ゴアグラインド 2022年の名盤10選

2022年にリリースされたゴアグラインド (Goregrind) の作品の中からRIFF CULTが名盤をピックアップし、アルバムレビューしました。ExhumedやGronibardといった90年代から活動するベテラン・バンドから、デビュー・アルバムをリリースしたばかりのバンド、日本国内から世界中あらゆる場所で活動するアーティストをピックアップしています。お気に入りを見つけて下さい!

 

シングルのみのリリースやレビューしていないバンドの中から選んだものは「All New Goregrind」というYouTubeプレイリストにまとめていますので下記からチェックしてみて下さい。そしてパブリブから田上智之さん著『ゴアグラインド・ガイドブック』が来年1月に発売されますのでこちらもポチッと予約しておきましょう。

 

 

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2021年のゴアグラインド 年間ベストアルバム

 

 

Exhumed 『To The Dead』

3年振り通算9枚目のスタジオ・アルバム。本作はボーカル/ギターMatt Harvery、ボーカル/ベースRoss Sewage、Deeds of Fleshにも在籍するドラマーMike Hamilton、GruesomeのギタリストSebastian Phillipsというラインナップでレコーディングされ、プロデューサーはコロンビア出身のAlejandro Corredorが手掛けている。先行シングルとして公開され、ミュージックビデオにもなっている「Drained of Color」では血濡れたデスグラインドを緩急豊かに疾走させ、隠すことの出来ないゴアメタルの腐臭が立ち込める。変わらぬ魅力詰まった一枚。

 

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Gut Explosion 『Gut to the Future』

東京を拠点に活動するパーティ・ゴアグラインド・バンド、Gut Explosionのデビュー作。お揃いのジャージとフェイスマスクを被ったヴィジュアルからも気合の入ったファニー・メタル志向が伝わってくる。SpasmGutalaxといったグルーヴィ・ゴアグラインドを彷彿とさせ、「Hard Gore」といった楽曲からも分かるようにニューヨーク・ハードコアを思わせるタフなリフも垣間見える。日本のメタルフェスに出たら会場がブチあがっちゃう可能性もあるので、刺激を欲しているプロモーターはブッキングして下さい。

 

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GRONIBARD 『Regarde les hommes sucer』

1998年から活動を続けるフレンチ・ゴアカルト、Gronibardの14年振りとなるサード・アルバム。Season of Mistからのリリースというのが驚きであるが、ゴアグラインドも彼らのようなスタイルはアートっぽさもあって、オーバーグラウンド・メタルシーンにおいては重宝されるのかもしれない。聴く人によっては全く受け付けられない気抜けたボーカル・スタイルが良くも悪くも絶大なインパクトを誇るが、ドゥーミーなゴアグラインドの演奏スキルは高い。

 

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Putrefaction Sets In 『Repugnant Inception Of Decomposing Paroxysm』

2018年、ゴアグラインド・スーパースター達によって結成された。Lymphatic PhiegmのボーカリストAndré Luiz、General SurgeryのギタリストUrban SkyttとベーシストGlemm Sykes、Expurgoのギター/ボーカルPhilipe BelisárioとドラマーAnderson Oliveiraの5人体制で活動をスタート。デビュー・アルバムとなる本作は、何から何まで初期Carcassからの絶大な影響を感じさせるオールドスクール・ゴアグラインドに仕上がっており、時折差し込まれるドゥーミー/スラッジなリフはリバイバルするデスメタル・シーンでも受けそう。特にGeneral Surgeryファンにオススメ。Carcass以降のパソロジカル・ゴアグラインドを現代に繋いできた巨匠らによるパンチの効いた一枚。

 

 

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Pharmacist 『Flourishing Extremities On Unspoiled Mental Grounds』

Crash Syndromのギター/ボーカルとして知られるKyrylo Stefanskyiによるオールドスクール・パソロジカル・ゴアグラインド/デスメタル・プロジェクト、Pharmacistのセカンド・アルバム。2020年に始まってからEP、スプリット作品を連発、国際的な注目度を集める中リリースされた本作は、Carcass直系のゴアグラインドの中に、ヘヴィメタルやハードロックのエレメンツを捩じ込んだ快作で、「Corpus Sonica」は最も評価されるべきアルバムからのキラーチューン。

 

▶︎Metal Archives

 

 

Morgue Tar 『Immersed In Mortiferous Enmities』

テキサス州オースティンを拠点に活動するMorgue Tarのデビュー・アルバム。何もない部屋に蛆虫だけが蠢くミニマルなアートワークと遠目で見ると蜘蛛の巣にしか見えないロゴが得体の知れない不気味さを醸し出している。Last Days of HumanityがD-BEATとクロスオーバーしたかのようなドライヴ感たっぷりのゴアグラインドは、人間が溺れてから溺死するまでのドキュメントかのようなボーカルと混ざり合いながら駆け抜けていく。この手のバンドは曲名勝負みたいなところがありますが、曲名がないのもMorgue Tarなら一周回ってアリだなと思わせてくれる。

 

▶︎Bandcamp

 

 

Guineapig 『Parasite』

イタリア・ローマを拠点に活動する正統派ゴアグラインド/デスメタル・トリオのセカンド・アルバム。過去にDisgorge (Italy) にも在籍し現在はUltimo Mondo Cannibaleを兼任するギター/ボーカルFra、元Bestial Devastationのベース/ボーカルAlessioとドラマーGiancarloのトリオ編成で、本作はSpikerot Recordsからリリースされた。死体やエログロといったゴアグラインドの象徴的なヴィジュアルは排除。サウンド直球勝負の清々しさは評価すべきだ。ヘヴィにチューニングされたリフはメロディアスであるが、溺死ボーカルを随所で発動しおどろおどろしい雰囲気が漂う。

 

▶︎Metal Archives

 

 

Phyllomedusa 『Wretching At The Sight Of The Pregnant』

メリーランド在住、孤高のゴアグラインド職人Big Frogによるソロ・プロジェクト。名前の「Phyllomedusa」はネコメガエルを意味する。カエルだけをテーマに年間40、50枚の音源をリリースし続ける多作っぷりで、彼の名前をインターネット・コミュニティで見ない日はない。2010年代からインターネット・ミーム的に登場したゴアノイズ的サウンドで、正直聴いて感動するとか盛り上がるとか、そういう音楽ではない。自称Frognoiseと呼ばれるサウンドにカエル要素があるとすれば、ボーカルのゴボゴボとした質感だけでこれはVomitnoiseと呼ばれるゴアノイズのサブジャンルの一つとしてすでに存在している。ただそういう細かい指摘とか、音楽的に優れているとかは全く重要でなく、ゴアグラインドというエンターテイメントの中で新しい文化としてたった一人でFrognoiseをやってることが重要で、このアルバムをレビューしている今現在も彼は何か作っているはずだ。ゴアグラインドを楽しんでいる人はPhyllomedusaの存在意義を理解出来るだろう。

 

▶︎Discogs

 

 

First Days Of Humanity 『Bone Hut』

2019年にスタートしたLast Days of Humanityのパロディ・プロジェクト、First Days of Humanityの何十枚目か不明であるが2022年にリリースされた一枚。そのプロジェクト名から人類が誕生した最初の日にちなみ、原始人やその時代をテーマにしたアートワークや楽曲名がずらりと並ぶ。だからなのか、ゴアグラインドのじめっとしたサウンドスケープではなく、どこか乾いたパソロジカルな雰囲気もあり、意外とサウンド面で評価出来る部分が多い。「Regurgitating Chunks of Mammoth (マンモスの塊の再利用)」という楽曲も無理やりゴアテーマに落とし込んだマンモスの肉塊が最新技術でプルプルと蠢き、再び生命が宿るような躍動感あるグルーヴが感じられる (気がする)。

 

▶︎Discogs

 

 

Last Cheeseburgers of Humanity 『Last Cheeseburgers of Humanity』

アリゾナ在住のTapoとJacksによるゴアノイズ・ユニット、Last Cheeseburgers of Humanityのデビュー作。First Days of Humanityが打ち出した「〜Days of Humanity」というパロディ。Middle Days of Humanityが登場したことで終わったかと思いきや、全く意味不明な形でパロディの勢いを加速させてきた。ありとあらゆるチーズバーガーを並べたアートワークは何だかゴアっぽさがあるが、「これをみてお腹が空くが、実際は動物の死体を焼いた塊なんだ」というメッセージを感じるような感じないような……。サウンドはLast Days of Humanity伝説のアルバム『Putrefaction In Progress』とか『The Xtc Of Swallowing L.D.O.H. Feaces』のようなライオンがボーカルをやっているようなゴアグラインド〜ゴアノイズ。来年はいったいどんな「Last 〜 of Humanity」が誕生するのか楽しみだ。

 

▶︎Bandcamp

 

 

 

ゴアグラインド 2021年の名盤 TOP9

テクニカル・デスメタル 2022年の名盤TOP11 (後編)

2022年にリリースされたテクニカル・デスメタル (Technical Death Metal) の中から年間ベスト・アルバムをピックアップしアルバムレビュー。前編に続き後編です。どうしても合計20枚に絞ることが出来ず、21枚という中途半端な数字ですが、全部チェックして欲しいくらい、今年は名作が多かったです! 過去に執筆したテクニカル・デスメタルの年間ベストもお時間ありましたら読んでみて下さい。

 

テクニカル・デスメタル 2022年の名盤TOP10 (前編)

テクニカル・デスメタル 2021年の名盤15選

テクニカル・デスメタル 2020年の名盤 10選

 

シングルリリースのみなど、気になるバンドをメモしたYouTube、Spotifyプレイリストもぜひフォローして下さい!

 

 

 

Psycroptic — Divine Council

4年振りのリリースとなった8枚目フルレングス。近年のPsycropticはダイナミズムを追求しようとせず、ミニマルなスタイルへと静かにアップデートを続けてきた。派手な装飾をそぎ落とし、スラッシュメタルやオールドスクール・デスメタルの持つ純然たるグルーヴを老練のテクニックでスタイリッシュに生み出してきた。アルバムのオープニングを飾る「Rend Asunder」に代表されるようなスラッシーな刻みを主体とした楽曲が大半を占めており、聴き心地を徹底的に追求したテクスチャーの良さは格別。エンディングの「Exitus」までPsycropticの持てる才能を発揮したベテランならではの仕上がり。

 

 

 

Deathbringer — It

2001年ベラルーシ・グロドノで結成。AmentiaやDisloyalなどにも在籍するギタリストArtem Serdyukによって立ち上げられ、セカンド・アルバムとなる本作までにボーカリストMario、Posthumous Blasphemerに在籍した経歴を持ち、AmentiaでArtemとバンドメイトだったAlexander、Disloyalなどで活躍したドラマーKrzysztofというラインナップになり、Unique Leader Recordsと契約。一般的なデスメタルの展開の概念をぶち壊し、ドラマ性を徹底的に排除。アヴァンギャルドでテクニカルな不協和音をふんだんに散りばめ、暴力的に駆け抜けていく。

 

 

 

Origin – Chaosmos

1997年からカンサス州を拠点に活動するテクニカル・デスメタル・バンド、Origin が通算8枚目のスタジオ・アルバム。Nuclear Blast Blast/Agonia Records からリリースされ、Robert Rebeckがミックス、Colin Marstenがマスタリングを務めている。アルバムのタイトルトラックはミュージックビデオにもなっており、これぞOriginとも言うべきサウンドに圧倒されるだろう。やはりなんと言ってもドラマーJohn Longstrethのプレイは独特。絶妙に揺れるリズムの妙も取り入れ、細やかなシンバルワークとスネア、ソフトなタッチで叩き込まれるJohnの高等技術は素晴らしい。

そしてPaul Ryanのリフは粘着質で現行のブルータルデスメタルやデスコアといったヘヴィ系ジャンルとは逆をいくクラシックな仕上がり。それでこそ際立つメロディの粒立ちの良さはJohnの細やかなシンバルワーク、そしてMikeのフィンガースタイルのベースプレイとうまく絡む。やはり彼らがテクニカル・デスメタルを極めてきた中で、このプロダクションが最良だと感じているのだろう。「Ecophagy」は『Antithesis』以降のOriginらしい一曲。デスメタリックなメロディにエモーショナルな香りは一切感じない、ただどこかクラシカルに響く瞬間があり面白い。圧倒的なブラストビートの上にスウィープを炸裂させるスタイルはOrigin節と言える。

全体的に派手さはなく、目新しいこともしていないが、聴けば誰しもがOriginであると一発でわかる確かなオリジナリティは健在。なかなか個性を発揮するのが難しいジャンルの中でクローンと呼ばれるようなスタイルを持つバンドは思い浮かばない。

 

 

 

Artificial Brain — Artificial Brain

2011年ニューヨーク・ロングアイランドで結成。この作品が3枚目のアルバムで、RevocationのギタリストDan Gargiulo、ベーシストSamuel Smith、ドラマーKeith Abrami、ギタリストのJon LocastroとOleg Zalmanの5人で制作された。それぞれにFawn Limbs、Pyrexia、Pyrrhon、Severed Saviorなどで活躍した腕利きのミュージシャンであり、それぞれの驚くべき造詣意欲が生み出すサウンドは、デスゲイズ的な開放感にテクニカルなプログレッシヴ・フレーバーがふわりと覆い被さる、アーティスティックな仕上がり。

 

 

 

Soreption — Jord

4年のスパンでコンスタントにアルバムリリースを続ける彼らの4枚目フルレングスは、再びUnique Leader Recordsと契約して発表された。Mikaelが脱退し、ギタリスト不在の3ピースとなっているが、Ian Wayeを中心に多彩なゲストが参加し、メロディックなSoreptionサウンドに華を添えている。Archspireを彷彿とさせるショットガン・ボーカルは、リードトラック「The Artificial North」を筆頭にアルバムの中でもキーと言える存在感を放っている。心地良いグルーヴは確かなテクニックによって生み出され、後続のバンドにも大きな影響を与えている。

 

 

 

Exocrine — The Hybrid Suns

3年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。プロデュースはギタリストのSylvainが担当、前作までに築き上げた「Exocrineサウンド」を一つ上のレベルへと押し上げる内容で、トータル34分とスッキリとした収録時間も上手く作用している。ミュージックビデオにもなっている「Dying Light」ではMatrassの女性ボーカルClémentineをフィーチャーし、ブラッケンド・デスコアにも接近。知的な神秘性を持ちつつ、バウンシーでフックの効いたリフやドラミングがファストに繰り広げられていく、自信に満ちた作品だ。

 

 

 

Inanimate Existence — The Masquerade

3年振りのリリースとなった通算6枚目フルレングス。メンバーチェンジもなく、アートワーカー、エンジニア共に前作から同じ布陣で量産体制に入ったInanimate Existence。インスピレーションの泉がこんこんと湧き出す彼らのアイデアは、ブルータルな小技が光るブラストビートとガテラルが印象的。First Fragmentを彷彿とさせるネオ・クラシカルなギターソロをたっぷりと組み込み、どこか「テクニカル&プログレッシヴ組曲」のような上品さが感じられる。「Into the Underworld」は彼らの魅力を端的に表現したフックの効いたキラーチューン。

 

 

 

Deadsquad — Catharsis

2006年からジャカルタを拠点に活動する中堅、DeadSquadの通算4枚目フルレングス。本作から新体制となり、元BurgerkillのボーカルViky、ギタリストのStevieとKaris、ベースShadu、元GerogotのドラマーRoyの5人で、オリジナルメンバーはStevieのみ。DeadSquadにとって大きな変革期を迎え放たれるサウンドは、うねるように奔放で波打つリフが華麗にテンポチェンジを繰り返し、スラムからテクニカルと目まぐるしく横断していく。親しみやすいフックの効いたブルータル・デスメタルの基本形を確かなテクニックで表現。

 

 

Darkside Of Humanity — Brace For Tragedy

Sleep Terror、Six Feet Underなど20を超えるバンドでドラムを務めるMarco Pitruzzellaと、同じくSix Feet Underに在籍し、Brain DrillやRings of Saturnでも活躍したギタリストJeff Hughell、元Severed SaviorのボーカリストDusty Boisjolieというアンダーグラウンド・スーパースターらのデビュー作。火炎放射器のように放たれるギターのタッピングの嵐、ベース、ピアノを兼任するJeffがグルーヴィなデスメタルの上で発狂するかのように繰り広げていく。ユニークで飽きない展開は流石だ。

 

 

Sonivinos — Sonicated Intravaginal Insemination In Numbers

フランス/ベルギーを拠点に活動するデスメタル・バンドHenkerに在籍していたギター/ボーカルStefとRyanのコンビが、テクニカル/ブルータル・デスメタル・シーンきっての多忙ミュージシャンであるベーシストJeff HughellとドラマーMarco Pitruzzellaの4人による多国籍バンドSonivinosのデビュー作。世界最高峰の技術を詰め込んだ音速ブラストビートとピッタリと寄り添いながらメロディアスに炸裂するベースの音色に驚愕。StefとRyanもそれを追い越すようにして咆哮しリフを刻み続けていく。これが人力とは俄かに信じ難い作品。

 

 

Brute — Essence Of Tyranny

1998年からプレショフを拠点に活動するベテラン、Bruteの通算4枚目フルレングス。唯一のオリジナル・メンバーであるŠtefan Tokárがギターを務め、本作から新たに加入したDominikがボーカル、Jaroがベースを担当し、ゲストドラマーにBatushkaやBelphegorのライブドラマーであるKrzysztof Klingbeinを迎えレコーディングされた。血濡れたブルータルなチェーンソーリフがデスメタリックに刻み込まれ、雪崩のように叩き込まれるドラミングとディープなガテラルが奥深いデスメタルの世界を演出。まるでアートワークをそのままサウンドキャンパスに描いたような仕上がり。

 

ブルータル・デスメタル 2022年の名盤 (前編)

2022年にリリースされたブルータル・デスメタルの中から、下半期にリリースされた名盤を年間ベストとしてレビューしました。上半期はあまり良い作品に出会えませんでしたが、下半期はリリースラッシュで毎週のように素晴らしい作品を聴くことが出来ました。前編、後編と合わせて読んでみて下さい。

 

2022年にリリースされたブルータル・デスメタルの良曲をまとめたYouTubeプレイリスト

 

RIFF CULTのSpotifyにて「All New Brutal & Tech Death Metal」のプレイリストを公開中。ぜひお気に入りに追加して下さい。

 

 

Crypt Rot – An Ancient Summoning

イングランド・ウェールズを拠点に活動するCrypt Rotのデビュー・アルバム。同郷のDry Cough Recordsからリリースされ、フィジカルはBrutal Mindから発表されている。ここ数年でメキメキと実力を付けてきたドラマーJustin Wallischは、Between the KillingsやMaimed、Necessary Death、Severed Headshopなどを兼任しておりUKブルータル・シーンで今後キーマンになりそうな人物。ギターとベースを兼任するTom HughesはMaimedでもJustinとタッグを組んでいる。

 

ロゴが良い

 

ボーカルKyleを加えたトリオ編成で制作された本作は、キャッチーなスラムリフが豊かなグルーヴを生み出し、タイトなドラミングがドライヴする。これだけ聞くとスラミングなのかと思うだろうが、楽曲群はどれもピュアなブルータル・デスメタルに近い美的感覚を持ってして仕上がっていると言えるだろう。「UKのPathology」とでも言うべき純なブルデスの魅力が感じられる。タイトルトラック「An Ancient Summoning」はガテラル唱法において優秀な楽曲でもある。

 

 

Guttural Disease – The Foreseen Deadline

インドネシア・西ジャワ州の州都バンドンを拠点に活動するGuttural Diseaseのファースト・アルバム。結成は2011年と中堅の域にあるバンドであるが、2020年にギタリスト、ベーシストが加わり5人体制となったことで活動が本格化。Brutal Mindの猛プッシュもあり、リリース前から何かとよくその名を目にしてきた。

 

Guttural Disease

 

ドラムのサウンド・プロダクションから察するに、Disgorgeの影響が強くドライなスネアのいぶし銀の響きがなんとも心地良い。オールドスクールなリフも時折スラムしつつ、初期Deeds of Flesh的なギターワークもあり面白い。クラシックなブルデスを現代に鳴らす貴重な存在。

 

 

Sermon of Mockery – Crippler Crossface Murder Suicide

 

Mortal Decayのボーカリスト John Paoline とウクライナ在住のミュージシャンらからなるニュー・バンド、Sermon Of MockeryのデビューEP。2022年はウクライナにとって非常に辛い年であったが、意外にもジャンル問わずメタル・シーンが完全にストップしてしまうことはなかった (作品自体は戦争が始まる前に作られていたのかも)。

 

ロゴが素晴らしい

 

キーウ在住のドラマー Lev Kurgansky はPosthumous Blasphemer、Disarticulating Extinguishment、Ezophagothomia、Fleshgoreなどにも在籍した経歴があり、その腕はお墨付き。意外にもJohnはMortal Decay一筋だったこともあり、テイストの違うサウンド上でのガテラルは新鮮。リミッターの外れたドラミングは素晴らしく、このドラムが聴きたくて何度も聴いた一枚。アートワークは最高のJohn Zig。

 

 

Gargling – Depraved Ingestion Of Cranial Discharge

とにかくこの強烈なアートワークに衝撃を受けた。ここまでエネルギッシュな嘔吐にフォーカスした作品は見たことがない。このジャケだけで今年のベスト・アルバムは間違いないと確信したが、内容も素晴らしかった。2019年にCarbonized InnocentsやCryptophthalmosなどに在籍するMax RiveraとBrutal Scat、Fetid Bowel Infestation、NecrogasmのHarry Morganによって立ち上げられ、Maxは全ての楽器をこなし、Harryがボーカルを務めている。タイのEccymosisをはじめ、New Standard Elite直系とも言える雪崩系のドラミングが時折スラムパートを交えながら突進、猛獣のようなガテラルが何重にも重なっていく爽快感がたまらない。

 

 

Congenital Anomalies – Systematic Violence

チェコ・プラハを拠点に活動するCongenital Anomaliesの通算3枚目・フルアルバム。Lord of the Sick Recordingsのリリースでスラミング・ブルータル・デスメタル・バンドとして知られるが、どちらかと言うとDying Fetus直系のグルーヴィー・ブルータル・デスメタルと言ったスタイル。突出した個性はないものの、単純明快な楽曲構成、ブラスト一辺倒ではなくしっかりとグルーヴ重視のリフとドラミングが良い塩梅で組み込まれている。もちろんスラムパートもガッツリあるが、Congenital Anomaliesの魅力はどちらかと言うとスラムへ接続するまでの展開にあるように聴こえる。

 

 

Antropofagus – Origin

イタリア・ジェノヴァの重鎮、Antropofagus の5年振り通算4枚目のフル・アルバム。”Meatgrinder”を名乗るギタリストFrancesco Montesanti以外にオリジナル・メンバーはおらず、皆それぞれにいくつものバンドを掛け持ちしており、実質Meatgrinderのバンドと言えるだろう。本作からボーカリストにDevangelicの Paolo Chiti が加入。ブルータル・デスメタル・シーンを代表するドラマー Brutal Dave のマシーンのように正確なドラミングの上でしっかりとデスメタリックなボーカルが際立っている。繊細なメロディの輝きを微細に捉えながらも力強いリフで牽引していくMeatgrinderの確かな技術に圧倒される。グルーヴや転調など、そういったことが一旦置いておいて、芸術作品としてじっくりと聴き込むべき一枚。

 

 

Insect Inside – Into Impending Apotheosis

ロシアン・ブルータル・デスメタルの有名人達によって2017年に結成されたInsect Inside。昨年、デビュー・アルバム『The First Shining of New Genus』をリリースしているので、名前を聴いたことがあるというブルータル・デスメタル・リスナーは多いかもしれない。

 

Disfigurement of Flesh、Morphogenetic Malformation、Traumatomyと錚々たるバンドでドラムを務めるDaniil Sementsovの叩き出す個性的なグルーヴは輪郭をどんどんぼかしながら時にテクニカルに疾走。もう一つ彼らの特筆すべき点はEmbodiment Elimination、Equivokeなどに在籍するギタリストMikhail Lukoyanovのギターワーク。微細にエディットしたことで生まれるグルーヴを爆発させながらInsect Insideの世界観を演出する。アートワークもDisgorgeの『Parallels of Infinite Torture』を彷彿とさせる色味、構図で狙いが感じられる。

 

 

Vomit Forth – Seething Malevolence

アメリカ・コネチカットの新鋭、Vomit Forthのデビュー・アルバムはCentury Media Recordsからと言うことで、ブルータル・デスメタルというより、さらに広域のデスメタル・シーンに向けてアプローチされている。2018年結成、メンバーそれぞれに輝かしいキャリアがあるわけでなく、このタイプのバンドがCentury Media Recordsからデビューというのだから、やはりどこか引っ掛かる個性がある。

Sanguisugaboggのようなオールドスクール・デスメタルとスラミング・ブルータル・デスメタルがクロスオーバーして発生したデスメタル・ヘッズの為のビートダウン・メタルを鳴らし、その魅力はライブ映像のフロアの盛り上がり方を見るとよく分かる。Internal Bleedingのスラム成分が現代版にアップデートされたかのようなサウンドは希少価値が高い。

 

 

Excrescence – Inescapable Anatomical Deterioration

2020年にワシントン州タコマで結成されたニュー・バンド。New Standard Elite からのリリースということで、そのサウンドはなんとなく想像することが出来るだろう。もはやグルーヴを成さない強烈なブラストビートが音速で駆け抜けていき、ノイズの壁となって押し寄せてくるリフも完全にリミッターが振り切れてしまっている。彼らが面白いのは、他のNew Standard Eliteのバンドがノンストップで駆け抜けていくのに対し、しっかりとブレイクダウンやスラムパートを挿入しているところだ。ここまでやっていいのかと他を圧倒する、エクストリームな一枚。

 

 

Between The Killings – Reflection Of Murder

ベテラン揃いの新鋭バンド、Between The Killings のデビュー・アルバムはComatose Musicから。LividityやDeadenで活躍したギタリストVon Young を筆頭に、Necessary DeathやMaimedのベースIanとドラムJustinのコンビらが安定感のあるブルータル・ビートを生み出していく。スラムベースでありつつも幾度も急加速し、砂塵の如くグルーヴを巻き上げていく。不気味なメロディからは血が滴り落ちるかのような殺気が立っており、Between The Killingsサウンドを不気味に仕立てる。現代スラムはちょっとコッテリ過ぎる、というブルータル・デスメタル・リスナーには耳馴染みの良い一枚だろう。

 

 

 

ブルータル・デスメタル 2022年の名盤 (後編)

2022年上半期ブルータル・デスメタル 名盤TOP5

 

2022年上半期にリリースされたブルータル・デスメタルの名盤を5枚ピックアップしレビューしました。ビッグ・リリースはなかったし、スラミング・ブルータル・デスメタルが主流になった今、直球ブラスティング・スタイルを鳴らすバンドは天然記念物並みに希少価値が高くなってしまった。今年に入ってブラスティング・スタイルのトップレーベルだったNew Standard Eliteが動かなくなってしまい、それらのバンドがゴアグラインド/ゴアノイズ系へ流れていってしまったように思う。ゴアノイズは音楽的な面白みはないけどブルータル・デスメタル・カルチャー的なジョークとして追いかけてて面白いものの、ブルータル・デスメタルはそのサウンドで喰らいたいものだ。今回ピックアップした5枚は順不同だが、ナンバーワンはSijjeel。シングルのみリリースしたバンドについては別の機会に振り返っていきたい。

 

 

Sijjeel 『Salvation Within Insanity』

出身地 : サウジアラビア
▶︎https://comatosemusic.bandcamp.com/album/salvation-within-insanity

 

グラインドコア・バンド、Creative Waste のギタリストとして知られるHussain Akbarを中心に始まったこのプロジェクトは、2020年にKorpseなどでの活躍で知られるボーカリストFloor van Kuijk、Stillbirth、Placenta PowerfistのベーシストLukas Kaminskiが加入したことで本格的に動き始めた。EP『Cyclopean Megaliths』を経てComatose Musicと契約しデビュー・アルバムとしてリリースされた本作は、暴虐性を全面に出しつつも、しっかりとデスメタルの美学を貫いた作品で、ブルータルなリフとメロディアスなベースラインが竜巻のようにして展開し続けていく。Defeated Sanityを彷彿とさせるそのサウンドはより深い漆黒の闇の中を駆け巡っていくかのようだ。

 

 

Scrumptious Putrescence 『CanniBaalistic Offerings』

出身地 : スペイン
▶︎https://amputatedveinrecords.bandcamp.com/album/cannibaalistic-offerings

 

2018年結成、Scrumptious Putrescenceのデビュー・アルバム。現代ブルータル・デスメタルの中でもマニアックな人気の高いCarnivorous VoracityのボーカリストSeyerotをはじめ、Arthropodal HumanicideのLörd NebirøsとOskar Noctambulantが参加している。サウンド・プロダクションはチープでお世辞にも良いとは言えないが、ブルータル・デスメタルにそれは重要ではない。本作は異なるフレーズを切り貼りして繋ぎ合わせたり、反復させたりしながら最終的にドラマティックにまとまっていくという、不思議な作品。ところどころで楽曲のキーとなってくるメロディックなエレメンツはThe FacelessやRings of Saturnといったプログレッシヴさがある。一見なんの変哲のないアルバムだが、実は細かい面白さがあったりする。

 

 

Filthed 『Loathsome』

出身地 : ロシア
▶︎https://lordofthesickrecordings.bandcamp.com/album/loathsome

 

2017年からロシア・モスクワで活動する2ピース・ブルータル・デスメタル・バンド、Filthed。
Lord of the Sick Recordingsと契約してリリースされたデビュー・アルバムは、古き良きアメリカン・ブルータル・デスメタルを独自に混ぜ合わせたかのような作品でなかなか聴きごたえがある。Internal Bleedingすぎるスラム・パート、さらにハードコアに寄ったモッシュ・パートで血管を膨張させながらも、ピュアすぎるブラストビートで疾走したりする。一周回ってこのくらい純度の高いブルータル・デスメタルが心地良く感じる。

 

 

Horde Casket 『Plague Supremacy』

出身地 : アメリカ・オクラホマ州
▶︎https://hordecasket.bandcamp.com/

 

2006年から活動を続けるブルータル・デスメタル・中堅、Horde Casketのキャリア初のEPは、中心人物Steve Giddensを軸に、ドラマーにBrain DrillやSleep Terror、Six Feet UnderからThe Facelessなどに在籍してきた凄腕Marco Pitruzzella、Formaldehydeで20年以上活動してきたボーカルGreg Dukeが加わりトリオ編成で制作された。これまで5枚のアルバムをリリースしてきたHorde Casket。その存在感は決してブルータル・デスメタル・シーンにおいても突出したものはないが、個人的には、ハズレのない安定感のあるバンドで好きなバンドの一つ。EPというコンパクトな仕上がりだが、Marcoのドラミング、そしてSteveのクラシックなリフワークに脱帽。Severed Recordsらしい粘着質なグルーヴもあり流石だ。

 

 

Embryonic Devourment – Heresy Of The Highest Order

出身地 : アメリカ・カリフォルニア州
▶︎https://uniqueleaderrecords.bandcamp.com/album/heresy-of-the-highest-order

 

2003年から活動するベテラン・ブルータル・デスメタル・バンド、Embryonic Devourmentが、
Deepsend RecordsからUnique Leader Recordsへと移籍してリリースした通算4枚目のフルアルバム。新たにギタリストDonnie SmallとBen Harrisが加入し、若返りを果たした彼らのサウンドは、ミニマルな質感とプログレッシヴな小技が効いた渋い仕上がり。近年スラミング・スタイルのバンドをはじめ、デスコア方面のアーティストと契約を続けてきたUnique Leader Recordsが伝統的なブルータル・デスメタル、その中でも派手さのないマニアックなスタイルを持つEmbyonic Devourmentと契約したことが何より嬉しい。スピード、というよりはデスメタルのえぐみに真面目に向き合った一枚で好感が持てる。ただアートワークが下品すぎるのがマイナス…。

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP5 (2022年上半期)

 

すっかりブルータル・デスメタルの主流スタイルとなったスラミング・ブルータル・デスメタル。もはやブラストビートで突進し続けテクニカルなリフを詰め込んだサウンドは希少種となっている。ただ、スラミング・スタイルが主流となったことで、デスコアやビートダウン・ハードコアとの結びつきが深まったことは、ブルータル・デスメタル全体の活性化にとって良いことだと思う。クラシックなブルータル・デスメタルが好きな方には少し寂しい状況かと思うが、この流れに乗って世界各地でブルータルなサウンドが盛り上がるのが一番大切だ。

 

自著『ブルータルデスメタルガイドブック』の中でスラミングとはどのようなものなのかについて書いているが、ありがたいことになかなか手に入りづらい状況で購入できない方も多いと聞く。またの機会にスラミングについて解説するが、今回紹介する5枚を聴けば、自ずとそれがなんなのか、そしてその魅力や特徴はなんなのかが掴めるはずだ。

 

そして、このサイトの読者の皆さんで「こんなのも良かったよ」というオススメがあれば、ぜひコメントで紹介してみて下さい。

 

 

Gutrectomy 『Manifestation Of Human Suffering』

出身地 : ドイツ
▶︎https://gutrectomy.bandcamp.com/album/manifestation-of-human-suffering

衝撃的だったデビュー・アルバム『Slampocalypse』から5年。その間、EP『Slaughter the Innocent』のリリースや、SLAM WORLDWIDEを通じシングルを発表し続けており、シーンにおいての存在感はずっとあった。新たにベーシストLouis Weber、ドラマーSimon Wernertが加入してからのGutrectomyは、Simonの高いドラミング・スキルによってスラムパートへの導入部分のリズム・パターンがバラエティ豊かになったように感じる。ビートダウンしてからも重量感のあるリフの上を転がるようにハイピッチ・スネアを差し込んだり、アクセントとなるシンバルワークによって、各楽曲に新たな個性を与えてくれる。天性のリフ・センスでモッシーに展開し続ける本作、一押しは「Scorched Earth (ft. Dustin Mitchell of Filth)」、「Cranial Excavation」、「Apocalyptic Squirt Tsunami」の3曲。

 

 

Analepsy 『Quiescence』

出身地 : ポルトガル
▶︎https://analepsy.bandcamp.com/album/quiescence

Gutrectomyと並んで、ワールドワイドな人気を誇るAnalepsyのセカンド・アルバム。前作『Atrocities from Beyond』発表後、私が運営するRNR TOURSで来日ツアーも果たし、数少ない現代スラム・リスナーが各地公演に訪れていたのは嬉しかった。当時のメンバー全員がナイスガイで、ツアーも素晴らしい思い出になっている。残念ながらAnalepsyのリーダーでありMiasma RecordsのオーナーMarco Martins以外のメンバーが本作前に脱退。新体制で制作された本作は、デスメタリックな魅力を改めて追求し、自身が鳴らしてきたスラミング・ブルータル・デスメタルに注入したような仕上がりで、個人的にはAnalepsy史上最高傑作。引き締まったサウンド・プロダクションによって殺傷能力を増したスラムリフは、しっかりデスメタリック。ビートダウン・ハードコア・リスナーには受けないかもしれないが、メタル・リスナーのスラム入門アルバムとして今後その重要度が高まってくる可能性がある。

 

 

 

Kraanium & Existential Dissipation – Polymorphic Chamber of Human Consumption

出身地 : ノルウェー/カナダ
▶︎https://www.youtube.com/watch?v=iL_k6V5Vndc

北欧スラム・キング Kraaniumとカナディアン・スラム・カルト、Existential Dissipationのスプリットは、Existential DissipationのボーカルだったBob Shawの遺作。BobはCuffなどマニアックなスラムバンドで活躍し、シーンの人気者だった。両者共に血生臭いブルータル・デスメタルをベースにダイナミックなスラムリフを刻み続けていくスタイルで、現代スラムの礎とも言えるクラシック感がある。GutrectomyやAnalepsyといった正統派とは違うデスメタルの荒々しさを味わうには最適な作品と言えるだろう。それにしてもこの作品で聴けるBobのボーカル、すでに人間味がなく良い意味で不気味だ。

 

 

 

Peeling Flesh 『Human Pudding』

出身地 : アメリカ・オクラホマ州
▶︎https://viletapesrecords.bandcamp.com/album/human-pudding

2021年結成、スラム・シーンの超新星Peeling Fleshのデビュー・アルバム。昨年発表したEP『Slamaholics Mixtape』でシーンの話題をかっさらった彼ら、ドラマーはVile Impregnationでも活躍する23歳のJoe Pelleter、そしてAberrant Constructのメンバーもいるというから聴く前からどんなに凶悪なスラムか想像出来る。ヴィジュアルを見る限り、ノリはビートダウン・ハードコアやデスコアっぽく、ボーカルのDamonteal Harrisに関してはヒップホップ的なヴァイブスもある。しかしアートワークやリフから滲み出てくる強烈なブルータルさは本物で、かなりディープなブルータルデスメタルの世界観を理解していないと表現できないツボを押さえている。RIFF CULT的には上半期スラムはPeeling Fleshがダントツでナンバーワン。

 

 

Vile Impregnation 『SLAVE』

出身地 : アメリカ・テキサス州/オクラホマ州/アリゾナ州
▶︎https://realityfade.bandcamp.com/album/slave

2009年からスタートしたVile Impregnationであるが、すでにオリジナルメンバーは脱退済み。現体制で動き出したのは2016年ごろからになる。それぞれにいくつものサイドプロジェクトを持つ若きミュージシャンらが集結、Devour the Unbornなどで知られるJosh、InfantectomyのTriston、そしてPeeling FleshをはじめStranguledにも在籍したJosephのトリオ体制で、かなりマニアックなことをやっている。いわゆる溺死系と言われるガテラルで、ゴアグラインド/ゴアノイズ的な面白さもありつつ、基本はスラムリフを刻み続けていく無慈悲なスタイル。個人的なツボとしてライブメインでなく、音源制作に重きを置いたバンドが好きで、このバンドはロゴから楽曲スタイルからツボにハマる要素がたっぷり。若干のシンフォニックなアレンジも全然良くないが良い。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?すでに聴いたものもあったと思いますが、最後の2枚はまだチェックしていないという人もいるかと思います。マニアックなバンドをたくさん知っているとか、いち早く新譜をチェックしていることは関係なく、自分のお気に入りのスラミング・スタイルのバンドがどんな影響があるのか、どんなシーンに属しているのか、どんなメンバーがいるのか、そういうところをもっと知っていくことを極めていけば、さらにディグが楽しくなると思います。この記事はコメントが出来るので、みなさんのおすすめがあればぜひ書き込んでみてください。

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP15 (2022年下半期)

ゴアグラインド 2021年の名盤 TOP9

 

数十年、ゴアグラインドをウォッチしていますがやはりベテラン勢が元気だ。今年はLast Days of Humanity、Spasm、Gutalax、Intestinal Disgorgeと名の知れたゴアグラインド・バンド達がアルバムをリリースし、個人的にも一時期過去の作品を引っ張り出して聴いたりリバイバルしていました。ゴアノイズ系もGORENOISE SUCKSなどオンライン上に点在するゴアノイズを統括する存在がいたり、YouTubeチャンネルGore Grinderが最新作をピックアップしバンドもシェアするなど一つの拠点になっている。ベテランから新しいプロジェクトまで、サウンドのクオリティとかは無視して”刺激的だったもの”を中心にピックアップしてみました。若干汚い、グロいアートワークもあるので、苦手な方は目を細めて呼んで下さい笑

 

 

第9位 : Intestinal Disgorge – Scat Blast
Link : https://intestinaldisgorge.bandcamp.com/album/scat-blast

 

1996年から活動するテキサス州サンアントニオのゴアグラインド・レジェンド、Intestinal Disgorgeの新作。でっかいうんこに勇ましさを感じるアートワークはもちろんYouTubeではモザイク必須。どうやらいくつか別にジャケットが存在するようですが、見ない方がいいと思います……。さて肝心の内容ですが、このアルバムからギタリスト不在、ベーシストが3人いるという意味不明なメンバーラインナップで録音されており、嘘かと思いきや本当にギターレスで様々なベースラインが交差しています。ドラムは結構かっこいいんですが、ボーカルは20年間「キャー」しか言ってないですね。たまにはメロディアスに歌いたいとか思わないんでしょうか…..。ゴアグラインドも20年続けると誰かに尊敬されたりするので、何事も継続が大事です。色々言いましたが、普通にかっこいいアルバムです。

 

 

第8位 : Columbine Carcass – Columbine Carcass
Link : https://columbinecarcass666.bandcamp.com/album/columbine-carcass

 

ジョージア州アトランタを拠点に活動するゴアグラインド・ユニット、Columbine Carcassのセルフ・タイトル作。バンド名はもちろんコロンバイン高校銃乱射事件に由来しており、アートワークは射殺されたエリック・ハリスとディラン・クレボルドの有名な写真。ゴアグラインドは刺激的な死体の写真のコラージュなどが多いが、あまり殺人事件をコンセプトに楽曲制作からアートワークに至るまで一貫性のあるものは少ない。集中力のない音楽なので、そうした作品をゴアグラインドで作り込むという文化がない。彼らも楽曲までは事件に関するものではないにしろ、数ある凶悪事件などをテーマにしたアルバムやプロジェクトがもっとあってもいいと感じられた一枚。サウンドも個人的には良いと思える雰囲気があって、雑にプログラミングされたドラムの上をゴミみたいなディストーションが適当にかかったリフを錯乱状態の人間が弾いてるのが最高。

 

 

第7位 : Putrid Stu – Amidst an Anal​-​Analgesic Assembly
Link : https://putridstu.bandcamp.com/album/amidst-an-anal-analgesic-assembly

 

オハイオ州デイトンを拠点に活動するワンマン・ハイスピードブラスティング・ゴアグラインド・プロジェクト、Purtid Stuの新作。本作はドラマーにタイのブラスティング・ブルータルデスメタルバンドEcchymosisのPolwachが参加している。とにかくスネアのハイピッチ具合が強烈で、スネアじゃなくて空き缶を叩いているのではないか疑惑があります。1曲あたり10秒程度が平均で最後の「Crohn’s Last Breath」のみ1分というショートカット具合も良いですね。アートワークはモザイク入ってますがアルバムを買うと無修正版が見られます。

 

 

第6位 : Retching Pus – Smears of Red Stool
Link : https://retchingpusgore.bandcamp.com/album/smears-of-red-stool

 

ニューヨークを拠点に活動するワンマン・ゴアグラインド・プロジェクトの2021年2作目。割とゴーリー・グルーヴもあり、ギリギリObscene Extreme出れる感じのサウンドではありますが、基本的に雪崩の如く崩壊し続けるノイジー・ブラストビート炸裂系ゴアグラインドを展開。IllustlatorとかPhotoshopというソフトに頼らず切り貼りしてスキャンしたアートワークが最高です。ゴアグラインドはやっぱりショートカットで演奏技術を習得する根気がない人間にぴったりの音楽。ゴアグラインドの人間性の特徴が滲み出た一枚。

 

 

第5位 : Labia Meat Mud Flap – Labia Meat Salad
Link : https://gorenoisesucks.bandcamp.com/album/labia-meat-salad

 

出身国不明、ですがおそらくアメリカ拠点のぽんこつサイバー/ゴアグラインド・ユニット、Labia meat Mud FlapのGORENOISE SUCKSから出た本作。Windows XP直系フリー打ち込みソフトで作られたかのようなトラックは2000年代後期、ゴアグラインドを夢中でディグっていた時に多発していたKOTS周辺のゴア〜ニンテンドーコアの趣が感じられて懐かしい気持ちになります。どこで見つけてきたのか不思議になってしまう意味不明なサンプリングSEを長々と冒頭に持ってくるのも最高です。全く次作に期待とかしてませんが、こういう作品を年間10枚位出し続けて欲しいですね。

 

 

第4位 : First Days of Humanity – Mineralized
Link : https://firstdaysofhumanity.bandcamp.com/

2019年結成、アリゾナ州フェニックスを拠点に活動するワンマン・ゴアグラインド・プロジェクト、First Days of Humanityの最新作。活動スタートからハイペースでリリースを続けていて、一体これが何作目なのかは本人にしか分からないでしょう……。バンド名はもちろんLast Days of Humanityからきていて、そのサウンドもハイスピード・ブラストに雪崩の如く襲いかかるノイジーなリフ、そして下水道ボーカルが乗ってくる溺死系ゴアグラインド。目新しいことは何一つしていないが、ハイペースなリリース、一貫したアートワーク、Last Days of Humanityへのリスペクト、それらがただただ素晴らしい。来年は何作出るだろうか。

 

 

第3位 : Spasm – Mystery of Obsession
Link : https://rottenrollrex.bandcamp.com/album/mystery-of-obsession

 

2000年代初頭から活動するチェコのゴアグラインド・トリオの4年振り6枚目のフルアルバム。Gutalaxの先輩にあたる彼ら、アートワークが楽曲にファニーな要素は少なく、どちらかというとSMネタが多いポルノ・ゴアグラインドの系譜にあります。本作も歪んだ性癖をテーマに2分に満たないゴアグラインド曲をノンストップで繰り広げていく。曲名がかなり最悪で、「Masturbation Never Breaks Your Heart」、「Garlic Sperman」、「Harvest of Cocks」、「Pussy is The Most Effective Tool of Love」などなど常人には考えられないタイトルばかり。

 

 

第2位 : Last Days of Humanity – Horrific Compositions of Decomposition
Link : https://rottenrollrex.bandcamp.com/album/horrific-compositions-of-decomposition

 

1989年から活動するオランダ出身のゴアグラインド・レジェンド、Last Days of Humanityの再結成後初となるフルアルバム。2006年にリリースしたアルバム『Putrefaction In Progress』は、後のゴアグラインド・シーンの典例とも言えるサウンドで大きな影響をもたらしたものの、バンドは解散してしまった。2010年に復帰後はスプリット作品などのリリースをマイペースに続け、なんと本作が15年振りのフルアルバムとなる。もう少し話題になるべきだったが、大々的なプロモーションを全く行わなかったのと、ファンが期待していた生臭いアートワークではなく、インターネットで使い古されたホラー画像のアートワークが不評だったのが原因でアルバムが出たことに気づいていない人も多いかもしれない。これがれっきとしたニューアルバムなのかどうか、そのサウンドだけでは区別がつかないという人が多いのも原因でしょうね…。解散直前のハイピッチ・スネアが音速で駆け抜けていくスタイルではなく、初期のバンド・サウンドへと回帰。『Putrefaction in Progress』のイメージが強すぎて若干の違和感があると思いますが、総じてピュアなオールドスクール・ゴアグラインド。最高のアルバムだと思います。

 

 

第1位 : Gutalax – The Shitpendables
Link : https://rottenrollrex.bandcamp.com/album/the-shitpendables

 

チェコを代表するゴアグラインドバンド、Gutalaxの6年振りとなるアルバムは、お馴染みのRotten Roll Rexからリリースされた。Obscene Extremeの目玉バンドとして知られる彼ら、コンセプトは結成当時からブレることなく”うんこ”です。10年以上うんこへの情熱を絶やすことなく続け、ミュージックビデオやアートワークに至るまでうんこがべっとり、さらにはステージに簡易トイレまで設置してしまうからその徹底っぷりは凄まじい。彼らはゴアグラインドのファニーな要素の完璧さに加え、曲もかなり良くて、おそらくソングライティングを担当しているメンバーはハードコア/メタルコア/デスコアを通過していると思われます。ソリッドでキャッチーなリフワークにピッグ・スクイールがバウンシーにのせてきます。

 

 

ゴアグラインド 2022年の名盤10選

テクニカル・デスメタル 2021年の名盤15選

 

なんだかんだ数十年と追いかけ続けているプログレッシヴ/テクニカル・デスメタル。近年は全体的な演奏技術、サウンド・プロダクションが向上し過ぎてて、テクニカルとそうでないものの線引きが非常に難しい。そもそもテクニカル・デスメタルという言葉がかなり曖昧で、誕生からそれなりに時代を経過していることもあって、一度整理して考えないといけないタイミングだと思う。

 

今回リストアップした作品はプログレッシヴ・デスメタル、ブルータルデスメタルの中から特にテクニカルなスタイルにフォーカスしている作品を中心にピックアップしている。そしてそのテクニカルとは、ブラストがスピードとかリフのスピードとかだけでなく、演奏技術が優れていればテクニカルとして考えている。〜デスメタルというサブジャンルがそれぞれにあり、その中でテクニカルなものを選出しているので、総合的に見てブルータルデスメタルであったりプログレッシヴデスメタル、はたまたメロディックデスメタルであるものもある。現代におけるテクニカル・デスメタルを考えたときに大元のジャンルがなんであれ、テクニカルとタグ付けすることが出来ればそれはテクニカル・デスメタルになる、と思う。そういう視点で今回15枚の作品を選び、レビューしてみた。

 

 

第15位 : Cathexis 『Untethered Abyss』

Release : Willowtip Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Cathexis/3540360378

 

今年結成10周年を迎えたテキサス州オースティンのテクニカル・デスメタル中堅、Cathexisの8年振り通算3枚目のフルレングス。Scattered RemainsのIan Bishopがボーカルを務め、Sam KangとChris Hillamがギタリスト、Tony Montana’s Last Standなどで活躍したベーシストOscar Martinez、BallgagのドラマーFelix Garzaの5人体制で活動しており、Willowtip Recordsとの契約を勝ち取ってのリリースとなった。

 

プログレッシヴとアヴァンギャルドの中間をいくミドルテンポの楽曲が中心で、ガリガリとリフを刻みつつもメロディアスであるのがCathexisの魅力だ。Willowtip Recordsらしいサウンドであるので、レーベルのフォロワーでまだチェックできていない方がいたら年末に向けて聴き込んでいただきたい。おすすめの曲は「Mortuus in Perpetuum」。

 

 

 

 

第14位 : Path to Kalinin 『Lineage』

Release : Independent
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Path_to_Kalinin/3540491761

2021年テネシー州ナッシュビルを拠点に結成されたテクニカル/メロディック・デスメタルバンド。While You Were Asleepで活躍するベーシストTommy FireovidとドラマーRikky Hernandez、Kryptik EmbraceのギタリストだったRikk Hernandez、そして伝説のサタニック・デスメタルバンドNunslaughterのギタリストとして2014年から活躍するNoah Nuchananがリード・ボーカルを務める。

基本的にはメロディアスなギターを携えブラストしまくるファストなテクニカルサウンドが売りであるが、雄大なクリーン・パートも組み込むあたりはなかなかオルタナティヴな感覚があるのだなと感心。楽曲も聴き込むにつれ味わい深さを増し、EPというサイズでありながらその世界観は一級品。

 

 

 

 

第13位 : Alustrium 『A Monument to Silence』

Release : Unique Leader Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Alustrium/3540314183

ペンシルバニア州フィラデルフィアを拠点に活動するプログレッシヴ/テクニカル・デスメタルバンド、Alustriumの6年振り通算3枚目のフルレングス。非常に地味な存在であるが演奏技術は確かで、覆面バンドGalactic Empireの”中の人”も在籍している。ギタリストのMike DeMariaとChris Kellyがプロダクションを担当、ミックスまでを行い、Ermin Hamidovicがマスタリングを務めた。

 

雄大なリフ、そしてデスメタリックでありながらエレガントなメロディも巧みに弾きこなすMikeとChrisのギターだけでも抜群の聴きごたえ。Prosthetic Recordsが得意なメロディック・デスメタル/デスコア感をややテクニカルに寄せたスタイル、と言えば分かりやすいかも知れないが、現在の人気以上に凄いことをやっているバンド。じっくりと聴き込めば聴き込むほどに味わい深いアルバムだ。

 

 

 

 

第12位 : Unfathomable Ruination 『Decennium Ruinae』

Release : Willowtip Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Unfathomable_Ruination/3540315635

2010年からイングランド/ロンドンを拠点に活動するテクニカル・ブルータルデスメタルバンド、Unfathomable RuinationのEP。2019年のフルアルバム『Enraged & Unbound』は良い意味で無機質なテクニカル・マシーンっぷりを見せつけ、特にブルータルデスメタルシーンで高く評価された。

 

本作は限りなくブルータルデスメタルと言える残虐なフレーズが次々と繰り出されるがテクニカルな美的感覚が見事で、アヴァンギャルド、プログレッシヴとは明らかに違う「テクニカル・ブルータルデスメタル」のピュアなパッションが感じられるだろう。誰にも止められない暴走列車の如く叩きまくるドラミング、アクセルとブレーキを自由自在に操るリフ、これほどまでに見事な転調を繰り返すデスメタルバンドは他にない。

 

 

 

 

第11位 : Ominous Ruin 『Amidst Voices that Echo in Stone』

Release : Willowtip Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Ominous_Ruin/3540397429

 

2010年からカリフォルニア州サンフランシスコで活躍するテクニカル・ブルータルデスメタル中堅、Omnious Ruin待望のファースト・アルバム。これまでEPのリリースはあったものの2015年以降は新曲が出ていなくて、ややマイペースな活動スタイルがネックではあったが、本作はゲスト・ミュージシャンとしてFallujahのドラマーAndrew BairdやゲストボーカルにSymbioticのKris、Arcane ExistenceのJadeなどが参加。

 

プログレッシヴに刻まれるリフ、そしてメロディのバランス感覚も鮮やかで、疾走するマシーンのようなドラミングに食らいついていく様は見事だ。NileやDeeds of Flesh、Spawn of Possessionといった知的かつ感情の起伏が少ないテクニカル・サウンドが好きな方におすすめ。

 

 

 

 

第10位 : Hannes Grossmann 『To Where the Light Retreats』

Release : Independent
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Hannes_Grossmann/3540374264

 

ObscuraやHate Eternalで活躍し、Alkaloidのドラマーとして活躍する有名ドラマーHannes Grossmannの2年振り4枚目フルレングス。本作はゲストにDark FortressのVictor Bullok、Alkaloid、Dark FortressのFlorian Magnus Maier、Alkaloid、ObscuraのChristian Münzner、Alkaloid、AbhorrentのDanny Tunker、Alkaloid、Eternity’s EndのLinus Klausenitzerが参加しており、Alkaloidの新譜と言ってもおかしくない。明確に違うのは、Hannesは全てのソングライティングを担当しているという点とやはりドラマー視点で作られたプログレッシヴ・デスメタルであるというところだろう。

 

リードトラック「The Sun Eaters」はChristianのギターソロが炸裂、Victorのボーカルもインパクトが強く聴きどころと言えるが、やはりHannesのドラミングが最も輝いて聴こえる。このドラミングが他を牽引しながら楽曲が展開しているように感じるのは、ソロの楽曲だという先入観を抜きにしても感じられるはずだ。Hannesの叩きっぷりを感じながらアルバムに酔いしれて欲しい。

 

 

 

 

第9位 : Aeon 『God Ends Here』

Release : Metal Blade Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Aeon/327

 

スウェーデン/エステルスンドを拠点に活動するプログレッシヴ・デスメタル・ベテラン、Aeonの9年振りとなる通算5枚目のスタジオ・アルバム。名作『Aeons Black』以降に脱退したギタリストDaniel Dlimiがバンドに復帰したことをきっかけに息を吹き返し、Dark FuneralやDespite、ImperiumやBloodshot Dawnで活躍したドラマーJanne Jalomaが2020年に正式加入し制作活動がスタート。

 

Ronnie Björnströmをプロデューサーに迎えた本作は、漆黒のオーケストレーションをまとったデスメタル・サウンドをベースに、プログレッシヴなエレメントを要所要所に散りばめたベテランらしい小技が光る仕上がりになっており、タイトルトラックでありミュージックビデオにもなっている「God Ends Here」では、Behemothなんかにも匹敵する悪魔的な狂気に満ちていて思わず世界観に引き込まれていく。20年以上のキャリアを持つメタル・ミュージシャンらしい引き出しの多さが聴くものを圧倒する堂々の一枚。

 

 

 

 

第8位 : Interloper 『Search Party』

Release : Nuclear Blast
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Interloper/3540480465

 

2014年カリフォルニアを拠点に結成、いよいよ本格始動となったInterloperのデビュー・アルバムはその期待の高さを感じさせるNuclear Blastからのリリースだ。2018年にRings of Saturnを脱退したギタリストMiles BakerとドラマーAaron Stechauner、Vampire SquidのメンバーでAaronと共にThe FacelessのライブメンバーであるAndrew Virruetaによるトリオ体制を取り、他のプロジェクトが落ち着いたこともあってInterloperとして本格的に動く時間がとれたのだろう。

 

本作はAndrewの兄弟であるJoeyがプロデュースを担当、ミックス/マスタリングまでを務めている。古き良きOpethを彷彿とさせるプログレッシヴ感をベースにしながらも、ダイナミックなドラミングやメロディアスなギターパートを交えながら叙情的に楽曲を展開。特にタイトルトラックである「Search Party」は、彼らのキャリアを考えるとこれまでにないバラード調の楽曲であるものの、しっかりとものにしている。

 

ミュージックビデオになっている「Drift」では、メタルコア/デスコアのアイデアも組み込みながら、新世代のプログレッシヴ・グルーヴのうねりを生み出している。バンドのヴィジュアル・コンセプトになっている大海原のように、底知れぬポテンシャルを見せたデビュー・アルバム。

 

 

 

 

第7位 : Crown Magnetar 『The Codex of Flesh』

レーベル : Independent
Link : https://www.facebook.com/crownmagnetar

 

本作は、2016年コロラド・スプリングスを拠点に活動をスタートさせたCrown Magnetarのデビュー・アルバム。2018年にEP『The Prophet of Disgust』リリース後、コアなデスコア・リスナーから支持を集め、カルト的な人気を博していた。本作もレーベル未契約で発表されたものの、クオリティは世界トップクラス。

 

卓越されたテクニックから繰り出される音速のドラミングには度肝を抜かれること間違いなし。Infant AnnihilatorやOphidian Iなど、様々なジャンルに人間離れしたドラマーがいるが、Crown MagnetarのByron Londonのプレイには久々に衝撃受けた。

 

 

 

 

第6位 : Inferi 『Vile Genesis』

Release : The Artisan Era
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Inferi/93823

 

テネシー州ナッシュビルを拠点に活動するテクニカル・デスメタルバンド、Inferiの2年振り通算6枚目フルレングス。この手のジャンルのバンドにしてはかなり多作で、近年の存在感の強さはオンラインにおいても強く感じる。本作はプロデューサーにDave Oteroを起用、ミックス/マスタリングまでを務め、アートワークはHelge Balzerが担当しているが、一部Pär Olofssonが手掛けているようだ。

 

Stevieのハイテンションなボーカルは、シンフォニックなオーケストレーションを携え疾走するメロディアスなデスメタル・サウンドにハリをもたらし、優雅に転調するサウンドの肝になっている。まるでクラシックのコンサートを観ているようなエレガントさも感じられ、グッとテクニカル・デスメタルにおける地位を高めることに成功したように感じる。

 

 

 

 

第5位 : Rivers of Nihil 『The Work』

Release : Metal Blade Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Rivers_of_Nihil/3540301156

 

ペンシルバニア州リーディングを拠点に活動するプログレッシヴ/テクニカル・デスメタルバンド、Rivers of Nihilの3年振り通算4枚目となるスタジオ・アルバム。ギタリストであり、オーケストレーションのプログラミングやキーボードを兼任するBrody Uttleyがプロデュースを担当、Galaxtic EmpireのGrantとCarsonがそれをサポートする形で制作が行われた。シーンにおける有名アートワーカーDan Seagraveが描いた幻想的な世界観はプログレッシヴ・デスメタルシーンでも特異な存在感を放つRivers of Nihilにぴったりだ。

 

本作もBurial In The Skyのサックスフォン奏者Zach Strouseをフィーチャー、アルバム収録曲の半分に彼のサックスが挿入されている。様々サブジャンルが存在するメタルの中でもサックスとの親和性があるのは、プログレッシヴなものが多い。もちろんアヴァンギャルドなシーンではNaked Cityを彷彿とさせるようなエクスペリメンタル・ジャズ、フリージャズ的なサックスは導入されてきた事例があるが、とろけるようなサックスの音色とヘヴィ・ミュージックのブレンドはセンスが必要だ。

 

アルバムのリードトラック「Clean」はミュージックビデオになっていて、公開から半年足らずで20万回再生目前だ。ずっしりと重くヘヴィなビートに力強く刻み込まれるプログレッシヴなリフ、暗く知的な歌詞世界に引き込まれそうになる。大規模なステージで彼らが演奏している光景が目に浮かぶ、ステップアップを遂げた一枚。

 

 

 

 

第4位 : Obscura 『A Valediction』

Rlease : Nuclear Blast
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Obscura/63100

 

2002年からドイツ/ミュンヘンを拠点に活動するプログレッシヴ・デスメタルバンド、Obscuraの3年振り通算6枚目のフルレングス。ベーシストJeroen Paul Thesseling、そしてギタリストChristian Münznerが復帰し制作されたアルバムだ。詳しいレビューは別記事を参照下さい! (https://riffcult.online/2021/11/19/obscura-a-valediction-2/)

 

 

 

 

第3位 : First Fragment 『Gloire Éternelle』

Release : Unique Leader Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/First_Fragment/3540325573

 

テクニカル・デスメタル大国カナダの本場ケベックを拠点に2007年から活動するベテラン、First Fragmentの5年振りとなるセカンド・アルバム。大幅なラインナップ・チェンジがあり、ギタリストにUnleash the ArchersのNick Miller、ベーシストにAugury、ex.Neyond CreationのDominic “Forest” Lapointe、ドラマーにex.Sollum FatailsのNicholas Wellsが加入。最強とも言える布陣で彼らが挑んだのは、”ネオ・クラシカル・テクニカル・デスメタル”と言うサウンドの確立だ。

 

彼らの持ち味とも言えるフレッドレス・ベースのうねり狂うベースラインはDominicに変わっても健在、いや鋭さをましまるで生き物のように躍動しながら、ソロを弾きまくるギターに引けを取らない存在感を見せつけていく。クラシカルに転調しながらもテクニカル・デスメタルのヘヴィネスはしっかりとキープ、美しすぎる一枚。

 

 

 

第2位 : Ophidian I 『Desolate』

Release : Season of Mist
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Ophidian_I/3540347460

 

アイスランド/レイキャビクを拠点に活動するテクニカル・デスメタルバンドOphidian Iの9年振りとなるセカンドアルバム。大幅なラインナップチェンジはないものの、2019年にLord of Warで活躍したボーカリストJohn Olgeirssonが加入。サウンドも格段にレベルアップしSeason of Mistと契約を果たした。本作はギタリストのDaníel Máni Konráðssonがプロデュースを担当、ドラムのみStephen Lockhartがエンジニアリンクを行い、CryptopsyのギタリストChristian Donaldsonがミックス/マスタリングを手掛けた。

 

まるでDragon Forceがテクニカル・デスメタルをプレイしたかのようなスタイルとなったOphidian Iサウンドは他に類を見ないオリジナリティでシーンでの存在感を確固たるものとした。銀河を音速で移動するのにぴったりなサウンドトラック、と形容したくなるほど、煌びやかなメロディワークや滑らかに疾走するドラミングが印象的。これらを高次元融合させたChristian Donaldsonのミックス/マスタリングも素晴らしい。メロディック・デスメタル/スピードメタルの美的感覚を持ちながらも、プログレッシヴ/テクニカル・デスメタルのエクストリームな魅力も兼ね備えた作品はこれまでに存在しなかった。Ophidian Iがテクニカル・デスメタルに新たな流れを作ったことは間違いない。

 

 

 

第1位 : Archspire 『Bleed the Future』

Release : Season of Mist
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Archspire/3540326229

 

2009年からカナダ/バンクーバーを拠点に活動するテクニカル・デスメタルバンド、Archspireの4年振り通算4枚目のフルアルバム。本作はプロデューサーにSerberus、Dethronedで活躍するDavid Oteroを起用し、彼のスタジオであるFlatline Audioで録音され、Davidがミックス/マスタリングまでを手掛けている。Archspireらしい「スピード」、「エクストリーム」、そして「ショットガン・ボーカル」を存分に味わうことが出来る作品となっており、過去最高傑作と言えるだろう。アルバムの聴きどころについてはリリースのタイミングで書いたこちらの記事を参照下さい (https://riffcult.online/2021/10/29/archspire-bleed-the-future-2/)

 

ブラッケンド・デスコア 2021年の名盤5選

 

デスコアのサブジャンルでありながら、近年枝分かれ的に注目されてきた「ブラッケンド・デスコア (Blackend Deathcore)」。今年は特に、来年以降の盛り上がりを確信するような仕上がりの作品が多数リリースされた。筆頭に挙げられるのはやはりLorna Shoreで、「To The Hellfire」のミュージックビデオ公開以降、デスコア以外のメタルリスナーからも支持を集め、Bring Me The Horizon、A Day To Rememberのツアーに帯同することも決まっている。彼らが自身の音楽をブラッケンド・デスコアだと自称しているわけではないが、ヘヴィでバウンシーなデスコアと轟音で疾走するブラッケンド・パートをブレンドしたサウンドでシーンから評価を得たことは、後続のバンドに多大な影響を与えたことだろう。

 

また、長らくブルータルデスメタルの老舗レーベルとしてメタルシーンに認知されていたUnique Leader Recordsも近年はデスコア・バンドとの契約に力を入れており、ブルータル・デスコアの他にブラッケンド系の獲得にも力を入れている。根強いファンベースを持つブラックメタルシーンとメタルコア、オルタナティヴといった若いファンベースから支持を得られれば、ブラッケンド・デスコアの未来は明るいと思う。2022年は間違いなくブラッケンド・デスコアの年になるので、その土台となった今年リリースの注目作を紹介したいと思う。

 

 

第5位 : Ov Sulfur – Oblivion

レーベル : Independent
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Twitter : https://twitter.com/ovsulfur

 

一言コメント : ex.SuffokateのRicky在籍、タレント揃いのニューカマー

 

 

2021年から本格始動したex.SuffokateのRicky Hoover率いるネバダ州ラスベガス拠点の新星、Ov SulfurのデビューEP。Suffokateも2000年代後半からデスコアを聴いていない人にとっては、特段思い入れもないと思いますが、Mediaskare Recordsから2枚のアルバムをリリースし、Job For A CowboyやVolumesらと共にSuicide Silenceに次ぐデスコアのニューカマーとして人気を博したバンドで、Rickyのカリスマ性はSuffokateの活動が止まった2010年代中頃以降、伝説になっていた。そんな彼が再びバンド活動を再開するとあって、Ov Sulfurは今年、熱心なデスコア・リスナーから熱視線を集めた。中期Whitechapelを彷彿とさせるデスコア・サウンドに、重厚なオーケストレーションをブレンド、Rickyの存在感もさすがだが、クリーンパートも聴きどころの一つ。コテコテのブラッケンド感はないが、ブラッケンド・デスコアの入門作として非常に聴きやすい作品では無いかと思います。来年はフルアルバムを出してくれることを楽しみにしています!

 

 

第4位 : Arbitrator – Forsaken

レーベル : Independent
Link : https://linktr.ee/ArbitratorUS

 

一言コメント : 荘厳なオーケストレーション、エレガントでシンフォニー

 

 

アメリカとオーストラリア、それぞれに在住のボーカリストRyan Dennisとマルチ・ミュージシャンSean Sparacoによるシンフォニック・ブラッケンド・デスコアユニット、ArbitratorのデビューEP。サウンド・プロダクションはまだまだ荒削りな部分も多いが、シンフォニック・ブラッケンド・デスコアというサブ・サブジャンル的な音楽を上手く具現化していて、2021年出会ったアーティストの中でも非常に興味深い存在でした。デスコア要素は30%程度というのも他のブラッケンド・デスコア勢に比べると少なく、どちらかというとシンフォニック/ブラックメタル寄り。とは言え、しっかりとヘヴィなブレイクダウンを搭載しています。プロダクションの向上がブレイクの鍵になると思いますが、本作も十分高く評価出来ます。

 

 

 

第3位 : Mental Cruelty ‎– A Hill To Die Upon

レーベル : Unique Leader Records
Link : https://www.mentalcrueltyofficial.com/

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一言コメント : ブラッケンド・デスコアの完成形

 

 

2015年ドイツ/カールスルーエにて結成されたMental Crueltyの4枚目フルレングス。2019年からUnique Leader Recordsと契約し、本作が同レーベルからの2作目となる。ブラックメタルの雄大さ、壮大さをシンフォニック・メタルの手法を交えながらデスコアに落とし込んだスタイルで他を圧倒するクオリティのブラッケンド・デスコア・サウンドを確立。そのブレンド具合も絶妙で、「ブラッケンド・デスコア」として想像するサウンドの完成形がMental Crueltyと言っていいだろう。ボーカリストLuccaのインパクトは血塗れのビジュアルと合間って強烈。

ポイントとしてはLorna Shore同様、ドラムのサウンド・プロダクション。リフを調和した瞬間の瞬発力が凄まじく、地鳴りのようなブラストビートがたまらないという人が多いと思う。このタイプのヘヴィ感は2022年あちこちで聴かれるようになるだろうし、スラム系にも良い影響を与えるはず。

 

 

 

第2位 : Carnifex – Graveside Confessions

レーベル : Nuclear Blast
Website: http://www.carnifexmetal.com/
Facebook: https://www.facebook.com/CarnifexMetal
Instagram: http://www.instagram.com/carnifex
Twitter: https://www.twitter.com/carnifex
YouTube: http://bit.ly/subs-crnfx-yt

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一言コメント : 元祖ブラッケンド・デスコア、変化しない強さ

 

 

カリフォルニア州サンディエゴを拠点に活動するベテランCarnifexの、通算8枚目となるスタジオ・アルバム『Graveside Confessions』は、前作『World War X』からおよそ2年振り。メンバーチェンジもなく安定期を継続する彼らの新作は、アルバムタイトル・トラックで幕を開ける。自身はブラッケンド・デスコアの元祖である自覚があるかどうかと言われれば、はっきり断定はできないがブラッケンドな疾走感と残忍なリフワークを組み合わせたデスコア・サウンドが後続にもたらした影響は計り知れない。

 

アルバムには初期曲の再録も収録されており、2007年のデビューアルバム『Dead in My Arms』収録曲「Slit Wrist Savior」ほか、「Collaborating Like Killers」など渋い人気曲も現代的にアップデートされていて古くから彼らを追いかけているファンにはたまらないものがあるでしょう。今も昔のほとんどブレることなく、Carnifexサウンドを追求する姿勢は見習うものがあり、ブラッケンド・デスコアのオリジネイターとして心強い。

 

 

第1位 : Lorna Shore ‎– …And I Return To Nothingness

レーベル : Century Media Records

Facebook : https://www.facebook.com/LornaShore/
Instagram : https://www.instagram.com/lornashore
Twitter : https://twitter.com/LornaShore

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一言コメント : メタルの歴史を変えるヘヴィネス

 

やはり今年、ブラッケンド・デスコアを象徴する一枚として挙げたいのが新ボーカリストWill Ramosを迎え再出発となったLorna ShoreのEP『…And I Return To Nothingness』。3曲入り、EPというかシングルというか、とりあえずそんなこと関係なくこの作品が2021年デスコアシーンに与えた衝撃はデカ過ぎた。デスコアだけでなく、メタルコア、幅広いメタル・リスナーが彼らに注目したと思う。これまでの常識を覆す圧倒的なヘヴィネス、流麗なブラッケンド/シンフォニック・パート、テクニカルなドラミングにリフ、そしてなんといっても新たにLorna Shoreの顔となったWill Ramosの非人間的なボーカル・ワーク。どれをとってもネクスト・レベルであり、2022年にブラッケンド・デスコア・ムーヴメントを巻き起こすエネルギーに満ち溢れている。

 

 

ブルータル・デスメタル 2021年の名盤 9選

 

今年もこの時期がやってきました。RIFF CULTで1年間紹介してきたブルータルデスメタルのニュースを改めて自分で読み直し、良かった作品を聴き直し、ピックアップしてみました。

 

ジャンルの特性というか、ブルータルデスメタルを通過して誕生した様々なサブジャンルはあれど、基本的に大きな進化や変化のあるジャンルではないので、かなり個人的な好みが強いリストに毎年なってしまいます。なるべく客観的に2021年のブルータルデスメタルとして素晴らしいと感じたものを選んでいます。アルバムに絞らず、作品としてピックアップしているのでEPやライブアルバムも混じっていますがコンピレーションやボックスセットなどは省いています。知らない作品があれば、ぜひチェックしてみてください。冒頭には普段、ディグのメモとして活用しているYouTubeプレイリストも貼り付けて置くので、聴きながらリストを見ると面白いと思います。今年も素晴らしいブルータルデスメタルの作品にたくさん出会えて良かったです!

 

上記のYouTubeプレイリストで 2021年のブルータル・デスメタルをまとめてチェック。

 

 

第9位 : Perverted Dexterity 『Alacrity for Contemptuous Dissonance』

 

レーベル : Brutal Mind
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Perverted_Dexterity/3540346286

 

一言コメント : 「一人でもここまで作れるんだ」ということを世界に知らしめた一枚

 

インドネシアのワンマン・ブルデス、Perverted Dexterityの最新作。アルバムとしては2017年の『Spiritual Awakening』以来4年振り。これまでボーカル、ギター、ベース、ドラム・プログラミングと全てをJanuaryoひとりでやってきたが、本作はゲストにGorguts、Behold The ArctopusのギタリストColin Marston、ByoNoiseGeneratorのドラマーRoman Tyutinがゲスト参加している。

前作に比べダイナミズムを増したサウンド・プロダクションによって引き締まった印象を持つが、ハイスピードな前作にあった”インドネシア感”はやや薄れたように感じる。それでも垢抜けたといえるし、ワンランクレベルアップしたサウンドへと進化したと考えられる。先行シングルとしてリリースされた「The Arcane Profanity」は、バンド・アンサンブルの妙をワンマンながら上手く表現しているし、ワンマンでありながら、ここまでの作品を作ることが出来るということを世界に知らしめた意味で重要な作品だ。

 

 

第8位 : Omnioid – Regurgitated Inexistential Pestilence

レーベル : Amputed Vein Records
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Omnioid/3540376519

 

一言コメント : 轟音の中でキラリと光るクリエイティヴなフレーズ

 

西オーストラリアのマンジュラを拠点とするブルータルデスメタル・ユニット、Omnioidの4年振り3枚目フルレングス。前作『Hex Dimensional Paralysis』からチェックしていますが非常にポテンシャルの高いユニットで、Amputed Vein Recordsと契約したのも頷ける。

ギター、ベース、そしてドラム・プログラミングを兼任するSamboは、ボーカルのEwzaと共にCorpsefleshのメンバーとして活躍し、Anthropos VirosisというユニットからOmnioidへと転身。ユニットだからこその自由な作風がOmnioidらしさとして形になっている。クラシックなスタイルでありながら、現代的な感覚で鮮やかに転調しながら加速、時折みせるヘヴィなスラムリフも豪快かつ残忍でまさにブルータルなデスメタル。

 

 

第7位 : Cenotaph – Precognition to Eradicate

レーベル : Tentacles Industries / Coyote Records
info : https://www.metal-archives.com/bands/Cenotaph/1255

 

一言コメント : 程良いプログレッシヴ・フレーバー、ベテランの貫禄

 

1993年からトルコ/アンカラを拠点に活動するブルータルデスメタル・ベテラン、Cenotaphの4年振り7枚目のスタジオ・アルバムは、Tentacles Industries / Coyote Recordsからの共同リリース。もっと老舗と契約してるのかと思いきや、アングラ中のアングラ・レーベルから。やはりスラムが台頭して、クラシックなブルータルデスメタルの人気はやや落ちてきてるのかもしれません……。

 

だとしても、それでスタイルを変えるということは結成20年超えの大ベテランの選択肢にはないでしょう。オリジナルメンバーでありボーカルのBatu以外は2019年に加入していて、弱冠21歳のベーシストErenに、スイス出身のドラマーFlorent、フランス出身のMattisというラインナップ。程良いプログレッシヴ・フレーバーを交えながら基本疾走、適度に速度チェンジしながら暗黒のブルデス・サウンドを淡々とプレイ。ドラムのもたつき具合も味があるというか、おどろおどろしくさせている要因になっているかもしれません。Batuのボーカルも素晴らしい。

 

余談ですが、Metal ArchivesでCenotaphというバンドは14組登録されてました。なんか、また時間あるときにまとめて紹介しても面白そう。

 

 

第6位 : Post Mortal Possession – Valley of the Starving

レーベル : Lord of Sick Recordings
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Post_Mortal_Possession/3540388505

 

一言コメント : 確かなテクニックと表現力 一皮向けた出世作

 

ピッツバーグを拠点に活動するブルータルデスメタルバンド、Post Mortal Possessionの1年振り3枚目フルレングス。コンスタントにリリースを重ね、近年ブルータルデスメタルシーンにおける存在感を増している彼ら。ピュアなブラストビート一直線ではなく、Deeds of FleshやSevered Saviorあたりを彷彿とさせるテクニカルさと知的さ、現行スラム勢に劣らぬヘヴィネスを兼ね備え、ドラマティックな展開美をみせてくれる。

 

特に評価すべきはギターソロ。Post Mortal Possessionらしさとして一番輝きを放っているように感じる。ところどころかなりディープなアンダーグラウンドのエッセンスが散りばめられているのもポイントだ。これまで「あと少し」と感じていたB級感から脱却し、重鎮デスメタル勢のツアーサポートなども出来そうなポテンシャルをみせてくれた一枚。

 

 

 

第5位 : Vomit The Soul – Cold

レーベル : Unique Leader Records
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Vomit_the_Soul/13688

 

一言コメント : 見事なカムバック! Dying Fetusインスパイアの痺れるヘヴィネス

 

イタリアが誇るブルータルデスメタル・レジェンド、Vomit The Soulによる12年振りのニューアルバム。オリジナルメンバーであるドラマーYcio、ギター/ボーカルMaxが再び手を組み、同郷のレーベルメイトであるBloodtruthのギタリストがベーシストとして加入し、トリオ編成で本作をレコーディング。

アルバム収録曲「The Lost Aurea」のミュージックビデオを観ればより感じられると思うが、Dying Fetusへのリスペクトは強いものがあり、演奏スタイルも影響を受けているように感じる。といってもハードコアやスラッシュメタル的なノリは皆無だが、かなりヴィンテージスタイルのスラム・ヴァイブスに溢れている。彼らのカムバックに痺れたリスナーも多いだろう。文句なしの良盤!

 

 

 

第4位 : Pyrexia – Gravitas Maximus

レーベル : Unique Leader Records
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Pyrexia/363

 

一言コメント : ニューヨーク・デスメタル・プライドが感じられる一枚

 

ニューヨークを拠点に1990年から活動する老舗ブルータルデスメタルバンド、Pyrexiaの通算6枚目フルレングス。近年はコンスタントにリリースを続けていて、直近のリリースも2018年の『Unholy Requiem』と記憶に深く残る作品を発表している。現在進行形バンドとして、過去のレガシーを考えないにしても、この作品が現代に与える影響は割と強いかもしれない。

 

再生ボタンを押した瞬間に彼らがニューヨーク出身であることが分かるほどで、『Sermon of Mockery』からバンドサウンドの根底にあるスラム要素が現代的にアップデートされていて心地良さがある。Internal Bleedingと共にクラシック・スラムの代表的バンドとしてPyrexiaを捉えているリスナーも今は多いと思うし、そんな彼らが派手な装飾抜きにこうした作品を作ったことは高評価されるべきだ。

 

 

第3位 : Stabbing – Ravenous Psychotic Onslaught

レーベル : Comatose Music
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Stabbing/3540490072

 

一言コメント : 衝撃のニューカマー、テキサスから登場!

 

今年結成されたばかりのニューカマーで、Scattered RemainsのベーシストMerylとドラマーRene (二人は夫婦)が中心となり、女性ボーカリストBridget、ギタリストMarvinの4人体制で動き出している。本作は4曲入りのEPでコンパクトな内容ではあるが、ブルータルデスメタルとして完璧な仕上がりといえる。粒の細かいシンバルワークに抜けの良いスネアが疾走、粘着質なヘヴィリフ、獰猛なガテラル、サウンド・プロダクションは100点満点。Jon Zig先生のアートワークもStabbingサウンドを上手く表現しています。これは聴き逃していたら今すぐチェックして欲しい。

 

 

第2位 : Twitch of the Death Nerve – Beset By False Prophets

レーベル : Comatose Music
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Twitch_of_the_Death_Nerve/46813

 

一言コメント : これがブルータルデスメタルの完成形

 

イングランド/ロンドンを拠点に2004年から活動するブルータルデスメタルバンド。「そんなにベテランだったのか」と驚く人も多いと思うが、ちゃんと動き出したのは2014年ごろ。昨年にはセカンドアルバム『A Resting Place for the Wrathful』をリリースしていて、本作は新曲4曲とライブ音源が収録されたEPとして発表されている。この4曲が本当に素晴らしくて、あまりこういう形態の作品をベストリストには入れないんですが、必聴ということでランクイン。

スピード重視というわけでなく、緩急のあるグルーヴィなスタイルは持ち味で、その転調具合が絶妙。そしてそれを可能にするアイデア、テクニック、どれにおいても素晴らしくのめり込んで聴き入ってしまう。正直言って近年の中ではトップ3レベルでハマった作品。これまであまりチェックしてこなかったバンドだけに驚きも加味してこの順位に。ライブ音源も良い。

 

 

第1位 : Brodequin – Perpetuation of Suffering

レーベル : Unmatched Brutality Records
Metal Archives : https://www.metal-archives.com/bands/Brodequin/241

 

一言コメント : 復活の狼煙、伝説のBrodequin17年振りの新曲!

 

1998年に結成されたテネシー州ノックスビルを拠点とするブルータルデスメタル・ベテラン、Brodequinの久々の新作。2曲入り、デジタルリリースではあるものの、今年はやっぱりBrodequinの新曲を聴けた事だけで2021年はブルータルデスメタルにとって良い年だったと言い切れる。彼らの旧譜については自著『ブルータルデスメタルガイドブック』を参照していただくとして、簡単に最近のBrodequinを振り返りつつ、この作品の良さを書いてみたいと思う。

 

2004年にUnmatched Brutality Recordsからリリースしたアルバム『Methods of Execution』以降アルバムリリースはなく、2008年に活動休止。2015年に復活したものの、オリジナルメンバーであるギタリストのMikeが正式に復帰したのは最近になってのことだ。2020年にはCesspool of CorruptionやMortifying Deformityに在籍する若干24歳のドラマーBrennanが加入し、制作活動が動き出す。レーベルの公式YouTubeチャンネルには「VII Nails」のスタジオ・レコーディング・セッションがアップされていて、動くBrodequinに結構感動した。ギブソンのレスポールでブルデスやってるのは見たことないけど、意外とクラシックなスピード重視のブルデスには合うかもしれないと思ったり。奇跡の2曲だけでも聴けて幸せだが、来年2022年には何かアルバムが出たりしないのかなと気になっています。

ブルータル・デスメタル 2020年の名盤 10選

 

『ブルータルデスメタルガイドブック』を出版したのが2016年の10月だっただろうか、そこからも日課としてブルータルデスメタルを追いかけ続けてなんと4年が経過した。RIFF CULTを立ち上げたのも本を出版したのがキッカケだったし、今もこうして発信を続けられているのは嬉しい。

 

一時期はほぼRIFF CULTを動かしてなかった (RNR TOURSでのツアー活動に忙殺されていた)時期もあったが、コロナウイルスでツアーがストップしたことをキッカケにもう一度本腰を入れて動かしてみることにした。やっぱり新しい音楽を聴くのは面白いし、RNR TOURSが再開出来た時にもRIFF CULTを動かし続けられるように自分の中でしっかりルーティーンを作らなければいけないね。

 

さて、前置きが長くなったが、今年も世界中からブルータルデスメタル・アルバムがリリースされ、新しいバンドも入れば意外な復活もありで面白かった。良い意味でも悪い意味でもスラム系がぐっと盛り上がりをみせ、デスコアやメタルコアにまで影響を与え始めているのは面白いなと思う。それに対して昔ながらもハイスピード・ブラスト系は地味な存在になったが、もともとブルデスってそういうのが面白いし好きだったから特に気持ち的に変わらずいろんなものを聴いた。

 

ある程度新しいバンドもベテランもチェックしたつもりだが、もしかしたらチェックしきれてないものもあったかもしれない。EPも多く、リストに入れようとおもったがアルバムに絞ってランク付けしてみた。(Drippedとか入れたかったなあ) まだ聴いてない作品などあれば、ストリーミングでチェックしてみて欲しい。それでは、ランキングをご覧ください! (第10位〜第1位まで)

 

 

第10位 : Putrid Pile – Revel In Lunacy

アメリカ/ウィスコンシン州を拠点に活動するワンマン・ブルータルデスメタルプロジェクトPutrid Pileの新作は、前作『Paraphiliac Perversions』から4年振りとなった6枚目フルレングスで、Sevared Recordsからのリリース。

 

Sevared Recordsも数量限定リリースが増え、他のブルータルデスメタル・レーベルに比べ勢力は落ちてきたもののまだまだ元気。Putrid PileはSevared Recordsからリリースを続けている数少ないアーティストで、地味に2020年がプロジェクトスタートから20周年であった。前作から大きくスタイルチェンジする事もなく、淡々と自身のブルータリティを表現し続けている点だけでも評価に値するし、オープニングトラックの「Death Waits for No One」では、唐突なテンポチェンジを繰り返しながらもバウンシーなグルーヴはキープ、リフワークもメロディアスで面白いしガテラルもハイセンス。「Bonedigger」みたいな打ち込み感丸出しのB級さも個人的には好きだったりする。

 

 

 

 

第9位 : Goratory – Sour Grapes

2009年に活動休止、2016年に復帰したマサチューセッツ/ボストンのブルデス・レジェンドGoratoryの新作は、前作『Rice on Suede』からなんと16年振りとなる4枚目フルレングスで、リリースはイタリアのEverlasting Spew Recordsから発売された。

 

有名ミュージシャンのテクニカルすぎるアイデアのはけ口みたいなバンドで、Job For a CowboyやDespised Iconで活躍するギタリストAlanやDeeds of Flesh、Pillory、Cytolysisなどで大忙しのドラマーDarrenが在籍している。彼ら以外の2人はSexcrementというバンドのメンバーで腕前はもちろん凄まじい。特徴的なのは強烈なスラップベースで、テクニカルなブルータルフレーズに絡み付いていく。ヴィジュアルイメージからは想像もつかないテクニックがたまらない1枚。

 

 

 

第8位 : Post Mortal Possession – Catacombs Of Bedlam

ペンシルバニア州ピッツバーグを拠点に活動する5人組Post Mortal Possessionのセカンドアルバムは、Lord of the Sick Recordingsからのリリース。

 

2018年リリースの前作『Perpetual Descent』から大きな路線変更はないが、ぐっとサウンドプロダクションが向上し、楽曲もソリッドな仕上がりになっている。全体的にもっさりとしたスラムっぽい雰囲気ではあるが、Jakeのボーカルワークが強烈でディープなガテラルでサウンドを血生臭いものにしてくれている。Jakeのボーカルに加え、Nickのドラムもよく、デスメタリック。地味な存在だが、若くしてこの手のサウンドをプレイ出来るのは凄い。

 

 

 

第7位 : Disavowed – Revocation Of The Fallen

オランダ/アムステルダムを拠点に、前身バンドNocturnal Silenceから数えて26年のキャリアを誇る大ベテランDisavowedの13年振りとなる3枚目フルレングス。

 

オリジナルメンバーである元ドラマーRobbert (Pyaemia、Nocturnal Silenceでプレイ)の怪我を理由に2005年に脱退。以降はサポートメンバーを入れながらも活動は継続していたが、アルバム制作には至らなかった。長年のブランクを感じさせないパワフルなブルータリティは、アグレッシヴに転調しながらも粘着質なグルーヴィ・リフを携えて疾走し続ける。

 

 

 

第6位 : Afterbirth – Four Dimensional Flesh

1993年ニューヨークで結成されたブルータルデスメタルバンドAfterbirthのセカンドフルアルバムは、Unique Leader Recordsから前作『The Time Traveler’s Dilemma』から3年振りのリリース。

 

95年の休止後、2016年にボーカリストWill Smithが加入するまで20年以上のブランクというのはなかなか珍しい。架空の古代文明をテーマにソングライティングを行うようになってからはアイデアが湧き上がってくるのか、セカンドアルバムも3年という短い期間で完成させており、そのサウンドもアンシエントなメロディワークをメイン・エレメンツに独自の世界観を生み出すことに成功している。アートワークも含め、Afterbirthらしさを持っているし、今後も継続的に制作活動を続けて欲しい。

 

 

 

第5位 : Vituperate – Dies Mali

ノースキャロライナ州ヴァージニアを拠点に活動するハイスピード・ブルータルデスメタルバンドVituperateのデビューアルバム。

 

もともとデモ音源がアンダーグラウンドシーンで話題となり、New Standard Eliteと契約している。メンバーはそれぞれにプロジェクトを抱えており、Scatology Secretionなど今年アルバムを出したプロジェクトもある。メンバーらが抱えるプロジェクトの中でもVituperateは特にスピード感重視で、まさに工事現場のような轟音が鳴り響き、リフの輪郭も曖昧。いわばハーシュノイズのようなエナジーに溢れる1枚。

 

 

 

第4位 : Incinerate – Sacrilegivm

アメリカ/ミネソタを拠点に結成され、現在はアメリカ/カナダのメンバーが在籍するベテランIncinerateの新作は、前作『Eradicating Terrestrial Species』から5年振りとなる4枚目フルレングス。

 

リリースは前作同様Comatose Musicが手掛けている。2018年にDeeds of FleshやSevered Saviorで活躍したギタリストJared Deaverが加入。JaredとTedのツインギター体制になってからは初の作品で、2020年12月現在では脱退しているがDisfiguring the GoddessやMalevolent Creation、Insidious Decrepancyでドラムを担当したPhil Cancillaが本作でその腕前を披露している。スラムとまではいかないが、ピュアなリフグルーヴを要に非常にシンプルでノリやすいブルータルデスメタルをプレイ。Internal Bleedingファンは気に入るとおもいます。

 

 

 

 

第3位 : Devangelic – Ersetu

イタリアを拠点に活動するブルータルデスメタルバンドDevangelicの新作は、前作『Phlegethon』から3年振りのリリースとなる3枚目フルレングス。

 

Comatose MusicからWillowtip Recordsへと移籍してリリースされ、プロデューサーにはDecrepit BirthやFleshgod Apocalypseを手掛けたStefano Morabitoを起用。サウンドプロダクションもソリッドかつダイナミックな仕上がりとなっている。同郷のSeptycal Gorgeを彷彿とさせるダークなテクニカルフレーズも多く、誤解を恐れずに言えばDisgorge的な雰囲気があるようにも感じる。ここ数年、Devangelicは大/中規模フェスティバルへの出演やツアーなど、ヨーロッパを中心にファンベースを拡大しており、ブルータルデスメタルシーンにおける重要度は高くなっている。

 

 

 

第2位 : Arsebreed – Butoh

前作『Munching the Rotten』から15年振りとなるArsebreedの新作は、Brutal Mindからのリリース。

 

ツイン・ボーカル体制を取り、2人共Disavowedのメンバーだ (RobbeとJoel)。この2人のボーカルワークはハイピッチ/ローピッチを使い分けるような従来のツイン・ボーカルスタイルではなく、共にローをベースとしたボーカルスタイルなのが面白い。緊張感のあるオールドスクールなブルータルデスメタルは、ウジムシのようにうねるチェーンソーリフとソリッドなベースライン、そしてデスメタリックなギターソロが残忍なグルーヴを生み出している。Disavowedと一緒で、特に何か目新しいことをしているわけではないが、クラシックなブルータルデスメタルとして素晴らしい作品。

 

 

 

第1位 : Molested Divinity – Unearthing The Void

トルコを拠点とするブルータルデスメタルバンドMolested Divinityのセカンドアルバム。

 

前作『Desolated Realms Through Iniquity』から2年振りのリリースとなる本作は、アンダーグラウンド・ブルータルデスメタルの巣窟New Standard Eliteが発売元。レコーディングエンジニアリンク/マスタリングは同郷のOzan Yildirimが担当。彼はDrain of ImpurityやMolested Divinityのメンバーが在籍するRaven Woodsも手掛けており、バンドとも親交の厚い人物。前作とジャケットが酷似していて、最初再発かと思ったが、しっかり新作でした。New Standard Eliteらしさといえばそのスピードでしょうか。

 

ブレイクダウン皆無のノンストップ・ブラストビートを叩き込むドラマーBerkの腕前は確か。特にスネアの鳴り、随所で拍をずらしながらブラスティング・グルーヴをうねり出す感じとかは、かなりマニアックなブルータル・ドラミングの手法。Emreのギターワークも残忍としか言いようもない無慈悲さに溢れていてたまらない。昨今はスラム勢の勢い、そして人気が凄まじくこうしたブラスティング・ブルータルデスメタルはすっかり地味な存在になってしまったが、彼らをはじめ、同郷のCenotaph辺りは変わらずスピード重視で安心。堂々の2020年ブルータルデスメタル・ナンバーワンアルバム。

 

デスコア 2020年の名盤 10選

 

『デスコア・ガイドブック』を執筆してからも、デスコアシーンにおけるトレンドは日々変わり続けている。今年はここ数年の中では比較的シーンに大きな動きはなかったように感じたが、それもデスコアというシーンが一度確立され、安定期に入ったからだと思う。幅広いメタルシーンの中においても異端的な存在感は消え、ヘヴィでグルーヴィな新しいメタルとして受け入れられているのも事実だし、商業的に成功しているバンドも多い。

 

Suicide Silenceが再びデスコアサウンドに戻ったこと、Thy Art is MurderやChelsea Grinもシングルリリースがあったし、水面下でWhitechapelも動いていたし、むこう数十年はデスコアというジャンルに終わりはこないだろうと思う。言葉を選ばずに言うならば地味な作品が多かったが、高い技術とポテンシャルは他のどのジャンルよりもあるように思う。今回ピックアップした作品の中には一概にデスコアにカテゴライズするには難しいものもあるが、2021年以降のデスコアの流れを作っていく作品であるということからピックアップしている。まだ聴いていないものがあれば、ぜひ年末年始に聴き込んで欲しい。

 

2020年のデスコアをまとめたYouTubeプレイリストは上記からチェック!

 

第10位 : Aversions Crown – Hell Will Come for Us All

 

オーストラリア/ブリズベンを拠点に活動するデスコアバンド、Aversions Crownの前作『Zenocide』から3年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。

 

リリースはNuclear Blast。リードトラック「The Soil」や「Paradigm」はこのアルバムのサウンドを象徴する楽曲で、ハイスピードなブラストビートを主体としながら、バウンシーなパートをここぞというところでのみ挟んでいく。シンプルにブラッケンド・デスコアの良さを味わう事が出来るし、Nuclear Blastからのリリースという事で、幅広いメタルリスナーにもリーチできるポテンシャルを持っているように感じる。

 

 

 

 

第9位 : Alukah – Descending

 

アメリカ/メリーランドを拠点に活動するAlukahのデビューアルバムはStay Sick Recordings (現Modern Empire Music)からリリースされた。

 

一聴するとデスコアというよりはプログレッシヴなデスメタルに聴こえるかもしれないが、AlukahサウンドのベースになっているのはThy Art is MurderやDespised Iconといったスケールの大きなデスコアグルーヴを持つバンドらであるように感じる。プログレッシヴなエレメンツが非常に存在感があり、他のバンドにはない魅力である。いきなりNuclear Blastみたいなメタルのメジャーレーベルと契約しそうな雰囲気がある。

 

 

第8位 : Lorna Shore – Immortal

 

前作『Flesh Coffin』から3年振りのリリースとなった3枚目フルレングス。Outerloop RecordsからCentury Media Recordsへと移籍、ボーカルにSigns Of The SwarmのCJが加入して制作された事もあり、大きな注目を集めた。

リリース直前にボーカリストCJを取り巻く女性問題があった事からアルバムがリリースされるかも怪しい状況になっていたが、彼をクビにしてまで彼のボーカルが入った作品をリリースしたバンドの英断を尊重してリストに入れました。ボーカルを評価対象から外したとしても、この作品はデスコアの未来に強い影響をもたらす事は間違いないし、AdamとAndrewのギターワークはメタルコアシーンを見渡してもハイセンスである。現在はWill Ramosが新たなボーカリストとして加入しているので、このアルバムを引っさげたツアー活動も2021年には開始していいと思う。というか、するべきだ。Lorna Shoreは今止まってはいけない重要なバンドなのだから。

 

 

 

第7位 : Reflections – Willow

 

アメリカ/ミネソタを拠点に活動するReflectionsの復活作。前作『The Color Clear』をeOne/Good Fight Musicから2015年にリリースしてから活動は止まってしまっていたものの、2019年末から再び動き出し、アンダーグラウンドのデスコアリスナー達が大興奮していたのは印象的だった。

 

アートワークやトラックのタイトルからひしひしと感じるReflectionsのダークな世界観は健在で、スウェーデンのHumanity’s Last Breathといったダークさとは違う、”アメリカン・ダークデスコア”と形容したくなるサウンドをアルバムでは淡々を繰り広げていく。The Last Ten Seconds of LifeやOceano辺りの系譜にありながら、更にENDのようなヘヴィネスを兼ね備えたこの作品は、メジャーのメタルシーンにはリーチしないものの、アンダーグラウンドではむこう数年は強い影響を与えるものになる事は間違いない。

 

 

第6位 : Distant – Dawn of Corruption

 

オランダ/ロッテルダムを拠点に活動するDistantのセカンドアルバム (EPにカテゴライズされている場合もあり)。彼らがUnique Leader Recordsと契約したことにはかなり驚いたが、今ではレーベルの中でも高い人気を誇るバンドであるし、玄人向けっぽいサウンドプロダクションでありながらも、ツボはしっかりあって、バウンシー。

 

 

第5位 : Bodysnatcher – This Heavy Void

 

アメリカ/フロリダを拠点に活動するBodysnatcherの前作『Death Of Me』から3年振りとなるセカンドアルバム。リリースはStay Sick Recordings (現Modern Empire Music)からで、これを執筆している2020年12月現在、eOneへと移籍している。

 

この大きな移籍からも分かるように本作以降、彼らの注目度は右肩上がりであり、ハードコアからデスコア、そしてメタルコアまで幅広く評価を得ている。メタルコアやハードコアに言える事だが、年々ヘヴィさが増し、デスコアとの境界線が曖昧になってきている。Bodysnatcherもそういう意味でデスコアとは言い切れないサウンドである事は間違いないが、デスコアがデスメタル+メタルコアをブレンドしたサウンド、という事からすでに脱却していて、メタル要素がなくてもデスコアになり得るという事を証明してくれているようにも思う。2021年はeOneからおそらく何かリリースがあるはずなので、どういうサウンドを鳴らすか楽しみだ。

 

 

第4位 : The Acacia Strain – Slow Decay

 

前作『Gravebloom』から3年振りのリリースとなったアメリカ/マサチューセッツ出身のベテランによる9枚目フルレングス。本作の前にリリースされたEP『It Comes In Waves』は、ブラックメタル/ドゥームメタルに振り切った作風でThe Acacia Strainファンからは賛否両論ありましたが、本作からの先行シングル群はしっかりとThe Acacia Strainらしさ溢れるヴァイオレントなデスメタリック・ハードコアを鳴らし、シーンの期待を膨らませた。

 

Rise Recordsとの契約からすでに8年が経過し、デスコア/ハードコアというジャンルのくくりからは外れ、The Acacia Strainでしかないというようなサウンドを作る事に注力してきたように思う。そんな中でも本作は、すでにベテランとして確固たる地位を確立しながらも、ハードコアのヘヴィネスを追求する姿勢には脱帽。もちろんデスコアとして聴いても素晴らしく、ソリッドなサウンドプロダクションが主流の現行シーンには感じるものがたくさん見つかる作品だ。

 

 

 

第3位 : Cabal – Drag Me Down

 

デンマーク/コペンハーゲンを拠点に活動するデスコアバンドCabalの前作『Mark of Rot』から2年振りとなるセカンドアルバム。引き続きLong Branch Recordsがリリースを手掛けている。

 

RNR TOURSで来日も手掛け、そのライブパフォーマンスはデスコア・メインストリームのレジェンド達と比べてもひけをとらないポテンシャルを感じた。ダウンテンポ・デスコアというイメージを持っているリスナーも多いと思うが、Thy Art is MurderやFit For An Autopsy周辺に近いキャッチーなグルーヴがベースになっているのでかなり聴きやすいと思う。アルバムタイトルトラックでもある「Drag Me Down」はミュージックビデオも素晴らしいので一度観て欲しい。ゲームの「Dead By Daylight」的な世界観がバンドのヴィジュアルイメージにあってますね!

 

 

 

第2位 : Ingested – Where Only Gods May Tread

 

イギリス/マンチェスターを拠点に活動するバンドIngestedの新作は、前作『The Level Above Human』から2年振りのリリースとなった5枚目フルレングス。ブルータルデスメタルバンドとしてではなく、ブルータルデスコアとしてIngestedを聴くのは、Unique Leader Records契約以前にSiege of Amida Recordsから聴いてたのもあるし、今のUnique Leader RecordsにいるSigns of the SwarmやDistant辺りと聴き比べているというのがある。

 

さて本作は、「Impending Dominance」のようなブルータルなものもあれば、「Another Breath」のようにミッドテンポでスケール感のあるデスメタリックな楽曲もあり、これまでにはないアプローチもあり聴きごたえがある。『The Architect of Extinction』あたりのアルバムが好きならやや物足りなさもあるかもしれないが、聴くたびによくなるスルメ盤なので是非聴き込んでみてほしい。

 

 

 

第1位 : Within The Ruins – Black Heart

 

2017年にリリースされた『Halfway Human』以来、3年振りとなるWithin The Ruinsの6枚目フルレングス。アメリカ/マサチューセッツ拠点のベテランで、本作はボーカリストに新しくSilence The MessengerのSteve Tinnonが加入してからは初となるアルバムだ。

 

発表されてから間もないが、紛れもなく2020年のベスト・デスコアアルバムで文句なし。とにかくJoeのギターが凄まじく、微細にエディットしたDjentlyなリフワークに加えて、初期のカオティックなタッピングも若干回帰している感じがして懐かしい気持ちになった。アルバムタイトルトラック「Black Heart」はもちろん、「Deliverance」「Devil in Me」と強烈なリードトラックが目白押し。このアルバムを聴く前は、今年はデスコアの年間ベスト書かなくてもいいかなというくらいに思ってしまってたんですが、これをナンバーワンとして評価する為に気合を入れて1年を振り返ってみました。

 

テクニカル・デスメタル 2020年の名盤 10選

2020年にリリースされたテクニカル・デスメタルの様々な作品の中から、RIFF CULTがチョイスしたアルバムをレビューしました。気になった作品が見つけて下さい!

 

 

Deeds of Flesh – Nucleus

およそ7年振りのリリースとなった9枚目フルレングス。2018年、バンドのファウンダーであり、ブルータル・デスメタルシーンの一時代を築いてきたErik Lindmarkが死去。制作途中であった本作は、Erikと共にDeeds of Flesh黄金期に在籍したJacoby Kingston、Mike Hamiltonが復帰、リリックやボーカルのアレンジなど制作面を中心にレコーディングに携わり、現メンバーであるドラマーDarren Cesca、ギタリストCraig Peters、ベーシストIvan Munguiaの5人でErikが構想した本作を形にしていった。豪華なゲスト陣に加え、ミックス/マスタリングにZack Ohren、アートワークはRaymond Swanlandを起用し、2020年遂にリリースされた。「Odyssey」、「Alyen Scourge」そして「Onward」を除くすべての楽曲に生前Erikと親交のあったミュージシャン達がフィーチャーしている。

 

1. Odyssey
2. Alyen Scourge
3. Ascension Vortex
Feat:
Bill Robinson (Decrepit Birth)
Obie Flett (Inherit Disease, Iniquitous Deeds, Pathology)
Anthony Trapani (Odious Mortem, Severed Savior, Carnivorous)

4. Catacombs of the Monolith
Feat:
Luc Lemay (Gorguts)

5. Ethereal Ancestors
Feat:
George “Corpsegrinder” Fisher (Cannibal Corpse)

6. Nucleus
Feat:
John Gallagher (Dying Fetus)
Matt Sotelo (Decrepit Birth)

7. Races Conjoined
Feat:
Matti Way (Disgorge, Abominable Putridity, Pathology)
Frank Mullen (Suffocation)
Jon Zig (初期Deeds of Fleshのアートワーカー)

8. Terror
Feat:
Dusty Boisjolie (Severed Savior)
Robbe Kok (Arsebreed, Disavowed)

9. Onward

 

トラックリストを見るだけでも凄いが、これだけ個性的なミュージシャンが参加しているにも関わらず、すべての楽曲が間違い無くDeeds of Fleshの楽曲なのも凄い。前作『Portals to Canaan』の延長線上にあるサウンドをベースにしながら、『Path of the Weaking』、『Mark of the Legion』をリリースした90年代後期のDeeds of Fleshを彷彿とさせるクラシカルな良さもある。2000年代後半からのDeeds of Fleshサウンドの要になってきたCraigのプログレッシヴなギターフレーズはやや控えめであるが、彼らしいプレイも散見される。特に「Ethereal Ancestors」後半のギターソロはテクニカルデスメタル史上最も美しいギターソロだと思う。全曲味わい深く、間違い無く2020年を代表するテクニカルデスメタルの傑作。これからDeeds of Fleshがどのように活動していくのか、もしくはこれが事実上最後の作品なのかは分からないが、Deeds of Fleshの歴史において今後永遠に語り継がれていく作品になることは間違いない。この作品を完成させたDeeds of Fleshに関わる全てのミュージシャン、クリエイター達に感謝。

 

 

 

Beneath the Massacre – Fearmonger

前作『Incongruous』からおよそ8年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。しばらく沈黙が続いており、復活作として大きな話題になった。Prosthetic Recordsからの移籍という事で、テクニカルデスメタル/デスコアシーンからさらに広いメタルシーンへアプローチする作風になるかと思いきや、振り切ったスピードで突進し続けるアグレッシヴなスタイルをさらに加速してきたので驚いた。

2017年に加入したドラマーAnthony BaroneはThe FacelessやWhitechapelのライブドラマーとして活躍し、近年ではAegaeonやShadow of Intentといったテクニカルデスコアシーンで活躍してきた人物。高いレベルが要求されるBeneath the Massacreのサウンドを牽引するようにしてハイスピードなブラストビートを繰り広げ続けていく。それに食らいつく、というと語弊はあるが切れ味鋭いカミソリリフと攻撃的なギターソロをプレイするChrisも凄まじい技術を持っている。

ミュージックビデオになっているリードトラック「Treacherous」はメタルコアを40倍速再生させたようなスピード感とメロディ感を兼ね備えた楽曲で、2020年2月に公開から16万回再生されている。他にも開いた口がふさがらないような超絶技巧まみれのキラートラックが多数収録されており、アルバムを聴きおえたあとの満足感は強烈。デスコアリスナーもブルデスリスナーも是非チェックしてほしい1枚。

For Fans of : Despised Icon、Thy Art is Murder、Infant Annihilator

 

 

 

Imperial Triumphant – Alphaville

前作『Vile Luxury』からおよそ2年振りのリリースとなった4枚目フルレングス。Gilead MediaからCentury Media Recordsへ移籍、いわばメタル・オーバーグラウンドでのデビュー作とも言える本作は、テクニカルともアヴァンギャルドともブラックとも言えないImperial Triumphantの世界観を確立した作品だ。そして何よりこれほど難解な作品はCentury Media Recordsからリリースされ、2020年のトップ・メタルアルバムのリストに選出されまくっているのだから凄い。

この作品のプロデューサーにはMr.BungleのTrey Spruanceが器用されており、エンジニアリング/マスタリングは同郷のColin Marstonが担当している。ゲストミュージシャンも面白く、MeshuggahのドラマーTomas Haakeが太鼓で参加、また日本人ボーカリストYoshiko OharaやWormedのボーカルPhlegetonもコーラスとして参加している。

彼らのアルバム制作風景がYouTubeで公開されているが、セッションを通じながらピアノやキーボードを導入、実験的なオーケストレーションも閃きを大事に組み込んでいる。非常に芸術的な楽曲構成であるし、そうしたアイデアも彼らが親しんできたクラシックな音楽からの影響が強いのかもしれない。

ノイズを散りばめながら不気味な緊張感を漂わせるリードトラック「Atomic Age」やどこかオリエンタルな香りが漂う「Rotted Futures」など、ひとつひとつの楽曲が独立して映画のようなスケールを持ち、『Alphaville』が構成されている。何度も聴きながら各ミュージシャンの多彩なアイデアを楽しむ事が出来る作品。強烈なヴィジュアルも高ポイントだ。

 

For Fans of : Gorguts, Ulcerate

 

 

 

Unmerciful – Wrath Encompassed

前作『Ravenous Impulse』から4年振りのリリースとなった3枚目フルレングス。Originで活躍したギタリストClint Appelhanzが中心となり、同じく元メンバーでCannibal Corpseのライブサポートも務めた経歴を持つベーシストJeremy TurnerとJustin Payne、そして本作から加入したドラマーTrynt KellyとボーカルJoshua Rileyの5人体制で制作された本作は、Originの名作アルバム『Antithesis』を彷彿とさせるOriginメンバーによるOriginクローン・サウンドだ。

ミュージックビデオにもなっているアルバムのタイトルトラック「Wrath Encompassed」はノンストップで疾走するブラストビートに絡み合うチェンソーリフと無慈悲なギターソロがボルテージを加速させていく。アルバム全体を通してダレる事なく、ひたすらに漆黒のテクニカルデスメタルの闇を切り裂きながら疾走するピュア・テクニカルデスメタルアルバム。

For Fans of : Origin

 

 

 

Behold the Arctopus – Hapeleptic Overtrove

前作『Skullgrid』から13年振りとなるセカンドアルバム。『Skullgrid』はBlack Market Activitiesからリリースされた事もあり、当時のデスコアやカオティックカードコア/グラインドコアシーンからも高く評価され、特にColin Marstonが奏でる12弦ギターのアヴァンギャルドなタッピングフレーズが話題になった。

本作からドラマーにPsyopusのJason Bauers、ギタリストにnader SadekのライブメンバーだったMike Lernerを加えたトリオ体制で制作されている。従来のテクニカルデスメタルや、Colinが得意としてきたエクスペリメンタル/アヴァンギャルドなスタイルは常軌を逸し、このアルバムはここ数年リリースされたテクニカルデスメタル作品の中でも異端なものだ。Jasonのドラミングは通常のドラムセットとは違い、ドラムパーカッションが主体。そしてColinもリフは刻まず、ひたすらにタッピングでグルーヴを生み出していく。そのサウンドはアルバムから先行公開されたシングル「Blessing In Disgust」へのファンのコメント”Tom and Jerry Metal”と形容されていたが、まさにその通り。非常に挑戦的な作品であるが、テクニカルデスメタルが日々、そのテクニックを持ってして発展していく中でも、後続を圧倒する個性を見せつけた迷作、いや名作。

For Fans of : トムとジェリー、スポンジボブ

 

 

 

Ulcerate – Stare into Death and Be Still

前作『Shrines of Paralysis』から4年振りのリリースとなる6枚目フルレングス。これまでアルバムリリースを手掛けてきたRelapse Recordsを離れ、フランスのブラックメタルレーベルから発表された本作は、ヘヴィな轟音が鳴り響くミッドテンポなブラッケンド・デスメタルであるが、それを鳴らすメンバー達の超絶技巧こそこのアルバムの一番の聴きどころだ。このアルバムをテクニカルデスメタルとして聴くとき、やはりドラマーJamieのプレイが印象的だ。彼はソングライティングからレコーディング時のエンジニアリング、ミックス/マスタリングまでを務めるスタジオミュージシャンでもあり、幻惑的なUlcerateのヴィジュアルイメージを担ってきたアートワークも手掛けている多彩な人物だ。ミッドテンポであることは、この手のドラマーにとってはいかに音数を詰め込むかというところがそのドラマーのテクニックを知るひとつになると思うが、Jamieはストップ&ゴー、というか緩急のあるテクニカル・スタイルがハイセンスだ。プログレッシヴなギタープレイと高貴にすら聴こえるベースラインすべてが折り重なり表現されるUlcerateの世界観は唯一無二だ。

 

For Fans of : Portal、Imperial Triumphant、Gigan

 

 

 

Defeated Sanity – The Sanguinary Impetus

前作『Disposal of the Dead // Dharmata』から4年振りのリリースとなった6枚目フルレングス。現在のDefeated Sanityはトリオ体制で、ObscuraのライブメンバーでもあったベーシストJacob、2016年に加入したJash、そして唯一のオリジナルメンバーでありドラムとギターを兼任するLilleの3人。アルバムリリース後のインタビューで、Lillieは94年の結成時、当時12歳だった自身が想像したテクニカルデスメタル/ブルータルデスメタルとジャズ/フュージョングルーヴの融合が本作で実現する事が出来たと話していて、これまでにリリースしたDefeated Sanityの作品の中でも一番気に入っているという。

このインタビューを聞いてから、改めてLillieのドラミングに着目して作品を聴いてみると、結成から20年以上のキャリアから繰り広げられる老練のドラミングに凄まじさを改めて感じる事が出来た。Jacobのベースラインと絶妙に絡み合いながら、グルーヴの拍を切り刻むように叩き込まれるシンバルワークは他ではあまり聴いた事がない。ジャズっぽさやフュージョンっぽさというのはあくまでグルーヴの根幹にあり、そのサウンドはアグレッシヴなテクニカルデスメタル/ブルータルデスメタルそのものだ。ぜひ彼らの超絶技巧をまたステージで味わいたい。

 

For Fans of : 初期Cryptopsy、7 H. Target、Deeds of Flesh

 

 

 

Xenobiotic – Mordrake

2018年にリリースしたデビューアルバム『Prometheus』から約2年振りに発表したセカンドアルバム。前作はUnique Leader Recordsから再発された事もあり、テクニカルデスメタル/ブルータルデスメタル・リスナーにもその名を広めたが、デスコアシーンでの人気が高い印象がある。

本作からI Shall DevourのベーシストDavid Finlay、ドラマーMikey Godwinが加入。大迫力のドラミングによってドラマ性に磨きがかかり、ブレイクダウンの破壊力は倍増。アトモスフェリックなアレンジはプログレッシヴ・メタルやブラックメタルリスナーにもリーチできるXenobioticの魅力のひとつと言えるだろう。やはりテクニカルデスメタルとして聴くと若干の物足りなさはあるものの、ブラッケンド・デスコアとテクニカルデスメタルの架け橋としての存在感という意味では重要なポジションを担うバンドになるだろうと思う。

 

For Fans of : Fallujah、Fit For An Autopsy、Lorna Shore

 

 

 

 

Edenic Past – Red Amarcord

Behold The ArctopusやGorgutsでの活動で知られるColin Marstonがギターを務めるトリオ。ベース/ドラム・プログラミングはAstomatousのNicholas McMaster、ボーカルはColin、Nicholasそれぞれをサイドプロジェクトを持つPaulo Henri Paguntalanだ。

今年、Colinの多作っぷりは凄かった。Behold The Arctopusもそうだし、Encenathrakh、Indricothereも新作を出していて、ノイズ系のプロジェクトも合わせれば、優に10枚以上はアルバムを出している。

このプロジェクトは今年Colinが携わった中でも最もピュアなテクニカルデスメタル作品で、打ち込みとはいえ、変拍子グルーヴがしっかりしていて、アヴァンギャルドな転調パートも個性的。デプレッシヴなメロディもガテラルと親和性が高く、Edenic Pastとしてのオリジナリティも確か。

 

For Fans of : Defeated Sanity, Encenathrakh

 

 

 

 

Fawn Limbs – Sleeper Vessels

Geometric Noise / Mathematical Chaosを自称するトリオ、Fawn Limbsのセカンドアルバム。ボーカル/ギターを担当するEeli Helinにはノイズもクレジットされているのがポイント。Fawn LimbsのサウンドはCar BombやFrontiererを彷彿とさせる爆速爆テク系マスコアですが、そこにThe Dillinger Escape Plan的な狂気やMeshuggah的Djentグルーヴもある。かなりヘヴィでアルバム再生してすぐに開いた口がふさがらない状態になってしまうレベル。Car Bombほどやりすぎ感もなく、しっかりとグルーヴもあり聴きやすい。テクニカルデスメタルというとしっくりこないかもしれないが、普段マスコアを聴かないリスナーもハマってしまう要素がある。

 

For Fans of : Car Bomb、Frontierer、Meshuggah

 

【年間ベスト】2020年を代表するメロディックパンク作品 TOP10 (ディスクレビュー有!)

アルバムタイトルをクリックすると、ディスクレビューを読むことが出来ます!

第10位 : Utopia Now – Jefferson’s Baby

 

第9位 : Scott Sellers – Beneath The Surface

 

第8位 : Laughing In The Face Of – Here Lies The Ordinary

 

第7位 : Shades Apart – Eternal Echo

 

第6位 : The Lawrence Arms – Skeleton Coast

 

第5位 : Anti-Flag – 20/20 Vision

 

第4位 : F.O.D. – Sleepville

 

第3位 : PMX – Ctrl Art Del

 

第2位 : Bad Cop/Bad Cop – The Ride

 

第1位 : Get Dead – Dance with the Curse

 

シングル曲をまとめたベスト記事はこちら!

【年間ベスト】Get Dead – Dance with the Curse (Punk Rock / Acoustic Punk)

Get Dead – Dance with the Curse

拠点 : カリフォルニア/サンフランシスコ
レーベル : Fat Wreck Chords

初来日前にリリースされた前作『Honestly Lives Elsewhere』から4年振りのリリースとなった5枚目フルレングス。Fat Wreck Chordsの新たなカリスマ、Sam Kingのボーカルと彼の生活にリンクした歌詞世界が魅力で、古き良きアメリカン・パンク的アティトュートを持ってして、現代を巧みな言葉遣いで描いていく。

オープニングトラック「Distuption」や続く「Nickel Plated」とレゲエやヒップホップをパンクに注入したサウンドで、物悲しいアグレッシヴ・サウンドはGet Deadならではだ。胸が詰まるようなやり場のないエモーションは、貧困とアルコール、グラフィティを通じて表現されており、地元のアート・コレクティヴ、Indeclineとコラボしたミュージックビデオ「Pepperspray」は2020年を代表するアメリカン・パンクの名曲。「Living too fast too die last and I’m too old to die young, Too strong to let go and I’m too cold now I’m unable to ignore the world. And drop it all and join the frenzy, Violence doesn’t change a goddamn thing, But it feels nice to bleed」というサビのフレーズは強烈だ。

1 Disruption
2 Nickel Plated
3 Fire Sale
4 Stickup
5 Glitch
6 Confrontation
7 Hard Times
8 8 Track
9 Green’s Girl
10 Pepperspray
11 Confidence Game
12 Take It

【年間ベスト】Bad Cop/Bad Cop – The Ride (Melodic Pop Punk)

Bad Cop/Bad Cop – The Ride

拠点 : カリフォルニア/ロサンゼルス
レーベル : Fat Wreck Chords

3年振りのリリースとなったFat Wreck Chords所属のオール・フィーメール・メロディック・ポップパンクバンド、Bad Cop/Bad Copの3枚目フルレングス。Dave WarsopFat Mikeがプロデュースを務め、ミックス/マスタリングはChris Hesseが担当している。

サウンドや楽曲スタイルに大きな変化はなく、シンプルでキャッチーなメロディック・ポップパンクナンバーが並ぶ。印象的なのは歌詞や楽曲タイトルから見られるポリティカルな姿勢や、女性目線のLGBTQをテーマにした楽曲だ。リリックビデオにもなっている「Pursuit Of Liberty」では口ずさみたくなるメロディとイラン出身アメリカ在住の作家Dina Nayeriにインスパイアされた歌詞が力強く鳴り響き、リードトラック「Simple Girl」は2020年を生きるすべての女性の力になるライオット・ガール的パンクナンバーだ。

自分を強く持つことで社会を変えていく、自分の人生を生きていくという事が2020年からの社会において大切なことだというメッセージは性別年齢問わず勇気を貰える。落ち着いて自分の人生を生きようとするすべてのパンクリスナーのサウンドトラック。

Originators
Certain Kind Of Monster
Take My Call
Simple Girl
Breastless
Perpetual Motion Machine
Community
Pursuit Of Liberty
The Mirage
I Choose
Chisme
Sing With Me

【年間ベスト】PMX – Ctrl Art Del (Progressive Melodic Punk)

PMX – Ctrl Art Del

拠点 : スコットランド
レーベル : Independent

EP『Dark Days』から2018年のライブ盤『Clochridgestone』を挟んでおよそ5年振りの新作となる『Ctrl Art Del』は、ソングライティングからレコーディング、ミックス/マスタリング、そして流通まですべてをメンバー自らが行った完全D.I.Y.作。 ソリッドなリフワークや目まぐるしいタッピングフレーズなど、ギター・テクニックはおそらく現行メロディックパンクシーンでトップレベルだ。IntervalsやPliniといったプログレッシヴ・メタルコアも通過したそのサウンドは唯一無二のオリジナリティを持っていると断言出来る。ミュージックビデオになっている「Television」や先行公開された「Passengers」は言わずもがな、「Words」は2020年を代表するメロディックパンクの名曲。

PMXはRNR TOURSで2度来日を果たしている。今年の3月、コロナウイルスで国外への渡航が制限させるギリギリにツアーファイナルを終え、フライトチケットを変更してなんとか出国できたのは今思えば間一髪だったが、コロナウイルスの影響がここまでひどくなるとは予想もしてなかったことが懐かしいとすら感じる。厳しい状況下でも決して笑顔を絶やさなかった彼ら、きっとこの先もこのアルバムを聴くとこのツアーを思い出すだろう。

1.Falling Apart 02:55
2.Scrape The Tray 01:47
3.Pictures 03:21
4.The Fear 02:14
5.Who Are We To Pray 02:48
6.Words 03:21
7.Television 03:13
8.Tongue Tied 02:46
9.One Act 00:53
10.Passengers 04:45
11.Leave Me Be 03:12
12.Curtain Call 03:22