デスコア 2023年下半期の名盤TOP10

2023年上半期のデスコア・ベストアルバムはこちら

この記事では、RIFF CULTが2023年7月から12月までにリリースされたデスコアのアルバム/EPの中から素晴らしい作品をピックアップし、順位付けしてアルバムレビューしています。上半期と下半期に分けてアルバムレビューを行なっていますので、また上半期のリストをチェックしていない場合は、上記のリンクから読んでみて下さい。

2023年下半期は、順位をつけるのが非常に悩ましいほど、たくさんの素晴らしい作品がリリースされました。そして、それらはデスコアを出発点に個性的な発展を遂げた個性が光っていました。それぞれにデスコアではありますが、「ブラッケンド」や「テクニカル」、「ブルータル」といったデスコアから発展したサブ・ジャンルとして成立しており、同列にデスコアとして考えるには難しいほど、シーン全体に様々なスタイルを持つバンドがいます。結果的に有名無名問わず、強く印象に残り、繰り返し聴いた作品を参考に順位付けに取り組んでみました。皆さんはどう思いますか?それではアルバム・レビューを読んでみてください!

 


 

▶︎第10位 : Crown Magnetar 『Everything Bleeds』

Stream & Download : https://orcd.co/everythingbleeds
Social : https://linktr.ee/Crownmagnetar

コロラド州コロラドスプリングスのデスコア・バンド、Crown MagnetarによるUnique Leader Records からのデビュー・アルバム。2021年に発表した『The Codex Of Flesh』は壮絶なテクニカル・デスメタル/デスコアを鳴らしシーンに大きな衝撃を与えた。今でもあの衝撃を覚えているくらいだ。そんな彼らが2023年、ブラッケンド/ブルータル・デスコアの登竜門レーベルになってきているUnique Leader Records と契約。彼らをこのレーベルが放っておくわけがない。

前作はかなりテクニカルな印象があったので、最新アルバムを通して聴いてみると、意外とスラミング・パートが豊富にあったり、アンダーグラウンドなスラミング・ブルータル・デスメタル/デスコアも追い求めている感じがひしひしと伝わってきて痺れた。確固たるテクニックがあるからこそ出せるブラストビートのスピードがあるからこそ、そこから急ブレーキをかけた時のブレイクダウンの威力というものは凄まじいものがある。「The Level Beneath」は刺激が欲しいメタル・リスナー全員聴くべき名曲。

SLAM WORLDWIDEという異次元のワンマン・プロモーティング・マシーン・チャンネルが育んできたブルータル・デスメタルとデスコアのクロスオーバー・メディアという、誰もやったことがなかったふたつの異なるリスナーが集まる場所として機能して、Crown Magnetarのような化け物が正しく評価される地場を作った。この功績の偉大さまでも感じさせてくれる彼らのニュー・アルバム、未聴の方は食らって欲しい。

 

▶︎第9位 : Orphan 『Manifesto 1.0: Stages of Grief』

Stream & Download : https://tr.ee/fs6zGIJOT_
Social : https://linktr.ee/Orphanband

STRANGLEDという狂気に満ちたスラミング・デスコア・バンドが出てきたときは彼らが天下を取るのではと思ったが、残念ながら解散してしまった。理由については色々言われているが、STRANGLEDが分裂して、Orphanを結成した兄弟が、ストリームやマーチの分配金を正当に分け与えなかったことが理由だとかなんとか……。それで結果OrphanとPeelingFleshという、二つの異なるヘヴィ・バンドが誕生した。もしこれが真実なのであれば、このリストにOrphanを掲載することはなかったが、流石に、この完成度の高さだと評価せざるを得ない。

STRANGLEDでもあの狂ったツイン・ボーカルが完全にバンドを支配し、ライブ中に殴り合い怒りをぶちまけ合うリアルな様には慄いたが、Orphanのフランティックなエナジーのリアルさはしっかり楽曲に内包されていて、聞き続けていると精神的にくるものがある。リアルにやばい人間の音楽なのか、芸術性と理性を持って、作品としてこれをやってるか、そのギリギリにあるという意味では、上記の噂が真実なのかはっきりする前に一度聴いておいて損はないだろう。

 

▶︎第8位 : Within Destruction 『Rebirth』

Stream & Download : https://fanlink.to/wdrebirth
Social : https://sadboikroo.com/

そろそろ年間ベストをまとめないとといけないと下半期にリリースを振り返っていたところにサプライズ・リリースされた、スロベニアのデスコア・バンド、Within Destructionのミニ・アルバム『Rebirth』は、オープンワールドのアクションRPG「ELDEN RING (エルデンリング) 」の世界観に魅了されたメンバーが、歌詞、ヴィジュアルにそれを落とし込んで制作した作品に仕上がっている。

わずか6曲のEPであるが、内容は非常に濃い。彼らは自身のデスコアを「Nu Deathcore」を表現したり、ニュー・メタルコアとの繋がりを意識しながら、クリエイティヴに新しいデスコアを追い求めている。スラミング・ブルータル・デスメタルのエレメンツも彼らのサウンドの暴虐性、ブレイクダウンの強度をグッと上げているのも個人的には熱いポイントだし、ピッグ・スクイールしまくりながらビートダウンするのには思わず笑ってしまった。ただ、いわゆるNo Face No Caseのようなスラミング・ビートダウンとは言い切れない、デスコア的構築美がある。Signs of the SwarmやDistantのメンバーがゲスト参加しており、それぞれのファンであれば明確なWithin Destructionのサウンドの特徴も感じられるはずだ。結構作り込まれてて驚いた作品。

 

▶︎第7位 : Thy Art Is Murder 『Godlike』

Stream & Download : https://TAIM.lnk.to/GodlikeYT
Social : https://www.thyartismurder.net

4年振りとなった通算6枚目のアルバムは、2023年ナンバーワン・デスコア・アルバムになるべき作品であった。Nuclear Blast を離れ、Human Warfareからのリリースとなった本作でバンドを象徴するフロントマンだったCJ McMahonは歌っていない。彼はアルバム・リリースの直前にトランスジェンダー嫌悪の投稿を発端にバンドを解雇させられており、アルバムには後任ボーカリストとしてAversions CrownのTyler Millerが急遽ボーカル・パートを録り直し配信された (フィジカルはCJがボーカルを務めたものが収録されているそうだ)。

バンドの声明には今回の件だけが解雇の原因でないこと、彼の抱える様々な問題とバンドとの方向性の違いについて様々述べられていた (現在オフィシャルからは削除されている)。その怖いくらいの冷静な声明文からはバンドがカリスマと呼ばれ、神格化されたThy Art is Murderのフロントマンを抱えて活動してきたあらゆる苦悩から解放された清々しさすら感じた。単なるCJのバックバンドでないことを証明しなければいけないプレッシャー、それは残酷だが新曲のミュージックビデオに書き込まれるリスナーからのコメントを見れば相当なものである。

Tylerは素晴らしいボーカリストであり、Thy Art is Murderにフィットする最良の後任ボーカルであることは間違いないし、バンドの決断は間違っていないと思う。アルバム・リリース前のミュージックビデオに関してはCJをフロントに据えたディレクションが施されているが、「Destroyer Of Dreams」には登場せず、音源も差し替えたもので作り直されている。キーとなるブレイクダウンもThy Art is Murderらしいダイナミズムがあり、ヒロイックなギターワークは一時期のWhitechapelを彷彿とさせるようでもある。Thy Art is Murderのこれからに期待したいと思う。『Godlike』はいいアルバムだが、彼らはすぐに次作に取り掛かる必要があるかも知れない。

 

▶︎第6位 : The Voynich Code 『Insomnia』

Stream & Download : http://orcd.co/tvcinsomnia
Social : https://bit.ly/m/thevoynichcode

2023年11月に再来日を果たしたポルトガルのシンフォニック/ブラッケンド・デスコア・バンド、The Voynich CodeのUnique Leader Records契約後のグローバル・デビュー作。ツアーの準備中、それは確かリリースの1年以上前であったが、契約が決まったと連絡があった。そこで色々とUnique Leader Records 周辺のデスコア・シーンの状況やつながりについて詳細な話を聞けたのは非常に興味深かった (ここでは書けないが…) 。ポルトガルという、メタル・バンドにとってはまだまだ未知の国ではあるが、彼らはヨーロッパを中心にツアーを行い、実績十分だ。このアルバムでは、彼らはアルバムのソングライティングを行なっている際にメンバー全員でハマっていたというHumanity’s Last Breathの影響も感じることが出来る。本作のミックス/マスタリングを手掛けたのはChristian Donaldsonなので、クオリティはお墨付きだ。こぼれ話だが、RIFF CULTのチームが運営するRNR TOURSで今年6月に来日したメロディックパンク・バンド、MUTEのギタリストがツアー中使っていたのはChristianから直接購入したギターだった。不思議なつながりを感じた瞬間であった。

さて内容であるが、彼らのライブ・パフォーマンスを観た人なら分かるだろうが、現代デスコアのトレンドとも言える、Lorna Shoreを彷彿とさせるブラッケンド・スタイルを、これまでThe Voynich Codeが育んできたBorn of Osirisからヒントを得たオリエンタルな音色を”染み込ませた”サウンドへとアップデートしている。新加入のドラマーDaniel Torgal (彼もRNR TOURSで過去に来日を手がけたAnalepsyの元メンバーである!) によるマシンガン・ブラストビートを下地に敷いたメロディアスなデスコアは、一見そのプログレッシヴさにとっつきにくい印象を受けるかもしれないが、フックの効いたテクニカル・リフの波がベストなタイミングで展開してくるのでご安心を。「The Art of War」で魅せるThe Voynich Codeの新スタイルは、デスコア・リスナーはもちろん、プログ/Djent、そしてThallといったニッチなジャンルのリスナーまでを虜にする要素がたっぷりと詰まっている。聴き込みが重要な作品。

 

▶︎第5位 : Carnifex 『Necromanteum』

Stream & Download : https://carnifex.bfan.link/necromanteum.yde
Social : http://www.carnifexmetal.com

トレンドの移り変わりが激しいデスコアという音楽シーンにおいて、長年大きくスタイル・チェンジをしていないのがCharnifexだ。Jason Suecofがプロデュースというのも、良いチョイスだと思う。サウンド・プロダクションが”デスメタル”であることが、彼らの良さを引き出している。

アルバムを9枚作ってきて、さほど大胆なスタイルチェンジやチャレンジングなパートを導入したりしないということは、彼らがブラッケンド・デスコアの元祖として自身のソングライティングにかなりの自信を持っている証拠だと思うし、実際に、細部にまで血が通った人力のグルーヴとホラー映画さながらのシンフォニックなオーケストレーションが彼らのサタニックな魅力を不気味に引き出しており、完全に格が違うということが数曲聴いただけでも確信出来る。

中でもやはり、タイトル曲「Necromanteum」のオーケストレーションは神がかっている。ここまでオーケストレーションをキーにした楽曲は、思い返してみたら無かったかも知れない。長年ライブのエンディングを飾る「Hell Chose Me」が「Necromanteum」に置き換わったら、だいぶ印象も変わりそうだ。

 

▶︎第4位 : Impending Doom 『LAST DAYS』

Stream & Download : https://linktr.ee/impendingdoom
Social : https://www.instagram.com/impendingdoom/

2000年代初頭から活動を続けるベテラン・デスコア・バンド、Impending Doomが、10年以上所属していたeOneを離れ、18年振りにインディペンデントに戻り本作をリリース。いやはや驚きました。ロゴも一新、ここからまたImpending Doomの伝説が続いていくのかと思い、リリース時はかなり精神を集中させてEPを聴きました。

デスコアのアルバム・コンセプトや歌詞は近年メンタルヘルスが中心で、人間としてのダークサイドや怒り、悲しみというものが多く、リアルに追求すること自体に危険性をはらんでいる音楽であることは間違いなく、人を壊してしまう危険性を常にはらんでいる。ツアーともなればそれを毎日演奏するミュージシャンが被る精神的な影響は計り知れないものがあるだろうと感じますね。

Impending Doomは、クリスチャンであり、クリスチャンであることを通じて生ずる社会的な怒りや批判をテーマに取り上げることがこれまでも多くありました。芸術的に、そして詩的にそれらを表現し、大炎上するような偏った思想でなく、共感を呼ぶものにするというのは教養なしには出来ないでしょうし、実際の感情に基づいているからこそ数10年に渡り歌い続けられているのかもしれません。長く歌い続ける楽曲の歌詞が一瞬の怒りや悲しみを切り取ったものであった場合、通常のメンタルとは異なる負の感情、怒りの感情を歌い続けることにはかなり重たい精神的負荷がかかってくるでしょうし、大型ツアーともなれば、それをほぼ毎日1ヶ月続けるので普通はおかしくなってしまうでしょう。これはデスコアという音楽がこれまでに何度も直面してきた問題で、デスコアという音楽が長く続いていく上でも、その時の精神状態などを大きく反映させた歌詞などを歌うこと、絶望感、希死観念をテーマにし続けることには、やや注意が必要かもしれません。Impending Doomが精神的な混乱、狂気や怒りのような音の塊をサウンド・パレットの上に落とし込んでいるのは紛れもない事実だが、それが精神的な崩壊からくるものでないことは明らかで、フレーズの所々に見られるクリスチャン・メタルらしい言葉のチョイスはダークであるが、デプレッシヴでないと感じます。クリスチャンであることの一貫性は、現代の困難な社会を歩む上で重要なことなのかも知れない。

サウンドもFacedown Recordsのクラシック・デスコアを見事に現代的なサウンド・プロダクションにアップデートしているのが節々で感じられる。ミュージックビデオにもなっている「ETERNAL」のエンディングでモッシュしないデスコア・リスナーはいないだろう。

 

▶︎第3位 : Face Yourself 『Tales of Death』

Stream & Download : https://linktr.ee/faceyourself
Social : https://fyourselfband.com/

オレゴン出身女性ボーカル・デスコア・バンド、Face Yourselfの5曲入りEPが登場。本作前にシングルとしてリリースされた「Death Reflection」では、「女性版Will Ramos」と言われるほど、人間離れしたガテラルを炸裂させ、一気に人気急上昇バンドとなりました。高まる期待とは裏腹に、本作のアートワークはギロチン落下寸前のおどろおどろしいブルータルなものでB級感をぷんぷん漂わせているのには驚きました。個人的には、ブルータル路線を追求していくことの強い表れのように感じ、簡単にメジャー・レーベルには引っこ抜かれないぞというアンダーグラウンド・デスコア・スピリットを勝手に感じました。

EPの先行シングルとしてミュージックビデオとしても公開された「Guillotine」はこの作品のキラーチューンで、女性ボーカリストJasmineのガテラルが圧倒的な存在感を放っています。ファストなブラストビートの上で炸裂するシュレッダーなテクニカル・リフ、ソロも導入されていて、全体的なバランス感覚もヘヴィに偏るでもなく、メロディックに傾倒するでもなくドラマティックで全く飽きません。そして、Lorna Shore直系のエンディング・パートは本家を超えてしまっているとのコメントもMVに書き込まれるほど。それ以上に素晴らしいのはChelsea Grinの初代ボーカリストAlex Koehlerに影響を受けたようなスタイルでスクリームする中盤のボーカル・パートかも。いや本当に聴くたびに衝撃を受けます。

 

第2位 : Signs of the Swarm 『Amongst The Low & Empty』

Stream & Download : https://signsoftheswarm.com/ATLAE-preorders
Social : https://signsoftheswarm.com/bio

Signs of the Swarmが名門Century Media Recordsへと移籍して発表した通算5枚目のフル・アルバム。Lorna Shoreの成功によって、メタルのメインストリームに向かって更にデスコア・シーンを拡大するための門戸が開かれたと言えるだろう。Lorna Shoreの衝撃についてSigns of the Swarmというチョイスは完全に間違っていない。そしてバンドもその期待を超えるものを『Amongst The Low & Empty』で作り上げている。その自信は、アルバムのオープニングを飾るタイトル・トラックでミュージックビデオにもなっている「Amongst the Low & Empty」に現れている。この楽曲は前半こそ、これまでSigns of the Swarmが築き上げてきたブルータル・デスコアに微細なプログレッシヴ/マス・エレメンツを散りばめ、ブレイクダウン・パートへ向かってその熱を加熱させていく。驚くべきは更に底から、2段、3段、4段とビートダウンしていくパートであり、正直言葉を失ってしまうほど、驚いた。もうこの曲の衝撃が凄すぎて、他の曲の感想はありません。

と、言いたいところだがすごい曲が多すぎる。「Tower of Torsos」はニューメタルコアのワーミー、Djentな細かいリフの刻み、エレクトロニックなノイズを見事に散りばめた。無論、この楽曲もエンディングのビートダウンは言葉にならないほどヘヴィだ。次いで「Dreamkiller」はSigns of the Swarmが更に上のステージへと階段を上がっていくために作られたような曲で、これまでキーになることはなかったプログレッシヴなスタイルを全面に押し出し、クリーンパートも少しだか組み込まれた興味深い仕上がりとなっている。この曲が彼らを、これまでリーチ出来なかったところへ導いてくれるものになるかどうか、それはやはりCentury Media Recordsが仕事をするはずだ。これだけ高いポテンシャルを兼ね備え、それを見事に、ブルータル・デスコアとして最高の形に仕上げた彼らの更なる成長が楽しみである。

 

▶︎第1位 : Humanity’s Last Breath 『Ashen』

Stream & Download : https://ffm.to/hlbashen
Social : https://humanitys-last-breath.com

2009年、Vildhjartaのメンバーによる新バンドという触れ込みでスウェーデンから世界へ向けて衝撃的なデビューを果たしたHumanity’s Last Breathも気付けば本作が4枚目のフル・アルバムだ。このアルバムについてバンドは、このようなコメントを発表している。

「10年以上にわたり、Humanity’s Last Breathは、迫り来る黙示録を警告するかのような不吉なメッセージを音楽で伝えてきた。表現を必要とする場所から音楽を作りたいという果てしない衝動で、常にモダン・メタルの可能性の限界を押し広げてきた。4枚目のアルバム「Ashen」のリリースとともに、このサウンドを体験してほしい。世界は絶望の中で歌おう」

直訳なので絶妙なニュアンスはやや異なるかもしれないが、気になるのはHumanity’s Last Breathがモダン・メタルを自称しその可能性の限界を追求していることをバンド活動の大きなテーマとしているところである。実際にバンドの主要メンバーであるBuster Odeholmはプレイヤーとしてだけでなく、多くのデスコア・バンドのプロデュース、ミックス、マスタリングなどを手がけており、シーンきってのプロデューサーとしての側面も持ち合わせている。彼が自身がヘッドを務めるバンドにおいてどのようなスタイルを作り上げるのか、それはこれまでプロデュースしてきたバンドへ「自分とはなんたるか」を提示することにもなり、『Ashens』で想像も出来ないほどの創意工夫と挑戦、限界の追求を果たしている。そしてそれは、プログレッシヴ、Djent、Thallという概念すらも自ら打ち壊してしまうような、衝撃的なものになっている。

オリエンタルな女性コーラスが永遠とバックトラックとして流れる「Instill」のDual Guitar Playthroughのビデオがアップされているので観てみよう。ギタリストにとって、これほど参考にならないプレイスルー・ビデオはあるだろうか! Busterはレフティであるが、弦は逆張りしていて、「E B E A Ab A」という奇妙なチューニングを施しプレイしている。このプレイスタイルについては自著『Djentガイドブック』で直接Busterについてインタビューをしているので是非手に取って読んでみてほしい。この楽曲からも分かるように (インスト・バージョンであるが)、聴くものを飲み込んでいくようなリフの恐るべきパワーに圧倒されるし、ヘヴィ、以上に”ダークネス”という部分の追求をしているようなところもあり、闇より深い黒を探し続けているような、常人では考えもつかないアイデアでHumanity’s Last Breathをアップデートしてくれている。

また、メンバーにはラインナップされていないが1曲を除き、本作はBusterとVildhjartaのCalle Thomérがソングライティングを手掛けている。元々彼は参加しないつもりであったし、メンバーでもないが、BusterがColleの才能を認めていて、いくつかのHumanity’s Last Breathの楽曲アイデアを彼に送り、アレンジしてもらったと言う。このコラボレーションはHumanity’s Last Breathというバンドにとってこのアルバムで未知のサウンドを生み出すのに大きな力になっているようにも感じる。また、このアルバムで初めて(!) プログラミングしたドラムではなく、ドラマーが実際に録音している。このドラム録音はリハーサル・スペースで録音してツアー中にラップトップで編集したとのこと……。さらにボーカルはAudiomoversというソフトを使い、ボーカルのFilip Danielssonが自宅スタジオで録音、それがBusterのDawにそのまま録音されるようにセットアップして時間の節約をしたそうだ。クリエイターの環境も日々アップデートしているが、さすがBusterといった具合だ。

アルバムからの先行シングル「Labyrinthian」は非常に高い評価を得た。先ほども彼らのサウンドを説明するとき、「闇よりも黒い黒」といったが、この楽曲でそれを完全に表現している。もちろん、中盤にはモッシュでも起こそうかというようなキャッチーなフレーズもあるが、そこからまたずるずると、リスナーを闇深くへ引き摺り込んでいく。バンドはこんな完成度の高いアルバムを作って、次一体、何を作ってしまうのだろうか。Lorna Shoreが「To The Hellfire」を出したとき、もうデスコアがこれ以上ヘヴィになることはないかもしれないと思ったが、彼らはまだ、さらにヘヴィになっていくだろう。

 

次点TOP 10

Osiah – Kairos
As Beings – Slave to the Sickness
VØID – Everything is Nothing
Nylist – The Room
Lonewolf – The Rhythm of Existence
Teralit – The Trinitarian
Acranius – Amoral
Monasteries – Ominous
Worm Shepherd – The Sleeping Sun
DJINN-GHÜL – Opulence

アヴァンギャルド・プログレッシヴ・ジャズ 2023年の名盤 TOP10

Avant-Prog。このジャンルとの初めての出会いはMABOROSHI NO SEKAIからリリースされていたBAZOOKA JOEのアルバム『PORNO AND CANDY』からだったと記憶している。「アヴァンギャルド」とか「プログレッシヴ」などという音楽ジャンルがあることを知らなかった中学生の私は、ドラムとベースだけのハードコア・デュオで、トリッキーな展開が癖になるなと思っていた。このアルバムにゲスト参加していた高円寺百景の面々をたよりに新しいアーティストを掘り下げていったことが、アヴァン・プログレッシヴへの入り口になった。この記事のイントロでこれ以上話すには長くなりすぎるので、そこからの音楽遍歴はまたの機会に……。2023年聴いていたいくつかの作品をアルバム・レビューしてみたいと思う。プログ・ジャズは全く通ってきていないので、見当違いな感想があればコメントで教えていただきたい。

基本的にBandcampを中心にAvan-Progのタグを頼りに様々な作品を聴いた。ただ、普段追いかけているメタルやパンクとは違い、その歴史や重要人物について、全く分かっていない。完全なる無知だ。しいて言えば、吉田達也さん関連だけは追いかけ続けている、といった具合。ですので、プログ・ジャズ・リスナーの方がこのリストを見たら、どう思うだろう。


▶︎第11位 : Nick Dunston 『Skultura』

どうしても10枚に絞れなかったので、11枚という中途半端な数になってしまった。消そうかと思ったが勿体無いので全て掲載しようと思う。

ニューヨークを拠点に活動するフリー・インプロ/アヴァンギャルド・ジャズ系のベーシスト、Nick Dunstonによる本作『Skultura』は、ドイツ・ベルリンのレーベルFun In The Churchとアメリカのカセットテープ専門レーベルTripticks Tapesからの共同リリースで日本国内でもディスクユニオンなどに入ってきています

Nickが本作に呼び込んだゲスト陣も面白く、ボーカル/エフェクト/エレクトロニックを担当するCansu Tanrıkulu、シンセ奏者のLiz Kosack、アルト・サックスとクラリネット、そしてボーカルとしても参加したEldar Tsalikov、ドラマーMariá Portugal、そしてAKAI MPCを操る共同プロデューサーPetter Eldhという、一見しただけではどんな音楽を奏でる集団なのか全く想像が出来ない陣容でアヴァンギャルドな世界観をサウンド・パレットに描き出していく。冒頭の「Jane」では、Volkswhaleを彷彿とさせるような、Tardcore/Scum Music的な、取り留めのないカオスにも聴こえるが、静かに差し込まれるNickのベースや微細なアヴァンギャルド・ジャズがそれらを上品な芸術作品であることを思い出させてくれる。即興音楽をベースにしながらも、様々なサウンド・マニピュレーション・テクニックを駆使し、直感的なアイデアを丁寧にコラージュして形作られたような音楽は、他に聴いたことのない刺激的なものに仕上がっている。

この秋、オーストリアで開催された「ヴェルス・アンリミテッド・フェスティバル」のフル・ライブパフォーマンス・ビデオが公開されており、本作の直感的な部分が視覚的に楽しめる映像になっているので、気になった方は是非。

 

▶︎第10位 : Lovely Little Girls 『Effusive Supreme』

The Flying Luttenbachersのメンバー擁するシカゴを拠点に活動するプログレッシヴ・ジャズ/アヴァンギャルド・ロック・バンド、Lovely Little GirlsのSKiN GRAFT Recordsからの3枚目フルレングス。

オフィシャル・プレスによれば、MagmaからDead Kennedysに影響を受けているとのことだが、シカゴ・ジャズが根底に流れていながらも、奇形ハードコア・テクノPassenger of Shit的なグロテスクでゴツゴツとしたヴィジュアル・イメージを持ち、その狂気は混沌とは程遠くスタイリッシュであり、確かなグルーヴをベースにジャズ、アヴァン・プログ、ファンクからラテン、さらにはマスロック的感覚までも飲み込んでいく。貪欲さと熱気で終始汗ばんだバンド・アンサンブルにただただ身を預け、不気味な動きで無心に体を動かしたくなる、エキサイティングな作品だ。

 

▶︎第9位 : Ramdam Fatal 『Ramdam Fatal』

フランス・オーヴェルニュを拠点に活動するRamdam Fatalは、エレクトロニック・アヴァンギャルド/プログレッシヴ楽団”Ultra Zook”のメンバーと、クラシックの手法でスポークン・ワードを取り入れ寸劇のようなパフォーマンスを得意とする前衛音楽団体”L’Excentrale”のメンバーによるユニットで、同郷のアヴァンギャルド・レーベル「Dur et Doux」より本作でデビューを飾った。ピカソのキュビズムからの影響を感じさせるアートワークは、サウンドと非常にリンクしており、異国の儀式的なリズムとメロディが散りばめられ、クラシック、ジャズの香りもほのかに燻らせながらアヴァン・グルーヴを展開していく。

見事なのはエレクトロニックな手法がアヴァン・プログに暖かみをもたらし、オーヴェルニュの美しい村々までも想起させる収録曲「Fondamentalement trouble 」から「La diabolique」の流れには思わず没入してしまう。面白いのはこの音楽にはどこか日本のニューウェーヴ、パンク・アヴァンギャルドにも似たものが感じられるところ。フランス語の響きも心地良く、隅々まで磨き抜かれたサウンドに没入していく感覚が聴き進めていくにつれ増していく。

 

▶︎第8位 : Mendoza Hoff Revels 『Echolocation』

アヴァン・プログ・ユニット、Mendoza Hall Revelsのデビュー・アルバム。AUM FIDELITYからのリリースということもありディスクユニオンでも取り扱いがあり手に入れやすい作品。元Unnatural Waysの女性ギタリストAva MendozaとYoko Onoなど様々なアーティストの作品に参加してきたベーシストDevin Hoffを中心に結成されたユニットで、サックス奏者にJames Brandon Lewis、ドラマーChes Smithが参加した4人体制で制作された。

 

 

Ruinsや高円寺百景といったパンクを通過したアヴァン・プログが好きなら、Mendoza Hoff Revelsは要チェックだ。サックス、ギターのフリーキーなジャズの香りととにかく弾きまくるドライヴンなベースとタイトなドラミングは一聴するとアンバランスに聴こえるが、さすがは熟練のミュージシャン、卓越したアンサンブルのセンスを見せてくれる。オープニングの「Dyscalculia」のダークなパンク/ジャズ・グルーヴ、「Diablada」のぶっ飛んだギターとサックスの狂気的なメロディ、聴きごたえ抜群。

 

▶︎第7位 : Tatsuya Yoshida & Risa Takeda 『Jellyfish』

1年は365日あるが、SNSから察するにそれ以上のライブをこなしていると錯覚してしまうほど、今、日本で最もアクティヴな即興ミュージシャンであるTatsuya YoshidaとRisa Takedaの両者によるユニット”Tatsuya Yoshida & Risa Takeda”。今年はこのユニットでのツアーも全国各地で開催され、膨大なアーカイヴ音源がBandcampで販売されてきた。その中でも印象的だった『Jellyfish』は、7月27日に愛知・名古屋の徳三でライブ・レコーディングされた音源をまとめたもの。

 

 

ライブによって違うのはRisa Takedaが使用する楽器で、本公演では3台の鍵盤を使い、クラシカルなピアノの音色を軸に展開していく。あえて今、「女性らしさ」と「男性らしさ」をキーワードにこのユニットの魅力を解体した時、Risa Takedaのしなやかな鍵盤ワークと、繊細でありながら肉体的な力強さによる緩急でプログレするTatsuya Yoshidaのドラミングの見事なクロスオーバーが炸裂したこの作品は、即興音楽の遊び心とそれぞれのミュージシャンの個性、そして「女性らしさ」と「男性らしさ」が垣間見ることの出来る良作だ。

Tatsuya Yoshidaのキャリアを考えれば、老練のドラミングをもってして、アヴァン・プログレなライブ・ステージを牽引していくのが普通なのかもしれないが、このRisa Takedaの「おてんば」とも言うべき音色の躍動が時に二人のサウンド・バランスの中心になっているのは驚きだ。歳も離れたこの二人のミュージシャンのアヴァン・プログな駆け引きはリスナーにとって予測出来ない展開への好奇心を駆り立ててくれる。

『Jellyfish』だけでなく、多くの作品でその「駆け引き」を楽しむことが出来るし、ライブならではのフロアの空気感もそれぞれに違い、時にハプニング的な笑い声もそのまま収録されていて、心地良い緊張感が漂っており変なストレスが一切ない。2024年も日本全国、毎日のようにライブを続けるだろうこの二人が、アヴァン・プログをエンターテイメントでなく、生活の一部のような、文化的なものとして我々を楽しませてくれるだろう。どんなに忙しい人でも、ライブを観られるチャンスがあると思うので、気軽にライブへ足を運んでみてほしい。

 

▶︎第6位 : Behold… the Arctopus 『Interstellar Overtrove』

アヴァン・テクニカル・デスメタル・バンドGorgutsのベーシストとしての活動でも知られるColin Marstonのバンド、Behold… the Arctopus。これまでにMetal Blade Records、Black Market Activities、Willowtip Recordsと大手メタル・レーベルを渡り歩いていたバンドであるが、2020年にWillowtip Recordsからリリースしたアルバム『Hapeleptic Overtrove』からグッとアヴァンギャルド/エクスペリペンタルなスタイルへと舵を切っている。もちろんこの作品はデスメタル・シーンで賛否両論あり、「トムとジェリー」のような激しくコミカルな展開にも似た構成であったことから「トム&ジェリー・メタル」と揶揄されたりもした。

 

 

Colin Mansonの創造性の凄まじさは、彼のYouTubeチャンネルをフォローしてれば分かるだろう。毎月のように変名プロジェクトで奇怪な作品を発表し続け、時にノイズに接近したり、もはやメタルの要素を全く持たない作品も多かった。本作はタイトルから察することが出来るように前作『Hopeleptic Overtrove』に次ぐ作品で、Jason Bauersが電子ドラムとアコースティック・パーカッション、Mike Lernerがギター、Colin MarstonがWarr Guitarsを用いたタッピング・パートとシンセを担当している。

Warr Guitarsを演奏するColin

この作品をテクニカル・デスメタルといったメタル・カテゴリーでなく、今回「アヴァン・プログ」の年間ベストで紹介するのには理由がある。Behold… the Arctopusは既にメタルというカテゴリーからは脱しており、新しいフュージョンをテクニカル・デスメタルを通過したエクストリームな手法で探求している。このアルバムに対するファンの反応も非常にポジティヴで『Hopeleptic Overtrove』とは違う。「アラン・ホールズワース (UKジャズ・フュージョンの著名ギタリスト) の全ディスコグラフィの破損したデータをAIに読み込ませて作られた新種の音楽」というファンのコメントにはLIKEがびっしり付いていた。

もちろん作品を聴き進めていくと、プログレッシヴ・メタルに通ずるスペーシーなギターソロも組み込まれているが、Simons Electric Drumsによる不気味なドラミングと、Warr Guitarsの繊細でミニマルなメロディを基調とし一切のダイナミズムを排除したサウンドには、馴染んでいるようで馴染んでいない。古くからのファンへの配慮かもしれないが、今もBehold… the Arctopusを追いかけているファンはすっかり新しい世界観を楽しんでいるから気にせず独自のクリエイティヴを突き進んでほしいと思う。Colinは素晴らしい音楽家で、刺激を求めるメタル・リスナーに全く違う音楽体験を提供し続けている。彼がアヴァン・プログとテクニカル/プログ・デスの架け橋となって、さらに刺激的な音楽が誕生することを楽しみにしたい。

 

▶︎第5位 : ni 『Fol Na​ï​s』

フランス東部・ブール=カン=ブレスを拠点に活動するniの4年振りとなるフル・アルバム。2018年にDur et Douxのレーベル・メイトであるPoilとのユニット”PinioL”でアルバム『Bran Coucou』を発表、着実にキャリアを積み上げてきた彼らの本作『Fol Na​ï​s』というタイトルの意味は、古典フランス語で歴史上の支配者たちの愚者や道化師につけられた呼び名とのこと。アートワークがそうだろうか。

とにかくこの作品は、アヴァンギャルド、プログレッシヴ、というカテゴリーの中だけで語られるにはもったいないほど、メタル成分がたっぷりと詰まっている。ギタリストであるAnthony BéardとFrançois Mignotのコンビネーションは、現代のメタルコア、デスコア、ニュー・メタルコアからマスコア、テクニカル・デスメタルまで見渡しても、ここまで個性豊かで技術的にも優れているものはないかもしれない。Françoisに至ってはチェンバーロックPresentの新ギタリストとして加入したというから、向かっている方面はメタルとは違うものの、多くのメタル・ヘッズ、例えばMeshuggahやIgorrrなどが好きなら必ずチェックしたほうが良いだろう。ノイズ/エクスペリメンタルなエレメンツはクリエイターにとってフレッシュな創作のヒントになるだろう。間違いなく多くのメタル・ミュージシャン達に刺激を与える一枚。

 

▶︎第4位 : Steve Lehman & Orchestre National de Jazz 『Ex Machina』

アヴァン・プログかどうかは一旦置いておいて、この作品はとても興味深かったので、このランキングに組み込んでみた。『Ex Machina』は、ニューヨークを拠点に活動するサックス奏者/作曲家のSteve Lehmanとグラミー賞にノミネートされたフランス国立ジャズ管弦楽団Orchestre National de Jazzによるコラボレーション・アルバム。

フランス現代音楽の著名作曲家であるGérard Griseyの代表作『Tempus Ex Machina』をルーツに、電子音とジャズ・オーケストラの融合を表すようなアルバム・タイトル『Ex Machina』はその名の通り、フランスの、音響/音楽の探求のための研究所として知られるIRCAMで開発されたライブのインタラムティブ・エレクトロニクスがリアルタイムで補強・変形されていくのに合わせて、Steve、ONJの面々が複雑なポリリズム・グルーヴに合わせてバランスの取れたハーモニーを生み出していくというもの (動画を是非見てほしい)。ミニマルなヴァイブスを基調としながらも、オーガニックでスリリングなジャズのアンサンブルがマシーンに溶け合っていく本作は、現代音楽のテクノロジーの最先端とアヴァン・ジャズの野生的なエネルギーが見事に融合している。「Los Angeles Imaginary」のBrutal Progのようなイントロからアヴァン・ジャズへのナチュラルな展開、「Ode to akLaff」の人間と機械がそれぞれに互いの性質へと転換して構築されたようなエクスペリメンタルな楽曲など、ジャンル問わず野心的な音楽、特にグルーヴの追求をするミュージシャンにとって多くの学びがあるだろう。もちろん、音楽作品として優れているのは言うまでもない。

 

▶︎第3位 : The Filibuster Saloon 『Going Off Topic』

イングランドのトラディショナル・フォークやカントリーに心酔していた今年の秋、アメリカ・ニューヨーク出身のプログレッシヴ・ロック/フォーク・バンド、The Fillbuster Saloonのデビュー・アルバム『Going Off Topic』には心奪われ、病に疲れ果てた心身を取り戻すために取り組んだリハビリ中、何度も何度も聴いた。美しく没入感があり、そこから得られる音楽を楽しむというピュアな多幸感は日々の活力になった。カンタベリー・ロックにアヴァン・プログのエナジーを組み込みながら、フュージョンのアトモスフィアがグルーヴに広がりをもたらしていく。彼らの卓越されたテクニックによって複雑に展開する楽曲への好奇心が陽気に湧き上がり続けていく、そしてそこに言葉はいらない。完璧なインスト・バンドだと思う。

スリリングでパンチの効いたタイトなグルーヴ、実験的、即興的な側面もありつつ、プログレッシヴ・ミュージックの持つ”喜び”を思い出させてくれるような『Going Off Topic』。みなぎる生命力を体感してほしい。推薦曲は「Pinball is for Truckers」。「JFK Jr.」も素晴らしい。外国文学の名著のようなアートワークもグッとくる。

 

▶︎第2位 : Matana Roberts 『Coin Coin Chapter Five : In The Garden』

アメリカ・シカゴ出身の女性サックス奏者、Matana Robertsが全12章で送るアフリカ系アメリカ人の歴史を探究するシリーズ「Coin Coin」の第5章。本作は”違法な中絶の合併症で亡くなった先祖代々の女性達の物語”の語り手となることを試み、アヴァンギャルド・ジャズ、フリー・ジャズをベースにフォークのトラディショナルなメロディ、アブストラクトなシンセサイザー、ノイズから静寂までを文学的才能を感じさせるスポークン・ワードを織り交ぜ展開していく。

 

 

リプロダクティブ・ライツ (自分の身体に関することを自分自身で選択し、決められる権利) について、私たちの記憶の中で最もに新しく印象的なのは、、本作のテーマとなっているアメリカの人工妊娠中絶をめぐる問題だ。1973年から合法に認められてきたアメリカの人工妊娠中絶が再び違法になる可能性を帯びたことに対し、2022年は激しい議論が巻き起こってきた。これは日本のメディアでも取り上げられたので、かすかに記憶に残っている、または強烈に衝撃を受けた人も多いだろう。

パンク・シーンや多くのクィア・ミュージシャン達は中絶を違法とすることに反対する声を挙げた。その背景には非常に複雑な問題があるが、認められてきたリプロダクティヴ・ライツの一つを再び取り上げられてしまうことに反発することが何より女性達の他の権利を守るためにも必要であることから、音楽シーンでも積極的に取り上げられたテーマになったのかも知れない。Black Lives Matter以降のアメリカは間違いなく変わった。それは悲しい歴史を重ねてきた人種、性別的に弱い立場にあった人たちの希望になったと思う。

Matana Robertsは、本作のスポークン・ワードを自身の公式サイトで一部公開している。アルバム全体で一貫性のある、明確なメッセージを持っているわけではないようで、スポークン・ワードの内容もかすれた記憶をたぐい寄せながら、抽象的な言葉を選びコラージュされたようなものとなっている。この構築美はアートワークにも見られ、女性の目を切り貼りしたアートは本作のテーマを象徴している。さまざまな女性達の「視点 / 眼差し」から忘れ去られようとしている歴史を呼び起こし、それらにこびりついた混乱、狂気、悲鳴、絶望、怒りをサウンド・パレットの上に激しく描き出していく。

全てのスポークン・ワードが理解が難しい抽象的なものであるわけではなく、何度も登場する「My name is your name Our name is their name We are named / We remember They forget (私の名前はあなたの名前 私たちの名前は彼らの名前 私たちは名づけられた / 私たちは覚えている 彼らは忘れる)」というフレーズやアルバムのエンディングのタイトル「…ain’t i. …your mystery is our history (あなたの謎は私たちの歴史だ)」など、強く真っ直ぐなメッセージも随所に見受けられる。

Robertsは「この問題について、彼女達が解放感を得られるような形で語りたかった」と説明している。Robertsは、忘れ去られてしまいそうな家族の物語を紐解きながら、アメリカの公文書館で広範なリサーチを行い、時に強いメッセージをリスナーに打ちつけながら、卓越されたサックスの音色でがんじがらめになった女性達の混乱を解きほぐすようにしてサックスを吹き鳴らす。

モーダル・ジャズからミニマルなシンセのループ、アヴァンギャルド・ジャズの嵐が吹き荒ぶエクストリームなパートに散りばめれたフォークのエレメンツ、ノイズから静寂まで、目まぐるしく展開しながらもアヴァン・ジャズとしてスタイリッシュにまとめあげたRobertsの才能と思想は、決してアヴァン・ジャズの領域だけでなく、パンクやロックのフィールドにも届けられるべきだろう。無論、RIFF CULT読者にも届くことを祈っている。

 

▶︎第1位 : John Zorn 『Parrhesiastes』

1990年代にはニューヨークと東京とを行き来し、高円寺にアパートを借りていたこともあったという伝説のサックスフォン奏者、John Zohn (ジョン・ゾーン)。パンクやメタル、ハードコア・リスナーにとっては80年代後期〜90年代初頭のプロジェクト、Naked CityやPainkillerがあまりにも有名だが、現在も自主レーベルTzadikを運営し、70歳を迎えた今年もその創作意欲は衰えることを知らない。

キーボーディストのJohn MedeskiとBrian Marsella、ギタリストMatt Hollenberg、ドラマーKenny GrohowskiからなるChaos Magick Bandを迎え制作され、John Zornがソングライティングを担当したJohn Zorn名義での本作は、近年のJohn Zornの最高傑作の一つとして数えられる。コンテンポラリー・クラシックを軸にファンク、そして強烈なインパクトを放つメタル/ハードコアのギラついた転調のアクセントが非常に面白く、それらが決してダイナミックに、波打つように展開するのではなく、しっかりとアヴァンギャルド・ジャズとして高貴に鳴っているから驚きだ。このMattのリフの数々は、現代メタル、例えばCode Orangeなんかも通過しているように思うし、2020年代に蘇るNaked Cityといっても過言ではない (言い過ぎかもしれないが……)。John Zornが70歳でこれを作っているというのが、本当に信じられない。

 

グラインドコア 2023年下半期の名盤 TOP10

2023年上半期のベスト・アルバム記事はこちら

2023年の上半期は、The HIRS CollectiveSee You Next Tuesdayなど、一般的なメタルの年間ベストにも入り込めそうな作品がリリースされ、グラインドコアが熱い一年だったように感じる。ただ、そこはやはりアンダーグラウンド。決していきなりバズってメジャーになったりするような音楽ジャンルではありません。ただ、例年よりも活気に満ち溢れていたのは間違いない。

グラインドコア・バンドが楽曲で描く大きなテーマは、政府や社会への怒りというものが多い。2023年、世界がコロナを乗り越えた先に、こんなにも戦争が勃発するとは思わなかったし、連日ソーシャルメディアにアップされる痛ましい写真に胸を痛めていた人も多いだろう。彼らの創作意欲が巨大に怒りに駆り立てられたのも、グラインドコアが熱いと感じた理由かもしれない。そして、しばらくは厳しい社会情勢が続き、彼らのメッセージも熱を帯び、シーン全体の注目度も上がってきそうな気がする。ひどくならないことを祈りつつも、どんな風に社会情勢とリンクしながらグラインドコア・バンドが作品を生み出していくのかは気になるところである。

グラインドコアの規模は他の音楽ジャンルに比べて小さいながらも、世界中から来日バンドが毎月のようにやってきて、日本在住、特に東京近郊にお住まいの方であれば、彼らの熱演を体感出来るチャンスは他の国より格段に多いだろう。このシーンにアンテナを貼り続けているリスナーの数も世界屈指なはず。最近だと、年間ベストには入っていないが、男女混合のグラインドコア・バンド、Escuela GrindNapalm DeathBarney Greenway をフィーチャーした「Meat Magnet」のミュージックビデオを公開してファンの度肝を抜いた。彼/彼女たちは間違いなく、2024年のグラインドコア・シーンのトップをいくバンドであるし、深掘りすれば非常に面白いジャンルだ。下記に書いた年間ベストと一緒にチェックして、2024年のグラインドコアの動向を見逃さないようにしておこう。

 


 

▶︎Gridlink 『Coronet Juniper』

9年間の活動休止を経て、アメリカ・ニュージャージーを拠点とする日米混成グラインドコア・バンド、Gridlink が復活。MortalizedやHayaino Daisuki、Gridlink休止中はFormless Masterなどで活躍した日本人ギタリストTakafumi Matsubara、そして90年代初頭にニュージャージーを拠点にグラインドコア・シーンで大いに活躍したDiscordance AxisのボーカリストJon Chang、そしてex.PhobiaでRotten Soundのライブ・ドラマーという経歴を持つBryan Fajardoを中心とするこのグループは、2022年にベーシストMauro Cordobaを迎え入れ、Willowtip Recordsと契約を果たした。

非常に叙情的でメロディアスなシュレッド・リフが印象的で、それらは悲哀に満ちており、ブラックメタルやシューゲイズの影響すら感じさせる。収録曲「Ocean Vertigo」はグラインドコアの枠を飛び越え、スタジアム級の観衆を飲み込んでいくかのようなドラマ性を持ち合わせている。ハードコアパンクやクラストの影を忍ばせるようなフレーズや、時にブラストビートをも追い越すメロディックなツインリードも、他のグラインドコア・バンドにないGridlinkの個性と言えるだろう。

Jonの咆哮は血を滲ませながら喉をふり絞るようにハイピッチ・シャウトを炸裂させ、グラインド・ボーカリストとしてのカリスマ性で存在感を示す。しなるドラムスティックが目に浮かぶようなドラミングはGridlinkが本作で魅せるドラマ性をスピードを持って表現しているし、不気味なアヴァン・プログ/カオティック/マス・エレメンツを綿密に構築し、予想だにしない急ブレーキ、そして急発進パートを組み込んでいく。見事な復活を遂げた快心の一枚と言えるだろう。

 

▶︎Brujería 『Esto es Brujería』

メキシコのデスメタル/グラインドコア・バンド、Brujeria。「正体不明」を貫くにはそろそろ限界が来てしまった彼ら、ベースはお馴染みNapalm DeathのShane Embury、ギターはThe HauntedWitcheryで活躍するPatrik Jensen、チリ産カルトメタル・バンドPentagramのAnton Reisenegger、、ドラムはDimmu BorgirCradle of Filthと渡り歩いたNicholas Barkerという超豪華ラインナップ (という、噂)。現在は8人組の大所帯 (+ファーストLP『Matando Güeros』のジャケに出てきた生首という8.5人組と言っておこうか)で、そのサウンドは不気味なスペイン語が飛び交うエクスペリメンタル・グラインドコア。『Esto Es Brujeria (これは魔術だ)』というタイトル通り、時折呪術的なサウンプリングや南米未開の地の危険な民族達の打楽器の舞、みたいな曲もあって面白い。

Brujeriaの最新アーティスト写真。インパクト強すぎる。

 

全編スペイン語ながら「コカイン」とか「マリファナ」とか危ないワードだけは聞き取れる。ミュージックビデオになっている「Bruja Encabronada (ムカつく魔女)」は男女ツイン・ボーカルがスクリームする、というかもはや煽り倒しているみたいなボーカルがおどろおどろしい雰囲気を作り出している。この曲は完全にNapalm Deathって感じでShaneが作ったのかな。もう隠す必要あるのかというレベルです笑。未だ人気衰えない、シーンに愛されているのが実感できる一枚だ。

 

▶︎The Arson Project 『God Bless』

スウェーデン・マルメのポリティカル・グラインドコア・バンド、The Aeson Project。2005年頃から活動を開始し、本作がセカンド・アルバムでHere And Now!、Lixiviat Records、De:Nihil Recordsによる共同リリースとなっている。2010年にNoisearとのスプリットがRelapse Recordsから出ていて、そこで名前を知ったという人もいるかもしれない。

2023年、ポリティカルな姿勢で活動する多くのハードコア/パンク・バンドが怒りをぶちまけた作品をリリースしたが、彼らもそんなエナジーをたっぷりと詰め込んだノンストップ・爆裂グラインドコア・アルバムを完成させた。ローが効きすぎてもはやノイズにまで接近したブルータルなベースラインが凄まじく、それに呼応するかのようなドラミング、ギター、ボーカルと、どれも研ぎ澄まされた怒りのエナジーが溢れている。時折D-BEATに接近しつつも基本はNasum、Wormrot、Trap Them、Dead in the Dirt、そしてNailsあたりのグラインドコアの音像を想像してもらえればと。グラインドコア好きなら、絶対チェックした方が良い作品。

 

▶︎Closet Witch 『Chiaroscuro』

10年近いキャリアを持つアメリカ・アイオワの女性ボーカル暗黒グラインドコア・バンド、Closet Witchのセカンド・アルバム。Zegema Beach Records、Moment of Collapse Records、Circus Of The Macabre Recordsからの共同リリース。

ボーカルのMollie Piatetsky。ライブ中に流血しても、お構いなし。

 

Full of HellのDyran Walkerやジャズ・グラインドThe CentralのFrankie Furilloなどがフィーチャリング・ゲストとして参加している楽曲もあり、この手のシーンの人たちからの信頼は厚い。女性ボーカルのグラインドコア、といえばFuck The Factsがパッと思い浮かぶが、彼/彼女らのような知的な雰囲気に加え、パワー・ヴァイオレンス、クラストのカオスや程良い程度のハーシュノイズのアトモスフィアがよりCloset Witchの芸術性を高めてくれる。Discordance AxisやFull of HellといったエクスペリメンタルでノイジーなグラインドコアからInsect Warfare、Phobia、Nasumといった正統派まで、シリアスなタッチのグラインドを好むリスナーにおすすめ。

 

▶︎Blind Equation 『Death Awaits』

イリノイ州シカゴのエモーショナル・サイバーグラインド・バンド、Blind Equationのセカンド・アルバム『Death Awaits』は、Prosthetic Recordsからリリースされたことにまず驚いたが、2023年にこれだけ高い情熱を持ってサイバー・グラインドの可能性を追求し、『Death Awaits』を完成させたことにまず賞賛を贈りたい。このマイクロ・ジャンルは局地的なシーンを持つわけでないが、グラインドコア・シーンの隅で、あるいはゴアグラインド・シーンの隅で、はたまたカオティック/マスコア・シーンの隅っこで、刺激的なエクストリーム・メタルを求めるミュージシャン、そしてリスナーによって定期的に面白いアーティストが出ては消えてきた。思い出せる印象的なサイバー・グラインド、と言えばゴア系のS.M.E.S.やKOTS、そしてLibido Airbag、いわゆるマス・グラインドと言われるようなところだとThe Captain Kirk on LSD Experience、Preschool Tea Party Massacre、Cutting Pink With Knivesとかだろうか。いずれも短命 (または長すぎるブランクが空いたり) 。

Blind Equationは、グラインドコア、アトモスフェリック・ブラックメタル、そして8bitサウンドやユーロ・トランス、さらにはハイパーポップまでも飲み込んだかなり異質なサウンドであるが、それは間違いなく彼らが自称する「エモーショナル・サイバーグラインド」として正確に鳴らされている。HEALTHやAuthor & Punisher、The Callous Daoboysといったバンドらから共演オファーを受けるなど、ライブシーンにおいても従来のサイバー・グラインド・アーティスト達とは全く異なる存在であることが分かる。実際にライブでシンガロングが巻き起こるんだから、何かファンの胸を打つパワーが秘められていることは間違いない。

リード・シングル「never getting better」の脈打つ8ビット・エレクトロニクスとブラストビート、サビではタイトルにちなんだポジティヴなアンセミックへと爆発していく。「you betrayed the ones you love」ではエレクトロニックなストリングスが、”Real Emotional Cybergrind”を自称する彼らの真髄と言える世界観を表現し、先行シングル/ミュージックビデオとして話題となった。彼らと同世代のZOMBIESHARK!も併せてチェックしておけば、2020年代式のサイバーグラインドの最新形を網羅出来る。

 

▶︎Cognizant 『Inexorable Nature of Adversity』

テキサス・ダラスの5人組テクニカル・グラインドコア・バンド、Cognizant。Nerve Altar Records、Selfmadegod Records、Rescued From Life Recordsからの共同リリース。

純粋なグラインドコア・ファンからしたら、ここまでテクニカルで難解なスタイルは邪道なのかもしれない。マス・グラインド、テック・グラインド、デス・グラインド…… グラインドと名の付くマイクロ・ジャンルは多数あるが、どれも非常に曖昧で「これこそマス・グラインド」みたいなものって、ほとんどない。こういうマイクロ・ジャンル内でのクロスオーバーは、モダン・メタルの限界を追求する姿勢によって挑戦的なものが多く、ジャンルとして確立してきたものはあまりないのが現状。Cognizantのようなスタイルのバンドはどのようにして後世に残されていくべきなのだろうか……。

オープニングを飾る「Paralysis」を再生して1秒もしない間にこのアルバムがどのような狂気にはらんだものであるか、耳の肥えたメタル・リスナーなら分かるだろう。いわゆる”Dissonant Death Metal”(不協和音デスメタル)のタッチを得意としながら、ノイズの塊みたいなリフの蠢きが、抜けの良いブラストビートに絡みついていく。本人達はデビュー時、Antigama的なSci-Fiスタイルを目指していたようだが、このアルバムで完全に本家を超えてしまっているように案じる。VOIVODからAntigamaまで、今年で言えばGridlinkなんかと一緒にチェックすべき名作だと思います。

 

▶︎Misanthropic War 『Utter Human Annihilation』

2021年にドイツを拠点に活動を開始した正体不明の暗黒デス・グラインド、Misanthropic Warから衝撃的なアルバムが登場。アートワークのおっかなさ、そのまんまのサウンドでかなり喰らいました。

いわゆるウォーメタルっぽいスタイルではあるが、やってることはフルスロットルで炸裂し続ける猛烈なグラインドコア。徹底的にローなサウンド・プロダクションは殺気に満ちており、戦争が絶えなかった2023年を象徴するような、残酷さとも言える。人間は戦争を避けられないのだろうか。人間という生き物の難しさ、残忍さ、戦争によって生まれる憎しみ、悲しみ、怒りをそのまま表現したこのアルバムに考えさせられるものは多い。BlasphemyからInfernal Curse、Black Witcheryといったバンドにインスパイアされただろうサウンドであり、グラインドコア・ファンだけでなくブラックメタル・ファンもチェックしておくべき作品と言えるだろう。一切メロディがないという点ではブルータル・デスメタル・リスナーもいけるかも。

 

▶︎Feind 『Moloch』

ドイツ・ボーフムで2021年コロナ禍に結成された3ピース・グラインドコア・バンド、FeindのデビューEP。Halenoise Records、Erdkern Recordsから共同リリースとなっている。

全員がボーカルを取る珍しいスタイルを取る彼ら、忙しなく掛け合うボーカルと刃物のように切れ味鋭いシュレッダー・リフがタイトなドラミングとうねりを生み出しながら、予想だに出来ない展開をフルスロットルで続けていく。ストップ&ゴーもかなり組み込まれていて、思わず没頭して聴き入ってしまうくらい、集中力が必要な作品だ。Wormrotファンは必聴でしょう!

 

▶︎Lycanthrophy 『On The Verge Of Apocalypse』

1998年にチェコで結成されたグラインドコア/ファストコア・ベテラン、Lycanthrophy。結成25周年を記念し、まさかのセカンド・アルバムがHorror Pain Gore Death Productionsから登場! ファースト・アルバムの頃は女性ボーカルで、YouTubeにアップされている古いライブ映像では彼女の熱演を見ることが出来ます。残念ながら2019年に脱退、本作ではギター/ボーカル・スタイルの4人編成となっています (ベースには元Malignant Tumour,のOttoが参加してます)。

チェコからしか生まれない、ゴアグラインディングなフックを持ち合わせたグラインド・サウンドが特徴で、時折ファストコア/パワー・ヴァイオレンスなスピードとノイズの竜巻を起こします。「Dependence」は収録曲の中でも最も優れた楽曲で超高速で転調しながらわずか1分間でここまでやるか!と思わず唸ること間違いなし。約16分で18曲。ノンストップで聴き続けたくなる作品だ。また25年後とかにアルバム・リリース! みたいなのは無しにして、コンスタントに活動してほしい!笑

 

▶︎Dripping Decay 『Festering Grotesqueries』

おそらく2023年にリリースされたデスメタル/グラインドコア・アルバムの中で、最も腐敗臭を漂わせていたアートワークでシーンに一撃を喰らわせたアメリカ・オレゴンのDripping Decay、Satanik Royalty Recordsからのデビュー・アルバム。デスメタル年間ベスト・アルバムのリストは作成出来るほど聴き込んだ作品がなく、軽く下調べしたくらいでリストは作りたくなかったのですが、Dripping Decayは意外とグラインディング・フレーズをモリモリに詰め込んだデスメタルだったので、こちらでレビューしたいと思います。

「Abundant Cadaveric Waste」から「Gut Muncher」の流れなんかは、ブラスト寸前の超高速2ビートが雪崩の如く崩壊しながら、ジリジリとノイジーなリフの巻き起こす嵐に飲み込まれていくかのようで最高にエネルギッシュ。老人が落下してから2週間くらいが経過した腐乱臭立ち込める井戸の奥深くから鳴り響いてくるかのような生臭いボーカルが呼吸困難に陥りながらグロウルするのもサウンドにフィットしてます。ライブの絶妙なダサさも愛らしい。

 

今年もグラインドコアを追いかけるのは、とても楽しかった! もしお気に入りのバンドが見つかったら、ソーシャルメディアをフォローしたり、グッズを買ったり、そしてもし日本に来ることがあれば、ライブを観に行って欲しいです。

 

 

 

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : BITOKU (Sailing Before The Wind)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするメタルコア・イベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎BITOKU : BEST ALBUMS OF 2023

From Ashes to New 『Blackout』
Hollow Front 『The Fear of Letting Go』
Revision the Dream 『Transparency』
Arrival Of Autumn 『Kingdom Undone』
Night Rider 『Night Rider』
 
▶︎From Ashes to New 『Blackout』
 

 
Stream & Download : https://fatn.ffm.to/blackoutalbum
Official Site : https://www.fromashestonew.com
 
From Ashes to Newの『Blackout』はそれぞれの楽曲の完成度の高さはさることながら、サウンド・プロダクションが非常に優れていると感じた作品でした。Better Noise Musicからのリリースということで、メタルコアだけでなく、幅広くメタル・リスナーに届けられることがイメージされているのはもちろんですが、彼らのクリエイティヴな魅力について教えて欲しいです。
 
まさにその通りで、ちゃんと「商品」としてパッケージングされた点において、この作品がずば抜けて最高でした。プロデュースは(ABRなどを手掛ける)Grant McFarlandとCarson Slovakのタッグ。彼らがまぶしたメタルコア視点でのアプローチが、自分の耳に刺さったのかなと。ギターリフをハモらせるタイミングとか、細かいエフェクト音とか、ボーカルワーク以外も全てが洗練されていて痺れる名盤。

 
▶︎Hollow Front 『The Fear of Letting Go』
 

 
Stream & Download : https://hollowfront.lnk.to/TFOLG
Official Site : https://unfdcentral.com/artists/hollow-front/
 
Hollow FrontはSailing Before The Windのメンバーだけでなく、「One Bullet Left」でタッグを組むSable Hillsのメンバーらもフェイバリットにピックアップしていました。このアルバムも細部へのこだわり、メタルコア、さらにはデスコアなどにも通ずるようなタフなグルーヴが魅力だと思いますが、彼らのこれまでの歩みを踏まえつつ、このアルバムの良さについて教えて下さい。
 
ツアー中の事故とそれに起因する保険会社とのトラブルで、製作が遅れ、メンバーが脱退し、2人だけになってリリースされた本作。ただ僕は、”ドラマがあったから”この作品を選んだわけではなくて。私的感情を抜きに作品単体で見ても、壮絶な完成度。9曲目の”Good Things Never Last”で聴けるような4つ打ちビートとメタルコアサウンドの融合は、非常に先進的だなと。もちろん方法論としてやっていたバンドは他にもいるでしょうが、パワーバランスがメタルコア優位のままで、こうしたアプローチを融合しているのがスゴいです。曲単位でも作品単位で見ても、音楽的な実験と継承のバランスがとても良いアルバム。
 
今回ベストアルバムで選んだ作品からはベストトラックを挙げないようにしましたが、それを抜きにすれば、間違いなく本作から”Letting Go”は選んでました。トラブルの過程で疲弊し脱退してしまったメンバーに思いを馳せると、涙が出てきます(アナウンス文がとてつもなく悲しい)。

 

 
▶︎Revision the Dream 『Transparency』
 

 
Stream & Download : https://fanlink.to/jiRg
Official Site : https://www.facebook.com/revisionthedream/
 
Revision the Dreamの『Transparency』という作品については、おそらくこのリストをきっかけにこれから聴いてみようという人がほとんどだと思います。「One Bullet Left」で来日するAcross The White Water Towerにも通ずる、2000年代後期以降のメタルコア/ポスト・ハードコアを下地に現代的なアプローチも組み込んだサウンドを鳴らすバンドですが、このバンド、またはアルバムの魅力について教えて下さい。
 
Revision the Dreamはイスラエルのメタルコアバンド。イスラエルと言えばHer Last SightやDream Escapeが有名で、まさにその界隈のバンドですね。Revision the DreamのギターはDream Escapeのギターで、Dream Escapeのもう片方のギターはHer Last Sightのドラマー。推測ですが、Dream Escapeが改名/分裂した(?) ようにも見えます。サウンドの軸は、2010年代初期のプログレッシブメタルコアサウンド。当時ElitistやERRA、Forevermoreにのめり込んだリスナーは完全ノックアウトされるはず。こういう作品は「リバイバル」の一言で片付けられがちではありますが、今作はとにかくクオリティが高いので、さすがにスルーできなかったです。あの頃のメタルコアを発展させたバンドは数あれど、Revison the Dreamみたいに”継承”したバンドは少ないわけで、そこに価値を置いた結果の評価です。

 
▶︎Arrival Of Autumn 『Kingdom Undone』
 

 
Stream & Download : https://bfan.link/AOA-KingdomUndone.ypo
Official Site : https://www.arrivalofautumn.com/
 
Arrival Of Autumnの『Kingdom Undone』は2020年代のメロディック・デスメタルのスタンダードとして次の何年かに渡って影響を及ぼしそうな、そんな可能性とエネルギーに満ちた作品だと思います。もちろんNuclear Blast Recordsからのリリースというのも大きく影響していますが、彼らはどんなバンドで、こんなところが他のバンドにはない魅力だというような楽曲、またはフレーズはありますか?
 
Mark Lewis手掛ける生感あふれるプロダクションも相まって、2000年代のモダンメタル好きにオススメしたい内容。あまり話題になっていないのが残念なくらい、一聴の価値ある作品です。
 
各サブジャンルの良いとこどりをした結果、逆にカテゴライズが難しくなり、プロモーション的には大変だったのかもしれません。Nuclear Blastからのリリースですが、Roadrunner好きに刺さるかなと。ボーカルの声質ゆえか、自分的には”Roadrunner化したMychildren Mybride”的な解釈で、楽しめました。(Arrival Of Autumnにデジタル感はないですが)Mnemicとの共通項があるので、ああいうグルーヴメタルが好きな人もぜひ。まさしく可能性に満ちた1枚。

 
▶︎Night Rider 『Night Rider』
 

 
Official Site, Stream & Download : https://linktr.ee/nightridertheband
 
Night Riderのセルフ・タイトル・デビュー作は、いろんな意味で驚かされました。親しみやすいシンセの音色と現代メタルコアが、ネオンのヴィジュアル・イメージと良くあってますし、もしかしたらメタルよりもハードロックなどを聴いているリスナーにもアプローチできるようなポテンシャルがあるのではと感じるほどです。このアルバムの魅力について教えて下さい。
 
本作で提示されたSynthwave/Retrowave+メタルコアのパターンは、そういえば未開拓ゾーンだったので、「あぁまだそこの陣地取れたか!」という感覚で聴けました。メンバーはex-Affianceなど手練の集合体なので、安定感抜群の仕上がり。メタルコアパートのフレージングはもうちょっとバリエーションがほしかったですが、その分シンセパートにリソースを振り分けた感もありますね。最近のKingdom of Giantsが楽しめる方は結構刺さるはず。

 

▶︎BITOKU : BEST SONGS OF 2023

▶︎Solence 「Rain Down」

 

▶︎All Faces Down 「Done Hiding」

 

▶︎Traveller 「Homesick」

 

▶︎ENOX 「Fallout」

 

▶︎Sail’s End 「The Sound of Silence 3: Three」


 
やはり、長年に渡ってメタルコアを聴き続けているだけあり、ニューカマーの中でも未来派とも言えるバンドのキラーチューンがリストインしています。これらのバンド、または楽曲についてそれぞれ感想を教えて下さい。
 
Solenceは、正直メタルコアではありませんが、フォーマットの共通点はあるので。ヘヴィパートとメロディパートの対比力、シンセトラックの混ぜ具合、全てがハイクオリティ。何よりも、曲が電子音に飲まれてない点を評価しました。サビメロの透明度は今年1番刺さりましたね(※シングルで2022年に出てますが、アルバムとしては2023年作)。
 
All Faces Downはニューアルバムからの選出。まさにAFD節が詰まった独特の清涼感、最高です。もちろん今回のような議題において「新しさ」は大事な尺度です。が、「普遍性のある名曲」もこぼしたくないなと。AFDはちゃんと自分達の音楽的領土を深堀りしている感じがして、好感が持てます。
 
Travellerが今年出したEPはかなり名作で、初期Invent好きはマストチェック。プログメタルコアの美学に沿いつつ、ジャーマン特有の憂いあるメロディがプラスされていてグっときました。
 
ENOXは前作までHAWKのRickyと制作していましたが、今作からセルフプロデュースに。とはいえ、ボーカルワークからはRickyからの影響を感じますね。表現手段としてのワーミーの流通価値が落ち続ける中で、新鮮に聴けた1曲。
 
Sail’s Endは、BERRIED ALIVEを彷彿とさせるロボティックなギターワークが秀逸。Glass CrownのDannyが在籍しており、ブルータルパートの説得力も納得。ローチューニングコア系は終始スローテンポでダレがちなのが懸念点ですが、この曲はテンポの緩急がよく考えられており素晴らしいです。
 

▶︎BITOKU : Social

https://linktr.ee/Bitoku_Bass

【年間ベスト】ONE BULLET LEFT開催記念企画 : TAKUYA (Sable Hills)’s Best Albums & Songs of 2023


 
日本のメタルコアを牽引する存在として、2023年も精力的な活動でファンを楽しませてくれたSailing Before The WindとSable Hills。彼らがキュレーションするメタルコア・イベント「ONE BULLET LEFT」の開催を記念し、RIFF CULTでは、両バンドのメンバーに2023年の年間ベスト・アルバム、そして楽曲をピックアップしていただきました。
 
シーンの最先端にいるミュージシャンは、どのようなメタルを聴いていたのでしょうか。リストをチェックすれば、彼らの驚くべき音楽への探究心に驚くだけではなく、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
 
2024年1月28日 (日曜日) 東京・渋谷 club asiaで行われる「ONE BULLET LEFT」は、日本のメタルコアの現在地を体感できるイベントになるはずだ。これらのリストをチェックして、より深くイベントを楽しみましょう。
 

 
▶︎Sable Hills x Sailing Before The Wind presents “ONE BULLET LEFT”
 
開催日時 : 2024年1月28日 (日曜日)
場所 : 東京・渋谷 club asia
OPEN/START : 14:00/14:30
TICKET : 3,800yen (+1D) / DOOR : 4,800yen (+1D) / 20歳以下 : 2,000yen (+1D – *枚数限定)
 
チケットはこちらから : https://eplus.jp/sf/detail/4003190001


▶︎TAKUYA : BEST ALBUMS OF 2023

In Flames 『Foregone』
Spiritbox 『The Fear of Fear』
Hollow Front 『The Fear Of Letting Go』
Sylosis 『A Sign of Things to Come』
Currents 『The Death We Seek』
 
▶︎In Flames 『Foregone』
 

 
Stream & Download : https://inflames.bfan.link/foregone-newalbum.yde
Official Site : https://www.inflames.com/
 
近年のIn Flamesの創作意欲の爆発っぷりには驚かされますし、衰えないシーンのトップ・バンドたちの活動にはSable Hillsも多くの刺激を受けていると思います。In Flamesの過去の作品などの思い出、出会いなどを挟みながら、このアルバムのキラートラックや聴きどころ、個人的なツボなリフなどあれば教えて下さい。
 
初めて聴いた作品は『Colony』(1999)で、当時はメタルコアという言葉も知らない時期だったし、彼らはメロディック・デス・メタルというイメージでした。そこから他のアルバムも掘ったりしていく内に『Reroute To Remain』(2002)と出会い、その概念も覆されました。彼らをジャンル分けするのは不可能だとは思いつつも、この作品が後続のメタルコア・バンドに与えた影響は計り知れないものだし、メロデスをルーツに持ったメタルコア」という一つのスタイルを確立した金字塔となったと言えます。
 
そんな音楽性の定義不可能な彼らが、自身の肉体がそう長くないと知りながらも、紆余曲折の末にリリースした『Foregone』が原点回帰を感じる一枚だったことは、複雑化しすぎたメタルシーンに一石を投じる様な、確かにそこにある漢気に感動させられました。Tr.3 Meet Your MakerやTr.2 State of Slow Decayを聴けば、私の言っている事が理解してもらえると思います。

 

▶︎Spiritbox 『The Fear of Fear』
 

 
Stream & Download : https://spiritbox.lnk.to/TFOF
Official Site : https://spiritbox.com/
 
Spiritboxの存在は、オルタナティヴへと系統していくメタルコア・シーンの象徴のようなもので、世界を舞台に活動するSable Hillsにとっても、彼らの佇まい、存在感といったところからの影響はもちろんあるだろうと感じています。サウンド・プロダクションの素晴らしさはさることながら、やはりボーカリスト、コートニーのフロント・ウーマンとしてのカリスマ性が大きな魅力です。Sable Hillsのフロントマンとしてコートニーの魅力に何か影響を受けたりしていますか?また、この作品はどれもキラーチューンですが、特にお気に入りの楽曲はありますか?
 
メタルコアに限らず、女性ボーカルにはあまり惹かれない傾向があるのですが、Spiritboxは久々に魂が揺さぶられました。
 
コートニーのスクリームは心からカッコいいと感じるし、更に特にクリーンパートの楽曲リリックの繊細な想いが相まって熱い気持ちになれます。また、歌の合いの手で綺麗に入ってくる強烈なギターリフやクリーントーンのエモーショナルさも決め手の大きな要素だと思います。落としパートはただのモッシュパートには留まらないDjentな心地良さも感じられます。Tr.2 JadedとTr.1 Cellar Doorが何だかんだ好きです。

 

▶︎Hollow Front 『The Fear Of Letting Go』
 

 
Stream & Download : https://hollowfront.lnk.to/TFOLG
Official Site : https://unfdcentral.com/artists/hollow-front/
 
Hollow Frontは、例えばConvictionsのようにシャウトからポスト・ハードコアばりのクリーン、そしてメロディック・ハードコアにあるような感傷的なスクリームが大きな魅力であると思います。ボーカリストとして参考になる部分も多いかと思いますが、ボーカリストとしてこの作品の中で特筆すべき楽曲はありますか?また、彼らの魅力や彼らが好きならもっとこんなバンドがオススメだよ、というようなレコメンドがあれば教えて下さい。
 
比較的ヤングなバンドで自分好みのスタイルのメタルコアに久々に出会えて滾りました。ボーカルがスクリームとクリーン両刀使いなのですが、どちらも最高レベルで上手いしめちゃめちゃ歌が前に出てきます。『Will I Run?』のサビはリードギターと相まってエモーショナル極めてるので、メタルコアクリーンパート好きな全人類必聴です。レコメンドはLANDMARKS と Our Hollow, Our Home です。

 

▶︎Sylosis 『A Sign of Things to Come』
 

 
Stream & Download : https://sylosis.bfan.link/a-sign-of-things-to-come.yde
Official Site : http://sylosis-band.com
 
Sylosisにとって、そしてArchitectsにとっても2023年は大きな分岐点であり、特にSylosisはこのアルバムで熱心なメタルコア/メロディック・デスメタル・ファンからの注目を一身に集めました。Sable Hillsにも通ずる部分が多くあるスタイルだと思いますが、Sylosisのサウンドで特に素晴らしいと思うポイントは何だと思いますか?また、このアルバムをどんな時に聴いていましたか?
 
この楽曲をギター弾きながら歌ってるのが一番素晴らしいと思う点です。笑
 
Architectsを脱退してまでメタル貫こうとした漢が作る楽曲なんてもう良いに決まってますから、あとは自分の耳に合うかどうかだと思います。実際耳の肥えた玄人向けの楽曲ではありますので。「Crystal Lake Ankh Japan Winter Tour 2023」に参加していた時に、移動中このアルバムを聴いてましたが、「俺もずっとメタル貫こう」と思わされざるを得ませんでしたね。

 

▶︎Currents 『The Death We Seek』
 

 
Stream & Download : https://bfan.link/the-death-we-seek
Official Site : https://currentsofficial.com/
 
CurrentsはRictさんもピックアップされており、Sable Hillsのソングライティング面においても影響を与えていそうですね。お二人でこのアルバムについて何か話されたりしましたか?また、Currentsの本作の魅力はどのようなものだと思いますか?
 
次世代メタルコアの中でも10倍リスナーの多い「メタル」ワールドに進出している数少ないバンドなので、いつか一緒にやりたいし俺らはやるべきだとずっと話してます。
 
楽曲がちゃんとヘヴィで良いクリーンボーカルも有り、サウンドがクリア且つアートワークもメタル愛感じつつどこかモダンでスタイリッシュと、逆にマイナスな理由が見当たりません。

 

▶︎TAKUYA : BEST SONGS OF 2023

▶︎Make Them Suffer 「Ghost of Me」

 

▶︎Texas In July 「Put To Death」

 

▶︎Bleeding Through 「On Wings of Lead (2023 Re-Recording)」

 

▶︎It Dies Today 「Buried By Black Clouds」

 

▶︎Unearth 「Into The Abyss」

 
熱いメタルコア・スピリットが伝わってくるリストで、非常にTAKUYAさんらしいものだと思います。Bleeding Throughは再録のものをピックアップされていますが、オリジナルと比べてよかったポイントなどはありますか?そのほか、Unearthとは今年日本で公演されましたが、その時の思い出などはありますでしょうか?全体の感想も合わせて教えてください。
 
最近、映画やゲーム業界ではリバイバルの波がきていますが、音楽シーンにも徐々にそれが近付いてると感じていて。その中でもBleeding Throughというバンドが20年経った今この楽曲を再録したという事実だけでご飯何杯でもいけます。音質がめちゃくちゃ聴きやすく、こもった感じが無くなりました。Texas In JulyやIt Dies Todayが復活して新曲をリリースしたりしてるのも、その流れがきてるなと感じざるを得ません。
 
そんな昔のリバイバルが大好きな私ですが、Make Them Sufferの新曲はモダンでもヘッドバンギング不可避でした。ヘヴィすぎます。
 
Unearthは初めて自分達が日本に招聘したバンドで、でも一番記憶に残ってるのは彼らが激ロックを気に入りすぎて三日連続で渋谷のあそこのバーに行ったことですかね。最終日は会場が代官山だったのにも関わらずわざわざ渋谷行きましたから。それと、これがコロナ明けを最も感じた公演だったのも確実です。自分よりも歳上の大人が本気でモッシュしてる光景を数年振りに観れた記念すべきツアーでした。
 
2024年は、ワンバレが日本のメタルコア・リバイバルの幕を切って落としたいと思っています。もう、流れはすぐそこまで来ていますよ。
 

▶︎TAKUYA : Social

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テクニカル・デスメタル 2023年上半期の名盤 TOP10

テクニカル・デスメタルという音楽ジャンルにとって現代メタル全体の情報量の多さ、そして消費される速さはネックでしかない。圧倒的な演奏技術の高さがあれば必ず評価されるとは限らず、その高いスキルに加え、毎週何百枚とリリースされるメタル・アルバムの中でリスナーやメディアに引っかかるキャッチーさ、ソーシャルメディアでのプロモーション戦略などを兼ね備えていなければ、数ヶ月後には誰も覚えていないし聴かれるチャンスを完全に失うということだってあり得る。

例えばデスコアは、ブレイクダウンのリアクション動画などが数秒でスワイプされていくTikTokなどの縦動画と相性が良く、ジャンルの成熟と現在ソーシャルメディアのトレンドのタイミングがハマって、スタジアム級のステージで演奏するデスコア・バンドが続々登場するほどの盛り上がりを見せている。テクニカル・デスメタルもArchspireのようにソーシャルメディアと相性の良いバンドはジャンルの壁を超えて評価されているが、大体のテクニカル・デスメタルは、数秒の動画では切り抜くことが出来ない魅力を追求していて、アンテナを張っていないと見逃してしまうような情報が多い。テクニカル・デスメタルに特化したソーシャルメディアのインフルエンサーみたいなのがいればいいが、彼らが必要とする情報需要に供給は追いつかないのが現状だろうか。

テクニカル・デスメタルは、次のアルバムまで数十年のブランクが空くなんてザラで、ずっとスタイルを変えず同じことをやり続けているバンドが普通にいる。TikTokもインスタもやってなければ、ミュージックビデオもないなんて珍しいことではない。そういうところをインフルエンサー達はしっかり見ていて、テクニカル・デスメタルの領域に踏み込んでこないのかもしれない (あくまで憶測だが)。

ただ、テクニカル・デスメタルのそういう不器用なところが嫌いじゃないし、別にダサいことじゃない。テクニカル・デスメタルでリッチになりたいと思っているミュージシャンなんてほとんどいないし、毎日違う国で何万人もの前でライブをするためにやってる訳でもない。テクニカル・デスメタルをやってるミュージシャンにとっての最大の目的は「持てる全ての技術を使って、自分たちの作りたい作品を作る」ことだ。テクニカル・デスメタル・リスナーもテクニックの博覧会だけを期待しているだけでなく、歴史の蓄積やメンバーラインナップの変遷なども調べて、とことん作品を味わいたいと思っている。アルバムを何度も何度も聴いて楽しみたいと思っているはずだ。この音楽は決して時代に合わせなくていい音楽だと思う。これだけたくさんのバンドがいるんだから、テクニカル・デスメタルはテクニカル・デスメタルに合わせた時間軸でシーンが動き続けていればいい。

2023年の上半期は、そんなテクニカル・デスメタルをコアに楽しむために聴いておきたい作品がいくつもリリースされたので、紹介していく。Cattle Decapitationはリリースされてすぐに投稿しようと記事を作成していたが、タイミングを逃してしまったので他より異常に長いが、まだ書ききれない魅力があると思っている。

Cattle Decapitation『Terraside』

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カリフォルニア・サンディエゴの巨匠 Cattle Decapitation の、前作『Death Atlas』からおよそ3年振りとなる通算10枚目のフル・アルバム『Terraside』はMetal Blade Recordsからリリースされた。本作のプロデュースは、AllegaeonやArchspire、Cephalic Carnage、The Zenith Passage、Wakeなどを手掛けるDave Oteroで、前作から引き続き共にスタジオワークを行なっている。

アルバム・タイトルの『Terrasite』は“terra-” (ラテン語 = “earth”) + “-sitos” (ギリシャ語= “food”)の造語で、アルバム・カヴァーにも登場する地球を喰らうクリーチャーを意味する。環境への負荷を続けてきた人間が荒廃した世界にこの姿で転生し、いよいよ地球を滅ぼす存在として悪行の限りを尽くす様を表しているそうで、これまでも多くの仕事を共にしたWes Benscoterが担当している。また、上記のCattle Decapitationが長年掲げてきたコンセプトとは別に、2022年4月に急逝した元メンバー Gabe Serbian への追悼の意も込められている。

前作はかなり賛否両論を巻き起こした。テクニカル/プログレッシヴでブルータルなスタイルで反人間中心主義をテーマに環境問題をテーマに取り組んできた彼らが、メロディック・デスメタルへと接近したからである。クリーンパートが導入された楽曲は、シンガーTravis Ryanの新たな魅力の一つと捉えた人もいたが、彼らにそれを期待していないデスメタル・リスナーからはバッシングを喰らっていた。Cattle Decapitationにそれは必要ない、と。

今回もメロディックであるものの、テクニカル/プログレッシヴ・デスメタルを基調としつつ、ブラックメタルのアトモスフィアを取り入れながら、シャープで切れ味鋭いリフをキーとしており、比較的長年のCattle Decapitationリスナーには聴きやすいと思う。ただ、彼らにクリーンパートを求めていないとするなら、「Terrasitic Adaptation」といったアルバムのリードトラックは微妙かもしれない。ただ、「The Insignificants」や「…And the World Will Go on Without You」といったアルバム中盤の楽曲はクラシックなCattle Decapitationの魅力が詰まった楽曲で、頭の楽曲だけで判断せず聴いてみて欲しい。特に「…And the World Will Go on Without You」、「We Eat Our Young」はグラインドな展開の妙にニヤリとしてしまう。

そしてやっぱり歌詞が凄まじい。ここ数年、メンタルヘルスに関する曲ばかりがメタル、特にメタルコア・シーンで増えている。いくつか素晴らしい歌詞があるし、精神疾患が重大な疾患であることは、私も指定難病を持っている身として感じているが、自分たちが生きているこの糞のような社会がどうにかならない限り、人は病み続けていくと思う。

どれだけメンタルヘルスに気を使ったとしても、地獄のような生活をしていたらそれは変わらない。環境保護と経済的な成長を両立させることはこの地球の長年のテーマであるが、Cattle Decapitationは愚かな人間の自己中心的な考えを否定し続け、警鐘を鳴らし続けている。「We Eat Our Young」の歌詞で印象的なフレーズである「Own world we obliterate (=自分たちの世界は自分たちで消し去る)」は、このアルバムを端的に表していて、それはアートワークからもふんわりと感じられるはずだ。この人間中心の地球の行く末、最悪の結末に向かって何も変わらない社会へのヘイトは相当のものであり、それは単なる怒りをぶちまけたものでなく、歌詞としての世界観の芸術性も高く、非常に素晴らしいと思う。ヴィーガン・デスメタルは真っ赤な怒りで塗り固められたものだけでない。その怒りを表現する手段として、彼らはテクニカル・デスメタルを武器にしている。

 

Sleep Terror 『Railroad To Dystopia』

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前作『Above Snakes』から2年という短いスパンでリリースされた本作は、Luke JaegerとMarco Pitruzzellaというタレント性の高いミュージシャンの創造性に限界がないことを証明した、今まで聴いたことのないテクニカル・デスメタルに仕上がっている。カウボーイハットを被った骸骨が印象的なアートワーク、そしてアルバムタイトルからも彼らが目指す路線ははっきりしており、サウンドにもハーモニカ、バンジョー、スチールギターの音色を巧みに絡めながら、これまで誰も作り上げることのできなかったカントリー・ミュージックとテクニカル・デスメタルのクロスオーバーを右とに実現している。

Anachronism 『Meanders』

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2009年スイス・ローザンヌで結成。本作までに2枚のフル・アルバムを発表、本作は女性ギター/ボーカルLisa Voisard、ギタリストManu Le Bé、ベーシストJulien Waroux、ドラマーFlorent Duployerの4人体制でレコーディングを行った。いわゆる「Dissonant Death Metal」に分類される彼らは、ドゥーミーに展開される楽曲に不気味なメロディの霧をしっとりと燻らせながらAnachronismのテクニカル・デスメタルへ聴くものを誘っていく。静かにうねりをあげるドラミングにも注目だ。

 

Metasphæra 『Metasphæra』

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Beyond CreationEquipoiseでの活躍で知られるベーシストHugo Doyon-Karoutを中心に、ギター/ボーカルTom Heckmann、ギタリストMatthias Wolf、ドラマーJohannes Jochsが集まり始まったMetasphæraのデビュー作。プログレッシヴなリフ映える神秘性の高いメロディック・デスメタルの中で、強烈な煌めきを放つHugoのベースラインが神がかっている。フレッドレス・ベースのクラシカルな響きは、20年代のテクニカル・デスメタルにとって非常にスタンダードなもので、Metasphæraを筆頭に驚くべき才能を持ったニューカマーがこの後も控えていると思うと、テクニカル・デスメタルの未来は明るいなと感じる。

 

Gorod 『The Orb』

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Overpowered Recordsを離れ、自主制作でリリースした7枚目フルレングス。前作『Æthra』で、これまでのスタイルとは違ったジャズ、プログレからの影響を多分に盛り込んだサウンドを作り上げたGorod。更にプログレッシヴの領域へと踏み込み、王道のテクニカル・デスメタルのスタンダードからはかけ離れた境地へと辿り着いた。アルバムのリードトラックでありミュージックビデオにもなっている「The Orb」では、長年のキャリアで培った絶妙なバランス感覚で芸術的なグルーヴを巻き上げていくGorodの現在地を耳から、そして目から感じることが出来るだろう。

 

Hellwitch 『Annihilational Intercention』

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19年振りのアルバムとなった『Omnipotent Convocation』から14年……。本作はPat、J.P.に加え、26歳のドラマーBrian Wilsonを迎えトリオ編成で制作され、地元のプロデューサーJeremy Staskaと共にレコーディングを行なった。デスメタルの進化に抗うかのように、自身のスタイルを全く崩すことなく不気味でクラシックなテクニカル・デスメタルをプレイ。オープニングを飾る「Solipsistic Immortality」から壮絶なテンポチェンジを炸裂させ、誰もがどのようなエンディングを迎えるのか予想不可能なスリルを味わうことが出来る。収録曲「Delegated Disruption」のミュージックビデオが公開されているが、このヴィジュアル、ボーカル、全てが最高としか言いようがない。

Celestial Scourge 『Dimensions Unfurled』

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2022年からノルウェーを拠点に活動を開始した超若手。本作は同郷のデスメタル中堅Blood Red ThroneのドラマーKristofferとベーシストStian、FilthdiggerのボーカルEirik、ゲスト・ギタリストとしてWormholeやEquipoiseで活躍するSanjay Kumarが参加しレコーディングしたデビュー作だ。きめ細やかなドラミングと次第に存在感を増すベースライン、バランス良く配置されたスラム・パートが上質な作りの良さを浮き彫りにする。「Moon Dweller」で顔を覗かせるスラッシュ・メタルからの影響も見逃せない彼らの魅力だろう。

 

Triagone 『Sem Papyrvs』

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2019年ベルギー・ブリュッセルで結成。女性ボーカリストLoreba Moraes、ボーカルも兼任するギタリストのLou-IndigoとLucas、ベーシストLéo、ドラマーLorenzoの4人で制作された本作は、彼/彼女らのデビュー作。終始ミドルテンポで押し続けるスタイルでありながら、奇想天外なリフとドラムパターンが蠢き続けるのがTriagone流。共にリードボーカルを取るLorebaとLou-Indigoの掛け合いも独特。収録曲「Ad Mortem Sem Papyrvs」はMVになっており彼らの特性を視覚的に感じられる。

 

Carnosus 『Visions Of Infinihility』

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2011年スウェーデン・エーレブルーで結成。ボーカルJonatan Karasiak、ギタリストのMarcus Jokela NyströmとRickard Persson、ベーシストMarcus Strindlund、ドラマーJacob Hednerで、デビュー作『Dogma of the Deceased』から3年を経て本作を完成させた。メロディックなリフを追随するかのようなガテラルは時に人間離れしたデモニックなシャウトも交え存在感抜群。初期はデスラッシュをやっていたことも感じられる、最新型Carnosusの名刺代わりとも言える快作。

 

Cause N Effect 『Validation Through Suffering』

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フランスのHenkerに在籍していたギター/ボーカルStef、Human VivisectionのベーシストSonny、ドラマーDriesによるトリオのデビュー作 (バンド自体はベルギーを拠点としているそうだ)。デスコアの影響を感じさせるダンサブルな2ステップ・パートやブレイクダウンを交えながら、超絶技巧のタッピング・フレーズやプログレッシヴなアトモスフィアなども組み込んだハイブリッドなスタイルだが、すっきりとしたサウンドプロダクションでアルバムとしての完成度は高い。Deeds of FleshからArshspireまで飲み込み昇華した新世代テクデスのダークホース的存在と言えるだろう。

 

Moloch 『Upon The Anvil』

Bandcamp

2012年ミネソタ・ホプキンズで結成。ギター/ボーカルのRick Winther、フレッドレスベーシストBen Peterson、ドラマーErik Sullivanのトリオ編成を取り、デビューEP『Cleansed by Fire』から8年の時を経て本作を完成させた。弦楽器陣を置いてけぼりにするように猛進を続けるドラミングの重々しさになんとか食らいつくデスメタリックなリフ、その様相はまるで戦争のように忙しなく、ダークだ。さりげない存在感でネオクラシカルの香りをまとわせるBenのプレイも時に感情剥き出しに暴れ回るので面白い。

 

超個性派! メタルコア 2023年上半期のベスト・シングル

RIFF CULTでは、Spotifyを利用して最新のメタルコアの楽曲をまとめた「All New Metalcore 2023」というプレイリストを作成し運営しているのですが、2023年の上半期だけで1,000曲以上がリストインしており、デイリーチェックしないと全ての楽曲、ましてやアルバムやEPなどをチェックするというのは難しい。そして、どれだけ優れたテクニックやメロディがあったとしても、聴かれなければ意味がない。聴いてもらうために、そして見つけてもらうためにも現代メタルコアには、唯一無二の個性が必要だ。

メタルコアに限って見ても、トップシーンで活躍するバンドたちは「メタルコア」というジャンルだけでは表現できない個性を持っている。誰でもない自分たちだけの個性は、多くのリスナーにリーチするためにとても重要な要素だ。今回、他の誰にも真似できないようなオリジナリティでファンを魅了した2023年上半期のメタルコアで印象的なシングルをまとめてみた。主にプログレッシヴ・メタルコア・バンドを中心に構成されているが、中には全く違ったシーンで活躍するアーティストもいる。それでも「プログレッシヴ」であり「メタルコア」であることを前提条件にリストを作成しているので、通して聴くと意外とジャンルの違いを感じないと思う。

 

 

 

Earthists. 「HYPERHELL」

藤井風など現行シーン〜シティポップ、アニソンまでを一括りにした「J-POPに取って代わる新しいワード」として「Gacha Pop」というキーワードが誕生したのは記憶に新しい。J-POPというカテゴリーは日本の多様な音楽を一括りにまとめるには窮屈だし、世界のトレンドと別で発展する日本の音楽を表現する言葉として「Gacha Pop」はアリなのかもしれない。ガチャガチャした感じというのは日本のポップスだけに言えることではなく、メタル〜メタルコアにも当てはまるだろう。Fear, and Loathing in Las VegasからBABYMETALまで、多様な音楽の影響を混ぜ合わせる、というか“ガチャガチャと詰め込んだ“ものが刺激的で面白いとメタル・シーンでも評価されてきた。今では世界を飛び回るPaleduskも「Gacha Metal」と言えば腑に落ちる感じがする。

Earthists.もこの「HYPERHELL」で他にない刺激的なサウンドを作り上げ、2023年上半期にシーンで注目を集めた。ハイトーンでメロディアスなサビ、全編に施された軽やかなピアノの旋律、それでいてグローバル・スタンダードなレベルにあるプログレッシヴ・メタルコアのグルーヴ。これらが見事に「HYPERHELL」として形に出来るクリエイティヴさはEarthists.にあって他にないものだ。こうした個性がしっかり受け入れられ、評価される日本は音楽家含む芸術家にとって良い土壌だ。誰もやったことがないことをEarthists.がどんどん挑戦して、ファンが楽しみ続けていったら最終的にどこに辿り着くのか、今はまだ想像も出来ない。7月14日にはニュー・シングル「GODBLAST」のリリースが控えている。

 

BABYMETAL 「Mirror Mirror」

メタルコア、中でもプログレッシヴ・メタルコアの記事になぜ BABYMETAL が?と思うでしょう。この曲聴いたら、「確かに」と頷けると思います。今年リリースされたアルバム『THE OTHER ONE』の収録曲である「Mirror Mirror」は、本格的なプログレッシヴ・メタルコアな楽曲で、PeripheryErraPolyphiaなど本格派と呼べるプログメタル・クオリティに仕上がっています。スペーシーに広がっていくメロディにはArch Echoも感じますね。そして、本当にこの歌詞が素晴らしい!

「鏡の中で生きる 君は何を見ている リアルな自分なんて 存在しないんだから 幻想を超えて 自分さえも飛び越えて 新しい世界 いまここに」とまさに、BABYMETALが歌うべき、歌ってこそ説得力を増すフレーズと言うか。自分が生きている世界とは別の世界から聞こえてくる囁きのような響きがあって、そしてそれを、この未来派プログレッシヴ・メタルに乗せてくるんだから凄まじい。本当に最高のアルバムで全人類必聴。

 

 

SHREZZERS 「Tabidachi feat. Kaito from PALEDUSK」

個性派と言えばPaleduskで間違い無いですよね。東欧が誇るプログレッシヴ・ポストハードコア/メタルコア SHREZZERS はセカンド・アルバム『SEX & SAX』を2023年2月にリリース。ここ日本でもその人気は絶大で、国内向けのクラウドファウンディングでセカンド・アルバム『SEX & SAX』の日本限定盤を発売するほどだ。この楽曲には、PaleduskのボーカルKaitoが完全に憑依しており冒頭からサビパート&サックスが導入されるまで、SHREZZERSとは分からないほど。「Tabidachi」での個性のぶつかり合いは互いの魅力を上手く引き出しており、アルバムでもキーになるトラックと言える。10年前くらいだとこうして日本人ボーカリストが海外アーティストの楽曲にゲスト・ボーカルで参加すると言うのはほとんどなかったと思うのですが、Ryo Kinoshita以降は本当に良いフィーチャリングが続いていて面白いですし、これをきっかけに海外アーティストに引き込まれるリスナーがいたら良いなと思います。

 

Paledusk 「I’m ready to die for my friends feat. VIGORMAN」

その人気はとどまることを知らず、この夏、海外へと飛び出し大規模フェスで熱狂の渦を巻き起こしているPaledusk。そんなライブ映像を眺めていると、彼らがメタルコア・バンドの枠に収まっていたのが遠い昔のことのように感じる。ギタリストDAIDAIのクリエイティヴィティはBring Me The Horizonをも刺激して、最新曲「AmEN!」の編曲に参加するなど、もうメタル/ヘヴィ・ミュージックのトップ・クリエイターと言っても過言ではない存在へと成長した。

「I’m ready to die for my friends」はアメリカンロック/ポップスの軽快なギターフレーズから雪崩のようにヘヴィリフが炸裂するパートへと突入したかと思えば、VIGORMANをフィーチャーしたキャッチーなラップパートへと接続。最終的にA Day To Rememberばりのヘヴィ・ポップパンク・ブレイクダウンで全てを爆発させてしまう……これを形容する音楽ジャンルなんてない。聴き終えた後は、奇想天外な結末を迎えた映画を見終わった後の、なんとも言えない胸のざわめきというか、「この結末って何なんだろう」と、誰かと話したくなるあの感じがふつふつと湧いてくる。人は皆、なんだか分からないもの、理解出来ないものに興味関心を掻き立てられる。Paleduskの音楽が一体なんなのか、聴き終えた後のこの満足感はなんなのか、これからも誰にも分からない。それがPaleduskが人々を惹きつける大きなエネルギーになっている。これからもみんなを驚かせ続けて欲しい。

 

 

Anima Tempo 「Saeger Equation」

メキシコを拠点に活動するエクスペリメンタル・プログレッシヴ・デスメタル・バンド、Anima Tempoは上半期の最後の最後、6月30日にニュー・アルバム『Chaos Paradox』をリリースしました。これが本当に素晴らしい。先行シングルとして公開された「Saeger Equation」はオリエンタルなイントロで幕開け、これは少しフォルクローレの香りもします。フォルクローレは南米(特にコロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ)のアンデス山脈地方でインディヘナ達によって歌い継がれる民族音楽で、南米メキシコ出身の彼らにどのくらい影響があるのかは分かりませんが、影響がなきにしもあらずなのかと (完全な憶測ですいません)。

民族音楽の音色とPeriphery、Animals As Leadersを通過したプログレッシヴ・メタルコア/Djentのグルーヴを見事に展開させ、特にシャープなリフワークは聴きごたえがあります。アルバム通じてこの作風ではないのですが、日本でも話題沸騰中のBloodywoodやThe HU辺りハマってる方におすすめです。余談ですが、2018年にRNR TOURSでドイツのTensideというバンドのツアーを手がけた時、同時期に彼らもジャパンツアーを行っていて、1公演一緒にやる予定だったんですが、台風で公演中止に……。結局彼らとは合流できずだったので本当に残念でしたね。次来日する時はビッグになってやってきてくれるはず!

 

Chris Turner – Psycho (ft. Lauren Babic x Mitchell Rogers)

唯一無二のプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Oceans Ate Alaskaの超個性派ドラマーとして知られるChris Turnerのソロ・プロジェクトが活発。ポップ・シンガーAnne Marieの人気曲「Psycho」のカバーをRed Handed Denialの女性シンガーLauren BabicとVarialsのMitchell Rogersと共に制作。Chrisはこのドラム録音でサンプルもトリガーも使ってないらしく、本当にオーガニックなテクニックでここまでやっちゃうのは凄まじいとしか言いようがないですね……。Djentなブラッシング・リフとChris独特のドラミングの組み合わせが織りなすグルーヴがポップな楽曲でも、ここまでタイトにアレンジ出来るのはChris Turnerだけ。Oceans Ate Alaskaだけでなく、彼のクリエイティヴな姿をソロでも楽しめるのは最高です。

 

 

Voyager 「Prince Of Fire」

グローバルな人気を持つオーストラリア出身のプログレッシヴ・メタル・バンド、Voyager。99年から活動を続けるベテランで、がっつり”プログレッシヴ・メタルコア”ではないですが、Djentな香りの中に80年代シンセポップを組み合わせたノスタルジックなサウンドで幅広い人気を持っています。今年に入り「Prince of Fire」と「Promise」の2曲のシングルを発表していますが、この「Prince of Fire」ではブレイクダウンもあり、メタルコア・リスナーにもハマる要素あり。ボーカリストDanny Estrinのカリスマ性も高く、実力以上にその雰囲気で圧倒している感じ。クラシックなプログメタルの美的感覚たっぷりでありながら、現代メタルコアに通ずる創造性も兼ね備えたVoyager、次の新曲も楽しみです。

 

Ice Sealed Eyes 「There Is No Safety In The Dark」

ベルギーから現れたモダン・メタルコア・バンド、Ice Sealed Eyes。2022年のアルバム『Solitude』で衝撃を受けた方も多いはず。彼らの登場には、どこかLoatheやSleep Tokenが登場した時の感動を思い起こさせられます。メタルコアってダンス・ミュージックだと思っているんですが、そこから離れてロックに向かっていくバンドもいて、Loatheがシューゲイズを用いてオルタナティヴ・メタルコアの可能性を拡大したのは時が経つにつれてかなり重要になってくると思います。Ice Sealed Eyesは更に奥深く、ノイズやアンビエントのエレメンツを用いてオルタナティヴ・メタルコアをやっている感じがします。全体的に引き締まったサウンド・プロダクションからはVildhjarta的なThallの影響も見え隠れしているのですが、個人的にはもっと巨大なギターリフ、裸のラリーズ、Borisとかにまで通ずるノイズが欲しい。アンプを天高く積み上げてノイズの銀河まで逝って欲しい。

 

Their Dogs Were Astronauts 「Replica」

オーストリアの多弦プログレッシヴ・インスト・ユニット、THeir Dogs Were Astronauntsが2023年5月にニュー・アルバム『Momentum』を発表。「Replica」は先行シングルとして発表されたアルバムのキーリングで、ユニットらしくプログレッシヴでエクスペリメンタルな魅力がたっぷりと詰め込まれた1曲に仕上がっている。ベテラン・プログメタル・バンドがPolyphiaをカバーしたような、懐かしさを新しさが同居する謎めいた雰囲気が全編に渡って味わえる。

 

いかがでしたでしょうか。新しいお気に入りは見つかりましたでしょうか?本当に素晴らしい音楽が多く、全てを聴くことはできないかも知れないですが、こんな世界が始まっていることだけでも知って、バンドを応援して欲しいです。

プログレッシヴ・メタルコア最前線 (2023年上半期のベスト・シングルス)

モダン・プログレッシヴ・メタルコア (Modern Progressive Metalcore) は、メタルコアの中でもプログレッシヴ・メタル/ロックの影響を持つアーティストの中で、モダンなスタイルを追求するバンドを指す。メタルコアにおけるプログレッシヴ・スタイルの導入で最も印象的なのは Djent で、Peripheryなどがトップ・バンドとして挙げられる。彼らの登場から10年以上が経ち、プログレッシヴ・メタルコアと呼ばれる音楽も日々進化し、周辺ジャンルと関わり合いながら成長し続けている。私が執筆した『Djentガイドブック』は2020年までのプログレッシヴ・メタルコアの歴史についてまとめたもので、2020年以降のフレッシュなサウンドを鳴らすバンド、または楽曲などについて「モダン・プログレッシヴ・メタルコア」として個人的にタグ付けして出版以降もウォッチし続けてきた。

この記事では、2023年1月から6月までにリリースされた多くのモダン・プログレッシヴ・メタルコアのシングル/アルバムから気になるものをピックアップして紹介する。RIFF CULTのSpotifyアカウントで「Best of Modern Progressive Metalcore 2023」というプレイリストを通じて日々ディグの結果を反映させているのでぜひチェックしてもらいたい。

2023年6月現在、40曲近い楽曲がリストインされているこのプレイリストを元に、紹介しておきたい楽曲を下記にまとめておく。さらに知りたい、聴きたいという方はぜひプレイリストをフォローし聴いていただければと思う。

 

Sailing Before The Wind 「Vanishing Figure (feat. Sean Hester of Life Itself)」

この記事で最初に紹介したいのはやはり日本が誇るプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Sailing Before The WindがLife ItselfのSeanをフィーチャーした楽曲「Vanishing Figure」だ。彼らのトレードマークと言えるメロディック・ハードロック/プログレッシヴ・ロックを通過した流麗なギターのメロディがふんだんに盛り込まれており、近年のSailing Before The Windが新たなキーリングとして楽曲のメインに据えたボーカルのクリーン映えるサビパートも過去最高の輝きを放つ。モダンだと思うのは、メタルコアのクラシカルな魅力溢れるスタイルに挿入されるフックの効いたブレイクダウンだ。Seanがフィーチャリングしているこの強力なパートは、多くのリアクションYouTuberによって切り抜かれ拡散していったことも印象的だった。これに次ぐ楽曲でSailing Before The Windが何をするのか、非常に興味深い。

 

そして、この2023年上半期には「Sailing Before The Wind系」と呼びたくなるモダン・プログレッシヴ・メタルコアな楽曲がいくつもリリースされた。それらはSailing Before The Windから直接的な影響を受けたかどうかは分からないが、もし似ているバンドを探しているという方がいたら、下記のバンドをチェックしてみて欲しい。

最もSBTWに近いスタイルを鳴らしていたのは、カナダ・トロントを拠点に活動するFeyn Entityだ。プロデューサー/コンポーザーとして活動するK.L.によるプロジェクトとしても活動していて、これはFeyn Entity名義でのデビューEP。テーマはデジタル化されたサイバー世界における分断された社会、人間同士の距離感に対し、コロナウイルスによるロックダウン中のバンドメンバーの考えや気持ちを表現したもの。この楽曲はインストであるが、Clintn Watsをフィーチャーした「Dissolve (The Dream Is A Lie)」も素晴らしいのでぜひチェックして欲しい。

Sailing Before The Windの「Futurist」を彷彿とさせるメロディックなスタイルを得意とするアメリカ出身のIn Search of SightのEPも素晴らしく、リードトラックである「Left Behind」は特におすすめ。Spotifyの月間リスナーはまだまだ少ないが、アメリカのローカル・メタルコアの雰囲気たっぷりなので、コア・リスナーはチェックしておいても損はないと思う。

 

 

Avalanche Effect 「Manipulating Sky」

ドイツ出身のAvalanche Effectは大幅なメンバーラインナップの変更を経て、この「Manipulating Sky」を発表している。ドラマーのJannick Pohlmannを亡くし、新メンバーを迎え7人体制として動き出したAvalanche Effectの「Manipulating Sky」は、2023年上半期最も優れたモダン・プログレッシヴ・メタルコアだった。現代デスコアの影響も見え隠れするブレイクダウンはすっきりとプログレッシヴの美的感覚になぞらえて表現し、Invent AnimateやA Scent Like Wolvesを彷彿とさせる浮遊感のあるメロディをふわりと燻らせている。再び動き出した彼らの動向は逐一チェックしていくべきだろう。

 

Traveller 「Homesick」

2017年から活動を続けるドイツのプログレッシヴ・メタルコア Traveller がリリースしたEP『Imprint』はプログレッシヴ・メタルコアの何がシーンで評価されているのかを正しく理解し、自身のスタイルとして昇華することに成功したTravellerの画期的な作品だ。ここに辿り着くまでのTravellerも非常にスタイリッシュで魅力的なバンドであったが、この作品で一気に隠れていた魅力が花開いた。ミュージックビデオにもなっている「Homesick」では、Invent Animateを彷彿とさせる浮遊感溢れるメロディとピアノの音色が醸し出すドラマ性の高さに驚くだろう。エンディングは特に凄まじい。

 

 

Breakdown of Sanity 「Collapse」

 

スイスを拠点に活動しているメタルコア・バンド、Breakdown of Sanityは、ほぼ休止状態でありながら「バンドが恋しい」という理由で2020年から毎年シングルをリリースしている。本格的な復活が切望されるが、2016年のアルバム『Coexistence』以来、本格的な再開には至っていない。ただ、これらのシングルはアルバム1枚に匹敵するほどの濃密さがあり、どれもリスナーに深く印象付けるものとなっている。ずっしりと詰まった至高の刻みは全盛期の輝きのまま、全てのメタル・ヘッズをヘッドバンギングさせるバウンシーな仕上がり。流石の貫禄。

 

Everghost 「Instinct」

デトロイトからとんでもないバンド Everghost が登場。「Instinct」は彼らのデビュー・シングルで、ミュージックビデオがDreamboundから公開されている。全編に渡って流れるアンビエントなアトモスフィアと細部にまで詰め込まれたリフは新人とは思えないクオリティ。特に最後のブレイクダウンは強烈で、Invent Animate〜I Prevail辺り、さらにResolveなどまで感じられる雰囲気があり、最初聴いた時はかなり驚きました。Spotifyの月間リスナーも5000未満とまだまだこれからと言えるEverghost、今からチェックしてください。

 

 

After the Burial 「Nothing Gold」

USプログレッシヴ・メタルコアの代表的な存在であるAfter The Burialが、2019年のアルバム『Evergreen』以来となる新曲「Nothing God」と「Death Keeps Us From Living」の2曲を発表。ちょうどAfter The Burialくらいのレベルにあるメタルコア・バンドにとって、新型コロナウイルスによるパンデミックは経済的な打撃が大きかったに違いない。ライブが出来ない中オンラインで制作を続けたバンドも多いが、それは簡単なことではなかっただろう。今回の新曲についてボーカルのAnthonyは、この2曲がCOVIDのロックダウンの経験から書かれたもので、Anthony自身にとって人生で最も辛い時期に書いたものであるとコメントしている。ルーツに立ち返り、好きなものを作るとして書かれたこの楽曲はまさにAfter The Burialらしさが凝縮されており、2010年代初頭から中期にかけてプログレッシヴ・メタルコアが大きく盛り上がり始めた頃のヴァイブスを感じることが出来る。

 

As Within So Without 「Burn With The Sun」

2016年からニューヨークを拠点に活動する As Within So Without の最新シングル。このシーンを何年も追いかけているリスナーであれば、このバンド名を見ただけでそのサウンドが想像出来るかもしれない。今回公開された「Burn With The Sun」は、彼らの出世作であるアルバム『Salvation』から1年振りのニュー・シングルで、大きな期待を背負って発表された。その期待を大きく超えるこの「Burn With The Sun」は、昔のThe Word Aliveをプログレッシヴに仕立てたような耳馴染みの良いキャッチーさがあり、多くのメタルコア・リスナーが知っておくべきバンドであると思う。このシングルから次のアルバムが間違いなく素晴らしいものになることが分かるだろう。

 

 

Straight Shot Home 「Developer」

近年のメタルコア/デスコアのプロモーションに欠かせないものと言えば「リアクション動画」だ。それで爆発的なヒットになったバンドと言えば、Lorna Shoreが最も記憶に新しいだろう。私もいくつかのリアクションYouTuberをフォローして、主に彼らのショートから優れたブレイクダウンを持つバンドの最新曲に巡りあうことが出来た。個人的に最も気に入っているOhrion Reactsはチャンネル登録者数11万人を誇る、アンダーグラウンド・メタル・シーンの中ではフォロワーの多いYouTuberで彼が紹介するバンドは”当たり”が多い。そんな彼が「Architects と Dayseeker が一緒にバンド組んだらこんなサウンドになるのでは」とキャッチを付けて紹介したバンド Straight Shot Home はこの上半期何度も聴いていたバンドのひとつだ。ポスト・ハードコアのとろけるようなクリーンと相性の良いメロディアスな楽曲は、Erraにも通ずる美しさがある。バンドは自身のサウンドを「80年代のシンセポップとモダン・メタルコアの融合」と形容していて、その表現にピンときたリスナーは迷わず彼らをチェックしてほしい。

 

Soul Despair 「Crimson」

ポルトガルとアメリカを拠点に持つSoul DespairをRIFF CULTでは何度も取り上げてきた。ただ反応はイマイチで、記事へのアクセスは平均以下……。複雑な魅力を持つバンドの魅力を発信するのは非常に難しいが、彼らに関しては今季よくRIFF CULTでも取り上げていきたいと思う。彼らのサウンドにはSentinelsやOceans Ate Alaskaといったマスコアのエレメンツがスパイス程度にふんわりと漂っており、それが魅力的なクセになっている。「Crimson」はクセとなるアクセントは少ないものの、Soul Despairというバンドが目指すサウンドとして完成されており、比較的キャッチーに魅力が伝わる楽曲であると思う。この記事を読み込んでいただけている方なら間違いなくヒットすると思う。

 

 

Polaris 「INHUMANE」

2023年6月19日、PolarisのギタリストであるRyan Siewが急逝したというニュースにメタル・シーンは深い悲しみに暮れた。彼はまだ26歳で、Polarisで過ごした10年もの間、メタルコアのゲームチェンジャーとしてそのアーティスティックな才能を発揮してきた。2023年9月1日にリリースされることが決まっているアルバム『FATALISM』からの先行シングル第1弾として公開された「INHUMANE」のミュージックビデオではRyanの姿もあり、観ていると複雑な感情が込み上げてくる。モダン・メタルコアのトップを走る彼らの現在地が垣間見える「INHUMANE」ではRyanを筆頭に綿密に作り込まれたリフが織り成すグルーヴに圧倒され、その世界観が今後メタルコア・シーンに与える影響を考えると計り知れないものがあるだろう。このアルバムのリリースを待つ気持ちはどのように表現すべきか分からないが、Ryanにとって遺作となってしまった『FATALISM』がモダン・メタルコアの頂点にある作品になっていることが紛れもない事実であることを「INHUMANE」で証明した。

 

The Artificials 「Warrior Of Light」

プログレッシヴ・メタルコア/メタルのディープなディガーであれば、彼/彼女らの魅力は古くから知っているだろう。Tragic Hero Recordsから2017年にリリースしたアルバム『Heart』に収録されていた「Warrior Of Light」のリマスター・バージョンは、上半期良く聴いた楽曲の一つで『Heart』を聴きかえすきっかけにもなった。完全に独立した手法でバンド活動を続ける彼/彼女らの自由な創作にはいつも驚かされる。

 

Vanitas 「Eventum」

The Artificialsと共にチェックしてほしいのが、2022年にイングランドで結成されたばかりの女性ボーカル・プログレッシヴ・メタル/メタルコア・バンド、Vanitasだ。ミュージックビデオとして公開された「Eventum」は、シンフォニック・メタル/プログレッシヴ・メタルをベースにしながら、メタルコアのバウンシーなリフを取り入れ、広範囲のメタル・リスナーへアプローチしたキラーチューンだ。中盤から後半にかけてのドラマティックな展開は魅力的。大手、例えばNapalm Recordsなんかと契約して売り出されたらビッグ・ステージも時間の問題だと感じる。

 

 

最後に

「モダン・プログレッシヴ・メタルコア」というキーワードを持ってシーンを追いかけてみると、いくつもこのキーワードの持つ特徴に気付く。全体的なヴィジュアルイメージの統一性、楽曲タイトルやバンド名に使われる単語……。グローバルに点在する彼らを一つのジャンルやシーンにまとめて考えることは出来ないが、具体的になっていない共通する要素は他のメタルコアやデスコアに比べると分かりやすいものがあると思う。

Spotifyの月間リスナーが1万を超えるアーティストは珍しいが、決してマイナーなカテゴリーではないと思うし、広く親しまれる要素があるので、誰が筆頭になって「プログレッシヴ・メタルコア」を分かりやすく打ち出し牽引していくかが重要だと思う。また、リアクションYouTuberによって注目を集める要素もこのジャンルにはあるので、「プログレッシヴ・メタルコア系リアクションYouTuber」がかつてのレーベルやYouTubeチャンネルのような役割を果たしていくのかなとは思う。そこの力がどのくらいまで巨大なものになっていくのかは想像出来ない。何となしに、シーンとしてのまとまりはないにしても、これらを「モダン・プログレッシヴ・メタルコア」としてまとまった場所で紹介されるべきではあると思う。

今回この記事で紹介したバンドの3倍近い楽曲をRIFF CULTのSpotifyプレイリスト「Best of Modern Progressive Metalcore 2023」では紹介している (他の特集記事で別途紹介したモダン・プログレッシヴ・メタルコアもあります)。 ぜひフォローしてランダム再生したりしながら、新しいお気に入りを見つけたり、プログレッシヴ・メタルコアの現在地を感じてみてください。

 

メタルコア 2023年上半期の名盤TOP10

2023年の上半期にリリースされたメタルコアのアルバム、EPの中から優れた作品をピックアップし、アルバムレビューしました。年々、こうしてメタルコア全体の雰囲気も変わり、トータルで見てもプログレッシヴだったり、ニューメタルだったり、そうした影響を上手く捉えて表現した作品を入れ込まないと納得できない状況になってきていると思います。決してクラシックなメタルコアが廃れてきている、という訳ではなく、幅広い可能性を持っていたバンド、サブジャンルが花開いているという良い状況だと思います。プログレッシヴ・メタルコアやニューメタルコアとしてアルバムレビューすべき作品もありますが、全体の状況も把握できるように入れ込んでみました。ぜひ新しいお気に入りを見つけてください。

 

 

 

10位 : Currents 『The Death We Seek』

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コネチカット州フェアフィールドを拠点に2011年から活動するメタルコア・バンド、Currents (カレンツ)。『The Death We Seek』は、2020年のアルバム『The Way It Ends』に続く作品で、プロデューサーRyan LeitruとギタリストであるChris Wisemanによる共同プロデュースで制作され、Wage WarやIce Nine Kills、Make Them Sufferなどを手掛けてきたJeff Dunneがミックスを担当している。

本作で最も注意深く感じてもらいたいのは、彼らの表現の幅が大きく広がったことだ。「メタルコア・バンドのCurrents」として聴くのは前作まで。このアルバムから彼らのサウンドは深みを増すと共に、サウンド面においても挑戦的なフレーズやアイデアが散見されるようになった。

特にChrisのギター、そしてそれを際立たせるようなベースラインやアトモスフィア。現代メタルコアにおいては珍しいものではなくなった、このようなプロダクションにおける創意工夫がCurrentsの思想を、そしてスタイルの規模を何倍にも拡大させている。前作から大きく進化を遂げた『The Death We Seek』、聴けば聴くほど味が出てくるだろう。「Remember Me」は本当に言葉にならない感情が込み上げてくる。楽曲に込めたバンドからのコメントはこちらから。

 

 

9位 : Soulkeeper 『Holy Design』

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ミネソタ州ミネアポリスを拠点に活動するニュー・メタルコア・バンド、Soulkeeperのデビュー・アルバム。新型コロナウイルスが本格的に全世界で流行し始めた2020年4月にシングル「Heavy Glow」をリリース、そのミュージックビデオを観て、かなり衝撃を受けたのを覚えている。しかし3年もの間、彼らから何か作品がリリースされるというような情報もなく、ニューメタルコアの盛り上がりに取り残されてしまったかと思っていたが、遂にアルバムを発表。そしてこれが非常に素晴らしかった。

同じタイプのGraphic Nature同様、ニューメタルとメタルコアのブレンド具合が優れており、エクスペリメンタルな要素は残しつつも、切れ味鋭くエディットされたリフが織りなすイーヴィルなバウンスは一級品。ミュージックビデオになっているタイトル曲「Holy Design」で言えば、タイトなサウンドのバックになっているエレクトロニックなアレンジが素晴らしく、ワーミーだけが炸裂し続けるB級ニューメタルコアとは比べ物にならないほど、NUな世界観を作り出す才能を感じる。

まだまだ地味な存在ではあるものの、Mathcore Indexでのスタジオ・セッションで見せた演奏技術の高さからライブ・シーンでの活躍へ期待も高まる。決して無視できない存在へと成長するのも時間の問題だろう。

 

 

8位 : C-GATE 『NO FUTURE』

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東京を拠点に活動するハードコア/メタルコア・バンド、C-GATE の通算3枚目フルレングス。2019年に新ボーカリストとしてNaShunを迎えてから初のアルバムであり、この数年大きく成長を遂げたC-GATEの持てるポテンシャルを余すことなく詰め込んだ全13曲入りの大作だ。

ミュージックビデオとしても公開されている「Hypocrisy」は、USアンダーグラウンド・モッシュコアと比較しても大差ないダウンチューン・リフをキャッチーに刻みながら、変幻自在にアクセルとブレーキを踏みかえる展開の妙が実に素晴らしい。こうしたアイデアは現代ハードコアのトレンドをキャッチし、日夜日本全国のライブハウスで体現し続けてきた実力があって正しく作られるものであり、メタルコア、ハードコア、いずれのリスナーも勝手に頭に血が上るような高揚感が味わえるはずだ。

メロディック・ハードコアの美的感覚を取り入れた「THE WAY I AM」は頭の中でリフレインする「Carry on, nobody can change the way I am」というリリックが印象的な楽曲でアルバムをバラエティ豊かなものへとアップデートしてくれる。花冷え。、CrowsAlive、Good Grief、Matt Fourman、UNMASK aLIVEといった盟友らとのフィーチャーも彼らにしか出来ない人選であり、それぞれの旨みを正確に表現している。

ライブでカオスな盛り上がりを作り出す「NO FUTURE」、「KILL YOU」といったバンガーチューンは国内だけでなく、グローバルなメタルコア、ハードコア、そしてデスコア・シーンでも容易く受け入れられるクオリティ。彼らが主戦場を日本だけでなく、世界へ変えていくのも時間の問題だ。

 

 

7位 : For I Am King 『Crown』

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オランダのメロディック・メタルコア・バンド、For I Am King の5年振りとなるサード・アルバムは、Prime Collectiveからのリリース。このPrime Colleciveはデンマークを拠点に置くレーベルで、SiameseのMirzaらが運営するレーベルだ。ここ数年、デンマークからは多くのバンドがグローバルな人気を獲得し、世界への門戸を遂に開けた解放感から動きが活発だ。For I Am KingはRNR TOURSで来日ツアーも手掛けたバンドで、レーベル、バンドからのプッシュもあり、2023年上半期によく聴いていた作品だ。

昨年ミュージックビデオとして公開された先行シングル「Liars」はメロディック・メタルコアという音楽の魅力を余すことなく詰め込んだ快作で、4万回しか再生されていないというのが信じられない。これは他のどんなメタルコアよりもメタルコアであり、個人的にはAugust Burns Redよりも聴いたしハマった曲だ。ボーカリストAlmaのメロディック・シャウトはイーヴィルな魅力もあり、来日時よりも格段に進化している。同じくリードシングルになっている「Trojans」もシンフォニックなエレメンツを取り入れ、スケールアップしたFor I Am Kingの世界観に聴くもの全てを引き込んでいく。

このレベルのバンドが埋もれるヨーロッパのメタルコア・シーンも凄いのだが、ワールドワイド、特に日本での人気はもっと高まってもいいと思う。ぜひ彼らのSNSなどに応援コメントを書き込むなどしてもらいたい。

 

 

6位 : Graphic Nature 『A Mind Waiting to Die』

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イングランドを拠点に活動するニューメタルコア・バンド、Graphic Natureのデビュー・アルバム『A Mind Waiting to Die』。メタルコア・リスナーにはあまり馴染みのないRude Recordsというところからリリースされたこのアルバム、RIFF CULTでも頻繁に彼らのことは取り上げ続けてきたが、毎日のように変化し成長続けるニュー・メタルコアというジャンルにおいて、Graphic Natureが”基本のスタイル”をこのアルバムで確立したことはシーンにとって大きいだろう。

刺激を求め続けるのであれば、未だ交わったことのないジャンルからのエレメンツを組み込んだり、ヘヴィを極めたり、誰もやったことのない何かを探し昇華する必要がある。ただ、一瞬のBUZZを狙ったものであるなら、それは消費されて終わってしまう。デスコアがダウンテンポと結びつきトレンドになった時、ダウンテンポ・デスコアへとスタイルチェンジして注目を集められず死んでいったバンドがどれだけいたか。その時から生き残っているバンドに共通しているのは、デスコアとしての本来の魅力を残したまま微細なアップデートを繰り返しているバンドばかりだ。

ニューメタルコアはEmmureによって世界のメタルコア・シーンに浸透し、Alpha Wolfらによって形作られ、昨今のメタルコアのトレンドとも言える存在になった。飽和し始めている2023年に、純粋にニューメタルとメタルコアのクロスオーバーでピュアなバンガーを探し求めた時、Graphic Natureがやっている事が理想のスタイルだと思う。

Slipknotを思わせるスクラッチやスネア、複雑すぎない程度のキャッチーなバウンス、フックとして絶妙な役割を担うワーミーのブレンド感覚。ミュージックビデオになっている「Killing Floor」や「Into The Dark (+Bad Blood)」は気付けばスピンしているし、耳に残るフレーズがたっぷり詰め込まれている。このバランス感覚のまま、イングランドを代表する存在へと成長して行って欲しい。

 

 

5位 : Crown The Empire 『DOGMA』

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2010年テキサス州ダラスを拠点に結成されたCrown The Empireの4年振り通算5枚目のフルアルバム。10年間ドラマーを務めたBrent Taddieが脱退、新たに加入したJeeves Avalosと共に、Fever 333やPoorstacy、Nova Twinsらを手がけたZach JonesとJosh Strockがプロデュースを務めた本作は、長きに辺り彼らをサポートし続けるRise Recordsからのリリースとなった。

彼らがスタートした2010年ごろのメタルコアの主要レーベルと言えば、Rise Recordsだった。現代メタルコアに繋がる盛り上がりの最も最初の段階からRise Recordsはカリスマ・レーベルで、発掘するアーティストが皆ヒットしていた。Rise Recordsも時の流れと共に所属アーティストのテイストが変容して行ったが、現在もblessthefallやThe Acasia Strain、Dance Gavin Dance、Kublai Khan TX、Memphis May Fire、Polyphia、Spite、Spiritbox、Herperが籍を置き、メタルコアの主要レーベルであり続けている。

彼らは結成からメタルコアとポストハードコアの間を行くスタイルでトップを走り続けてきたバンドで、新体制となってもそのスタイルは変わらない。SpiritboxのCourtney LaPlanteをフィーチャーした「In Another Life」は彼らのクラシック・アルバム『The Fallout』にも通ずる懐かしさがあると感じるのは私だけだろうか。

タイトルトラック「DOGMA」は呪術的なミュージックビデオのディレクションとも相まって、神経を侵略するようなエレクトロニックなビートがヘヴィなブレイクダウンへと向かっていく様が異様な不気味さを放っている。Beartoothを彷彿とさせるヘヴィなメタルコア・ブレイクダウンは非常にヘヴィで驚く。気づけば彼らのキャリアも13年。大きなスタイルチェンジもなく、正統派であり続けるストイックさに感服。

 

 

4位 : Veil of Maya 『[m]other』

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2004年からイリノイ州シカゴを拠点に活動するプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Veil of Maya の通算7枚目フルレングス。前作『False Idol』のリリースが2017年、およそ6年振りのニュー・アルバムは長年のパートナーであるSumerian Recordsからリリースされた。

2019年にTaylor Larsonとスタジオ入りし、新作の制作をスタートさせたことをSNSで発表していたものの、それらの多くを破棄した事が6年というブランクが開いてしまった理由だ。2014年にボーカルLukas Magyarが加入し、2枚のアルバムをコンスタントにリリースしてきた彼らにとって、こういった経験は初めてだろうし、元々ブルータル・デスコアからスタートし、次第にプログレッシヴ・メタルコアへと移行してきた彼らがファンの期待に応えられるような作品を生み出すには、完全に納得できるものでないと発表しないというスタンスを取ったことは納得が出来る。かつてSuicide Silenceが大きくニューメタルへと舵を切った時、ファンの失望は凄まじいものがあった。あれからしばらく経ち、2枚の素晴らしいOGデスコアのアルバムを発表しても尚、引きずり続けているのを見ると、本当にシングル一曲でもファンを失望させるようなスタイルチェンジは許されない状況である。諦めて別のバンドを聴くことなんて、本当に簡単だからだ。

ミュージックビデオにもなっている「Red Fur」はメタルコアの伝統に沿ったクリーン・パートとエレクトロニックなアレンジを施したリード・トラックで、2015年のVeil of Mayaをほんの少しアップデートしたような楽曲だ。同じく先行シングルとしてミュージックビデオになっている「Synthwave Vegan」はプログレッシヴな彼らの魅力を引き出しながら、ニューメタルコアの影響も感じられるヘヴィなキーリングに溢れた一曲で、決してファンを失望させることはない。

「Disco Kill Party」は一聴するとVeil of Mayaには聴こえないような楽曲だが、アルバムにおいて強烈な個性を放ち、他と違ったバンガー・チューンとして再生回数も高い。「Mother Pt.4」でも大胆なエレクトロニックなイントロからしっとりと幕開けていき、ヘヴィなパートとのコントラストを描いていくさまなどを聴いていると、もしかしたらこうしたスタイリッシュなプログレッシヴ/Djentに舵を切ろうとしていたのかもしれない。ただこの『[m]other』は紛れもないVeil of Mayaのアルバムで傑作だ。最終的にどういったサウンドへ辿り着くのか興味深いが、まだまだ続く彼らの長旅の中で様々な挑戦を聴かせて欲しいと願う。

 

 

第3位 : Invent Animate 『Heavener』

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テキサス州ポート・ネチズを拠点に活動するプログレッシヴ・メタルコア・バンド、Invent Animate が、Tragic Hero Recordsを離れUNFDと契約してから初となるアルバム『Heavener』をリリース。元AvianaのMarcus Vikは加入してから2作目ということもあり、Invent Animate仕様に鍛え上げられたボーカルでアルバムにおいてキーとなる存在のひとつにまで成長している。ドラマーのTrey CelayaはFit For A Kingとの仕事により、Invent Animateのライブ活動には参加していないが、このアルバムにおいてはセッション・ドラマーとしてその実力を発揮している。Landon Tewersによるプロデュースは彼らのメロディが持つ悲哀を多角的に研ぎ澄まし、時に水面を漂うように、時に刺々しく突き刺さるようにエディットしている。

彼らがこのアルバムで鳴らす音楽性は、決してメタルコアのトレンドであるとは言えないが、Crystal Lakeからの直接的な影響を感じさせる先行シングル「Shade Astray」やHolding Absenceを筆頭に主にユーロ・ポストハードコアでひとつシーンとして確立されているオルタナティヴなメロディワークを驚きのクリーン・ボイスで表現した「Without A Whisper」などプログレッシヴ・メタルコア・バンドとしては挑戦的な楽曲がキーリングになっている。最も彼ららしい音楽的表現と言えば、”静と動”のコントラストだ。「Void Surfacing」は特にカオティックにメロディとリズムがグルーヴを生み出しつつ、それらを継ぎ接ぎしたような構成で電子音楽的な要素を見せる。後半に導入される彼らの伝統的なブレイクダウンの美しさはこうしたカオスなエナジーがピタッとシャットダウンされるようなブレイクダウンにある。そこはこれまでと全く変わっていない。

コアなメタルコア・リスナーと話をすれば、彼らの名前が頻出するほど、かなり現代メタルコアにおいて影響力が強いバンドだ。大きな変化はなくともこれだけ挑戦的と思わせる孤高の存在感はカリスマ的と言っていいだろう。

 

 

第2位 : fromjoy 『fromjoy』

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テキサス州ヒューストンを拠点に活動するメタルコア・バンド fromjoy の2021年作『It Lingers』に次ぐセカンド・アルバム。地元のレーベルdontstress//flowerpressからのリリースということもあり、まだまだ知名度としては低いバンドであるが、革新的なサウンド・プロダクションや青色で統一されたスタイリッシュなヴィジュアルからミュージシャンらの評価が高い。

以前彼らを紹介したとき、ニューメタルコアならぬニューハードコアなどと紹介したが、その時点で彼らのサウンドがどこへ向かっているのか分からなかった。昨今、バンドがどこを拠点としているのか、メンバー構成はどうなのかなどをあえて公開しない、ミステリアスな雰囲気を出しているバンドが多いが、彼らもそんなバンドの一つだった。結局、このアルバムだけでは彼らが目指すサウンドが何なのかを掴むことが出来なかった。繰り返し聴いても、計り知れない魅力が放射状に放たれ続けるアルバムを聴き終えるころには、メタルコアが何なのかさえ分からなくなってしまう。

基本は現代メタルコアの中でも盛り上がりを見せるニューメタルコアに分類されるようなスタイルがベースになっているが、Loatheの元ギタリストConnorが「morbidly perfect」でフィーチャーされているように、オルタナティヴな方面への挑戦も多く見受けられる。「morbidly perfect」のサビへの導入部分はまさにLoatheの影響が感じられるし、「of the shapes of hearts and humans」もシューゲイズっぽい。

ミュージックビデオになっているバンド名を冠した「fromjoy」が彼らが目指すサウンドであるとしたら、2024年、とてつもなく巨大なバンドに成長している姿しか想像出来ない。波打つリフがビートダウンしながらもロックなフックを差し込んだり、印象的なシンセのメロディと女性ボーカルのクリーン。後半はただのビートダウン・デスコア。「docility」でPeeling Fleshがゲスト参加しているのは、彼らがヘヴィ方面への挑戦を忘れていないことをリスナーに訴えているように感じる。

最後に、このアルバムで最も衝撃だった楽曲「Icarus」について話したい。アルバムのエンディングを飾るこの曲が、fromjoyの未来の鍵を握っている。Loatheらオルタナティヴ/シューゲイズ・メタルコアからの影響、メロディック・ハードコア的なシリアスなメロディの感覚、バランス感覚の優れたブレイクダウン。驚くべきことに、それらに加えてアウトロにヴェイパーウェーヴが組み込まれている。思い返せば、彼らの活動の至る所にヴェイパーウェーヴ的なヴィジュアルがあった。青で統一された世界観も、もしかしたらそうした影響なのだろうか。本当にこの楽曲でアルバムを聴き終えた時の感覚が、難解な長編映画の結末を完璧に理解できないまま噛み締めているかのような、混乱にも近いものがあった。

彼らのポテンシャルは計り知れない。これまで使ってきた「計り知れない」という言葉の中で最も計り知れない…。

 

 

1位 : August Burns Red 「Death Below」

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USメタルコア・レジェンド、August Burns Redの通算10枚目となるフル・アルバム『Death Below』。 Fearless Recordsを離れ、自身の周年を祝った企画盤を経て、SharpTone Recordsとの契約を果たしている。Carson SlovakとGrant McFarlandによってプロデュースされた本作には、Killswitch EngageのボーカリストJesse Leachをはじめ、All That RemainsのJason RichardsonやErraのJ.T. Cavey、UnderoathのSpencer Chamberlainがゲストとしてそれぞれ楽曲に参加している。

2003年の結成から20年。そして記念すべき10枚目のアルバムということもあり、これまでAugust Burns Redが一切ブレることなく貫いてきたメロディック・メタルコアのプライドが感じられる仕上がりとなっていて、ゲストが参加した楽曲やアルバム全体の中でブレイクと言える部分に多少の変化があれど、後続のメタルコア・バンドたちに与えてきた影響がどんなものであるかが浮き彫りとなった、「August Burns Redの真の魅力」がたっぷりと詰め込まれている。

Killswitch EngageのJesseをフィーチャーした「Ancestry」はミュージックビデオとしてアルバムの先行シングルにもなっているキートラックで、火花を散らしながら駆け抜けていくメロディックなフレーズ。ABRブレイクダウンと形容したくなる、トレードマークのグルーヴ、Jesseというトップ・メタルコア・バンドのフロントマンの個性さえも凌駕するAugust Burns Redサウンドのオリジナリティの偉大さを感じることが出来る楽曲として、2023年メタルコア・トップトラックのひとつと言えるだろう。

「Dark Divide」やJason Richardsonをフィーチャーした「Tightrope」など他にもアルバムのキーリングと言える楽曲がトラックリストの中にひしめき合っているが、ErraのJT Caveyが参加した「The Abyss」は若干Erra寄りでありながら紛れもないAugust Burns Redなのが興味深い。彼らをAugust Burns Redたらしめている要素はもちろん、全てのパートであるが、ドラムの凄まじさは改めて評価したい。

彼らの地元を拠点とするレーベルで、Texas in Julyなどを手がけたCI Recordsのオーナーが、RNR TOURSでCarousel Kingsが来日する度に帯同してくれてAugust Burns Redの話を聞かせてくれるのですが、そのミュージシャンとしての繋がり以上に友人同士であることのつながりの強さが長年続けられる秘訣なのかもしれない、と語ってくれた。ちょうど、RNR TOURSが3年振りに海外アーティストの招聘活動を再開して、オーストラリアからNo Quarterというバンドのツアーを終えたところだが、彼らも2003年結成、今年20周年を迎えたバンドだった。バンドの大きさに差はあれど、20年バンドを続けるということの凄み、そして続けられてこれた理由をツアーを通じて感じることが出来た。互いへのリスペクトはもちろん、メンバーそれぞれ、5人の大人の集合体であるバランス感覚など、本当に長くバンドを続けるということは奇跡であると思う。

August Burns Redのようにトップ・シーンで戦い続ける重圧が加われば更に困難なことであるだろう。キャリア通算10枚目の本作から感じられることは、単にメロディック・メタルコアの素晴らしさだけではない。

グラインドコア 2023年上半期の名盤TOP10

2000年代中頃から終わりにかけて、メタルコア/デスコアを巻き込んで盛り上がったマスコア (カオティック・ハードコア)。その頃夢中になっていた See You Next Tuesday が復活したと聞いて、グラインドコアの現状を把握しようとディグっていたのが今年の頭。昔はレーベルやディストロの商品レビューを片っぱしから読んでは気になるバンドをメモして横の繋がりを把握しつつ、グラインドコア・シーンの状況を把握しようとしていたが、今ではグラインドコアに特化したYouTubeチャンネルもあり、世界に点在するDIYグラインドコア・バンドたちの拠点としてかつてのレーベルのような役割を果たしてくれているので、どんなバンドがアクティヴで、どのくらいの規模で活動しているのが直感的に把握しやすくて助かる。

グラインドコアはSpotifyなどのプラットフォームにない作品も多く、シーンの追いかけ方を工夫しないと、思わぬ名作を聴き逃してしまう可能性の高い。Spotifyで好きなバンドをフォローするだけでなく、YouTubeチャンネルやBandcamp、そして世界中のあらゆるディストロをチェックするのがいいだろう。グラインドコアと一言に言っても、デスメタルと結びつきが強かったり、ノイズ・シーンで活躍するバンドもいたり様々。自分のお気に入りのタイプは何なのかを知ってディグると面白いと思います。

アルバムのチョイスに偏りがあるかも知れませんが、グラインドコアだけでなく、あらゆるジャンルを聴いている方でも引き込まれる要素を持ち合わせた作品を何個も混ぜ込んでいますので、ぜひ全部チェックしてみてください。このリストにない素晴らしい作品についてはぜひコメントで教えてください!

 

Birdflesh 『Sickness in the North』

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スウェーデンのグラインドコア・カルト、Birdflesh の通算9枚目のフル・アルバムは、2019年の『Extreme Graveyard Tornado』以来およそ4年振りにリリースされた。Birdlfeshは、結成から30年が経過しても、大きくペースを落とすことなくライブ活動、制作活動を続けている真のベテラン。彼らを知っているグラインダーなら、彼らがファニー・グラインドをプレイし、Obscene Extreme Festivalのステージで狂喜乱舞を繰り広げる様を想像出来るだろう。このアルバムも御多分に洩れず、毒舌のユーモアをたっぷりと詰め込んだ作品になっており、純粋なグラインドコアを基調としながらもスラッシュメタル、ゴアグラインド、ハードコアパンクとごちゃ混ぜで面白い。

このアルバムを日本語のメタル・サイトであるRIFF CULTが紹介する大きな理由は、アルバム・リリースに先駆けて発表された先行シングル「Hammer Smashed Japanese Face」にある。とにかくこのくだらないミュージックビデオを見て、そして歌詞を眺めてみてもらいたい。聴き終わった時、私はこの曲をRIFF CULTで紹介しないといけないという謎の使命感に駆られてしまった。

「Tokyo, I want to go, Yokohama, hammer hammer」、「Osaka, Nakatomi Hakodated and mutilated」、「Nunchaku attack Nintendo-san Ramen rama ding dong Hammer hammer smashed」といった小学生でも思いつかないようなチープなフレーズがカミソリのようにソリッドなグラインド・リフの上で吠えている様はなんとも可笑しい。特にYokohama Hammer Hammerというアホくさいフレーズは神がかっている。こういうくだらないアイデアに何時間も費やして、しかもそれを30年続けているというだけで、グラインドコア・ファンは彼らを好きになる必要がある。いや、嫌いになんてなれないだろう。

そのほか収録曲「Chainsaw Frenzy」にはMatt Harvey (Exhumed, Gruesome)がフィーチャーされており、ゴアメタル・ファンはもちろん、Macabre, Municipal Waste, Ghoul, Immortalといったバンドのファンにもおすすめ出来る本格派キラーチューンだし、エンディングの「Alive To Lose」はジャパコアにも似たサウンドスケープで驚く。日本のグラインダーなら2023年上半期はBirdfleshを聴くべきだ。

 

Rotten Sound 『Apocalypse』

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スウェーデンのお隣 フィンランド を拠点に、Birdfleshと同じく90年代初頭から活動を続けているのが、Rotten Soundだ。前作『Abuse To Suffer』からおよそ7年振りとなる本作は、通算8枚目のアルバムで、Season of Mistから発売された。

このアルバムは20分とグラインドコア・アルバムの中でも比較的短い収録時間であるが、18曲が収録されており、一度もブレイクすることなく、暴力的ともいうべきグラインドの塊が鼓膜に襲いかかってくる。オリジナル・メンバーであるボーカリスト Keijo Niinimaa と ギタリスト Mika Aalto のプレイに注目してアルバムを何度も聴き込むと、30年という時間をかけて培ったグラインドコアの美学というものが感じられる。Keijoのスクリームはデスメタルにあるようなローの効いたものでなく、高速で叩き込まれるビートの上を煙るように、喉を振り絞るようにして咆哮される (「Digital Bliss」のアウトロのスクリームは一級品)。

「Denialist」から「Fight Back」あたり、アルバムの中間に位置するこれらの楽曲は、アルバムの中で最も「グラインドコア・バンド Rotten Sound」としての輝きを放っている。ドゥーミーなリフから急速にアクセルを踏み込みつつ、巨大なフックを生み出すストップ&ゴーを絶妙なバランスで組み込んでいく。彼らの人気作品である『Exit (Willowtip Records』や『Cycles (Spinefarm Records)」と比べると、さらに装飾を削ぎ落としたサウンドが印象的。いくつか公開されたミュージックビデオは若干チープで何度も見るものではないが、このアルバムは何度も何度も聴いて、体の内側から熱くなれる傑作だと思う。

 

See You Next Tuesday 『Distractions』

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2008年に傑作『Intervals』を発表し散り去ったミシガンのエクスペリメンタル・グラインドコア/マスコア・カルト、See You Next Tuesday がシーンにカムバック。およそ15年振りとなるアルバム『Distractions』をGood Fightからリリースしたことは、個人的に2023年グラインドコア・ニュースの中で最も印象的であったし、かなり興奮した。

というのも、メタルコアやスクリーモが爆発的な人気を誇っていた2000年代後半のメタル・シーンにおいて、カオティック・ハードコア/マスコア・シーンやブルータル・デスメタル・シーンとの境界線をシカトして猛烈な人気を誇っていたのがSee You Next Tuesdayであったからだ。Rotten Sound、その他Napalm Deathなどどいったグラインドコア・バンドとは明らかに違う異質さは、恐ろしく長い楽曲名、カラフルでグロテスクな当時のエモファッションにも近いアパレルを身にまとったヴィジュアルからも漂っていた。iwrestledabearonceなどと同列に並べられがちであるが、そのサウンドはノイズに接近するほどラウドで難解であった。

復活後もそのスタイルを崩さず、わずか34秒の「Glad to Be Unhappy」では電気ショックのようなギターのフィードバックが恐ろしいほどの存在感を放ち、ミュージックビデオにもなっている「Day in the Life of a Fool」では、まるでEvery Time I DieやThe ChariotがLSDを喰らいながらブルータル・デスメタルを5倍速でプレイしたかのような混沌を表現している。これだけ奇天烈なことをやっておいて、テクニックは素晴らしいし、しっかりグラインドしている。ややデスコアやマスコアに理解がないと興味が湧きにくいバンドかも知れないが、グラインドコアの裾をさらに拡大するべく、彼らが再びシーンに戻ってきてくれたことを歓迎したい。

 

The HIRS Collective 『We’re Still Here』

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この記事に挙げられている他のグラインドコア・バンドと比べると、The HIRS Collectiveの存在は異端と言えるだろう。LGBTQIA+コミュニティから発生したフィラデルフィアを拠点に活動するThe HIRS Collectiveは、弱者の立場にある人たちのために戦い続けている。グラインドコアと呼ばれるカテゴリーでのみ活躍するようなバンドではなく (それはサウンドにおいても同様)、その幅広い交友関係は、このアルバムに参加しているゲスト・ミュージシャンのリストを見れば明らかだろう。

1. We’re Still Here (feat. Shirley Manson & AC Sapphire)
2. Sweet Like Candy (feat. Nø Man, Thou, & Jessica Joy Mills)
3. Burn Your House Down (feat. Jessica G.Z., and Gouge Away)
4. N.O. S.I.R. (feat. Justin Pearson & Nevada Nieves)
5. Waste Not Want Not (feat. Soul Glo & Escuela Grind)
6. Public Service Announcement (feat. Dan Yemin & Dark Thoughts)
7. Judgement Night (feat. Ghösh & Jessica Joy Mills)
8. Trust The Process (feat. Frank Iero & Rosie Richeson)
9. XOXOXOXOXOX (feat. Melt-Banana)
10. You Are Not Alone (feat. Lora Mathis & The Body)
11. Apoptosis and Proliferation (feat. Nate Newton & Full Of Hell)
12. So, Anyway… (feat. Geoff Rickly & Kayla Phillips)
13. A Different Kind of Bed Death (feat. Anthony Green & Pain Chain)
14. Neila Forever (feat. Jeremy Bolm & Jordan Dreyeri)
15. Last Kind Meets Last Preist (feat. Chris #2 & Derek Zanetti)
16. Unicorn Tapestry Woven in Fire (feat. Marissa Paternoster, Damian Abraham, & Pinkwash)
17. Bringing Light and Replenishments (feat. The Punk Cellist & Sunrot)

アルバムのタイトルトラック「We’re Still Here」は、オルタナティブロック・バンド Garbage のリードシンガーであるShirley Mansonをフィーチャーした印象的な一曲。歌詞はどれも意外とシンプルというか、伝えたいことをストレートにスクリームしている感じ。My Chemical RomanceのFrank Ieroが参加している「Trust The Process」もThe HIRS Collectiveらしさ溢れるカオティックなグラインディング・チューンで飾り気なしの清々しさに溢れている。参加するどのミュージシャンも本業のバンドでは見せない怒りやメッセージをここで発散しているように感じるというか、The HIRS Collectiveとのコラボなんだから叫んでもいいでしょというような雰囲気がある。シンプルに怒りや日頃の鬱憤を発散する音楽が私たちには必要で、グラインドコアはまさにうってつけの音楽であり、現代的な社会問題をテーマにしている彼らが特別な魅力を放つのは当然だ。

 

Smallpox Aroma 『Festering Embryos of Logical Corruption』

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2006年にタイ・バンコクで結成されたSmallpox Aromaのファースト・アルバム。活動がストップする2009年まではコンスタントにスプリット作品をリリースし続けていたが、メンバーそれぞれに本業バンドがあり、そちらを優先していたようだ。ドラマーのPolwach Beokhaimookは、タイを代表するブルータル・デスメタルのドラマーで、RIFF CULTでも彼が在籍しているEcchymosisの来日公演を手掛けたことがある。

グラインドコアというにはヘヴィなデスメタル・ブレイクダウンがあったりとピュアなスタイルではないが、彼らが在籍するブルータル・デスメタルでは出来ないことをやっているし (「Quest for the Missing Head」はブルータルなハードコアパンクみたいな曲)、アクセスとブレーキーの踏み分けのそれがグラインドコアと同じだ。2023年9月にははるまげ堂の招聘によって再来日が決まっている。彼らの良さはライブだと思う、見逃さないようにしておこう。

 

Sick Sinus Syndrome 『Swarming of Sickness』

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チェコ・オストラバを拠点に2020年に結成されたSick Sinus Syndromeの2年振りセカンド・アルバム。「Rot Ridden Pathological Grindcore」を自称する彼らの才たる魅力はCarcassやGeneral Surgeryを彷彿とさせる溺死ボーカルと血管がブチ切れるほどの熱量だ。

メンバーそれぞれにこの手のシーンの名手であり、ギター/ボーカルのBilosはMalignant Tumour、ベーシストのHaryはPathologist、ドラマーのJurgenは元Ahumado Granujo。2000年代のグラインドコア/ゴアグラインドの血生臭さ溢れるSick Sinus Syndromeのサウンドには懐かしさがたっぷりと詰まっている。「Psycho Pathology Mania」のミュージックビデオは必見。

 

Warfuck 『Diptyque』

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フランス・リヨンを拠点に2011年から活動するグラインドコア・デュオ、Warfuckの5年振り通算4枚目。YouTubeにアップされている「Obscene Extreme 2013」での彼らのステージを映像で見たことがある人も多いだろう。ユニット体制でありながら、他のバンドとなんら遜色のないグラインドコアのライブステージからは、2人のグラインドコアに対する才能を感じることが出来るはずだ。

アルバムからはユニット体制であることの魅力を感じることは出来ない (メンバーがベースなどをレコーディングしている) が、Napalm Deathの王道スタイルでダイナマイトを爆発させながら突進していく。グラインドコアのピュアさが清々しいとさえ感じる作品。

 

CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP 『We Live as Ghosts』

コネチカットを拠点に活動するワンマン・ノイズグラインド・プロジェクト、CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP CHOP。このイカれたプロジェクト名を本人も「CHOP 7times」と省略して使っているのですが、検索しにくすぎて不便では……。しかしバンド名を何気なく発見し、気になって再生ボタンを押してしまったので、それが彼の策略であったならば私はまんまとその策略にはまってしまっている。そして気になったのがCHOP7timesのアーティスト写真。これは彼のBandcampをぜひ見てほしい。ノイズ・ファンなら興味をそそられるはずだ。

このアルバム、全て打ち込みで作られており、リアルの楽器を一切使用していないんだとか。こうした怒れるエナジーを楽器を使って肉体的に表現してこそグラインドコアの魅力が輝きを放つのではないかと疑問に思うが、これはこれで素晴らしく、非人力だからこそのエクストリームな感情表現を完成させているようにも感じる。人間だと叩けないスピードのブラストビートであったり、不気味な転調にハーシュノイズの雑なカットアップ。こういうのが好きな人は結構いるし、自分もその一人。非常に引き込まれるアルバム。

 

2023年の上半期も素晴らしいグラインドコア・アルバムに出会うことが出来ました。皆さんのお気に入りは何でしたか?また、このリストにない素晴らしい作品を知っていたら、ぜひコメントで教えてください!

デスコア 2023年上半期の名盤TOP10

毎日のように世界各国から素晴らしいデスコア・バンドがシングル、EP、アルバムをリリースし、絶えずコンテンツが供給過多状態にあるデスコア・シーン。この記事では、RIFF CULTが2023年1月から6月までにリリースされたデスコアのアルバム/EPの中から素晴らしい作品をピックアップし、順位付けしてアルバムレビューしました。

毎週リリースされる作品を網羅できるRIFF CULTのSpotifyプレイリスト「All New Deathcore 2023」では、ここには載っていないアーティストの楽曲を視聴することが出來、毎週20曲から30曲近いデスコアの楽曲を追加しています。ぜひフォローして下さい。

 

「All New Deathcore 2023」Spotifyプレイリスト

 

第10位 : DeadVectors 『The Gray』

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ニュージャージーのデスコア・ユニット、DeadVectors の4枚目フルレングス。2021年から活動を開始し、3枚のアルバムと7枚のEPをリリースしてきた多作なプロジェクトで、毎週のようにSpotifyのアップデートでシングルをリリースし存在感を見せつけてきた。

DeadVectors はボーカルでリリックを手掛ける Kenny Stroh 、作曲からレコーディング、ミックスからマスタリングをこなす Aaron Chaparian からなる。特にAaronはこの2年で凄まじい努力でDeadVectorsの評価を上げ、プログレッシヴ・デスコアからビートダウンに接近するスタイルまでを巧みにこなしてきた。特に「BITE (The Golden Blade)」のブレイクダウンは浮遊感たっぷりで、Djentな刻みもクオリティが高い。Born of OsirisからThe Voynich Codeなどを彷彿とさせるオリエンタルなエレメンツとディープなブレイクダウンが印象的な「Isolate // Escape」やBobbi VanetとAlex Goldをフィーチャーした「Voyage」、サックスなども盛り込みながらドラマ性たっぷりにアルバムを展開させる。

遂にオンライン・ベースのプロジェクトのレベルがここまで来たのかと感動すると共に、「打ち込みらしさ」のマニアックな面白さがなくなっていってしまうのには若干の悲しさを覚えるが、そうしたコアなリスナーは少ないのでDead Vectorsには歴史を更新して行って欲しい。

 

DeadVectors 公式ホームページ+SNS : https://linktr.ee/DeadVectors

 

 

第9位 : Left to Suffer 『Feral』

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ジョージア州アトランタのデスコア5人組、Left to Suffer のセカンド・アルバム。2020年の『A Year of Suffering』から3年。ここまでの成長を誰が想像出来たでしょうか。本作は Matt Thomas がプロデュース/ミックスを手がけ、 Joel Wanasek がマスタリングを担当。ニュー・メタルコアとデスコアを高次元で融合させ、本作でも印象的なニュー・メタルコア的アレンジが随所に組み込まれており、ミュージックビデオになっている「Artificial Anatomy」では新鋭トラップ・アーティスト Kim Dracula がフィーチャーするなど人選も完璧だ。

Left to Sufferの最も素晴らしい持ち味はドライブンなフレーズだ。「Disappoint Me」はヘッドバンギング不可避のドライブ感が楽曲を通じて貫かれており、ボーカル、リフ、個性的なドラムのフィルインなどの細やかな工夫もそのドライブ感を加速させていく。ニューメタルの香りをほのかに香らせながら、Lorna Shore、Signs of the Swarm、Archspireといったバンドらのボーカルにあるような、ショットガン・ガテラルも巧みにブレンドしているから凄い。

Fit For An AutopsyのJoe Badをフィーチャーした「Primitive Urge」はアルバムの中でもスタンダードなデスコアに近いスタイルでありながら、不気味に燻らせるノイズ、シンフォニックなアレンジが旨みを引き立たせる。じっくりと聴き込めば聴き込むほどにLeft to Sufferというバンドの持つ驚異的なポテンシャルを感じることが出来るだろう。

 

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第8位 : Distant 『Heritage』

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2010年代中期から活躍するオランダ出身のデスコア・バンド、Distant のサード・アルバム。「ブラッケンド・デスコア」の新鋭として Unique Leader Records から2枚のアルバムをリリース、その後 Century Media Records への電撃移籍を発表して、本作を完成させた。

今年1月に公開され大きな話題となった楽曲「Argent Justice」には、フィーチャリング・ゲストとしてSuicide Silence, Emmure, Abbie Falls, Acranius, AngelMaker, Bodysnatcher, Cabal, Carcosa, Crown Magnetar, Paleface, ten56., Worm Shepherdの名前が挙げられている。これだけのアーティストがこの1曲に参加していることでSpotifyでは100万回再生を記録するなどDistantの名を高域のメタル・シーンへ広めるきっかけとなった。彼らの代名詞とも言えるダークなスケールを広大に広げながら疾走するブラッケンド・デスコアに個性的なボーカルが次々とフィーチャーされていく様は、参加したミュージシャンのファンであれば引き込まれ、楽しめるはずだ。

この楽曲はアルバムのキーであることは間違いないが、Lorna ShoreのWill Ramosをフィーチャーしたタイトル・トラック「Heritage」も「Argent Justice」と双璧を成すキラーチューンだ。この曲はWill Ramosのパートはもちろん素晴らしいが、Thy Art is MurderやCabalなどを彷彿とさせるブレイクダウンのヘヴィネスが素晴らしい。この曲のブレイクダウン、そしてブラッケンドなファスト・パートの接続などは後続にも影響を与えるはずだ。間違いなくアルバムのハイライト。

Distant周辺は高いクオリティを持つバンドが多く、頭一つ抜きん出た存在へと成長するには更に何かが必要になってくる。その何かが何であるか、まだ誰も知らないがおそらくDistantが見つけるはずだ。今後に期待。

 

Distant 公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/distantofficial

 

 

第7位 : Sail’s End 『Live And Die』

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テキサスとニューヨークを拠点に活動するヘヴィ・メタルコア/デスコア・バンド、Sail’s End が2023年2月にリリースしたこのEPは、あまりにも衝撃的だった。ブレイクダウンYouTuber Ohrion Reacts でも取り上げられ、相当唸らせていたし、ローカルのリアクションYouTuberも彼らのビデオを取り上げていた。

Before I TurnやGlass Crown、Brand of SacrificeにInvent Animate、さらにはWage Warといったソリッド・メタルコア〜ヘヴィ・デスコアから多大なインスパイアを受けたそのサウンドは、とにかく地鳴りのように強烈なブレイクダウンを炸裂させる為に、数多くのエレメンツを散りばめられている。この作品を聴いている時には思い浮かばなかったが、のちに発表されたいくつかのシングルも合わせて見れば、Prompts に非常に近いヴァイブスを感じる。モッシュに特化したフレーズに絡みつくニューメタルコアのエレメンツ、Oceans Ate Alaskaを彷彿とさせるドラムパターンはまさに、という感じだ。

セルフ・プロモーションであること、加えてメンバーのヴィジュアルからかなりナードな気質が漂いまくっているところに親近感を覚えるリスナーも多いだろうが、もしかしたら2023年後半、さっぱり垢抜けたトレンド・バンドに成長している可能性もなくはない。

 

Sail’s End 公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/SailsEnd

 

 

第6位 : Defamed 『Blackblood』

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イタリア・ミラノのブラッケンド・デスコア・バンド、Defamed の6曲入りEP。2022年4月に公開された先行シングル「Crystal Prison」の衝撃は凄まじく、悪魔が乗り移ったかのようなデモニックなサウンドスケープが他のブラッケンド・デスコア勢を圧倒、激しく繰り返されるブレイクダウンとブラストビートの転調は、まさに静寂と躍動感の連続。この頃、Lorna Shore の「To The Hellfire」の衝撃を受け、世界各地でブラッケンド勢が軒並み刺激的なトラックの制作を追求していたこともあり、Defamedの存在はやや霞んでいたように思う。

このEP、6曲入りであるが「The Serpent」、「Divinities」、「The Dancer」とそれぞれミュージックビデオになっており、いささかリードシングル集と言った趣がある。作品としてのコンセプチュアルなまとまりというより、個々の楽曲で物語が完結しているような仕上がりなので、とっつきやすい作品であると思う。ブラッケンド・デスコアの現在地として最先端の作品である「Blackblood」、ブラッケンド・デスコア・シーンに次の変化が訪れる前にチェックしておくべし。

 

Defamed公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/wearedefamed

 

 

第5位 : Brand of Sacrifice 『Between Death and Dreams』

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カナダ/アメリカを拠点に活動するヘヴィ・デスコア・バンド、Brand of Sacrifice の先行シングルとして公開されていた「Exodus」、「Dynasty」を含む4曲入りの作品。収録曲全ての楽曲のミュージックビデオが公開されている。

この作品の中で最も印象的な楽曲は「Dynasty」だろう。冒頭、痺れるようなエレクトロニックな音色の中に「〜があっても、生き残るために戦います」という日本語の女性の声が組み込まれている。このフレーズはイントロだけでなく、楽曲の転調にも差し込まれ、この女性の声は随所でシンフォニックでオリエンタルなBrand of Sacrificeのスタイルを表現する為に出現する。

「Dynasty」について、フロントマンのカイルは、「今年の僕にとっての大きな挑戦は、絶望や怒りだけでなく、感情のスペクトルの異なる要素を音楽と歌詞に取り入れることだったんだ。この曲を通して、個人的なストーリーを表現したかった。恐怖を直視しながら個人的な障害を克服することに挑戦し、BRAND OF SACRIFICE全体と同じように、絶対に止められない力になることを歌っている」とコメントしている。また、ファンの反応はBorn of Osirisを想起させるスタイルだというものが多く、バンドが「テクニカルでヘヴィなデスコア」だけでなく、歌詞やサウンド面において非常に多くの挑戦をしていることが伺える。決してデスコア・シーンだけで評価されるようなバンドではなく、例えばこの作品のタイトル・トラックではThe Word AliveやWe Came As Romansにも接近するようなクリーンパートがキーリングになっている。

この先、Brand of Sacrificeは更に深化し、「ヘヴィなデスコア」から脱却していくかもしれないが、彼らの核となるもの、この先も変わらないものがこの4曲で浮き彫りとなっているように感じる。

 

Brand of Sacrifice公式ホームページ : https://brandofsacrifice.com/

 

 

第4位 : The Acacia Strain『Failure Will Follow』/ 『Step Into The Light』

『Failure Will Follow』

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『Step Into The Light』

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マサチューセッツ州を拠点に活動するデスコア/ハードコア・バンド、The Acacia Strainが異なる2枚のアルバム『Failure Will Follow』と『Step Into The Light』をそれぞれRise Recordsからリリース。この2枚はダブル・アルバムではなく、全く異なるコンセプト、そしてソングライティングのプロセスを経て製作されたものである。

本人たちは「デスコア」というレッテルを貼られることを嫌がっているようだが、図らずも彼らはデスコアのレジェンドだ。ハードコアとメタルをクロスオーバーさせる中で、ソリッドでバウンシーなモッシュ・リフを追求し続け、日夜ツアーに明け暮れ、その切れ味を磨き続けてきた。多くのThe Acacia Strainのファンが期待する作風に仕上がっているのが、『Step Into The Light』で、殺気立ったアトモスフィアが立ち込める中、黙々とギロチンのようなリフで切り刻んでいく。決して譜面に起こすことの出来ない、モッシュ・スピリットには感服させられる。

『Failure Will Follow』は、バイオレントなモッシュコアで培った至高のヘヴィネスを違った形で表現することにフォーカス。全3曲入り、どれも10分越えの大曲で「bog walker」に至っては17分という長尺曲。このくらいのボリュームだと、なんとなく楽曲の雰囲気はドゥーミーなものであると想像出来るが、しっかりThe Acacia Strainとわかるトレードマークも豊富に組み込まれており、無理矢理ジャンルとして形容するならば「ドゥーミー・モッシュコア」とか「ブルータル・ドゥーム・メタル」といったところだろうか。このアルバムでツアーしても間違いなくフロアは殺戮現場と化すに違いない。それも精神的に狂気をまとった、そんな危なさがある。

しばしばThe Acacia Strainのカタログを見渡すと、ドゥーミーなアプローチを見せることもあった。ただ今回のようにアルバムとしてとなると、キャリア初だ。結成から20年を超えても、まだまだヘヴィを追求し続けるThe Acacia Strainに脱帽。

 

The Acacia Strain 公式ホームページ + SNS : https://linktr.ee/theacaciastrain

 

 

第3位 : DEVILOOF 『DAMNED』

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ヴィジュアル系メタル・バンド、DEVILOOFのメジャーデビュー作。国内メタルコア・シーンをウォッチしていれば、ヴィジュアル系を通過していなくてもDEVILOOFの名前を耳にしたことがあるだろう。ライブを体感したことがあるのであれば、彼らのデスコア・バンドとしての高いポテンシャルに衝撃を受けたに違いない。

『DAMNED』はストレートなデスコア・アルバムとは訳が違う。もちろんベースにあるのはデスコアであることは間違いないが、細部に施されたアレンジや楽曲構成に驚くべきクリエイティヴィティが隠されている。「Damn」は、デスコアにニューメタルコアのエレメンツをクロスオーバーさせながら、展開の妙を持ってして楽曲を展開させていく。予想不可能な展開に引き込まれた先には、メジャーシーンとは縁遠いスラミング・ブルータルデスメタル/スラミング・ビートダウンの地獄のブレイクダウン/ビートダウンが待ち構えているのだから驚きだ。リフの鋭さでいったらExtermination Dismembermentに匹敵するレベルにあると思う。

ソングライティングにおける実験精神の高さに驚愕する楽曲がその後も続き、エンディングの「False Self」は「Damned」以上に独創的な楽曲で、ミュージックビデオも必見。DEVILOOFのミュージシャンとしての実直さを感じると共に、メタル、特にデスコアの奥深さを感じることの出来る作品だ。

 

DEVILOOF Twitter : https://twitter.com/_Deviloof_

DEVILOOF Instagram : https://www.instagram.com/official_deviloof/

 

 

第2位 : Chelsea Grin 『Suffer in Heaven』

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USデスコア・バンド、Chelsea Grin がニュー・アルバム『Suffer in Heaven』をリリースしました。2022年にリリースされた『Suffer in Hell』に次ぐダブル・アルバムの第2弾である。

Chelsea Grinは、2010年にアルバム『Desolation of Eden』でシーンに登場すると、それまでのデスコアをさらにヘヴィなものへとアップデート。2010年代中期にかけて盛り上がったダウンテンポ・スタイルのデスコアの礎として現代でもその存在は特別なものだ。

そんなChelsea Grinにとって2022年の『Suffer in Hell』、2023年の『Suffer in Heaven』のダブル・アルバムは、キーだったメンバーが抜け、新たな布陣で制作されている。2010年代のデスコア・シーンのキーとして活躍したバンドのフロントマンであった Alex Koehler が、2018年にアルコール依存症を含むメンタルヘルスの問題によってバンドを脱退、Alexと同様、ドラム/ボーカルとしてバンドの中心メンバーとして存在感を見せつけていた Pablo Viveros が一時的にバンドを離脱している。Chelsea Grinサウンドの2つの重要な個性を失ったものの、この『Suffer in Hell』、『Suffer in Heaven』は様々なメディアで高い評価を受けている。

高い評価を受けている理由のひとつに新たに加入したTom Barberが現代メタル、特にデスコア、メタルコア・シーンにおいて高いカリスマ性を持っていることが挙げられる。TomはChelsea Grinの他にニューメタルコア・プロジェクトDarko US のメンバーであり、過去には Lorna Shore にも在籍していたシンガー。Alexとはそのキャラクターは異なるが、Tom参加後初のアルバム『Eternal Nightmare』でChelsea Grinサウンドとの親和性の高さを見せつけた。特にブラストビート・パートなどを取り入れ、ブラッケンド・デスコアにも近いサウンドにおけるTomのボーカルのフィット感は素晴らしい。Pablo Viverosの穴を埋めるセッション・ドラマーには、Glass HandsのNathan Pearsonが参加しており、こちらも文句なしと言えるだろう。

『Suffer in Heaven』は『Suffer in Hell』よりも、これまでのChelsea Grinが鳴らし続けてきた独自性を随所に散りばめつつ、Tomを新しいChelsea Grinのフロントマンとして迎え、新時代のChelsea Grinを作っていくという気概を感じさせてくれる。ミュージックビデオにもなっている「Fathomless Maw」はどこか「Playing with Fire」を彷彿とさせるキャッチーさを持ちながら、Tomのスクリームを生かしたファストなフレーズをエンディングに差し込んでいる。「Yhorm The Giant」から「Sing To The Grave」の流れは、『Suffer in Hell』から『Suffer in Heaven』の流れの中で最もエキサイティングな高揚感に溢れている。

2023年のChelsea Grinに溢れている空気感が明るくて良い。Tom Barberのカリスマ性がこのバンドとして発揮されるのはとても楽しみだし、Darko USとの棲み分けをどうしていくかをファンに注視させることは、デスコアとニューメタルコアの未来にとっても明るい。

 

Facebook: https://www.facebook.com/ChelseaGrinMetal

Instagram: https://www.instagram.com/chelseagrinofficial/

 

 

第1位 : Suicide Silence 『Remember… You Must Die』

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『Remember… You Must Die』は、USデスコア・ベテラン、Suicide Silence が通算7枚目のスタジオ・アルバムで、Century Media Recordsからのリリース。

近年のSuicide Silenceと言えば、OGスタイルへとじわじわ回帰してきたにも関わらず、黄金期のカリスマMitch亡き後は正当に評価されてこなかった。Mitchの死後、Eddieへとボーカルが代わりリリースされた『You Can’t Stop Me』はファンがMitchの幻影を追いかけ、Suicide Silenceの新たなスタートを祝福する余裕がなかったし、その後リリースされたセルフ・タイトル『Suicide Silence』はデスコアから脱却しニューメタルへと舵をきったことで批判を食らった。もう6年も前のことなんだけど、やっぱりSuicide Silence、特にMitchのファンは失望してしまい以降のリリースをちゃんと聴いてないというリスナーも多いはず。これは海外のレビューをみてても感じたことだ。

Eddieが加入して、今年で10年になる。Suicide Silenceが始まってMitchがなくなるまで10年なので、在籍年数が並んだ。それでもまだ、EddieがSuicide Silenceのフロントにいることに違和感を感じてしまう人も多いかもしれない。前作『Become the Hunter』からSuicide SilenceはOGスタイルのデスコアへと戻り始め、本作『Remember… You Must Die』では完全に『No Time to Bleed』期のスタイルへと回帰した。「Mitchの幻影ばかり追いかけていないで、現在進行形のSuicide Silenceを追いかけろ」と、心から言えなかったのは今日まで。これからは今のSuicide Silenceを心から応援したいと思うし、好きだと言いたい。言うべきだ。

アルバム・タイトルからして、本作はオープニングから異常な殺気が漂う。2022年9月に先行シングルとしてアルバムのタイトル・トラック「You Must Die」はこれぞSuicide Silenceと言うべき完璧な楽曲で、墓場で演奏するメンバーが「You Must Die」、「Fuck Your Life」と叫びながら老化して最後に全員死ぬというディレクションがシンプルで良い。アメリカ人っぽいし、こういう無茶苦茶な思想とか投げやりなところがデスコアのコアなエナジーだと思う。

もし誰かがSuicide Silenceはもう過去のバンドだと言っていたら、このアルバムを聴いていないと言えるだろう、話を聞かなくていい。このミュージックビデオのコメントに書き込まれている「Mitchがこれを聴いたら喜ぶだろう」と言うのが、このアルバムの全てだ。

メタルコア 2022年下半期のベスト・アルバム (後編)

2022年にリリースされたメタルコアの作品の中からRIFF CULTが気に入ったものを年間ベスト・アルバムとしてアルバムレビューしました。素晴らしい作品が多く、前編、後編に分けて記事を書いていますので、上半期のレビューと合わせてチェックしてください (リンクは記事の最後に掲載しています)。今回は後編!

 

RIFF CULT Spotify プレイリスト : https://open.spotify.com/playlist/280unJx37YbHbRvPDlZxPi?si=3d0db24716c648cb

RIFF CULT YouTube プレイリスト : https://www.youtube.com/playlist?list=PLLijetcgxQ4PZZMlhlpExxiNrr5wSYBjj

 

 

The Devil Wears Prada – Color Decay

メタルコアとスクリーモが混ざり合い、新しいスタイルを形成し始めた2000年代中期から後期にかけて、The Devil Wears Pradaはシーンの代表的な存在であった。通算8枚目のアルバムとなる『Color Decay』まで次第にダークな世界観を推し進め、それはメタルコア・シーンの発展、トレンドとは全く別の路線として独自性を失うことなくそのサウンドに磨きをかけてきた。『Color Decay』は緊張感こそピンと張り詰めているものの、「Salt」や「Sacrifice」といった初期The Devil Wears Pradaの面影が見え隠れするキャッチーなキラー・チューンを中心に、メロディックな楽曲で構成されている。この手のサウンドのオリジネイターでありながら、簡単にフォロワーを生み出さない創造力は神々しいMike Hranicaの存在感が放つ圧倒的なパワー故。

 

 

 

Parkway Drive – Darker Still

過去6作品全てゴールド・アルバムを獲得し、最大級のメタルの祭典「WACKEN」でヘッドライナーを務めるなど、シーンの頂点へと昇り詰めたParkway Drive。そんな彼らが7作目にして「これがバンドが20年間目指してきたパークウェイ・ドライヴだ」と言い切る本作は2022年を象徴するメタル・アルバムとなった。

 

アルバム発売前にリリースされたアルバムのタイトルトラック「Darker Still」は、これまでのパークウェイ・ドライヴとは一線を画すもので、キャリアを象徴するようなパフォーマンスが随所に見られる、壮大なスケール感のある曲に仕上がっている。口笛とアコースティック・ギターで始ま李、ギターソロ、幽玄なコーラスとストリングス、そしてマッコールの驚異的なヴォーカルを通して、リスナーを圧倒的な旅へと誘う。マッコールはこの曲について次のようにコメントしている。

 

「愛。時間。死。我々の存在を構成する偉大な決定的要素。この曲は最もシンプルな人間の音から始まり、これらの要素を表現しながら音楽の旅が成長し、クレッシェンドに達した後、避けられない旅の結末に直面する。夜は暗くなる…さらに暗くなる。」ウィンストン・マッコールの家のキッチンには冷蔵庫があり、その片面にはトム・ウェイツの言葉が飾られている。「美しい旋律が恐怖を語る。」マッコールはこの言葉は自分自身をよく表していると言う…… 続きはこちら (https://riffcult.net/2022/09/09/parkway_drive-darker_still/)

 

 

 

Boundaries – Burying Brightness

Peripheryが運営する3DOT Recordingsへ移籍しリリースされたセカンド・アルバム。鬱屈したメンタルヘルスをテーマに混沌とした頭の中のモヤモヤを描くようにして、予測不可能なグルーヴを鋭いハードコア・リフで切り開いていく。モダン・メタルコアの輝きを放つ「This Is What It’s Like」、デスコアに接近する「My Body Is A Cage」、エンディングを飾る「The Tower」ではDeftonesばりの瞑想ポストメタルを奏で、メタルコア/ハードコアに留まらない魅力を醸し出している。

 

 

 

Orthodox – Learning To Dissolve

テネシー州ナッシュビルを拠点に活動するメタルコア・バンド、OrthodoxのCentury Media Recordsとの契約後、初となるアルバム。本作『Learning To Dissolve』は、2017年のファースト・アルバム『Sounds of Loss」から始まった流れに句読点を打つような作品。結成当初からORTHODOXは、ボーカリストAdam Easterlingの鈍重でKornのジョナサン・デイビス風のシャウトSlipknotを彷彿とさせるリフを混ぜ合わせ存在感を見せつけてきた。しかし、Knocked LooseやVein.FMのサウンド同胞のように、90年代/00年代の影響がある一方で、ORTHODOXは単に影響を受けたものに敬意を表しているのではなく、それを超えてくる。

 

「俺たちはハードコアを聴いて育ったわけじゃない。俺たちはLinkin ParkSystem of a Downのようなバンドを聴いて育ったんだ」。とAdamは話す。『Learning to Dissolve』では、それらの影響が、アルバムのオープニング・トラックである「Feel It Linger」から、クローズの「Voice in The Choir」のパーソナルでオーラルなメルトダウンまでたっぷりと練り込まれてある。

 

 

 

Architects – the classic symptoms of a broken spirit

格式高いRoyal Albert HallでのライブやAbbey Road Studiosでの録音音源のリリースなど多忙を極めていたArchitectsであったが、同年、通算10枚目となる本作をリリースした。前作『For Those That Wish To Exist』を足掛かりとし、メタルコアからヘヴィロックへと変貌を遂げたことには賛否両論あるものの、バンドのトレードマークとも言えるメロディックなシャウトは健在。大舞台での熱演が目に浮かぶ「deep fake」や「when we were young」といった新時代のアンセムは少し先のロックの未来を見るようだ。

 

 

 

 

Electric Callboy – TEKKNO

本作は2019年にリリースしたアルバム『Rehab』以来の新作で、Eskimo Callboyから改名後、初のアルバムとなる。「Hypa Hypa」「Pump It」が大ヒット、Eskimo Callboyは瞬く間にメタル・シーンを飛び出しグローバルなバンドへと成長した。2021年12月、彼らの名が広く知れ渡るようになったことをきっかけに、バンドは不快な歌詞を持つ過去曲をプラットフォームから削除、さらに「Eskimo」という単語がアラスカのイヌイットやユピックの人々に対する蔑称と捉えられるため、「Electric Callboy」へと改名することを発表した。ここに至るまで、バンドはイヌイットやユピックに関する歴史をファンと共に学ぶようYouTubeで動画を発信するなどした……。 続きはこちら (https://riffcult.net/2022/09/09/electric_callboy-tekkno/)

 

 

 

Fire From The Gods – Soul Revolution

Better Noiseへと移籍。ニューメタルコアの盛り上がりとは別にFire from the Godsは古き良きニューメタル/ラップメタルの攻撃性を現代的にアップデートさせた。自由で無駄がなく、それでいて豊かに洗練されたクリーン・ヴォイス、Rage Against the Machineを彷彿とさせるひりついた緊張感のあるフロウが醸し出す伸縮性のあるAJのボーカルラインは唯一無二。「Soul Revolution」といったアグレッシヴなキラーチューンから「Be Free」、「Love is Dangerous」といったニューメタル・バラードまでバンドの持てる全てを注ぎ込んだ一枚。

 

 

 

HOSTAGE – MEMENTO MORI

2018年ドイツ・アーヘンで結成。ボーカリストNoah、ギター/ボーカルDavid、ギタリストNico、ドラマーMarvinの4人編成で本作がデビュー・アルバムとなる。ALAZKAを筆頭にメロディック・ハードコアやポストハードコアの風合いがさりげない存在感を放ち、しなやかに弾むメロディックなリフと伸びやかなクリーン・ヴォイスが印象的。ソリッドなヘヴィチューン「Fantasy」やANNISOKAYのChristophをフィーチャーした「Game Over」といったコラボトラックもモダンさと素朴さのバランス感覚に優れており、アルバムに充実した印象を与える。

 

 

 

 

Love Is Noise – Euphoria, Where Were You?

FEVER333Nova Twinsが所属する333 Wreckordsのニューカマーとして表せたLove Is Noise。Loathe以降、イングランドのメタルコアの新潮流となったシューゲイズ・メタルコアの新鋭としてこの作品の芸術性は後続のバンドに幾つものヒントを与えている。まるで目に見えない電波に触れたかのようにしびれ、めまいを起こすほどのうねりを見せるリフがノイズに飲み込まれていくかのような「Movement」はシューゲイズの幻惑的な光も落とし込んでいく。

 

 

 

2022年の年間ベスト・アルバム記事

メタルコア (全期 前編)

メタルコア (全期 後編)

デスコア (上半期)

デスコア (下半期)

スラミング・ブルータル・デスメタル (上半期)

スラミング・ブルータル・デスメタル (下半期)

ゴアグラインド

ブルータル・デスメタル (上半期)

ブルータル・デスメタル (下半期 前編)

ブルータル・デスメタル (下半期 後編)

テクニカル・デスメタル (全期 前編)

テクニカル・デスメタル (全期 後編)

 

メタルコア 2022年下半期のベスト・アルバム (前編)

2022年にリリースされたメタルコアの作品の中からRIFF CULTが気に入ったものを年間ベスト・アルバムとしてアルバムレビューしました。素晴らしい作品が多く、前編、後編に分けて記事を書いていますので、上半期のレビューと合わせてチェックしてください (リンクは記事の最後に掲載しています)

 

RIFF CULT Spotify プレイリスト : https://open.spotify.com/playlist/280unJx37YbHbRvPDlZxPi?si=3d0db24716c648cb

RIFF CULT YouTube プレイリスト : https://www.youtube.com/playlist?list=PLLijetcgxQ4PZZMlhlpExxiNrr5wSYBjj

 

 

We Came As Romans – Darkbloom

5年振り通算6枚目フル。2018年にWe Came As Romansのクリーンボーカルを務めたKyle Pavoneが急逝。新たなシンガーを迎えることはなく、これまでスクリームを担当してきたDaveがクリーンパートを兼任する形で制作が行われた。Kyleへのトリビュート・アルバムであるものの、そのサウンドに悲壮感はなく、むしろ現代的なエディットを施し、攻撃的なリフのうねるようなグルーヴが明暗表現を加速させている。Caleb Shomoをフィーチャーした「Black Hole」ほか暗い色彩の中に輝きを映し出す楽曲がひしめき、歩みを止めないバンドの真摯な気持ちを表している。

 

 

 

Miss May I – Curse Of Existence

Miss May Iは名作『Monument』以降、メタルコア史に自ら打ち立てた金字塔を越えられていないというコアなファンからの声もちらほらあった (といってもセールス的にはずっと成功してきた)。個人的にはそうは思わないが、『Monument』が今後数十年に渡り語り継がれていくアルバムであること、そして彼らがシーンに与えたインパクトが強烈だったことは間違いない。そんな『Monument』に匹敵する凄まじいサウンドで、2022年にMiss May Iは再びシーンに戻り、そして今バンド史上最高傑作と言える『Curse Of Existence』を発表した。

 

Miss May I にファンが求めるのは、ソリッド&メロディックなリフアンセム的なコーラス、そして強烈なブレイクダウンといったところだろうか。オープニングを飾る「A Smile That Does Not Exist」を聴けば、すぐにこのアルバムの力強さに圧倒されるはずだ。ブラストビートにシュレッダーリフ、Leviのスクリームが炸裂していく。続く先行シングルとしてリリースされた「Earth Shaker」や「Bleed Together」とファストなキラーチューンが立て続けに繰り広げられていく。特にこの2曲のブレイクダウンがアルバムのハイライトとも言えるパワーがある。シュレッドなギターと印象的なコーラスのハーモニー、クラシックなメタルコア・ブレイクダウンを搭載した「Into Oblivion」は、個人的にアルバムのベスト・トラックで、Bring Me The HorizonArchitectsなどに匹敵するスタジアム・ロック的なスケールがたまらない。思わず「INTOOO OBLIVIOOON!!!」と叫ばずにはいられないはず。

 

 

正直言って、全曲キラーチューン過ぎる。ミュージックビデオとして先に公開されている「Free Fall」、「Unconquered」は余裕があれば歌詞にも注目して欲しい。「Free Fall」はインポスター症候群について歌った曲であり、恐怖心を押し殺し飛躍を遂げた人たちのアンセムだ。インポスター症候群とは、自分の能力や実績を認められない状態を指し、仕事やプライベートを問わず成功していても、「これは自分の能力や実力ではなく、運が良かっただけ」「周囲のサポートがあったからにすぎない」と思い込んでしまい、自分の力を信じられない状態に陥っている心理傾向のこと。フレーズがまるで会話のように掛け合いながら展開していく。完璧なエンディングを聴き終えた後、『Curse of Existence』がMiss May Iの過去最高傑作だ!と思うリスナーは多いはずだ。久々にモダンなメタルコア・アルバムでガツンとくる作品だったと思う。彼らは「あの頃のバンド」ではなく、永遠のメタルコア・ヒーローだ。

 

 

Varials – Scars For You To Remember

3年振りとなるサード・アルバム。これまでアルバム毎に異なるスタイルを提示してきたVarials、本作はニューメタル/インダストリアル・メタルのエレメンツをスタイリッシュにメタルコア/ハードコアに注入している。ミュージックビデオになっている「.50」はSlipknotから細胞分裂したかのような強靭なグルーヴを見せ、ほとんどマシンガンとも言える鋭利なドラミングが「Phantom Power」ではドラムンベースに置き換わる瞬間も。鋭さを追求しメタルコアの造形表現を極めつつも、これまでの実験的なアイデアもVarialsらしさの強いアクセントとなっている。

 

 

 

I Prevail – TRUE POWER

3年振りとなるサード・アルバム。前作『Trauma』はグラミー賞2部門にノミネートされ、シーンを牽引するアリーナ・バンドへと成長を遂げた。I Prevailの基本的スタイルとも言えるエレガントに装飾されたシンセサイザー/オーケストレーションとハードロックに接近しながらソリッドに刻み込まれるリフ、そしてBrianとEricによるツインボーカルの圧倒的な存在感は本作でも聴くことが出来、Beartoothに代表されるようなロックンロールのフックが何より素晴らしい。「Body Bag」といったヘヴィに振り切った楽曲からスタジアム級のスケールを誇る「Bad Things」ほか、彼らの現在地が分かる一枚。

 

 

 

Oceans Ate Alaska – Disparity

前作『Hikari』から5年、2016年に脱退したオリジナル・ボーカリストJames Harrisonが2020年に復帰し制作された通算3枚目フルレングス。シングル「Metamorph」、「New Dawn」、「Nova」はもちろん、I, PrevailのEric Vanlerbergheをフィーチャーした楽曲「Dead Behind The Eyes」など、期待を裏切らない楽曲がたっぷりと収録されている。正直、Oceans Ate Alaskaにとっても、我々リスナーにとっても、『Hikari』から5年という時間はとても長かった。それは単純な長さに加えて、パンデミックなどによるダメージも大きい。センセーショナルなFearless Recordsからデビューであったからこそ、「次、いったいどんな作品を仕上げてくるのか」という高まった期待が一度落ち着いてしまうと、なかなかそれを超えてくる作品は出てこない。

 

しかしどうだろう、今このレビューを読みながら『Disparity』を聴いている方は、オープニング・トラックの「Paradigm」を再生した瞬間、Oceans Ate Alaskaに期待するものを得られた喜びを噛み締めていることだろう。5年をかけて作り上げたと言われれば納得 (おそらくそれよりももっと短期間で完成させられている) の作品で、個人的には楽曲「Sol」の完成度の高さには驚いた。アルバム収録曲の総時間は30分。そこに詰め込まれたOceans Ate Alaskaらしいアイデア、ドラマーChrisの卓越されたドラムプレイ。たとえ次のアルバムがさらに5年後だとしても、5年間聴き続けても飽きないような作品になっているように思う。じっくりじっくりと聴き返したい作品。

 

 

 

He Is Legend – Endless Hallway

通算7枚目となるフル・アルバム、先行シングルとして発表された「THE PROWLER」や「LIFELESS LEMONADE」といった楽曲は現代的なメタルコアのエッジ、ヘヴィネスと言う部分に溢れており、これまでのHe is Legendファンは驚いたことだろう。そして「He is Legendってこんなに凄いのか」と名前だけ知っていたようなリスナーの興味も引いたはずだ。彼らは日本において、そして世界的においてもその実力が高く評価されてこなかった。いわゆる過小評価バンドだった。ポテンシャルは十分で芸術的な存在感が「キャッチー」と言うキーとはやや離れていたからではないかと考える。このアルバムは彼らが長いキャリアの中で培ってきた芸術的なカオスも見せる快作、コアなファンにこそ聴いてほしい一枚。

 

 

 

Fit For A King – The Hell We Create

通算7枚目フル。ドラムにTrey Celayaが加入してから初となる作品は、プロデューサーにDrew Fulkを起用してレコーディングされた。コロナウイルスによるパンデミックにより生じた精神的な葛藤を描いた「Falling Through the Sky」など、アーティスティックな歌詞世界も魅力だ。オープニングを飾るタイトルトラック「The Hell We Create」に代表されるように、バウンシーなグルーヴはそのままにメロディックメタルコアへとそのスタイルを微細に変化。更なる高みを目指すFit For A Kingの野心溢れる仕上がり。

 

 

 

Stray From The Path – Euthanasia

2019年にリリースした前作『Internal Atomics』から3年振りとなる本作は、話題となった先行シングル「Guillotine」を含む強烈な全10曲入りだ。Stray From The Pathのメンバーは、「バンドは常に、抑圧に対して発言する場として自分たちの歌を使ってきた」と言う。アメリカの公安にまつわる多くの問題、特に警察活動への疑問や怒りをメッセージに長年ソングライティングを続けてきたバンドは、こうした問題が解決される兆しの見えない混沌とした現世への怒りの高まりに呼応するように、その勢いを加速させている。

 

ギロチンをバックにプレイするStray From The Pathが印象的な「Guillotine」のミュージックビデオ。結成から20年以上が経過し、積み上げてきたバンド・アンサンブルはまるで生き物のようにグルーヴィだ。ニューメタルとハードコア、そしてラップが巧みにクロスオーバー、音楽的にも現代のメタルコア・シーンにおいて彼らの存在は重要だ。同じくミュージックビデオになっている「III」では警察に扮したメンバーが皮肉めいたアクションでアメリカ警察を口撃する。まるでマシンガンのようにして放たれるラップのフロウがノイズに塗れたニューメタル/メタルコアによって何十にも攻撃力を増していく。

 

アメリカでの彼らの絶大な人気を見れば、市民の代弁者とでもいうべきスタイルを取るバンドであると言える。もちろん、音楽的にもニューメタルコアに非直接的ではあるが影響を与えており無視できないレジェンドだ。アルバムに込められたメッセージを紐解くことは、アメリカに生きるということの現実的な困難や不安を感じることだ。それは日本に住む僕らも共感できるものなのかもしれない。

 

 

 

The Callous Daoboys – Celebrity Therapist

The Callous Daoboysは、キーボーディスト、ヴァイオリニストを含む7人組、ライブによってはDJやサックスもいたりとそのメンバー・ラインナップはこれまで流動的だったが、現在は7人組とのこと。そのアーティスト写真からは一体どんなサウンドを鳴らすのか想像も出来ないが、2000年代中期から大きなムーヴメントとなったカオティック・ハードコア/マスコアのリバイバル的なサウンドを鳴らす。The Callous Daoboysは、The Dillinger Escape Plan、Norma Jean以降のiwrestledabearonceやArsonists Get All The Girls辺りのリバイバルを加速させる存在と言えるだろう。最も彼らに近いのがiwrestledabearonceで、特にベースラインのうねり、コーラスワークからは強い影響を感じる。

 

「What Is Delicious? Who Swarms?」はぜひミュージックビデオを見て欲しい。アルバムのキートラックでバンドの代表曲でありライブでもフロアの着火剤的な役割を担う楽曲。このビデオのディレクション、どこかで見たことがあるなと思ったのですが、Arshonists Get All The Girlsの「Shoeshine For Neptune」を若干意識しているのかもしれない。この「Shoeshine For Neptune」も15年前の名曲。マスコアも一周回ってリバイバルしてもおかしくないし、彼らがSeeYouSpaceCowboyやIf I Die First辺りと共にブレイクすれば十分盛り上がるだろう。彼らのブレイク次第では2023年のシーンの状況は大きく変わってくるかもしれない。

 

 

 

Crooked Royals – Quarter Life Daydream

ツイン・ボーカル有するニュージーランド・オークランド出身のプログレッシヴ・メタルコア、Crooked Royalsのデビュー作はPeripheryが運営する3DOT Recordingsからのリリース。「Glass Hands」や「Ill Manor」といった楽曲に代表されるAfter The BurialとPeripheryをクロスオーバーさせつつ、NorthlaneやErraの持つアトモスフィリックなエレメンツを燻らせたサウンドは、シャウトとクリーン・ヴォイスが鮮やかに交差、ハリと透明感に満ち溢れたサウンドに思わず聴き惚れてしまう。

 

 

メタルコア名盤 TOP10 (2022年上半期)

ブルータル・デスメタル 2022年の名盤 (後編)

2022年にリリースされたブルータル・デスメタルの作品の中から素晴らしかったアルバムを年間ベスト・アルバムとしてピックアップしディスクレビューしました。前編も合わせて読んでみて下さい。

 

2022年にリリースされたブルータル・デスメタルの良曲をまとめたYouTubeプレイリスト

 

RIFF CULTのSpotifyプレイリスト「All New Brutal & Tech Death Metal」をぜひフォローして下さい。

 

ブルータル・デスメタル 2022年の名盤 (前編)

 

Syphilic – …And Justice For None

デトロイト在住のBrian Forgueによる孤高のワンマン・ブルータル・デスメタル・プロジェクト、Syphilic の通算9枚目・フルアルバム。長きに渡りSyphilicのおどろおどろしいサウンドをアートワークに落とし込むTony Cosgrove のえぐいアートは本作も素晴らしいですね。

 

Syphilic がFacebookに投稿しているレコーディングの様子がヤバいです

 

一聴すると打ち込みドラムが乱雑に、そして単調に叩き込まれる2010年代前後のワンマン・ブルータル・デスメタルに聴こえるかもしれませんが、その単調さが生み出す不気味さや無機質さがSyphilicの良さで、打ち込みのつぎはぎっぽさは、うねり続けるリフが上手くグルーヴに昇華しています。それを面白いと思えたら、Syphilic ハマると思います。この感じはバンドには出せない。

 

 

Organectomy – Nail Below Nail

ニュージーランド出身の5人組、Organectomy の通算3枚目・フルアルバムは前作に続きUnique Leader Records からのリリース。スラミング・スタイルのバンドですが、そこまで大胆にスラムに特化しているわけではなかったので、スラミング・ブルータル・デスメタルの年間ベスト・アルバムではなく、ブルータル・デスメタルの年間ベストとして、こちらにレビュー書きたいと思います。

 

ボーカルのTylerのソロプロジェクトとして始動

 

Secularityというテクニカル系バンドにも在籍するギタリスト Matthew Bolch と Sam McRobert のコンビが良く、単なるスラム・バンドでないセンスの良さからUnique Leader Records も食い付いたんではないかと思います。重量感のあるスラム・リフの隙間に差し込まれるメロディックなエレメンツはデスコアっぽさもあり、特に「Breeding Chaos」はDespised Iconを彷彿とさせるリフが面白いです。2010年代前後、The FacelessやDespised Icon辺りハマってた人、Organectomy オススメです。

 

 

Anal Stabwound – Reality Drips Into The Mouth Of Indifference

アメリカ・コネチカット在住のミュージシャン Nikhil Talwalkar によるワンマン・プロジェクト Anal Stabwound のセカンド・アルバム。Nikhil はなんと2005年生まれ、弱冠17歳の若きブルータル・デスメタラーで、2018年にこのプロジェクトを始動させたそう。となると13歳で始めたということですね。凄すぎる…

 

Nikhil Talwalkar

 

自身のYouTubeチャンネルでDefeated Sanity の完璧なドラム・カバーをアップしていることからも分かるように、Anal Stabwound のサウンドもDefeated Sanity を彷彿とさせるプログレッシヴなビートがカオスに渦巻くブルータル・デスメタル。全ての楽器を自身でこなし、複雑怪奇な楽曲を鮮やかにプレイ。様々なプロジェクトにフィーチャリング・ゲストとしても参加しており、今後シーンのキーマンになりそうな人物。

 

 

Phalloplasty – 27 Club

 

ラスベガス在住の Zack “Plasty” Shaw によるワンマン・プロジェクト、Phalloplasty の5年振り4枚目となるフル・アルバムはCDN Recordsがリリースを手がけた。最近、ブルータル・デスメタルって、ソロ・プロジェクト向きな音楽なのかなと思ったりしてます。前述のSyphilic やAnal Stabwound も楽曲構成から「一人で作ってるからこそ作り上げられるサウンド」であるというのが伝わってくる。

 

Zackは打ち込みバックにライブも一人で行う

 

Phalloplasty は人力では不可能なウルトラ・マシーン・ドラムの音速ブラストビートを中心に、非常にグルーヴィなリフを織り交ぜていく。ところどころ適当なのが味になっているのも10年以上、毎年のようにリリースを続けてきたからだろう。

 

 

 

Inhuman Depravity – The Experimendead

 

トルコ・イスタンブールの女性ボーカル・ブルータル・デスメタル・バンド、Inhuman Depravity のセカンド・アルバム。毎週まとめてチェックすることを日課にしているSlam WorldwideのYouTubeチャンネルで見つけてからこのアルバムの存在を知りましたが、かなり良くて結構リピートしてました。

 

ボーカルのLucy Ferra、美しい

 

特に良さを感じたのはドラム。ファストな楽曲が多い中で細部に至るまでセンス良く小技を差し込みます。ミュージックビデオにもなっているアルバムのタイトル・トラック「Obsessed with the Mummified」はInhuman Depravityの魅力が炸裂してます。ドラムについでベースもテクニカルで、ギターのリフのグルーヴィ。ボーカル Lucy Ferra も華があってフロントマンにぴったり。Abnormality が解散し、女性ボーカル・ブルデスはStabbingとInhuman Depravityが頭角を表してきた感じですかね。他にも良さげなバンドあれば紹介したいです。

 

 

Impure Violation – Knee Deep In The Dead

オーストラリア出身、Ungodly Ruins Productionsから7年振りとなるセカンド・アルバム。OmnioidのボーカルEwza Lambertがギター/ボーカルを兼任し、Egregious、Impulsive GluttonyのAlexey Mamontovがドラムを務めるユニット。

アートワークからも分かるように、マシンガンをぶっ放すかのようなブラストビート (そして実際に炸裂する銃撃音)の野蛮さ、それを凌駕するかのようにダイナミックなリフとガテラルがグルーヴィに刻み込まれていく。まとまりもありつつ、カオティックな雪崩展開もあり聴きごたえ十分。

 

 

 

Psychophagia – Arousal Euphoric Debauchery

 

Apoptosis GutrectomyのDeni、Julianusからなるブルータル・デスメタル・ユニット。元々はトリオ編成でアメリカ在住のメンバーがいたようだが、Deniが全てのパートを担当しJulianusがボーカルを担うといったスタイルへと落ち着いた。本作はEPであるが、充実した内容で聴きごたえたっぷり。いわゆる「インドネシアン・ブルータル・デスメタル」の直球を鳴らすバンドで、突進し続けるブラストビートが微細に揺れつつ、ゴリゴリとかきむしるようなリフが蠢く。重さではなくスピードを楽しむブルータル・デスメタルの好盤と言えるだろう。

 

 

 

Deformatory – Harbinger

 

カナダ・オンタリオ出身の中堅、Deformatoryが昨年リリースしたアルバム『Inversion of the Unseen Horizon』から間髪入れずにリリースしたEP。Metal Archivesではテクニカル・デスメタルとジャンル分けされているが、じっくりと聴き込んでみると彼らのサウンドは「テクニカル・ブルータル・デスメタル」とした方がしっくりくる。

 

テクニカル・デスメタルの名産地カナダらしいドラミングは驚異的なスピードで叩き込まれ、時に光をも追い越すようにしてペダルが踏み込まれていく。個性的なリフはメロディックであるが、超高速なチェーンソーリフにも聴こえてくる。コンパクトなサイズながら詰め込まれた音の数はダブル・アルバムくらいかるかもしれない。ドラマ性を排除しつつもメロディアスな面白い一枚。

 

 

Desecrate The Faith – III

 

テキサス出身の5ピース Desecrate The Faith の通算3枚目フル・アルバム。アルバムタイトルはシンプルに「Ⅲ」なのはちょっと簡素すぎかなとは思うが不気味なアートワークから漂う名作の香りに釣られ腰を据えて聴きたくなる。まず把握しておきたいのが豪華なメンバーラインナップ。ボーカルはGorgasmのJohn Hull、Brand of SacrificeやEnterprise Earthといったデスコアの第一線で活躍するバンドで活躍し、過去にはRings of SaturnやInternal Bleedingでそのブルータル魂を炸裂させてきたドラマーMike Caputoが中心となっている。

 

 

純粋にデスメタルをブルータルにプレイしたキャッチーなサウンドは、Johnのディープなガテラルが圧倒的な存在感を放ち、じっとりとグルーヴを巻き上げていく。デスメタリックなギターソロも流石の一言。

 

 

Vaginal Addiction – Indulging In Barbarism

カナダ・ケベックのアンダーグラウンド・ブルータルデスメタル、Vaginal Addictionのセカンド・アルバム。バンド名、アートワークから漂う血生臭い下劣さが好きなのであれば、サウンドも間違いなく気にいるだろう。派手なスピード感、ヘヴィさはないものの、腐臭漂うガテラルとスプラッター/ポルノビデオのサンプリングを雑多に盛り込み、ドロドロしたリフをキャッチーに展開させていく。その展開の要となる転調で差し込まれるリフやドラミングに才能を感じる。何度も聴いているうちに癖になる、玄人向けの作品。

 

 

テクニカル・デスメタル 2022年の名盤TOP10 (前編)

2022年にリリースされたテクニカル・デスメタル (Technical Death Metal) の中から優れた作品をピックアップし、年間ベスト・アルバムとしてレビューしました。中にはプログレッシヴ・デスメタル、テクニカルだけどスラッシュ・メタルと呼ばれる作品も含まれていますが、それぞれのジャンルにおいてテクニカルさが際立つバンドはテクニカル・デスメタルとしてレビューしています。レビュー数が多いので、前編と後編に分けてお送りいたします。過去の年間ベスト記事と合わせてお楽しみ下さい!

 

テクニカル・デスメタル 2022年の名盤TOP11 (後編)

テクニカル・デスメタル 2021年の名盤15選

テクニカル・デスメタル 2020年の名盤 10選

 

シングルリリースのみのアーティストなどは、YouTube、Spotifyプレイリストにまとめていますので、そちらを聴き流しながら記事を読むのもオススメです!

 

 

 

Revocation — Netherheaven

4年振りのリリースとなった通算8枚目フルレングス。ギタリストDanの脱退、そしてコロナウイルスによるパンデミックの影響はRevocationのソングライティング、レコーディングに大きな変化をもたらした。Davidはパンデミック期にエンジニアリングを研究、アルバム通じて初めて自身でプロデュースを行った。アートワークからも分かるようにサタニックなデスメタルを全面に押し出し、クラシックな「Diabolical Majesty」からミッドテンポの「Godforsaken」など、幅広いデスメタル・スピリットを聴かせてくれる。エンディングを飾る「Re-Crucified」はアルバムのキーとも言えるキラーチューン。

 

Revocation、バンド史上最もデスメタリックなニュー・アルバム『Netherheaven』をリリース!

 

Rings Of Saturn — Rings Of Saturn

カリフォルニア州ベイエリアを拠点に活動するテクニカル/プログレッシヴ・デスメタル/デスコア・バンド、Rings of Saturn (リングス・オブ・サターン) 。オリジナル・アルバムとしては通算6枚目で、初期のアヴァンギャルドな超絶テクニカル・デスメタルからプログレッシヴ・スタイルへと大幅にスタイルチェンジ。どこかPolyphiaを彷彿とさせる流麗なサウンドをベースに、随所でソリッドなデスコア・エレメンツを散りばめる、Rings of Saturnの新たなチャプターを予感させる仕上がりとなっている。

 

 

Rings of Saturn、バンド名を冠した新作『Rings of Saturn』リリース!

Spire Of Lazarus — Soaked In The Sands

2016年前身バンドDayumを結成。2020年にSpire Of Lazarusへと改名している。Dayumから3枚目となる本作はDayumからのコンビであるギタリストJuliusとベーシストThomasに加え、Psalm of AbhorrenceのボーカリストJonが加入し、Juliusがドラムを兼任している。オリエンタルなオーケストレーションが嵐のように吹き荒ぶ中、目の覚めるようなブラストビートで駆け抜けていく。スウィープ、タッピングと満天の星空のようなメロディの煌めきも異次元だ。女性ボーカリストPipiをフィーチャーした「Farah」の豊麗多彩な世界観に圧倒される。

 

 

Fallujah — Empyrean

カリフォルニア・ベイエリアのテクニカル・プログレッシヴ・デスメタル・バンド、Fallujahの通算5枚目のスタジオ・アルバム。すっかり中堅となり、唯一無二の存在感を見せるFallujahであるが、Rob、Antonioが脱退するなどなかなかメンバーが固定出来ない時期が続く。本作では新たにArchaelogistのボーカリストKyle、そしてThe Faceless、Animosity、Entheos、Refluxと名だたるバンドに在籍してきた経歴を持つベーシストEvan Brewerが加入。暗雲を払拭するかのように力強く、そして正確に叩き込まれるドラミングとFallujahをFallujahたらしめるScottのしなやかなメロディックリフのコンビネーションに百戦錬磨のEvanのベースラインがどっしりと屋台骨を支える。

 

Aronious — Irkalla

2011年グリーンベイで結成したAroniousのセカンド・アルバム。2020年にデビュー・アルバム『Perspicacity』発表後、ボーカルBrandon、ギタリストのNickとRyan、ベーシストJason、そしてBenightedやGods of Hateなどでドラムを担当してきたKevin Paradisという5人体制となり、本作の制作を開始。不気味に渦巻く奇怪なバンドロゴが、彼らが一体どんなバンドなのかを的確に表現していると言っていい。ほとんど鬼気と呼んでよいほどの不気味な迫力溢れるアヴァンギャルドなドラミングとリフが得体の知れぬ異世界へと聴くものを誘う。

 

 

Godless Truth — Godless Truth

オリジナル・ギタリストPetrを中心に18年振りにシーンにカムバックした彼らのアルバムはバンド名を冠した堂々たる一枚だ。2017年に開催した同郷のデスメタル・バンドDissolution周りのミュージシャンが集い、ツインギターの5人体制となったことで、Petrのギターワークは浮き立つように存在感を放つ。「Scissors」や「Breathe Fire」のリフはこのアルバムのハイライトだ。Death以降の90年代テクニカル・デスメタルを上品さを持ってしてモダンにアップデートすることに成功、セルフタイトルとしてリリースした自信も感じ取れる。

 

Arkaik — Labyrinth Of Hungry Ghosts

The Artisan Eraへと移籍、Gregが脱退し、新たにドラマーとしてSingularityやAlterbeastで活躍したNathan Bigelow、過去にArkaikでライブ・ギタリストを担当した経歴のあるAlex Haddadが加入。ゲスト・ベーシストにInferiのMalcolm Pughを招き、レコーディングが行われた。前作『Nemethia』の延長線上にあるサウンドは迫力に磨きがかかり、プログレッシヴでありながらブルータルな仕上がりとなっている。「To Summon Amoria」ではヴァイオリン、フルート奏者をフィーチャー、NileやNecrophagistを彷彿とさせるサウンド・デザインにも挑戦している。

 

Eciton — The Autocatalytic Process

2004年、前身バンドIndespairが改名する形でコペンハーゲンを拠点にスタート。本作はボーカリストJesper von Holckを中心にギタリストのKristianとThomas、ベーシストGustav、そしてIniquityで活躍したドラマーJesper Frostの5人体制でレコーディングが行われた通算4枚目のスタジオ・アルバム。クラシックなデスメタルに精彩に添えられたテクニカル・デスメタルのエレメンツは自由で無駄がなく、それでいて豊かで洗練されている。強度のテクニカルでなく、高潔な芸術作品とでも言うべき一枚。謎めいたアートワークにもどこか惹かれる。

 

 

The Last Of Lucy — Moksha

2007年ハンティントン・ビーチでギタリストGad Gidonによって立ち上げられたThe Last Of Lucy。本作までにボーカルJosh、ギタリストChristian、ベーシストDerek、Ominous RuinのライブドラマーやTo Violently Vomitでもドラムを務めるJosef Hossain-Kayの5人体制になっている。摩訶不思議な地球外生命体のアートワークもそそられるが、そのサウンドもどこか不気味。ハードコア譲りのボーカルにきめ細やかなリフをメロディアスに展開。The Zenith Passageのようなジャリジャリとした質感の刻みに妙な心地良さを覚える。

 

 

Gutsaw — All Lives Splatter

2003年コロナで結成されたベテランであるが、2004年にリリースしたデビュー・アルバム『Progression of Decay』以来アルバムのリリースはなく、本作は18年振りに発表されたセカンド・アルバム。オリジナル・メンバーであるベース/ボーカルDavidとギター/ボーカルNecroに加え、Vampire SquidのドラマーMark Rivasが加わり制作された。ツインボーカルで絶え間なくガテラルを掛け合いながら、テクニカル・デスグラインドとも言うべきサウンドを爆速で繰り広げていく。時折挟み込まれるバウンシーなフレーズもフックが効いている。

 

 

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP15 (2022年下半期)

毎年12月はニュースの更新をストップして、その年にリリースされたアルバムをジャンルごとに改めて向き合い、年間ベスト・アルバムとしてピックアップしアルバムレビューをしています。毎年時間オーバーになってしまいレビューの執筆を諦めてしまうアルバムが数枚あったりしたので、デイリーチェックしているジャンルに関しては上半期と下半期に分けて執筆することにしました。

 

スラミング・ブルータル・デスメタル 名盤TOP5 (2022年上半期)

 

ジャンルに関しては、スラム・リフが主要になっている楽曲構成であれば「スラミング・ブルータル・デスメタル」にカテゴライズしていますが、中にはデスコアであったりスラミング・ビートダウンと呼ばれるビートダウン・ハードコアの一派としてカテゴライズされることが多いジャンルも含めてまとめています。ですので「これはブルデスじゃないだろ!」ってバンドも入ってたりしますがそこはご了承下さい。

 

シングルリリースのみなどで良かったバンドはYouTubeプレイリストにまとめています。下記をチェック!

 

 

 

Agonal Breathing – Bloodthirsty Mutilation

ベネズエラを拠点とし、Interdimensional Hypernovaなどで活動する若きマルチ・ミュージシャンLuis Floresとアメリカ在住でExtended PutrefactionIncestuous Impregnationでボーカルを務めるBrandon Smithによるプロジェクト。二人は別にSchizophrenic Tortureというユニットも行っているがそちらは休止状態。セカンド・アルバムとなる本作は、過剰なダウンチューンを施しノイズの塊となったリフが地底の最深部に響くような金属スネアのエコーと混ざり合う限界スラムに仕上がっている。それでいて、何重にもスラミング・パートを折り重ねていく徹底振り。

 

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Kanine – Karnage

2020年フランス・ストラスブールで結成。ボーカリストJason Gerhard、ギタリストAlecandre Lorentz、ベーシストLucas Eckert、ドラマーGabriel Labeauvieの4人体制で活動をスタート。デスコア・バンドを自称する彼らであるが、そのサウンドは「スラミング・ブルータル・デスコア」と形容するのが正しいだろう。アートワークを彷彿とさせるハイ&ロー、そしてさらにディープなガテラル・ヴォイスがケルベロスのようにして交互に咆哮、その展開はNo Face No Caseにも似たスタイルと言える。

 

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Frog Mallet – Frog Mallet EP

カエルをテーマにしたデスメタルを鳴らすFrog Mallet、昨年リリースしたデビュー作『Dissection by Amphibian』から短いスパンで発表されたセルフタイトルEP。本作からボーカリストCaden Frankovich、ギター/ボーカルSean McCormack、ベーシストAnton Picchioni、ドラマーCody Cahillというラインナップとなっており、それぞれに本業のバンドを持っている。ウシガエルがハンマーを持ったロゴが強烈で、バンド名だけ聴くとチープな打ち込みスラムゴアのように感じるが、そのサウンドはSanguisugaboggにも似たオールドスクール・デスメタルを下地としたもので、殺傷能力の高いリフを無慈悲に刻み込んでいく正統派スタイル。

 

 

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Perversity Denied – The Arrival Of The Majestic End

2007年コロンビアの首都ボゴタで結成。Sistematic CoprophagiaのAlexander Clamotが中心のバンドで、本作はボーカルにCristianとGorepotのLarry Wang、ギタリストのWilsonとJohan、Virus InjectionのベースStevenが参加し国際的なラインナップとなっている。どっしりと血の気の多いリフがスペクタルに炸裂、リードシングル「Scavangers of the Cosmos」はチープさが言いようのない不気味さを醸し出している。

 

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Human Barbecue – Red Sun Rising

2015年ベルギーのリエージュで結成。Putrified JImpure Violationで知られるJason Lambertのソロプロジェクトとして2015年に始動。2018年からFermented MasturbationHuman Vivisectionで知られるRoy Feyenが加入しユニット体制となった。互いにドラムプログラミングやボーカルを担当、Jasonがギター、Royがベースを弾くスタイルで制作された本作は、 非人力のドラミングのかっちりとしたキャッチーなビートに突き刺さる鋭利なスラムリフはビートダウンしながらデスコアをヒントに加速していく。

 

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Parasitic Infestation – Intergalactic Harvest

2018年ニュージーランド・オークランドで結成。ボーカリストLiam Handが在籍している二つのバンドのメンバーがそれぞれ集まり、Silent TortureからギタリストのAidenとGrady、ObsidiousからドラマーBlake、ベーシストJacobが参加。シングル・リリースを経て発表されたデビュー作は、ミディアムテンポを基調とした粘着質なスラムリフが急減速していくビートに粘液を滴らせながら刻み込まれていく。Knocked Loose的なアプローチも交えつつ、無慈悲なParasitic Infestationワールドを展開。

 

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Goat Ripper – Goat Ripper

2018年にアゼルバイジャンの首都バクーで結成。地元のスラッジ/ストーナー・メタル・バンドPyraweedのメンバーであるベーシストZakir GasimovとドラマーでSerumhatredなどに在籍したNijat Hesenzadeが中心となり、ギター/ボーカルのKhagan Mammadovを加えたトリオ編成で本作を完成させた。製鉄工場のエコーのかかった金属音を想起させるスネアがじわじわとグルーヴをうねり出しながら、メロディアスなリフを地獄の淵へと誘っていく。装飾をそぎ落とし、可能な限りトリオ編成の旨味を引き出すことに注力したことが言いようのないGoat Ripperらしさを醸し出している。

 

アゼルバイジャンの位置。首都バクーは城塞都市として有名

 

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Gates To Hell – Gates To Hell

2019年アメリカ・ルイビルで結成。ニューヨークのアンダーグラウンド・ハードコア、そしてデスメタル・シーンで実直なライブ活動をこなしながらEPのリリースを立て続けに行い、Barbaric Brutalityからコンピレーション作『Dismembered On Display』を発表。映像メディアhate5sixによってライブ映像が撮影、公開されたこともありヘヴィなハードコア/デスコア・リスナーを中心に人気を博した。モッシュを誘う暴力的な展開、ミュージックビデオにもなっている「Blood Lust」は隠し味として組み込まれたスラミング・スピリットがフロアを血の海にしてしまう。

 

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Grieve – Pit Of Despair

Biohazardous Human MetamorphosisやPutrified Dab Rig等、新世代インターネット・スラムを現実空間でプレイするJacob Bargasのプロジェクトとして始動。2021年にCondemnedのボーカルで元PathologyのClayton Meadeが加わり、ユニット体制で動き出した。果てのない暗闇に無限に広がっていくかのようなサウンド・デザインで鳴らされるGrieveの音はJon Zigの描いたブルータルなアートワークの非現実感を巧みに表現している。一切のメロディを排除した残忍極まりないスラム快作。

 

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Guttural Engorgement – 33 In The Crawl Space

前作『The Slow Decay of Infested Flesh』は世界中のブルータル・デスメタル・リスナーから高い評価を得たものの、同年活動休止。2度のストップを経て15年振りに動き出した彼らのセカンド・アルバムはBrutal Mindからリリースとなった。オリジナル・メンバーのボーカル/ギターMark Rawlsと、本作から加入したIntracranial PutrefactionのドラマーJosé Osuna、Human DecompositionのDaniel Españaがギターとベースを兼任している。クラシックなスラム・グルーヴがじわりじわりと砂塵を巻き起こすかのように繰り広げられ、2000年代初頭にタイムスリップしたかのよう。そして何と言ってもMarkのエグすぎるガテラルのインパクトは絶大。現代スラムのヘヴィネスとは別に評価すべき作品。

 

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Iniquitous Monolith – Sledgehammered

2015年パースで結成。活動休止中のEntrails Eradicatedのメンバーとして知られるボーカリストTarren Whitfield、ギタリストLynton Cessford、そしてNails of ImpositionのドラマーBrendan Nock、DeathFuckingCuntのベーシストBrad Trevaskisが加わり活動をスタート。自身のサウンドを「Guttural Horror Slam」と自称、ホラー映画のサンプリングをふんだんに盛り込み、各パートの技量の高さが各所に垣間見える。最も威力を発揮するスラミング・リフもソリッドで切れ味抜群。

 

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Invirulant – Indomitable Worldwide Slamdemic

2022年にNecrambulantから改名する形でスタート。EnfuckmentのBrandon ShobeとMark Little、Vile Impregnationに在籍した経歴を持ち、ギタリストのDerek Ryanと共にJotunsblodで活動していたTriston Cheshireの4人体制で本作をレコーディング。ピッキングハーモニクスを有効に組み込みながら流れるようにスラムリフを刻み込んでいく。2020年代の典例とも言うべきヘヴィとフックにフォーカスしたスラミング・サウンドはもはやダンス・ミュージックだ。

 

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