超個性派! メタルコア 2023年上半期のベスト・シングル

RIFF CULTでは、Spotifyを利用して最新のメタルコアの楽曲をまとめた「All New Metalcore 2023」というプレイリストを作成し運営しているのですが、2023年の上半期だけで1,000曲以上がリストインしており、デイリーチェックしないと全ての楽曲、ましてやアルバムやEPなどをチェックするというのは難しい。そして、どれだけ優れたテクニックやメロディがあったとしても、聴かれなければ意味がない。聴いてもらうために、そして見つけてもらうためにも現代メタルコアには、唯一無二の個性が必要だ。

メタルコアに限って見ても、トップシーンで活躍するバンドたちは「メタルコア」というジャンルだけでは表現できない個性を持っている。誰でもない自分たちだけの個性は、多くのリスナーにリーチするためにとても重要な要素だ。今回、他の誰にも真似できないようなオリジナリティでファンを魅了した2023年上半期のメタルコアで印象的なシングルをまとめてみた。主にプログレッシヴ・メタルコア・バンドを中心に構成されているが、中には全く違ったシーンで活躍するアーティストもいる。それでも「プログレッシヴ」であり「メタルコア」であることを前提条件にリストを作成しているので、通して聴くと意外とジャンルの違いを感じないと思う。

 

 

 

Earthists. 「HYPERHELL」

藤井風など現行シーン〜シティポップ、アニソンまでを一括りにした「J-POPに取って代わる新しいワード」として「Gacha Pop」というキーワードが誕生したのは記憶に新しい。J-POPというカテゴリーは日本の多様な音楽を一括りにまとめるには窮屈だし、世界のトレンドと別で発展する日本の音楽を表現する言葉として「Gacha Pop」はアリなのかもしれない。ガチャガチャした感じというのは日本のポップスだけに言えることではなく、メタル〜メタルコアにも当てはまるだろう。Fear, and Loathing in Las VegasからBABYMETALまで、多様な音楽の影響を混ぜ合わせる、というか“ガチャガチャと詰め込んだ“ものが刺激的で面白いとメタル・シーンでも評価されてきた。今では世界を飛び回るPaleduskも「Gacha Metal」と言えば腑に落ちる感じがする。

Earthists.もこの「HYPERHELL」で他にない刺激的なサウンドを作り上げ、2023年上半期にシーンで注目を集めた。ハイトーンでメロディアスなサビ、全編に施された軽やかなピアノの旋律、それでいてグローバル・スタンダードなレベルにあるプログレッシヴ・メタルコアのグルーヴ。これらが見事に「HYPERHELL」として形に出来るクリエイティヴさはEarthists.にあって他にないものだ。こうした個性がしっかり受け入れられ、評価される日本は音楽家含む芸術家にとって良い土壌だ。誰もやったことがないことをEarthists.がどんどん挑戦して、ファンが楽しみ続けていったら最終的にどこに辿り着くのか、今はまだ想像も出来ない。7月14日にはニュー・シングル「GODBLAST」のリリースが控えている。

 

BABYMETAL 「Mirror Mirror」

メタルコア、中でもプログレッシヴ・メタルコアの記事になぜ BABYMETAL が?と思うでしょう。この曲聴いたら、「確かに」と頷けると思います。今年リリースされたアルバム『THE OTHER ONE』の収録曲である「Mirror Mirror」は、本格的なプログレッシヴ・メタルコアな楽曲で、PeripheryErraPolyphiaなど本格派と呼べるプログメタル・クオリティに仕上がっています。スペーシーに広がっていくメロディにはArch Echoも感じますね。そして、本当にこの歌詞が素晴らしい!

「鏡の中で生きる 君は何を見ている リアルな自分なんて 存在しないんだから 幻想を超えて 自分さえも飛び越えて 新しい世界 いまここに」とまさに、BABYMETALが歌うべき、歌ってこそ説得力を増すフレーズと言うか。自分が生きている世界とは別の世界から聞こえてくる囁きのような響きがあって、そしてそれを、この未来派プログレッシヴ・メタルに乗せてくるんだから凄まじい。本当に最高のアルバムで全人類必聴。

 

 

SHREZZERS 「Tabidachi feat. Kaito from PALEDUSK」

個性派と言えばPaleduskで間違い無いですよね。東欧が誇るプログレッシヴ・ポストハードコア/メタルコア SHREZZERS はセカンド・アルバム『SEX & SAX』を2023年2月にリリース。ここ日本でもその人気は絶大で、国内向けのクラウドファウンディングでセカンド・アルバム『SEX & SAX』の日本限定盤を発売するほどだ。この楽曲には、PaleduskのボーカルKaitoが完全に憑依しており冒頭からサビパート&サックスが導入されるまで、SHREZZERSとは分からないほど。「Tabidachi」での個性のぶつかり合いは互いの魅力を上手く引き出しており、アルバムでもキーになるトラックと言える。10年前くらいだとこうして日本人ボーカリストが海外アーティストの楽曲にゲスト・ボーカルで参加すると言うのはほとんどなかったと思うのですが、Ryo Kinoshita以降は本当に良いフィーチャリングが続いていて面白いですし、これをきっかけに海外アーティストに引き込まれるリスナーがいたら良いなと思います。

 

Paledusk 「I’m ready to die for my friends feat. VIGORMAN」

その人気はとどまることを知らず、この夏、海外へと飛び出し大規模フェスで熱狂の渦を巻き起こしているPaledusk。そんなライブ映像を眺めていると、彼らがメタルコア・バンドの枠に収まっていたのが遠い昔のことのように感じる。ギタリストDAIDAIのクリエイティヴィティはBring Me The Horizonをも刺激して、最新曲「AmEN!」の編曲に参加するなど、もうメタル/ヘヴィ・ミュージックのトップ・クリエイターと言っても過言ではない存在へと成長した。

「I’m ready to die for my friends」はアメリカンロック/ポップスの軽快なギターフレーズから雪崩のようにヘヴィリフが炸裂するパートへと突入したかと思えば、VIGORMANをフィーチャーしたキャッチーなラップパートへと接続。最終的にA Day To Rememberばりのヘヴィ・ポップパンク・ブレイクダウンで全てを爆発させてしまう……これを形容する音楽ジャンルなんてない。聴き終えた後は、奇想天外な結末を迎えた映画を見終わった後の、なんとも言えない胸のざわめきというか、「この結末って何なんだろう」と、誰かと話したくなるあの感じがふつふつと湧いてくる。人は皆、なんだか分からないもの、理解出来ないものに興味関心を掻き立てられる。Paleduskの音楽が一体なんなのか、聴き終えた後のこの満足感はなんなのか、これからも誰にも分からない。それがPaleduskが人々を惹きつける大きなエネルギーになっている。これからもみんなを驚かせ続けて欲しい。

 

 

Anima Tempo 「Saeger Equation」

メキシコを拠点に活動するエクスペリメンタル・プログレッシヴ・デスメタル・バンド、Anima Tempoは上半期の最後の最後、6月30日にニュー・アルバム『Chaos Paradox』をリリースしました。これが本当に素晴らしい。先行シングルとして公開された「Saeger Equation」はオリエンタルなイントロで幕開け、これは少しフォルクローレの香りもします。フォルクローレは南米(特にコロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ)のアンデス山脈地方でインディヘナ達によって歌い継がれる民族音楽で、南米メキシコ出身の彼らにどのくらい影響があるのかは分かりませんが、影響がなきにしもあらずなのかと (完全な憶測ですいません)。

民族音楽の音色とPeriphery、Animals As Leadersを通過したプログレッシヴ・メタルコア/Djentのグルーヴを見事に展開させ、特にシャープなリフワークは聴きごたえがあります。アルバム通じてこの作風ではないのですが、日本でも話題沸騰中のBloodywoodやThe HU辺りハマってる方におすすめです。余談ですが、2018年にRNR TOURSでドイツのTensideというバンドのツアーを手がけた時、同時期に彼らもジャパンツアーを行っていて、1公演一緒にやる予定だったんですが、台風で公演中止に……。結局彼らとは合流できずだったので本当に残念でしたね。次来日する時はビッグになってやってきてくれるはず!

 

Chris Turner – Psycho (ft. Lauren Babic x Mitchell Rogers)

唯一無二のプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Oceans Ate Alaskaの超個性派ドラマーとして知られるChris Turnerのソロ・プロジェクトが活発。ポップ・シンガーAnne Marieの人気曲「Psycho」のカバーをRed Handed Denialの女性シンガーLauren BabicとVarialsのMitchell Rogersと共に制作。Chrisはこのドラム録音でサンプルもトリガーも使ってないらしく、本当にオーガニックなテクニックでここまでやっちゃうのは凄まじいとしか言いようがないですね……。Djentなブラッシング・リフとChris独特のドラミングの組み合わせが織りなすグルーヴがポップな楽曲でも、ここまでタイトにアレンジ出来るのはChris Turnerだけ。Oceans Ate Alaskaだけでなく、彼のクリエイティヴな姿をソロでも楽しめるのは最高です。

 

 

Voyager 「Prince Of Fire」

グローバルな人気を持つオーストラリア出身のプログレッシヴ・メタル・バンド、Voyager。99年から活動を続けるベテランで、がっつり”プログレッシヴ・メタルコア”ではないですが、Djentな香りの中に80年代シンセポップを組み合わせたノスタルジックなサウンドで幅広い人気を持っています。今年に入り「Prince of Fire」と「Promise」の2曲のシングルを発表していますが、この「Prince of Fire」ではブレイクダウンもあり、メタルコア・リスナーにもハマる要素あり。ボーカリストDanny Estrinのカリスマ性も高く、実力以上にその雰囲気で圧倒している感じ。クラシックなプログメタルの美的感覚たっぷりでありながら、現代メタルコアに通ずる創造性も兼ね備えたVoyager、次の新曲も楽しみです。

 

Ice Sealed Eyes 「There Is No Safety In The Dark」

ベルギーから現れたモダン・メタルコア・バンド、Ice Sealed Eyes。2022年のアルバム『Solitude』で衝撃を受けた方も多いはず。彼らの登場には、どこかLoatheやSleep Tokenが登場した時の感動を思い起こさせられます。メタルコアってダンス・ミュージックだと思っているんですが、そこから離れてロックに向かっていくバンドもいて、Loatheがシューゲイズを用いてオルタナティヴ・メタルコアの可能性を拡大したのは時が経つにつれてかなり重要になってくると思います。Ice Sealed Eyesは更に奥深く、ノイズやアンビエントのエレメンツを用いてオルタナティヴ・メタルコアをやっている感じがします。全体的に引き締まったサウンド・プロダクションからはVildhjarta的なThallの影響も見え隠れしているのですが、個人的にはもっと巨大なギターリフ、裸のラリーズ、Borisとかにまで通ずるノイズが欲しい。アンプを天高く積み上げてノイズの銀河まで逝って欲しい。

 

Their Dogs Were Astronauts 「Replica」

オーストリアの多弦プログレッシヴ・インスト・ユニット、THeir Dogs Were Astronauntsが2023年5月にニュー・アルバム『Momentum』を発表。「Replica」は先行シングルとして発表されたアルバムのキーリングで、ユニットらしくプログレッシヴでエクスペリメンタルな魅力がたっぷりと詰め込まれた1曲に仕上がっている。ベテラン・プログメタル・バンドがPolyphiaをカバーしたような、懐かしさを新しさが同居する謎めいた雰囲気が全編に渡って味わえる。

 

いかがでしたでしょうか。新しいお気に入りは見つかりましたでしょうか?本当に素晴らしい音楽が多く、全てを聴くことはできないかも知れないですが、こんな世界が始まっていることだけでも知って、バンドを応援して欲しいです。

メタルコア 2023年上半期の名盤TOP10

2023年の上半期にリリースされたメタルコアのアルバム、EPの中から優れた作品をピックアップし、アルバムレビューしました。年々、こうしてメタルコア全体の雰囲気も変わり、トータルで見てもプログレッシヴだったり、ニューメタルだったり、そうした影響を上手く捉えて表現した作品を入れ込まないと納得できない状況になってきていると思います。決してクラシックなメタルコアが廃れてきている、という訳ではなく、幅広い可能性を持っていたバンド、サブジャンルが花開いているという良い状況だと思います。プログレッシヴ・メタルコアやニューメタルコアとしてアルバムレビューすべき作品もありますが、全体の状況も把握できるように入れ込んでみました。ぜひ新しいお気に入りを見つけてください。

 

 

 

10位 : Currents 『The Death We Seek』

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コネチカット州フェアフィールドを拠点に2011年から活動するメタルコア・バンド、Currents (カレンツ)。『The Death We Seek』は、2020年のアルバム『The Way It Ends』に続く作品で、プロデューサーRyan LeitruとギタリストであるChris Wisemanによる共同プロデュースで制作され、Wage WarやIce Nine Kills、Make Them Sufferなどを手掛けてきたJeff Dunneがミックスを担当している。

本作で最も注意深く感じてもらいたいのは、彼らの表現の幅が大きく広がったことだ。「メタルコア・バンドのCurrents」として聴くのは前作まで。このアルバムから彼らのサウンドは深みを増すと共に、サウンド面においても挑戦的なフレーズやアイデアが散見されるようになった。

特にChrisのギター、そしてそれを際立たせるようなベースラインやアトモスフィア。現代メタルコアにおいては珍しいものではなくなった、このようなプロダクションにおける創意工夫がCurrentsの思想を、そしてスタイルの規模を何倍にも拡大させている。前作から大きく進化を遂げた『The Death We Seek』、聴けば聴くほど味が出てくるだろう。「Remember Me」は本当に言葉にならない感情が込み上げてくる。楽曲に込めたバンドからのコメントはこちらから。

 

 

9位 : Soulkeeper 『Holy Design』

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ミネソタ州ミネアポリスを拠点に活動するニュー・メタルコア・バンド、Soulkeeperのデビュー・アルバム。新型コロナウイルスが本格的に全世界で流行し始めた2020年4月にシングル「Heavy Glow」をリリース、そのミュージックビデオを観て、かなり衝撃を受けたのを覚えている。しかし3年もの間、彼らから何か作品がリリースされるというような情報もなく、ニューメタルコアの盛り上がりに取り残されてしまったかと思っていたが、遂にアルバムを発表。そしてこれが非常に素晴らしかった。

同じタイプのGraphic Nature同様、ニューメタルとメタルコアのブレンド具合が優れており、エクスペリメンタルな要素は残しつつも、切れ味鋭くエディットされたリフが織りなすイーヴィルなバウンスは一級品。ミュージックビデオになっているタイトル曲「Holy Design」で言えば、タイトなサウンドのバックになっているエレクトロニックなアレンジが素晴らしく、ワーミーだけが炸裂し続けるB級ニューメタルコアとは比べ物にならないほど、NUな世界観を作り出す才能を感じる。

まだまだ地味な存在ではあるものの、Mathcore Indexでのスタジオ・セッションで見せた演奏技術の高さからライブ・シーンでの活躍へ期待も高まる。決して無視できない存在へと成長するのも時間の問題だろう。

 

 

8位 : C-GATE 『NO FUTURE』

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東京を拠点に活動するハードコア/メタルコア・バンド、C-GATE の通算3枚目フルレングス。2019年に新ボーカリストとしてNaShunを迎えてから初のアルバムであり、この数年大きく成長を遂げたC-GATEの持てるポテンシャルを余すことなく詰め込んだ全13曲入りの大作だ。

ミュージックビデオとしても公開されている「Hypocrisy」は、USアンダーグラウンド・モッシュコアと比較しても大差ないダウンチューン・リフをキャッチーに刻みながら、変幻自在にアクセルとブレーキを踏みかえる展開の妙が実に素晴らしい。こうしたアイデアは現代ハードコアのトレンドをキャッチし、日夜日本全国のライブハウスで体現し続けてきた実力があって正しく作られるものであり、メタルコア、ハードコア、いずれのリスナーも勝手に頭に血が上るような高揚感が味わえるはずだ。

メロディック・ハードコアの美的感覚を取り入れた「THE WAY I AM」は頭の中でリフレインする「Carry on, nobody can change the way I am」というリリックが印象的な楽曲でアルバムをバラエティ豊かなものへとアップデートしてくれる。花冷え。、CrowsAlive、Good Grief、Matt Fourman、UNMASK aLIVEといった盟友らとのフィーチャーも彼らにしか出来ない人選であり、それぞれの旨みを正確に表現している。

ライブでカオスな盛り上がりを作り出す「NO FUTURE」、「KILL YOU」といったバンガーチューンは国内だけでなく、グローバルなメタルコア、ハードコア、そしてデスコア・シーンでも容易く受け入れられるクオリティ。彼らが主戦場を日本だけでなく、世界へ変えていくのも時間の問題だ。

 

 

7位 : For I Am King 『Crown』

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オランダのメロディック・メタルコア・バンド、For I Am King の5年振りとなるサード・アルバムは、Prime Collectiveからのリリース。このPrime Colleciveはデンマークを拠点に置くレーベルで、SiameseのMirzaらが運営するレーベルだ。ここ数年、デンマークからは多くのバンドがグローバルな人気を獲得し、世界への門戸を遂に開けた解放感から動きが活発だ。For I Am KingはRNR TOURSで来日ツアーも手掛けたバンドで、レーベル、バンドからのプッシュもあり、2023年上半期によく聴いていた作品だ。

昨年ミュージックビデオとして公開された先行シングル「Liars」はメロディック・メタルコアという音楽の魅力を余すことなく詰め込んだ快作で、4万回しか再生されていないというのが信じられない。これは他のどんなメタルコアよりもメタルコアであり、個人的にはAugust Burns Redよりも聴いたしハマった曲だ。ボーカリストAlmaのメロディック・シャウトはイーヴィルな魅力もあり、来日時よりも格段に進化している。同じくリードシングルになっている「Trojans」もシンフォニックなエレメンツを取り入れ、スケールアップしたFor I Am Kingの世界観に聴くもの全てを引き込んでいく。

このレベルのバンドが埋もれるヨーロッパのメタルコア・シーンも凄いのだが、ワールドワイド、特に日本での人気はもっと高まってもいいと思う。ぜひ彼らのSNSなどに応援コメントを書き込むなどしてもらいたい。

 

 

6位 : Graphic Nature 『A Mind Waiting to Die』

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イングランドを拠点に活動するニューメタルコア・バンド、Graphic Natureのデビュー・アルバム『A Mind Waiting to Die』。メタルコア・リスナーにはあまり馴染みのないRude Recordsというところからリリースされたこのアルバム、RIFF CULTでも頻繁に彼らのことは取り上げ続けてきたが、毎日のように変化し成長続けるニュー・メタルコアというジャンルにおいて、Graphic Natureが”基本のスタイル”をこのアルバムで確立したことはシーンにとって大きいだろう。

刺激を求め続けるのであれば、未だ交わったことのないジャンルからのエレメンツを組み込んだり、ヘヴィを極めたり、誰もやったことのない何かを探し昇華する必要がある。ただ、一瞬のBUZZを狙ったものであるなら、それは消費されて終わってしまう。デスコアがダウンテンポと結びつきトレンドになった時、ダウンテンポ・デスコアへとスタイルチェンジして注目を集められず死んでいったバンドがどれだけいたか。その時から生き残っているバンドに共通しているのは、デスコアとしての本来の魅力を残したまま微細なアップデートを繰り返しているバンドばかりだ。

ニューメタルコアはEmmureによって世界のメタルコア・シーンに浸透し、Alpha Wolfらによって形作られ、昨今のメタルコアのトレンドとも言える存在になった。飽和し始めている2023年に、純粋にニューメタルとメタルコアのクロスオーバーでピュアなバンガーを探し求めた時、Graphic Natureがやっている事が理想のスタイルだと思う。

Slipknotを思わせるスクラッチやスネア、複雑すぎない程度のキャッチーなバウンス、フックとして絶妙な役割を担うワーミーのブレンド感覚。ミュージックビデオになっている「Killing Floor」や「Into The Dark (+Bad Blood)」は気付けばスピンしているし、耳に残るフレーズがたっぷり詰め込まれている。このバランス感覚のまま、イングランドを代表する存在へと成長して行って欲しい。

 

 

5位 : Crown The Empire 『DOGMA』

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2010年テキサス州ダラスを拠点に結成されたCrown The Empireの4年振り通算5枚目のフルアルバム。10年間ドラマーを務めたBrent Taddieが脱退、新たに加入したJeeves Avalosと共に、Fever 333やPoorstacy、Nova Twinsらを手がけたZach JonesとJosh Strockがプロデュースを務めた本作は、長きに辺り彼らをサポートし続けるRise Recordsからのリリースとなった。

彼らがスタートした2010年ごろのメタルコアの主要レーベルと言えば、Rise Recordsだった。現代メタルコアに繋がる盛り上がりの最も最初の段階からRise Recordsはカリスマ・レーベルで、発掘するアーティストが皆ヒットしていた。Rise Recordsも時の流れと共に所属アーティストのテイストが変容して行ったが、現在もblessthefallやThe Acasia Strain、Dance Gavin Dance、Kublai Khan TX、Memphis May Fire、Polyphia、Spite、Spiritbox、Herperが籍を置き、メタルコアの主要レーベルであり続けている。

彼らは結成からメタルコアとポストハードコアの間を行くスタイルでトップを走り続けてきたバンドで、新体制となってもそのスタイルは変わらない。SpiritboxのCourtney LaPlanteをフィーチャーした「In Another Life」は彼らのクラシック・アルバム『The Fallout』にも通ずる懐かしさがあると感じるのは私だけだろうか。

タイトルトラック「DOGMA」は呪術的なミュージックビデオのディレクションとも相まって、神経を侵略するようなエレクトロニックなビートがヘヴィなブレイクダウンへと向かっていく様が異様な不気味さを放っている。Beartoothを彷彿とさせるヘヴィなメタルコア・ブレイクダウンは非常にヘヴィで驚く。気づけば彼らのキャリアも13年。大きなスタイルチェンジもなく、正統派であり続けるストイックさに感服。

 

 

4位 : Veil of Maya 『[m]other』

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2004年からイリノイ州シカゴを拠点に活動するプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Veil of Maya の通算7枚目フルレングス。前作『False Idol』のリリースが2017年、およそ6年振りのニュー・アルバムは長年のパートナーであるSumerian Recordsからリリースされた。

2019年にTaylor Larsonとスタジオ入りし、新作の制作をスタートさせたことをSNSで発表していたものの、それらの多くを破棄した事が6年というブランクが開いてしまった理由だ。2014年にボーカルLukas Magyarが加入し、2枚のアルバムをコンスタントにリリースしてきた彼らにとって、こういった経験は初めてだろうし、元々ブルータル・デスコアからスタートし、次第にプログレッシヴ・メタルコアへと移行してきた彼らがファンの期待に応えられるような作品を生み出すには、完全に納得できるものでないと発表しないというスタンスを取ったことは納得が出来る。かつてSuicide Silenceが大きくニューメタルへと舵を切った時、ファンの失望は凄まじいものがあった。あれからしばらく経ち、2枚の素晴らしいOGデスコアのアルバムを発表しても尚、引きずり続けているのを見ると、本当にシングル一曲でもファンを失望させるようなスタイルチェンジは許されない状況である。諦めて別のバンドを聴くことなんて、本当に簡単だからだ。

ミュージックビデオにもなっている「Red Fur」はメタルコアの伝統に沿ったクリーン・パートとエレクトロニックなアレンジを施したリード・トラックで、2015年のVeil of Mayaをほんの少しアップデートしたような楽曲だ。同じく先行シングルとしてミュージックビデオになっている「Synthwave Vegan」はプログレッシヴな彼らの魅力を引き出しながら、ニューメタルコアの影響も感じられるヘヴィなキーリングに溢れた一曲で、決してファンを失望させることはない。

「Disco Kill Party」は一聴するとVeil of Mayaには聴こえないような楽曲だが、アルバムにおいて強烈な個性を放ち、他と違ったバンガー・チューンとして再生回数も高い。「Mother Pt.4」でも大胆なエレクトロニックなイントロからしっとりと幕開けていき、ヘヴィなパートとのコントラストを描いていくさまなどを聴いていると、もしかしたらこうしたスタイリッシュなプログレッシヴ/Djentに舵を切ろうとしていたのかもしれない。ただこの『[m]other』は紛れもないVeil of Mayaのアルバムで傑作だ。最終的にどういったサウンドへ辿り着くのか興味深いが、まだまだ続く彼らの長旅の中で様々な挑戦を聴かせて欲しいと願う。

 

 

第3位 : Invent Animate 『Heavener』

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テキサス州ポート・ネチズを拠点に活動するプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Invent Animate が、Tragic Hero Recordsを離れUNFDと契約してから初となるアルバム『Heavener』をリリース。元AvianaのMarcus Vikは加入してから2作目ということもあり、Invent Animate仕様に鍛え上げられたボーカルでアルバムにおいてキーとなる存在のひとつにまで成長している。ドラマーのTrey CelayaはFit For A Kingとの仕事により、Invent Animateのライブ活動には参加していないが、このアルバムにおいてはセッション・ドラマーとしてその実力を発揮している。Landon Tewersによるプロデュースは彼らのメロディが持つ悲哀を多角的に研ぎ澄まし、時に水面を漂うように、時に刺々しく突き刺さるようにエディットしている。

彼らがこのアルバムで鳴らす音楽性は、決してメタルコアのトレンドであるとは言えないが、Crystal Lakeからの直接的な影響を感じさせる先行シングル「Shade Astray」やHolding Absenceを筆頭に主にユーロ・ポストハードコアでひとつシーンとして確立されているオルタナティヴなメロディワークを驚きのクリーン・ボイスで表現した「Without A Whisper」などプログレッシヴ・メタルコア・バンドとしては挑戦的な楽曲がキーリングになっている。最も彼ららしい音楽的表現と言えば、”静と動”のコントラストだ。「Void Surfacing」は特にカオティックにメロディとリズムがグルーヴを生み出しつつ、それらを継ぎ接ぎしたような構成で電子音楽的な要素を見せる。後半に導入される彼らの伝統的なブレイクダウンの美しさはこうしたカオスなエナジーがピタッとシャットダウンされるようなブレイクダウンにある。そこはこれまでと全く変わっていない。

コアなメタルコア・リスナーと話をすれば、彼らの名前が頻出するほど、かなり現代メタルコアにおいて影響力が強いバンドだ。大きな変化はなくともこれだけ挑戦的と思わせる孤高の存在感はカリスマ的と言っていいだろう。

 

 

第2位 : fromjoy 『fromjoy』

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テキサス州ヒューストンを拠点に活動するメタルコア・バンド fromjoy の2021年作『It Lingers』に次ぐセカンド・アルバム。地元のレーベルdontstress//flowerpressからのリリースということもあり、まだまだ知名度としては低いバンドであるが、革新的なサウンド・プロダクションや青色で統一されたスタイリッシュなヴィジュアルからミュージシャンらの評価が高い。

以前彼らを紹介したとき、ニューメタルコアならぬニューハードコアなどと紹介したが、その時点で彼らのサウンドがどこへ向かっているのか分からなかった。昨今、バンドがどこを拠点としているのか、メンバー構成はどうなのかなどをあえて公開しない、ミステリアスな雰囲気を出しているバンドが多いが、彼らもそんなバンドの一つだった。結局、このアルバムだけでは彼らが目指すサウンドが何なのかを掴むことが出来なかった。繰り返し聴いても、計り知れない魅力が放射状に放たれ続けるアルバムを聴き終えるころには、メタルコアが何なのかさえ分からなくなってしまう。

基本は現代メタルコアの中でも盛り上がりを見せるニューメタルコアに分類されるようなスタイルがベースになっているが、Loatheの元ギタリストConnorが「morbidly perfect」でフィーチャーされているように、オルタナティヴな方面への挑戦も多く見受けられる。「morbidly perfect」のサビへの導入部分はまさにLoatheの影響が感じられるし、「of the shapes of hearts and humans」もシューゲイズっぽい。

ミュージックビデオになっているバンド名を冠した「fromjoy」が彼らが目指すサウンドであるとしたら、2024年、とてつもなく巨大なバンドに成長している姿しか想像出来ない。波打つリフがビートダウンしながらもロックなフックを差し込んだり、印象的なシンセのメロディと女性ボーカルのクリーン。後半はただのビートダウン・デスコア。「docility」でPeeling Fleshがゲスト参加しているのは、彼らがヘヴィ方面への挑戦を忘れていないことをリスナーに訴えているように感じる。

最後に、このアルバムで最も衝撃だった楽曲「Icarus」について話したい。アルバムのエンディングを飾るこの曲が、fromjoyの未来の鍵を握っている。Loatheらオルタナティヴ/シューゲイズ・メタルコアからの影響、メロディック・ハードコア的なシリアスなメロディの感覚、バランス感覚の優れたブレイクダウン。驚くべきことに、それらに加えてアウトロにヴェイパーウェーヴが組み込まれている。思い返せば、彼らの活動の至る所にヴェイパーウェーヴ的なヴィジュアルがあった。青で統一された世界観も、もしかしたらそうした影響なのだろうか。本当にこの楽曲でアルバムを聴き終えた時の感覚が、難解な長編映画の結末を完璧に理解できないまま噛み締めているかのような、混乱にも近いものがあった。

彼らのポテンシャルは計り知れない。これまで使ってきた「計り知れない」という言葉の中で最も計り知れない…。

 

 

1位 : August Burns Red 「Death Below」

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USメタルコア・レジェンド、August Burns Redの通算10枚目となるフル・アルバム『Death Below』。 Fearless Recordsを離れ、自身の周年を祝った企画盤を経て、SharpTone Recordsとの契約を果たしている。Carson SlovakとGrant McFarlandによってプロデュースされた本作には、Killswitch EngageのボーカリストJesse Leachをはじめ、All That RemainsのJason RichardsonやErraのJ.T. Cavey、UnderoathのSpencer Chamberlainがゲストとしてそれぞれ楽曲に参加している。

2003年の結成から20年。そして記念すべき10枚目のアルバムということもあり、これまでAugust Burns Redが一切ブレることなく貫いてきたメロディック・メタルコアのプライドが感じられる仕上がりとなっていて、ゲストが参加した楽曲やアルバム全体の中でブレイクと言える部分に多少の変化があれど、後続のメタルコア・バンドたちに与えてきた影響がどんなものであるかが浮き彫りとなった、「August Burns Redの真の魅力」がたっぷりと詰め込まれている。

Killswitch EngageのJesseをフィーチャーした「Ancestry」はミュージックビデオとしてアルバムの先行シングルにもなっているキートラックで、火花を散らしながら駆け抜けていくメロディックなフレーズ。ABRブレイクダウンと形容したくなる、トレードマークのグルーヴ、Jesseというトップ・メタルコア・バンドのフロントマンの個性さえも凌駕するAugust Burns Redサウンドのオリジナリティの偉大さを感じることが出来る楽曲として、2023年メタルコア・トップトラックのひとつと言えるだろう。

「Dark Divide」やJason Richardsonをフィーチャーした「Tightrope」など他にもアルバムのキーリングと言える楽曲がトラックリストの中にひしめき合っているが、ErraのJT Caveyが参加した「The Abyss」は若干Erra寄りでありながら紛れもないAugust Burns Redなのが興味深い。彼らをAugust Burns Redたらしめている要素はもちろん、全てのパートであるが、ドラムの凄まじさは改めて評価したい。

彼らの地元を拠点とするレーベルで、Texas in Julyなどを手がけたCI Recordsのオーナーが、RNR TOURSでCarousel Kingsが来日する度に帯同してくれてAugust Burns Redの話を聞かせてくれるのですが、そのミュージシャンとしての繋がり以上に友人同士であることのつながりの強さが長年続けられる秘訣なのかもしれない、と語ってくれた。ちょうど、RNR TOURSが3年振りに海外アーティストの招聘活動を再開して、オーストラリアからNo Quarterというバンドのツアーを終えたところだが、彼らも2003年結成、今年20周年を迎えたバンドだった。バンドの大きさに差はあれど、20年バンドを続けるということの凄み、そして続けられてこれた理由をツアーを通じて感じることが出来た。互いへのリスペクトはもちろん、メンバーそれぞれ、5人の大人の集合体であるバランス感覚など、本当に長くバンドを続けるということは奇跡であると思う。

August Burns Redのようにトップ・シーンで戦い続ける重圧が加われば更に困難なことであるだろう。キャリア通算10枚目の本作から感じられることは、単にメロディック・メタルコアの素晴らしさだけではない。

グラインドコア 2023年上半期の名盤TOP10

2000年代中頃から終わりにかけて、メタルコア/デスコアを巻き込んで盛り上がったマスコア (カオティック・ハードコア)。その頃夢中になっていた See You Next Tuesday が復活したと聞いて、グラインドコアの現状を把握しようとディグっていたのが今年の頭。昔はレーベルやディストロの商品レビューを片っぱしから読んでは気になるバンドをメモして横の繋がりを把握しつつ、グラインドコア・シーンの状況を把握しようとしていたが、今ではグラインドコアに特化したYouTubeチャンネルもあり、世界に点在するDIYグラインドコア・バンドたちの拠点としてかつてのレーベルのような役割を果たしてくれているので、どんなバンドがアクティヴで、どのくらいの規模で活動しているのが直感的に把握しやすくて助かる。

グラインドコアはSpotifyなどのプラットフォームにない作品も多く、シーンの追いかけ方を工夫しないと、思わぬ名作を聴き逃してしまう可能性の高い。Spotifyで好きなバンドをフォローするだけでなく、YouTubeチャンネルやBandcamp、そして世界中のあらゆるディストロをチェックするのがいいだろう。グラインドコアと一言に言っても、デスメタルと結びつきが強かったり、ノイズ・シーンで活躍するバンドもいたり様々。自分のお気に入りのタイプは何なのかを知ってディグると面白いと思います。

アルバムのチョイスに偏りがあるかも知れませんが、グラインドコアだけでなく、あらゆるジャンルを聴いている方でも引き込まれる要素を持ち合わせた作品を何個も混ぜ込んでいますので、ぜひ全部チェックしてみてください。このリストにない素晴らしい作品についてはぜひコメントで教えてください!

 

Birdflesh 『Sickness in the North』

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スウェーデンのグラインドコア・カルト、Birdflesh の通算9枚目のフル・アルバムは、2019年の『Extreme Graveyard Tornado』以来およそ4年振りにリリースされた。Birdlfeshは、結成から30年が経過しても、大きくペースを落とすことなくライブ活動、制作活動を続けている真のベテラン。彼らを知っているグラインダーなら、彼らがファニー・グラインドをプレイし、Obscene Extreme Festivalのステージで狂喜乱舞を繰り広げる様を想像出来るだろう。このアルバムも御多分に洩れず、毒舌のユーモアをたっぷりと詰め込んだ作品になっており、純粋なグラインドコアを基調としながらもスラッシュメタル、ゴアグラインド、ハードコアパンクとごちゃ混ぜで面白い。

このアルバムを日本語のメタル・サイトであるRIFF CULTが紹介する大きな理由は、アルバム・リリースに先駆けて発表された先行シングル「Hammer Smashed Japanese Face」にある。とにかくこのくだらないミュージックビデオを見て、そして歌詞を眺めてみてもらいたい。聴き終わった時、私はこの曲をRIFF CULTで紹介しないといけないという謎の使命感に駆られてしまった。

「Tokyo, I want to go, Yokohama, hammer hammer」、「Osaka, Nakatomi Hakodated and mutilated」、「Nunchaku attack Nintendo-san Ramen rama ding dong Hammer hammer smashed」といった小学生でも思いつかないようなチープなフレーズがカミソリのようにソリッドなグラインド・リフの上で吠えている様はなんとも可笑しい。特にYokohama Hammer Hammerというアホくさいフレーズは神がかっている。こういうくだらないアイデアに何時間も費やして、しかもそれを30年続けているというだけで、グラインドコア・ファンは彼らを好きになる必要がある。いや、嫌いになんてなれないだろう。

そのほか収録曲「Chainsaw Frenzy」にはMatt Harvey (Exhumed, Gruesome)がフィーチャーされており、ゴアメタル・ファンはもちろん、Macabre, Municipal Waste, Ghoul, Immortalといったバンドのファンにもおすすめ出来る本格派キラーチューンだし、エンディングの「Alive To Lose」はジャパコアにも似たサウンドスケープで驚く。日本のグラインダーなら2023年上半期はBirdfleshを聴くべきだ。

 

Rotten Sound 『Apocalypse』

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スウェーデンのお隣 フィンランド を拠点に、Birdfleshと同じく90年代初頭から活動を続けているのが、Rotten Soundだ。前作『Abuse To Suffer』からおよそ7年振りとなる本作は、通算8枚目のアルバムで、Season of Mistから発売された。

このアルバムは20分とグラインドコア・アルバムの中でも比較的短い収録時間であるが、18曲が収録されており、一度もブレイクすることなく、暴力的ともいうべきグラインドの塊が鼓膜に襲いかかってくる。オリジナル・メンバーであるボーカリスト Keijo Niinimaa と ギタリスト Mika Aalto のプレイに注目してアルバムを何度も聴き込むと、30年という時間をかけて培ったグラインドコアの美学というものが感じられる。Keijoのスクリームはデスメタルにあるようなローの効いたものでなく、高速で叩き込まれるビートの上を煙るように、喉を振り絞るようにして咆哮される (「Digital Bliss」のアウトロのスクリームは一級品)。

「Denialist」から「Fight Back」あたり、アルバムの中間に位置するこれらの楽曲は、アルバムの中で最も「グラインドコア・バンド Rotten Sound」としての輝きを放っている。ドゥーミーなリフから急速にアクセルを踏み込みつつ、巨大なフックを生み出すストップ&ゴーを絶妙なバランスで組み込んでいく。彼らの人気作品である『Exit (Willowtip Records』や『Cycles (Spinefarm Records)」と比べると、さらに装飾を削ぎ落としたサウンドが印象的。いくつか公開されたミュージックビデオは若干チープで何度も見るものではないが、このアルバムは何度も何度も聴いて、体の内側から熱くなれる傑作だと思う。

 

See You Next Tuesday 『Distractions』

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2008年に傑作『Intervals』を発表し散り去ったミシガンのエクスペリメンタル・グラインドコア/マスコア・カルト、See You Next Tuesday がシーンにカムバック。およそ15年振りとなるアルバム『Distractions』をGood Fightからリリースしたことは、個人的に2023年グラインドコア・ニュースの中で最も印象的であったし、かなり興奮した。

というのも、メタルコアやスクリーモが爆発的な人気を誇っていた2000年代後半のメタル・シーンにおいて、カオティック・ハードコア/マスコア・シーンやブルータル・デスメタル・シーンとの境界線をシカトして猛烈な人気を誇っていたのがSee You Next Tuesdayであったからだ。Rotten Sound、その他Napalm Deathなどどいったグラインドコア・バンドとは明らかに違う異質さは、恐ろしく長い楽曲名、カラフルでグロテスクな当時のエモファッションにも近いアパレルを身にまとったヴィジュアルからも漂っていた。iwrestledabearonceなどと同列に並べられがちであるが、そのサウンドはノイズに接近するほどラウドで難解であった。

復活後もそのスタイルを崩さず、わずか34秒の「Glad to Be Unhappy」では電気ショックのようなギターのフィードバックが恐ろしいほどの存在感を放ち、ミュージックビデオにもなっている「Day in the Life of a Fool」では、まるでEvery Time I DieやThe ChariotがLSDを喰らいながらブルータル・デスメタルを5倍速でプレイしたかのような混沌を表現している。これだけ奇天烈なことをやっておいて、テクニックは素晴らしいし、しっかりグラインドしている。ややデスコアやマスコアに理解がないと興味が湧きにくいバンドかも知れないが、グラインドコアの裾をさらに拡大するべく、彼らが再びシーンに戻ってきてくれたことを歓迎したい。

 

The HIRS Collective 『We’re Still Here』

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この記事に挙げられている他のグラインドコア・バンドと比べると、The HIRS Collectiveの存在は異端と言えるだろう。LGBTQIA+コミュニティから発生したフィラデルフィアを拠点に活動するThe HIRS Collectiveは、弱者の立場にある人たちのために戦い続けている。グラインドコアと呼ばれるカテゴリーでのみ活躍するようなバンドではなく (それはサウンドにおいても同様)、その幅広い交友関係は、このアルバムに参加しているゲスト・ミュージシャンのリストを見れば明らかだろう。

1. We’re Still Here (feat. Shirley Manson & AC Sapphire)
2. Sweet Like Candy (feat. Nø Man, Thou, & Jessica Joy Mills)
3. Burn Your House Down (feat. Jessica G.Z., and Gouge Away)
4. N.O. S.I.R. (feat. Justin Pearson & Nevada Nieves)
5. Waste Not Want Not (feat. Soul Glo & Escuela Grind)
6. Public Service Announcement (feat. Dan Yemin & Dark Thoughts)
7. Judgement Night (feat. Ghösh & Jessica Joy Mills)
8. Trust The Process (feat. Frank Iero & Rosie Richeson)
9. XOXOXOXOXOX (feat. Melt-Banana)
10. You Are Not Alone (feat. Lora Mathis & The Body)
11. Apoptosis and Proliferation (feat. Nate Newton & Full Of Hell)
12. So, Anyway… (feat. Geoff Rickly & Kayla Phillips)
13. A Different Kind of Bed Death (feat. Anthony Green & Pain Chain)
14. Neila Forever (feat. Jeremy Bolm & Jordan Dreyeri)
15. Last Kind Meets Last Preist (feat. Chris #2 & Derek Zanetti)
16. Unicorn Tapestry Woven in Fire (feat. Marissa Paternoster, Damian Abraham, & Pinkwash)
17. Bringing Light and Replenishments (feat. The Punk Cellist & Sunrot)

アルバムのタイトルトラック「We’re Still Here」は、オルタナティブロック・バンド Garbage のリードシンガーであるShirley Mansonをフィーチャーした印象的な一曲。歌詞はどれも意外とシンプルというか、伝えたいことをストレートにスクリームしている感じ。My Chemical RomanceのFrank Ieroが参加している「Trust The Process」もThe HIRS Collectiveらしさ溢れるカオティックなグラインディング・チューンで飾り気なしの清々しさに溢れている。参加するどのミュージシャンも本業のバンドでは見せない怒りやメッセージをここで発散しているように感じるというか、The HIRS Collectiveとのコラボなんだから叫んでもいいでしょというような雰囲気がある。シンプルに怒りや日頃の鬱憤を発散する音楽が私たちには必要で、グラインドコアはまさにうってつけの音楽であり、現代的な社会問題をテーマにしている彼らが特別な魅力を放つのは当然だ。

 

Smallpox Aroma 『Festering Embryos of Logical Corruption』

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2006年にタイ・バンコクで結成されたSmallpox Aromaのファースト・アルバム。活動がストップする2009年まではコンスタントにスプリット作品をリリースし続けていたが、メンバーそれぞれに本業バンドがあり、そちらを優先していたようだ。ドラマーのPolwach Beokhaimookは、タイを代表するブルータル・デスメタルのドラマーで、RIFF CULTでも彼が在籍しているEcchymosisの来日公演を手掛けたことがある。

グラインドコアというにはヘヴィなデスメタル・ブレイクダウンがあったりとピュアなスタイルではないが、彼らが在籍するブルータル・デスメタルでは出来ないことをやっているし (「Quest for the Missing Head」はブルータルなハードコアパンクみたいな曲)、アクセスとブレーキーの踏み分けのそれがグラインドコアと同じだ。2023年9月にははるまげ堂の招聘によって再来日が決まっている。彼らの良さはライブだと思う、見逃さないようにしておこう。

 

Sick Sinus Syndrome 『Swarming of Sickness』

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チェコ・オストラバを拠点に2020年に結成されたSick Sinus Syndromeの2年振りセカンド・アルバム。「Rot Ridden Pathological Grindcore」を自称する彼らの才たる魅力はCarcassやGeneral Surgeryを彷彿とさせる溺死ボーカルと血管がブチ切れるほどの熱量だ。

メンバーそれぞれにこの手のシーンの名手であり、ギター/ボーカルのBilosはMalignant Tumour、ベーシストのHaryはPathologist、ドラマーのJurgenは元Ahumado Granujo。2000年代のグラインドコア/ゴアグラインドの血生臭さ溢れるSick Sinus Syndromeのサウンドには懐かしさがたっぷりと詰まっている。「Psycho Pathology Mania」のミュージックビデオは必見。

 

Warfuck 『Diptyque』

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フランス・リヨンを拠点に2011年から活動するグラインドコア・デュオ、Warfuckの5年振り通算4枚目。YouTubeにアップされている「Obscene Extreme 2013」での彼らのステージを映像で見たことがある人も多いだろう。ユニット体制でありながら、他のバンドとなんら遜色のないグラインドコアのライブステージからは、2人のグラインドコアに対する才能を感じることが出来るはずだ。

アルバムからはユニット体制であることの魅力を感じることは出来ない (メンバーがベースなどをレコーディングしている) が、Napalm Deathの王道スタイルでダイナマイトを爆発させながら突進していく。グラインドコアのピュアさが清々しいとさえ感じる作品。

 

CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP 『We Live as Ghosts』

コネチカットを拠点に活動するワンマン・ノイズグラインド・プロジェクト、CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP。このイカれたプロジェクト名を本人も「CHOP 7times」と省略して使っているのですが、検索しにくすぎて不便では……。しかしバンド名を何気なく発見し、気になって再生ボタンを押してしまったので、それが彼の策略であったならば私はまんまとその策略にはまってしまっている。そして気になったのがCHOP7timesのアーティスト写真。これは彼のBandcampをぜひ見てほしい。ノイズ・ファンなら興味をそそられるはずだ。

このアルバム、全て打ち込みで作られており、リアルの楽器を一切使用していないんだとか。こうした怒れるエナジーを楽器を使って肉体的に表現してこそグラインドコアの魅力が輝きを放つのではないかと疑問に思うが、これはこれで素晴らしく、非人力だからこそのエクストリームな感情表現を完成させているようにも感じる。人間だと叩けないスピードのブラストビートであったり、不気味な転調にハーシュノイズの雑なカットアップ。こういうのが好きな人は結構いるし、自分もその一人。非常に引き込まれるアルバム。

 

2023年の上半期も素晴らしいグラインドコア・アルバムに出会うことが出来ました。皆さんのお気に入りは何でしたか?また、このリストにない素晴らしい作品を知っていたら、ぜひコメントで教えてください!

デスコア 2023年上半期の名盤TOP10

毎日のように世界各国から素晴らしいデスコア・バンドがシングル、EP、アルバムをリリースし、絶えずコンテンツが供給過多状態にあるデスコア・シーン。この記事では、RIFF CULTが2023年1月から6月までにリリースされたデスコアのアルバム/EPの中から素晴らしい作品をピックアップし、順位付けしてアルバムレビューしました。

毎週リリースされる作品を網羅できるRIFF CULTのSpotifyプレイリスト「All New Deathcore 2023」では、ここには載っていないアーティストの楽曲を視聴することが出來、毎週20曲から30曲近いデスコアの楽曲を追加しています。ぜひフォローして下さい。

 

「All New Deathcore 2023」Spotifyプレイリスト

 

第10位 : DeadVectors 『The Gray』

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ニュージャージーのデスコア・ユニット、DeadVectors の4枚目フルレングス。2021年から活動を開始し、3枚のアルバムと7枚のEPをリリースしてきた多作なプロジェクトで、毎週のようにSpotifyのアップデートでシングルをリリースし存在感を見せつけてきた。

DeadVectors はボーカルでリリックを手掛ける Kenny Stroh 、作曲からレコーディング、ミックスからマスタリングをこなす Aaron Chaparian からなる。特にAaronはこの2年で凄まじい努力でDeadVectorsの評価を上げ、プログレッシヴ・デスコアからビートダウンに接近するスタイルまでを巧みにこなしてきた。特に「BITE (The Golden Blade)」のブレイクダウンは浮遊感たっぷりで、Djentな刻みもクオリティが高い。Born of OsirisからThe Voynich Codeなどを彷彿とさせるオリエンタルなエレメンツとディープなブレイクダウンが印象的な「Isolate // Escape」やBobbi VanetとAlex Goldをフィーチャーした「Voyage」、サックスなども盛り込みながらドラマ性たっぷりにアルバムを展開させる。

遂にオンライン・ベースのプロジェクトのレベルがここまで来たのかと感動すると共に、「打ち込みらしさ」のマニアックな面白さがなくなっていってしまうのには若干の悲しさを覚えるが、そうしたコアなリスナーは少ないのでDead Vectorsには歴史を更新して行って欲しい。

 

DeadVectors 公式ホームページ+SNS : https://linktr.ee/DeadVectors

 

 

第9位 : Left to Suffer 『Feral』

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ジョージア州アトランタのデスコア5人組、Left to Suffer のセカンド・アルバム。2020年の『A Year of Suffering』から3年。ここまでの成長を誰が想像出来たでしょうか。本作は Matt Thomas がプロデュース/ミックスを手がけ、 Joel Wanasek がマスタリングを担当。ニュー・メタルコアとデスコアを高次元で融合させ、本作でも印象的なニュー・メタルコア的アレンジが随所に組み込まれており、ミュージックビデオになっている「Artificial Anatomy」では新鋭トラップ・アーティスト Kim Dracula がフィーチャーするなど人選も完璧だ。

Left to Sufferの最も素晴らしい持ち味はドライブンなフレーズだ。「Disappoint Me」はヘッドバンギング不可避のドライブ感が楽曲を通じて貫かれており、ボーカル、リフ、個性的なドラムのフィルインなどの細やかな工夫もそのドライブ感を加速させていく。ニューメタルの香りをほのかに香らせながら、Lorna Shore、Signs of the Swarm、Archspireといったバンドらのボーカルにあるような、ショットガン・ガテラルも巧みにブレンドしているから凄い。

Fit For An AutopsyのJoe Badをフィーチャーした「Primitive Urge」はアルバムの中でもスタンダードなデスコアに近いスタイルでありながら、不気味に燻らせるノイズ、シンフォニックなアレンジが旨みを引き立たせる。じっくりと聴き込めば聴き込むほどにLeft to Sufferというバンドの持つ驚異的なポテンシャルを感じることが出来るだろう。

 

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第8位 : Distant 『Heritage』

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2010年代中期から活躍するオランダ出身のデスコア・バンド、Distant のサード・アルバム。「ブラッケンド・デスコア」の新鋭として Unique Leader Records から2枚のアルバムをリリース、その後 Century Media Records への電撃移籍を発表して、本作を完成させた。

今年1月に公開され大きな話題となった楽曲「Argent Justice」には、フィーチャリング・ゲストとしてSuicide Silence, Emmure, Abbie Falls, Acranius, AngelMaker, Bodysnatcher, Cabal, Carcosa, Crown Magnetar, Paleface, ten56., Worm Shepherdの名前が挙げられている。これだけのアーティストがこの1曲に参加していることでSpotifyでは100万回再生を記録するなどDistantの名を高域のメタル・シーンへ広めるきっかけとなった。彼らの代名詞とも言えるダークなスケールを広大に広げながら疾走するブラッケンド・デスコアに個性的なボーカルが次々とフィーチャーされていく様は、参加したミュージシャンのファンであれば引き込まれ、楽しめるはずだ。

この楽曲はアルバムのキーであることは間違いないが、Lorna ShoreのWill Ramosをフィーチャーしたタイトル・トラック「Heritage」も「Argent Justice」と双璧を成すキラーチューンだ。この曲はWill Ramosのパートはもちろん素晴らしいが、Thy Art is MurderやCabalなどを彷彿とさせるブレイクダウンのヘヴィネスが素晴らしい。この曲のブレイクダウン、そしてブラッケンドなファスト・パートの接続などは後続にも影響を与えるはずだ。間違いなくアルバムのハイライト。

Distant周辺は高いクオリティを持つバンドが多く、頭一つ抜きん出た存在へと成長するには更に何かが必要になってくる。その何かが何であるか、まだ誰も知らないがおそらくDistantが見つけるはずだ。今後に期待。

 

Distant 公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/distantofficial

 

 

第7位 : Sail’s End 『Live And Die』

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テキサスとニューヨークを拠点に活動するヘヴィ・メタルコア/デスコア・バンド、Sail’s End が2023年2月にリリースしたこのEPは、あまりにも衝撃的だった。ブレイクダウンYouTuber Ohrion Reacts でも取り上げられ、相当唸らせていたし、ローカルのリアクションYouTuberも彼らのビデオを取り上げていた。

Before I TurnやGlass Crown、Brand of SacrificeにInvent Animate、さらにはWage Warといったソリッド・メタルコア〜ヘヴィ・デスコアから多大なインスパイアを受けたそのサウンドは、とにかく地鳴りのように強烈なブレイクダウンを炸裂させる為に、数多くのエレメンツを散りばめられている。この作品を聴いている時には思い浮かばなかったが、のちに発表されたいくつかのシングルも合わせて見れば、Prompts に非常に近いヴァイブスを感じる。モッシュに特化したフレーズに絡みつくニューメタルコアのエレメンツ、Oceans Ate Alaskaを彷彿とさせるドラムパターンはまさに、という感じだ。

セルフ・プロモーションであること、加えてメンバーのヴィジュアルからかなりナードな気質が漂いまくっているところに親近感を覚えるリスナーも多いだろうが、もしかしたら2023年後半、さっぱり垢抜けたトレンド・バンドに成長している可能性もなくはない。

 

Sail’s End 公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/SailsEnd

 

 

第6位 : Defamed 『Blackblood』

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イタリア・ミラノのブラッケンド・デスコア・バンド、Defamed の6曲入りEP。2022年4月に公開された先行シングル「Crystal Prison」の衝撃は凄まじく、悪魔が乗り移ったかのようなデモニックなサウンドスケープが他のブラッケンド・デスコア勢を圧倒、激しく繰り返されるブレイクダウンとブラストビートの転調は、まさに静寂と躍動感の連続。この頃、Lorna Shore の「To The Hellfire」の衝撃を受け、世界各地でブラッケンド勢が軒並み刺激的なトラックの制作を追求していたこともあり、Defamedの存在はやや霞んでいたように思う。

このEP、6曲入りであるが「The Serpent」、「Divinities」、「The Dancer」とそれぞれミュージックビデオになっており、いささかリードシングル集と言った趣がある。作品としてのコンセプチュアルなまとまりというより、個々の楽曲で物語が完結しているような仕上がりなので、とっつきやすい作品であると思う。ブラッケンド・デスコアの現在地として最先端の作品である「Blackblood」、ブラッケンド・デスコア・シーンに次の変化が訪れる前にチェックしておくべし。

 

Defamed公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/wearedefamed

 

 

第5位 : Brand of Sacrifice 『Between Death and Dreams』

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カナダ/アメリカを拠点に活動するヘヴィ・デスコア・バンド、Brand of Sacrifice の先行シングルとして公開されていた「Exodus」、「Dynasty」を含む4曲入りの作品。収録曲全ての楽曲のミュージックビデオが公開されている。

この作品の中で最も印象的な楽曲は「Dynasty」だろう。冒頭、痺れるようなエレクトロニックな音色の中に「〜があっても、生き残るために戦います」という日本語の女性の声が組み込まれている。このフレーズはイントロだけでなく、楽曲の転調にも差し込まれ、この女性の声は随所でシンフォニックでオリエンタルなBrand of Sacrificeのスタイルを表現する為に出現する。

「Dynasty」について、フロントマンのカイルは、「今年の僕にとっての大きな挑戦は、絶望や怒りだけでなく、感情のスペクトルの異なる要素を音楽と歌詞に取り入れることだったんだ。この曲を通して、個人的なストーリーを表現したかった。恐怖を直視しながら個人的な障害を克服することに挑戦し、BRAND OF SACRIFICE全体と同じように、絶対に止められない力になることを歌っている」とコメントしている。また、ファンの反応はBorn of Osirisを想起させるスタイルだというものが多く、バンドが「テクニカルでヘヴィなデスコア」だけでなく、歌詞やサウンド面において非常に多くの挑戦をしていることが伺える。決してデスコア・シーンだけで評価されるようなバンドではなく、例えばこの作品のタイトル・トラックではThe Word AliveやWe Came As Romansにも接近するようなクリーンパートがキーリングになっている。

この先、Brand of Sacrificeは更に深化し、「ヘヴィなデスコア」から脱却していくかもしれないが、彼らの核となるもの、この先も変わらないものがこの4曲で浮き彫りとなっているように感じる。

 

Brand of Sacrifice公式ホームページ : https://brandofsacrifice.com/

 

 

第4位 : The Acacia Strain『Failure Will Follow』/ 『Step Into The Light』

『Failure Will Follow』

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『Step Into The Light』

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マサチューセッツ州を拠点に活動するデスコア/ハードコア・バンド、The Acacia Strainが異なる2枚のアルバム『Failure Will Follow』と『Step Into The Light』をそれぞれRise Recordsからリリース。この2枚はダブル・アルバムではなく、全く異なるコンセプト、そしてソングライティングのプロセスを経て製作されたものである。

本人たちは「デスコア」というレッテルを貼られることを嫌がっているようだが、図らずも彼らはデスコアのレジェンドだ。ハードコアとメタルをクロスオーバーさせる中で、ソリッドでバウンシーなモッシュ・リフを追求し続け、日夜ツアーに明け暮れ、その切れ味を磨き続けてきた。多くのThe Acacia Strainのファンが期待する作風に仕上がっているのが、『Step Into The Light』で、殺気立ったアトモスフィアが立ち込める中、黙々とギロチンのようなリフで切り刻んでいく。決して譜面に起こすことの出来ない、モッシュ・スピリットには感服させられる。

『Failure Will Follow』は、バイオレントなモッシュコアで培った至高のヘヴィネスを違った形で表現することにフォーカス。全3曲入り、どれも10分越えの大曲で「bog walker」に至っては17分という長尺曲。このくらいのボリュームだと、なんとなく楽曲の雰囲気はドゥーミーなものであると想像出来るが、しっかりThe Acacia Strainとわかるトレードマークも豊富に組み込まれており、無理矢理ジャンルとして形容するならば「ドゥーミー・モッシュコア」とか「ブルータル・ドゥーム・メタル」といったところだろうか。このアルバムでツアーしても間違いなくフロアは殺戮現場と化すに違いない。それも精神的に狂気をまとった、そんな危なさがある。

しばしばThe Acacia Strainのカタログを見渡すと、ドゥーミーなアプローチを見せることもあった。ただ今回のようにアルバムとしてとなると、キャリア初だ。結成から20年を超えても、まだまだヘヴィを追求し続けるThe Acacia Strainに脱帽。

 

The Acacia Strain 公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/theacaciastrain

 

 

第3位 : DEVILOOF 『DAMNED』

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ヴィジュアル系メタル・バンド、DEVILOOFのメジャーデビュー作。国内メタルコア・シーンをウォッチしていれば、ヴィジュアル系を通過していなくてもDEVILOOFの名前を耳にしたことがあるだろう。ライブを体感したことがあるのであれば、彼らのデスコア・バンドとしての高いポテンシャルに衝撃を受けたに違いない。

『DAMNED』はストレートなデスコア・アルバムとは訳が違う。もちろんベースにあるのはデスコアであることは間違いないが、細部に施されたアレンジや楽曲構成に驚くべきクリエイティヴィティが隠されている。「Damn」は、デスコアにニューメタルコアのエレメンツをクロスオーバーさせながら、展開の妙を持ってして楽曲を展開させていく。予想不可能な展開に引き込まれた先には、メジャーシーンとは縁遠いスラミング・ブルータルデスメタル/スラミング・ビートダウンの地獄のブレイクダウン/ビートダウンが待ち構えているのだから驚きだ。リフの鋭さでいったらExtermination Dismembermentに匹敵するレベルにあると思う。

ソングライティングにおける実験精神の高さに驚愕する楽曲がその後も続き、エンディングの「False Self」は「Damned」以上に独創的な楽曲で、ミュージックビデオも必見。DEVILOOFのミュージシャンとしての実直さを感じると共に、メタル、特にデスコアの奥深さを感じることの出来る作品だ。

 

DEVILOOF Twitter : https://twitter.com/_Deviloof_

DEVILOOF Instagram : https://www.instagram.com/official_deviloof/

 

 

第2位 : Chelsea Grin 『Suffer in Heaven』

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USデスコア・バンド、Chelsea Grin がニュー・アルバム『Suffer in Heaven』をリリースしました。2022年にリリースされた『Suffer in Hell』に次ぐダブル・アルバムの第2弾である。

Chelsea Grinは、2010年にアルバム『Desolation of Eden』でシーンに登場すると、それまでのデスコアをさらにヘヴィなものへとアップデート。2010年代中期にかけて盛り上がったダウンテンポ・スタイルのデスコアの礎として現代でもその存在は特別なものだ。

そんなChelsea Grinにとって2022年の『Suffer in Hell』、2023年の『Suffer in Heaven』のダブル・アルバムは、キーだったメンバーが抜け、新たな布陣で制作されている。2010年代のデスコア・シーンのキーとして活躍したバンドのフロントマンであった Alex Koehler が、2018年にアルコール依存症を含むメンタルヘルスの問題によってバンドを脱退、Alexと同様、ドラム/ボーカルとしてバンドの中心メンバーとして存在感を見せつけていた Pablo Viveros が一時的にバンドを離脱している。Chelsea Grinサウンドの2つの重要な個性を失ったものの、この『Suffer in Hell』、『Suffer in Heaven』は様々なメディアで高い評価を受けている。

高い評価を受けている理由のひとつに新たに加入したTom Barberが現代メタル、特にデスコア、メタルコア・シーンにおいて高いカリスマ性を持っていることが挙げられる。TomはChelsea Grinの他にニューメタルコア・プロジェクトDarko US のメンバーであり、過去には Lorna Shore にも在籍していたシンガー。Alexとはそのキャラクターは異なるが、Tom参加後初のアルバム『Eternal Nightmare』でChelsea Grinサウンドとの親和性の高さを見せつけた。特にブラストビート・パートなどを取り入れ、ブラッケンド・デスコアにも近いサウンドにおけるTomのボーカルのフィット感は素晴らしい。Pablo Viverosの穴を埋めるセッション・ドラマーには、Glass HandsのNathan Pearsonが参加しており、こちらも文句なしと言えるだろう。

『Suffer in Heaven』は『Suffer in Hell』よりも、これまでのChelsea Grinが鳴らし続けてきた独自性を随所に散りばめつつ、Tomを新しいChelsea Grinのフロントマンとして迎え、新時代のChelsea Grinを作っていくという気概を感じさせてくれる。ミュージックビデオにもなっている「Fathomless Maw」はどこか「Playing with Fire」を彷彿とさせるキャッチーさを持ちながら、Tomのスクリームを生かしたファストなフレーズをエンディングに差し込んでいる。「Yhorm The Giant」から「Sing To The Grave」の流れは、『Suffer in Hell』から『Suffer in Heaven』の流れの中で最もエキサイティングな高揚感に溢れている。

2023年のChelsea Grinに溢れている空気感が明るくて良い。Tom Barberのカリスマ性がこのバンドとして発揮されるのはとても楽しみだし、Darko USとの棲み分けをどうしていくかをファンに注視させることは、デスコアとニューメタルコアの未来にとっても明るい。

 

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第1位 : Suicide Silence 『Remember… You Must Die』

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『Remember… You Must Die』は、USデスコア・ベテラン、Suicide Silence が通算7枚目のスタジオ・アルバムで、Century Media Recordsからのリリース。

近年のSuicide Silenceと言えば、OGスタイルへとじわじわ回帰してきたにも関わらず、黄金期のカリスマMitch亡き後は正当に評価されてこなかった。Mitchの死後、Eddieへとボーカルが代わりリリースされた『You Can’t Stop Me』はファンがMitchの幻影を追いかけ、Suicide Silenceの新たなスタートを祝福する余裕がなかったし、その後リリースされたセルフ・タイトル『Suicide Silence』はデスコアから脱却しニューメタルへと舵をきったことで批判を食らった。もう6年も前のことなんだけど、やっぱりSuicide Silence、特にMitchのファンは失望してしまい以降のリリースをちゃんと聴いてないというリスナーも多いはず。これは海外のレビューをみてても感じたことだ。

Eddieが加入して、今年で10年になる。Suicide Silenceが始まってMitchがなくなるまで10年なので、在籍年数が並んだ。それでもまだ、EddieがSuicide Silenceのフロントにいることに違和感を感じてしまう人も多いかもしれない。前作『Become the Hunter』からSuicide SilenceはOGスタイルのデスコアへと戻り始め、本作『Remember… You Must Die』では完全に『No Time to Bleed』期のスタイルへと回帰した。「Mitchの幻影ばかり追いかけていないで、現在進行形のSuicide Silenceを追いかけろ」と、心から言えなかったのは今日まで。これからは今のSuicide Silenceを心から応援したいと思うし、好きだと言いたい。言うべきだ。

アルバム・タイトルからして、本作はオープニングから異常な殺気が漂う。2022年9月に先行シングルとしてアルバムのタイトル・トラック「You Must Die」はこれぞSuicide Silenceと言うべき完璧な楽曲で、墓場で演奏するメンバーが「You Must Die」、「Fuck Your Life」と叫びながら老化して最後に全員死ぬというディレクションがシンプルで良い。アメリカ人っぽいし、こういう無茶苦茶な思想とか投げやりなところがデスコアのコアなエナジーだと思う。

もし誰かがSuicide Silenceはもう過去のバンドだと言っていたら、このアルバムを聴いていないと言えるだろう、話を聞かなくていい。このミュージックビデオのコメントに書き込まれている「Mitchがこれを聴いたら喜ぶだろう」と言うのが、このアルバムの全てだ。

アルバム・レビュー : Chelsea Grin 『Suffer In Heaven』

 

USデスコア・バンド、Chelsea Grin がニュー・アルバム『Suffer in Heaven』をリリースしました。2022年にリリースされた『Suffer in Hell』に次ぐダブル・アルバムの第2弾。

 

 

アルバムレビュー : Chelsea Grin『Suffer In Hell』

 

Chelsea Grinは、2010年にアルバム『Desolation of Eden』でシーンに登場すると、それまでのデスコアをさらにヘヴィなものへとアップデート。2010年代中期にかけて盛り上がったダウンテンポ・スタイルのデスコアの礎として現代でもその存在は特別なものだ。

 

 

そんなChelsea Grinにとって2022年の『Suffer in Hell』、2023年の『Suffer in Heaven』のダブル・アルバムは、キーだったメンバーが抜け、新たな布陣で制作されている。2010年代のデスコア・シーンのキーとして活躍したバンドのフロントマンであったAlex Koehlerが、2018年にアルコール依存症を含むメンタルヘルスの問題によってバンドを脱退、Alexと同様、ドラム/ボーカルとしてバンドの中心メンバーとして存在感を見せつけていたPablo Viverosが一時的にバンドを離脱している。Chelsea Grinサウンドの2つの重要な個性を失ったものの、この『Suffer in Hell』、『Suffer in Heaven』は様々なメディアで高い評価を受けている。

 

 

高い評価を受けている理由のひとつに新たに加入したTom Barberが現代メタル、特にデスコア、メタルコア・シーンにおいて高いカリスマ性を持っていることが挙げられる。TomはChelsea Grinの他にニューメタルコア・プロジェクトDarko USのメンバーであり、過去にはLorna Shoreにも在籍していたシンガー。Alexとはそのキャラクターは異なるが、Tom参加後初のアルバム『Eternal Nightmare』でChelsea Grinサウンドとの親和性の高さを見せつけた。特にブラストビート・パートなどを取り入れ、ブラッケンド・デスコアにも近いサウンドにおけるTomのボーカルのフィット感は素晴らしい。Pablo Viverosの穴を埋めるセッション・ドラマーには、Glass HandsのNathan Pearsonが参加しており、こちらも文句なしと言えるだろう。

 

 

『Suffer in Heaven』は『Suffer in Hell』よりも、これまでのChelsea Grinが鳴らし続けてきた独自性を随所に散りばめつつ、Tomを新しいChelsea Grinのフロントマンとして迎え、新時代のChelsea Grinを作っていくという気概を感じさせてくれる。ミュージックビデオにもなっている「Fathomless Maw」はどこか「Playing with Fire」を彷彿とさせるキャッチーさを持ちながら、Tomのスクリームを生かしたファストなフレーズをエンディングに差し込んでいる。「Yhorm The Giant」から「Sing To The Grave」の流れは、『Suffer in Hell』から『Suffer in Heaven』の流れの中で最もエキサイティングな高揚感に溢れている。

 

 

 

 

2023年のChelsea Grinに溢れている空気感が明るくて良い。Tom Barberのカリスマ性がこのバンドとして発揮されるのはとても楽しみだし、Darko USとの棲み分けをどうしていくかをファンに注視させることは、デスコアとニューメタルコアの未来にとっても明るい。

 

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メタルコア 2022年下半期のベスト・アルバム (後編)

2022年にリリースされたメタルコアの作品の中からRIFF CULTが気に入ったものを年間ベスト・アルバムとしてアルバムレビューしました。素晴らしい作品が多く、前編、後編に分けて記事を書いていますので、上半期のレビューと合わせてチェックしてください (リンクは記事の最後に掲載しています)。今回は後編!

 

RIFF CULT Spotify プレイリスト : https://open.spotify.com/playlist/280unJx37YbHbRvPDlZxPi?si=3d0db24716c648cb

RIFF CULT YouTube プレイリスト : https://www.youtube.com/playlist?list=PLLijetcgxQ4PZZMlhlpExxiNrr5wSYBjj

 

 

The Devil Wears Prada – Color Decay

メタルコアとスクリーモが混ざり合い、新しいスタイルを形成し始めた2000年代中期から後期にかけて、The Devil Wears Pradaはシーンの代表的な存在であった。通算8枚目のアルバムとなる『Color Decay』まで次第にダークな世界観を推し進め、それはメタルコア・シーンの発展、トレンドとは全く別の路線として独自性を失うことなくそのサウンドに磨きをかけてきた。『Color Decay』は緊張感こそピンと張り詰めているものの、「Salt」や「Sacrifice」といった初期The Devil Wears Pradaの面影が見え隠れするキャッチーなキラー・チューンを中心に、メロディックな楽曲で構成されている。この手のサウンドのオリジネイターでありながら、簡単にフォロワーを生み出さない創造力は神々しいMike Hranicaの存在感が放つ圧倒的なパワー故。

 

 

 

Parkway Drive – Darker Still

過去6作品全てゴールド・アルバムを獲得し、最大級のメタルの祭典「WACKEN」でヘッドライナーを務めるなど、シーンの頂点へと昇り詰めたParkway Drive。そんな彼らが7作目にして「これがバンドが20年間目指してきたパークウェイ・ドライヴだ」と言い切る本作は2022年を象徴するメタル・アルバムとなった。

 

アルバム発売前にリリースされたアルバムのタイトルトラック「Darker Still」は、これまでのパークウェイ・ドライヴとは一線を画すもので、キャリアを象徴するようなパフォーマンスが随所に見られる、壮大なスケール感のある曲に仕上がっている。口笛とアコースティック・ギターで始ま李、ギターソロ、幽玄なコーラスとストリングス、そしてマッコールの驚異的なヴォーカルを通して、リスナーを圧倒的な旅へと誘う。マッコールはこの曲について次のようにコメントしている。

 

「愛。時間。死。我々の存在を構成する偉大な決定的要素。この曲は最もシンプルな人間の音から始まり、これらの要素を表現しながら音楽の旅が成長し、クレッシェンドに達した後、避けられない旅の結末に直面する。夜は暗くなる…さらに暗くなる。」ウィンストン・マッコールの家のキッチンには冷蔵庫があり、その片面にはトム・ウェイツの言葉が飾られている。「美しい旋律が恐怖を語る。」マッコールはこの言葉は自分自身をよく表していると言う…… 続きはこちら (https://riffcult.net/2022/09/09/parkway_drive-darker_still/)

 

 

 

Boundaries – Burying Brightness

Peripheryが運営する3DOT Recordingsへ移籍しリリースされたセカンド・アルバム。鬱屈したメンタルヘルスをテーマに混沌とした頭の中のモヤモヤを描くようにして、予測不可能なグルーヴを鋭いハードコア・リフで切り開いていく。モダン・メタルコアの輝きを放つ「This Is What It’s Like」、デスコアに接近する「My Body Is A Cage」、エンディングを飾る「The Tower」ではDeftonesばりの瞑想ポストメタルを奏で、メタルコア/ハードコアに留まらない魅力を醸し出している。

 

 

 

Orthodox – Learning To Dissolve

テネシー州ナッシュビルを拠点に活動するメタルコア・バンド、OrthodoxのCentury Media Recordsとの契約後、初となるアルバム。本作『Learning To Dissolve』は、2017年のファースト・アルバム『Sounds of Loss」から始まった流れに句読点を打つような作品。結成当初からORTHODOXは、ボーカリストAdam Easterlingの鈍重でKornのジョナサン・デイビス風のシャウトSlipknotを彷彿とさせるリフを混ぜ合わせ存在感を見せつけてきた。しかし、Knocked LooseやVein.FMのサウンド同胞のように、90年代/00年代の影響がある一方で、ORTHODOXは単に影響を受けたものに敬意を表しているのではなく、それを超えてくる。

 

「俺たちはハードコアを聴いて育ったわけじゃない。俺たちはLinkin ParkSystem of a Downのようなバンドを聴いて育ったんだ」。とAdamは話す。『Learning to Dissolve』では、それらの影響が、アルバムのオープニング・トラックである「Feel It Linger」から、クローズの「Voice in The Choir」のパーソナルでオーラルなメルトダウンまでたっぷりと練り込まれてある。

 

 

 

Architects – the classic symptoms of a broken spirit

格式高いRoyal Albert HallでのライブやAbbey Road Studiosでの録音音源のリリースなど多忙を極めていたArchitectsであったが、同年、通算10枚目となる本作をリリースした。前作『For Those That Wish To Exist』を足掛かりとし、メタルコアからヘヴィロックへと変貌を遂げたことには賛否両論あるものの、バンドのトレードマークとも言えるメロディックなシャウトは健在。大舞台での熱演が目に浮かぶ「deep fake」や「when we were young」といった新時代のアンセムは少し先のロックの未来を見るようだ。

 

 

 

 

Electric Callboy – TEKKNO

本作は2019年にリリースしたアルバム『Rehab』以来の新作で、Eskimo Callboyから改名後、初のアルバムとなる。「Hypa Hypa」「Pump It」が大ヒット、Eskimo Callboyは瞬く間にメタル・シーンを飛び出しグローバルなバンドへと成長した。2021年12月、彼らの名が広く知れ渡るようになったことをきっかけに、バンドは不快な歌詞を持つ過去曲をプラットフォームから削除、さらに「Eskimo」という単語がアラスカのイヌイットやユピックの人々に対する蔑称と捉えられるため、「Electric Callboy」へと改名することを発表した。ここに至るまで、バンドはイヌイットやユピックに関する歴史をファンと共に学ぶようYouTubeで動画を発信するなどした……。 続きはこちら (https://riffcult.net/2022/09/09/electric_callboy-tekkno/)

 

 

 

Fire From The Gods – Soul Revolution

Better Noiseへと移籍。ニューメタルコアの盛り上がりとは別にFire from the Godsは古き良きニューメタル/ラップメタルの攻撃性を現代的にアップデートさせた。自由で無駄がなく、それでいて豊かに洗練されたクリーン・ヴォイス、Rage Against the Machineを彷彿とさせるひりついた緊張感のあるフロウが醸し出す伸縮性のあるAJのボーカルラインは唯一無二。「Soul Revolution」といったアグレッシヴなキラーチューンから「Be Free」、「Love is Dangerous」といったニューメタル・バラードまでバンドの持てる全てを注ぎ込んだ一枚。

 

 

 

HOSTAGE – MEMENTO MORI

2018年ドイツ・アーヘンで結成。ボーカリストNoah、ギター/ボーカルDavid、ギタリストNico、ドラマーMarvinの4人編成で本作がデビュー・アルバムとなる。ALAZKAを筆頭にメロディック・ハードコアやポストハードコアの風合いがさりげない存在感を放ち、しなやかに弾むメロディックなリフと伸びやかなクリーン・ヴォイスが印象的。ソリッドなヘヴィチューン「Fantasy」やANNISOKAYのChristophをフィーチャーした「Game Over」といったコラボトラックもモダンさと素朴さのバランス感覚に優れており、アルバムに充実した印象を与える。

 

 

 

 

Love Is Noise – Euphoria, Where Were You?

FEVER333Nova Twinsが所属する333 Wreckordsのニューカマーとして表せたLove Is Noise。Loathe以降、イングランドのメタルコアの新潮流となったシューゲイズ・メタルコアの新鋭としてこの作品の芸術性は後続のバンドに幾つものヒントを与えている。まるで目に見えない電波に触れたかのようにしびれ、めまいを起こすほどのうねりを見せるリフがノイズに飲み込まれていくかのような「Movement」はシューゲイズの幻惑的な光も落とし込んでいく。

 

 

 

2022年の年間ベスト・アルバム記事

メタルコア (全期 前編)

メタルコア (全期 後編)

デスコア (上半期)

デスコア (下半期)

スラミング・ブルータル・デスメタル (上半期)

スラミング・ブルータル・デスメタル (下半期)

ゴアグラインド

ブルータル・デスメタル (上半期)

ブルータル・デスメタル (下半期 前編)

ブルータル・デスメタル (下半期 後編)

テクニカル・デスメタル (全期 前編)

テクニカル・デスメタル (全期 後編)

 

メタルコア 2022年下半期のベスト・アルバム (前編)

2022年にリリースされたメタルコアの作品の中からRIFF CULTが気に入ったものを年間ベスト・アルバムとしてアルバムレビューしました。素晴らしい作品が多く、前編、後編に分けて記事を書いていますので、上半期のレビューと合わせてチェックしてください (リンクは記事の最後に掲載しています)

 

RIFF CULT Spotify プレイリスト : https://open.spotify.com/playlist/280unJx37YbHbRvPDlZxPi?si=3d0db24716c648cb

RIFF CULT YouTube プレイリスト : https://www.youtube.com/playlist?list=PLLijetcgxQ4PZZMlhlpExxiNrr5wSYBjj

 

 

We Came As Romans – Darkbloom

5年振り通算6枚目フル。2018年にWe Came As Romansのクリーンボーカルを務めたKyle Pavoneが急逝。新たなシンガーを迎えることはなく、これまでスクリームを担当してきたDaveがクリーンパートを兼任する形で制作が行われた。Kyleへのトリビュート・アルバムであるものの、そのサウンドに悲壮感はなく、むしろ現代的なエディットを施し、攻撃的なリフのうねるようなグルーヴが明暗表現を加速させている。Caleb Shomoをフィーチャーした「Black Hole」ほか暗い色彩の中に輝きを映し出す楽曲がひしめき、歩みを止めないバンドの真摯な気持ちを表している。

 

 

 

Miss May I – Curse Of Existence

Miss May Iは名作『Monument』以降、メタルコア史に自ら打ち立てた金字塔を越えられていないというコアなファンからの声もちらほらあった (といってもセールス的にはずっと成功してきた)。個人的にはそうは思わないが、『Monument』が今後数十年に渡り語り継がれていくアルバムであること、そして彼らがシーンに与えたインパクトが強烈だったことは間違いない。そんな『Monument』に匹敵する凄まじいサウンドで、2022年にMiss May Iは再びシーンに戻り、そして今バンド史上最高傑作と言える『Curse Of Existence』を発表した。

 

Miss May I にファンが求めるのは、ソリッド&メロディックなリフアンセム的なコーラス、そして強烈なブレイクダウンといったところだろうか。オープニングを飾る「A Smile That Does Not Exist」を聴けば、すぐにこのアルバムの力強さに圧倒されるはずだ。ブラストビートにシュレッダーリフ、Leviのスクリームが炸裂していく。続く先行シングルとしてリリースされた「Earth Shaker」や「Bleed Together」とファストなキラーチューンが立て続けに繰り広げられていく。特にこの2曲のブレイクダウンがアルバムのハイライトとも言えるパワーがある。シュレッドなギターと印象的なコーラスのハーモニー、クラシックなメタルコア・ブレイクダウンを搭載した「Into Oblivion」は、個人的にアルバムのベスト・トラックで、Bring Me The HorizonArchitectsなどに匹敵するスタジアム・ロック的なスケールがたまらない。思わず「INTOOO OBLIVIOOON!!!」と叫ばずにはいられないはず。

 

 

正直言って、全曲キラーチューン過ぎる。ミュージックビデオとして先に公開されている「Free Fall」、「Unconquered」は余裕があれば歌詞にも注目して欲しい。「Free Fall」はインポスター症候群について歌った曲であり、恐怖心を押し殺し飛躍を遂げた人たちのアンセムだ。インポスター症候群とは、自分の能力や実績を認められない状態を指し、仕事やプライベートを問わず成功していても、「これは自分の能力や実力ではなく、運が良かっただけ」「周囲のサポートがあったからにすぎない」と思い込んでしまい、自分の力を信じられない状態に陥っている心理傾向のこと。フレーズがまるで会話のように掛け合いながら展開していく。完璧なエンディングを聴き終えた後、『Curse of Existence』がMiss May Iの過去最高傑作だ!と思うリスナーは多いはずだ。久々にモダンなメタルコア・アルバムでガツンとくる作品だったと思う。彼らは「あの頃のバンド」ではなく、永遠のメタルコア・ヒーローだ。

 

 

Varials – Scars For You To Remember

3年振りとなるサード・アルバム。これまでアルバム毎に異なるスタイルを提示してきたVarials、本作はニューメタル/インダストリアル・メタルのエレメンツをスタイリッシュにメタルコア/ハードコアに注入している。ミュージックビデオになっている「.50」はSlipknotから細胞分裂したかのような強靭なグルーヴを見せ、ほとんどマシンガンとも言える鋭利なドラミングが「Phantom Power」ではドラムンベースに置き換わる瞬間も。鋭さを追求しメタルコアの造形表現を極めつつも、これまでの実験的なアイデアもVarialsらしさの強いアクセントとなっている。

 

 

 

I Prevail – TRUE POWER

3年振りとなるサード・アルバム。前作『Trauma』はグラミー賞2部門にノミネートされ、シーンを牽引するアリーナ・バンドへと成長を遂げた。I Prevailの基本的スタイルとも言えるエレガントに装飾されたシンセサイザー/オーケストレーションとハードロックに接近しながらソリッドに刻み込まれるリフ、そしてBrianとEricによるツインボーカルの圧倒的な存在感は本作でも聴くことが出来、Beartoothに代表されるようなロックンロールのフックが何より素晴らしい。「Body Bag」といったヘヴィに振り切った楽曲からスタジアム級のスケールを誇る「Bad Things」ほか、彼らの現在地が分かる一枚。

 

 

 

Oceans Ate Alaska – Disparity

前作『Hikari』から5年、2016年に脱退したオリジナル・ボーカリストJames Harrisonが2020年に復帰し制作された通算3枚目フルレングス。シングル「Metamorph」、「New Dawn」、「Nova」はもちろん、I, PrevailのEric Vanlerbergheをフィーチャーした楽曲「Dead Behind The Eyes」など、期待を裏切らない楽曲がたっぷりと収録されている。正直、Oceans Ate Alaskaにとっても、我々リスナーにとっても、『Hikari』から5年という時間はとても長かった。それは単純な長さに加えて、パンデミックなどによるダメージも大きい。センセーショナルなFearless Recordsからデビューであったからこそ、「次、いったいどんな作品を仕上げてくるのか」という高まった期待が一度落ち着いてしまうと、なかなかそれを超えてくる作品は出てこない。

 

しかしどうだろう、今このレビューを読みながら『Disparity』を聴いている方は、オープニング・トラックの「Paradigm」を再生した瞬間、Oceans Ate Alaskaに期待するものを得られた喜びを噛み締めていることだろう。5年をかけて作り上げたと言われれば納得 (おそらくそれよりももっと短期間で完成させられている) の作品で、個人的には楽曲「Sol」の完成度の高さには驚いた。アルバム収録曲の総時間は30分。そこに詰め込まれたOceans Ate Alaskaらしいアイデア、ドラマーChrisの卓越されたドラムプレイ。たとえ次のアルバムがさらに5年後だとしても、5年間聴き続けても飽きないような作品になっているように思う。じっくりじっくりと聴き返したい作品。

 

 

 

He Is Legend – Endless Hallway

通算7枚目となるフル・アルバム、先行シングルとして発表された「THE PROWLER」や「LIFELESS LEMONADE」といった楽曲は現代的なメタルコアのエッジ、ヘヴィネスと言う部分に溢れており、これまでのHe is Legendファンは驚いたことだろう。そして「He is Legendってこんなに凄いのか」と名前だけ知っていたようなリスナーの興味も引いたはずだ。彼らは日本において、そして世界的においてもその実力が高く評価されてこなかった。いわゆる過小評価バンドだった。ポテンシャルは十分で芸術的な存在感が「キャッチー」と言うキーとはやや離れていたからではないかと考える。このアルバムは彼らが長いキャリアの中で培ってきた芸術的なカオスも見せる快作、コアなファンにこそ聴いてほしい一枚。

 

 

 

Fit For A King – The Hell We Create

通算7枚目フル。ドラムにTrey Celayaが加入してから初となる作品は、プロデューサーにDrew Fulkを起用してレコーディングされた。コロナウイルスによるパンデミックにより生じた精神的な葛藤を描いた「Falling Through the Sky」など、アーティスティックな歌詞世界も魅力だ。オープニングを飾るタイトルトラック「The Hell We Create」に代表されるように、バウンシーなグルーヴはそのままにメロディックメタルコアへとそのスタイルを微細に変化。更なる高みを目指すFit For A Kingの野心溢れる仕上がり。

 

 

 

Stray From The Path – Euthanasia

2019年にリリースした前作『Internal Atomics』から3年振りとなる本作は、話題となった先行シングル「Guillotine」を含む強烈な全10曲入りだ。Stray From The Pathのメンバーは、「バンドは常に、抑圧に対して発言する場として自分たちの歌を使ってきた」と言う。アメリカの公安にまつわる多くの問題、特に警察活動への疑問や怒りをメッセージに長年ソングライティングを続けてきたバンドは、こうした問題が解決される兆しの見えない混沌とした現世への怒りの高まりに呼応するように、その勢いを加速させている。

 

ギロチンをバックにプレイするStray From The Pathが印象的な「Guillotine」のミュージックビデオ。結成から20年以上が経過し、積み上げてきたバンド・アンサンブルはまるで生き物のようにグルーヴィだ。ニューメタルとハードコア、そしてラップが巧みにクロスオーバー、音楽的にも現代のメタルコア・シーンにおいて彼らの存在は重要だ。同じくミュージックビデオになっている「III」では警察に扮したメンバーが皮肉めいたアクションでアメリカ警察を口撃する。まるでマシンガンのようにして放たれるラップのフロウがノイズに塗れたニューメタル/メタルコアによって何十にも攻撃力を増していく。

 

アメリカでの彼らの絶大な人気を見れば、市民の代弁者とでもいうべきスタイルを取るバンドであると言える。もちろん、音楽的にもニューメタルコアに非直接的ではあるが影響を与えており無視できないレジェンドだ。アルバムに込められたメッセージを紐解くことは、アメリカに生きるということの現実的な困難や不安を感じることだ。それは日本に住む僕らも共感できるものなのかもしれない。

 

 

 

The Callous Daoboys – Celebrity Therapist

The Callous Daoboysは、キーボーディスト、ヴァイオリニストを含む7人組、ライブによってはDJやサックスもいたりとそのメンバー・ラインナップはこれまで流動的だったが、現在は7人組とのこと。そのアーティスト写真からは一体どんなサウンドを鳴らすのか想像も出来ないが、2000年代中期から大きなムーヴメントとなったカオティック・ハードコア/マスコアのリバイバル的なサウンドを鳴らす。The Callous Daoboysは、The Dillinger Escape Plan、Norma Jean以降のiwrestledabearonceやArsonists Get All The Girls辺りのリバイバルを加速させる存在と言えるだろう。最も彼らに近いのがiwrestledabearonceで、特にベースラインのうねり、コーラスワークからは強い影響を感じる。

 

「What Is Delicious? Who Swarms?」はぜひミュージックビデオを見て欲しい。アルバムのキートラックでバンドの代表曲でありライブでもフロアの着火剤的な役割を担う楽曲。このビデオのディレクション、どこかで見たことがあるなと思ったのですが、Arshonists Get All The Girlsの「Shoeshine For Neptune」を若干意識しているのかもしれない。この「Shoeshine For Neptune」も15年前の名曲。マスコアも一周回ってリバイバルしてもおかしくないし、彼らがSeeYouSpaceCowboyやIf I Die First辺りと共にブレイクすれば十分盛り上がるだろう。彼らのブレイク次第では2023年のシーンの状況は大きく変わってくるかもしれない。

 

 

 

Crooked Royals – Quarter Life Daydream

ツイン・ボーカル有するニュージーランド・オークランド出身のプログレッシヴ・メタルコア、Crooked Royalsのデビュー作はPeripheryが運営する3DOT Recordingsからのリリース。「Glass Hands」や「Ill Manor」といった楽曲に代表されるAfter The BurialとPeripheryをクロスオーバーさせつつ、NorthlaneやErraの持つアトモスフィリックなエレメンツを燻らせたサウンドは、シャウトとクリーン・ヴォイスが鮮やかに交差、ハリと透明感に満ち溢れたサウンドに思わず聴き惚れてしまう。

 

 

メタルコア名盤 TOP10 (2022年上半期)

アルバムレビュー : Knosis 『The Shattering』

 

▶︎Knosis 『The Shattering』アルバムレビュー

 

 

 

個人的にRyo Kinoshitaと言えば、Crystal Lake在籍時のライブでGODFLESHのシャツをよく着ているのが印象的だった。メタルコア・シーンでは珍しくディープなデスメタルに理解があり、インダストリアル・メタルの芸術性をボーカリストとして表現出来ていた稀有な人物だと思っていた。実際に会って話した時も、誰も知らないようなバンドについて話して驚いた記憶がうっすらと残っている。リスナーとしても尊敬出来るRyo Kinoshitaがバンドという体制にとらわれず、Survive Said The ProphetのYoshが率いる音楽プロダクション・チーム The Hideout Studios と共に始めたKnosis のデビューEP『The Shattering』は、自由奔放なアイデアとカリスマ性によって完成させられた作品と言えるだろう。

 

 

SATANICで公開されたKnosisのインタビューで、RyoはDeftonesのサイド・プロジェクトとして知られる†††(Crosses)にKnosisの体制をなぞらえて説明し、DARKO USやKing Josefといったプロジェクトの名前を挙げながら、自身の現在地についてファンに説明している。全世界同時進行で数多くのメタルのジャンルがクロスオーバーし、枝分かれ的にサブジャンルが誕生し変化、進化し続けている2020年代のヘヴィ・ミュージック・シーンにおいて、バンドという体制がまとう”〜というジャンルのバンド”というようなレッテルの呪縛から解き放たれることは、シーン全体の更なる進化のスピードを加速させ、メタル以外の音楽と交わるために重要だ。そしてその中心にいるべきなのがRyo KinoshitaでありKnosisだと思う。この作品はまさにその創造性に限界を持たせずに作り上げられている。

 

 

今でこそニューメタルコアという言葉で一括りにされているようなスタイルは、Emmureの『Look At Yourself』からAlpha Wolf、Dealerの誕生によって本格的にメタルコアのサブジャンルの一つとして盛り上がり世界的に認知され始めたが、同時にトラップとの交わりを形容するサブジャンルが存在せず、King Yosefのようなタイプがどっちつかずのままトラップからもメタルコアからも浮いてしまっていた。Knosisはそんな曖昧さをプロジェクト自体の旨みにしつつ、明確なコンセプトでメタルという音楽、そしてメタルという音楽の持つヴィジュアルイメージから他のエンターテイメントとのコラボレーションのきっかけを生み出していくはずだ。正直、それを表現する言葉なんて、この先も見つからないだろう。でも、Ryo、Yoshのカリスマ性によってKnosisは聴衆の興味を惹きつけ、決して無視させない。『The Shattering』は、メタルコアを驚くべきスピードで進化する音楽シーンの中で最も興味深い存在にするためにも存在価値を発揮するだろう。2023年にこんなアーティストが観られる日本のメタル・リスナーは恵まれていると思う。間違いなく世界最先端のメタル。2027年くらいに存在するメタルをいち早く目の当たりにしている感じだ。ここから始まる何かにもっとワクワクしたい。

 

 

 

テクニカル・デスメタル 2022年の名盤TOP10 (前編)

2022年にリリースされたテクニカル・デスメタル (Technical Death Metal) の中から優れた作品をピックアップし、年間ベスト・アルバムとしてレビューしました。中にはプログレッシヴ・デスメタル、テクニカルだけどスラッシュ・メタルと呼ばれる作品も含まれていますが、それぞれのジャンルにおいてテクニカルさが際立つバンドはテクニカル・デスメタルとしてレビューしています。レビュー数が多いので、前編と後編に分けてお送りいたします。過去の年間ベスト記事と合わせてお楽しみ下さい!

 

テクニカル・デスメタル 2022年の名盤TOP11 (後編)

テクニカル・デスメタル 2021年の名盤15選

テクニカル・デスメタル 2020年の名盤 10選

 

シングルリリースのみのアーティストなどは、YouTube、Spotifyプレイリストにまとめていますので、そちらを聴き流しながら記事を読むのもオススメです!

 

 

 

Revocation — Netherheaven

4年振りのリリースとなった通算8枚目フルレングス。ギタリストDanの脱退、そしてコロナウイルスによるパンデミックの影響はRevocationのソングライティング、レコーディングに大きな変化をもたらした。Davidはパンデミック期にエンジニアリングを研究、アルバム通じて初めて自身でプロデュースを行った。アートワークからも分かるようにサタニックなデスメタルを全面に押し出し、クラシックな「Diabolical Majesty」からミッドテンポの「Godforsaken」など、幅広いデスメタル・スピリットを聴かせてくれる。エンディングを飾る「Re-Crucified」はアルバムのキーとも言えるキラーチューン。

 

Revocation、バンド史上最もデスメタリックなニュー・アルバム『Netherheaven』をリリース!

 

Rings Of Saturn — Rings Of Saturn

カリフォルニア州ベイエリアを拠点に活動するテクニカル/プログレッシヴ・デスメタル/デスコア・バンド、Rings of Saturn (リングス・オブ・サターン) 。オリジナル・アルバムとしては通算6枚目で、初期のアヴァンギャルドな超絶テクニカル・デスメタルからプログレッシヴ・スタイルへと大幅にスタイルチェンジ。どこかPolyphiaを彷彿とさせる流麗なサウンドをベースに、随所でソリッドなデスコア・エレメンツを散りばめる、Rings of Saturnの新たなチャプターを予感させる仕上がりとなっている。

 

 

Rings of Saturn、バンド名を冠した新作『Rings of Saturn』リリース!

Spire Of Lazarus — Soaked In The Sands

2016年前身バンドDayumを結成。2020年にSpire Of Lazarusへと改名している。Dayumから3枚目となる本作はDayumからのコンビであるギタリストJuliusとベーシストThomasに加え、Psalm of AbhorrenceのボーカリストJonが加入し、Juliusがドラムを兼任している。オリエンタルなオーケストレーションが嵐のように吹き荒ぶ中、目の覚めるようなブラストビートで駆け抜けていく。スウィープ、タッピングと満天の星空のようなメロディの煌めきも異次元だ。女性ボーカリストPipiをフィーチャーした「Farah」の豊麗多彩な世界観に圧倒される。

 

 

Fallujah — Empyrean

カリフォルニア・ベイエリアのテクニカル・プログレッシヴ・デスメタル・バンド、Fallujahの通算5枚目のスタジオ・アルバム。すっかり中堅となり、唯一無二の存在感を見せるFallujahであるが、Rob、Antonioが脱退するなどなかなかメンバーが固定出来ない時期が続く。本作では新たにArchaelogistのボーカリストKyle、そしてThe Faceless、Animosity、Entheos、Refluxと名だたるバンドに在籍してきた経歴を持つベーシストEvan Brewerが加入。暗雲を払拭するかのように力強く、そして正確に叩き込まれるドラミングとFallujahをFallujahたらしめるScottのしなやかなメロディックリフのコンビネーションに百戦錬磨のEvanのベースラインがどっしりと屋台骨を支える。

 

Aronious — Irkalla

2011年グリーンベイで結成したAroniousのセカンド・アルバム。2020年にデビュー・アルバム『Perspicacity』発表後、ボーカルBrandon、ギタリストのNickとRyan、ベーシストJason、そしてBenightedやGods of Hateなどでドラムを担当してきたKevin Paradisという5人体制となり、本作の制作を開始。不気味に渦巻く奇怪なバンドロゴが、彼らが一体どんなバンドなのかを的確に表現していると言っていい。ほとんど鬼気と呼んでよいほどの不気味な迫力溢れるアヴァンギャルドなドラミングとリフが得体の知れぬ異世界へと聴くものを誘う。

 

 

Godless Truth — Godless Truth

オリジナル・ギタリストPetrを中心に18年振りにシーンにカムバックした彼らのアルバムはバンド名を冠した堂々たる一枚だ。2017年に開催した同郷のデスメタル・バンドDissolution周りのミュージシャンが集い、ツインギターの5人体制となったことで、Petrのギターワークは浮き立つように存在感を放つ。「Scissors」や「Breathe Fire」のリフはこのアルバムのハイライトだ。Death以降の90年代テクニカル・デスメタルを上品さを持ってしてモダンにアップデートすることに成功、セルフタイトルとしてリリースした自信も感じ取れる。

 

Arkaik — Labyrinth Of Hungry Ghosts

The Artisan Eraへと移籍、Gregが脱退し、新たにドラマーとしてSingularityやAlterbeastで活躍したNathan Bigelow、過去にArkaikでライブ・ギタリストを担当した経歴のあるAlex Haddadが加入。ゲスト・ベーシストにInferiのMalcolm Pughを招き、レコーディングが行われた。前作『Nemethia』の延長線上にあるサウンドは迫力に磨きがかかり、プログレッシヴでありながらブルータルな仕上がりとなっている。「To Summon Amoria」ではヴァイオリン、フルート奏者をフィーチャー、NileやNecrophagistを彷彿とさせるサウンド・デザインにも挑戦している。

 

Eciton — The Autocatalytic Process

2004年、前身バンドIndespairが改名する形でコペンハーゲンを拠点にスタート。本作はボーカリストJesper von Holckを中心にギタリストのKristianとThomas、ベーシストGustav、そしてIniquityで活躍したドラマーJesper Frostの5人体制でレコーディングが行われた通算4枚目のスタジオ・アルバム。クラシックなデスメタルに精彩に添えられたテクニカル・デスメタルのエレメンツは自由で無駄がなく、それでいて豊かで洗練されている。強度のテクニカルでなく、高潔な芸術作品とでも言うべき一枚。謎めいたアートワークにもどこか惹かれる。

 

 

The Last Of Lucy — Moksha

2007年ハンティントン・ビーチでギタリストGad Gidonによって立ち上げられたThe Last Of Lucy。本作までにボーカルJosh、ギタリストChristian、ベーシストDerek、Ominous RuinのライブドラマーやTo Violently Vomitでもドラムを務めるJosef Hossain-Kayの5人体制になっている。摩訶不思議な地球外生命体のアートワークもそそられるが、そのサウンドもどこか不気味。ハードコア譲りのボーカルにきめ細やかなリフをメロディアスに展開。The Zenith Passageのようなジャリジャリとした質感の刻みに妙な心地良さを覚える。

 

 

Gutsaw — All Lives Splatter

2003年コロナで結成されたベテランであるが、2004年にリリースしたデビュー・アルバム『Progression of Decay』以来アルバムのリリースはなく、本作は18年振りに発表されたセカンド・アルバム。オリジナル・メンバーであるベース/ボーカルDavidとギター/ボーカルNecroに加え、Vampire SquidのドラマーMark Rivasが加わり制作された。ツインボーカルで絶え間なくガテラルを掛け合いながら、テクニカル・デスグラインドとも言うべきサウンドを爆速で繰り広げていく。時折挟み込まれるバウンシーなフレーズもフックが効いている。

 

 

 

テクニカル・デスメタル 2022年の名盤TOP11 (後編)

2022年にリリースされたテクニカル・デスメタル (Technical Death Metal) の中から年間ベスト・アルバムをピックアップしアルバムレビュー。前編に続き後編です。どうしても合計20枚に絞ることが出来ず、21枚という中途半端な数字ですが、全部チェックして欲しいくらい、今年は名作が多かったです! 過去に執筆したテクニカル・デスメタルの年間ベストもお時間ありましたら読んでみて下さい。

 

テクニカル・デスメタル 2022年の名盤TOP10 (前編)

テクニカル・デスメタル 2021年の名盤15選

テクニカル・デスメタル 2020年の名盤 10選

 

シングルリリースのみなど、気になるバンドをメモしたYouTube、Spotifyプレイリストもぜひフォローして下さい!

 

 

 

Psycroptic — Divine Council

4年振りのリリースとなった8枚目フルレングス。近年のPsycropticはダイナミズムを追求しようとせず、ミニマルなスタイルへと静かにアップデートを続けてきた。派手な装飾をそぎ落とし、スラッシュメタルやオールドスクール・デスメタルの持つ純然たるグルーヴを老練のテクニックでスタイリッシュに生み出してきた。アルバムのオープニングを飾る「Rend Asunder」に代表されるようなスラッシーな刻みを主体とした楽曲が大半を占めており、聴き心地を徹底的に追求したテクスチャーの良さは格別。エンディングの「Exitus」までPsycropticの持てる才能を発揮したベテランならではの仕上がり。

 

 

 

Deathbringer — It

2001年ベラルーシ・グロドノで結成。AmentiaやDisloyalなどにも在籍するギタリストArtem Serdyukによって立ち上げられ、セカンド・アルバムとなる本作までにボーカリストMario、Posthumous Blasphemerに在籍した経歴を持ち、AmentiaでArtemとバンドメイトだったAlexander、Disloyalなどで活躍したドラマーKrzysztofというラインナップになり、Unique Leader Recordsと契約。一般的なデスメタルの展開の概念をぶち壊し、ドラマ性を徹底的に排除。アヴァンギャルドでテクニカルな不協和音をふんだんに散りばめ、暴力的に駆け抜けていく。

 

 

 

Origin – Chaosmos

1997年からカンサス州を拠点に活動するテクニカル・デスメタル・バンド、Origin が通算8枚目のスタジオ・アルバム。Nuclear Blast Blast/Agonia Records からリリースされ、Robert Rebeckがミックス、Colin Marstenがマスタリングを務めている。アルバムのタイトルトラックはミュージックビデオにもなっており、これぞOriginとも言うべきサウンドに圧倒されるだろう。やはりなんと言ってもドラマーJohn Longstrethのプレイは独特。絶妙に揺れるリズムの妙も取り入れ、細やかなシンバルワークとスネア、ソフトなタッチで叩き込まれるJohnの高等技術は素晴らしい。

そしてPaul Ryanのリフは粘着質で現行のブルータルデスメタルやデスコアといったヘヴィ系ジャンルとは逆をいくクラシックな仕上がり。それでこそ際立つメロディの粒立ちの良さはJohnの細やかなシンバルワーク、そしてMikeのフィンガースタイルのベースプレイとうまく絡む。やはり彼らがテクニカル・デスメタルを極めてきた中で、このプロダクションが最良だと感じているのだろう。「Ecophagy」は『Antithesis』以降のOriginらしい一曲。デスメタリックなメロディにエモーショナルな香りは一切感じない、ただどこかクラシカルに響く瞬間があり面白い。圧倒的なブラストビートの上にスウィープを炸裂させるスタイルはOrigin節と言える。

全体的に派手さはなく、目新しいこともしていないが、聴けば誰しもがOriginであると一発でわかる確かなオリジナリティは健在。なかなか個性を発揮するのが難しいジャンルの中でクローンと呼ばれるようなスタイルを持つバンドは思い浮かばない。

 

 

 

Artificial Brain — Artificial Brain

2011年ニューヨーク・ロングアイランドで結成。この作品が3枚目のアルバムで、RevocationのギタリストDan Gargiulo、ベーシストSamuel Smith、ドラマーKeith Abrami、ギタリストのJon LocastroとOleg Zalmanの5人で制作された。それぞれにFawn Limbs、Pyrexia、Pyrrhon、Severed Saviorなどで活躍した腕利きのミュージシャンであり、それぞれの驚くべき造詣意欲が生み出すサウンドは、デスゲイズ的な開放感にテクニカルなプログレッシヴ・フレーバーがふわりと覆い被さる、アーティスティックな仕上がり。

 

 

 

Soreption — Jord

4年のスパンでコンスタントにアルバムリリースを続ける彼らの4枚目フルレングスは、再びUnique Leader Recordsと契約して発表された。Mikaelが脱退し、ギタリスト不在の3ピースとなっているが、Ian Wayeを中心に多彩なゲストが参加し、メロディックなSoreptionサウンドに華を添えている。Archspireを彷彿とさせるショットガン・ボーカルは、リードトラック「The Artificial North」を筆頭にアルバムの中でもキーと言える存在感を放っている。心地良いグルーヴは確かなテクニックによって生み出され、後続のバンドにも大きな影響を与えている。

 

 

 

Exocrine — The Hybrid Suns

3年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。プロデュースはギタリストのSylvainが担当、前作までに築き上げた「Exocrineサウンド」を一つ上のレベルへと押し上げる内容で、トータル34分とスッキリとした収録時間も上手く作用している。ミュージックビデオにもなっている「Dying Light」ではMatrassの女性ボーカルClémentineをフィーチャーし、ブラッケンド・デスコアにも接近。知的な神秘性を持ちつつ、バウンシーでフックの効いたリフやドラミングがファストに繰り広げられていく、自信に満ちた作品だ。

 

 

 

Inanimate Existence — The Masquerade

3年振りのリリースとなった通算6枚目フルレングス。メンバーチェンジもなく、アートワーカー、エンジニア共に前作から同じ布陣で量産体制に入ったInanimate Existence。インスピレーションの泉がこんこんと湧き出す彼らのアイデアは、ブルータルな小技が光るブラストビートとガテラルが印象的。First Fragmentを彷彿とさせるネオ・クラシカルなギターソロをたっぷりと組み込み、どこか「テクニカル&プログレッシヴ組曲」のような上品さが感じられる。「Into the Underworld」は彼らの魅力を端的に表現したフックの効いたキラーチューン。

 

 

 

Deadsquad — Catharsis

2006年からジャカルタを拠点に活動する中堅、DeadSquadの通算4枚目フルレングス。本作から新体制となり、元BurgerkillのボーカルViky、ギタリストのStevieとKaris、ベースShadu、元GerogotのドラマーRoyの5人で、オリジナルメンバーはStevieのみ。DeadSquadにとって大きな変革期を迎え放たれるサウンドは、うねるように奔放で波打つリフが華麗にテンポチェンジを繰り返し、スラムからテクニカルと目まぐるしく横断していく。親しみやすいフックの効いたブルータル・デスメタルの基本形を確かなテクニックで表現。

 

 

Darkside Of Humanity — Brace For Tragedy

Sleep Terror、Six Feet Underなど20を超えるバンドでドラムを務めるMarco Pitruzzellaと、同じくSix Feet Underに在籍し、Brain DrillやRings of Saturnでも活躍したギタリストJeff Hughell、元Severed SaviorのボーカリストDusty Boisjolieというアンダーグラウンド・スーパースターらのデビュー作。火炎放射器のように放たれるギターのタッピングの嵐、ベース、ピアノを兼任するJeffがグルーヴィなデスメタルの上で発狂するかのように繰り広げていく。ユニークで飽きない展開は流石だ。

 

 

Sonivinos — Sonicated Intravaginal Insemination In Numbers

フランス/ベルギーを拠点に活動するデスメタル・バンドHenkerに在籍していたギター/ボーカルStefとRyanのコンビが、テクニカル/ブルータル・デスメタル・シーンきっての多忙ミュージシャンであるベーシストJeff HughellとドラマーMarco Pitruzzellaの4人による多国籍バンドSonivinosのデビュー作。世界最高峰の技術を詰め込んだ音速ブラストビートとピッタリと寄り添いながらメロディアスに炸裂するベースの音色に驚愕。StefとRyanもそれを追い越すようにして咆哮しリフを刻み続けていく。これが人力とは俄かに信じ難い作品。

 

 

Brute — Essence Of Tyranny

1998年からプレショフを拠点に活動するベテラン、Bruteの通算4枚目フルレングス。唯一のオリジナル・メンバーであるŠtefan Tokárがギターを務め、本作から新たに加入したDominikがボーカル、Jaroがベースを担当し、ゲストドラマーにBatushkaやBelphegorのライブドラマーであるKrzysztof Klingbeinを迎えレコーディングされた。血濡れたブルータルなチェーンソーリフがデスメタリックに刻み込まれ、雪崩のように叩き込まれるドラミングとディープなガテラルが奥深いデスメタルの世界を演出。まるでアートワークをそのままサウンドキャンパスに描いたような仕上がり。

 

2022年上半期ブルータル・デスメタル 名盤TOP5

 

2022年上半期にリリースされたブルータル・デスメタルの名盤を5枚ピックアップしレビューしました。ビッグ・リリースはなかったし、スラミング・ブルータル・デスメタルが主流になった今、直球ブラスティング・スタイルを鳴らすバンドは天然記念物並みに希少価値が高くなってしまった。今年に入ってブラスティング・スタイルのトップレーベルだったNew Standard Eliteが動かなくなってしまい、それらのバンドがゴアグラインド/ゴアノイズ系へ流れていってしまったように思う。ゴアノイズは音楽的な面白みはないけどブルータル・デスメタル・カルチャー的なジョークとして追いかけてて面白いものの、ブルータル・デスメタルはそのサウンドで喰らいたいものだ。今回ピックアップした5枚は順不同だが、ナンバーワンはSijjeel。シングルのみリリースしたバンドについては別の機会に振り返っていきたい。

 

 

Sijjeel 『Salvation Within Insanity』

出身地 : サウジアラビア
▶︎https://comatosemusic.bandcamp.com/album/salvation-within-insanity

 

グラインドコア・バンド、Creative Waste のギタリストとして知られるHussain Akbarを中心に始まったこのプロジェクトは、2020年にKorpseなどでの活躍で知られるボーカリストFloor van Kuijk、Stillbirth、Placenta PowerfistのベーシストLukas Kaminskiが加入したことで本格的に動き始めた。EP『Cyclopean Megaliths』を経てComatose Musicと契約しデビュー・アルバムとしてリリースされた本作は、暴虐性を全面に出しつつも、しっかりとデスメタルの美学を貫いた作品で、ブルータルなリフとメロディアスなベースラインが竜巻のようにして展開し続けていく。Defeated Sanityを彷彿とさせるそのサウンドはより深い漆黒の闇の中を駆け巡っていくかのようだ。

 

 

Scrumptious Putrescence 『CanniBaalistic Offerings』

出身地 : スペイン
▶︎https://amputatedveinrecords.bandcamp.com/album/cannibaalistic-offerings

 

2018年結成、Scrumptious Putrescenceのデビュー・アルバム。現代ブルータル・デスメタルの中でもマニアックな人気の高いCarnivorous VoracityのボーカリストSeyerotをはじめ、Arthropodal HumanicideのLörd NebirøsとOskar Noctambulantが参加している。サウンド・プロダクションはチープでお世辞にも良いとは言えないが、ブルータル・デスメタルにそれは重要ではない。本作は異なるフレーズを切り貼りして繋ぎ合わせたり、反復させたりしながら最終的にドラマティックにまとまっていくという、不思議な作品。ところどころで楽曲のキーとなってくるメロディックなエレメンツはThe FacelessやRings of Saturnといったプログレッシヴさがある。一見なんの変哲のないアルバムだが、実は細かい面白さがあったりする。

 

 

Filthed 『Loathsome』

出身地 : ロシア
▶︎https://lordofthesickrecordings.bandcamp.com/album/loathsome

 

2017年からロシア・モスクワで活動する2ピース・ブルータル・デスメタル・バンド、Filthed。
Lord of the Sick Recordingsと契約してリリースされたデビュー・アルバムは、古き良きアメリカン・ブルータル・デスメタルを独自に混ぜ合わせたかのような作品でなかなか聴きごたえがある。Internal Bleedingすぎるスラム・パート、さらにハードコアに寄ったモッシュ・パートで血管を膨張させながらも、ピュアすぎるブラストビートで疾走したりする。一周回ってこのくらい純度の高いブルータル・デスメタルが心地良く感じる。

 

 

Horde Casket 『Plague Supremacy』

出身地 : アメリカ・オクラホマ州
▶︎https://hordecasket.bandcamp.com/

 

2006年から活動を続けるブルータル・デスメタル・中堅、Horde Casketのキャリア初のEPは、中心人物Steve Giddensを軸に、ドラマーにBrain DrillやSleep Terror、Six Feet UnderからThe Facelessなどに在籍してきた凄腕Marco Pitruzzella、Formaldehydeで20年以上活動してきたボーカルGreg Dukeが加わりトリオ編成で制作された。これまで5枚のアルバムをリリースしてきたHorde Casket。その存在感は決してブルータル・デスメタル・シーンにおいても突出したものはないが、個人的には、ハズレのない安定感のあるバンドで好きなバンドの一つ。EPというコンパクトな仕上がりだが、Marcoのドラミング、そしてSteveのクラシックなリフワークに脱帽。Severed Recordsらしい粘着質なグルーヴもあり流石だ。

 

 

Embryonic Devourment – Heresy Of The Highest Order

出身地 : アメリカ・カリフォルニア州
▶︎https://uniqueleaderrecords.bandcamp.com/album/heresy-of-the-highest-order

 

2003年から活動するベテラン・ブルータル・デスメタル・バンド、Embryonic Devourmentが、
Deepsend RecordsからUnique Leader Recordsへと移籍してリリースした通算4枚目のフルアルバム。新たにギタリストDonnie SmallとBen Harrisが加入し、若返りを果たした彼らのサウンドは、ミニマルな質感とプログレッシヴな小技が効いた渋い仕上がり。近年スラミング・スタイルのバンドをはじめ、デスコア方面のアーティストと契約を続けてきたUnique Leader Recordsが伝統的なブルータル・デスメタル、その中でも派手さのないマニアックなスタイルを持つEmbyonic Devourmentと契約したことが何より嬉しい。スピード、というよりはデスメタルのえぐみに真面目に向き合った一枚で好感が持てる。ただアートワークが下品すぎるのがマイナス…。

 

2022年上半期のデスコア 名盤TOP10

 

アルバムを除けば、2022年上半期のデスコア・シーンは、Lorna Shoreの話題で持ちきりだった。リアクション・ビデオとして恰好の楽曲となった「To The Hellfire」(*2021年リリース)、「Sun//Eater」はデスコア・リスナーだけでなく、オーバーグラウンドのメタル・シーンにも衝撃を与えた。そこからデスコア、ブラッケンド・デスコア・シーンへどのくらい新しいリスナーが流入したかは分かりかねるが、アンダーグラウンド・デスコア・シーンは次のLorna Shoreになるべくブラッケンドなスタイルが本格的にトレンド化していった。半数くらいは正直ブラッケンド・デスコアを上手く表現しきれていないが、デスコアの中のマイクロ・ジャンルとして成立するくらいにはブラッケンド・デスコアを自称するバンドが増えてきたように思う。

 

個人的な思いとしてはメタル・ミームとしてデスコアは非常に扱いやすい「ネタ」であるので、Lorna Shoreをきっかけにもっとたくさんの新規デスコア・リスナーが増えるかなと思っていた。「ネタとは言うのはどうなのか」ってのもあると思うけど、アンダーグラウンドの新しい音楽にとって、カッコつけて聴かれないことよりネタとしてリアクションされることの方が数百倍価値があるはずだ。

 

色々思うことはこれくらいにしといて、2022年の上半期にリリースされた作品の中から、これからの数年重要な作品になって行くだろう作品をピックアップ、レビューしてみた。新しいお気に入りを見つけて欲しい。

 

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NOCTURNAL BLOODLUST 『ARGOS』

一言 : デスコアの未来に語り継がれていく名作
▶︎https://linktr.ee/nb_argos

 

NOCTURNAL BLOODLUST、通称ノクブラ。彼らのサウンドを「デスコア」というジャンルの枠だけに当てはめるのはもはや不可能だ。ただ、RIFF CULT的視点でこのアルバムをどこかにカテゴライズしなければならないとするならば、「デスコア」以外の何者でもないことから2022年上半期のデスコア・ナンバーワン・アルバムとして評したい。

 

このアルバムをオープニングからエンディングまで聴いた時、メンバーが現代メタルコアやデスコア、その他周辺ジャンルのトレンドをしっかりとキャッチしていることがよく分かる。NorthlaneやErraといったプログレッシヴ・メタルコアのリフ・ワーク、Lorna ShoreやShadow of Intentに代表されるシンフォニック/ブラッケンド・デスコアのオーケストレーション、加えて、日本のラウド・シーンで育まれてきたメインストリーム・ラウドの様式美、ニューメタルコアの尖ったサウンド・プロダクション。細部に至るまでこだわりを貫いたアレンジが組み込まれており、何度聴くたびに発見があり、時代の感覚をしっかりとキャッチしていることが感じられる。

 

デスコアとして評した時に、このアルバムのキートラックとなるのはもちろんPROMPTSのPKがゲストとしてフィーチャリングしている「Cremation」だ。本格的なオーケストレーションはMasahiro Aokiのアレンジによるもので、世界中見渡してもこれほど優れたオーケストレーションを持つデスコアの楽曲はない。「Red Soil」や「Bow Down」といった楽曲についてはメタルコアの2022年トップトラックとして語る必要もあるし、10年、20年後に2020年代のメタルを語るとき、このアルバムがどれほど重要なものであったか話題に登るに違いない。リアルタイムでこの作品を体感できている事に人類は感謝したほうがいいくらい。とにかく素晴らしかった。

 

 

 

Shadow of Intent 『Elegy』

一言 : シンフォニック・メタルとデスコアの最高級クロスオーバー
▶︎https://found.ee/9kCZ4

 

シンフォニック・デスコアと言えばShadow of Intentという人も多いだろう。結成以来レーベルに所属せず、D.I.Yのスタイルを取るバンドとして他のデスコア・バンドへ与えた影響は大きい。そんな彼らの鳴らすサウンドにデスコアのトレンドが追いつき始めた2022年、この『Elegy』がもたらした衝撃は凄まじいものがあった。デスコアにシンフォニックなエレメンツを加えたというよりは、シンフォニック・メタルとデスコアのクロスオーバーと表現するのが言い得て妙だろう。そのバランス感覚は頭ひとつ抜きん出た才能によって作られるものであり、決して簡単にフォロワーを生み出せるようなスタイルではない。アルバム収録曲で先行シングル/ミュージックビデオとして発表された「Intensified Genocide」に彼らの魅力がたっぷりと詰まっている。

 

 

 

Enterprise Earth 『The Chosen』

一言 : Dan Watsonのカリスマ性がたっぷり味わえる
▶︎https://enterpriseearth-thechosen.com/

 

デスコア・シーンのカリスマ・ボーカリストDan Watson在籍時のラスト・アルバム。Enterprise Earthの人気を考えた時、やはり彼の存在は大きいし、『The Chosen』もそんな彼のデスコア・ボーカリストとしての魅力がたっぷり詰まった作品だ。

 

ハイピッチ・スクリームからメロディックなシャウトまで、緊張感のあるサウンドをスリリングに表現する彼の歌声はやはり、高い人気があるだけあってクオリティは一級品。アートワークから楽曲のタイトル、プロモーションに至るまで一貫したコンセプトがあり、サウンド・デザインも時折オリエンタルな要素があったりとEnterprise Earthの世界観に忠実であったのも素晴らしいポイントだ。一つ一つの楽曲では伝わらない魅力が、アルバムという形になった初めて伝わってくる。新たなボーカリストが加入し、再び動き出した彼らの動向にも注目だ。

 

 

 

 

Bodysnatcher 『Bleed-Abide』

一言 : 殺傷能力MAX モッシュ・パートてんこ盛り
▶︎https://bodysnatcher.ffm.to/bleed-abide

 

アメリカン・アンダーグラウンド・デスコアの王者とでも言うべきBodysnatcher。ダウンテンポ・デスコアのポテンシャルを最大限に発揮したタフなサウンドは、これまでに幾多のフロアで殺人級のモッシュを巻き起こし、その殺傷能力に磨きをかけてきた。Lorna Shoreを筆頭に、シンフォニック/ブラッケンド・デスコア・ムーヴメントが巻き起こる今、全くメタルの影響を受けず、ハードコア・ルーツのモッシュパートを武器とするサウンド・デザインに振り切っているのが清々しい。「Absolved of the Strings and Stone」や「Flatline」といった楽曲はそんな彼らの持ち味が発揮されたキラーチューン。

 

 

 

 

Mire Lore 『Underworld』

一言 : 次のデスコア・トレンドはこれだ
▶︎https://www.youtube.com/watch?v=60-NmVx2Zqo

 

上記のEnterprise Earth、そしてBodysnatcherに在籍した経歴を持つDan Watson (ex-Enterprise Earth / ex-Infant Annihilator)と、Frankie Cilella (ex-Bodysnatcher / Existence Has Failed) によるプロジェクト、Mire LoreのEP。上半期滑り込みで食い込みTOP10にランクイン。コアなデスコア・リスナーの関心を集めるこのプロジェクト、BodysnatcherのモッシュコアのエレメンツとDan Watsonのハイ&ローを見事に操るスクリームの数々が味わえるハイブリットな仕上がりだ。言うならば、現代デスコアのシンフォニック的なトレンドと激化するヘヴィネスの両方を兼ね備えたサウンドと言えるだろう。独特の緊張感も漂わせつつ、アンダーグラウンド的な美的感覚をスケール豊かに表現した、実に今っぽい作品と言えるだろう。

 

 

 

Paleface 『Fear & Dagger』

一言 : スラミング・ビートダウン最高傑作
▶︎https://linktr.ee/palefaceswiss

 

スイスを拠点に活動するPalefaceは、Slam Worldwideを通じ発表してきた様々なミュージックビデオをきっかけに注目を集めてきた。メンバーが首を吊って集団自殺するかのようなビデオ・ディレクションは刺激的で、彼らのサウンドを上手く表現している。

 

怒りや日頃の鬱憤を歌詞やサウンドに投影するということは長い音楽の歴史を見てもよくあることだが、彼らはその怒りのレベルが桁違い。ビートダウンを軸に縦横無尽に展開する彼らのサウンドは、マックスに達した怒りによって発生する感情のうねりを表現しているし、ボーカル、コーラスのラフなスタイルもまとまらない感情そのままだ。例えば震えるほどの怒りを感じやり場のない怒りに感情を支配された時、『Fear & Dagger』を聴くことによって怒りの発散が出来るし、聴く鎮静剤として非常に有能。デスコアかと言われれば賛否両論あるかと思うが、スラミング・ビートダウンを鳴らすバンド自体少ないので、デスコアとして今回は評価したい。

 

 

 

Fit For An Autopsy 『Oh What the Future Holds』

一言 : メインストリーム・デスコアの最先端
▶︎https://bfan.link/FitForAnAutopsy-OWTFH

 

数々のデスコア歴史的名盤を手掛けてきたWill Putney率いるFit For An Autopsy。オーバーグラウンドのメタルシーンのメタル勢に引けを取らないサウンド・プロダクションで他のデスコア勢を圧倒する本作は、ミドルテンポ主体かつオルタナティヴ・メタルのエッセンスを取り入れた挑戦的な仕上がりとなっている。先行シングル/ミュージックビデオとして公開された「Far From Heaven」では、雄大なコーラスワークを携えたクリーンパートとミドルテンポからでしか作り出せないダイナミックなブレイクダウン/ビートダウン・パートが印象的。

 

 

 

 

And Hell Followed With 『Quietus』

一言 : クラシック・スタイルそのままで奇跡の復活
▶︎https://www.facebook.com/AndHellFollowedWith

 

2010年にアルバム『Proprioception』以来、12年振りとなる完全復活作『Quietus』に、古参デスコア・リスナーは大いに沸いたことだろう。音楽SNSとして一世風靡したmySpace世代のデスコアとして解散後もカルト的な存在として影響を与え続けてきた。

 

スタイルに大きな変化はなく、ファストなブラストビートを主体にデモニックなグロウルを炸裂させていく。トリプル・ギターなのも懐かしのデスコア・スタイルを感じさせてくれる。ベテランの復帰ともあり、参加したゲスト・ミュージシャンも豪華で、BodysnatcherのKyle Medina、Brand of SacrificeのKyle Anderson、The FacelessのJulian Kersey、VulvodyniaのDuncan Bentley、Spirit BreakerのTre Turnerらが楽曲に華を添える。

 

 

 

Worm Shepherd 『Ritual Hymns』

一言 : これが本物のブラッケンド・デスコア
▶︎https://orcd.co/wsritualhymns

 

いよいよブラッケンド・デスコアが本格的に主流になっていくという予感が確信に変わったのがちょうど1年前。Lorna Shoreの「To the Hellfire」がリリースされたことで、後続のバンドが2022年に入り続々と登場してきた。その中でもWorm Shepherdは、主流になっていくという予感が芽生えた頃、いち早くブラッケンド・スタイルを取り込み出したことを覚えている。それは2020年、シングル「ACCURSED」をリリースした時だったと思う。彼らはそれを深く追求し、整理、Worm Shepherdのサウンドとして作り上げ、Unique Leader Recordsと契約まで果たした。このアルバムが持つ重要性、後に2020年代のデスコアのムーヴメントを掘り下げた時、Lorna Shoreと同様に扱われるべき作品であることは間違いない。

 

 

 

The Last Ten Seconds of Life 『The Last Ten Seconds of Life』

一言 : 遂に完成させたニューメタルxモッシュコアの高次元融合
▶︎https://orcd.co/tltsol

 

Bodysnatcher同様、長きにわたりアメリカン・アンダーグラウンド・デスコアの番長的存在感を見せてきたThe Last Ten Seconds of Life。アルバムリリース後にWyatt McLaughlin以外のメンバーが脱退するという事件が起きてしまったものの、バンドの歴史を振り返った時、この作品は歴代トップに匹敵する作品だと感じる。

 

彼らがニューメタルへと傾倒したとき、シーンで賛否両論巻き起こったことは鮮明に覚えている。自分自身、それを受け入れるのに時間がかかったが、昨今のニューメタルコア・ムーヴメントを見れば早すぎた試みだったのかもしれない (今のニューメタルコアとはスタイルは違うが)。彼らが試みてきたニューメタルとデスコアのクロスオーバーはここへきてグッと洗練され、モッシュ・パート主体でありつつ、KornやSlipknotを彷彿とさせるアクセントを取り入れてる。RIFF CULT的に世界一かっこいいバンド名だと思ってるので、新たなメンバーが加入し、これからも活動を継続してくれることを願うばかりだ。

 

凄腕ギタリストJason RichardsonがLuke Hollandと共に創り上げたニューアルバム『II』リリース!

 

Chelsea GrinやBorn Of Osirisに在籍した経歴を持つギタリスト、Jason Richardson (ジェイソン・リチャードソン) が、ソロ・アルバム『II』をリリースしました。「Threnody」を除くすべての楽曲にドラマーLuke Hollandをフィーチャーし、エンディングを飾る「Upside Down」ではPolyphiaのTim Hensonをゲストに迎えています。

 

Jason Richardson 『II』

1. Tendinitis (feat. Luke Holland)
2. Ishimura (feat. Luke Holland)
3. Polyrhythmic Pug (feat. Luke Holland)
4. p00mbachu (feat. Luke Holland)
5. Sparrow (feat. Luke Holland)
6. Threnody
7. Byronius Of The 4th Order (feat. Luke Holland)
8. XIV 2.0 (feat. Luke Holland)
9. Behold 2.0 (feat. Luke Holland)
10. Goodbye… (feat. Luke Holland)
11. Upside Down (feat. Luke Holland & Tim Henson)

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうど1年前の2021年7月からこのアルバムのレコーディングの様子がJason RichardsonのYouTubeチャンネルにアップされています。特に見応えがあるのが、上記に貼り付けた動画の最後にあるギターのトラッキングの様子。フレーズごとに使い分ける様々なギター、そして卓越されたプレイはギタリストの方は発見があったりするのではないでしょうか。

 

 

アルバムの中で突出した個性を放つのが、2022年5月に先行公開された楽曲「p00mbachu」だ。Jason、Lukeそれぞれの得意分野でもあるプログレッシヴ・メタルコアをベースにしながら、差し込まれるジャズ、フュージョン、ブルータルなフレーズ。それらをインストゥルメンタルなプロジェクトらしく自由に展開させつつも一貫したドラマ性を持たせているところにJasonのクリエイティヴな才能を感じます。

 

 

楽曲タイトルで日本でも話題となった「Ishimura」。別のニュース記事でも書きましたが、おそらく北米でエレクトロニック・アーツから2008年10月14日に発売されたサードパーソン・シューティングゲーム「DEAD SPACE」に登場する採掘艦USG Ishimuraから取ったと思われます。ゲームミュージックのスペーシーな雰囲気をプログレッシヴ・メタルコアで豊かに演出、Mick Gordonもそうですが、Jason Richardsonもそういった魅力を引き出し表現することに長けているように感じます。こちらもリードトラックとして素晴らしい一曲。

 

 

そして、PolyphiaのTimをフィーチャーした「Upside Down」もミュージックビデオとして先行リリースされています。ミュージックビデオの中でTimとJasonがゲームの中でギターバトルするようなシーンがありますが、実際に楽曲ではバトルのようなフレーズはなく、Jasonの描くサウンド・スケープにTimらしいフレーズを落とし込んだスタイリッシュな仕上がりになっています。

 

アルバムを通じてプログレッシヴ・メタルコア/Djentをベースに自由な発想でフレーズが組み込まれ、そして展開していく。アンプラグドな楽器のメロディがヘヴィなリフによって宙に浮かぶように鳴るフレーズの数々はアルバムのハイライトのように感じました。皆さんはどの楽曲が気に入りましたか?

 

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RIFF CULT : Spotifyプレイリスト「All New Progressive Metalcore/Djent」

 

RIFF CULT : YouTubeプレイリスト「All New Progressive Metalcore/Djent」

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP5 (2022年上半期)

 

すっかりブルータル・デスメタルの主流スタイルとなったスラミング・ブルータル・デスメタル。もはやブラストビートで突進し続けテクニカルなリフを詰め込んだサウンドは希少種となっている。ただ、スラミング・スタイルが主流となったことで、デスコアやビートダウン・ハードコアとの結びつきが深まったことは、ブルータル・デスメタル全体の活性化にとって良いことだと思う。クラシックなブルータル・デスメタルが好きな方には少し寂しい状況かと思うが、この流れに乗って世界各地でブルータルなサウンドが盛り上がるのが一番大切だ。

 

自著『ブルータルデスメタルガイドブック』の中でスラミングとはどのようなものなのかについて書いているが、ありがたいことになかなか手に入りづらい状況で購入できない方も多いと聞く。またの機会にスラミングについて解説するが、今回紹介する5枚を聴けば、自ずとそれがなんなのか、そしてその魅力や特徴はなんなのかが掴めるはずだ。

 

そして、このサイトの読者の皆さんで「こんなのも良かったよ」というオススメがあれば、ぜひコメントで紹介してみて下さい。

 

 

Gutrectomy 『Manifestation Of Human Suffering』

出身地 : ドイツ
▶︎https://gutrectomy.bandcamp.com/album/manifestation-of-human-suffering

衝撃的だったデビュー・アルバム『Slampocalypse』から5年。その間、EP『Slaughter the Innocent』のリリースや、SLAM WORLDWIDEを通じシングルを発表し続けており、シーンにおいての存在感はずっとあった。新たにベーシストLouis Weber、ドラマーSimon Wernertが加入してからのGutrectomyは、Simonの高いドラミング・スキルによってスラムパートへの導入部分のリズム・パターンがバラエティ豊かになったように感じる。ビートダウンしてからも重量感のあるリフの上を転がるようにハイピッチ・スネアを差し込んだり、アクセントとなるシンバルワークによって、各楽曲に新たな個性を与えてくれる。天性のリフ・センスでモッシーに展開し続ける本作、一押しは「Scorched Earth (ft. Dustin Mitchell of Filth)」、「Cranial Excavation」、「Apocalyptic Squirt Tsunami」の3曲。

 

 

Analepsy 『Quiescence』

出身地 : ポルトガル
▶︎https://analepsy.bandcamp.com/album/quiescence

Gutrectomyと並んで、ワールドワイドな人気を誇るAnalepsyのセカンド・アルバム。前作『Atrocities from Beyond』発表後、私が運営するRNR TOURSで来日ツアーも果たし、数少ない現代スラム・リスナーが各地公演に訪れていたのは嬉しかった。当時のメンバー全員がナイスガイで、ツアーも素晴らしい思い出になっている。残念ながらAnalepsyのリーダーでありMiasma RecordsのオーナーMarco Martins以外のメンバーが本作前に脱退。新体制で制作された本作は、デスメタリックな魅力を改めて追求し、自身が鳴らしてきたスラミング・ブルータル・デスメタルに注入したような仕上がりで、個人的にはAnalepsy史上最高傑作。引き締まったサウンド・プロダクションによって殺傷能力を増したスラムリフは、しっかりデスメタリック。ビートダウン・ハードコア・リスナーには受けないかもしれないが、メタル・リスナーのスラム入門アルバムとして今後その重要度が高まってくる可能性がある。

 

 

 

Kraanium & Existential Dissipation – Polymorphic Chamber of Human Consumption

出身地 : ノルウェー/カナダ
▶︎https://www.youtube.com/watch?v=iL_k6V5Vndc

北欧スラム・キング Kraaniumとカナディアン・スラム・カルト、Existential Dissipationのスプリットは、Existential DissipationのボーカルだったBob Shawの遺作。BobはCuffなどマニアックなスラムバンドで活躍し、シーンの人気者だった。両者共に血生臭いブルータル・デスメタルをベースにダイナミックなスラムリフを刻み続けていくスタイルで、現代スラムの礎とも言えるクラシック感がある。GutrectomyやAnalepsyといった正統派とは違うデスメタルの荒々しさを味わうには最適な作品と言えるだろう。それにしてもこの作品で聴けるBobのボーカル、すでに人間味がなく良い意味で不気味だ。

 

 

 

Peeling Flesh 『Human Pudding』

出身地 : アメリカ・オクラホマ州
▶︎https://viletapesrecords.bandcamp.com/album/human-pudding

2021年結成、スラム・シーンの超新星Peeling Fleshのデビュー・アルバム。昨年発表したEP『Slamaholics Mixtape』でシーンの話題をかっさらった彼ら、ドラマーはVile Impregnationでも活躍する23歳のJoe Pelleter、そしてAberrant Constructのメンバーもいるというから聴く前からどんなに凶悪なスラムか想像出来る。ヴィジュアルを見る限り、ノリはビートダウン・ハードコアやデスコアっぽく、ボーカルのDamonteal Harrisに関してはヒップホップ的なヴァイブスもある。しかしアートワークやリフから滲み出てくる強烈なブルータルさは本物で、かなりディープなブルータルデスメタルの世界観を理解していないと表現できないツボを押さえている。RIFF CULT的には上半期スラムはPeeling Fleshがダントツでナンバーワン。

 

 

Vile Impregnation 『SLAVE』

出身地 : アメリカ・テキサス州/オクラホマ州/アリゾナ州
▶︎https://realityfade.bandcamp.com/album/slave

2009年からスタートしたVile Impregnationであるが、すでにオリジナルメンバーは脱退済み。現体制で動き出したのは2016年ごろからになる。それぞれにいくつものサイドプロジェクトを持つ若きミュージシャンらが集結、Devour the Unbornなどで知られるJosh、InfantectomyのTriston、そしてPeeling FleshをはじめStranguledにも在籍したJosephのトリオ体制で、かなりマニアックなことをやっている。いわゆる溺死系と言われるガテラルで、ゴアグラインド/ゴアノイズ的な面白さもありつつ、基本はスラムリフを刻み続けていく無慈悲なスタイル。個人的なツボとしてライブメインでなく、音源制作に重きを置いたバンドが好きで、このバンドはロゴから楽曲スタイルからツボにハマる要素がたっぷり。若干のシンフォニックなアレンジも全然良くないが良い。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?すでに聴いたものもあったと思いますが、最後の2枚はまだチェックしていないという人もいるかと思います。マニアックなバンドをたくさん知っているとか、いち早く新譜をチェックしていることは関係なく、自分のお気に入りのスラミング・スタイルのバンドがどんな影響があるのか、どんなシーンに属しているのか、どんなメンバーがいるのか、そういうところをもっと知っていくことを極めていけば、さらにディグが楽しくなると思います。この記事はコメントが出来るので、みなさんのおすすめがあればぜひ書き込んでみてください。

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP15 (2022年下半期)

メタルコア名盤 TOP10 (2022年上半期)

 

2022年にリリースされたメタルコアのアルバム、EPの中から、RIFF CULTがピックアップするオススメの名盤を10枚選び、アルバムレビューしてみました (プログレッシヴ・メタルコアは別枠で投稿予定) 。もし皆さんのおすすめがあれば、是非コメント欄に書き込んでみて下さい!

 

 

Secrets 『The Collapse』

ポイント : Secrets史上最重量級のリフとRichardのクリーンとのコンビネーション
▶︎https://velocity.lnk.to/collapse

何度も来日公演を行っていることから、ここ日本でも抜群の人気を誇るSecrets。Velocity Recordsへと移籍し、前作『Secrets』から4年振りのリリースとなった通算5枚目のフル・アルバムは、Secrets史上最もヘヴィなリフとRichardのクリーン・ヴォイスのコンビネーションが心地良い一枚となっている。

Secrets最大の魅力とも言える「WadeのスクリームとRichardのクリーン・ヴォイスのコンビネーション」は、2010年代初頭のメタルコア/ポストハードコア黄金期を象徴するものであり、Rise Recordsからリリースされたデビュー・アルバムからサード・アルバムまでの人気の高さがそれを象徴している。2018年に正式加入したギタリストConnor Braniganの存在は、Secretsを現代的なメタルコアのヘヴィネスへアップデートさせ、本作で華開いたと言えるだろう。

先行シングルとして発表された「Parasite」は、デスコアへも接近するかのような重厚なリフが組み込まれており衝撃を受けたファンも多いだろう。ミュージックビデオにもなっている「The Collapse」や「Get Outta My Head」は過去と今を繋ぐ楽曲としてアルバムのキーになっている。再びシーンのトップに躍り出た彼ら、新作を引っ提げたジャパンツアーの開催が待たれる。

 

 

 

Motionless In White – Scoring the End of the World

ポイント : 多彩なゲストによって浮かび上がる新たなMotionless In Whiteの魅力
▶︎https://motionlessinwhite.lnk.to/STEOTW

 

独特の存在感を放つペンシルバニアのMotionless In White (モーションレス・イン・ホワイト) の通算6枚目となるフル・アルバムは、2019年にリリースした前作『Disguise』よりもコンセプチュアルであり、まるで映画のような世界観で聴くものを引き込む超大作だ。Bullet For My ValentineやIce Nine Kills、A Day To Rememberを手掛けたDrew Fulkによるプロデュースで、新たにバンドへ加入したVinny MauroとJustin Morrowにとってはデビュー作となる。

この作品には多くのゲストが参加しており、Knocked LooseのBryan Garris、Cradle of FilthのLindsay Schoolcraft、BeartoothのCaleb Shomo、そしてMick GordonがMotionless In Whiteのフィルターを通じ個性を発揮している。バンドの元々の持ち味といえば、そのヴィジュアルからもわかるようにゴシック・メタルやインダストリアル・メタルを通過したメタルコア・サウンド。多彩なゲストによってそれらは異なる輝きを放っている。

RIFF CULTとしてピックアップしたいのはもちろんBryan参加の「Slaughterhouse」。デスコア、ビートダウン・ハードコアをルーツとした強烈なブレイクダウンが搭載された楽曲によって、クリスのクリーン・パートが鮮明に浮かび上がり耳に残る。そのほかにも「Meltdown」といったヘヴィでインダストリアルな楽曲も面白い。シーンのトップに君臨するバンドとして、確実に爪痕を残した傑作と言えるだろう。

 

 

 

Memphis May Fire 『Remade In Misery』

ポイント : メタルコア・キングに相応しいエレガントなサウンド・デザイン
▶︎https://riserecords.lnk.to/MMF

 

約1年をかけ、丁寧にプロモーションされたきたテキサスのメタルコア・レジェンド、Memphis May Fire (メンフィス・メイ・ファイヤー) 4年振り通算7枚目のニューアルバムは、2012年にリリースされた彼らの代表作『Challenger』に肩を並べる堂々たる快作となった。

「Blood & Water」からは変わらぬRise Records系メタルコア/ポスト・ハードコアの香りが漂い、どこか懐かしい気持ちにもなる。バンドのギタリストKellen McGregorによってプロデュースされていることから、あらゆる楽曲にアルバムのキーとなるリフが組み込まれており存在感を見せる。彼らのサウンドから漂うアメリカン・ロックのルーツはやはり、このKellen McGregorにあると言えるだろう。Memphis May Fireが他のメタルコア/ポスト・ハードコアにない、言葉では言い表せない個性はここにあると感じる。Kellenのリフにフォーカスしてアルバムを聴いてみるのも新しい発見があるはずだ。

「Make Believe」のようなメタルコア・バラードは、後期Memphis May Fireが得意としてきたスタイルで、『Remade In Misery』においてもアルバムにハリを持たせてくれる。王者の貫禄、といえば簡単ではあるが、その貫禄が出る理由をたっぷりと詰め込んだ最新作、聴くたびに味わい深くなっていく。

 

 

 

Hollow Front 『The Price Of Dreaming』

ポイント : スタイリッシュに鳴る新世代メタルコア・サウンド
▶︎https://unfd.lnk.to/ThePriceOfDreaming

ミシガン州グランドラピッズを拠点とするメタルコア・バンド、Hollow Front (ホロー・フロント) が、UNFDと契約してリリースしたセカンド・アルバム『The Price Of Dreaming』は、Memphis May FireやSecretsが好きなら絶対にチェックしておきたい2022年上半期のメタルコア傑作だ。

2020年にアルバム『Loose Threads』をリリース、ポテンシャルの高さは耳の早いリスナーの間で話題になっていたが、ここまで化けるとは想像もしていなかった。一聴すると、Memphis May FireやSecretsといった2010年代メタルコア/ポスト・ハードコア・サウンドをベースにしたバンドとだけ感じる人もいるかもしれないが、至る所に現代的なエレメンツが散りばめられている。プログレッシヴ・メタルコアの浮遊感はバンド・グルーヴを豊かに、そしてバウンシーに仕上げHollow FrontにあってMemphis May Fireにない魅力と言える。そして全体的に漂うメロディック・ハードコア/ポスト・ハードコアの刹那はHollow Frontをスタイリッシュに魅せている。全ての楽曲が必聴級であるが、「Running Away」は非常にHollow Frontの魅力の根源とも言えるサウンドが分かりやすく伝わってくると思う。

 

 

 

Northlane 『Obsidian』

ポイント : プログレッシヴ・メタルコアを大きく発展させた挑戦作
▶︎https://northlane.bfan.link/obsidian

すでにキャリア13年を誇るNorthlaneの3年振り通算6枚目のスタジオ・アルバムは、UNFDを離れ独立してリリースされた。自身のレーベルBelieveを持ち、プロデュースに至るまで自分たちだけで作り上げたこの作品は、「プログレッシヴ・メタルコアのNorthlane」という既存認識を捨て去り、「Northlaneサウンド」を作り上げた重要作と言えるだろう。

近年、バンドのギタリストであるJon Deileyの存在感は強まっており、彼が作り出すエレクトロニックなアレンジが高く評価されてきた。アルバムのタイトルトラック「Obsidian」を聴いてみれば、エレクトロニックなアレンジが楽曲の肝となっていることが分かるだろう。それは時にMeshuggahやAnimals As Leaders、Vildhjartaにも接近するプログレッシヴ感に溢れており、アートワークのインダストリアルな雰囲気にもマッチしている。「Dark Solitaire」や「Nova」といった楽曲も新しいNorthlaneの魅力がたっぷりと感じられる良曲。これからどんなバンドになっていくのか、楽しみになってくる本作、2022年にリリースされたことは後々重要になってきそう。

 

 

 

Wolves At The Gate 『Eulogies』

ポイント : クリスチャン・メタルコアの典例とも言える美しいリード・パート
▶︎https://watg.ffm.to/eulogies

オハイオのクリスチャン・メタルコア・バンド、Wolves At The Gate の通算5枚目となるフル・アルバムは、変わらずSolid State Recordsからリリースされた。日本ではあまりクリスチャンであることで他のバンドと区別することはほとんどないが、クリスチャン・チャートなどが存在するアメリカではクリスチャンでああること、そうでないことは重要な要素だ。クリスチャンだから聴かないとか、クリスチャンだから聴くという文化がある中で、「彼らはまるでクリスチャンでなかったけど、彼らが好きだからクリスチャンになる」というきっかけにすらなりそうなほど、素晴らしいメタルコアを本作で鳴らしている。

今年1月にリリースされた先行シングル&ミュージックビデオ「Lights & Fire」は、シンガロングを促すコーラス・ワークを携えたキラーチューン、この時点で今年のアルバムは素晴らしいものになると確信した人も多いはず。オルタナティヴ・ロックの香り感じた「Lights & Fire」とは違い、ストレートなメタルコア鳴らす「Shadows」もアルバムにおいてリードトラック級の仕上がりと言える。

 

 

 

InVisions 『Deadlock』

ポイント : イングランドらしさ溢れるBenのボーカル
▶︎https://bfan.link/iV-Deadlock

2016年の結成からサード・アルバムとなる本作まで、彼らの存在は「ダークホース」的ポジションで、アンダーグラウンド・メタルコア・シーンで注目を集めてきた。イングランドで静かに育まれたInVisionsサウンドは、本作でグッと本格的なものになったように思う。「Annihilist」や「Half Life」あたりは、同郷のトップバンドWhile She SleepsやArchitectsを彷彿とさせる。サウンドもそうだが、かなりの影響を受けていると感じるのはボーカリストBenの歌い方がArchitectsのSam Carterを彷彿とさせるからだろう。

 

 

 

Sable Hills 『DUALITY』

ポイント : Sable Hillsの美的感覚を巧みに表現した快作
▶︎https://linktr.ee/sablehills

『Embers』から約3年。精力的なライブ活動で着実にステップアップを遂げた彼らのセカンド・アルバムは、活動当初から誇示してきたSable Hillsサウンドに磨きをかけストレートに表現した快作だ。

モダンなメロディック・デスメタル、メタルコアのエレメンツというのは、日本のメタルコアにおいてはSailing Before The Windを筆頭に、日本メタルコアの美学のひとつのようにして育まれてきた。特にSable Hillsはドメスティックなメタルシーンと幅広くクロスオーバーしながら、自身のスタイルに磨きを掛け、コロナ禍であってもその成長を止めなかった。

The Black Dahlia MurderやDevilDriver、Unearthなどを手掛けたMark Lewisがプロデュースを手掛けた本作は、稲妻のようなリードが楽曲を牽引するようにして展開、ライブ・パフォーマンスではお馴染みとなったヘッドバンギングを誘うようにグルーヴを司るKeitaとUedaの存在も大きい。この夏、この作品を引っ提げた「DUALITY」TOURをはじめとする国内外のライブで、ボーカルTakuyaが躍動する姿も目に浮かぶ、壮大なスケールを持つ一枚、必聴です。

 

 

 

Monument of A Memory 『Harmony In Absolution』

ポイント : 惜しいところはあるがポテンシャルは十分

▶︎https://www.monumentofamemory.com/

Lorna Shore加入前のWill Ramosが在籍したことで知られるニュージャージーのメタルコア・バンド、Monument of A Memoryのデビューアルバム。これまでのシングル、EPでこのバンドが持つポテンシャルというところは非常に評価されてきたと思う。新体制となってもそれは変わっていないし、オープニング・トラックの「Atrophy」を聴けば彼らに才能があることは確信に変わるだろう。

オリエンタルなアレンジも絶妙でMonument of A Memoryのスタイルに合っていると思う。ただ、欠点をあげるとすればサウンド・プロダクション。キックとベースが潰れてしまっているのが残念で、もちろんここはメタルコア・リスナーひとりひとりに好きなサウンドがあることは分かるが、リマスタリングすれば格段に良くなり、グッとバンドを取り巻く環境もよくなっていくはず。

 

 

 

A Sense of Purpose 『All the Grief Was Gone』

一言 : プログレッシヴ・メタルコア、ブレイク候補一番手

▶︎https://open.spotify.com/album/3gRhSHB8N8BOFykunKSZUr?si=Oe9fvzDdQ4CD0bsc11vHpw&nd=1

オハイオ州クリーヴランドのプログレッシヴ・メタルコア・バンド、A Sence of Purposeの7曲入りアルバム (EP?) 、これが非常に素晴らしかった。ポストハードコアとしても優秀だし、プログレッシヴ・メタルコアとしても非常に高いポテンシャルがあると感じられることが、実は広い目でみると「どっちつかず」のようになってしまい、いまいち存在感がアピールできないことってあると思うのですが (プラス、A Sence of Purposeというバンド名はIn Flamesのアルバムタイトルと同じでメロディック・デスメタルっぽさを感じる人もいると思う)、彼らはいい線いってると思います。

この作品のリードトラックは「WSTE AWAY」で、プログレッシヴ・メタルコアの中にBring Me The Horizonを思わせるオルタナティヴ・メタルコアの要素も交えているのが印象的。アルバム、良いレーベルから出せばブレイク間違いなし。

 

 

 

最新のメタルコアをチェックするなら、RIFF CULTのSpotifyプレイリスト、YouTubeプレイリストがおすすめ!

 

RIFF CULT : Spotifyプレイリスト「All New Metalcore」

 

RIFF CULT : YouTubeプレイリスト「All New Metalcore」

Betraying The Martyrs 『Silver Lining』(2022年 – Out of Line Music)

 

Betraying the Martyrs 『Silver Lining』 アルバムレビュー

1. Black Hole
2. Pressure
3. Embers
4. Mirror
5. Swan Song

 

2008年からフランス・パリを拠点に活動する Betraying the Martyrs の3年振りとなる新作は、Sumerian Recordsからフランスの新鋭レーベルOut of Line Musicへと移籍してリリースされた。これまでバンドのフロントマンとしてバンドをメインストリーム・メタルコア・シーンへと導いてきたボーカリスト、Aaron Mattsが2021年に脱退。新たに加入したボーカリストRui Martinsのデビュー作として注目が集まっている。

 

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Aaron脱退後にリリースされた最初のシングル「Black Hole」は、雄大なメタルコア・ビートにシンフォニックなアプローチを交えながら、これまで培ってきたBetraying The Martyrsのスタイルを聴かせてくれる。新しいと感じるのはやはり、Ruiのボーカルで、クリーン・パートもそつなくこなしている。ややプログレッシヴなエレメンツが増えたかなと感じたものの、続く「Pressure」は燃えるようなメタルコア・チューンで作品のキラーチューンとして存在感を見せる。

 

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エンディングを飾る「Swan Song」はミュージックビデオとして公開されており、彼らがどこに向かっていくのかを感じさせる仕上がりとなっている。メロディは深みを増し、メロディック・デスメタルやオルタナティヴ・メタルのスケール感を持つこの楽曲は、Betraying The Martyrsを次のステージへと押し上げてくれるはずだ。

 

https://twitter.com/MartyrsTweets/status/1540283493464276994