Suffocation 入門マニュアル

 

Suffocation (サフォケーション) バイオグラフィー

 

出身地 : ニューヨーク州ロングアイランド
活動時期 : 1988-1998、2002-
関連バンド : Criminal Element、Pyrexia、Disgorge、Deeds of Flesh、Deprecated
For Fans of : Dying Fetus、Deeds of Flesh、Disgorge、Cryptopsy、Nile、Pyrexia
歌詞のテーマ : 死、宗教、社会
入門アルバム : 『Pierced from Within』
聴きどころ : Frank Mullenのボーカル、バスドラ、スネア、シンバルが表拍でシンクロしたブラスト
トリビア : Frank Mullenはガテラル唱法の始祖

 

1988年、アメリカ合衆国ニューヨーク州ロングアイランドにて結成。ボーカルであり、バンドリーダーの Frank Mullen を中心に、 元 Autopsy のベーシストの Josh Barohn、Internal Bleeding、Pyrexiaで活躍した Guy Marchais、Todd German の 4人体制でスタート。ブルータル・デスメタルの基礎といえるテクニカルかつディープなグロウル = ガテラル唱法を取り入れたスタイルで注目を集めた。

 

Frank Mullen (photo by Metal Ship)

1990年に現在まで Suffocationのギターを務める Terrance Hobbs が加入。彼の加入を機に大幅なラインナップチェンジを行い、ドラムに Mike Smith、ギタリストに Doug Cerrito が加入。新体制となった Suffocationはファースト・デモテープ『Reincremated』を発表。Cannibal Corpse を更にテクニカルに、エクストリームに推し進めたサウンドは高い注目と人気を博し、翌年リリースとなったデビュー EP『Human Waste』は名門Relapse Records からリリースされた。

 

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1991年10月、記念すべきファーストアルバムとなる『Effigy of the Forgotten』を R/C Records から発表。本
作は、交通事故により、若干 22 歳で亡くなった彼らの盟友、Roger Patterson (Atheist、R.A.V.A.G.E.)に捧げたメモリアル作品であることを後に Frank が語っている。1991 年暮れから翌年末まで、アメリカ主要都市を中心に、精力的なライブ活動を敢行。毎日のようにライブに明け暮れ、そのテクニックに磨きをかけていった。当時まだ物珍しかったであろう Frank のガテラル・ヴォイスは、披露される度に歓声が起こっていた。

 

『Effigy of the Forgotten』

 

1993年5月、名門 Roadrunner Records よりセカンドアルバム『Breeding The Spawn』を発表。本作からベーシストに Pyrexia で活躍した Chris Richards が加入している。前作『Effigy of the Forgotten』リリース後の精力的なライブ活動で得たテクニックとグルーヴは、本作におけるブルータルデスメタル・グルーヴをより強化し、ライブパフォーマンスを大きくスキルアップさせた。翌年には Restless Records 企画のスプリットアルバム『Live Death』に、Malevolent Creation、Exhorder、Cancer と共に参加。この頃、ドラムの Mike Smith が脱退し、Doug Bohn が加入した。1995年5月、サード・アルバム『Pierced from Within』を Roadrunner Records から発表。当時のデスメタルシーンの盛り上がり、そして誰も止められない Suffocation の勢いを生々しく封じ込めた奇跡と 1 枚として、今も尚語り継がれている。

 

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Suffocation は『Pierced from Within』リリース後、大規模なツアーを敢行。ツアー途中の 1996 年に Doug Bohn が脱退するも、Malevolent Creation に在籍していた Dave Culross が加入。ツアーやフェスティバル出演を経て、1998 年には EP『Despise The Sun』をリリース。同時に Suffocation は活動休止を発表した。当時の状況については謎に包まれたままで、ネガティヴな雰囲気がバンドに流れていたことが分かる。

メンバーチェンジを行い、2002 年に復活。オリジナルメンバーのベーシスト Josh がバンドに復帰、翌年にはギタリスト Guy の復帰と、黎明期を支えたドラマー Mike Smith も Suffocation に再加入を果たした。Roadrunner Records を離れ、Relapse Records へと戻った第 2 期 Suffocation はアルバム『Souls to Deny』を発表。彼らの復活を待ち望んだファン達の期待を上回る出来、初期ラインナップに戻った Suffocation の勢いは再び加速。当時の熱狂を詰め込んだライブアルバム『The Close of Chapter』は、『Souls to Deny』のワールドツアー中に収録された。

 

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ワールドツアーでベースを担当した Derek Boyer が正式加入。バンド史上最高の状態で制作されたセルフタイトルアルバム『Suffocation』は 2006 年 9 月に Relapse Records からリリースされ、世界のデスメタルリスナーが湧き上がった。Roadrunnner Records からリリースされたアルバムからライブでも人気のある楽曲をまとめた『The Best of Suff ocation』のリリースや、数千人規模のフェスティバル出演を重ねていった。

 

Derek Boyer

2009 年、Nuclear Blast Records へと移籍しリリースとなった『Blood Oath』は第 2 期 Suffocation の集大成とも言える抜群の完成度を誇り、リリース後に出演した Summer Slaughter Tour でその格の違いを見せつけた。2012 年にドラマー Mike Smith が再び脱退。過去に Suffocation でドラムを叩いた Dave がその穴を埋めたが、アルバム『Pinnacle of Bedlam』をリリースした後、バンドは再びメンバーチェンジを繰り返しはじめた。現在は、ギタリストに Internal Bleeding のライブメンバーとして知られる Charlie Errigo、ドラマーには Slayer のドラムテックなどを担当した経験もあるブルータルデスメタル・シーンの名ドラマー Kevin Talley が加入している。

 

2017年にアルバム『…Of the Dark Light』をリリース。2017年後半から、それまでツアー・メンバーだったKevin Mullerが、Frank Mullen と共にフルタイムでバンドに参加し、2人がヴォーカルを担当することになった。これは決してSuffocationがツイン・ボーカルという編成になったわけではなく、Frankがその後、バンドを脱退 (卒業というようなイメージ)する前の引き継ぎのようなものであった。、2018年に復帰したRicky Myersが後任として再びSuffocationは動き出した。Frankは正式にバンドを引退する前に、ファイナルツアーを行った。

 

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Iwrestledabearonce のルーツを探る -オリジナルメンバーの前身バンド-

RNR TOURSでツアーが出来ない間は、過去ツアーのアーカイヴを整理したり、ホームページ作成前に運営していたブログの整理などをしました。アーカイヴの意義があるものをマイペースに掲載していくことにしました。

 

通称IWABOで知られる iwrestledabearonce (アイレッスルドアベアーワンス)、初期ファンとしてはオリジナルボーカルKrysta時代に来日公演を観ることが出来たのが思い出深いですね。妊娠を機に脱退後は、編み物の仕事をしているというニュースを見たことがあります。

 

さて今回は過去記事発掘ということで、IWABOのメンバーが在籍していたサイドプロジェクトや前身バンドをまとめてみたいと思います。すでにオフィシャルページやYouTubeのビデオが消え去ってますが、こうしてブログにアーカイヴしておいたので紹介することが出来ます。昔の自分に感謝…。

 

 

This Years Addiction
http://www.myspace.com/xthisyearsaddictionx
https://www.discogs.com/artist/2481099-This-Years-Addiction

2005年ロングアイランドで結成されたカオティック・グラインドコア・バンド (Spider Corpseと名乗っていた時代もあるようだ)。Krysta Cameronを含むギター2人も女性。Iwrestledabearonceと比較すると、若干デスメタル/ブラックメタルに接近しているような印象がある。IWABOサウンドにも受け継がれていくJazz/Fusion系のフレーズ、そしてKrystaのクリーンボーカルの差し込み方もすでにこのバンドで確立されていたようです。ちなみにKrystaがIWABOに加入後、残ったメンバーはWhorelordというブラックメタルバンドを結成しています。

 

 

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Statues Cry Bleeding
http://www.myspace.com/statuescrybleeding

2004年、Stevenを中心に結成された変態カオティックグラインドコアバンド。IWABOでも観ることが出来るむちゃくちゃなステージングはYouTubeでも確認可能。マスロック/マスコア的なアプローチがあり、IWABOサウンドの原点も感じます。IWABO結成と同時に解散したようで、Steven以外のメンバーも一時期IWABOのメンバーとして、活動していたことがあるようです。

 

Danger! in the Manger
http://www.myspace.com/dangerinthemanger

画像がないですが、Stevenが遊びでやってたカオティックグラインド・ユニット。後にこのバンド名がIWABOの楽曲名になっていますね。

【YouTube】8弦ギターで作られた最高のメタル・リフ 5選

[arve url=”https://www.youtube.com/watch?v=Q3rE4CPrLhY” /]

 

メタルYouTuberのPete Cottrellが、Agileの8弦ギターを使用し、「8弦ギターを用いたメタルの名曲」をピックアップしています。Peteは普段7弦ギターを主にプレイしているそう。だからこそ感じる、「7弦と8弦の違い」から8弦だからこそ表現出来たヘヴィネス、そしてそのヘヴィネスを鮮やかに表現した楽曲をピックアップ出来たと思います。選んだ楽曲は以下の通り。

 

 

[arve url=”https://www.youtube.com/watch?v=zg2076b5Lqc” /]

Meshuggah 「Demiurge」

 

[arve url=”https://www.youtube.com/watch?v=bt-RoSzsEKA” /]

Animals As Leaders 「Wave of Babies」

 

[arve url=”https://www.youtube.com/watch?v=QHRuTYtSbJQ” /]

Mick Gordon 「BFG Division」

 

[arve url=”https://www.youtube.com/watch?v=xiERPVIEvSc” /]

Rob Scallon 「Anchor」

 

[arve url=”https://www.youtube.com/watch?v=qc98u-eGzlc” /]

Meshuggah 「Bleed」

ドラムYouTuber、Meshuggahの「New Millennium Cyanide Christ」を完璧にカバー

ドラムYouTuber として知られるEl Estepario Siberianoが、Meshuggahの人気曲「New Millennium Cyanide Christ」を完璧に、かつ絶妙なアレンジを加えカバーした動画が公開されました。

シンプルなセットで叩き込まれるドラミングは正確でありながら、随所にEl Estepario Siberianoらしいアイデアが詰め込まれ、より人間味あるグルーヴが生まれているのが驚きだ。原曲と聴き比べながら見入ってほしい。

Undeath、2022年3月に行ったライブ・パフォーマンス映像がhate5sixから公開に

[arve url=”https://www.youtube.com/watch?v=0EZxjTYnLSs” /]

 

Undeath : ニューヨーク州ロチェスターを拠点に活動するデスメタル・バンド、Undeath が、2022年3月12日にケンタッキー州ルイビルにあるライブハウスArt Sanctuaryで行ったライブのフルセット・ライブ映像をhate5sixから公開しました。

 

バンドは最新アルバム『It’s Time… To Rise from Grave』をProsthetic Recordsからリリースしたばかり。注目の新曲をプレイし、ファンもフレッシュな反応を示す現在のアメリカン・デスメタル・シーンの一部を垣間見ることが出来るだろう。

 

 

Slipknot 簡単に弾くことが出来るリフをピックアップした動画「10 EASY Slipknot RIFFS」

 

Slipknot : 「メタルのギターは難しい…」、「どんな曲から弾けばいいのかわからない…」そんなメタル好きなギター初心者に向けた動画「10 EASY SLIPKNOT RIFFS」という動画をYouTuber、JJ’s One Girl Bandが公開している。

 

彼女は素晴らしいギターテクニックを持っていますが、簡単に、それでもヘヴィでグルーヴィなSlipknotらしさ溢れるリフをピックアップし実演。ぜひ、実際に動画をみてコピーしてみては?

 

#1 – Left Behind – Iowa – Drop B
#2 – Eyeless – Slipknot – Drop B
#3 – Solway Firth – We Are Not Your Kind – Drop B 
#4 – My Plague – Iowa – Drop A
#5 – Duality – Vol. 3: The Subliminal Verses – Drop B 
#6 – Psychosocial – All Hope Is Gone – Drop A
#7 – Unsainted – We Are Not Your Kind – Drop B
#8 – The Devil In I – .5: The Gray Chapter – Drop A
#9 – Before I Forget – Vol. 3: The Subliminal Verses – Drop B 
#10 – (sic) – Slipknot – Drop B

 

彼女のInstagramはこちら : https://www.instagram.com/jjsonegirlband/

Oli Sykes (Bring Me The Horizon)、Killswitch Engageから受けた影響について語る

現在のBring Me The Horizon (ブリング・ミー・ザ・ホライズン)は、活動当初のデスコアから遥かに進化を遂げ、オルタナティヴ・メタルコア、そしてよりロックのフィールドで活躍するようになった。しかし、彼らのルーツがメタルであることには変わりがないだろう。フロントマンのOli SykesはSobre La Dosisのポッドキャスト番組の中で、Bring Me The Horizonが始まる時、ハマった作品があるようだ。Sobre La Dosisの取材の中でOliは、メタルにのめり込むきっかけとなったのはどのアルバムかと聞かれ、次のように答えている。

Oliは以前、Linkin Parkが自身の音楽的ルーツであり、現在に至るまでのキーになっていると話しており、今回もそのように様々なメディアで答えているが、よりヘヴィな領域への入り口となったのは、メタルコアで成功したKillswitch Engageの2002年のアルバム『Alive Or Just Breathing』だったと話す。

Oliは取材に対し、このように答えている。

「初めて買ったメタルのレコード…、何をもってメタルと定義するかは人それぞれだと思うけど、最初に出会った2、3枚はLinkin Parkとかそんな感じだったと思うよ。初めて”これはメタルだ”と思ったアルバムは、Killswitch Engageの『Alive Or Just Breathing』だと思うね。初めて聴いた時は、”ああ、これはヘヴィすぎる”と思ったのを覚えているよ。

休暇をとってイギリスからバスでスペインに行った時、バスに乗る直前にこのアルバムを買ったんだ。初めて聴いたときは、”これは僕にはヘビーすぎる”と思ったんだ。”好きじゃない。クレイジーすぎる”ってね。でも、他に聴くものがなかったし、バスでの移動は丸一日かかるからずっと聴いていたんだ。スペインに着く頃にはすっかり気に入っちゃったんだ。

その後、DecapitatedやSuffocationといった様々なデスメタルや、Zaoのようなハードなものを聴くようになったんだよ。

RIFF CULT : Spotifyプレイリスト「All New Metalcore」

 

RIFF CULT : YouTubeプレイリスト「All New Metalcore」

メタル検証 : もしもMetallicaがSlipknotみたいなサウンドに変貌したら…

メタル検証 : メタルYouTuber、Pete Cottrellが最新動画にて「もしもMetallicaがSlipknotのようなサウンドになったら」という動画をアップ。この動画では、SlipknotがSlipknotたる理由であるサウンドを解説し、Metallicaの楽曲をSlipknotらしくアレンジしています。

 

SlipknotのモダンでブルータルなサウンドについてPeteは、Joeyのアイコニックなビート、キャッチーでグルーヴィなリフ、そしてコーラスについて話しています。こうして整理して理解するとSlipknotが人気な理由が非常によく理解できますね!

 

【年始企画】今年リリース10周年を迎える作品たち (Sumerian Records編)

年始企画 : この企画の第1弾Rise Records編では、2000年代後半に登場した次世代メタルコア・ポストハードコアバンド達がキャリアを重ね、シーンを牽引する存在へと成長したことを確信付ける作品が数多くリリースされたと書いた。当時のRise Recordsが次世代のメタルコア・ポストハードコアがどんなものになるか予感させてくれたのに対し、Sumerian Recordsは2000年代に築いてきたSumerian Recordsらしいプログレッシヴ感を守りつつ、しっかりとシーンで活躍できる逸材を発掘し、育てたような雰囲気がある。Periphery、Veil of Maya、The Facelessといったメタル新世代のトップに加え、The Haarp Machine、Make Me Famous、Capture The Crownらがシーンに衝撃を与えた2012年のアルバムを振り返ってみよう。

 


 

The Haarp Machine – Disclosure

イギリス出身のプログレッシヴ・メタルバンドThe Haarp Machineのデビュー・アルバム。ターバンを巻いて華麗にプログレッシヴなリフを弾きこなすプレイスルー動画は今も印象に残っている。Peripheryらによって「Sumerian Recordsはプログレッシヴ/Djentなレーベル」であることが広くシーンに浸透、そしてこうした逸材を発掘し育成していくんだということにワクワクした。バンドは長く活動が止まっていたが、ここ最近動き出している。

 

 

 


Periphery – Periphery II: This Time It’s Personal

2010年にSumerian Recordsからデビューし、「Djent」というトレンドを生み出したPeripheryのセカンド・アルバム。Billboard 200で44位にランクイン。プログレッシヴ・メタルのニューカマーから一気にトップシーンでの知名度を確率した作品。

 

 

 


Veil of Maya – Eclipse

まだまだデスコアバンドというイメージが残っていたVeil of Mayaの4枚目フルレングス。PeripheryのMisha Mansoorがプロデュースを手掛けるというのも、この頃から次第にあちこちで見かけるようになっていった。全10曲28分というコンパクトな内容ながら、中堅メタルコア/デスコアの中では群を抜いて人気の高さを見せつけた一枚。

 

 

 

I The Breather – Truth And Purpose

2010年にSumerian Recordsからデビューしたメタルコア、I The Breatherのセカンド・アルバム。アンダーグラウンド・メタルコアシーンにおける知名度、そしてミュージシャンからの人気が高く一目置かれていた彼らも本作でBillboard クリスチャン・チャートで15位にランクインを果たした。August Burns Redに次ぐメタルコアバンドとして活躍が期待されることとなった出世作だ。

 

 

 


Upon A Burning Body – Red. White. Green.

Rise Recordsが2012年に多くの新人バンドのデビューアルバムを手掛けたように、Sumerian Recordsは2年早く2010年代後半から新たにシーンを作っていくアーティストの発掘に力を注いでいた。Periphery、I, The Breatherがデビューした2010年に同じくファースト・アルバムをリリースしたUpon A Burning Bodyも本作でオリジナリティあふれるサウンドを確立。デスコアバンドながらBillboard 200で105位にランクインしている。

 

 


I See Stars – Digital Renegade

スクリーモ/ポストハードコアの新星として2006年にデビューしたI See Starsの通算3枚目フルレングス。この頃になるとやや人気も落ち着いてきたようであるが、改めて作品を聴き返してみると時代をしっかりと捉えながらもI See Starsらしさを打ち出した素晴らしい作品であるように感じる。Asking AlexandriaのDannyがフィーチャーしているのも2012年ぽい。Billboard 200で45位にランクイン、ポストハードコアの人気がしっかりとアメリカに根付いたことを印象付ける作品。

 

 


The Faceless – Autotheism

2008年にリリースした『Planetary Duality』はプログレッシヴ・メタル、デスコア、メタルコア、テクニカル・デスメタルシーンと幅広いジャンルにおいて革新的なアルバムとして人気を博したThe Faceless。『Planetary Duality』から4年という月日はシーンの進行具合を考えると長すぎたが、その人気は健在。彼らのキャリアを考えれば地味な作品ではあるが、Sumerian Recordsを語る上で彼らの存在は外せないだろう。

 

 


TRAM – Lingua Franca

あまりメタルコアシーンでは語られることはないが、Animals As LeadersのTosin AbasiとJavier Reyes、The Mars VoltaのAdrian Terrazas氏、Suicidal TendenciesのEric MooreによってスタートしたTRAMは、話題のバンドが中堅、ベテランになっていく上でレーベルが仕掛ける「サイド・プロジェクト」としては豪華すぎるラインナップで、当時話題になった。この作品が現代にどのくらい影響を与えたかと言えばはっきりと言えないが、2012年だからこそ成立したプロジェクトであることは間違いない。

 

 


Make Me Famous – It’s Now Or Never ‎

後にAsking AlexandriaのボーカルとなるDenis Stoff在籍のMake Me Famousが残した唯一のフルアルバム。このバンドも2010年代前半にだけ注目を集め、その後「ex.Make Me Famous」としてその動向が注目され続けたバンドである。そのサウンドはI See Starsを継承したアメリカ国外を拠点に活動するフォロワーバンドとしては申し分ない。ここからDown & Dirty、Oceans Red、Drag Me Outと名前を変えながら活動していくこととなった。

 

 


Stick To Your Guns – Diamond

Sumerian Recordsにもハードコア・バンドがかつては在籍した。それはRise Recordsにも言えるが、メタルコアというジャンル、シーンが明確に確率し未来がある段階にあったからこそ、前時代のユース・シーンにおけるハードコアのベテランを抱えておくことはメタルコアやデスコア、ポップパンクのレーベルにとって当たり前のことだった。メタルコアシーンでも人気があるThe Acacia StrainやStick To Your Gunsが現代においてもその輝きを放ち続けているのは、こうしたレーベルの戦略があったからこそなのかもしれない。

 

 

Circle Of Contempt – Entwine The Threads

フィンランドを拠点に活動しているCircle of ContemptのSumerian Records在籍時のラスト作。この後Sumerianを離れ、インディペンデントになり、2020年代前後からプログレッシヴ・メタルコアを聴き始めたリスナーにはあまりピンとこないバンドかもしれないが、当時の彼らの人気は凄まじいものがあり、コアなリスナーからPeriphery以上に崇められていたように感じる。2012年前後を象徴するバンドとして後世に名前が引き継がれていく、そんなバンドだ。

 

 


Capture The Crown – ‘Til Death

現在はCaptureとバンド名を変更しているCapture The Crownのデビュー・アルバム。久々に「You Call That A Knife? This Is A Knife!」のミュージックビデオを見てみるかと思ったらなんと削除されていました…。同じく「#OIMATEWTF」などミュージックビデオの類がSumerian Recordsのアカウントからは消されてしまっていました。どういう理由なのかは調べてもよく分からないのですが、Capture The Crownといえば「You Call That A Knife? This Is A Knife!」のミュージックビデオで大ブレイクを果たしたバンド。当時は新世代としてかなり注目を集めました。

 

【年始企画】今年リリース10周年を迎える作品たち (Rise Records編)

年始企画 : 10年前の2012年と言えば、メタルコアやポストハードコアが少しずつ洗練され、世界中から個性的でハイ・クオリティなアーティスト達が続々とデビューした年だ。現在のメタルコア・ポストハードコアの基盤とも言えるサウンドを作り上げ、フォロワーを生み出した多くのバンドがRise Recordsに所属しており、今では名作と呼ばれるような作品をリリースしている。10年という月日を感じながら、改めて現在のメタルコア・ポストハードコアがどのように進化してきたのか、また2032年にどんなバンドが誕生しているかを想像しながら、ぜひ振り返ってみてほしい。

 


 

Issues ‎– Black Diamonds

Woe, Is Meを脱退したTyler Carter、Michael Bohn、Cory Ferris、Ben Ferrisによって2012年夏に結成され、すぐにRise Recordsと契約。『Black Diamonds』は彼らのデビューEPで、名曲「Love Sex Riot」収録。

 

 

 


The Acacia Strain ‎– Death Is The Only Mortal

ハードコア・シーンとメタルコア・シーンを繋いた存在として、このころすでに神格化されていたThe Acacia Strainの6枚目となるスタジオ・アルバム。長くThe Acacia Strainのコンポーザーとして活躍したDaniel “DL” Laskiewicz在籍時最後の作品。

 

 

 


Memphis May Fire – Challenger

USメタルコア・シーンを牽引する存在となったMemphis May Fireの3枚目スタジオ・アルバム。Billboard 200で16位にランクイン、現在までのバンドキャリアの中でも最も勢いに乗っていた頃の作品と言えるだろう。「Prove Me Right」は名曲中の名曲。

 

 

 


Secrets – The Ascent

2010年に結成、デモ音源を経てRise Recordsと契約したSecretsのデビューアルバム。ボーカリストAaron Melzerは2020年に死去。現在も活動しており、2010年代のレガシーを後世へと受け継いでいる。

 

 

 


Crown the Empire – The Fallout

テキサス州ダラスを拠点に2010年に結成されたメタルコア・バンドのデビュー・アルバム。Joey Sturgisによってプロデュースされた作品で、この作品から現在まで堅実なキャリアを築いている。

 

 

 


My Ticket Home – To Create A Cure

後にオルタナティヴな方向へと進んでいくMy Ticket Homeのデビュー・アルバムは、アグレッシヴなメタルコア・サウンドを鳴らし、Secrets、Crown The Empireと共にこの年のメタルコアを語る上で重要な作品と言える。

 

 

 


Attack Attack! ‎– This Means War

Joey SturgisによってプロデュースされてきたAttack Attack!が、本作はCaleb Shomoのプロデュースでアルバムを制作。通算3枚目となるスタジオ・アルバムは、Billboard 200で初登場11位にランクイン。Memphis May Fireと共にRise Recordsの顔として存在感を見せつけた。

 

 

 


Bleeding Through – The Great Fire

1999年から活動し、Roadrunner Recordsを牽引してきたメロディック・デスメタル/メタルコア、Bleeding ThroughがRise Recordsへと移籍したことは大きなニュースになった。そんな彼らの6枚目となるフルレングスは、彼ららしい火花飛び散るメロディック・メタルコア。

 

 

 


Woe, Is Me ‎– Genesi[s]

リード・ギタリストKevin Hanson以外のメンバーが脱退したWoe, Is Meが残したファイナル・アルバム。タレント揃いのIssuesが鳴らしたR&Bとメタルコアのクロスオーバー・サウンドとは違い、多彩なコラージュを組み込んだヘヴィなメタルコアを鳴らし、大きな話題となった。翌年に発表したEP『American Dream』で解散。一つの時代が生まれ、消えていく間に生まれた名作。

 

 

 


Miss May I ‎– At Heart

Rise Recordsがシーンにおける存在感を強めていく中で、欠かせない存在となっていたMiss May Iの通算3枚目フルレングス。Memphis May FireやAttack Attack!とはまた違い、メロディアスなメタルコアで独自のファンベースを堅持した一枚。

 

 

 


Palisades – I’m Not Dying Today

Marilyn Is Deadから改名し、再出発となった彼らのデビューEP。2013年にデビューアルバム『Outcasts』をリリースするが、この作品の存在感はそれを超えているように思う。エレクトロニックなアレンジと流麗なクリーン・パートに才能を感じた一枚。

 

 

 


Thick As Blood – Living Proof

Attack Attack!やMemphis May Fireという存在がこの頃のRise Recordsを象徴していると言えるが、The Acacia StrainとThick As Bloodがハードコアとメタルコアの文化をミックスさせ、モッシュコアなどを盛り上げた功績は絶対に忘れてはいけないし、しっかり評価すべきだ。この頃来日も果たし、LOYAL TO THE GRAVEとのスプリット作品も発表したThick As Bloodの快作。

 

 

 

 


Abandon All Ships – Infamous

エレクトロニック・ポストハードコアとして2000年代後半にデビューし、Rise Records黄金期の第2世代としてブレイクしたAbandon All ShipsのRise Records移籍後初となるセカンド・アルバム。Issuesの影に隠れながらも間違いなく2010年代初頭を象徴するバンドである。

 

 

 

 


In Fear And Faith – In Fear And Faith

2006年に結成し、2000年代後半のスクリーモ・ムーヴメントを盛り上げた存在として知られるIn Fear And Faithの通算3枚目フルレングスであり、ラスト・アルバム。時代がメタルコア・ポストハードコアへと移行していき、彼らの活動が止まったことは一つ象徴的な出来事だった。

 

 

 

Hands Like Houses – Ground Dweller

オーストラリアのバンドとしてRise RecordsからデビューしたHands Like Housesのファースト・アルバム。前述のIn Fear And Faithらが築いたスクリーモ/ポストハードコアの礎が全世界的に飛び火し、新たなシーンを生み出していく予兆がHands Like Housesの登場によって確信に変わったと言っても過言ではない。

 

 

 

American Me – Ⅲ

Thick As Blood、The Acacia Strainの陰に隠れがちではあるが、モッシュコアとしてハードコアとメタルコアを接続する存在として多大な功績をシーンにもたらしたAmerican Meの通算3枚目となるフルレングス。バンドは本作以降リリースなど目立った活動はないものの、近年復活の兆しがある。間違いなく伝説的な存在になっているバンド。

 

【年間ベスト】2021年のメタルコア作品 TOP100 (後編)

年間ベスト : 今週頭に公開した「年間ベスト : 2021年のメタルコア作品 TOP100 (前編)」に続き、第50位から第1位までをカウントダウン! あなたのお気に入りの作品はありましたか?

 

 

No.49 : Berried Alive – The Mixgrape

 

No.48 : Attack Attack! – Long Time, No Sea

 

No.47 : Northlane – 2D

 

No.46 : Sleep Token – This Place Will Become Your Tomb

 

No.45 : Dying Wish – Fragments of a Bitter Memory

 

No.44 : Trivium – In The Court Of The Dragon

 

No.43 : Dead Days – Control

 

No.42 : War of Ages – Rhema

 

No.41 : Deadlights – The Uncanny Valley

 

No.40 : Ghost Iris – Comatose

 

No.39 : Of Mice & Men – Echo

 

No.38 : Skywalker – Late Eternity

 

No.37 : Hacktivist – Hyperdialect

 

No.36 : Mirrors – The Ego’s Weight

 

No.35 : Reflections – Silhouette

 

No.34 : Ice Nine Kills – The Silver Scream 2: Welcome To Horrorwood

 

No.33 : NOCTURNAL BLOODLUST – ZēTēS

 

No.32 : Darko – Darko

 

No.31 : Atreyu – Baptize

 

No.30 : Sable Hills, Earthists., Graupel – BIRTH

 

No.29 : Sleep Waker – Alias

 

No.28 : Consvmer – Selbstjustiz

 

No.27 : Defocus – In the Eye of Death We Are All the Same

 

No.26 : Fromjoy – It Lingers

 

No.25 : While She Sleeps – SLEEPS SOCIETY

 

No.24 : VEXED – Culling Culture

 

No.23 : Phinehas – The Fire Itself

 

No.22 : To The Grave – Epilogue

 

No.21 : ten56. – downer

 

No.20 : Structures – None of the Above

 

No.19 : DON BROCO – Amazing Things

 

No.18 : Caliban – Zeitgeister

 

No.17 : Afterlife – Part Of Me

 

No.16 : LANDMVRKS – Lost in the Waves

 

No.15 : The Devil Wears Prada – ZII

 

No.14 : The Amity Affliction – Somewhere Beyond the Blue

 

No.13 : The Plot In You – Swan Song

 

No.12 : Like Moths to Flames – Pure Like Porcelain

 

No.11 : Architects – For Those That Wish to Exist

 

No.10 : Wage War – Manic

 

No.9 : Siamese – Home

 

No.8 : Beartooth – Below

 

No.7 : Silent Planet – Iridescent

 

No.6 : Born of Osiris – Angel or Alien

 

No.5 : Sentinels – Collapse by Design

 

No.4 : Volumes – Happier?

 

No.3 : Convictions – I Won’t Survive

 

No.2 : Erra – Erra

 

No.1 : Spiritbox – Eternal Blue

ゴアグラインド 2021年の名盤 TOP9

 

数十年、ゴアグラインドをウォッチしていますがやはりベテラン勢が元気だ。今年はLast Days of Humanity、Spasm、Gutalax、Intestinal Disgorgeと名の知れたゴアグラインド・バンド達がアルバムをリリースし、個人的にも一時期過去の作品を引っ張り出して聴いたりリバイバルしていました。ゴアノイズ系もGORENOISE SUCKSなどオンライン上に点在するゴアノイズを統括する存在がいたり、YouTubeチャンネルGore Grinderが最新作をピックアップしバンドもシェアするなど一つの拠点になっている。ベテランから新しいプロジェクトまで、サウンドのクオリティとかは無視して”刺激的だったもの”を中心にピックアップしてみました。若干汚い、グロいアートワークもあるので、苦手な方は目を細めて呼んで下さい笑

 

 

第9位 : Intestinal Disgorge – Scat Blast
Link : https://intestinaldisgorge.bandcamp.com/album/scat-blast

 

1996年から活動するテキサス州サンアントニオのゴアグラインド・レジェンド、Intestinal Disgorgeの新作。でっかいうんこに勇ましさを感じるアートワークはもちろんYouTubeではモザイク必須。どうやらいくつか別にジャケットが存在するようですが、見ない方がいいと思います……。さて肝心の内容ですが、このアルバムからギタリスト不在、ベーシストが3人いるという意味不明なメンバーラインナップで録音されており、嘘かと思いきや本当にギターレスで様々なベースラインが交差しています。ドラムは結構かっこいいんですが、ボーカルは20年間「キャー」しか言ってないですね。たまにはメロディアスに歌いたいとか思わないんでしょうか…..。ゴアグラインドも20年続けると誰かに尊敬されたりするので、何事も継続が大事です。色々言いましたが、普通にかっこいいアルバムです。

 

 

第8位 : Columbine Carcass – Columbine Carcass
Link : https://columbinecarcass666.bandcamp.com/album/columbine-carcass

 

ジョージア州アトランタを拠点に活動するゴアグラインド・ユニット、Columbine Carcassのセルフ・タイトル作。バンド名はもちろんコロンバイン高校銃乱射事件に由来しており、アートワークは射殺されたエリック・ハリスとディラン・クレボルドの有名な写真。ゴアグラインドは刺激的な死体の写真のコラージュなどが多いが、あまり殺人事件をコンセプトに楽曲制作からアートワークに至るまで一貫性のあるものは少ない。集中力のない音楽なので、そうした作品をゴアグラインドで作り込むという文化がない。彼らも楽曲までは事件に関するものではないにしろ、数ある凶悪事件などをテーマにしたアルバムやプロジェクトがもっとあってもいいと感じられた一枚。サウンドも個人的には良いと思える雰囲気があって、雑にプログラミングされたドラムの上をゴミみたいなディストーションが適当にかかったリフを錯乱状態の人間が弾いてるのが最高。

 

 

第7位 : Putrid Stu – Amidst an Anal​-​Analgesic Assembly
Link : https://putridstu.bandcamp.com/album/amidst-an-anal-analgesic-assembly

 

オハイオ州デイトンを拠点に活動するワンマン・ハイスピードブラスティング・ゴアグラインド・プロジェクト、Purtid Stuの新作。本作はドラマーにタイのブラスティング・ブルータルデスメタルバンドEcchymosisのPolwachが参加している。とにかくスネアのハイピッチ具合が強烈で、スネアじゃなくて空き缶を叩いているのではないか疑惑があります。1曲あたり10秒程度が平均で最後の「Crohn’s Last Breath」のみ1分というショートカット具合も良いですね。アートワークはモザイク入ってますがアルバムを買うと無修正版が見られます。

 

 

第6位 : Retching Pus – Smears of Red Stool
Link : https://retchingpusgore.bandcamp.com/album/smears-of-red-stool

 

ニューヨークを拠点に活動するワンマン・ゴアグラインド・プロジェクトの2021年2作目。割とゴーリー・グルーヴもあり、ギリギリObscene Extreme出れる感じのサウンドではありますが、基本的に雪崩の如く崩壊し続けるノイジー・ブラストビート炸裂系ゴアグラインドを展開。IllustlatorとかPhotoshopというソフトに頼らず切り貼りしてスキャンしたアートワークが最高です。ゴアグラインドはやっぱりショートカットで演奏技術を習得する根気がない人間にぴったりの音楽。ゴアグラインドの人間性の特徴が滲み出た一枚。

 

 

第5位 : Labia Meat Mud Flap – Labia Meat Salad
Link : https://gorenoisesucks.bandcamp.com/album/labia-meat-salad

 

出身国不明、ですがおそらくアメリカ拠点のぽんこつサイバー/ゴアグラインド・ユニット、Labia meat Mud FlapのGORENOISE SUCKSから出た本作。Windows XP直系フリー打ち込みソフトで作られたかのようなトラックは2000年代後期、ゴアグラインドを夢中でディグっていた時に多発していたKOTS周辺のゴア〜ニンテンドーコアの趣が感じられて懐かしい気持ちになります。どこで見つけてきたのか不思議になってしまう意味不明なサンプリングSEを長々と冒頭に持ってくるのも最高です。全く次作に期待とかしてませんが、こういう作品を年間10枚位出し続けて欲しいですね。

 

 

第4位 : First Days of Humanity – Mineralized
Link : https://firstdaysofhumanity.bandcamp.com/

2019年結成、アリゾナ州フェニックスを拠点に活動するワンマン・ゴアグラインド・プロジェクト、First Days of Humanityの最新作。活動スタートからハイペースでリリースを続けていて、一体これが何作目なのかは本人にしか分からないでしょう……。バンド名はもちろんLast Days of Humanityからきていて、そのサウンドもハイスピード・ブラストに雪崩の如く襲いかかるノイジーなリフ、そして下水道ボーカルが乗ってくる溺死系ゴアグラインド。目新しいことは何一つしていないが、ハイペースなリリース、一貫したアートワーク、Last Days of Humanityへのリスペクト、それらがただただ素晴らしい。来年は何作出るだろうか。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=3pIcizZGZvA

第3位 : Spasm – Mystery of Obsession
Link : https://rottenrollrex.bandcamp.com/album/mystery-of-obsession

 

2000年代初頭から活動するチェコのゴアグラインド・トリオの4年振り6枚目のフルアルバム。Gutalaxの先輩にあたる彼ら、アートワークが楽曲にファニーな要素は少なく、どちらかというとSMネタが多いポルノ・ゴアグラインドの系譜にあります。本作も歪んだ性癖をテーマに2分に満たないゴアグラインド曲をノンストップで繰り広げていく。曲名がかなり最悪で、「Masturbation Never Breaks Your Heart」、「Garlic Sperman」、「Harvest of Cocks」、「Pussy is The Most Effective Tool of Love」などなど常人には考えられないタイトルばかり。

 

 

第2位 : Last Days of Humanity – Horrific Compositions of Decomposition
Link : https://rottenrollrex.bandcamp.com/album/horrific-compositions-of-decomposition

 

1989年から活動するオランダ出身のゴアグラインド・レジェンド、Last Days of Humanityの再結成後初となるフルアルバム。2006年にリリースしたアルバム『Putrefaction In Progress』は、後のゴアグラインド・シーンの典例とも言えるサウンドで大きな影響をもたらしたものの、バンドは解散してしまった。2010年に復帰後はスプリット作品などのリリースをマイペースに続け、なんと本作が15年振りのフルアルバムとなる。もう少し話題になるべきだったが、大々的なプロモーションを全く行わなかったのと、ファンが期待していた生臭いアートワークではなく、インターネットで使い古されたホラー画像のアートワークが不評だったのが原因でアルバムが出たことに気づいていない人も多いかもしれない。これがれっきとしたニューアルバムなのかどうか、そのサウンドだけでは区別がつかないという人が多いのも原因でしょうね…。解散直前のハイピッチ・スネアが音速で駆け抜けていくスタイルではなく、初期のバンド・サウンドへと回帰。『Putrefaction in Progress』のイメージが強すぎて若干の違和感があると思いますが、総じてピュアなオールドスクール・ゴアグラインド。最高のアルバムだと思います。

 

 

第1位 : Gutalax – The Shitpendables
Link : https://rottenrollrex.bandcamp.com/album/the-shitpendables

 

チェコを代表するゴアグラインドバンド、Gutalaxの6年振りとなるアルバムは、お馴染みのRotten Roll Rexからリリースされた。Obscene Extremeの目玉バンドとして知られる彼ら、コンセプトは結成当時からブレることなく”うんこ”です。10年以上うんこへの情熱を絶やすことなく続け、ミュージックビデオやアートワークに至るまでうんこがべっとり、さらにはステージに簡易トイレまで設置してしまうからその徹底っぷりは凄まじい。彼らはゴアグラインドのファニーな要素の完璧さに加え、曲もかなり良くて、おそらくソングライティングを担当しているメンバーはハードコア/メタルコア/デスコアを通過していると思われます。ソリッドでキャッチーなリフワークにピッグ・スクイールがバウンシーにのせてきます。

 

 

ゴアグラインド 2022年の名盤10選

テクニカル・デスメタル 2021年の名盤15選

 

なんだかんだ数十年と追いかけ続けているプログレッシヴ/テクニカル・デスメタル。近年は全体的な演奏技術、サウンド・プロダクションが向上し過ぎてて、テクニカルとそうでないものの線引きが非常に難しい。そもそもテクニカル・デスメタルという言葉がかなり曖昧で、誕生からそれなりに時代を経過していることもあって、一度整理して考えないといけないタイミングだと思う。

 

今回リストアップした作品はプログレッシヴ・デスメタル、ブルータルデスメタルの中から特にテクニカルなスタイルにフォーカスしている作品を中心にピックアップしている。そしてそのテクニカルとは、ブラストがスピードとかリフのスピードとかだけでなく、演奏技術が優れていればテクニカルとして考えている。〜デスメタルというサブジャンルがそれぞれにあり、その中でテクニカルなものを選出しているので、総合的に見てブルータルデスメタルであったりプログレッシヴデスメタル、はたまたメロディックデスメタルであるものもある。現代におけるテクニカル・デスメタルを考えたときに大元のジャンルがなんであれ、テクニカルとタグ付けすることが出来ればそれはテクニカル・デスメタルになる、と思う。そういう視点で今回15枚の作品を選び、レビューしてみた。

 

 

第15位 : Cathexis 『Untethered Abyss』

Release : Willowtip Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Cathexis/3540360378

 

今年結成10周年を迎えたテキサス州オースティンのテクニカル・デスメタル中堅、Cathexisの8年振り通算3枚目のフルレングス。Scattered RemainsのIan Bishopがボーカルを務め、Sam KangとChris Hillamがギタリスト、Tony Montana’s Last Standなどで活躍したベーシストOscar Martinez、BallgagのドラマーFelix Garzaの5人体制で活動しており、Willowtip Recordsとの契約を勝ち取ってのリリースとなった。

 

プログレッシヴとアヴァンギャルドの中間をいくミドルテンポの楽曲が中心で、ガリガリとリフを刻みつつもメロディアスであるのがCathexisの魅力だ。Willowtip Recordsらしいサウンドであるので、レーベルのフォロワーでまだチェックできていない方がいたら年末に向けて聴き込んでいただきたい。おすすめの曲は「Mortuus in Perpetuum」。

 

 

 

 

第14位 : Path to Kalinin 『Lineage』

Release : Independent
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Path_to_Kalinin/3540491761

2021年テネシー州ナッシュビルを拠点に結成されたテクニカル/メロディック・デスメタルバンド。While You Were Asleepで活躍するベーシストTommy FireovidとドラマーRikky Hernandez、Kryptik EmbraceのギタリストだったRikk Hernandez、そして伝説のサタニック・デスメタルバンドNunslaughterのギタリストとして2014年から活躍するNoah Nuchananがリード・ボーカルを務める。

基本的にはメロディアスなギターを携えブラストしまくるファストなテクニカルサウンドが売りであるが、雄大なクリーン・パートも組み込むあたりはなかなかオルタナティヴな感覚があるのだなと感心。楽曲も聴き込むにつれ味わい深さを増し、EPというサイズでありながらその世界観は一級品。

 

 

 

 

第13位 : Alustrium 『A Monument to Silence』

Release : Unique Leader Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Alustrium/3540314183

ペンシルバニア州フィラデルフィアを拠点に活動するプログレッシヴ/テクニカル・デスメタルバンド、Alustriumの6年振り通算3枚目のフルレングス。非常に地味な存在であるが演奏技術は確かで、覆面バンドGalactic Empireの”中の人”も在籍している。ギタリストのMike DeMariaとChris Kellyがプロダクションを担当、ミックスまでを行い、Ermin Hamidovicがマスタリングを務めた。

 

雄大なリフ、そしてデスメタリックでありながらエレガントなメロディも巧みに弾きこなすMikeとChrisのギターだけでも抜群の聴きごたえ。Prosthetic Recordsが得意なメロディック・デスメタル/デスコア感をややテクニカルに寄せたスタイル、と言えば分かりやすいかも知れないが、現在の人気以上に凄いことをやっているバンド。じっくりと聴き込めば聴き込むほどに味わい深いアルバムだ。

 

 

 

 

第12位 : Unfathomable Ruination 『Decennium Ruinae』

Release : Willowtip Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Unfathomable_Ruination/3540315635

2010年からイングランド/ロンドンを拠点に活動するテクニカル・ブルータルデスメタルバンド、Unfathomable RuinationのEP。2019年のフルアルバム『Enraged & Unbound』は良い意味で無機質なテクニカル・マシーンっぷりを見せつけ、特にブルータルデスメタルシーンで高く評価された。

 

本作は限りなくブルータルデスメタルと言える残虐なフレーズが次々と繰り出されるがテクニカルな美的感覚が見事で、アヴァンギャルド、プログレッシヴとは明らかに違う「テクニカル・ブルータルデスメタル」のピュアなパッションが感じられるだろう。誰にも止められない暴走列車の如く叩きまくるドラミング、アクセルとブレーキを自由自在に操るリフ、これほどまでに見事な転調を繰り返すデスメタルバンドは他にない。

 

 

 

 

第11位 : Ominous Ruin 『Amidst Voices that Echo in Stone』

Release : Willowtip Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Ominous_Ruin/3540397429

 

2010年からカリフォルニア州サンフランシスコで活躍するテクニカル・ブルータルデスメタル中堅、Omnious Ruin待望のファースト・アルバム。これまでEPのリリースはあったものの2015年以降は新曲が出ていなくて、ややマイペースな活動スタイルがネックではあったが、本作はゲスト・ミュージシャンとしてFallujahのドラマーAndrew BairdやゲストボーカルにSymbioticのKris、Arcane ExistenceのJadeなどが参加。

 

プログレッシヴに刻まれるリフ、そしてメロディのバランス感覚も鮮やかで、疾走するマシーンのようなドラミングに食らいついていく様は見事だ。NileやDeeds of Flesh、Spawn of Possessionといった知的かつ感情の起伏が少ないテクニカル・サウンドが好きな方におすすめ。

 

 

 

 

第10位 : Hannes Grossmann 『To Where the Light Retreats』

Release : Independent
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Hannes_Grossmann/3540374264

 

ObscuraやHate Eternalで活躍し、Alkaloidのドラマーとして活躍する有名ドラマーHannes Grossmannの2年振り4枚目フルレングス。本作はゲストにDark FortressのVictor Bullok、Alkaloid、Dark FortressのFlorian Magnus Maier、Alkaloid、ObscuraのChristian Münzner、Alkaloid、AbhorrentのDanny Tunker、Alkaloid、Eternity’s EndのLinus Klausenitzerが参加しており、Alkaloidの新譜と言ってもおかしくない。明確に違うのは、Hannesは全てのソングライティングを担当しているという点とやはりドラマー視点で作られたプログレッシヴ・デスメタルであるというところだろう。

 

リードトラック「The Sun Eaters」はChristianのギターソロが炸裂、Victorのボーカルもインパクトが強く聴きどころと言えるが、やはりHannesのドラミングが最も輝いて聴こえる。このドラミングが他を牽引しながら楽曲が展開しているように感じるのは、ソロの楽曲だという先入観を抜きにしても感じられるはずだ。Hannesの叩きっぷりを感じながらアルバムに酔いしれて欲しい。

 

 

 

 

第9位 : Aeon 『God Ends Here』

Release : Metal Blade Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Aeon/327

 

スウェーデン/エステルスンドを拠点に活動するプログレッシヴ・デスメタル・ベテラン、Aeonの9年振りとなる通算5枚目のスタジオ・アルバム。名作『Aeons Black』以降に脱退したギタリストDaniel Dlimiがバンドに復帰したことをきっかけに息を吹き返し、Dark FuneralやDespite、ImperiumやBloodshot Dawnで活躍したドラマーJanne Jalomaが2020年に正式加入し制作活動がスタート。

 

Ronnie Björnströmをプロデューサーに迎えた本作は、漆黒のオーケストレーションをまとったデスメタル・サウンドをベースに、プログレッシヴなエレメントを要所要所に散りばめたベテランらしい小技が光る仕上がりになっており、タイトルトラックでありミュージックビデオにもなっている「God Ends Here」では、Behemothなんかにも匹敵する悪魔的な狂気に満ちていて思わず世界観に引き込まれていく。20年以上のキャリアを持つメタル・ミュージシャンらしい引き出しの多さが聴くものを圧倒する堂々の一枚。

 

 

 

 

第8位 : Interloper 『Search Party』

Release : Nuclear Blast
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Interloper/3540480465

 

2014年カリフォルニアを拠点に結成、いよいよ本格始動となったInterloperのデビュー・アルバムはその期待の高さを感じさせるNuclear Blastからのリリースだ。2018年にRings of Saturnを脱退したギタリストMiles BakerとドラマーAaron Stechauner、Vampire SquidのメンバーでAaronと共にThe FacelessのライブメンバーであるAndrew Virruetaによるトリオ体制を取り、他のプロジェクトが落ち着いたこともあってInterloperとして本格的に動く時間がとれたのだろう。

 

本作はAndrewの兄弟であるJoeyがプロデュースを担当、ミックス/マスタリングまでを務めている。古き良きOpethを彷彿とさせるプログレッシヴ感をベースにしながらも、ダイナミックなドラミングやメロディアスなギターパートを交えながら叙情的に楽曲を展開。特にタイトルトラックである「Search Party」は、彼らのキャリアを考えるとこれまでにないバラード調の楽曲であるものの、しっかりとものにしている。

 

ミュージックビデオになっている「Drift」では、メタルコア/デスコアのアイデアも組み込みながら、新世代のプログレッシヴ・グルーヴのうねりを生み出している。バンドのヴィジュアル・コンセプトになっている大海原のように、底知れぬポテンシャルを見せたデビュー・アルバム。

 

 

 

 

第7位 : Crown Magnetar 『The Codex of Flesh』

レーベル : Independent
Link : https://www.facebook.com/crownmagnetar

 

本作は、2016年コロラド・スプリングスを拠点に活動をスタートさせたCrown Magnetarのデビュー・アルバム。2018年にEP『The Prophet of Disgust』リリース後、コアなデスコア・リスナーから支持を集め、カルト的な人気を博していた。本作もレーベル未契約で発表されたものの、クオリティは世界トップクラス。

 

卓越されたテクニックから繰り出される音速のドラミングには度肝を抜かれること間違いなし。Infant AnnihilatorやOphidian Iなど、様々なジャンルに人間離れしたドラマーがいるが、Crown MagnetarのByron Londonのプレイには久々に衝撃受けた。

 

 

 

 

第6位 : Inferi 『Vile Genesis』

Release : The Artisan Era
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Inferi/93823

 

テネシー州ナッシュビルを拠点に活動するテクニカル・デスメタルバンド、Inferiの2年振り通算6枚目フルレングス。この手のジャンルのバンドにしてはかなり多作で、近年の存在感の強さはオンラインにおいても強く感じる。本作はプロデューサーにDave Oteroを起用、ミックス/マスタリングまでを務め、アートワークはHelge Balzerが担当しているが、一部Pär Olofssonが手掛けているようだ。

 

Stevieのハイテンションなボーカルは、シンフォニックなオーケストレーションを携え疾走するメロディアスなデスメタル・サウンドにハリをもたらし、優雅に転調するサウンドの肝になっている。まるでクラシックのコンサートを観ているようなエレガントさも感じられ、グッとテクニカル・デスメタルにおける地位を高めることに成功したように感じる。

 

 

 

 

第5位 : Rivers of Nihil 『The Work』

Release : Metal Blade Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Rivers_of_Nihil/3540301156

 

ペンシルバニア州リーディングを拠点に活動するプログレッシヴ/テクニカル・デスメタルバンド、Rivers of Nihilの3年振り通算4枚目となるスタジオ・アルバム。ギタリストであり、オーケストレーションのプログラミングやキーボードを兼任するBrody Uttleyがプロデュースを担当、Galaxtic EmpireのGrantとCarsonがそれをサポートする形で制作が行われた。シーンにおける有名アートワーカーDan Seagraveが描いた幻想的な世界観はプログレッシヴ・デスメタルシーンでも特異な存在感を放つRivers of Nihilにぴったりだ。

 

本作もBurial In The Skyのサックスフォン奏者Zach Strouseをフィーチャー、アルバム収録曲の半分に彼のサックスが挿入されている。様々サブジャンルが存在するメタルの中でもサックスとの親和性があるのは、プログレッシヴなものが多い。もちろんアヴァンギャルドなシーンではNaked Cityを彷彿とさせるようなエクスペリメンタル・ジャズ、フリージャズ的なサックスは導入されてきた事例があるが、とろけるようなサックスの音色とヘヴィ・ミュージックのブレンドはセンスが必要だ。

 

アルバムのリードトラック「Clean」はミュージックビデオになっていて、公開から半年足らずで20万回再生目前だ。ずっしりと重くヘヴィなビートに力強く刻み込まれるプログレッシヴなリフ、暗く知的な歌詞世界に引き込まれそうになる。大規模なステージで彼らが演奏している光景が目に浮かぶ、ステップアップを遂げた一枚。

 

 

 

 

第4位 : Obscura 『A Valediction』

Rlease : Nuclear Blast
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Obscura/63100

 

2002年からドイツ/ミュンヘンを拠点に活動するプログレッシヴ・デスメタルバンド、Obscuraの3年振り通算6枚目のフルレングス。ベーシストJeroen Paul Thesseling、そしてギタリストChristian Münznerが復帰し制作されたアルバムだ。詳しいレビューは別記事を参照下さい! (https://riffcult.online/2021/11/19/obscura-a-valediction-2/)

 

 

 

 

第3位 : First Fragment 『Gloire Éternelle』

Release : Unique Leader Records
Link : https://www.metal-archives.com/bands/First_Fragment/3540325573

 

テクニカル・デスメタル大国カナダの本場ケベックを拠点に2007年から活動するベテラン、First Fragmentの5年振りとなるセカンド・アルバム。大幅なラインナップ・チェンジがあり、ギタリストにUnleash the ArchersのNick Miller、ベーシストにAugury、ex.Neyond CreationのDominic “Forest” Lapointe、ドラマーにex.Sollum FatailsのNicholas Wellsが加入。最強とも言える布陣で彼らが挑んだのは、”ネオ・クラシカル・テクニカル・デスメタル”と言うサウンドの確立だ。

 

彼らの持ち味とも言えるフレッドレス・ベースのうねり狂うベースラインはDominicに変わっても健在、いや鋭さをましまるで生き物のように躍動しながら、ソロを弾きまくるギターに引けを取らない存在感を見せつけていく。クラシカルに転調しながらもテクニカル・デスメタルのヘヴィネスはしっかりとキープ、美しすぎる一枚。

 

 

 

第2位 : Ophidian I 『Desolate』

Release : Season of Mist
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Ophidian_I/3540347460

 

アイスランド/レイキャビクを拠点に活動するテクニカル・デスメタルバンドOphidian Iの9年振りとなるセカンドアルバム。大幅なラインナップチェンジはないものの、2019年にLord of Warで活躍したボーカリストJohn Olgeirssonが加入。サウンドも格段にレベルアップしSeason of Mistと契約を果たした。本作はギタリストのDaníel Máni Konráðssonがプロデュースを担当、ドラムのみStephen Lockhartがエンジニアリンクを行い、CryptopsyのギタリストChristian Donaldsonがミックス/マスタリングを手掛けた。

 

まるでDragon Forceがテクニカル・デスメタルをプレイしたかのようなスタイルとなったOphidian Iサウンドは他に類を見ないオリジナリティでシーンでの存在感を確固たるものとした。銀河を音速で移動するのにぴったりなサウンドトラック、と形容したくなるほど、煌びやかなメロディワークや滑らかに疾走するドラミングが印象的。これらを高次元融合させたChristian Donaldsonのミックス/マスタリングも素晴らしい。メロディック・デスメタル/スピードメタルの美的感覚を持ちながらも、プログレッシヴ/テクニカル・デスメタルのエクストリームな魅力も兼ね備えた作品はこれまでに存在しなかった。Ophidian Iがテクニカル・デスメタルに新たな流れを作ったことは間違いない。

 

 

 

第1位 : Archspire 『Bleed the Future』

Release : Season of Mist
Link : https://www.metal-archives.com/bands/Archspire/3540326229

 

2009年からカナダ/バンクーバーを拠点に活動するテクニカル・デスメタルバンド、Archspireの4年振り通算4枚目のフルアルバム。本作はプロデューサーにSerberus、Dethronedで活躍するDavid Oteroを起用し、彼のスタジオであるFlatline Audioで録音され、Davidがミックス/マスタリングまでを手掛けている。Archspireらしい「スピード」、「エクストリーム」、そして「ショットガン・ボーカル」を存分に味わうことが出来る作品となっており、過去最高傑作と言えるだろう。アルバムの聴きどころについてはリリースのタイミングで書いたこちらの記事を参照下さい (https://riffcult.online/2021/10/29/archspire-bleed-the-future-2/)

 

同名バンドが同じジャンルに6組も?! 世界の”Disgorge”をまとめてみた

「Disgorge (ディスゴージ)」。普通に生活していたら、英語圏でもあまり使用する機会は少ないこの単語だが、デスメタル・リスナーであれば誰もが知っている単語かもしれない。〔口から~を〕吐く、戻す、〔勢いよく~を〕噴き出す、吐き出す、〔盗品などを仕方なく〕引き渡す、差し出すという意味を持つ「Disgorge」を冠したバンドが世界にいくつか存在しており、しばしばバンド名の後に国名を明記する。不思議とデスメタルとの親和性の高いこの単語をバンド名に冠したバンドをわかる限りまとめてみたいと思う。

 

Disgorge (USA)

Disgorgeというバンド名で一番有名、というか元祖と言えるのがカリフォルニア州サンディエゴを拠点とするブルータルデスメタルバンド、Disgorge (USA)。1992年結成で、ブルータルデスメタルを代表するアーティストとして知られている。2006年に活動休止するも、2011年に復活しマイペースながらライブ活動を続けている。

 

Disgorge (Mexico)

アメリカのDisgorgeに次いでデスメタルシーンで知名度があるのが、メキシコのDisgorgeだ。アメリカのDisgorgeとスタイルも割と近いが、彼らはアートワークや歌詞のテーマが徹底してゴア。ストリーミング・サービスが利用出来ないレベルのアートワークなので、アンダーグラウンドな存在。ただ、熱狂的なファンがおり「Disgorgeと言えばメヒコ」というメタルヘッズも多い。このふたつの存在がそれぞれ混同しないようにバンド名の後ろに国名を明記されているようなものだ。

 

 

Disgorge (Norway)

知名度こそないものの、Metal Archivesに登録されている「Disgorge」というバンド名の中で最も結成年が古いのが、ノルウェーのDisgorge。唯一リリースされたデモテープ『Morbid Collapse』が1991年4月にリリースされている。そのサウンドはオールドスクールなデスメタル。このあとリリースもなく、詳細が少ない。

 

https://www.youtube.com/watch?v=FTy2iNTc-6I

Disgorge (Sweden)

同じ北欧のスウェーデンにもいる。彼らは1992年とアメリカのDisgorgeと同じで、デスメタルシーンではそれなりに知名度もあるバンドだ。Metal Archivesには1994年と1995年にそれぞれ一本ずつデモテープをリリースしているとあるが、実際には1992年にリリースした『Sleeping Prophecie』がファースト・デモのようだ。ただ、95年以降にリリースはなく、デモテープのリリースのみで活動が終了している。

 

Disgorge (Netherlands)

他のDisgorgeというバンドの存在を知っていたのかは不明だが、95年に結成されたオランダのDisgorgeは2001年にEP『Gorge This』を発表している。この時点で他にDisgorgeというバンドが存在していることは間違いなく知っていたと思うが、それでもDisgorgeを名乗り、作品タイトルにも”Gorge”と付けるあたり、やはりこの単語とデスメタルは何か切っても切れない繋がりがあるのかもしれない。確かに響きはどこかデスメタル的とも言える。サウンドはゴアグラインドなどの影響も感じるデスグラインド、と言えるだろうか。

 

Disgorge (Germany)

最後に紹介したいのが、このドイツのDisgorgeだ。彼らの情報はどこにもなく、Metal Archivesに掲載されているロゴ、このアーティスト写真、そしてデモ音源の情報のみ。どんなサウンドかは全く分からない……。

 

他にも「Intestinal Disgorge」や「Visceral Disgorge」といった「〜Disgorge」というバンドも多く、「Disgorged」というバンドも存在する。おそらくデスメタル以外のジャンルではこの単語は全く使われることのない単語だと思うが、その響き、意味に何かデスメタルとの親和性があるのだろう。もし、上記の6組以外にDisgorgeというバンドを知っている人がいたら、ぜひ情報提供をお願いしたい。

ブラッケンド・デスコア最前線レポート vol.01

“ブラッケンド・デスコア”という、デスコアのサブジャンルについては、2017年に執筆した『デスコアガイドブック』の中でも触れていた。有名どころでいえばLorna ShoreやA Night in Texasなどが挙げられると思うが、バンド活動に安定感がなく、ブラッケンド・デスコアというシーンを牽引していける存在として活躍しているかと言えば疑問だ。ただ、彼らの登場に刺激を受け、アンダーグラウンドではブラッケンド・デスコアバンドとして少しずつファンベースを拡大しているバンドもいる。ここでは、2021年にニューアルバムをリリースした、または計画があるバンドを中心に最先端のブラッケンド・デスコアがどうなっているか、彼らはそれぞれにどんな特徴があるのかをチェックしていこうと思う。


 

Mental Cruelty – A Hill To Die Upon

2014年からドイツの都市、カールスルーエを拠点に活動するブラッケンドデスコア/スラミング・デスコアバンド。2018年にセカンド・アルバム『Purgatorium』をRising Nemesis Recordsからリリースすると、それまでアンダーグラウンドのデスコア・コミュニティ内に留まっていた人気がワールドワイドなものに拡大。2019年からはUnique Leader Recordsと契約を果たし、アルバム『Inferis』を発表。ブルータルデスメタルやデスコアという枠を超え、メインストリームのエクストリーム・メタルシーンにおいてもその名を轟かせた。彼らのブラッケンド成分は、作り込まれたオーケストレーションと、ファストに疾走するブラストパートのコントラストにあるだろう。これらは、彼らが得意とするダウンテンポ・パートの破壊力を倍増させる為にも聴こえるが、それにしてはクオリティが高い。このパートのみで楽曲を作れば、Century Media RecordsやMetal Blade Recordsのブラックメタル勢にも食らいつける実力があるようにも思う。5月にリリースが決まっている新作『A Hill To Die Upon』は、クリーン成分もあり、ステップアップのきっかけになりうる作品になることは間違い無いだろう。

https://www.facebook.com/MentalCruelty

 

Drown In Sulphur – Vivant Tenebrae

イタリア/ミラノを拠点に2014年から活動するダウンテンポ・デスコア/ブラッケンド・デスコア、Drown In Sulphur (ドローン・イン・サルファー)。もともとはOceans Ate Alaskaがダウンテンポ・デスコアをプレイしたかのようなエクスペリメンタルなスタイルを得意としていたが、2019年にドラマーDomenico Francesco Tamila以外のメンバーが脱退。以降はコープスペイントを施した強烈なヴィジュアルで、ストレートなメロディック・デスコアへと傾倒していく。このメロディック感がDark Funeralなどを彷彿とさせ、彼らをブラッケンドと呼ぶ所以になっている。ところどころニューメタルコアのようなワーミー・フレーズも組み込んでいて、洗練されればなかなか面白いサウンドをプレイするようになるかもしれない。ちなみに2019年に脱退したMattia Maffioli、Max Foti、Simone Verdeは新たにDefamedを結成。こちらもデスコアシーンでは注目を集めるバンドのひとつに成長している。

https://www.facebook.com/wedrowninsulphur/

 

THE HATE PROJECT – HUMAN SACRIFICE

スウェーデンの都市、カルマルを拠点に活動するブラッケンド・デスコア。2019年から本格始動ということで、まだまだアンダーグラウンドでの人気に留まっているが、彼らも注目しておきたいバンドのひとつだろう。今年2月にリリースされたデビューアルバム『Seize the Obscurity』は、同郷のVildhjartaやHumanity’s Last BreathにあるようなThall成分が豊富で、アトモスフェリックさも個性的。シンプルすぎるバンド名も、得体の知れない邪悪さがあってサウンドとマッチしている。

https://www.facebook.com/TheHateProject/

Bonecarver – MALLEVS MALEFICARVM

スペインを拠点にCANNIBAL GRANDPAという名前で活動していた彼らが、Unique Leader Recordsとの契約をきっかけにBonecarverへと改名。若干B級感のあったサウンドもぐっと引き締まり、今年リリースしたアルバム『Evil』も好評だ。ダウンテンポやビートダウンというところよりも、メロディック・デスコアとブラックメタルを純粋にクロスオーバーさせたようなスタイルを得意としている。アルバム収録曲「MALLEVS MALEFICARVM」は、特にメロディアスでオーケストレーションも良い塩梅で組み込まれている。やはりブラストビートに注力しているデスコアは、デスコア以外のメタル・コミュニティから高評価を得る傾向にあるように思う。

https://www.facebook.com/bonecarverofficial

Worm Shepherd – ACCURSED (FT. ALEX KOEHLER)

おそらく今、最もブラッケンドなデスコアは、Worm Shepherdだろう。ちょうど2021年3月26日にUnique Leader Recordsとの契約を発表。ブレイクに向かって、じわじわと注目度を高めている。プログレッシヴ・デスメタルとブラックメタル、そしてデスコアが調和したサウンドは、これからのブラッケンド・デスコアのスタンダードとも言える雰囲気がある。特にデスコア成分においては、爆発的なダウンテンポ・パートが一発のみという清々しさがあり、あとはほとんどブラストビートで疾走し続けている。まだ新作のインフォメーションなどは出てきていないが、先行で公開されるだろうシングルは即日チェックすることをオススメしたい。

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Meshuggahを知る為に最初に聴く5曲 (Djentガイドブック特集vol.01)

本日3月12日、『Djentガイドブック』が発売になりました! すでに書店や通販などで手に購入してくださった方もたくさんいるようで、とても嬉しいです。Djentについて知らない人にも、分かりやすく優しく解説していますし、長年Djentを聴いてきた人には「お〜懐かしいな〜」と唸ってもらえるような作品も掲載しています。ページ数の関係でウルトラ・マニアックな作品や初期EP、改名前後の作品など掲載しきれなかったものもあるのですが、そういった作品はこのRIFF CULTウェブページで紹介していきたいと思います!

 

通販サイトまとめはこちら : https://www.handshakee.com/riffcult

 

さて今回は、『Djentガイドブック』で一番最初に紹介しているMeshuggah (メシュガー)について説明していきたいと思います。「Meshuggahってどんなバンドなの?」、「名前は知っているが聴いた事がない」、「どんな魅力があるの?」という方に向けてオススメの楽曲と簡単なバンド紹介をしてみます。

Meshuggah (メシュガー)は、1985年から活動するバンドで、北欧のスウェーデンという国で結成されました。このMeshuggahという名前は、イディッシュ語( 中東欧のユダヤ人の間で使われていた言語)で、CRAZYという意味があります。現在までに8枚のアルバムをNuclear Blast Recordsからリリースしており、デビューアルバム以外はすべてプログレッシヴ・デスメタル〜グルーヴメタル、Djent系のサウンドです。

セカンドアルバム『Destroy Erase Improve』に収録されている「Future Breed Machine」という楽曲は、世界で一番古いDjent的な楽曲だと言われており、Meshuggahの代表曲でもあります。独特の無機質さを感じられるグルーヴメタル・サウンド。

Meshuggahの最も有名な楽曲と言えば、この「Bleed」です。彼らの代表的なアルバムと言える『Obzen』に収録されており、このアルバムは発売初週にビルボードチャート59位にランクインしています。ソリッドなリフが無機質に刻み込まれ、少しずつグルーヴが熱を帯びていくMeshuggahのスタンダードなサウンドを味わう事が出来ます。

アルバム『Koloss』に収録されているこの楽曲は、波打つようなヘヴィリフが、アトモスフェリックな楽曲にうまくフィットしています。スケールの大きさで格の違いを見せつけた一曲と言えるでしょう。

アルバム『Nothing』の収録曲。そこまで有名な楽曲とは言えませんが、ライブでも頻繁にプレイされるMeshuggahを代表する一曲であると言えるでしょう。この曲が2021年にリリースされたと言われてもなんら違和感はなく、彼らがいかに先進的なサウンドを作ってきたかを感じられます。途中のギターソロの不気味な心地良さをぜひ味わってください。

目下最新作『The Violent Sleep of Reason』に収録されている楽曲。ライブ・レコーディングをベースに制作されたということもあり、Meshuggahとしての長年のキャリアで培われた圧倒的なグルーヴを根底に感じられる一曲。

いかがでしたでしょうか?もっとMeshuggahについて知りたい! Djentについて知りたい! という方は、ぜひ『Djentガイドブック』を手に入れてみて下さい。