から2023年6月18日にフランス・クリッソンで行われたフェスティバル「Hellfest 2023」でのフルセット・ライブ映像をYouTube arte concert のチャンネルから公開しました。

 

【RIFF CULT Spotifyプレイリスト】

RIFF CULTのSpotifyプレイリストでは、日々世界中でリリースされるメタルコア、デスコア、デスメタル、プログレッシヴ・メタルなどを更新するプレイリストを公開しています。ぜひお気に入りに登録して日々のディグに役立てて下さい。

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Code Orange、「Hellfest 2023」でのフルセット・ライブ映像が公開に

 

メタルコア/ハードコア・バンド、Code Orange がが2023年6月15日から2023年6月18日にフランス・クリッソンで行われたフェスティバル「Hellfest 2023」でのフルセット・ライブ映像をYouTube arte concert のチャンネルから公開しました。

 

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Today is the Day、「Hellfest 2023」でのフルセット・ライブ映像が公開に

 

アメリカのノイズ ロック/エクスペリメンタル・メタル・レジェンド、Today is the Day が2023年6月15日から2023年6月18日にフランス・クリッソンで行われたフェスティバル「Hellfest 2023」でのフルセット・ライブ映像をYouTube arte concert のチャンネルから公開しました。

 

【RIFF CULT Spotifyプレイリスト】

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Parkway Drive、「Hellfest 2023」でのフルセット・ライブ映像が公開に

 

オーストラリアのメタルコア/ヘヴィ・メタル・バンド、Parkway Drive が 2023年6月15日から2023年6月18日にフランス・クリッソンで行われたフェスティバル「Hellfest 2023」でのフルセット・ライブ映像をYouTube arte concert のチャンネルから公開しました。

 

 

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